(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【0003】
上記文献に記載の装置において、赤外線ヒータは、被乾燥物に赤外線を照射することによって被乾燥物を乾燥させる機能を主として有する。一方、炉体の内部空間に供給される気体は、被乾燥物から蒸発した溶剤を含むガスの温度及び溶剤濃度を、被乾燥物の表面近傍領域においてできるだけ均一にする機能を主として有する。被乾燥物の表面近傍領域におけるガス温度が高いほど、且つ、溶剤濃度が小さいほど、被乾燥物の乾燥速度が速くなる。従って、被乾燥物の表面近傍領域のガス温度及び溶剤濃度が均一になれば、被乾燥物の乾燥速度において局所的なばらつきが生じ難くなり、乾燥後における被乾燥物の変形やクラックの発生が抑制され得る。
【0004】
ところで、上記文献に記載の装置では、炉体の内部空間内にて前記気体が通過する空間の体積が大きいと、被乾燥物の表面近傍領域における「溶剤を含むガスの温度及び溶剤濃度」の調整が困難となる。この結果、被乾燥物の乾燥速度における局所的なばらつきを抑えることが困難となり易い。加えて、必要とされる前記気体の量も大きくなる。従って、前記気体が通過する空間の体積を小さい値に調整することが好ましい、と考えられる。他方、赤外線によって被乾燥物を適正に乾燥する上で、赤外線ヒータと被乾燥物との間の距離(以下、「ヒータ−被乾燥物間距離」とも呼ぶ)には適正値が存在する。従って、ヒータ−被乾燥物間距離を適正値に調整することが好ましい。
【0005】
しかしながら、上記文献に記載の装置では、前記気体が通過する空間であり、且つ、被乾燥物を載せて移動する移動体が配置された空間(=炉体の内部空間)、と同じ空間内に、赤外線ヒータが配置されている。このことに起因して、前記気体が通過する空間の体積と、ヒータ−被乾燥物間距離と、を独立して個別に調整することが困難であった。前記気体が通過する空間の体積と、ヒータ−被乾燥物間距離と、を独立して個別に調整できる乾燥装置の到来が望まれているところである。
【0006】
本発明の目的は、溶剤を含む被乾燥物を乾燥する乾燥装置であって、前記気体が通過する空間の体積と、ヒータ−被乾燥物間距離と、を独立して個別に調整できるものを提供することにある。
【0007】
本発明に係る乾燥装置は、上述と同じ炉体と、上述と同じ移動体と、上述と同じ赤外線ヒータと、を備える。
【0008】
本発明に係る乾燥装置の特徴は、「前記炉体の内部空間のうち前記移動体を含む第1空間と前記赤外線ヒータを含む第2空間とを仕切る隔壁であって、隔壁の一部又は全部が赤外線を透過する材料で構成された隔壁」を備え、前記隔壁で仕切られた前記第1空間に、温度及び湿度が調整された第1気体を供給し、供給された第1気体を前記第1空間から排気すること、にある。ここにおいて、前記第1気体としては、窒素、アルゴン等の不活性ガスを使用することが好適である。
【0009】
これによれば、前記第1気体が通過する空間であり、且つ、被乾燥物を載せて移動する移動体が配置された空間(=第1空間)と、赤外線ヒータが配置される空間(=第2空間)とが、隔壁で仕切られる別々の空間となる。従って、前記第1気体が通過する空間の体積と、ヒータ−被乾燥物間距離と、を独立して個別に調整し易くなる。また、隔壁を設けることによって、第1空間の体積を小さくできるため、被乾燥物の表面近傍領域における「溶剤を含むガスの温度及び溶剤濃度」が調整され易くなる。
【0010】
加えて、赤外線ヒータと被乾燥物との間を仕切る隔壁の一部又は全部が、赤外線を透過する材料で構成される。従って、赤外線ヒータから発せられた赤外線は、この隔壁を透過して被乾燥物に到達し得る。換言すれば、この隔壁の存在によって赤外線ヒータの上述した「被乾燥物を乾燥させる機能」が阻害されることはない。
【0011】
上記本発明に係る乾燥装置においては、前記第2空間内の互いに離れた複数の箇所にて、前記移動体の移動方向に沿って複数の前記赤外線ヒータがそれぞれ配置され、前記隔壁における、前記移動体の移動方向において前記各赤外線ヒータに対応する位置にある複数の第1部分は赤外線を透過する材料で構成され、前記隔壁における、前記移動体の移動方向において隣接する前記赤外線ヒータの間に対応する位置にある複数の第2部分は赤外線を透過しない材料で構成されることが好適である。
