特許第6027601号(P6027601)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6027601
(24)【登録日】2016年10月21日
(45)【発行日】2016年11月16日
(54)【発明の名称】ステータディスク
(51)【国際特許分類】
   F04D 19/04 20060101AFI20161107BHJP
【FI】
   F04D19/04 D
   F04D19/04 E
【請求項の数】11
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-250730(P2014-250730)
(22)【出願日】2014年12月11日
(65)【公開番号】特開2015-117699(P2015-117699A)
(43)【公開日】2015年6月25日
【審査請求日】2014年12月11日
(31)【優先権主張番号】10 2013 114 576.0
(32)【優先日】2013年12月19日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】391043675
【氏名又は名称】プファイファー・ヴァキューム・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100173521
【弁理士】
【氏名又は名称】篠原 淳司
(74)【代理人】
【識別番号】100153419
【弁理士】
【氏名又は名称】清田 栄章
(72)【発明者】
【氏名】フロリアン・バーダー
(72)【発明者】
【氏名】ゼンケ・ギルブリヒ
(72)【発明者】
【氏名】ヤン・ホフマン
【審査官】 所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】 登録実用新案第3183571(JP,U)
【文献】 特開2004−353652(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 19/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターボ分子ポンプ(10)の為のステータディスク(26)であって、その際、ステータディスク(26)が、部分リング形状に一つの平面内に延在し、そして内側リング(84)および外側リング(86)を有しており、これらがステータ羽根(88)によって互いに接続されているステータディスク(26)において、
ステータディスク(26)を硬化させる硬化要素(92,98,100)が、内側リング(84)と外側リング(86)の間に設けられており、
硬化要素(92,98,100)が、少なくとも領域的に内側リング(84)に沿っても延在していることを特徴とするステータディスク(26)。
【請求項2】
硬化要素(92,98,100)が、ステータ羽根(88)に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のステータディスク(26)。
【請求項3】
硬化要素が、条溝(98)及び/又は曲げ部(100)によって形成されていることを特徴とする請求項2に記載のステータディスク(26)。
【請求項4】
硬化要素(92,98,100)が、内側および外側リング(84,86)を接続する終端ウェブ(96)に設けられていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のステータディスク(26)。
(26)。
【請求項5】
硬化要素(92,98,100)が、少なくとも領域的に、外側リング(86)に沿っても延在していることを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載のステータディスク(26)。
【請求項6】
別のステータディスク(26)への当接のために設けられるオーバーラップ領域内に設けられる硬化要素(92,98,100)を特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載のステータディスク(26)。
【請求項7】
ステータディスク(26)が、180度よりも大きな角度領域、例えば190度の角度領域を覆うことを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載のステータディスク(26)。
【請求項8】
硬化要素(92,98,100)が、終端ウェブ(96)に、および内側リング(84)に設けられており、かつ全体的または連続的に形成されていることを特徴とする請求項1、および4からのいずれか一項に記載のステータディスク(26)。
【請求項9】
ステータディスク(26)が、二つの終端ウェブ(96)を有し、かつ硬化要素(92,98,100)が、第一の終端ウェブ(96)の領域から、内側リング(84)を介して、第二の終端ウェブ(96)の領域まで延在していることを特徴とする請求項1、および4からのいずれか一項に記載のステータディスク(26)。
【請求項10】
