特許第6027557号(P6027557)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6027557吸音パネルユニット、遮音パネルユニット、吸音パネル、及び遮音パネル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6027557
(24)【登録日】2016年10月21日
(45)【発行日】2016年11月16日
(54)【発明の名称】吸音パネルユニット、遮音パネルユニット、吸音パネル、及び遮音パネル
(51)【国際特許分類】
   E01F 8/00 20060101AFI20161107BHJP
【FI】
   E01F8/00
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-22492(P2014-22492)
(22)【出願日】2014年2月7日
(65)【公開番号】特開2015-110882(P2015-110882A)
(43)【公開日】2015年6月18日
【審査請求日】2015年5月12日
(31)【優先権主張番号】特願2013-233094(P2013-233094)
(32)【優先日】2013年11月11日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】515086399
【氏名又は名称】株式会社テクノ・サプライ
(73)【特許権者】
【識別番号】594075765
【氏名又は名称】日本板硝子環境アメニティ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】511246005
【氏名又は名称】有限会社ナクス
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】俣木 歩
(72)【発明者】
【氏名】松田 修一
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 由郎
【審査官】 亀谷 英樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−083112(JP,A)
【文献】 実開昭53−073705(JP,U)
【文献】 特開2011−080330(JP,A)
【文献】 特開2011−026898(JP,A)
【文献】 特開平09−151419(JP,A)
【文献】 特開2009−084996(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01F 8/00−8/02
E01B 19/00
E04B 1/82、1/86
E04H 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸音材と、
前記吸音材まで貫通するグリルが形成されるとともに、前記吸音材から長手方向の両側部側にはみ出した側部領域を有する前面板と、
前記吸音材を挟んで前記前面板に対向するとともに、前記吸音材から長手方向の両側部側にはみ出した側部領域を有する背面板と、
前記前面板と背面板の側部領域間に形成されたワイヤロープ挿通経路と、
を備え、立設されたH形支柱のフランジに前記前面板及び背面板の側部領域がガイドされながら落とし込まれる、吸音パネルと、
前記吸音パネルの前面板とこれに対向する前記H形支柱の前面側フランジとの間に打ち込まれ、前記吸音パネルの背面板に対向する前記H形支柱の背面側フランジに前記吸音パネルを付勢するとともに、前記吸音パネルの前面板と前記前面側フランジとの間に間隙を形成する、固定金具と、
を備え、
前記吸音パネルの前面板の側部領域には、前記前面側フランジと対向する箇所に、前記ワイヤロープ挿通経路まで貫通された窓孔が形成されていることを特徴とする、吸音パネルユニット。
【請求項2】
請求項1記載の、吸音パネルユニットであって、
前記固定金具及び吸音パネルの一方には、他方に固定するための固定手段が設けられ、前記他方には、前記一方に固定される被固定手段が設けられていることを特徴とする、吸音パネルユニット。
【請求項3】
請求項2記載の、吸音パネルユニットであって、
前記固定金具には、前記打ち込み時に前記吸音パネル側に突出する固定爪が形成され、