【0012】
これによれば、複数の赤外線ヒータを移動体の移動方向に沿って間隔を空けて配置しても、被乾燥物に照射される赤外線の強度を、移動体の移動方向に関して略均一とすることができる(詳細は後述する)。この結果、それぞれの赤外線ヒータのパワーを上げることによって、隣接する赤外線ヒータの間隔を大きくすることができ、赤外線ヒータの数を少なくすることができる。
【0013】
上記本発明に係る乾燥装置においては、前記隔壁の前記各第1部分の赤外線の透過度合を、前記移動体の移動方向に直角の方向(以下、「幅方向」とも呼ぶ)の位置に応じて異ならせる透過度合調整手段を備えることが好適である。
【0014】
被乾燥物の表面近傍領域における「溶剤を含むガスの温度及び溶剤濃度」は、幅方向において不可避的にばらつきを有する。従って、この「ガス温度及び溶剤濃度における幅方向のばらつき」に起因して、被乾燥物の乾燥速度についても、幅方向においてばらつきが発生し得る。他方、被乾燥物に照射される赤外線の強度が大きいほど、被乾燥物の乾燥速度が速くなる。
【0015】
上記構成によれば、「ガス温度及び溶剤濃度における幅方向のばらつき」に起因する「被乾燥物の乾燥速度における幅方向のばらつき」を相殺するように、「被乾燥物に照射される赤外線における幅方向の強度分布」を調整することができる。従って、「ガス温度及び溶剤濃度における幅方向のばらつき」が発生していても、被乾燥物の乾燥速度を、幅方向においてできるだけ均一にすることができる。この結果、乾燥後における被乾燥物の幅方向の厚さをできるだけ均一にすることができる。
【0016】
なお、被乾燥物の厚さが大きいほど、被乾燥物の厚さ方向の収縮量が大きいことに起因して、乾燥速度の差が被乾燥物の厚さのばらつきとしてより顕著に現れ易い。従って、前記透過度合調整手段による上述した「厚さを均一にする効果」は、被乾燥物の厚さが大きいほど大きい、といえる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(構成)
以下、本発明に係る乾燥装置の実施形態について、
図1〜
図4を参照しながら説明する。
図1〜
図4において、上下方向(z軸方向)が鉛直方向に対応し、左右方向(x軸方向)が水平方向に対応する。
【0019】
図1に示すように、この実施形態は、紙面左側から右側へと(x軸正方向側に)水平に平行移動するコンベヤベルト20上に載置された被乾燥物を乾燥して乾燥体を得る乾燥工程を実施する装置である。以下、紙面左右方向(コンベヤベルト20の移動方向、x軸方向)を「長手方向」と呼び、紙面奥行方向(長手方向に直角の方向、y軸方向)を「幅方向」と呼ぶ。
【0020】
被乾燥物としては、典型的には、「セラミックス粉体又は金属粉体、バインダ、及び溶剤を含むスラリー」の成形体であって、長手方向に延びる膜状体が想定される。この被乾燥物がこの実施形態による乾燥工程に供されることによって、被乾燥物内の溶剤が揮発・除去されて被乾燥物が乾燥させられる。乾燥させられた被乾燥物は、その後焼成されて(バインダが揮発・除去されて)、最終的な製品(焼成体)となる。
【0021】
この実施形態は、乾燥工程の前半部に対応する「赤外線乾燥炉」と、乾燥工程の後半部に対応する「熱風乾燥炉」と、を備える。以下、先ず、赤外線乾燥炉の構成について説明する。なお、乾燥工程が「赤外線乾燥炉」のみで構成されてもよい。
【0022】
赤外線乾燥炉は、炉体10を備える。
図1に示すように、炉体10の長手方向の両端部には、搬入口11と搬出口12とがそれぞれ設けられている。長手方向に水平に延びるコンベヤベルト20は、炉体10の内部空間に設けられた複数のガイドロール30によって案内されながら、炉体10の内部空間にて搬入口11から搬出口12に向けて水平に移動可能に構成されている。コンベヤベルト20の移動速度等は、ベルト駆動用コントローラ100と、周知のベルト駆動機構(図示せず)と、によって、調整されるようになっている。
