【実施例1】
【0021】
図1〜
図8は、本発明の実施例1の切り込み付き可撓性シートを説明するための図及び変形例を示す。
具体的には、
図1は製造方法を説明する模式図の正面図、
図2は製造方法を説明する模式図の平面図、
図3は製造方法の模式図を側面から説明した図で(a)はY−Z端面図、(b)は(a)の部分拡大端面図を示している。
また、
図4は実施例1を説明する外観図であり(a)は加工前の斜視図、(b)は加工直後の斜視図、(c)は(b)の両端を切り落とした斜視図、(d)は(c)の先端引き出し状態の斜視図、
図5は分割片の切り取りを説明する部分拡大側面図で(a)は作業前、(b)は作業後、
図6は長い分割片の切り取りを説明する斜視図で(a)1つの分割片、(b)は2つの分割片、(c)は3つの分割片の切り取り状態を示している。
なお、
図7は所定長さの切り込み付き可撓性シートにおける使用方法を示した説明図であり(a)は全幅状態、(b)は3つの分割片状態、(c)は2つの分割片状態、(d)は1つの分割片状態を示しており、
図8は他の回転刃を使用した場合の(a)端面図、(b)部分拡大端面図を示している。
【0022】
具体的には、実施例1の切り込み付き可撓性シートに仕上げられる加工前の可撓性シート1は、
図4(a)に示すように、紙製等の中心筒1aにロール状に巻き取られており、その厚さ1.5mm程度、幅100mm程度、長さは10m〜15m程度のものを使用する。
【0023】
そして、この可撓性シート1の加工装置2は、製造方法を説明する模式図である
図1の正面図、
図2の平面図、
図3の側面方向に表れる端面図に表わされるように、概略、可撓性シート1を回転可能に取り付ける支持部3、可撓性シート1の先端を取り付けて巻き込むための巻き取り部4、可撓性シート1に後述する切り込みを入れるための切り込み作製装置5で構成されている。
【0024】
この、切り込み作製装置5には、上下方向に対峙して移動可能な上回転装置6及び下回転装置7が備えられ、上回転装置6には、スペーサー8a,8b,8c,8d,8e,8fを介在させて、片面の丸ナイフでなる上回転刃9a,9b,9c,9d,9eが取り付けられる。
一方、下回転装置7には、スペーサー10a,10b,10c,10d,10e,10fを介在させて、片面の丸ナイフでなる下回転刃11a,11b,11c,11d,11eが取り付けられる。
【0025】
なお、各上回転刃並びに各下回転刃は、
図3(b)の部分拡大図に示すように、上回転刃の刃先12の垂直面12aと、下回転刃の刃先13の垂直面13aとが一致するように配置される。
【0026】
そして、上回転刃の刃先12の先端12bと、下回転刃の刃先13の先端13bとの刃先間の間隔Aは、後述するような、可撓性シート1に切り込み作業を行っている行程中や、切り込み作業が終わった状態で、剪断方向等に外力を加えない状態で、自然に切断されないような残留部が形成される寸法に設定される。
【0027】
但し、適正な残留部の寸法は、可撓性シート1の材料仕様や、加工時の気温等にも影響されるので、それらの条件に合わせ適宜設定する必要がある。
なお、厚さ1.5mmの汎用のマグネットシートの場合、0.5mm程度が好ましい数値となる。
【0028】
このように残留部の寸法は重要であるので、上回転刃9a,9b,9c,9d,9e同士、及び、下回転刃11a,11b,11c,11d,11e同士は、基本的には同一の外形を有するもの、即ち同一仕様品を使用するのが好ましい構成となる。
【0029】
但し、可撓性シート1の両側面が、形状が不ぞろいであるとか、汚れ等がある場合は、両端の部分が、製品として使えないので切除する必要が生じる。
このような場合には、上回転刃の両サイド9a,9eと、下回転刃の両サイド11a,11eとの刃先間の間隔Aが、接触しない程度に小さくすればよい。
具体的には、上回転刃9a,9e、及び、又は、下回転刃11a,11eのみ、外形の大きな回転刃を使用することで対応することができる。
【0030】
なお、上回転刃9a,9b,9c,9d,9e、並びに、下回転刃11a,11b,11c,11d,11eの配置間隔は、一定としてもよいし、用途に合わせて変化させる等、適宜に選択し実施できる。
【0031】
これまで説明した通り、本実施例における製造方法は、上回転刃の刃先12の先端12bと、下回転刃の刃先13の先端13bとは、加工作業時に接触することはないので、作業が安全で、しかも、均一な品質が確保されるので、生産上好適なものとなっている。
【0032】
以上の様な状況下で、次に、実施例1の切り込み付き可撓性シートの作製方法を具体的に説明する。
【0033】
先ず、準備段階として、加工装置2の切り込み作製装置5における、上回転装置6と下回転装置7との上下方向の間隙を大きく開いておく。
【0034】
次に、加工装置2の支持部3に、可撓性シート1の中心筒1aを回転自在に取り付けた状態で、可撓性シート1の先端部1bを、上記切り込み作製装置5の上回転装置6と下回転装置7との間隙部に通し、さらに、巻き取り部4に回転自在に取り付けられた、紙製等の巻き取り筒1cに、図示しないガムテープ等の適宜の手段で取り付ける。
