特許第6027680号(P6027680)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本たばこ産業株式会社の特許一覧

特許6027680天然(L)−メントール精製物を含有するたばこ製品
<>
  • 特許6027680-天然(L)−メントール精製物を含有するたばこ製品 図000007
  • 特許6027680-天然(L)−メントール精製物を含有するたばこ製品 図000008
  • 特許6027680-天然(L)−メントール精製物を含有するたばこ製品 図000009
  • 特許6027680-天然(L)−メントール精製物を含有するたばこ製品 図000010
  • 特許6027680-天然(L)−メントール精製物を含有するたばこ製品 図000011
  • 特許6027680-天然(L)−メントール精製物を含有するたばこ製品 図000012
  • 特許6027680-天然(L)−メントール精製物を含有するたばこ製品 図000013
  • 特許6027680-天然(L)−メントール精製物を含有するたばこ製品 図000014
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6027680
(24)【登録日】2016年10月21日
(45)【発行日】2016年11月16日
(54)【発明の名称】天然(L)−メントール精製物を含有するたばこ製品
(51)【国際特許分類】
   A24B 15/30 20060101AFI20161107BHJP
   A24D 1/04 20060101ALI20161107BHJP
   A24B 13/00 20060101ALI20161107BHJP
   C11B 9/00 20060101ALI20161107BHJP
   G01J 3/50 20060101ALI20161107BHJP
   C07C 35/12 20060101ALN20161107BHJP
【FI】
   A24B15/30
   A24D1/04
   A24B13/00
   C11B9/00 D
   G01J3/50
   !C07C35/12
【請求項の数】5
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-522602(P2015-522602)
(86)(22)【出願日】2014年3月26日
(86)【国際出願番号】JP2014058642
(87)【国際公開番号】WO2014203581
(87)【国際公開日】20141224
【審査請求日】2016年2月3日
(31)【優先権主張番号】特願2013-127965(P2013-127965)
(32)【優先日】2013年6月18日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004569
【氏名又は名称】日本たばこ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082072
【弁理士】
【氏名又は名称】清原 義博
(72)【発明者】
【氏名】秋山 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 百合
(72)【発明者】
【氏名】安田 耕司
(72)【発明者】
【氏名】松村 晋一
【審査官】 仲村 靖
(56)【参考文献】
【文献】 特表2013−523087(JP,A)
【文献】 特開2012−29637(JP,A)
【文献】 特開2013−99346(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0167905(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24B 15/30
A24B 13/00
A24D 1/04
C11B 9/00
G01J 3/50
C07C 35/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(1)乃至(3)の方法によって測定されて彩度が1以下で、清涼感とミント様香気を兼ね備えた天然(L)−メントール精製物を含有することを特徴とするたばこ製品。
(1)精製を経た天然(L)−メントール精製物を加熱融解状態で、減圧蒸留し、減圧蒸留残渣を得る工程。
(2)上記工程(1)で得られた減圧蒸留残渣にエタノールを加え、エタノール溶液を得る工程。
(3)上記工程(2)で得られたエタノール溶液を色差測定サンプルとし、ISO 7742(JIS Z8722)に準じた色差計を用いて彩度を求める工程。
【請求項2】
前記彩度が0.4乃至0.6の範囲内にあることを特徴とする請求項1記載のたばこ製品。
【請求項3】
たばこ刻及び該たばこ刻の周囲を包む巻紙からなる巻部と、フィルター及び該フィルターの周囲を包む巻取紙からなるフィルター部と、前記巻部の少なくとも一部及びフィルター部の周囲を包むことにより前記巻部と前記フィルター部とを接続するチップペーパーとを備えたシガレットであることを特徴とする、請求項1または2に記載のたばこ製品。
【請求項4】
前記天然(L)−メントール精製物が、前記たばこ刻に含有されたことを特徴とする、請求項3記載のたばこ製品。