【0023】
図1に示すように、炉体10の内部空間におけるコンベヤベルト20の上方には、複数の赤外線ヒータ40が、長手方向において所定の間隔を空けてそれぞれ配置されている。
図2及び
図3に示すように、各赤外線ヒータ40は棒状を呈している。各赤外線ヒータ40は、それぞれの軸線が幅方向に沿うように配置されている。赤外線ヒータ40から発せられる赤外線の強度や波長等は、赤外線ヒータ用コントローラ200によって調整されるようになっている。赤外線ヒータ40は、種々の波長の赤外線を発生可能であるが、典型的には、主波長が6μm程度以下の赤外線(近赤外線)を発生するようになっている。
【0024】
図1及び
図2に示すように、炉体10内には、コンベヤベルト20を含む空間S1と、赤外線ヒータ40を含む空間S2と、を仕切る隔壁50が、長手方向に水平に延びるように設けられている。
図1〜
図3に示すように、隔壁50は、赤外線(特に、近赤外線)を透過する材料で構成された第1部分51と、赤外線(特に、近赤外線)を透過しない材料で構成された第2部分52と、によって構成される。
【0025】
図1〜
図3に示すように、第2部分52は、長手方向に水平に延びるともに、幅方向(y軸方向)の中央部が上方に向けて矩形状に突出する形状を呈している。第2部分52における矩形状に突出する部分の頂面(長手方向に延びる水平の平面)には、長手方向において各赤外線ヒータ40に対応するそれぞれの位置に、窓(矩形状の開口部)が形成されている。これらの窓を覆うように、矩形の薄板状の第1部分51が、第2部分52の前記頂面上にそれぞれ設けられている。従って、
図2に示すように、各赤外線ヒータ40から発せられた赤外線は、対応する第1部分51を透過して被乾燥物に到達し、被乾燥物を乾燥させ得るようになっている。
【0026】
以上、隔壁50に関して、複数の第1部分51は、長手方向における各赤外線ヒータ40に対応する位置にそれぞれ配置され、複数の第2部分52は、長手方向における隣接する赤外線ヒータ40、40の間に対応する位置にそれぞれ配置されている、といえる。
【0027】
第1部分51の材料としては、石英ガラスが好適である。石英ガラスは、主波長が3.5μm以下の赤外線(近赤外線)を高い透過率で透過する特性を有する。第2部分52の材料としては、ステンレスが好適である。ステンレスは、主波長が6μm程度以下の赤外線(近赤外線)を透過しない特性を有する。また、ステンレスは、赤外線(近赤外線)を一定の割合で吸収する特性を有するため、隔壁50の保温効果も併せ持つ。
【0028】
なお、第2部分52の材料として、アルミ合金も好適である。アルミ合金は、主波長が6μm程度以下の赤外線(近赤外線)を透過しない特性を有するのみならず、ステンレスと比べて赤外線(近赤外線)の吸収率が低い。このため、隔壁50が高温になることを抑制できる。従って、アルミ合金は、比較的低い温度での被乾燥物の乾燥に適している、といえる。
【0029】
なお、この実施例では、
図2に示すように、第2部分52の幅方向の両端部の下面と、コンベヤベルト20の上面の両端部と、が、幅方向において若干オーバーラップしている。これによって、空間S1が更に、「コンベヤベルト20の上側に対応する空間」(第2部分52の幅方向中央部における矩形状に突出する部分と、第1部分51と、コンベヤベルト20と、によって仕切られた空間)と、「コンベヤベルト20の下側に対応する空間」と、に仕切られている。以下、「コンベヤベルト20の上側に対応する空間」を「空間S1」と呼び、「コンベヤベルト20の下側に対応する空間」を特に「空間S3」と呼ぶ。
【0030】
図1に示すように、炉体10の空間S2内における各赤外線ヒータ40の上方には、空気用の複数のノズル60が、長手方向において所定の間隔を空けてそれぞれ配置されている。各ノズル60からは、温度が調整された空気が下方に向けてそれぞれ吐出されるようになっている(細い矢印を参照)。このように吐出された空気が隔壁50に当たることによって、隔壁50の温度が調整されるようになっている。このように吐出された空気は、炉体10の上面に設けられた排気口13を介して外部に排出されるようになっている(細い矢印を参照)。
