特許第6027574号(P6027574)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6027574切り込み付き可撓性シートの製造方法及び可撓性シート片の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6027574
(24)【登録日】2016年10月21日
(45)【発行日】2016年11月16日
(54)【発明の名称】切り込み付き可撓性シートの製造方法及び可撓性シート片の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B26D 3/08 20060101AFI20161107BHJP
   B26D 3/00 20060101ALI20161107BHJP
   B26D 1/24 20060101ALI20161107BHJP
   H01F 1/08 20060101ALI20161107BHJP
   H01F 1/117 20060101ALI20161107BHJP
   H01F 1/26 20060101ALI20161107BHJP
   H01F 1/375 20060101ALI20161107BHJP
   H01F 7/02 20060101ALI20161107BHJP
   G09F 7/04 20060101ALN20161107BHJP
【FI】
   B26D3/08 Z
   B26D3/00 601A
   B26D1/24 F
   H01F1/08 A
   H01F1/117
   H01F1/26
   H01F1/375
   H01F7/02 B
   !G09F7/04 D
【請求項の数】2
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-107884(P2014-107884)
(22)【出願日】2014年5月26日
(62)【分割の表示】特願2012-101179(P2012-101179)の分割
【原出願日】2012年4月26日
(65)【公開番号】特開2014-208399(P2014-208399A)
(43)【公開日】2014年11月6日
【審査請求日】2014年5月26日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000110893
【氏名又は名称】ニチレイマグネット株式会社
(72)【発明者】
【氏名】前橋 清
(72)【発明者】
【氏名】蛭子 幸明
【審査官】 福島 和幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−243041(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3145375(JP,U)
【文献】 実開平03−110473(JP,U)
【文献】 実開平02−035293(JP,U)
【文献】 実開昭55−089623(JP,U)
【文献】 特開平02−211268(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3110799(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B26D 3/08
B26D 1/24
B26D 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1枚の可撓性磁性シートの上面及び下面の対峙する位置に複数対の上回転刃と下回転刃による切り込みが鋭角状に形成されるように前記上回転刃の刃先と前記下回転刃の刃先とを前記可撓性磁性シートに当接する工程と、
前記上回転刃と前記下回転刃との上下寸法を所定位置に調節する工程と、
前記上回転刃により形成された複数本の連続する切り込みと前記下回転刃によって形成された複数本の連続する切り込みとの間にそれぞれ残留部を有するように前記可撓性磁性シートを加工する工程と、
前記残留部を有する可撓性磁性シートをロール状に巻回する工程とを含む切り込み付き可撓性シートの製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の製造方法で製造した切り込み付き可撓性シートを手作業にて折り曲げて切断して取り出す可撓性シート片の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示片等の切り取りが行いやすくなるよう、マグネットシート等の可撓性磁性シートを加工する切り込み付き可撓性シートの製造方法、及び、この切り込み付き可撓性シートを切断して取り出す可撓性シート片の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、表示片等の分割片を簡単に取り出すことができる可撓性シートとして、その片方の表面からハーフカット、或いは、半切りと称される切り込みを入れておいて、ハサミ等の各種の切断器具を用いることなく、手で切断することが可能な技術が、知られている。