【請求項5】
前記天然(L)−メントール精製物の減圧蒸留残渣が0.1重量%未満である請求項1記載のたばこ製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天然(L)−メントール精製物を含有するたばこ製品に関し、より詳しくは、粗メントールに活性炭を添加することにより、雑味を除去し清涼感のある喫煙物品用天然(L)−メントール精製物を含有するたばこ製品に関する。
【背景技術】
【0002】
メントールは環式のモノテルペン、アルコールの一種の有機化合物であり、ハッカ臭を持つ、揮発性の無色結晶である。メントールにはいくつかのジアステレオマー、鏡像異性体があり、その内天然(L)−メントールは歯磨き粉や菓子類、口中清涼剤などに多用される他、局所血管拡張作用、皮膚刺激作用等を有するため、医薬品にも用いられる。
【0003】
また、以前よりメントールはたばこの香料として使用されている。原料葉たばこを燃焼すると、それ自身特有の香喫味を発散すると同時に、特有の刺激、青臭みまたは生臭みのような異臭、渋味、苦味のような嫌味も有している。これに対し、甘草、砂糖、蜂蜜、ラム酒、果汁、バニラ等が経験的に使われ、異臭、嫌味を和らげることが行われている。
【0004】
近年たばこの嗜好は多様化する傾向を示し、爽快でかつ豊かな香喫味を有する製品が好まれるようになってきている。香料として香喫味を改善する、いわゆるたばこ香喫味改良剤に含有される成分のうち、特に天然(L)−メントールが大きく貢献している。
【0005】
また、現在流通しているたばこ製品のほとんどがシガレット(紙巻たばこ)だが、他にも紙ではなくたばこ葉で周囲を包んだ葉巻たばこ、着火せずに香りを楽しむ嗅ぎたばこ製品、及び直接たばこの葉を含む混合物を噛むことにより風味を楽しむ噛みたばこ製品が知られている。例えば、北欧ではスヌースと呼ばれる、たばこの粉末の入った小袋を歯茎と上唇の間に挟む嗅ぎたばこ製品が広く使用されており、噛みたばこ製品は野球選手に愛用者が多い。これらのたばこ製品にも香喫味改良剤として天然(L)−メントールが使用されている。
【0006】
メントールとしては天然(L)−メントールおよび合成(L)−メントールが使用されている。合成(L)−メントールは、天然(L)−メントールよりも(L)−メントール純度の高いものが得られるが、原料のミント油に由来する香気成分夾雑物を含まないために、風味の点で天然(L)−メントールには劣る。天然(L)−メントールは、ミント葉等の植物から抽出されることから、夾雑物が含まれており、この夾雑物の含有量が天然(L)−メントールの品質および風味に影響を及ぼす。このため天然(L)−メントールの精製方法について様々な検討がなされている。その一つとして、粗メントールを超臨界二酸化炭素に接触させ、夾雑物を分画抽出除去する方法が挙げられる(例えば、特許文献1参照)。この方法により、不快臭(風味)、苦味成分、雑草様香気、重い雑味物質、樹脂状物質等の成分を取り除くことができる。しかし、この方法は超臨界二酸化炭素を利用することから、高価な装置が必要となり、容易に工業化することが困難である。
【0007】
その他の方法として、粗メントールをアセトニトリルに溶解した後、該溶液を冷却してメントールを晶析する方法がある(例えば、特許文献2参照)。これにより、化学純度99%以上、光学純度99%ee以上の天然(L)−メントールが得られるが、有機溶媒(アセトニトリル)にメントールを溶解するため、実施できる作業環境が限定される。
【0008】
上記したように、特許文献1あるいは特許文献2に開示される技術を用いたとしても、清涼感とミント様香気を兼ね備えた天然(L)−メントール精製物及びこの天然(L)−メントール精製物を含有するたばこ製品を容易にかつ安価で供給することは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第3935987号公報
【特許文献2】特許第5014846号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記した従来技術の問題点を解決すべくなされたものであって、雑味を除去し、清涼感と天然物由来のミント様香気を兼ね備えた天然(L)−メントール精製物を含有するたばこ製品を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に係る発明は、下記(1)乃至(3)の方法によって測定されて彩度が1以下で、清涼感とミント様香気を兼ね備えた天然(L)−メントール精製物を含有することを特徴とするたばこ製品に関する。
(1)精製を経た天然(L)−メントール精製物を加熱融解状態で、減圧蒸留し、減圧蒸留残渣を得る工程。
(2)上記工程(1)で得られた残渣にエタノールを加え、エタノール溶液を調製する工程。
(3)上記工程(2)で得られたエタノール溶液を色差測定サンプルとし、ISO 7724(JIS Z8722)に準じた色差計を用いて彩度を求める工程。
【0012】
請求項2に係る発明は、前記彩度が0.4乃至0.6の範囲内にあることを特徴とする請求項1記載のたばこ製品に関する。
【0013】