前記吸音パネルには、前記固定爪が嵌め込まれる溝が形成されていることを特徴とする、吸音パネルユニット。
【請求項4】
透光板と、
前記透光板の周縁を厚さ方向に挟持することで前記透光板を支持するとともに、前記厚さ方向に対向する前面板及び背面板が側方に延設されることで両者の間にワイヤロープ挿通経路が形成された、支持枠と、
を備え、立設されたH形支柱のフランジに前記前面板及び背面板の側方延設部がガイドされながら落とし込まれる、遮音パネルと、
前記遮音パネルの前面板とこれに対向する前記H形支柱の前面側フランジとの間に打ち込まれ、前記遮音パネルの背面板に対向する前記H形支柱の背面側フランジに前記遮音パネルを付勢するとともに、前記遮音パネルの前面板と前記前面側フランジとの間に間隙を形成する、固定金具と、
を備え、
前記遮音パネルの前面板の側方延設部には、前記前面側フランジと対向する箇所に、前記ワイヤロープ挿通経路まで貫通された窓孔が形成されていることを特徴とする、遮音パネルユニット。
【請求項5】
吸音材と、
前記吸音材まで貫通するグリルが形成されるとともに、前記吸音材から長手方向の両側部側にはみ出した側部領域を有する前面板と、
前記吸音材を挟んで前記前面板に対向するとともに、前記吸音材から長手方向の両側部側にはみ出した側部領域を有する背面板と、
前記前面板と背面板の側部領域間に形成されたワイヤロープ挿通経路と、
を備え、立設されたH形支柱のフランジに前記前面板及び背面板の側部領域がガイドされながら落とし込まれる、吸音パネルであって、
前記吸音パネルの前面板と、これに対向する前記H形支柱の前面側フランジとの間には、前記吸音パネルの背面板に対向する前記H形支柱の背面側フランジに前記吸音パネルを付勢するとともに、前記吸音パネルの前面板と前記前面側フランジとの間に間隙を形成する、固定金具が打ち込まれ、
前記吸音パネルの前面板の側部領域には、前記前面側フランジと対向する箇所に、前記ワイヤロープ挿通経路まで貫通された窓孔が形成されていることを特徴とする、吸音パネル。
【請求項6】
吸音材と、
前記吸音材まで貫通するグリルが形成されるとともに、前記吸音材から長手方向の両側部側にはみ出した側部領域を有する前面板と、
前記吸音材を挟んで前記前面板に対向するとともに、前記吸音材から長手方向の両側部側にはみ出した側部領域を有する背面板と、
前記前面板と背面板の側部領域間に形成されたワイヤロープ挿通経路と、
を備え、立設されたH形支柱のフランジに前記前面板及び背面板の側部領域がガイドされながら落とし込まれる、吸音パネルであって、
前記吸音パネルの背面板と、これに対向する前記H形支柱の背面側フランジとの間には、前記吸音パネルの前面板に対向する前記H形支柱の前面側フランジに前記吸音パネルを付勢するとともに、前記吸音パネルの背面板と前記背面側フランジとの間に間隙を形成する、固定金具が打ち込まれ、
前記吸音パネルの背面板の側部領域には、前記背面側フランジと対向する箇所に、前記ワイヤロープ挿通経路まで貫通された窓孔が形成されていることを特徴とする、吸音パネル。
【請求項7】
透光板と、
前記透光板の周縁を厚さ方向に挟持することで前記透光板を支持するとともに、前記厚さ方向に対向する前面板及び背面板が側方に延設されることで両者の間にワイヤロープ挿通経路が形成された、支持枠と、
を備え、立設されたH形支柱のフランジに前記前面板及び背面板の側方延設部がガイドされながら落とし込まれる、遮音パネルであって、
前記遮音パネルの前面板と、これに対向する前記H形支柱の前面側フランジとの間には、前記遮音パネルの背面板に対向する前記H形支柱の背面側フランジに前記遮音パネルを付勢するとともに、前記遮音パネルの前面板と前記前面側フランジとの間に間隙を形成する、固定金具が打ち込まれ、
前記遮音パネルの前面板の側方延設部には、前記前面側フランジと対向する箇所に、前記ワイヤロープ挿通経路まで貫通された窓孔が形成されていることを特徴とする、遮音パネル。
【請求項8】
透光板と、
前記透光板の周縁を厚さ方向に挟持することで前記透光板を支持するとともに、前記厚さ方向に対向する前面板及び背面板が側方に延設されることで両者の間にワイヤロープ挿通経路が形成された、支持枠と、
を備え、立設されたH形支柱のフランジに前記前面板及び背面板の側方延設部がガイドされながら落とし込まれる、遮音パネルであって、