例えば、特許文献1においては、可撓性を有するシート状マグネット(以下、マグネットシート)の表面に合成紙等からなる表示面を形成し、この表示面側からマグネットシートの厚さの中程まで、格子状の切断線案内用の切れ目を入れる構成が、開示されている。
一方、当然のことながら、特許文献2に示されるような、上下に刃物を備えた加工設備を使用し、その上下の刃物によって、可撓性シートから直接的に表示片等を切りだす技術も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平3−110473号公報
【特許文献2】特開2007−30097号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された可撓性シートにおいては、表示片等の分割片の最終的な切断は、切断線案内用の切れ目以下の部分を、ちぎり取る様に実施されることになるので、作業性が好ましくなく、また、その切り口は、刃物の入るところは綺麗に仕上がるが、それ以下の面はむしり取られた状態で露出し、外観上の見栄えが悪いと共に、寸法上も不安定となり、切断して出来た多数の表示片は、整頓する際に不揃いになりやすい不都合を有するものとなっていた。
また、特許文献2のように上下の刃物を用いて可撓性シートを切断する場合は、作業上の安全性確保並びに設備の損傷を起こさないという観点から、上下の刃物の接触が起こらないように行わなければならないので、生産上で、高精度な加工設備が必要になると共に、点検管理も充分行わなければならない、という不都合を有するものとなっていた。
【0005】
そこで本発明は、表示片等の分割片の切断を簡単に行え、しかも、切断面を綺麗に形成させることができると共に、さらに加工設備も高精度を要しなくてよいという利便性の高い、切り込み付き可撓性シートの製造方法及び可撓性シート片の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を検討した結果、材料を単に機械的な作用で切断するのではなく、材料の有する特性を利用することに着目することで成し得たものであり、具体的には、1枚の可撓性磁性シートの上面及び下面の対峙する位置に複数対の上回転刃と下回転刃による切り込みが鋭角状に形成されるように前記上回転刃の刃先と前記下回転刃の刃先とを前記可撓性磁性シートに当接する工程と、前記上回転刃と前記下回転刃との上下寸法を所定位置に調節する工程と、前記上回転刃により形成された複数本の連続する切り込みと前記下回転刃によって形成された複数本の連続する切り込みとの間にそれぞれ残留部を有するように前記可撓性磁性シートを加工する工程と、前記残留部を有する可撓性磁性シートをロール状に巻回する工程とを含む切り込み付き可撓性シートの製造方法である。

【0007】
なお、分割片作製用の切り込みは、2本以上形成されており、任意の分割片作製用の切り込みにて、折り曲げて切断することができるようにするとよい。
この場合には、分割片の幅を、分割片作製用の切り込み単位で大きく切断することができるので、一定の幅の分割片を複数重ねて使用することに比べて利便性が向上する。
【0008】
また、可撓性磁性シート(以下、主として「可撓性シート」という。)はロール状に形成され、回転可能に支持部に保持されると共に、先端部が引き出されて巻き取り部に取付られており、この可撓性シートの引き出し部分に切り込み作製装置を介在させ、可撓性シートの引き出し部分の上の面に切り込みを入れることが可能な上回転刃と、下の面に切り込みを入れることが可能な下回転刃との上下寸法を所定位置に調節した状態で、巻き取り部にて、可撓性シートを巻き取ることにより、分割片作製用の切り込みを形成するようにしても良い。 この構成によれば、切り込み作製装置の、上回転刃の刃先と下回転刃の刃先とが完全に離れているので接触することはなく、各刃の水平方向の取り付け位置の精度は特に神経を使う必要はないので、生産性の観点で好適である。
【0009】
なお、可撓性シートは平板状に形成されたものを使用しても良く、その場合は、可撓性シートの表面並びに裏面に、トムソン刃等によりプレス加工することにより、分割片作製用の切り込みを形成するようにすればよい。
【0010】
本発明に使用する可撓性シートは、硬質磁性材料微粉末を有機高分子エラストマーに練り込んでシート状に形成された状態で着磁が施されているマグネットシートを用いることができる。
【0011】