請求項3に係る発明は、たばこ刻及び該たばこ刻の周囲を包む巻紙からなる巻部と、フィルター及び該フィルターの周囲を包む巻取紙からなるフィルター部と、前記巻部の少なくとも一部及びフィルター部の周囲を包むことにより前記巻部と前記フィルター部とを接続するチップペーパーとを備えたシガレットであることを特徴とする、請求項1または2に記載のたばこ製品に関する。
【0014】
請求項4に係る発明は、前記天然(L)−メントール精製物が、前記たばこ刻に含有されたことを特徴とする、請求項3記載のたばこ製品に関する。
【0015】
請求項5に係る発明は、前記天然(L)−メントール精製物の減圧蒸留残渣が0.1重量%未満である請求項1記載のたばこ製品に関する。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に係る発明によれば、天然(L)−メントール精製物の減圧蒸留後の残渣にエタノールを加えたエタノール溶液をISO 7742に準じた色差計にて測定することで、その嗜好性に大きな影響を与える夾雑物の存在を確認することができる。この際、彩度が1以下である天然(L)−メントール精製物を、清涼感とミント様香気を兼ね備えた天然(L)−メントール精製物とすることができる。前記天然(L)−メントール精製物をたばこ製品に含有させることで、清涼感とミント様香気を兼ね備えたたばこ製品を得ることができる。
【0017】
請求項2に係る発明によれば、請求項1と同様の方法で天然(L)−メントール精製物を色差計にて評価した時、彩度が0.4乃至0.6の範囲内にある天然(L)−メントール精製物を含有するたばこ製品は、請求項1記載の天然(L)−メントール精製物を含有するたばこ製品より強い清涼感とミント様香気を併せ持つ天然(L)−メントール精製物を含有するたばこ製品とすることができる(表1参照)。
【0018】
請求項3に係る発明によれば、請求項1記載の天然(L)−メントール精製物を、シガレットの一部に含有させることで、清涼感とミント様香気を兼ね備えたシガレットを得ることができる。
【0019】
請求項4に係る発明によれば、請求項1記載の天然(L)−メントール精製物を、たばこ刻に含有させることで、喫煙時に天然(L)メントール精製物が煙中へ移香しやすくすることができ、清涼感とミント様香気を兼ね備えたシガレットを得ることができる。
【0020】
請求項5に係る発明によれば、前記天然(L)−メントール精製物の減圧蒸留残渣が0.1重量%未満であることにより、活性炭に接触させるという比較的容易な工程により夾雑物の少ない清涼感とミント様香気を兼ね備えた天然(L)−メントール精製物を得ることができ、これを含有させることで清涼感とミント様香気を兼ね備えたたばこ製品を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】1種類のフィルターを有するシガレットの概略図である。
図2】2種類のフィルターを有するシガレットの概略図である。
図3】(A)フィルターの中心部に天然(L)−メントール精製物を含有する紐を備えたシガレットの横断面図であり、(B)そのA−A断面図である。
図4】(A)フィルター内の間隙に天然(L)−メントール精製物を含有する破壊性カプセルを備えたシガレットの横断面図であり、(B)フィルター内の間隙に破壊性カプセルを備えたシガレットの前記カプセルを破壊した時の横断面図である。
図5】(A)葉巻たばこの概略図であり、(B)葉巻たばこの横断面図である。
図6】(A)香味吸引パイプの概略図であり、(B)香味吸引パイプの横断面図である。
図7】(A)湿性無煙たばこ製品の概略図であり、(B)そのA−A断面図であり、(C)湿性無煙たばこ製品の使用方法を示した図である。
図8】噛みタバコ製品の使用方法を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る天然(L)−メントール精製物を含有するたばこ製品及びその製造方法並びに評価方法について詳細に説明する。
【0023】
まず、本発明の天然(L)−メントール精製物を含有するたばこ製品について、図を参照して以下に説明する。
【0024】
1.天然(L)−メントール精製物を含有するたばこ製品
本発明のたばこ製品は、下記評価方法によって測定されて彩度が1以下、好ましくは0.4乃至0.6の範囲内にある、清涼感とミント様香気を兼ね備えた天然(L)−メントール精製物を含有する。本発明の天然(L)−メントール精製物を含有するのに好適なシガレットについて、図1から図4を参照して説明する。
【0025】
図1は、1種類のフィルターを有するシガレットの概略図である。
シガレットは、たばこ刻(6)及びたばこ刻(6)の周囲を包む巻紙(5)からなる巻部(2)と、フィルター(7)及びフィルター(7)の周囲を包む巻取紙(3)からなるフィルター部(1)と、巻部(2)の少なくとも一部及びフィルター部(1)の周囲を包むことにより巻部(2)とフィルター部(1)とを接続するチップペーパー(4)とを備える。
たばこ刻(6)は、たばこの葉(黄色種、バーレー種など)の刻、中骨刻、シートたばこの刻、緩和刻がブレンドされたものである。巻紙(5)は原料として亜麻や木材パルプを含み、紙の燃える臭いを押さえ、燃焼速度をたばこ刻とあわせるために炭酸カルシウムを含んでいても良く、助燃剤としてクエン酸塩を含んでいても良い。また、巻紙(5)は空気流入量を調節するために微細な孔を開けたものを使用しても良い。フィルター(7)はアセテート繊維を素材にしたアセテートフィルターが一般的だが、ネオシートやレーヨン、紙などを利用しても良い。巻取紙(3)の材料として、一般的に普通紙が使用されるが、特に限定されない。チップペーパー(4)の材料として、一般的に木材パルプや炭酸カルシウム、酸化チタンが使用されるが、空気流入量を調節するために微細な孔を開けたものを使用しても良い。
