【実施例1】
【0010】
[台車本体]
以下に、この発明のスタッキング可能な台車構造の好適実施例について図面を参照しながら説明する。
この台車20は、
図1から
図4に示すように、平面視矩形状の台車本体1の底部の四隅に旋回キャスター2の支軸Pを固定した構造からなっている。
支軸Pは、車輪3の中心から偏心した位置で、車輪を軸支する支持ヨーク4の旋回中心位置に設けられている。
【0011】
図示例では、支軸Pの位置は、支軸Pを中心に車輪3が旋回しても車輪3の先端が台車本体1の外周縁部内にほぼ収まる位置で、図中、上下及び左右対称位置に4個所配置されており、説明の便宜上、
図1に図示した。
そして、前記台車本体1は、積み重ね用の構造として、第1孔部5と、第2孔部7と、格子部10と、係止片17とを有している。
【0012】
[第1孔部]
第1孔部5は、台車本体1の長手方向(以下、単に長手方向という。)に設けられた一対の支軸P、P間を結ぶ線L1(
図1参照)上で、キャスター2の車輪3を嵌合可能な一対の貫通孔からなっている。
本実施例で第1孔部5は、略矩形の孔からなっており、
図5および
図6に示すように、台車1を長手方向に交互にずらせて積み重ねる際に、相対的に上方(以下、単に上方という)となる台車20’の長手方向の一方側の車輪(説明上3’とする)を相対的に下方(以下、単に下方という)の台車本体1の上に載置し、長手方向の他方側の車輪3を下方の台車本体1から外れた外側となるようにずらして積み重ねる際に前記一方側の車輪3’を嵌合するためのものである。
【0013】
上記第1孔部5は、上方に載置する台車20’の先端側の一対の車輪3’だけを嵌合するので、台車本体1上に一対に設けられるが、第1孔部5は、長手方向の一方側または他方側に交互にずらして積み重ねるので、長手方向の中央を基準に対称となるように合計4つ配置すれば、いずれかの第1孔部5に嵌合しうるので好ましい。
【0014】
[第2孔部]
第2孔部7は、
図10、
図11(a)に示すように台車20の真上に平行に上方の台車20’を積み重ねる際に、上方の台車20’の車輪3’を嵌合するための凹部である。
第2孔部7は、前記各支軸Pに対応した位置を含んで、前記上方の台車20’のキャスターの車輪3’を嵌合する略矩形の凹部からなっており、台車本体1の四隅に沿って合計4つ形成されている。
上記第2孔部7は、台車本体1の短手方向の辺に沿って平行に配置されており、上方の台車本体20’の短手方向(以下、「短手方向」という)に沿って平行に並べた状態で嵌合可能な位置に形成された略矩形の凹部からなっている。
【0015】
上記第2孔部7は、上方の台車本体1の4つの車輪3を短手方向の辺と略平行に旋回させた状態で嵌合しうる位置に形成されるので、台車本体1の上面において短手方向で一方に偏った位置に配置されている。
また、本実施例では、第2孔部7内に、車輪3’が第2孔部7の底部に挿入されると車輪の自重で閉方向に作動して車輪3’の側面の凹部に両側から係止する拘束片31を設けている。
【0016】
拘束片31の一例を示すと、車輪3のトレッド面と衝合する載置片部31aと車輪3の側面に掛止められる拘束片31bとからなる断面略L状の片からなっており、基端が第2孔部7の周壁に枢着されると共に、拘束片31bが周壁内に没入し、載置片部31aが第2孔部7の底壁上に斜めに突出する待機位置に図示しない付勢手段によって付勢されている(
図11(b)参照)。
【0017】
車輪3が第2孔部7内に嵌合すると、車輪3のトレッド面により載置片部31aが押し下げられ、拘束片31bが周壁内から突出し、車輪3の側面の凹部内に入り込み、車輪3に掛止められる(
図11(c)参照)。
車輪3を第2孔部7から上に引き上げると、前記拘束片31bが周壁内に押し戻されると共に、付勢手段によって載置片部31が待機位置まで戻る。