また、可撓性シートは、軟質磁性材料微粉末を有機高分子エラストマーに練り込んでシート状に形成した強磁性体製シートとしてもよい。
【0012】
さらに、可撓性シートの1面は、粘着剤で覆われ、さらにその粘着剤の露出面は剥離紙で覆われており、これらの粘着剤並びに剥離紙を介在した状態で、分割片作製用の切り込みが形成されている構成で実施すると利便性が向上するので好適である。
また、本発明に係る可撓性シート片の製造方法は、前記本発明に係る切り込み付き可撓性シートの製造方法で製造した切り込み付き可撓性シートを手作業にて折り曲げて切断して取り出すものである
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、表示片や帯状片等の分割片を、手作業にて折り曲げるだけで簡単に切断して取り出すことができる。
【0014】
また、取り出した表示片や帯状の分割片の側面は、上下の面から中心部に向かっては、切り込みにより綺麗に切断され、切り込み間の残留部は、ノッチ効果で切断されるため凹凸の少ない切断面となり、外観が綺麗で、側面間の幅寸法も大きなバラツキは生じない利点がある。
【0015】
また、可撓性シートの上下の面に形成される分割片作製用の切り込み間に残留部を形成する構成のため、分割片作製用の切り込みを形成するための刃物同士の先端は接触することはない。
従って、生産時における安全性が確保ででき、しかも、刃物及びその取り付け精度にも格段の注意を必要としないことから、高精度の設備は不要なため、生産性やコスト上の利点があるという、物品としての観点とは異なる二次的な効果も有している。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明による実施例1の製造方法を説明する模式図の正面図を示す。
図2】本発明による実施例1の製造方法を説明する模式図の平面図を示す。
図3】本発明による実施例1の製造方法を説明する模式図を側面から説明したものであり(a)はY−Z端面図、(b)は(a)の部分拡大端面図を示す。
図4】本発明による実施例1を説明する外観図であり(a)は加工前の斜視図、(b)は加工直後の斜視図、(c)は(b)の両端を切り落とした斜視図、(d)は(c)の先端引き出し状態の斜視図を示す。
図5】本発明による実施例1の分割片の切り取りを説明する部分拡大側面図で(a)は作業前、(b)は作業後を示す。
図6】本発明による実施例1の長い分割片の切り取りを説明する斜視図であり、(a)は1つの分割片、(b)は2つの分割片、(c)は3つの分割片の切り取り状態を示す。
図7】本発明による実施例1の所定長さの切り込み付き可撓性シートにおける使用方法を示す説明図であり(a)は全幅状態、(b)は3つの分割片状態、(c)は2つの分割片状態、(d)は1つの分割片状態を示す。
図8】本発明による実施例1の製造に用いる他の回転刃を表し、(a)は端面図、(b)は部分拡大図を示す。
図9】本発明による実施例2の製造方法を説明した図であり、(a)は加工説明図、(b)は1面に切り込みを入れた状態、(c)は両面に切り込みを入れた状態を示す。
図10】本発明による実施例2を説明する図であり、(a)は升目状の切り込みを入れた斜視図、(b)は(a)の分割片の切り取りを説明する斜視図、(c)は任意形状の分割片の切り込みを入れた斜視図、(d)は(c)の分割片の切り取りを説明する斜視図を示す。
図11】本発明による切り込み付き可撓性シートに使用する材料での、変形例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に使用する可撓性シートは、代表的なものとして、可撓性磁性シートのうちの、硬質磁性材料微粉末を有機高分子エラストマーに練り込んでシート状に形成された状態で着磁が施されているマグネットシートを使用する。
その場合の、硬質磁性材料微粉末としては、バリウムフェライト、ストロンチウムフェライト等のフェライト系磁石材料微粉末、或いは、サマリウム・コバルト系磁石、ネオジウム・鉄・ホウ素系磁石等、希土類磁石材料の微粉末等を使用することができる。
また、有機高分子エラストマーとしては、塩素化ポリエチレン、クロロスルフォン化ポリエチレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・プロピレンゴム、ニトリルゴム、アクリルゴム、クロロプレンゴム等を使用することができる。
【0018】
なお、本発明に使用する可撓性シートとして、可撓性磁性シートのうちの、軟質磁性材料微粉末を有機高分子エラストマーに練り込んでシート状に形成した強磁性体製シートを使用することもできる。
その場合の、軟質磁性材料(高透磁率材料)微粉末としては、公知のセンダスト系(Fe・Al・Si系)パーマロイ系(Ni・Fe系)、アモルファス合金系(Co・Fe・Si系、Co・Zr・Ta系、Fe系等)材料や、純鉄等を使用することができる。