この場合、天然(L)−メントール精製物は、たばこ刻(6)及び/またはフィルター(7)に含有させることができる。
【0026】
図2は、2種類のフィルターを有するシガレットの概略図である。
図1の1種類のフィルターを有するシガレットとほぼ同様の構造をしているが、フィルター部(1)は、アセテートフィルター(9)及びチャコールフィルター(10)の2種類のフィルターからなる。また、アセテートフィルター(9)及びチャコールフィルター(10)の周囲を包む素材紙(8)と、アセテートフィルター(9)とチャコールフィルター(10)とを接続する巻取紙(3)とを備える。
チャコールフィルター(10)は、アセテート繊維、ネオシート、レーヨン及び紙などを組み合わせた二重、三重の構造に活性炭を取り込んだものである。素材紙(8)は、巻取紙(3)と同様に、一般的に普通紙が材料として使用されるが、特に限定されない。
この場合も1種類のフィルターを有するシガレットと同様に、天然(L)−メントール精製物は、たばこ刻(6)及び/またはアセテートフィルター(9)及び/またはチャコールフィルター(10)に含有させることができる。
【0027】
図3は、(A)フィルターの中心部に天然(L)−メントール精製物を含有する紐を備えたシガレットの横断面図及び(B)そのA−A断面図である。図1の1種類のフィルターを有するシガレットとほぼ同様の構造をしているが、フィルターのほぼ中心部に位置する紐(11)を備える。
紐(11)は一般的に綿で出来ているが、特に限定されず、これに天然(L)メントール精製物を塗布して使用する。
この場合、天然(L)−メントール精製物は、紐(11)の他にフィルター(7)及び/またはたばこ刻(6)に含有させることができる。
【0028】
図4は、(A)フィルター内の間隙に天然(L)−メントール精製物を含有する破壊性カプセルを備えたシガレットの横断面図及び(B)フィルター内の間隙に破壊性カプセルを備えたシガレットの前記カプセルを破壊した時の横断面図である。図1の1種類のフィルターを有するシガレットとほぼ同様の構造をしているが、フィルター内の間隙に破壊性カプセル(12)を備える。
破壊性カプセル(12)の中には、天然(L)−メントール精製物が充填されており、喫煙前あるいは喫煙中に指で圧力を加えて破壊することで、破壊性カプセル(12)の中の天然(L)−メントール精製物をフィルター(7)へ放出する。破壊性カプセル(12)の膜はゼラチンなどで出来ており、カプセル内には1〜10mgの天然(L)−メントール精製物を含有する。
この場合、天然(L)−メントール精製物は、破壊性カプセル(12)の他にフィルター(7)及び/またはたばこ刻(6)に含有させることができる。また、図4には図示されていないが、図3のようにフィルターの中心部に紐を備え、その紐に天然(L)−メントール精製物を含有させることもできる。
【0029】
また、シガレットの場合、天然(L)−メントール精製物をシガレット包装容器の内側に塗布しても良い。塗布する方法は特に限定されないが、天然(L)−メントール精製物を塗工したアルミ貼り合わせ紙をシガレット包装容器に挿入してもよく、包装容器の内側に直接天然(L)−メントール精製物を塗布してもよい。
シガレットの包装容器の内側に天然(L)−メントール精製物を塗布することで、保管中に天然(L)−メントール精製物をシガレットのたばこ刻(6)及び/又はフィルター(7)に移香させることができる。
【0030】
本発明の天然(L)−メントール精製物を含有させるのに好適な葉巻たばこについて、図5を参照して説明する。
【0031】
図5は、葉巻たばこの(A)概略図及び(B)横断面図である。葉巻たばこは、たばこ葉あるいはたばこ刻を含むフィラー(13)と、任意によりたばこ葉でフィラーの周囲を包むバインダー(14)と、たばこ葉でフィラーまたはバインダーの周囲を包むラッパー(15)を備える。
この場合、天然(L)−メントール精製物をたばこ葉あるいはたばこ刻に含有させることができる。
【0032】
本発明の天然(L)−メントール精製物を含有させるのに好適な嗅ぎたばこ製品について、図6及び図7を参照して説明する。
【0033】
嗅ぎたばこ製品には、スナッフ、香味吸引パイプ、湿性無煙たばこ製品等が含まれる。図6は香味吸引パイプの、図7は湿性無煙たばこ製品の構造及び使用方法を表している。
スナッフは、乾燥したあるいは湿ったたばこの粉末のことであり、乾燥したたばこ粉末を手の甲の親指、人差し指の付け根のくぼみに一つまみほど乗せ、鼻から吸引する。また、湿ったたばこ粉末は歯茎に塗布するのが一般的な嗅ぎたばこの使用方法である。
この場合、天然(L)−メントール精製物は、たばこ粉末に含有させることができる。
【0034】
図6は、嗅ぎたばこ製品である香味吸引パイプの(A)概略図及び(B)横断面図である。香味吸引パイプは、チューブ形状のパイプボディ(16)、パイプボディ(16)の一端に取り外し可能に差し込まれたマウスピース(18)、マウスピース(18)を覆うキャップ(17)、パイプボディ(16)に収容された、交換可能な香味発生カートリッジ(19)及び香味発生カートリッジ(19)に充填されたたばこ刻(6)を備える。