前記遮音パネルの背面板と、これに対向する前記H形支柱の背面側フランジとの間には、前記遮音パネルの前面板に対向する前記H形支柱の前面側フランジに前記遮音パネルを付勢するとともに、前記遮音パネルの背面板と前記背面側フランジとの間に間隙を形成する、固定金具が打ち込まれ、
前記遮音パネルの背面板の側方延設部には、前記背面側フランジと対向する箇所に、前記ワイヤロープ挿通経路まで貫通された窓孔が形成されていることを特徴とする、遮音パネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸音パネルとこれをH形支柱に固定する固定金具を備えた、吸音パネルユニット及び単体の吸音パネル、ならびに、遮音パネルとこれをH形支柱に固定する固定金具を備えた、遮音パネルユニット及び単体の遮音パネルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、高速道路、一般道路及び鉄道での車両走行に伴う騒音を防止するため、これらの道路や線路の側壁として防音壁が設けられている。防音壁は、例えば、図8に示すように、H形支柱100を間隔を空けて複数立設するとともに、このH形支柱100のフランジ102をガイドとして、吸音パネル104や遮音パネルを複数落とし込むことによって組み立てられる。
【0003】
吸音パネルや遮音パネルの、H形支柱からの脱落を防ぐための手段が従来から知られている。例えば、H形支柱と吸音パネルとの間に、固定金具を楔のようにして打ち込むことで、吸音パネルをH形支柱に固定する。
【0004】
また、図8に示すように、吸音パネル104の両側部にはワイヤロープ106を挿通させる挿通経路108が設けられている。ワイヤロープ106は防音壁の基礎部分に一方の端部が固定されるとともに、積み重ねられた吸音パネル104の挿通経路108を通り、他方の端部が防音壁の最上部に固定される。
【0005】
防音壁施工時の、ワイヤロープの挿通状態を確認するために、従来から、吸音パネルの側壁には、挿通経路まで貫通した窓孔が設けられている。例えば特許文献1では、吸音パネル104の側面に窓孔110を設けて、吸音パネル104内のワイヤロープ106の挿通状態(ワイヤロープ106の有無等)が目視できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−151419号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、従来の吸音パネルや遮音パネルでは、防音壁施工後、窓孔はH形支柱に隠れてしまうため、施工後に外部からワイヤロープの挿通状態を確認することが困難となる。例えば一度完成された防音壁から吸音パネルを引き上げるなど、煩雑な作業が必要となる。そこで本発明は、防音壁施工後においても、ワイヤロープの挿通状態を容易に確認することの可能な、吸音パネルユニットや遮音パネルユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、吸音パネルユニットに関するものである。当該ユニットは、吸音材と、前記吸音材まで貫通するグリルが形成されるとともに、前記吸音材から長手方向の両側部側にはみ出した側部領域を有する前面板と、前記吸音材を挟んで前記前面板に対向するとともに、前記吸音材から長手方向の両側部側にはみ出した側部領域を有する背面板と、前記前面板と背面板の側部領域間に形成されたワイヤロープ挿通経路と、を備え、立設されたH形支柱のフランジに前記前面板及び背面板の側部領域がガイドされながら落とし込まれる、吸音パネルを備える。さらに、前記吸音パネルの前面板とこれに対向する前記H形支柱の前面側フランジとの間に打ち込まれ、前記吸音パネルの背面板に対向する前記H形支柱の背面側フランジに前記吸音パネルを付勢するとともに、前記吸音パネルの前面板と前記前面側フランジとの間に間隙を形成する、固定金具を備える。前記吸音パネルの前面板の側部領域には、前記前面側フランジと対向する箇所に、前記ワイヤロープ挿通経路まで貫通された窓孔が形成されている。
【0009】
また、上記発明において、前記固定金具及び吸音パネルの一方には、他方に固定するための固定手段が設けられ、前記他方には、前記一方に固定される被固定手段が設けられていることが好適である。