これにより、前記車輪3’は、第2孔部7への嵌合だけでなく、拘束片31による係止によって、その位置が規制されるため、上方の台車20’を正確に位置決めすることができる。
【0018】
また、第2孔部7の凹部の長手方向の長さは、後述の係止片17’を嵌合可能な長さとなっている(
図5参照)。
そして、図示例の場合、いずれか一方で長手方向に沿う一対の第2孔部7は、後述の係止片17の長手方向に沿う延長線L2(
図1参照)を含む位置に設定されているので、上方の台車本体1’の係止片17’の少なくとも1つを嵌合して位置決めすることができる。
【0019】
[格子部]
格子部10は、縦枠と横枠とが交差して形成される複数の枠と該枠で囲まれた貫通孔とから形成されており、前記第1孔部5および第2孔部7で囲まれた台車本体1の内側領域内に配置されている。
【0020】
本実施例で格子部10は、長手方向の中央寄りに配置された中央格子部11と、該中央格子部11に連接し長手方向の外側寄りに配置されて中央格子部11より長く形成された外側格子部12とを有している。
図示例では、上記中央格子部11および外側格子部12は、前記長手方向の中央を基準に一対に設けられている。
【0021】
そして、格子部10は、長手方向に6列並んでおり、各列に中央格子部11と外側格子部12とが2つずつ対称に並んでいる。
また、外側格子部12の外側には、長さの短い端部格子部13が2つ並んでいる。
【0022】
更に、本実施例では、前記6列の格子部10の外側で第1孔部5の間に一対の中央格子部11’がそれぞれ形成されている。
また、前記端部格子部13の外側には、第2孔部7と並んだ位置に延長孔14が形成されている。
【0023】
図示例では、第2孔部7は、車輪3を短手方向の辺と平行となるように同一方向に旋回させた状態で嵌合する位置に配置されるため、台車本体1の中心に対して一方側、
図1、
図5では、図中上方の長手方向の辺に接近するよう偏った位置に配置されている。
【0024】
そのため、
図5において図中上方の長手方向の辺に隣接する側の第2孔部(説明の便宜上、
図5では7bとする)は、中央の格子部10に対して離間し、図中下方の長手方向の辺に隣接する側の第2孔部(同じく、
図5では7aとする)は、格子部10に接近し、一部が入り込むように配置されている。
【0025】
また、図中下方の第2孔部7aの上部と上下対称位置には前記延長孔14が形成される。
上記延長孔14は、
図5中上方で、上方の係止片17の延長線上に配置され、図中下方の長手方向の辺に隣接する第2孔部7aは、図中下方の係止片17の延長線(
図1の線L2)上に配置されている。
【0026】
[係止片]
そして、外側格子部12の貫通孔内には、その中間位置にプレート状からなって長手方向に沿って配置された係止片17が固定されている。
本実施例では、格子部10の短手方向の両端(図中、上下両端側)に位置して、前記格子部10の長手方向に沿って連続する中央格子部11と外側格子部12を形成する長手方向に延びる格子形成壁16が形成されている(
図17(a)(b)参照)。
【0027】
該格子形成壁16は、一対の側壁からなっており、台車本体1の他の底面よりも下方に延出させ下端面を水平面に形成している。
そして、前記一対の格子形成壁16の間の中間位置に、該格子形成壁16より下方に延び下端が車輪3の接地面より上方に配置された係止片17が固定されている。
【0028】
前記格子形成壁16は、台車を長手方向に交互にずらして積み重ねる場合、および台車の縦横を交互に交差させて積み重ねる場合に、上方の台車本体1’が下方の台車本体1の上に平行に載置させるために下端が水平面となっている(
図6、
図8〜9参照)。
【0029】
また、上方の台車20’の係止片17’は、台車本体を長手方向に交互にずらして積み重ねる場合、