この場合、天然(L)−メントール精製物はカートリッジ(19)内のたばこ刻(6)に含有させることができる。
【0035】
図7は、嗅ぎたばこ製品である、湿性無煙たばこ製品の(A)概略図、(B)A−A断面図、及び(C)湿性無煙たばこ製品(22)の使用方法を示した図である。湿性無煙たばこ製品(22)は、水分を含むたばこ刻(6)、たばこ刻(6)を包む水透過性包装材(21)、及び水透過性包装材(21)を密閉するシール部(20)を備える。
たばこ刻(6)の水分量は20−70%の間であれば良く、包装材として不織フリースが一般的に使用されるが特に限定されず、水分を透過する素材であれば良い。シールの材料も特に限定されない。湿性無煙たばこ製品(22)は、図7(C)に示すように、上唇と歯茎の間に挟んで使用するものである。
この場合、天然(L)−メントール精製物は水分を含むたばこ刻(6)に含有させることができる。
【0036】
本発明の天然(L)−メントール精製物を含有させるのに好適な噛みたばこ製品について、図8を参照して説明する。
【0037】
図8は、噛みたばこ製品(23)の使用方法を示した図である。
噛みたばこ製品(23)には、プラグ、ツイスト、スクラップ、チューインガム等が含まれる。噛みたばこ製品(23)は、図8に示すように直接口の中に入れて噛んで使用するものである。
プラグは、たばこ葉あるいはたばこ刻をシート状に圧縮したものの周囲を上巻葉で包み、再び圧縮したものである。前記たばこ刻のシートは四角形のものが一般的だが、形状は特に限定されない。この場合、天然(L)−メントール精製物は前記たばこ葉、たばこ刻及び/または上巻葉に含有させることができる。
ツイストはたばこ葉を捻り巻きにして上巻き葉で包み、ふたたび捻ってから圧力をかけたものである。この場合、天然(L)−メントール精製物は前記たばこ葉及び/または上巻葉に含有させることができる。
スクラップは、たばこ刻そのものを直接口の中に入れて噛むものである。この場合、天然(L)−メントール精製物は前記たばこ刻に含有させることができる。
チューインガムはたばこ葉あるいはたばこ刻を使用せず、たばこ成分をチューインガムに加工したものである。この場合、天然(L)−メントール精製物はたばこ成分とともにチューインガムに含有させることができる。
【0038】
2.天然(L)−メントール精製物の製造方法
次に、天然(L)−メントール精製物の製造方法について説明する。
本発明に係る粗メントールは、シソ科ハッカ属に属するMentha aquatica、Mentha arvensis、Mentha longifolia、Mentha pulegium、Mentha spicata、Mentha piperita等から水蒸気蒸留等で抽出して得られる。尚、これらの産地や品種等は特に限定されない。これらハッカ属の乾草の葉や地上部から水蒸気蒸留等で抽出した精油から得られた粗メントールを本発明で使用する。
【0039】
粗メントールは(L)−メントール含量が多ければ多いほど良く、望ましくは90%以上であり、その抽出方法は特に限定されない。例えば、粗メントールは、精油を結晶化し、遠心分離して得た天然(L)−メントールでも良く、蒸留、カラムクロマトグラフィー等によりさらに精製されたものであってもよい。
【0040】
<加熱融解工程>
抽出された粗メントールは、活性炭を添加する前に加熱して融解させて、液状粗メントールとする。メントールの融点は42℃付近であることから、加熱温度は45〜100℃、好ましくは55〜60℃とすれば良いが、特に限定されるものではない。
【0041】
<活性炭添加工程>
この液状粗メントールに活性炭を添加する。この時粗メントールの0.1乃至10重量%となる量を添加すれば良く、好ましくは1乃至4重量%である。活性炭添加量が0.1重量%未満であると、粗メントール中の夾雑物を十分に除去することができず、その結果雑味を除去することができないため、好ましくない。また、活性炭添加量が10重量%を超えると、粗メントールの夾雑物を必要以上に除去してしまい、ミント様香気を損ねてしまうため、好ましくない。ミント様香気とは、天然のミントの香りを指す。
【0042】
<撹拌工程>
その後、粗メントールが凝固するのを防ぐために温めながら撹拌し、活性炭に夾雑物を吸着させる。この時、粗メントールを温める温度は50℃から80℃、好ましくは55℃から65℃の範囲内であれば良く、また、撹拌時間は30分〜24時間、好ましくは2〜5時間の範囲内であれば良い。保温手段や撹拌手段は特に限定されない。
【0043】
<活性炭除去工程>
次に、撹拌後の液状メントールをろ過することにより、活性炭を除去する。この際、ろ過の方法や使用する装置は特に限定されず、加圧ろ過機または吸引ろ過機を用いることができる。なお、本実施例では、加圧ろ過機を使用した。
【0044】
<再結晶工程>
得られたろ液を冷却することで再結晶化させる。冷却速度は特に限定されないが、徐冷することが好ましく、常温下で融解容器を放置するなどしてメントール融解溶液の液温を下げるなど、例えば1〜5℃/分程度の温度降下とすれば良い。
【0045】