ターボ分子ポンプ(10)の為に設けられたステータディスク(26)を製造するための方法であって、このステータディスク(26)が、部分リング形状に一つの平面内に延在しており、そして内側リング(84)および外側リング(86)を有しており、これらがステータ羽根(88)によって互いに接続されている方法において、
ステータディスク(26)を硬化させるための硬化要素(92,98,100)が、内側リング(84)と外側リング(86)の間に形成され、硬化要素(92,98,100)が、少なくとも領域的に内側リング(84)に沿っても延在していることを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項1からに記載の少なくとも一つのステータディスク(26)を有するターボ分子ポンプ(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ターボ分子ポンプのステータディスクに関する。該ステータディスクは、一平面内に部分リング形状に延在しており、かつ一つの内側リングと一つの外側リングを有する。これら内側リングと外側リングは複数のステータ羽根によって接続されている。
【背景技術】
【0002】
ターボ分子ポンプは、真空の発生のために使用される。これは例えば、電子顕微鏡または質量分析計のためのものである。その際、ガス粒子は、ターボ分子ポンプのローターディスクによって加速され、そしてステータディスクによって好ましい方向に向けられる。これによって真空を発生させる流れが生じる。この目的の為、ローターディスクもステータディスクも、ガス粒子を加速させるまたは他の方向に向ける平面に対して傾斜して立てられた複数の羽根を有している。
【0003】
ステータディスクは、ステータディスクがターボ分子ポンプ内に組み込まれるとき、通常スペーサーリングによって、その外側リングの領域中に固定されている。ステータディスクの内側リングの領域は、しかしながら固定されていない。特に、例えば、真空引きされた空間がターボ分子ポンプを通してオーバーフローする際に発生する可能性のある、ステータディスクの強い機械的負荷の際には、ステータディスクに、ねじりまたはたわみが生じ、これによって隣接するローターディスクと接触するに至る可能性がある。よって、所定の軸方向間隔をステータディスクおよびローターディスクの間に保つ必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】独国特許出願公開第102010052659A1号
【特許文献2】独国特許出願公開第102010052660A1号
【特許文献3】独国特許出願公開第102011108115A1号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、改善された強度を有する、ターボ分子ポンプの為のステータディスクを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は、請求項1に記載の特徴を有するステータディスク、そして特に、ステータディスクを硬化させる少なくとも一つの硬化要素が内側リングと外側リングの間に設けられていることにより解決される。
【0007】
その際、本発明は、ステータディスクのたわみが、例えば真空引きされた空間がオーバーフローする際に、内側リングの領域中で最大であるという知見に基づいている。外側リングの領域では、これと反対に、ステータディスクがスペーサーリングによって挟まれており、そしてそこでたわむことが出来ない。硬化要素を内側リングと外側リングの間に配置することによって、いうならば、スペーサーリングとステータディスクの外側リングが協働することによって、外側リングの領域に引き起こされる強度が、内側リングへと伝達される。換言すると、内側リングと外側リングの間に設けられた硬化要素によって、内側リングと外側リングの間の接続が硬化され、そして内側リングが支持される。このようにして、ステータディスクの軸方向のまげ強度が向上する。
【0008】
よって、硬化要素によって、負荷のもとでの内側リングのたわみが最小とされるので、ステータディスクとローターディスクの間の軸方向の間隔が減少されることが可能である。これによって、結果として、小型のターボ分子ポンプを製造することが可能である。
【0009】
本発明の有利な実施形は、下位の請求項、明細書および図面より見て取れる。
【0010】
有利な実施形に従い、硬化要素はステータ羽根に設けられている。ステータ羽根には、例えば少なくとも一つの独立して形成された硬化要素が取り付けられている、例えば接着されている、または溶接されていることが可能である。代替としてステータ羽根自体が、硬化要素を形成していることも可能である。これは、例えば凹形状または凸形状の湾曲が、設けられていることにより行われる。この湾曲はステータディスクの長さにわたって推移している。
【0011】