【0010】
また、上記発明において、前記固定金具には、前記打ち込み時に前記吸音パネル側に突出する固定爪が形成され、前記吸音パネルには、前記固定爪が嵌め込まれる溝が形成されていることが好適である。
【0011】
また、本発明は、遮音パネルユニットに関するものである。当該ユニットは、透光板と、前記透光板の周縁を厚さ方向に挟持することで前記透光板を支持するとともに、前記厚さ方向に対向する前面板及び背面板が側方に延設されることで両者の間にワイヤロープ挿通経路が形成された、支持枠と、を備え、立設されたH形支柱のフランジに前記前面板及び背面板の側方延設部がガイドされながら落とし込まれる、遮音パネルを備える。また、上記ユニットは、前記遮音パネルの前面板とこれに対向する前記H形支柱の前面側フランジとの間に打ち込まれ、前記遮音パネルの背面板に対向する前記H形支柱の背面側フランジに前記遮音パネルを付勢するとともに、前記遮音パネルの前面板と前記前面側フランジとの間に間隙を形成する、固定金具を備える。前記遮音パネルの前面板の側方延設部には、前記前面側フランジと対向する箇所に、前記ワイヤロープ挿通経路まで貫通された窓孔が形成されている。
【0012】
また、本発明は、吸音パネルに関するものである。当該パネルは、吸音材と、前記吸音材まで貫通するグリルが形成されるとともに、前記吸音材から長手方向の両側部側にはみ出した側部領域を有する前面板と、前記吸音材を挟んで前記前面板に対向するとともに、前記吸音材から長手方向の両側部側にはみ出した側部領域を有する背面板と、前記前面板と背面板の側部領域間に形成されたワイヤロープ挿通経路と、を備え、立設されたH形支柱のフランジに前記前面板及び背面板の側部領域がガイドされながら落とし込まれる。また、前記吸音パネルの前面板と、これに対向する前記H形支柱の前面側フランジとの間には、前記吸音パネルの背面板に対向する前記H形支柱の背面側フランジに前記吸音パネルを付勢するとともに、前記吸音パネルの前面板と前記前面側フランジとの間に間隙を形成する、固定金具が打ち込まれ、前記吸音パネルの前面板の側部領域には、前記前面側フランジと対向する箇所に、前記ワイヤロープ挿通経路まで貫通された窓孔が形成されている。
【0013】
また、本発明に係る吸音パネルの別態様によれば、当該吸音パネルは、吸音材と、前記吸音材まで貫通するグリルが形成されるとともに、前記吸音材から長手方向の両側部側にはみ出した側部領域を有する前面板と、前記吸音材を挟んで前記前面板に対向するとともに、前記吸音材から長手方向の両側部側にはみ出した側部領域を有する背面板と、前記前面板と背面板の側部領域間に形成されたワイヤロープ挿通経路と、を備え、立設されたH形支柱のフランジに前記前面板及び背面板の側部領域がガイドされながら落とし込まれる。前記吸音パネルの背面板と、これに対向する前記H形支柱の背面側フランジとの間には、前記吸音パネルの前面板に対向する前記H形支柱の前面側フランジに前記吸音パネルを付勢するとともに、前記吸音パネルの背面板と前記背面側フランジとの間に間隙を形成する、固定金具が打ち込まれ、前記吸音パネルの背面板の側部領域には、前記背面側フランジと対向する箇所に、前記ワイヤロープ挿通経路まで貫通された窓孔が形成されている。
【0014】
また、本発明は、遮音パネルに関するものである。当該パネルは、透光板と、前記透光板の周縁を厚さ方向に挟持することで前記透光板を支持するとともに、前記厚さ方向に対向する前面板及び背面板が側方に延設されることで両者の間にワイヤロープ挿通経路が形成された、支持枠と、を備え、立設されたH形支柱のフランジに前記前面板及び背面板の側方延設部がガイドされながら落とし込まれる。前記遮音パネルの前面板と、これに対向する前記H形支柱の前面側フランジとの間には、前記遮音パネルの背面板に対向する前記H形支柱の背面側フランジに前記遮音パネルを付勢するとともに、前記遮音パネルの前面板と前記前面側フランジとの間に間隙を形成する、固定金具が打ち込まれ、前記遮音パネルの前面板の側方延設部には、前記前面側フランジと対向する箇所に、前記ワイヤロープ挿通経路まで貫通された窓孔が形成されている。
【0015】