3.天然(L)−メントール精製物の評価方法
次に、天然(L)−メントール精製物の評価方法について説明する。
再結晶化した天然(L)−メントール精製物の喫味評価を行うため、天然(L)−メントール精製物をたばこに添加する。サンプル間の比較を行うため、一定量のメントール精製物を各サンプルに添加した。喫味評価では清涼感とミント様香気の二つを評価項目とする。清涼感とは喫煙後に口内に残る涼しげな感じを指し、前述の通りミント様香気とは天然のミントの香りを指す。この清涼感とミント様香気を兼ね備えた天然(L)−メントール精製物をたばこに配合すると、嗜好性の高いメントールたばことなる。
【0046】
前記天然(L)−メントール精製物に含まれる夾雑物の量を測定するために、精製を経たメントール精製物を加熱融解し、減圧下で蒸留する。加熱温度は80℃で、2kPa以下で蒸留する。なお、加熱温度は、75〜95℃の範囲であれば良い。これにより得られた残渣にエタノールを10〜30ml加える。より好ましくは20mlである。このエタノール溶液を、色差測定サンプルとする。
【0047】
ISO 7742(JIS Z8722)に準じた色差計を用いて色差測定サンプルのL値を測定し彩度を求めることで、精製度合を評価する。喫味と彩度は相関し、喫味の評価が高いものほど彩度が低い。本発明のたばこ製品には、彩度が1以下の天然(L)−メントール精製物を使用する。
なお、メントール精製物を色差測定サンプルとした場合、差異がほとんどないため喫味と彩度の相関を見出すのは困難であった。これについて、発明者が鋭意検討したところ、精製を経たメントール精製物を加熱融解状態で、減圧蒸留して減圧蒸留残渣を得る。その後に、減圧蒸留残渣にエタノールを加えたエタノール溶液を色差測定サンプルとすることで、喫味と彩度に相関性があることを見出したものである。
【0048】
4.天然(L)−メントール精製物
最後に、本発明の天然(L)−メントール精製物について説明する。
本発明のたばこ製品に含有される天然(L)−メントール精製物は、上記評価方法によって測定した時の彩度が1以下であることを特徴とする。彩度が1以下の天然(L)−メントール精製物は、清涼感とミント様香気を兼ね備えた天然(L)−メントール精製物とすることができ、この天然(L)−メントール精製物をたばこ製品に配合すると嗜好性の高いメントールたばこ製品になる。
【0049】
本発明のたばこ製品に含有される天然(L)−メントール精製物は、(L)−メントール含量に左右されないが、望ましくは90%以上の粗メントールに活性炭を接触させ、ろ過することによって効率的に得ることができる。活性炭により適量の夾雑物を除去することで、清涼感とミント様香気を兼ね備えた天然(L)−メントール精製物を容易に精製することができる。ろ過による活性炭の除去後、再結晶化させることで最終的に天然(L)−メントール精製物を得ることができる。(L)−メントール含量が97%以上であることが好ましく、また、(L)−メントール含量が99%以上だとさらに好ましい。
【0050】
また、前記天然(L)−メントール精製物の減圧蒸留残渣が0.1重量%未満であることが好ましい。このことにより、活性炭に接触させるという比較的容易な工程により夾雑物の少ない清涼感とミント様香気を兼ね備えた天然(L)−メントール精製物を得ることができる。
【実施例】
【0051】
以下、本発明に係る天然(L)−メントール精製物を含有するたばこ製品に関する実施例を示すことにより、本発明の効果をより明確なものとする。但し、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0052】
天然由来の粗メントールを加熱融解し、活性炭を添加し、撹拌した。その後活性炭を除去し、ろ液からメントールを再結晶化させ、天然(L)−メントール精製物を得た。この時、得られた精製物の官能評価を行った。また、メントール精製物を蒸留し、残渣にエタノールを添加した。これを色差測定サンプルとしてL値を測定し、彩度を求めた。
【0053】
(製造例1)
粗メントール500gを加熱融解させ、活性炭(0重量%、1重量%、2重量%、4重量%)を添加した。その後60℃温浴下で、0、2.5、5、15時間撹拌することで、夾雑物を吸着させた。その後0.5μmメンブレンフィルターにて吸引ろ過し、活性炭を除去した。その結果得られたろ液を常温に放置することで冷却し、再結晶化させた。なお、本実施例中の活性炭としては、日本エンバイロケミカルズ社製の精製白鷺(醸造用)を使用した。
次に、天然(L)−メントール精製物を用いたフィルター付きシガレットの作製手順について説明する。まず、得られた天然(L)−メントール精製物を溶媒液中に溶解させ添加液を作製する。溶媒液としては、エタノールを用いた。なお、添加液は天然(L)−メントール以外に他の香料を含むものであってもよいし、溶媒液もエタノールに限られるものではない。また、特に限定されるものではないが、天然(L)−メントールと溶媒液の配合割合は9:1〜5:5であれば良い。その後、作製した添加液をスプレー噴霧やノズル添加などの方法により、たばこ刻(アメリカンブレンド、2香未済)に10,000ppm添加し、フィルター付きシガレットに巻き上げた。また、シガレット中のメントール添加箇所について、たばこ刻以外にもフィルターであっても良く、特に限定されるものではない。製造例2及び3についても同様の手順でシガレットを作製した。
