特許第6027502号(P6027502)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6027502
(24)【登録日】2016年10月21日
(45)【発行日】2016年11月16日
(54)【発明の名称】フロントローダ
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/22 20060101AFI20161107BHJP
【FI】
   E02F9/22 E
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-156722(P2013-156722)
(22)【出願日】2013年7月29日
(65)【公開番号】特開2015-25329(P2015-25329A)
(43)【公開日】2015年2月5日
【審査請求日】2015年9月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000177184
【氏名又は名称】三陽機器株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】100061745
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 敏雄
(74)【代理人】
【識別番号】100120341
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 幹雄
(72)【発明者】
【氏名】大河原 悟
(72)【発明者】
【氏名】近藤 守
(72)【発明者】
【氏名】森田 繁
【審査官】 須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−009559(JP,A)
【文献】 実開昭56−171868(JP,U)
【文献】 実開昭49−089593(JP,U)
【文献】 実公昭62−033784(JP,Y2)
【文献】 特開2005−248627(JP,A)
【文献】 特開2007−262826(JP,A)
【文献】 特開2006−336291(JP,A)
【文献】 実開平01−006188(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 3/34
E02F 3/38
E02F 3/42−3/43
E02F 3/84−3/85
E02F 9/00
E02F 9/14
E02F 9/20−9/22
F15B 15/00−15/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブーム支持体(2)にブーム(3)の基部(4)を枢支し、ブーム(3)の中途部(5)を側面視山形状に屈曲してその屈曲部(6)に下方突出状の左右側壁(7a)を有するシリンダ取付部(7)を設け、このシリンダ取付部(7)にブームシリンダ(8)のシリンダチューブ(9)の底部(9a)側を連結し、ブームシリンダ(8)のピストンロッド(10)をブーム支持体(2)に連結したフロントローダであって、
前記シリンダ取付部(7)の左右側壁(7a)に挟まれた内側であって、シリンダチューブ(9)の底部(9a)にシリンダチューブ(9)内の油室(8b)と連通するアキュムレータ(11)を同心状に設けていることを特徴とするフロントローダ。
【請求項2】
前記ブーム(3)の中途部(5)は内部中空の筒形状であって、屈曲部(6)の底壁(6a)に左右側壁(7a)の内側に開放された開口(6b)を有し、この開口(6b)を介して前記アキュムレータ(11)の自由端側を屈曲部(6)内に挿入していることを特徴とする請求項1に記載のフロントローダ。
【請求項3】
前記アキュムレータ(11)は、シリンダチューブ(9)の底部(9a)側にアキュムレータチューブ(12)を取り付け、アキュムレータチューブ(12)内に気体室(A)と液体室(B)とを形成しており、この液体室(B)とシリンダチューブ(9)内のブーム持ち上げ側の油室(8b)とを連通する連通路(14)を前記シリンダチューブ(9)の底部(9a)内に形成していることを特徴とする請求項1又は2に記載のフロントローダ。
【請求項4】
前記アキュムレータチューブ(12)内にアキュムレータピストン(13)を配置して自由端側の気体室(A)とシリンダチューブ(9)側の液体室(B)とを形成していることを特徴とする請求項3に記載のフロントローダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブーム及びブームシリンダを有するフロントローダに関する。