【0035】
この状態から、可撓性シート1に切り込みを入れて行くことになるが、最初に、切り込み作製装置5の上回転装置6、又は、下回転装置7を上下方向に狭めるように移動させて、上回転装置6に取り付けられた上回転刃9a,9b,9c,9d,9e、及び、下回転装置7に取り付けられた下回転刃11a,11b,11c,11d,11eを、可撓性シート1の引き出し部1dに接触させ、さらに、
図3(b)に示すように、上回転刃の刃先12の先端12bと、下回転刃の刃先13の先端13bとを食い込ませ、その間隙が適正な寸法になるまで調整する。
そして、この作業により、可撓性シート1には、上面の切り込み14、下面の切り込み15の起点が形成され、上面の切り込み14の先端16と、下面の切り込み15の先端17との間に、残留部18が形成されることになる。
【0036】
次に、
図1に表わすように、加工装置2における巻き取り部4を、矢印の方向に回転させると、支持部3に回転自在に取り付けられているロール状の可撓性シート1は、引き出されるよ回転し、加工装置2の巻き取り部4に巻き取られていく。
【0037】
この時、可撓性シート1の引き出し部1dは、切り込み作製装置5を通過することのより、上回転刃9a,9b,9c,9d,9e、並びに、下回転刃11a,11b,11c,11d,11eを回転させつつ、これらの刃によって、上面及び下面が、切り込まれていくことになる。
具体的には、
図2に示すように、上回転刃9a,9b,9c,9d,9eによって、その順に、上面の切り込み14a,14b,14c,14d,14eが形成される。
なお、
図2には図示できないが、下回転刃11a,11b,11c,11d,11eによって、下面の切り込みも同様に形成される。(下述の
図4(d)参照)
【0038】
以上のようにして、可撓性シート1には、切り込みが形成されていくが、可撓性シート1の引き出し及び切り込み作業は、上述した巻き取り部4の回転力だけではなく、上回転装置6の回転、下回転装置7の回転、支持部3の送り出しの回転も自力回転可能として併用しても良い。
【0039】
そして、切り込み作業が完了すると、
図4(b)に示すように、加工直後の切り込み付き可撓性シート19がロール状態で完成する。
なお、外観面には、上面の切り込み14a,14b,14c,14d,14eが形成されており、これらの切り込みにより、分割片20a,20b,20c,20d,20e,20fが形成される。
【0040】
この状態でも、切り込み付き可撓性シートの完成と言える。
ただ、ロールの両端の分割片20a,20fは、幅寸法の変動が大きく、汚れ等も生じやすい傾向にあるので、この説明では、製造過程の参考的な形態として捉え、次の加工を加えたものを、実施例1の切り込み付き可撓性シート21として扱うこととする。
【0041】
具体的には、実施例1の切り込み付き可撓性シート21は、加工直後のロール状の切り込み付き可撓性シート19における両端の分割片20a,20f、並びに、その中心部に位置する巻き取り筒1cを同一端面で切り取り、
図4(c)に示すように、所定位置に上面の切り込み14b,14c,14dが入り、所定幅の分割片20b,20c,20d,20eが形成される形態となっている。
なお、
図4(d)に示すように、切り込み付き可撓性シート21の先端部を引き出すと判るように、上面の切り込み14b,14c,14dと対応する位置に、下面の切り込み15b,15c,15dも形成される。
【0042】
次に、切り込み付き可撓性シート21に形成された複数の分割片の切り取りについて説明する。
図5は分割片の切り取りを説明するための部分拡大側面図であり、作業前の(a)には、切り込み付き可撓性シート21には、上面の切り込み14の先端16と、下面の切り込み15の先端17とが対峙する状態となっている。
ここで、
図5(a)の矢印で示すように、上面の切り込み14を中心として折り曲げるような力を加えると、上面の切り込み14の先端16と、下面の切り込み15の先端17とは、それぞれが鋭角状に形成されているので、その間に形成されている残留部18の部分にはノッチ効果が生じ、軽い力で簡単に、
図5(b)に示すような凹凸の少ない切り口22にて切断することができる。
【0043】
このように、本発明における切り込み付き可撓性シート21は、通常は、
図4(d)に示すように全分割片が繋がった最大幅状態で使用できるにも拘わらず、各分割片にも簡単に切り取りが可能な特長を有している。
従って、用途に応じて、所望の幅の分割片の切り取りが可能となる。
【0044】
図6は、比較的長い分割片の切り取りを行う状態を示したものであり、
図6(a)は1つの分割片
20e、
図6(b)は2つの分割片20d,
20e、
図6(c)は3つの分割片20c,20d,
20eの幅の状態で切り出す様子を表していて、夫々、所望の長さまで切り取ったのち、ロールから切断して使用することになる。
【0045】
一方、使用する長さが決まっていて、その状態で幅を変化させようとする場合は、
図7に示すように、ロールから切り取った所定長さの切り込み付き可撓性シート23を使用し、
図7(a)の4つの分割片23b,23c,23d,23eでなる全幅状態の他に、例えば、