有利には、硬化要素は、条溝及び/又は曲げ部によって形成されている。ステータディスクが例えば、打ち抜き曲げ部材(独語でいうStanzbiegeteil)として、特に一体式に薄板から製造されるとき、条溝及び/又は曲げ部の形成は、簡単に製造プロセス中に統合することができ、そして理想的には、一つの打ち抜き曲げステップで製造可能である。条溝に代えて、フランジ縁部(独語でいうBoerdelkante)もまたは硬化要素として設けられることが可能である。
【0012】
代替として、硬化要素は、追加的にもたらされた材料によって形成されることが可能である。これは、例えば接着または溶接によってステータディスクに取り付けられる。
【0013】
特に有利には、硬化要素は、内側リングと外側リングを接続する終端ウェブに設けられる。終端ウェブは、その際、内側リングと外輪がリングの間に延在し、しかしステータ羽根として使用されず、よって、ステータディスクによって定義される平面内に位置している。
【0014】
特に、終端ウェブは、部分リング形状のステータディスクの一方の端部に設けられている。有利には、ステータディスクは、二つの終端ウェブによって半リング形状または半円形状に形成されている。ターボ分子ポンプの組立の際には、一つの完全なディスクを形成するために、二つの半円形状のステータディスクが組合せされる。その際、各二つの終端ウェブが互いに隣接している。
【0015】
硬化された終端ウェブをステータディスクの複数端部に設けることは、高い負荷にさらされる、特に内側リングの複数端部が効果的にたわみに対して保護されるという利点を有する。
【0016】
別の有利な実施形に従い、硬化要素は、少なくとも領域的に内側リングにも沿って延在している。このようにして、内側リング自体もたわみに対して保護される。同時に、内側リングが硬化要素によって厚くされることが可能であり、これによってステータディスクおよび隣接するローターディスクの間の軸方向の間隙が減少するという利点が生じる。減少されたクリアランスによって、アドミタンスが減少され、そしてポンピングすべき分子の逆流が防止される。
【0017】
特に、内側リングに沿って延在する硬化要素は、相並んで配置された二つの条溝によって形成されることが可能である。これによって、ステータディスクの雷文形状の断面または蛇行形状の断面がこの領域に生じる。
【0018】
別の有利な実施形に従い、硬化要素は少なくとも領域的に、外側リングにもそって延在している。ステータディスクは、これによって外側リングの領域においても追加的に硬化されることが可能である。
【0019】
ステータディスクは、半円形状に形成されていることが可能である。つまり180度の角度領域を有している。
【0020】
代替的な実施形に従い、ステータディスクは180度よりも大きな角度領域、例えば190度の角度領域を覆う。ターボ分子ポンプのローター軸を組み立てられた状態で取り囲む二つのステータディスクが、其々190度の角度領域を有して形成されているとき、これらステータディスクは、お互いの方を向いたそれらの端部において、10度の各角度領域にわたって互いに重なり合って位置する、つまりオーバーラップし、これによってステータディスクの追加的な硬化が達成される。
【0021】
ステータディスクの軸方向のまげ強度は、ステータディスクが硬化要素を、別のステータディスクに当接するために設けられたオーバーラップ領域中に有するとき、更に向上する。例えば、オーバーラップ領域は終端ウェブによって形成されることが可能である。ステータディスクの組み立てられた状態で、二つのステータディスクのオーバーラップ領域は、追加的なステータディスクの硬化を生じさせるために、軸方向でみて重なり合って位置する。
【0022】
オーバーラップ領域中の硬化要素は、その上、これらが入り込み合って係合し、そしてステータディスクの位置が互いに一つの平面内で固定するよう形成されていることが可能である。
【0023】
特に有利には、硬化要素は、終端ウェブにも内側リングにも設けられ、そして全体にわたって形成されている。これによって、内側リングに作用する力は、極めて良好に、固定された外側リングによって保持される終端ウェブに伝達されることが可能である。このよういにして、内側リングは更に良好にたわみに対して保護される。
【0024】
同様に有利には、ステータディスクは、二つの終端ウェブを有している。その際、硬化要素は第一の終端ウェブの領域から、内側リングを介して、第二の終端ウェブの領域まで延在している。これによって内側リングに作用する力は、硬化要素によって二つの箇所において外側リングへと伝達されることが可能である。
【0025】
一般的に、上記すべての硬化要素は互いに組合せ可能であり、そして接続可能であり、そして特に全体にわたって形成可能である。
【0026】
本発明は更に、ターボ分子ポンプの為に設けられたステータディスクの製造のための方法を含む。これらステータディスクは部分リング形状に一つの平面内に延在しており、そして内側リングおよび外側リングを有する。これら内側リングおよび外側リングはステータ羽根によって互いに接続されている。この方法においては、ステータディスクを硬化させるための少なくとも一つの硬化要素が内側リングと外側リングの間に形成されている。例えば、一または複数の硬化要素、内側リングおよび外側リング、およびステータディスクの羽根が、一つのそして同一のプロセスステップ中に製造され、そしてこれによって特に経済的に製造されることが可能である。