そして、有機高分子エラストマーとしては、塩素化ポリエチレン、クロロスルフォン化ポリエチレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・プロピレンゴム、ニトリルゴム、アクリルゴム、クロロプレンゴム等を使用すればよい。
【0020】
そして、上記の可撓性シートを使った、本発明の切り込み付き可撓性シートは、基本的に、加工前の可撓性シートの表面及び裏面から、上下方向が一致し、かつ、外力を与えないで自然に切断されることがない残留部を確保する状態に、分割片作製用の切り込みを形成する構成となるが、製造方法や設備も関与してくるため、以下、それも交えて詳細に説明する。
【実施例1】
【0021】
図1図8は、本発明の実施例1の切り込み付き可撓性シートを説明するための図及び変形例を示す。
具体的には、図1は製造方法を説明する模式図の正面図、図2は製造方法を説明する模式図の平面図、図3は製造方法の模式図を側面から説明した図で(a)はY−Z端面図、(b)は(a)の部分拡大端面図を示している。
また、図4は実施例1を説明する外観図であり(a)は加工前の斜視図、(b)は加工直後の斜視図、(c)は(b)の両端を切り落とした斜視図、(d)は(c)の先端引き出し状態の斜視図、図5は分割片の切り取りを説明する部分拡大側面図で(a)は作業前、(b)は作業後、図6は長い分割片の切り取りを説明する斜視図で(a)1つの分割片、(b)は2つの分割片、(c)は3つの分割片の切り取り状態を示している。
なお、図7は所定長さの切り込み付き可撓性シートにおける使用方法を示した説明図であり(a)は全幅状態、(b)は3つの分割片状態、(c)は2つの分割片状態、(d)は1つの分割片状態を示しており、図8は他の回転刃を使用した場合の(a)端面図、(b)部分拡大端面図を示している。
【0022】
具体的には、実施例1の切り込み付き可撓性シートに仕上げられる加工前の可撓性シート1は、図4(a)に示すように、紙製等の中心筒1aにロール状に巻き取られており、その厚さ1.5mm程度、幅100mm程度、長さは10m〜15m程度のものを使用する。
【0023】
そして、この可撓性シート1の加工装置2は、製造方法を説明する模式図である図1の正面図、図2の平面図、図3の側面方向に表れる端面図に表わされるように、概略、可撓性シート1を回転可能に取り付ける支持部3、可撓性シート1の先端を取り付けて巻き込むための巻き取り部4、可撓性シート1に後述する切り込みを入れるための切り込み作製装置5で構成されている。
【0024】
この、切り込み作製装置5には、上下方向に対峙して移動可能な上回転装置6及び下回転装置7が備えられ、上回転装置6には、スペーサー8a,8b,8c,8d,8e,8fを介在させて、片面の丸ナイフでなる上回転刃9a,9b,9c,9d,9eが取り付けられる。
一方、下回転装置7には、スペーサー10a,10b,10c,10d,10e,10fを介在させて、片面の丸ナイフでなる下回転刃11a,11b,11c,11d,11eが取り付けられる。
【0025】
なお、各上回転刃並びに各下回転刃は、図3(b)の部分拡大図に示すように、上回転刃の刃先12の垂直面12aと、下回転刃の刃先13の垂直面13aとが一致するように配置される。
【0026】
そして、上回転刃の刃先12の先端12bと、下回転刃の刃先13の先端13bとの刃先間の間隔Aは、後述するような、可撓性シート1に切り込み作業を行っている行程中や、切り込み作業が終わった状態で、剪断方向等に外力を加えない状態で、自然に切断されないような残留部が形成される寸法に設定される。
【0027】
但し、適正な残留部の寸法は、可撓性シート1の材料仕様や、加工時の気温等にも影響されるので、それらの条件に合わせ適宜設定する必要がある。
なお、厚さ1.5mmの汎用のマグネットシートの場合、0.5mm程度が好ましい数値となる。
【0028】
このように残留部の寸法は重要であるので、上回転刃9a,9b,9c,9d,9e同士、及び、下回転刃11a,11b,11c,11d,11e同士は、基本的には同一の外形を有するもの、即ち同一仕様品を使用するのが好ましい構成となる。
【0029】
但し、可撓性シート1の両側面が、形状が不ぞろいであるとか、汚れ等がある場合は、両端の部分が、製品として使えないので切除する必要が生じる。
このような場合には、上回転刃の両サイド9a,9eと、下回転刃の両サイド11a,11eとの刃先間の間隔Aが、接触しない程度に小さくすればよい。
具体的には、上回転刃9a,9e、及び、又は、下回転刃11a,11eのみ、外形の大きな回転刃を使用することで対応することができる。
【0030】