【背景技術】
【0002】
移動機体に装着されるフロントローダは、例えば、特許文献1に示されるように、ブーム支持体にブーム(リフトアーム)の基部を枢支し、ブームの中途部にシリンダ取付部を設け、このシリンダ取付部にブームシリンダのピストンロッドを連結し、ブーム支持体にブームシリンダのシリンダチューブの底部側を連結しており、前記シリンダチューブの底部側に走行安定機構切換弁及び油圧ホースを介してアキュムレータを接続しており、アキュムレータで走行時の車体の振動を抑制するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−78628号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記従来技術は、作業時においてもブームの昇降時の衝撃をアキュムレータによって抑えることもできるが、アキュムレータはブームシリンダから離れた位置に配置されており、特別な配置場所を必要としている。このアキュムレータは、ブーム支持体又はブームの側面に配置することも考えられるが、ブーム支持体又はブームの側面に配置できても、他のものに衝突したりして破損する可能性が生じたり、見栄えが悪くなる。
【0005】
本発明は、このような従来技術の問題点を解決できるようにしたフロントローダを提供することを目的とする。
本発明は、アキュムレータをブームに簡単に装着でき、かつブームのシリンダ取付部でシリンダと一体に設けられたアキュムレータを保護できるようにしたフロントローダを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明における課題解決のための具体的手段は、次の通りである。
第1に、ブーム支持体2にブーム3の基部4を枢支し、ブーム3の中途部5を側面視山形状に屈曲してその屈曲部6に下方突出状の左右側壁7aを有するシリンダ取付部7を設け、このシリンダ取付部7にブームシリンダ8のシリンダチューブ9の底部9a側を連結し、ブームシリンダ8のピストンロッド10をブーム支持体2に連結したフロントローダであって、
前記シリンダ取付部7の左右側壁7aに挟まれた内側であって、シリンダチューブ9の底部9aにシリンダチューブ9内の油室8bと連通するアキュムレータ11を同心状に設けていることを特徴とする。
【0007】
第2に、前記ブーム3の中途部5は内部中空の筒形状であって、屈曲部6の底壁6aに左右側壁7aの内側に開放された開口6bを有し、この開口6bを介して前記アキュムレータ11の自由端側を屈曲部6内に挿入していることを特徴とする。
第3に、前記アキュムレータ11は、シリンダチューブ9の底部9a側にアキュムレータチューブ12を取り付け、アキュムレータチューブ12内に気体室Aと液体室Bとを形成しており、この液体室Bとシリンダチューブ9内のブーム持ち上げ側の油室8bとを連通する連通路14を前記シリンダチューブ9の底部9a内に形成していることを特徴とする。
【0008】
第4に、前記アキュムレータチューブ12内にアキュムレータピストン13を配置して自由端側の気体室Aとシリンダチューブ9側の液体室Bとを形成していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、アキュムレータをブームに簡単に装着でき、かつブームのシリンダ取付部で保護できる。
即ち、請求項1に係る発明は、シリンダ取付部7の左右側壁7aに挟まれた内側であって、シリンダチューブ9の底部9aにシリンダチューブ9内の油室8bと連通するアキュムレータ11を同心状に設けているので、アキュムレータ11をブーム3に簡単に装着でき、かつシリンダ取付部7の左右側壁7aで確実に保護できる。
【0010】
請求項2に係る発明は、シリンダチューブ9の底部9aに設けたアキュムレータ11の自由端側を、ブーム3の屈曲部6内に挿入しているので、アキュムレータ11の全長を確実に保護できる。
請求項3に係る発明は、アキュムレータ11は液体室Bをシリンダチューブ9内のブーム持ち上げ側の油室8bと連通路14を介して連通しているので、アキュムレータ11をブームシリンダ8と直結でき、アキュムレータ11の応答性が向上でき、かつアキュムレータ付きブームシリンダとしての構成をコンパクトにできる。
【0011】