【0027】
更に本発明は、上記形式の少なくとも一つのステータディスクを有するターボ分子ポンプに関する。これに対して、上述した利点およびステータディスクの発展形は相応して有効である。
【0028】
以下に本発明を、添付の図面を参照しつつ可能な実施形に基づいて説明する。図は以下を示している。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】発明に係るターボ分子ポンプの断面図。
図2a】発明に係るステータディスクの第一の実施形を領域的に斜視図であらわした図。
図2b】同じく上面図で表した図。
図3】発明に係るステータディスクの第二の実施形を上面図であらわした図。
図4】発明に係るステータディスクの第三の実施形を上面図であらわした図。
図5】発明に係るステータディスクの第四の実施形を上面図であらわした図。
図6】二つの隣接するローターディスクの間に置かれた、先行技術に従うステータディスクの配置の断面図。
図7】二つの隣接するローターディスクの間に置かれた発明にかかるステータディスクの配置の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1に示されたターボ分子ポンプ10は、インレットフランジ12によって取り囲まれたポンプインレット14と、ポンプインレット14に至るガスを図1に表されていないポンプアウトレットに搬送するための複数のポンピングステージを有している。ターボ分子ポンプ10のハウジング16内には、回転軸20を中心として回転可能に支承されたローター軸22を有するローター18が設けられている。
【0031】
ポンプ作用の発生のために、ターボ分子ポンプ10は、ローター軸22に固定された複数のローターディスク24と、軸方向でローターディスク24の間に配置されたステータディスク26を有し、ポンプ効率よく互いに直列に接続されたターボ分子式のポンピングステージを有している。複数のステータディスク26は、スペーサーリング28によって、お互い所望の軸方向間隔に保持されている。
【0032】
更に、三つの半径方向で互いに入り込んで配置された、および互いにポンプ効率よく互いに直列に接続されたホルベックポンピングステージが設けられている。ホルベックポンピングステージのローター側の部分は、ローター軸22と接続される一つのローターハブ30と、これによって担持されるシリンダー側面形状のホルベックロータースリーブ32,34を有している。このホルベックロータースリーブは、回転軸22に同軸に向けられており、半径方向で互いに入り込みあって接続されている。更に、二つのシリンダー側面形状のホルベックステータスリーブ36,38が設けられている。これらも同様に回転軸22に同軸に向けられており、および半径方向で互いに入り込み合って接続されている。
【0033】
ホルベックポンピングステージのポンプ作用を発揮する表面は、各ホルベックロータースリーブ32,34とホルベックステータスリーブ36,38の、互いに一つの狭い半径方向のホルベック間隙を形成しつつ向かい合って位置する半径方向の各側面によって形成さている。その際、ポンプ作用を発揮する各表面はなめらかに形成されており、主としてホルベックロータースリーブ32,34のそれと、向かい合って位置するホルベックステータスリーブ36,38のポンプ作用を発揮する表面は、回転軸22を中心としてねじ線形状に回って軸方向に推移する溝を有する構造化部分を有している。この中で、ガスがローター18の回転の際に前方へと押しやられ、これによってポンピングを行われる。
【0034】
ローター軸22の回転可能な支承は、ポンプアウトレットの領域中の転がり支承部40によってと、ポンプインレット14の領域中の永久磁石支承部42によって実現される。
【0035】
永久磁石支承部42は、ローター側の支承半部44とステータ側の支承半部46を有する。これらは、軸方向に互いに積層された永久磁石リング48、50から成る各一つのリング積層部を有している。その際、磁石リング48,50は半径方向の支承間隙52を形成しつつ互いに向き合っている。
【0036】
磁石支承部42は、緊急用または安全用支承部54を設けられている。これは、潤滑なしの転がり支承部として形成されており、そしてターボ分子ポンプ10の通常運転の間は非接触で空転し、そしてローター18がステータに対して半径方向で過剰に移動すると、ローター18のための半径方向のストッパーを形成するために、初めて介入するにいたる。このストッパーは、ローター側の構造のステータ側の構造による衝突を防止する。緊急用支承部54は、これによってローター18の最大の半径方向移動を定める。
【0037】
転がり支承部40の領域には、ローター軸22に一つのすい形のスプラッシュナット56が設けられている。このスプラッシュナットは、転がり支承部40に向かって増加する外直径を有している。スプラッシュナット56は、互いに積層された吸収性の複数ディスク58を有する作動媒体貯蔵部の少なくとも一つのスキマーとなめからな接触状態にある。これらは、作動媒体、例えば転がり支承部40の潤滑剤を入れられている。