なお、上回転刃9a,9b,9c,9d,9e、並びに、下回転刃11a,11b,11c,11d,11eの配置間隔は、一定としてもよいし、用途に合わせて変化させる等、適宜に選択し実施できる。
【0031】
これまで説明した通り、本実施例における製造方法は、上回転刃の刃先12の先端12bと、下回転刃の刃先13の先端13bとは、加工作業時に接触することはないので、作業が安全で、しかも、均一な品質が確保されるので、生産上好適なものとなっている。
【0032】
以上の様な状況下で、次に、実施例1の切り込み付き可撓性シートの作製方法を具体的に説明する。
【0033】
先ず、準備段階として、加工装置2の切り込み作製装置5における、上回転装置6と下回転装置7との上下方向の間隙を大きく開いておく。
【0034】
次に、加工装置2の支持部3に、可撓性シート1の中心筒1aを回転自在に取り付けた状態で、可撓性シート1の先端部1bを、上記切り込み作製装置5の上回転装置6と下回転装置7との間隙部に通し、さらに、巻き取り部4に回転自在に取り付けられた、紙製等の巻き取り筒1cに、図示しないガムテープ等の適宜の手段で取り付ける。
【0035】
この状態から、可撓性シート1に切り込みを入れて行くことになるが、最初に、切り込み作製装置5の上回転装置6、又は、下回転装置7を上下方向に狭めるように移動させて、上回転装置6に取り付けられた上回転刃9a,9b,9c,9d,9e、及び、下回転装置7に取り付けられた下回転刃11a,11b,11c,11d,11eを、可撓性シート1の引き出し部1dに接触させ、さらに、図3(b)に示すように、上回転刃の刃先12の先端12bと、下回転刃の刃先13の先端13bとを食い込ませ、その間隙が適正な寸法になるまで調整する。
そして、この作業により、可撓性シート1には、上面の切り込み14、下面の切り込み15の起点が形成され、上面の切り込み14の先端16と、下面の切り込み15の先端17との間に、残留部18が形成されることになる。
【0036】
次に、図1に表わすように、加工装置2における巻き取り部4を、矢印の方向に回転させると、支持部3に回転自在に取り付けられているロール状の可撓性シート1は、引き出されるよ回転し、加工装置2の巻き取り部4に巻き取られていく。
【0037】
この時、可撓性シート1の引き出し部1dは、切り込み作製装置5を通過することのより、上回転刃9a,9b,9c,9d,9e、並びに、下回転刃11a,11b,11c,11d,11eを回転させつつ、これらの刃によって、上面及び下面が、切り込まれていくことになる。
具体的には、図2に示すように、上回転刃9a,9b,9c,9d,9eによって、その順に、上面の切り込み14a,14b,14c,14d,14eが形成される。
なお、図2には図示できないが、下回転刃11a,11b,11c,11d,11eによって、下面の切り込みも同様に形成される。(下述の図4(d)参照)
【0038】
以上のようにして、可撓性シート1には、切り込みが形成されていくが、可撓性シート1の引き出し及び切り込み作業は、上述した巻き取り部4の回転力だけではなく、上回転装置6の回転、下回転装置7の回転、支持部3の送り出しの回転も自力回転可能として併用しても良い。
【0039】
そして、切り込み作業が完了すると、図4(b)に示すように、加工直後の切り込み付き可撓性シート19がロール状態で完成する。
なお、外観面には、上面の切り込み14a,14b,14c,14d,14eが形成されており、これらの切り込みにより、分割片20a,20b,20c,20d,20e,20fが形成される。
【0040】
この状態でも、切り込み付き可撓性シートの完成と言える。
ただ、ロールの両端の分割片20a,20fは、幅寸法の変動が大きく、汚れ等も生じやすい傾向にあるので、この説明では、製造過程の参考的な形態として捉え、次の加工を加えたものを、実施例1の切り込み付き可撓性シート21として扱うこととする。
【0041】
具体的には、実施例1の切り込み付き可撓性シート21は、加工直後のロール状の切り込み付き可撓性シート19における両端の分割片20a,20f、並びに、その中心部に位置する巻き取り筒1cを同一端面で切り取り、図4(c)に示すように、所定位置に上面の切り込み14b,14c,14dが入り、所定幅の分割片20b,20c,20d,20eが形成される形態となっている。
なお、図4(d)に示すように、切り込み付き可撓性シート21の先端部を引き出すと判るように、上面の切り込み14b,14c,14dと対応する位置に、下面の切り込み15b,15c,15dも形成される。
【0042】
次に、切り込み付き可撓性シート21に形成された複数の分割片の切り取りについて説明する。
図5は分割片の切り取りを説明するための部分拡大側面図であり、作業前の(a)には、切り込み付き可撓性シート21には、上面の切り込み14の先端16と、下面の切り込み15の先端17とが対峙する状態となっている。