請求項4に係る発明は、アキュムレータチューブ12内に設けたアキュムレータピストン13により気体室Aと液体室Bを構成しているので、ローダの昇降時に発生する衝撃や耐久性に強いものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態を示す全体側面図である。
図2】屈曲部の側壁を削除したブームの側面図である。
図3】ブームの平面図である。
図4】ブームの屈曲部の拡大側面図である。
図5】アキュムレータ付きブームシリンダの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1において、トラクタ装着型フロントローダ1を例示しており、トラクタ(移動機体)17はエンジン、ミッションケース等を連結して機体18が構成され、この機体18の前後中途部にフロントローダ1が着脱可能に装着されている。
図1〜3において、フロントローダ1は、機体18に固定の左右一対の支持フレーム19と、この左右各支持フレーム19に着脱自在に装着されたブーム支持体2と、この左右各ブーム支持体2の上部に枢支軸23を介して枢支された左右ブーム3と、左右両ブーム3の先端に上下回動自在に装着された作業具24と、左右各ブーム支持体2の下部又は上下中途部と左右各ブーム3の中途部5との間に設けられたブーム昇降用のブームシリンダ8と、左右各ブーム3の中途部5と作業具24との間に設けられた上下回動用の作業具シリンダ25と、前記ブームシリンダ8及び作業具シリンダ25への作動油を供給排出制御する操作装置26とを有している。
【0014】
前記左右各支持フレーム19は、下部がミッションケース側面に又はミッションケースからエンジンに亘って固定され、左右外側方へ突出しかつ上方へ立ち上がっており、その上部に係合ピン31と貫通ピン32とを介してブーム支持体2を装着支持している。
左右各ブーム支持体2は、左右一対の板材を連結板で連結しており、左右板材間にブーム3の基部とブームシリンダ8の一端とを挿入して、それぞれを枢支軸23、ピン33で連結しており、左右一方のブーム支持体2に操作装置26が設けられている。
【0015】
左右各ブーム3は、図1、2に示す略水平姿勢において、基部4と中途部5と先端部27とを有し、中途部5は左右側壁を上下壁で連結した内部中空の筒形状であって、その両端に鋳物製の基部4の前部と先端部27の後部とが挿入固定されている。
ブーム3の中途部5は側面視山形状に屈曲してその略中央が屈曲部6になっており、基部4側から屈曲部6側へ次第に断面が大きくなる角錐形状の第1筒部28と、先端部27側から屈曲部6側へ次第に断面が大きくなる角錐形状の第2筒部29と、左右の第2筒部29を連結する連結部材30と、第1筒部28の前部と第2筒部29の後部とを連結する左右側壁7aとを有し、左右側壁7aは底壁6aと天壁6cとによって連結され、屈曲部6を構成している。
【0016】
前記ブーム3の屈曲部6は、左右側壁7aの下部が第1筒部28の前部より下方に突出しており、その突出部にブームシリンダ8のシリンダチューブ9の底部9a側を支軸15
を介して連結しており、この部分が下方突出状の左右側壁7aを有するシリンダ取付部7を構成している。
前記ブーム3のシリンダ取付部7は、屈曲部6の底壁6aと第1筒部28の後端部との間が離れていて、支軸15に面する、即ち、シリンダチューブ9の底部9aに向かって開放された開口6bが形成され、この開口6bにシリンダチューブ9の底部9aに設けられたアキュムレータ11が挿通されている。
【0017】
作業具24はブーム3の先端部27に横軸35を介して枢支され、作業具シリンダ25と押しリンク36及び規制リンク37とにより上下回動可能になっている。
前記ブーム3の屈曲部6の左右側壁7aの前上部には作業具シリンダ25のシリンダチューブ25aが連結され、作業具シリンダ25のピストンロッド25bの先端は、作業具24に連結された押しリンク36とブーム3の先端側に連結された規制リンク37とに同時に連結されている。
【0018】
前記作業具24としてバケットを例示しているが、フォーク、パレットフォーク、グレーダ、ロールクラブ等が使用でき、それぞれの作業具に応じて、作業具シリンダ25で掬い・ダンプ、上下回動、姿勢変更等が行われる。
図5に前記アキュムレータ11を有するブームシリンダ8を詳細に示している。