【0038】
ターボ分子ポンプ10の運転中、作動媒体は、毛細管効果によって作動媒体貯蔵部からスキマーを介して回転するスプラッシュナット56へと運ばれる。そして遠心力の結果、スプラッシュナットに沿って、スプラッシュナットの大きくなる外直径の方向へ転がり支承部40に向かって搬送される。そこで、例えば潤滑機能を発揮する。
【0039】
ターボ分子ポンプ10は、一つのモーター室60を有している。この中に、ローター軸22が延在している。モーター室60は、ローター軸22の進入の領域中でジーグバーンステージ(独語でいうSiegbahnstufe)62によって、ターボ分子ポンプ10の作動または汲み上げ室(Schoepfraum)に対してシールされている。シーリングガスインレット64は、モーター室60内へのシーリングガスの供給を可能とする。
【0040】
モーター室60内には、駆動モーター66が配置されている。この駆動モーターはローター18の回転的駆動のために使用される。駆動モーター66は、コア70と図1には簡略的にのみ表された複数のコイル72を有するモーターステータ68を有する。これらは、コアの半径方向内側に設けられた、コア70の溝内に固定されている。コア70は、軟磁性の材料からなる、軸方向に互いに積層された薄板ディスクを有する薄板パケットから成る。
【0041】
電機子とも称される、駆動モーター77のアマチャー(独語でいうLaeufer)は、ローター軸22によって形成され、このローター軸は、モーターステータ68を通って延在している。ローター軸22のモーターステータ68を通って延在する部分には、半径方向と外側で永久磁石装置74が固定されている。モーターステータ68と、ローター軸22のモーターステータ68を通って延在する部分の間には、半径方向のモーター間隙76が形成されている。これを介して、モーターステータ68と永久磁石装置74が駆動トルク伝達の為に磁気的に影響を及ぼす。
【0042】
永久磁石装置74は、接着及び/又は収縮及び/又は圧迫によりローター軸22に固定される。永久磁石装置74は、鉄薄板からなるまたは中実の鉄から成る軟磁性のバックキー(Rueckschluss)75aと、永久磁石75bを有している。CFKスリーブまたは特殊鋼スリーブとして形成されているカプセル化部80は、永久磁石装置74をその半径方向外側面において取り囲んでおり、そしてこれをモーター間隙76に対してシールする。ローター軸22には、更にバランスリング78が接着及び/又は収縮及び/又は圧迫により取り付けられている。このバランスリングは、バランスウェイト収容の為のねじ穴を有している。バランスリング78は、永久磁石装置74に軸方向の強制力を伝達しないよう、永久磁石装置74に対する直接の機械的な接続を有していない。
【0043】
制御兼電力供給装置82は、ターボ分子ポンプ10の運転の間、駆動モーター66に電気エネルギーを供給するよう設けられている。
【0044】
図2には、ステータディスク26の第一の実施形が示されている。ステータディスク26は、一つの平面を定め、そして一つの内側リング84および一つの外側リング86を有している。内側リング84と外側リング86の間には、半径方向に複数のステータ羽根88が延在している。これらは其々、ウェブ90を介して内側リング84および外側リング86と接続されている。ステータ羽根88は、それぞれウェブ90の周りを回転し、そしてステータディスク26によって定められる平面に対して傾斜している(図2a)。このためステータ羽根88は、略台形に形成されており、その際、内側リング84と接続される基礎面(独語でいうGrundseite)は、外側リング86と接続される基礎面よりも短く形成されている。
【0045】
ステータ羽根88内には、複数の凸部92が設けられている。これら凸部は、強化要素として使用され、そして特に内側リング84を外側リング86に対して強化する。凸部92は、同様に略台形に形成されており、そして台形の基礎面の領域において、三角形状の移行領域94へと移行する。台形状の凸部92の脚部は、半径方向に推移し、そしてこれに応じて、ステータ羽根88の周囲方向に向けられた縁部に対して同じままの間隔を有する。
【0046】
ステータディスク26は、一体式に形成されており、および打ち抜き折り曲げ成型法(独語でいうStanzbiegeverfahren)によって薄板から製造される。打ち抜き折り曲げ成型法によって、ステータ羽根88の凸部92もまた作られる。
【0047】
ステータディスク26は、180度の角度領域を覆い、そしてこれによって半円形に形成されている(図2b)。ターボ分子ポンプ10内には、一つの完全なディスクを形成するために各二つのステータディスク26が、一つの平面内に配置されている。
【0048】
図3は、ステータディスク26の第二の実施形を示す。このステータディスクは、半円形状または半リング形状に形成されており、そしてこれによって180度の角度領域を覆っている。図3には、例示的に二つのステータ羽根88のみが表されているが、第一の実施形におけるように、別のステータ羽根88が存在している。これは矢印89によって示されている。