【0031】
同様に、炉体10の空間S3内には、空気の吸気口14、及び、排気口15が形成されている。吸気口14からは、温度が調整された空気がx軸負方向に向けて吐出されるようになっている(細い矢印を参照)。このように吐出された空気がコンベヤベルト20に当たることによって、コンベヤベルト20の温度が調整されるようになっている。このように吐出された空気は、排気口15を介して外部に排出されるようになっている(細い矢印を参照)。各ノズル60、並びに、吸気口14から吐出される空気の温度、流量等は、空気供給用コントローラ300によって調整されるようになっている。
【0032】
図1に示すように、炉体10の搬入口11の近傍には、窒素ガス(N
2ガス)用のノズル70が配置されている。ノズル70からは、温度及び湿度が調整された窒素ガスが、空間S1の内部に向けてx軸正方向に吐出されるようになっている(太い白矢印を参照)。このように、窒素ガスが空間S1をx軸正方向に流れることによって、「被乾燥物から蒸発した溶剤を含むガス」の温度及び溶剤濃度が、被乾燥物の表面近傍領域においてできるだけ均一とされるようになっている。空間S1を通過した窒素ガスは、搬出口12を介して、後述する炉体80の内部空間S4に排出されるようになっている(太い白矢印を参照)。ノズル70から吐出される窒素ガスの温度、湿度、流量(流速)等は、窒素ガス供給用コントローラ400によって調整されるようになっている。
【0033】
以上、「赤外線乾燥炉」の構成について説明した。次に、「熱風乾燥炉」の構成について説明する。
【0034】
図1に示すように、熱風乾燥炉は、炉体10のx軸正方向側の側面に接続された炉体80を備える。炉体80の内部は、一つの空間S4で構成されている。炉体80の長手方向の両端部には、搬入口として機能する上述した「炉体10の搬出口12」と、搬出口81と、がそれぞれ設けられている。炉体10の搬出口12から移動してきたコンベヤベルト20は、炉体80の空間S4に設けられた複数のガイドロール30によって案内されながら、炉体80の空間S4にて搬入口(=炉体10の搬出口12)から搬出口81に向けて水平に移動可能に構成されている。
【0035】
図1に示すように、炉体80の空間S4内における上方には、空気用の複数のノズル90が、長手方向において所定の間隔を空けてそれぞれ配置されている。各ノズル90からは、高温に調整された空気(熱風)が下方に向けてそれぞれ吐出されるようになっている(細い矢印を参照)。このように吐出された空気(熱風)が被乾燥物に当たることによって、被乾燥物の乾燥がより一層進行するようになっている。このように吐出された空気(熱風)は、炉体80の上面に設けられた排気口82を介して外部に排出されるようになっている(細い矢印を参照)。なお、この排気口82からは、搬出口81から空間S4内に流入してきた窒素ガスも外部に排出されるようになっている(太い白矢印を参照)。以上、「熱風乾燥炉」の構成について説明した。
【0036】
次に、上記のように構成された実施形態の作動について簡単に説明する。この実施形態では、
図2に示すように、コンベヤベルト20の上面に、PETフィルムを介して、長手方向に延びる被乾燥物(典型的には、上述した薄板状のスラリーの成形体)が載置される。PETフィルムが用いられるのは、被乾燥物の取り扱いを容易にするためである。被乾燥物の乾燥完了後、PETフィルムは、被乾燥物から除去される。なお、PETフィルムは、近赤外線を透過する一方で、遠赤外線を吸収する特性を有する。この観点からも、赤外線ヒータ40から照射される赤外線は、近赤外線であることが好適である。
【0037】
被乾燥物が載置されたコンベヤベルト20は、所定の速度をもってx軸正方向に水平に平行移動する。各赤外線ヒータ40からは、赤外線(近赤外線)が所定の強度をもってそれぞれ照射される。照射された各赤外線(近赤外線)は、隔壁50における対応する第1部分51を透過して被乾燥物にそれぞれ到達する。この結果、被乾燥物が乾燥させられる。