ここで、図5(a)の矢印で示すように、上面の切り込み14を中心として折り曲げるような力を加えると、上面の切り込み14の先端16と、下面の切り込み15の先端17とは、それぞれが鋭角状に形成されているので、その間に形成されている残留部18の部分にはノッチ効果が生じ、軽い力で簡単に、図5(b)に示すような凹凸の少ない切り口22にて切断することができる。
【0043】
このように、本発明における切り込み付き可撓性シート21は、通常は、図4(d)に示すように全分割片が繋がった最大幅状態で使用できるにも拘わらず、各分割片にも簡単に切り取りが可能な特長を有している。
従って、用途に応じて、所望の幅の分割片の切り取りが可能となる。
【0044】
図6は、比較的長い分割片の切り取りを行う状態を示したものであり、図6(a)は1つの分割片20e図6(b)は2つの分割片20d,20e図6(c)は3つの分割片20c,20d,20eの幅の状態で切り出す様子を表していて、夫々、所望の長さまで切り取ったのち、ロールから切断して使用することになる。
【0045】
一方、使用する長さが決まっていて、その状態で幅を変化させようとする場合は、図7に示すように、ロールから切り取った所定長さの切り込み付き可撓性シート23を使用し、図7(a)の4つの分割片23b,23c,23d,23eでなる全幅状態の他に、例えば、図7(b)の3つの分割片23c,23d,23e状態、図7(c)の2つの分割片23d,23e状態、図7(d)の1つの分割片23e状態のように、希望する連続した分割片、或いは1つの分割片を切りだして使用することができる。
【0046】
以上のように、本発明における切り込み付き可撓性シートにおいては、複数の分割片が形成されていて、希望の幅に簡単に、且つ、綺麗な切り口で切り出すことができる。
従って、実際に、この切り込み付き可撓性シートを、壁用等の施工部材として使用した場合は、細幅の可撓性シートのみ使い複数本並べて使用したり、或いは、幅広の可撓性シートから所定幅にナイフ等で切り取って使う等の作業に比べて、格段に作業性が向上することになる。
【0047】
なお、本実施例を作製するための製造方法において使用した、上回転刃及び下回転刃は、片面の丸ナイフで説明したが、これに限る必要はない。
例えば、前述した図3(a)の端面図及び図3(b)の部分拡大図と同様に、図8(a)の端面図及び図8(b)の部分拡大端面図を使って説明すると、上回転刃24a,24b,24c,24d,24e、並びに、下回転刃25a,25b,25c,25d,25eは、両面の丸ナイフを使用し、上回転刃の刃先26と下回転刃の刃先27の位置関係は、同様に配置すればよい。
このように、上回転刃及び下回転刃は、鋭い刃先を有するものであれば、適宜に選択し採用することができる。
【実施例2】
【0048】
実施例1は、可撓性シートに切り込みを入れるのに、概略、ロール状の可撓性シートを使用して上回転刃と下回転刃間に通す方法を説明した。
しかし、可撓性シートに切り込みを入れる方法は、これに限ることなく実施してよいことは云うまでもない。
【0049】
実施例2は、可撓性シートとして平板状のものを使用し、切り込みはプレス方式で入れる構成を示したものである。
図9は、その製造方法の一例を示したものであり、先ず、図9(a)の加工説明図のように、平板状の可撓性シート31の1面に対して、図示しないトムソン機を用いて、トムソン型32に埋め込まれたトムソン刃33を、所定の深さが確保できるようにプレスする。
そうすると、トムソン型32のプレスを解除すれば、図9(b)のように、平板状の可撓性シート31の1面に切り込み34aが形成される。
次いで、平板状の可撓性シート31を裏返して、切り込み34aと同位置に、同様な加工を施して切り込み34bを形成すれば、図9(c)のように、平板状の可撓性シート31の両面に、切り込み34a,34bが形成され、前述の実施例1と同様な作用効果を奏することができる。
【0050】
但し、実施例2においては、前述した図7(a)に示す所定長さの切り込み付き可撓性シート23のように、長さ方向全体に切り込みを入れることができるのは勿論、その他、自由な位置に切り込みを入れることもできる。
【0051】
図10は、2つの例を表したものであり、先ず、図10(a)は升目状の切り込みを入れた斜視図を示し、具体的には、平板状の可撓性シート31に対して、4本の水平状切り込み36a,36b,36c,36dと、3本の垂直状切り込み36e,36f,36gとを形成して、表示片等に用いることができる6つの小分割片37a,37b,37c,37d,37e,37fと、外枠37gとを形成している。