【0049】
図3には、その上、ステータディスク26の内側リング84と外側リング86を接続する二つの終端ウェブ96が示されている。これらは、周囲方向におけるステータディスク26の終端部を定義する。終端ウェブ96は、台形状に形成されている。その際、台形の脚部はそれぞれ半径方向に推移している。
【0050】
図3のステータディスク26は、硬化要素を有している。この硬化要素は、条溝98として形成されている。条溝98は、半径方向でみて、終端ウェブ96の略中央で開始しており、そこから半円形状の内側リング84のほうへと延在し、内側リング84に完全に続き、そして他の終端ウェブ96内へと、同様におよそ半分くらいまで入り込む。条溝98は、その際、連続的に形成されており、そしてそのようにして上面図で近似的にギリシャ文字のオメガ(Ω)を形成する。
【0051】
条溝98は、ステータディスク26によって定義される平面から、上に向かって突出しており、そして例えばV字形状、U字形状、長方形、または円形の断面を有している。
【0052】
条溝98は、終端ウェブ96のねじりにも、内側リング84のねじりにも反対に作用し、そしてそのようにして全体のステータディスク26を硬化させる。
【0053】
図4内には、ステータディスク26の第三の実施形が示されている。このステータディスクは、第二の実施形とは、終端ウェブ96が長方形に形成されている点で異なっている。その上、ステータディスク26の硬化の為に使用される条溝98が、終端ウェブ96の一つの中央の領域から出発し、内側リング84の大部分を介しているが、しかし、他の終端ウェブ96に沿ってはいないよう推移する。これによって条溝98は、上面図において略三日月形を形成する。
【0054】
図5は、ステータディスク26の第四の実施形を示す。このステータディスクは、図3に示されたステータディスクとは、終端ウェブ96の半径方向内側の半分におよそ沿って延在し、そして内側リング84に沿って続行し、そしてこれを其々約30度の角度領域にわたって覆う二つの条溝98が設けられている点で異なっている。両方の条溝98は、互いに分離している。
【0055】
図6は、ローター軸22により連結された二つのローターディスク24の間に位置する、先行技術に従うステータディスク26の配置を簡略的に示す。ステータディスク26のローター軸22の方を向いた内側リング84は、ここでは平坦に形成されている。半径方向外側に向かって、平面に対して傾斜して立てられたステータディスク羽根88が、内側リング84に続いている。
【0056】
図7は、図6と異なり、内側リング84に二重式の二つの直角な曲げ部(独語でいうAbkantungen)を有する発明に係るステータディスク26を示す。これら曲げ部はステータディスク26の硬化の為に使用される。断面でみると、内側リング84の雷文形状または蛇行形状の推移が生じる。曲げ部100によって、ステータディスク26と隣接するローターディスク24の間の軸方向のクリアランス102は小さくなる。これによって、ポンピングすべき分子の逆流が妨げられる。これは、アドミタンス(独語でいうLeitwert)を減少させ、そのようにしてターボ分子ポンプ10の効率を向上させる。
【0057】
一般的に、示された様々な硬化要素の実施形は、其々互いに組み合わせることも可能であり、特に、図2のステータ羽根88の凸部92と、図3から5の条溝98は互いに組み合わせられることが可能であるという点、付記する。条溝98に代えて、図7に示されるような曲げ部100も使用されることが可能である。同様に、一つの別の硬化要素が追加的に、または代替的に外側リング86に設けられることが可能である。これは例えば、二つの終端ウェブ96と完全な内側リング84に延在する閉じた周回する条溝の形式である。
【符号の説明】
【0058】
10 ターボ分子ポンプ
12 インレットフランジ
14 ポンプインレット
16 ハウジング
18 ローター
20 回転軸
22 ローター軸
24 ローターディスク
26 ステータディスク
28 スペーサーリング
30 ローターハブ
32 ホルベックロータースリーブ
34 ホルベックロータースリーブ
36, 38 ホルベックステータスリーブ
40 転がり支承部
42 永久磁石支承部
44 ローター側の支承半部
46 ステータ側の支承半部
48 磁石リング
50 磁石リング
52 支承間隙
54 安全用支承部
56 スプラッシュナット
58 吸収性のディスク
60 モーター室
62 ジーグバーンステージ
64 シーリングガスインレット
66 駆動モーター
68 モーターステータ
70 コア
72 コイル
74 永久磁石装置
75a 軟磁性のバックキー
75b 永久磁石
76 モーター間隙
78 バランスリング
80 カプセル化部
82 制御兼電力供給ユニット
84 内側リング
86 外側リング
88 ステータ羽根
89 矢印
90 ウェブ
92 凸部
94 移行領域
96 終端ウェブ
98 条溝
100 曲げ部
102 クラランス
図1
図2a
図2b
図3
図4
図5
図6
図7