図5に示すように、先端側の係止片17’は前記中央格子部11の枠の穴に嵌合し、後端側の係止片17”は、一方が延長孔14に嵌合し、他方が第2孔部7に嵌合して、上方の台車本体1’の位置決めが行われる。
図示例では、長手方向の両端側に把持孔9を設けたので格子部10を形成できないが、把持孔9を小さくしたり、形成しない場合には、延出孔14に替えて端部格子部13を増やしてもよい。
【0030】
次に、台車本体の縦横を交互に交差させて積み重ねる場合、
図7に示すように、上方の台車20’の4つの係止片17’、17’は、下方の台車20の4つの第1孔部5にそれぞれ1つずつ嵌合する。
上記嵌合位置は、各第1孔部5で台車本体1の中央寄りの端縁側になるので、上方の台車20’を所定位置に拘束して位置決めが行われる。
【0031】
[連結手段]
次に、本実施例の台車には、複数の台車同士を接地面上で長手方向または短手方向に連結するため台車本体1の四隅には、連結ピン21と受穴30とからなる連結手段が設けられている。
本実施例では、連結ピン21は、
図13に示すように基軸22と、該基軸22の上端で略直角に折れ曲がる折曲り軸部23と、該折曲り軸部23の先端を基軸22と平行に折り曲げた係止軸部24とからなる略U字状のピンからなっている。
【0032】
前記基軸22は、コーナー部の貫通孔26に挿通して台車本体1の底部から下方に突出させており、該基軸22の突出端には抜止め用ストッパ25を固定し、該ストッパ25と貫通孔26の開口する底面との間にコイルスプリングSを介設して連結ピン21を没入方向に付勢している。
不使用時に掛止める受穴30は前記貫通穴26と並んで配置されており、
図15で明瞭なように、連結ピン21の不使用時に係止軸部24を収納する第1受穴31と、前記貫通孔26と並んで外側に配置され連結用に使用する第2受穴32と、該第2受穴32と並んで離間した位置に配置された第3受穴33が形成されている。
【0033】
上記第2受穴32、第3受穴33は、長手方向に直列に連結する台車20との間で、連結ピン21の先端の係止軸部24を、連続する台車側のいずれかの受穴32、33に差し込んで連結が行われる(
図12参照)。
即ち、連結ピン21は、基軸22をスプリングSの付勢力に抗して上に引き抜いて係止軸部24を第1受穴31から抜き取り、基軸22を中心に回転させて、連結する台車の前記第2または第3受穴32、33に挿入して行われる(
図12参照)。
図示例では、同一形状の台車20を連結する場合を図示したが、異なる形状の台車であっても、同様の受穴を有する台車であれば、同様に連結することができる。
【0034】
次に、台車本体1を短手方向の辺を並べて並列に連結する場合には、本実施例では
図14に示すように、前記連結ピン15を使用しない。
即ち、台車本体1は、
図3〜
図4や
図17(b)に示すように、長手方向の一方の辺を、台車本体1の厚みの下半分とする下突片部25とし、長手方向の他方の辺を、台車本体1の厚みの上半分とする上突片部27としている。
そして、下突片部25には上下に貫通する連結用貫通穴26を1または複数(図示例では2つ)設けている。
【0035】
一方、上突片部27には、上記連結用貫通穴26に嵌合可能な垂下嵌合部28を連結時に整合する位置に一対垂設している。
従って、台車本体1を並列に連結する際には、一方の台車本体1の上突片部27が他方の台車本体1の下突片部25の上に重なると共に、上突片部27の垂下嵌合部28を下突片部25の連結用貫通穴26に嵌合して連結が行われる。
【0036】
また、異なる形状の台車本体1”の場合であっても、
図15に示すように、コーナー部に同種の受穴32’、33’が形成されていれば、直列方向にも並列方向にも連結ピン15を用いて台車を連結することができる。
この発明は、上記構成に限定されるものではなく、要するにこの発明の要旨を変更しない範囲で種々設計変更しうること勿論である。