【0038】
ノズル70からは、温度及び湿度が調整された窒素ガスが、空間S1の内部に向けてx軸正方向に吐出される。これにより、窒素ガスが空間S1をx軸正方向に流れる。このような空間S1内での窒素ガスの流れによって、「被乾燥物から蒸発した溶剤を含むガス」の温度及び溶剤濃度が、被乾燥物の表面近傍領域においてできるだけ均一とされる。この結果、被乾燥物の乾燥速度において局所的なばらつきが生じ難くなり、乾燥後における被乾燥物の変形やクラックの発生が抑制され得る。上述のように、この作用・効果は、被乾燥物の厚さが大きいほど大きい、といえる。
【0039】
各ノズル60からは、温度が調整された空気(例えば、常温の空気)が空間S2の内部に向けて吐出される。同時に、吸気口14からは、温度が調整された空気(例えば、常温より温度が少し高い空気)が空間S3の内部に向けて吐出される。これらの結果、隔壁50の温度、並びに、コンベヤベルト20の温度(従って、被乾燥物の温度)が、適正な温度にそれぞれ調整・維持される。なお、ノズル60から吐出される空気の温度が吸気口14から吐出される空気の温度より低く設定されているのは、ノズル60から吐出される空気が、空間S2内にて赤外線ヒータ40から照射される赤外線によって若干温められることに基づく。この結果、ノズル60から吐出される空気が隔壁50に到達する際の温度と、吸気口14から吐出される空気がコンベヤベルト20に到達する際の温度と、を略等しくすることができる。
【0040】
このように、「赤外線乾燥炉」内にて、コンベヤベルト20とともに移動していく被乾燥物は、常温より少し高い温度に維持された状態で、且つ、空間S1内の窒素ガスの流れの作用によって乾燥速度の局所的なばらつきが殆どない状態で、赤外線の作用によって乾燥させられていく。この結果、或る程度乾燥が進行し、且つ、膜厚の大きなばらつきやクラックが発生していない状態にある、被乾燥物が得られる。
【0041】
このような被乾燥物が、「赤外線乾燥炉」から「熱風乾燥炉」に移行する。熱風乾燥炉の炉体80内では、各ノズル90から、高温に調整された空気(熱風)が空間S4の内部に向けて吐出される。この結果、「熱風乾燥炉」内にて、コンベヤベルト20とともに移動していく被乾燥物は、吐出された空気(熱風)の作用によって、高温下にて、更に一層乾燥させられる。この結果、被乾燥物が炉体80の搬出口81から搬出される段階では、被乾燥物の乾燥が完了する。即ち、乾燥体が得られる。なお、「赤外線乾燥炉」から搬出された段階では被乾燥物の乾燥が十分に進行しているので、この段階以降にて被乾燥物を高温下に曝しても、膜厚の大きなばらつきやクラックが発生することはない。
【0042】
(作用・効果)
以下、この実施形態の作用・効果について説明する。この実施形態では、「窒素ガスが通過する空間であり、且つ、被乾燥物を載せて移動するコンベヤベルト20が配置された空間」(=空間S1)と、赤外線ヒータ40が配置される空間(=空間S2)とが、隔壁50で仕切られる別々の空間となっている。従って、「窒素ガスが通過する空間S1の体積」と、「ヒータ−被乾燥物間距離」と、を独立して個別に調整し易くなる。また、隔壁50を設けることによって、空間S1の体積を小さくできるため、被乾燥物の表面近傍領域における「溶剤を含むガスの温度及び溶剤濃度」が調整され易くなる。
【0043】
加えて、
図3及び
図4に示すように、隔壁50に関して、複数の第1部分51(赤外線を透過する部分)が、長手方向における各赤外線ヒータ40に対応する位置にそれぞれ配置され、複数の第2部分52(赤外線を透過しない部分)は、長手方向における隣接する赤外線ヒータ40、40の間に対応する位置にそれぞれ配置されている。
【0044】
この結果、