次に、喫味による官能評価について説明する。評価は、14名の訓練された専門評価者が、シガレットを喫煙することで行った。喫味評価では清涼感の強さとミント様香気の良さ強さの二つを評価項目とした。清涼感とミント様香気を兼ね備えた天然(L)−メントール精製物をたばこ製品に配合した場合に、嗜好性が高いたばこ製品ということができる。
また、天然(L)−メントール精製物250gを80℃、2kPa以下で蒸留した。その結果生じた残渣に95%エタノール20mlを添加した。なお、エタノールとしては、95%エタノールを用いたがこれに限られるものではない。これを色差測定サンプルとし、L値を、ISO 7742(JIS Z8722)に準じた色差計ZE−2000(日本電色工業社製)を用いて測定し、彩度を求めた。測定方法としては、透過法を用いた。結果を表1に示す。彩度が1を超えるものをそれぞれ比較例1、2とし、1以下のものをそれぞれ実施例1、2、3、4とした。
なお、彩度は、測定色差計にて測定したLを次式により算出することにより求めることができる。L*、a*、b*(これら3つの値を合わせてL値という)は、それぞれ色の明度(L=0は黒、L=100は白の拡散色)、赤と緑の間の位置(aの負の値は緑寄りで、正の値は赤寄り)、黄色と青の間の位置(bの負の値は青寄り、正の値は黄色寄り)に対応している。
【0054】
【0055】
(製造例2)
粗メントール6,000gを80℃、2kPa以下で蒸留した。重量が3,000gになるまで濃縮したものを夾雑物2倍濃縮品とした。なお、蒸留液の一部は製造例3で使用する。
この夾雑物2倍濃縮品500gを加熱融解させ、活性炭(0重量%、1重量%、2重量%、4重量%)を添加した。その後60℃温浴下で、0、2.5、5、15時間撹拌することで、夾雑物を吸着させた。その後0.5μmメンブレンフィルターにて吸引ろ過し、活性炭を除去した。その結果得られたろ液を常温に放置することで冷却し、再結晶化させた。
得られた天然(L)−メントール精製物製造例1と同様にたばこ刻に10,000ppm添加し、フィルター付きシガレット(アメリカンブレンド、2香未済)に巻き上げた。その後、喫味による官能評価を行った。喫味評価では清涼感の強さとミント様香気の良さ強さの二つを評価項目とした。清涼感とミント様香気を兼ね備えた天然(L)−メントールを、たばこに配合した場合に、嗜好性の高いたばこ製品ということができる。
また、天然(L)−メントール精製物250gを80℃、2kPa以下で蒸留した。その結果生じた残渣に95%エタノール20mlを添加した。これを色差測定サンプルとし、L値を、ISO 7742(JIS Z8722)に準じた色差計ZE2000(日本電色工業社製)を用いて測定し、彩度を求めた。結果を表1に示す。彩度が1を超えるものをそれぞれ比較例3、4、5、6、7、とし、1以下のものを実施例5とした。
【0056】
(製造例3)
製造例2で得た蒸留液の一部である1500gと粗メントール1,500gを混合したものを夾雑物1/2倍濃縮品とした。
この夾雑物1/2倍濃縮品500gを加熱融解させ、活性炭(0重量%、1重量%、2重量%、4重量%)を添加した。その後60℃温浴下で、0、2.5、5、15時間撹拌することで、夾雑物を吸着させた。その後0.5μmメンブレンフィルターにて吸引ろ過し、活性炭を除去した。その結果得られたろ液を常温に放置することで冷却し、再結晶化させた。
得られた天然(L)−メントール精製物を製造例1、2と同様にたばこ刻に10,000ppm添加し、フィルター付きシガレット(アメリカンブレンド、2香未済)に巻き上げた。その後に、喫味による官能評価を行った。喫味評価では清涼感の強さとミント様香気の良さ強さの二つを評価項目とした。清涼感とミント様香気を兼ね備えた天然(L)−メントールを、たばこに配合した場合に、嗜好性の高いたばこ製品ということができる。
また、天然(L)−メントール精製物250gを80℃、2kPa以下で蒸留した。その結果生じた残渣に95%エタノール20mlを添加した。これを色差計測定サンプルとし、L値を、ISO 7724(JIS Z8722)に準じた色差計ZE2000(日本電色工業社製)を用いて測定し、彩度を求めた。結果を表1に示す。彩度が1以下のものを、それぞれ実施例6、7、8、9、10、11とした。
【0057】
【表1】
【0058】
<評価>
訓練された14名のパネラーにより喫煙時のシガレットについて清涼感、ミント様香気の官能試験を行って、10点満点で評価し、それらの平均を以下のように評価した。
・評点8.0以上:A評価(清涼感がとても強く、あるいはミント様香気がとても良く強い)、
・評点7.0以上8.0未満:B評価(清涼感が強く、あるいはミント様香気が良く強い)、
・評点6.0以上7.0未満:C評価(清涼感、あるいはミント様香気がやや弱い)、
・評点6.0未満:D評価(清涼感、あるいはミント様香気が弱い)。
【0059】
表1の「撹拌時間」とは、天然(L)−メントール精製物を加熱融解後、活性炭を添加してから60℃温浴下で撹拌した時間を示す。
【0060】
表1より、一般に活性炭添加量が多いほど喫味評価が清涼感、ミント様香気ともに高いことが分かった。しかし、添加量が夾雑物の量に対して多すぎると、ミント様香気の評価が下がることが示された(実施例11参照)。