また、本発明に係る遮音パネルの別態様によれば、当該遮音パネルは、透光板と、前記透光板の周縁を厚さ方向に挟持することで前記透光板を支持するとともに、前記厚さ方向に対向する前面板及び背面板が側方に延設されることで両者の間にワイヤロープ挿通経路が形成された、支持枠と、を備え、立設されたH形支柱のフランジに前記前面板及び背面板の側方延設部がガイドされながら落とし込まれる。前記遮音パネルの背面板と、これに対向する前記H形支柱の背面側フランジとの間には、前記遮音パネルの前面板に対向する前記H形支柱の前面側フランジに前記遮音パネルを付勢するとともに、前記遮音パネルの背面板と前記背面側フランジとの間に間隙を形成する、固定金具が打ち込まれ、前記遮音パネルの背面板の側方延設部には、前記背面側フランジと対向する箇所に、前記ワイヤロープ挿通経路まで貫通された窓孔が形成されている。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、防音壁施工後においても、ワイヤロープの挿通状態を容易に確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本実施形態に係る吸音パネルユニットを例示する斜視図である。
図2】本実施形態に係る吸音パネルユニットを例示する斜視断面図である。
図3】本実施形態に係る吸音パネルユニットを例示する斜視図である。
図4】本実施形態に係る吸音パネルユニットの別例を示す斜視図である。
図5】本実施形態に係る吸音パネルユニットを用いた防音壁の施工を説明する図である。
図6】本実施形態に係る吸音パネルユニットの別例を示す斜視図である。
図7】本実施形態に係る遮音パネルユニットを例示する斜視図である。
図8】従来技術に係る吸音パネルユニットの施工例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1に、本実施形態に係る吸音パネルユニット10を例示する。吸音パネルユニット10は、吸音パネル12及び固定金具14を備える。
【0019】
吸音パネル12は、吸音材15及びハウジング16を備える。図2に示すように、吸音材15はハウジング16内に収容される。吸音材15は例えば略直方体形状であって、グラスウール等の繊維材料から構成される。また、吸音材15の、ハウジング前面板18側の底部には、延設部17が設けられていてもよい。延設部17は、前面板18及び底面板26に挟まれるとともに、防音壁の組み立て時に鉛直下方向に延設される。延設部17を介して、吸音材15に吸収された液体が外部に排出、滴下される。また、延設部17を前面板18の長手方向全幅に亘って設けることで、前面板18と底面板26とが非接触となり、両者を異種金属で製造した場合における異種金属接触腐食(電食)を防止することができる。
【0020】
図1に戻り、ハウジング16は、吸音材15を収容する筐体である。ハウジング16は、前面板18、背面板20、側面板22A,22B、天面板24、及び底面板26を備える。天面板24は、吸音パネル12を隙間なく積み重ねることが可能となるように、底面板26と同一形状となっていてよい。また、天面板24及び底面板26の両側部には、後述するワイヤロープを挿通させるための切り欠き27または挿通口が形成されている。
【0021】
前面板18は、防音壁の組み立ての際に、車両等の騒音源に対面するように配置される。前面板18には吸音材15まで貫通するグリル28またはガラリと呼ばれる開口部が形成されている。このグリル28を介してハウジング16内の吸音材15に騒音を吸収させる。また、前面板18は、吸音材15から長手方向の両側部にはみ出す、側部領域30を備えている。つまり、前面板18の長手方向長さは、吸音材15よりも長く形成されている。
【0022】
図3に示すように、前面板18の側部領域30には、窓孔40が形成されている。この窓孔40は、後述するワイヤロープ挿通経路36まで貫通されており、この窓孔40からワイヤロープ挿通経路36内のワイヤロープの有無等の挿通状態を目視することが可能となる。また、窓孔40は、後述するH形支柱の前面側フランジと対向する箇所に設けられていることが好適である。このようにすることで、正面から防音壁を見たときに、窓孔40はH形支柱のフランジに隠れることになるから、窓孔40を設けることによる防音壁の景観低下を抑制することが可能となる。また、窓孔40がフランジに覆われるようになることから、雨等の液体の、ワイヤロープ挿通経路36内への流入を防ぐことができる。