図4に示すように、隣接する赤外線ヒータ40、40の間隔、及び、隔壁50の第1部分51の長手方向の長さを調整することによって、隣接する赤外線ヒータ40、40から照射される赤外線を長手方向においてオーバーラップさせることなく(或いは、赤外線の一部の範囲を長手方向においてオーバーラップさせて)被乾燥物の表面に全域に亘って赤外線を照射することができる。換言すれば、複数の赤外線ヒータ40を長手方向に沿って間隔を空けて配置しても、被乾燥物に照射される赤外線の強度を、長手方向に関して略均一とすることができる。この結果、それぞれの赤外線ヒータ40のパワーを上げることによって、隣接する赤外線ヒータ40の間隔を大きくすることができ、赤外線ヒータ40の数を少なくすることができる。
【0045】
なお、本発明は上記実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。例えば、上記実施形態では、空間S1内を流れるガスとして、窒素ガスが使用されているが、不活性ガスであればよく、例えば、アルゴンであってもよい。
【0046】
また、上記実施形態では、隔壁50が、第1部分51(赤外線を透過する部分)と、第2部分52(赤外線を透過しない部分)とで構成されているが、隔壁50の全てが第1部分51(赤外線を透過する部分)で構成されてもよい。
【0047】
また、上記実施形態では、隔壁50第2部分52の幅方向の両端部の下面と、コンベヤベルト20の上面の両端部と、が、幅方向において若干オーバーラップしていることによって、空間S1が更に、「コンベヤベルト20の上側に対応する空間S1」と、「コンベヤベルト20の下側に対応する空間S3」と、に仕切られているが、空間S1が、「コンベヤベルト20の上側の空間」と「コンベヤベルト20の下側の空間」とが連続する一つの空間であってもよい。
【0048】
また、上記実施形態においては、被乾燥物の表面近傍領域における「溶剤を含むガスの温度及び溶剤濃度」は、空間S1内の幅方向において不可避的にばらつきを有する。従って、この「ガス温度及び溶剤濃度における幅方向のばらつき」に起因して、被乾燥物の乾燥速度についても、幅方向においてばらつきが発生し得る。他方、被乾燥物に照射される赤外線の強度が大きい(小さい)ほど、被乾燥物の乾燥速度が速く(遅く)なる。
【0049】
係る知見に基づき、「被乾燥物に照射される赤外線における幅方向の強度分布」を調整することによって、「ガス温度及び溶剤濃度における幅方向のばらつき」に起因する「被乾燥物の乾燥速度における幅方向のばらつき」を相殺することができる。例えば、「溶剤を含むガス」の溶剤濃度が、空間S1内における幅方向両端部より幅方向中央部の方が大きい場合、被乾燥物の乾燥速度が、幅方向中央部より幅方向両端部の方が大きくなる。この場合、被乾燥物の厚さが、幅方向中央部より幅方向両端部の方が大きくなる傾向がある。
【0050】
このような場合、例えば、
図5に示すように、隔壁50の第1部分51の幅方向の両端部の上面に赤外線(近赤外線)を透過しない遮蔽部材Zを配置することによって、被乾燥物に照射される幅方向両端部の赤外線の強度を、幅方向中央部の赤外線の強度より小さくすることができる。これにより、被乾燥物の乾燥速度を、幅方向においてできるだけ均一にすることができる。この結果、乾燥後における被乾燥物の幅方向の厚さをできるだけ均一にすることができる。
【0051】
図5に示す例では、隔壁50の第1部分51の幅方向の両端部の上面に赤外線(近赤外線)を透過しない遮蔽部材Zを配置しているが、例えば、「溶剤を含むガス」の溶剤濃度が、空間S1内における幅方向両端部より幅方向中央部の方が小さい場合、隔壁50の第1部分51の幅方向の中央部の上面に赤外線(近赤外線)を透過しない遮蔽部材Zを配置することが好適である。
【0052】
また、
図5に示す例では、遮蔽部材Zとして、赤外線(近赤外線)を完全に遮断する部材が使用されているが、遮蔽部材Zとして、赤外線(近赤外線)を若干透過する部材(第1部材51より赤外線(近赤外線)の透過率が小さい部材)が使用されてもよい。
【0053】
加えて、
図5に示す例では、「被乾燥物に照射される赤外線における幅方向の強度分布」を調整するために、隔壁50の第1部分51の上面に遮蔽部材Zが配置されているが、第1部分51の赤外線(近赤外線)の透過率そのものを幅方向について異ならせることによって、「被乾燥物に照射される赤外線における幅方向の強度分布」を調整してもよい。