ブームシリンダ8はシリンダチューブ9内にピストン40が摺動自在に配置されており、このピストン40に連結されたピストンロッド10がシリンダチューブ9から突出しており、シリンダチューブ9の底部9a側が支軸15を介してシリンダ取付部7に連結され、ピストンロッド10の先端がピン33を介してブーム支持体2に連結されている。
【0019】
ブームシリンダ8はピストン40の両側の油室8a、8bにそれぞれ油圧ホースが接続され、作動油を供給排出可能になっており、ピストンロッド10側の油室8aはブーム下降側であり、シリンダチューブ9の底部9a側の油室8bはブーム持ち上げ側になっている。
アキュムレータ11は、アキュムレータチューブ12とアキュムレータピストン13とを有し、アキュムレータチューブ12は一端部がシリンダチューブ9の底部9aに嵌合固着され、他端部が栓体41によって封鎖されており、この栓体41に気体注入弁42が設けられている。
【0020】
アキュムレータ11は、アキュムレータチューブ12内のアキュムレータピストン13の両側において、シリンダチューブ9の底部9aと反対側の自由端側に気体室Aを形成し、底部9a側(シリンダチューブ9側)に液体室Bを形成している。
前記シリンダチューブ9の底部9aには、支軸15が貫通されるとともに、アキュムレータ11の液体室Bと連通する連通路14が形成されている。
【0021】
前記気体室Aには高圧の窒素ガス又はその他の気体が封入されており、液体室Bは連通路14を介してブーム持ち上げ側の油室8bと連通されており、この連通路14には中途部に両室を行き来する油の流量を調整する流量調整弁44が設けられている。
前記アキュムレータ11は、その軸心をブームシリンダ8の軸心からずらして配置することもできるが、両者を同心に配置する方が製作が容易になるので好ましく、また、気体室Aは機密性のある袋体(ブラダ型)でもよいがシリンダピストン型の方が耐久性がある。
【0022】
前記ブーム3は操作装置26を介してブームシリンダ8の油室8bに作動油を供給することにより上昇する。そのとき、油室8bと連通路14を介して連通しているアキュムレータ11の液体室Bにも油室8bと同じ圧が立ち、ブーム3の上昇を停止したときのショックは液体室Bの圧力変化を気体室Aの窒素ガスの圧縮・膨張で吸収する。
ブーム3を下降するときは、ブームシリンダ8の油室8bがドレン側となるが、リリーフ圧がかかっているので、アキュムレータ11の液体室Bにも油室8bと同じ圧が立ち、ブーム3の上昇時と同様に、下降を停止したときのショックは液体室Bの圧力変化を気体室Aの窒素ガスの圧縮・膨張で吸収する。
【0023】
作業具24に荷重がかかったままトラクタ17を走行させたとき、ブーム3の先端が上下振動すると、アキュムレータ11の液体室Bに圧力変化を生じ、その圧力変化を気体室
Aの窒素ガスの圧縮・膨張で吸収し、機体18へ伝播される振動を抑制する。
ブーム3の昇降時に、ブーム3に対してブームシリンダ8が相対的に回動するが、そのときアキュムレータ11はシリンダチューブ9の底部9aと一体であるので、ブームシリンダ8と一体的に支軸15回りに回動する。そしてアキュムレータ11は常にシリンダ取付部7の左右側壁7aに挟まれた内側にあり、また開口6bを介して屈曲部6の内部に全長が位置し、外部に露出していないので、他のものとの衝突等で損傷を受けることがない。
【0024】
なお、本発明は前記実施形態における各部材の形状及びそれぞれの前後・左右・上下の位置関係は、図1〜5に示すように構成することが最良である。しかし、前記実施形態に限定されるものではなく、部材、構成を種々変形したり、組み合わせを変更したりすることもできる。
例えば、移動機体17としてはホイールローダ、TLB(トラクタ・ローダ・バックホー)等であってもよく、ブーム3はアームと呼称されるものでもよく、また、ブーム支持体2が移動機体17に直接装着されているものでもよい。
【0025】
また、連通路14をシリンダチューブ9の底部9aに形成せずに、液体室Bとブーム持ち上げ側油室8bとを外部パイプで連通してもよい。
【符号の説明】
【0026】
1 フロントローダ
2 ブーム支持体
3 ブーム
4 基部
5 中途部
6 屈曲部
6a 底壁
6b 開口
6c 天壁
7 シリンダ取付部
7a 側壁
8 ブームシリンダ
8a 油室
8b 油室
9 シリンダチューブ
9a 底部
10 ピストンロッド
11 アキュムレータ
12 アキュムレータチューブ
13 アキュムレータピストン
14 連通路
17 トラクタ(移動機体)
A 気体室
B 液体室
図1
図2
図3
図4
図5