そして、これらの6つの小分割片37a,37b,37c,37d,37e,37fと、外枠37gとは、希望に応じて自由に切り離しが可能であり、例えば図10(b)に示すように、外枠37gと6つの小分割片の接合体とを切り離し、さらに、6つの小分割片の接合体から、一つの小分割片37cを切り離していくようにすることができる。
【0052】
また、図10(c)の任意形状の分割片の切り込みを入れた斜視図のように、平板状の可撓性シート31に対して、自由な形状、例えば外形が円形状の切り込み38a、三角形状の切り込み38b、四角形状の切り込み38cを形成する。
そして、それらの切り込みによって形成された円形状の分割片39a、三角形状の分割片39b、四角形状の分割片39cは、図10(d)に示すように、夫々、外枠39dから切り離して使用することができる。
【0053】
なお、本発明は、趣旨を変えない範囲で、各種に変形して実施することができる。
使用する可撓性シートは、切り込みが容易に入れられ、且つ、その切り込みに対して折り曲げる方向に力を加えた際、ノッチ効果が生じて簡単に切り離せれば、どのような材料を使用してもよい。
【0054】
また、可撓性シートの表裏面に、印刷等の表示を施したり、別の材料を積層し、その状態で切り込みを入れるように使用してもよい。
【0055】
図11は、その一例を表したものであり、可撓性シート41の表面には、各種の装飾用の表装材42が貼着され、裏面は粘着剤層43を設け、その上面を剥離紙44で覆う構成の可撓性装飾材料45となっている。
そして、表面からは、表装材42を介して可撓性シート41の中心部に至る上面の切り込み46a,46bが入れられ、裏面からは、剥離紙44、粘着剤層43を介して、下面の切り込み46c,46dが入れられることにより、分割片47a,47b,47cが形成される。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明による切り込み付き可撓性シートは、1つの可撓性シートを複数に簡単に分離して使用することができる。
そして、数メートルにも及ぶ長尺の物品とすることもできるし、数センチの小幅の物品にも応用できる。
また、材料をマグネット製としたことにより、鉄等の強磁性体製物品に磁気吸着で取り付けることもできるし、粘着剤層を設ければ、特殊な材料以外の多くの物品に貼着させることができる。
従って、形状的には、建築物の壁面等の長い幅の構造物や物品用から、掲示板の表示片等の小型の物品用に至る各種の形態で使用できるし、マグネット製として強磁性体物品を取り付ける用途に使用したり、逆に強磁性体製としてマグネット部材を取り付ける下地部材に使用する場合は、材料幅を選択できるので適正品質の経済的に優れたものとすることができ、家庭用から、産業用の分野まで幅広く使用することができる。
【符号の説明】
【0057】
A 刃先間の間隔
1 可撓性シート
1a 中心筒
1b 先端部
1c 巻き取り筒
1d 引き出し部
2 加工装置
3 支持部
4 巻き取り部
5 切り込み作製装置
6 上回転装置
7 下回転装置
8a、8b、8c、8d、8e、8f スペーサー
9a、9b、9c、9d、9e 上回転刃
10a、10b、10c、10d、10e、10f スペーサー
11a、11b、11c、11d、11e 下回転刃
12 上回転刃の刃先
12a 垂直面
12b 上回転刃の刃先の先端
13 下回転刃の刃先
13a 垂直面
13b 先端
14、14a、14b、14c、14d、14e 上面の切り込み
15、15b、15c、15d 下面の切り込み
16 上面の切り込みの先端
17 下面の切り込みの先端
18 残留部
19 加工直後の切り込み付き可撓性シート
20a、20b、20c、20d、20e、20f 分割片
21 切り込み付き可撓性シート
22 切り口
23 所定長さの切り込み付き可撓性シート
23b、23c、23d、23e 分割片
24a、24b、24c、24d、24e 上回転刃
25a、25b、25c、25d、25e 下回転刃
26 上回転刃の刃先
27 下回転刃の刃先
31 可撓性シート
32 トムソン型
33 トムソン刃
34a、34b 切り込み
36a、36b、36c、36d 水平状切り込み
36e、36f、36g 垂直状切り込み
37a、37b、37c、37d、37e、37f 小分割片
37g 外枠
38a 円形状の切り込み
38b 三角形状の切り込み
38c 四角形状の切り込み
39a 円形状の分割片
39b 三角形状の分割片
39c 四角形状の分割片
39d 外枠
41 可撓性シート
42 表装材
43 粘着剤層
44 剥離紙
45 可撓性装飾材料
46a、46b 上面の切り込み
46c、46d 下面の切り込み
47a、47b、47c 分割片
図1
図2
図3
図4
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図5