【0061】
また、製造例1においては撹拌時間が長いほど清涼感が増すが、製造例2及び3では、撹拌時間による喫味評価の差は確認できなかった。
【0062】
どの実施例においても、彩度が低いほど喫味評価が高い傾向を示した。しかし、彩度が0.31以下になると(実施例11参照)、ミント様香気を損ねてしまう。また、彩度が1以下であれば、清涼感及びミント様香気の評価が比較的高く、彩度が0.4乃至0.6の範囲内にあると、清涼感及びミント様香気の評価がともにAで、非常に高かった。
【0063】
製造例1及び2では、活性炭添加量が多いほどL値が高いが、その差は非常に小さかった。製造例3では、活性炭添加量とL値の相関は見いだせなかった。
【0064】
前記彩度と似た傾向を示し、どの製造例でもb値が低いほど喫味評価が高かった。つまり、天然(L)−メントール精製物に夾雑物が多いと、色差計による評価の際、黄色を呈することがわかった。
【0065】
以上のことから、彩度は喫味評価と相関していることから、この評価方法を用いて彩度を指標とすれば、喫味を官能評価だけでなく、数値で評価することができるといえる。また、一般に活性炭を多く添加するほど喫味評価の高い天然(L)−メントール精製物が得られる。つまり、夾雑物が少ないほど嗜好性の高い天然(L)−メントール精製物といえるが、夾雑物が少なすぎると逆に喫味評価、とりわけミント様香気を損ねてしまうことがわかった。よって、清涼感とミント様香気を兼ね備えた天然(L)−メントール精製物には、微量の夾雑物の存在が必要であると考えられる。そして、この天然(L)−メントール精製物を含有する本発明に係るたばこ製品は、清涼感とミント様香気を両方味わうことができるたばこ製品であるといえる。
【0066】
<残渣中に含まれる金属元素の分析と測定>
次に、活性炭処理により夾雑物が低減除去されているかを確認するため、活性炭処理前の粗メントール及び活性炭処理後のメントール精製物の残渣中に含まれる金属元素の分析及び測定を以下の方法で行った。
【0067】
活性炭処理前の粗メントールと製造例1の実施例4と同じ条件で調製した活性炭処理後のメントール精製物をそれぞれ5000gずつ用意し、これらを60℃にて加熱融解した。その後80℃、2kPa以下で蒸留し、残渣をそれぞれ0.396g、0.829g得た。このサンプルについて、以下の試薬及び計測機器を用い、ICP MSによって元素分析を行った。
【0068】
【表2】
【0069】
【表3】
【0070】
<分析サンプルの調製方法>
得られた残渣の内0.1g〜0.2gをテフロン(登録商標)製の容器に移し、5mlの硝酸溶液を添加した。
さらに1mlのHを添加し、容器を密閉した。この容器をマイクロ波試料分解装置に設置し、150℃下で20分間分解処理をした。
その後容器を冷却し、マイクロ波試料分解装置から取り出した。容器中の残渣を100mlメスフラスコに移し、超純水で100mlまでメスアップし、よく振とうさせた。
この試料溶液を金属元素の分析及び測定に使用した。
【0071】
残渣を添加しないブランクも上記の方法により調製した。
また、検量線を作成するための標準液を多元素標準溶液XVI及び硝酸溶液を用いて調製した。
具体的には、まず多元素標準溶液1mlに0.2%硝酸溶液を加えて100mlにメスアップし、1000ppbの標準原液を調製した。
この標準原液及び1.0%硝酸溶液を用いて1ppb、3ppb、5ppb、10ppb、15ppb、20ppbの標準液を調製した。
【0072】
測定結果は以下の式を用いて濃度(ppm)に換算した。
{(サンプルリード−ブランクリード)×試料溶液の容積}/(残渣の重量g×1000)
結果を表4に示す。
【0073】
【表4】
単位:ppm
【0074】
表4より、活性炭処理を行った場合、金属元素の量が行わなかった場合の1/29〜1/118に減少することがわかった。
つまり、活性炭処理により夾雑物の量が大幅に減少することがわかった。
このことから、活性炭を添加して精製することでメントールから上記鉄、亜鉛、ナトリウム、マグネシウム、アルミニウム等の金属元素を含む夾雑物の大部分を除去することができるといえる。
したがって、本発明の天然(L)−メントール精製物を含有するたばこ製品は、活性炭を添加することで、夾雑物の少ない天然(L)−メントール精製物を含有するたばこ製品を容易にかつ安価に供給できるといえる。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明である天然(L)−メントール精製物を含有するたばこ製品は、シガレット、葉巻たばこ、嗅ぎたばこ製品及び噛みたばこ製品に好適に利用される。
【符号の説明】
【0076】
1 フィルター部
2 巻部
3 巻取紙
4 チップペーパー
5 巻紙
6 たばこ刻
7 フィルター
8 素材紙
9 アセテートフィルター
10 チャコールフィルター
11 紐
12 破壊性カプセル
13 フィラー
14 バインダー
15 ラッパー
16 パイプボディ
17 キャップ
18 マウスピース
19 香味発生カートリッジ
20 シール部
21 水透過性包装材
22 湿性たばこ製品
23 噛みたばこ製品
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8