【0023】
なお、図3では、窓孔40は、周囲を板材で囲まれた穴形状であったが、この形状に限らない。例えば、図6に示すように、窓孔40は、前面板18の側部領域30から側端まで打ち抜いた切り欠き形状のものであってもよい。
【0024】
図3に戻り、背面板20は、吸音材15を挟んで前面板18に対向する。背面板20も、前面板18と同様に、吸音材15から長手方向の両側部側にはみ出す、側部領域32を備えている。また、背面板20には、吸音材15を前面板18に押さえ付けるための凸部34を備えていてもよい。
【0025】
前面板18の側部領域30と背面板20の側部領域32との間には、ワイヤロープ挿通経路36が形成される。図3に示すように、ワイヤロープ挿通経路36は、天面板24及び底面板26の切り欠き27を出入り口として形成されている。
【0026】
側面板22A,22Bは、前面板18と背面板20とを繋ぐ。例えば、側面板22A,22Bは、断面凹形状であってよく、ハウジング16の側面が中央側に窪むように取り付けられてよい。さらに、断面凹形状である側面板22A,22Bを、ワイヤロープ挿通経路36の通路壁としてよい。このようにすることで、吸音パネル12の側面にワイヤロープ挿通経路36が露出する様になり、防音壁の施工時に、外部からワイヤロープの挿通状況が目視可能となる。
【0027】
また、側面板22A,22Bには、ワイヤロープを挿通させるためのアイボルト38が設けられていてもよい。アイボルト38はワイヤロープ挿通経路36上に設けられていればよいが、図4のように、窓孔40近傍に設けることで、ワイヤロープのアイボルト38への挿通状態が窓孔40から目視できるという利点がある。例えば、窓孔40及びアイボルト38の両者を、吸音パネル12の背面板20の凸部34よりも底面板26側または天面板24側に設けることで、窓孔40からアイボルト38の目視が可能となる。
【0028】
図3に戻り、固定金具14は、吸音パネル12をH形支柱に固定するための固定手段である。固定金具14の短手方向の幅Wは、H形支柱のフランジの張り出し幅以下であることが好適である。このようにすることで、フランジ内に固定金具14が隠れるようになり、防音壁の景観低下を抑制することができる。
【0029】
固定金具14は、取り付け部44とばね板部46を備える。取り付け部44は吸音パネル12に固定金具14を取り付けるための部材であって、吸音パネル12に沿った形状となっている。例えば、取り付け部44は、吸音パネル12の天面板24の切り欠き27から、前面板18の段差部分48までの形状と同一形状となるように形成される。
【0030】
取り付け部44が天面板24の切り欠き27と重なる場合に、ワイヤロープを挿通させるための挿通口50を設けることが好適である。ワイヤロープを挿通口50に挿通することで、吸音パネル12と同様に、固定金具14のH形支柱からの落下を防ぐことができる。
【0031】
ばね板部46は、吸音パネル12とH形支柱のフランジとの間に打ち込まれて両者を付勢する付勢手段である。このばね板部46が、吸音パネル12の前面板18と、これに対向するH形支柱の前面側フランジ(後述する)との間に打ち込まれることで、吸音パネル12は、H形支柱の背面側フランジ(前面側フランジと対向するフランジ)に付勢され、その結果吸音パネル12がH形支柱に固定される。また、ばね板部46により、吸音パネル12の前面板18とH形支柱の前面側フランジとの間に間隙が形成される。
【0032】
また、固定金具14及び吸音パネル12の一方に、他方に固定するための固定手段を設け、他方には、一方に固定される被固定手段を設けるようにしてもよい。例えば、固定金具14に固定爪52を設けてもよい。固定爪52は、固定金具14の打ち込み時に、吸音パネル12側に突出するように形成されてよい。また、固定爪52に対応するようにして、吸音パネル12には、固定爪52が嵌め込まれる溝54が形成されていることが好適である。溝54の形状は、固定爪52と同一形状であってよい。図3では、固定金具14の取り付け部44に固定爪52を設けるとともに、吸音パネル12の天面板24に溝54を設けている。なお、固定金具14に溝54を形成し、吸音パネル12に固定爪52を設けるようにしてもよい。