図7(b)の3つの分割片23c,23d,23e状態、
図7(c)の2つの分割片23d,23e状態、
図7(d)の1つの分割片23e状態のように、希望する連続した分割片、或いは1つの分割片を切りだして使用することができる。
【0046】
以上のように、本発明における切り込み付き可撓性シートにおいては、複数の分割片が形成されていて、希望の幅に簡単に、且つ、綺麗な切り口で切り出すことができる。
従って、実際に、この切り込み付き可撓性シートを、壁用等の施工部材として使用した場合は、細幅の可撓性シートのみ使い複数本並べて使用したり、或いは、幅広の可撓性シートから所定幅にナイフ等で切り取って使う等の作業に比べて、格段に作業性が向上することになる。
【0047】
なお、本実施例を作製するための製造方法において使用した、上回転刃及び下回転刃は、片面の丸ナイフで説明したが、これに限る必要はない。
例えば、前述した
図3(a)の端面図及び
図3(b)の部分拡大図と同様に、
図8(a)の端面図及び
図8(b)の部分拡大端面図を使って説明すると、上回転刃24a,24b,24c,24d,24e、並びに、下回転刃25a,25b,25c,25d,25eは、両面の丸ナイフを使用し、上回転刃の刃先26と下回転刃の刃先27の位置関係は、同様に配置すればよい。
このように、上回転刃及び下回転刃は、鋭い刃先を有するものであれば、適宜に選択し採用することができる。
【実施例2】
【0048】
実施例1は、可撓性シートに切り込みを入れるのに、概略、ロール状の可撓性シートを使用して上回転刃と下回転刃間に通す方法を説明した。
しかし、可撓性シートに切り込みを入れる方法は、これに限ることなく実施してよいことは云うまでもない。
【0049】
実施例2は、可撓性シートとして平板状のものを使用し、切り込みはプレス方式で入れる構成を示したものである。
図9は、その製造方法の一例を示したものであり、先ず、
図9(a)の加工説明図のように、平板状の可撓性シート31の1面に対して、図示しないトムソン機を用いて、トムソン型32に埋め込まれたトムソン刃33を、所定の深さが確保できるようにプレスする。
そうすると、トムソン型32のプレスを解除すれば、
図9(b)のように、平板状の可撓性シート31の1面に切り込み34aが形成される。
次いで、平板状の可撓性シート31を裏返して、切り込み34aと同位置に、同様な加工を施して切り込み34bを形成すれば、
図9(c)のように、平板状の可撓性シート31の両面に、切り込み34a,34bが形成され、前述の実施例1と同様な作用効果を奏することができる。
【0050】
但し、実施例2においては、前述した
図7(a)に示す所定長さの切り込み付き可撓性シート23のように、長さ方向全体に切り込みを入れることができるのは勿論、その他、自由な位置に切り込みを入れることもできる。
【0051】
図10は、2つの例を表したものであり、先ず、
図10(a)は升目状の切り込みを入れた斜視図を示し、具体的には、平板状の可撓性シート31に対して、4本の水平状切り込み36a,36b,36c,36dと、3本の垂直状切り込み36e,36f,36gとを形成して、表示片等に用いることができる6つの小分割片37a,37b,37c,37d,37e,37fと、外枠37gとを形成している。
そして、これらの6つの小分割片37a,37b,37c,37d,37e,37fと、外枠37gとは、希望に応じて自由に切り離しが可能であり、例えば
図10(b)に示すように、外枠37gと6つの小分割片の接合体とを切り離し、さらに、6つの小分割片の接合体から、一つの小分割片37cを切り離していくようにすることができる。
【0052】
また、
図10(c)の任意形状の分割片の切り込みを入れた斜視図のように、平板状の可撓性シート31に対して、自由な形状、例えば外形が円形状の切り込み38a、三角形状の切り込み38b、四角形状の切り込み38cを形成する。
そして、それらの切り込みによって形成された円形状の分割片39a、三角形状の分割片39b、四角形状の分割片39cは、
図10(d)に示すように、夫々、外枠39dから切り離して使用することができる。
【0053】
なお、本発明は、趣旨を変えない範囲で、各種に変形して実施することができる。
使用する可撓性シートは、切り込みが容易に入れられ、且つ、その切り込みに対して折り曲げる方向に力を加えた際、ノッチ効果が生じて簡単に切り離せれば、どのような材料を使用してもよい。
【0054】
また、可撓性シートの表裏面に、印刷等の表示を施したり、別の材料を積層し、その状態で切り込みを入れるように使用してもよい。
【0055】
図11は、その一例を表したものであり、可撓性シート41の表面には、各種の装飾用の表装材42が貼着され、裏面は粘着剤層43を設け、その上面を剥離紙44で覆う構成の可撓性装飾材料45となっている。
そして、表面からは、表装材42を介して可撓性シート41の中心部に至る上面の切り込み46a,46bが入れられ、裏面からは、剥離紙44、粘着剤層43を介して、下面の切り込み46c,46dが入れられることにより、分割片47a,47b,47cが形成される。