【0033】
固定手段を設けない場合、防音壁に伝わる振動などにより、固定金具14が吸音パネル12の長手方向にスライド移動してH形支柱のフランジから外れ、吸音パネル12の固定が外れるおそれがある。本実施形態のように固定爪52や溝54を設けることで、固定金具14が吸音パネル12に固定されるので、固定金具14のH形支柱からの離脱を防ぐことが可能となる。
【0034】
次に、図5を用いて、本実施形態に係る吸音パネルユニット10を用いた、防音壁の施工について説明する。まず、H形支柱56を間隔を空けて複数本立設する。このとき、H形支柱56のフランジ58が略同一平面上に配置されるように、H形支柱56を立設する。ここで、H形支柱56のフランジ間距離d1が、吸音パネル12の奥行き幅d2よりも大きくなるような、H形支柱56が使用されることが好適である。例えば、後述するように、吸音パネル12の前面板18とH形支柱56の前面側フランジ58Aとの間隙からワイヤロープ挿通経路36内を目視可能となるように、フランジ間距離d1と吸音パネル12の奥行き幅d2との差(d1−d2)は、5mm以上20mmであることが好適である。
【0035】
次に、ワイヤロープ60の一端を防音壁の基礎部分(図示せず)に固定するとともに、他端を吸音パネル12のワイヤロープ挿通経路36及びアイボルト38、並びに固定金具14の挿通口50に挿通させる。
【0036】
次に、ワイヤロープ60が挿通された吸音パネル12をH形支柱56に沿って落とし込む。具体的には、吸音パネル12の前面板18の側部領域30と背面板20の側部領域32がH形支柱56のフランジ58にガイドされるようにして、吸音パネル12が落とし込まれる。
【0037】
吸音パネル12を落とし込んだ後に、固定金具14を打ち込む。固定金具14のばね板部46が、吸音パネル12の前面板18と、H形支柱56の前面側フランジ58Aとの間に打ち込まれることで、吸音パネル12の前面板18とH形支柱56の前面側フランジ58Aとの間に間隙が形成される。この間隙から、前面板18に設けられた窓孔40を介して、ワイヤロープ挿通経路36内を目視することが可能となる。また、間隙が狭く、ワイヤロープ挿通経路36内の目視が困難であっても、当該間隙に小型カメラ等を挿入することで、ワイヤロープ挿通経路36内のワイヤロープ60の挿通状態を確認することが可能となる。
【0038】
また、窓孔40を吸音パネル12の前面板18側に設けることで、ワイヤロープ60の挿通状態の確認が容易となる。防音壁は、高架道路等、高所に設けられる場合があり、背面板20への目視に高所作業車(リフト車)等の重機が必要となるなど、背面板20へのアクセスが困難となる場合がある。これに対して本実施形態では、前面板18側に窓孔40を設けているので、防音壁が設けられた道路から前面板18に徒歩にて近づいて目視を行うなど、アクセスの容易な面に窓孔40を設けている。このように、本実施形態では、ワイヤロープ60の挿通状態の確認が容易となるように、窓孔40を設けている。
【0039】
なお、上述した実施形態では、吸音パネル12に窓孔40を設けていたが、この形態に限らない。例えば、図7に示すように、透光型の遮音パネル70に窓孔40を設けるようにしてもよい。
【0040】
同図には、遮音パネル70及び固定金具14を備えた、遮音パネルユニット68が示されている。遮音パネル70は、透光板72及び支持枠74を備える。透光板72は略矩形の板材であって、例えばアクリル等の樹脂材料やガラス、またはこれらを貼り合わせた板材等から構成される。
【0041】
支持枠74は、透光板72の周縁を厚さ方向に挟持することで透光板72を支持する。支持枠74は、額縁形状(ロ字形状)の部材であって、透光板72の高さ方向に延設する縦枠76A,76Bと、透光板72の長手方向に延設する横枠78A,78Bを備える。縦枠76A,76Bと横枠78A,78Bとは、図示しない結合部材によって額縁形状に結合される。
【0042】
結合の際には、横枠78A,78B及び縦枠76A,76Bの内面に形成された支持溝79がそれぞれ整合するように、各枠が結合される。この支持溝79に透光板72が挿入されることで、透光板72が支持される。なお、横枠78A,78Bや縦枠76A,76Bに、透光板72を厚さ方向に付勢する、押枠部材を設けてもよい。
【0043】
支持枠74の縦枠76A,76Bには、側方(遮音パネル70の長手方向)に延設する側方延設部80A,80Bが形成されている。側方延設部80A,80Bは、遮音パネル70の厚さ方向に対向する、縦枠76A,76Bの前面板82A,82B及び背面板84A,84Bが側方に延設されることで形成される。両者の間には、ワイヤロープ挿通経路36が形成される。なお、図4に示した例と同様に、ワイヤロープ挿通経路36のアイボルト38は、窓孔40近傍に設けられてよい。
【0044】
また、縦枠76A,76Bには、固定金具14の固定爪52が嵌め込まれる溝54が形成されていてもよい。
【0045】
図5等にて説明したように、防音壁(遮音壁)の施工の際に、H形支柱56のフランジ58に側方延設部80A,80Bがガイドされながら、遮音パネル70が落とし込まれる。つまり、側方延設部80A,80BはH形支柱56のフランジ58と対向する。本実施形態では、側方延設部80A,80Bが前面側フランジ58Aと対向する箇所に、窓孔40が形成される。窓孔40は、ワイヤロープ挿通経路36まで貫通されるようにして形成されている。
【0046】
なお、図7では、窓孔40は、周囲を板材で囲まれた穴形状であったが、この形状に限らない。例えば、図6に示したように、窓孔40は、側方延設部80A,80Bの側端まで打ち抜いた切り欠き形状のものであってもよい。
【0047】
防音壁(遮音壁)の施工の際に、遮音パネル70の支持枠74の前面板82A,82Bと、これに対向するH形支柱56の前面側フランジ58Aとの間には、固定金具14が打ち込まれる。固定金具14の打ち込みにより、遮音パネル70の支持枠74の背面板84A,84Bに対向する、H形支柱56の背面側フランジに、遮音パネル70が付勢される。また、固定金具14の打ち込みにより、遮音パネル70の支持枠74の前面板82A,82Bと前面側フランジ58Aとの間に間隙が形成される。
【0048】
この間隙から、前面板82A,82Bに設けられた窓孔40を介して、ワイヤロープ挿通経路36内を目視することが可能となる。また、間隙が狭く、ワイヤロープ挿通経路36内の目視が困難であっても、当該間隙に小型カメラ等を挿入することで、ワイヤロープ挿通経路36内のワイヤロープ60の挿通状態を確認することが可能となる。
【0049】
なお、上述した実施形態では、吸音パネル12の前面板18と、H形支柱56の前面側フランジ58Aとの間に、固定金具14を打ち込むとともに、前面板18に窓孔40を設けていた。または、遮音パネル70の支持枠74の前面板82A,82Bと、これに対向するH形支柱56の前面側フランジ58Aとの間に、固定金具14を打ち込むとともに、前面板82A,82Bに窓孔40を設けていた。ただし、これらの形態には限られない。
【0050】
具体的には、吸音パネル12及び遮音パネル70の背面側に間隙を設けるとともに、当該背面側に窓孔40を設けてもよい。具体的には、吸音パネル12の背面板20と、H形支柱56の背面側フランジとの間に、固定金具14を打ち込むとともに、背面板20の、背面側フランジと対向する箇所(側部領域32)に、窓孔40を設ける。または、遮音パネル70の支持枠74の背面板84A,84Bと、これに対向するH形支柱56の背面側フランジとの間に、固定金具14を打ち込むとともに、背面板84A,84Bの、背面側フランジと対向する箇所(側方延設部80A)に、窓孔40を設ける。
【0051】
防音壁や遮音壁が地上に設けられる場合には、吸音パネル12や遮音パネル70の背面に容易にアクセスできる。吸音パネル12や遮音パネル70の背面側に窓孔40を設けることで、ワイヤロープ60の挿通状態を容易に確認できる。
【符号の説明】
【0052】
10 吸音パネルユニット、12 吸音パネル、14 固定金具、15 吸音材、18 前面板、20 背面板、28 グリル、30 前面板側部領域、32 背面板側部領域、36 ワイヤロープ挿通経路、40 窓孔、56 H形支柱、60 ワイヤロープ、68 遮音パネルユニット、70 遮音パネル、72 透光板、74 支持枠、80 側方延設部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8