特許第6027715号(P6027715)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6027715
(24)【登録日】2016年10月21日
(45)【発行日】2016年11月16日
(54)【発明の名称】歩行者エアバッグ装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/36 20110101AFI20161107BHJP
   B60R 21/231 20110101ALI20161107BHJP
【FI】
   B60R21/36
   B60R21/231
【請求項の数】13
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-543448(P2014-543448)
(86)(22)【出願日】2012年11月19日
(65)【公表番号】特表2014-533637(P2014-533637A)
(43)【公表日】2014年12月15日
(86)【国際出願番号】SE2012051273
(87)【国際公開番号】WO2013081528
(87)【国際公開日】20130606
【審査請求日】2014年9月18日
(31)【優先権主張番号】11191124.4
(32)【優先日】2011年11月29日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】503358097
【氏名又は名称】オートリブ ディベロップメント エービー
(74)【代理人】
【識別番号】100098143
【弁理士】
【氏名又は名称】飯塚 雄二
(72)【発明者】
【氏名】リンドバーグ、ケン
(72)【発明者】
【氏名】オーストリング、マーチン
【審査官】 飯島 尚郎
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−509863(JP,A)
【文献】 特開2007−153062(JP,A)
【文献】 特開2010−125996(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/00−21/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のウインドスクリーン(21)上で展開するエアバッグ(1)を有する歩行者エアバッグ装置において、
前記エアバッグ(1)は、前記エアバッグの展開時に前記ウインドスクリーン(21)の少なくとも一部上にわたって、または前記ウインドスクリーン(21)の少なくとも一部を横切って延び、歩行者に面するように膨張・展開する主チャンバ(5)と;複数の副チャンバ(18)とを備え、
前記副チャンバ(18)のそれぞれが、前記エアバッグの展開時に、前記主チャンバ(5)と前記ウインドスクリーン(21)との間でそれぞれの展開位置をとり、それにより、前記主チャンバ(5)を前記ウインドスクリーン(21)から離間させる構成であり、
前記主チャンバ(5)に対して膨張ガスを供給するインフレータ(22)が設けられ、
前記膨張ガスが、前記主チャンバ(5)から前記副チャンバ(18)に流れることを特徴とする歩行者エアバッグ装置。
【請求項2】
前記主チャンバ(5)は、互いに流体連通(30)する第1及び第2の可膨張セル(28,29)を含み、
前記第1及び第2の可膨張セル(28,29)は、各々車両進行方向前方側及び後方側に位置し、
前記インフレータは、前記第1の可膨張セル(28)と流体連通し、
前記各副チャンバ(18)が前記第2の可膨張セル(29)と流体連通(9)状態で設けら、
前記膨張ガスが、前記第1の可膨張セル(28)から第2の可膨張セル(29)を介して前記各副チャンバ(18)に供給されることを特徴とする請求項1に記載の歩行者エアバッグ装置。
【請求項3】
前記副チャンバ(18)の展開位置は、前記車両(20)を横切る横方向で互いに離間される請求項1又は2に記載の歩行者エアバッグ装置。
【請求項4】
前記主チャンバ(5)および前記各副チャンバ(18)が可撓性材料(2,3,10,11,12)から形成され、前記各副チャンバ(18)を形成する材料(10,11,12)が前記主チャンバ(5)を形成する材料(3)に接続される請求項1乃至3の何れか1項に記載の歩行者エアバッグ装置。
【請求項5】
前記可撓性材料(2,3,10,11,12)が基布であり、前記各副チャンバ(18)を形成する基布(10,11,12)が前記主チャンバ(5)を形成する基布(3)に対して縫製によって連結された構造を採ることを特徴とする請求項4に記載の歩行者エアバッグ装置。
【請求項6】
前記副チャンバ(18)が前記主チャンバ(5)と一体に形成される1乃至3の何れか1項に記載の歩行者エアバッグ装置。
【請求項7】
前記エアバッグが基布材料から形成され、前記副チャンバ(18)と前記主チャンバ(5)とが袋織り技術によって一体構造を採ることを特徴とする請求項6に記載の歩行者エアバッグ装置の製造方法。
【請求項8】
前記各副チャンバ(18)の可膨張容積が前記主チャンバ(5)の可膨張容積よりも小さい請求項1乃至7の何れか一項に記載の歩行者エアバッグ装置。
【請求項9】
前記副チャンバ(18)の全体の可膨張容積が前記主チャンバ(5)の可膨張容積よりも小さい請求項1乃至8の何れか一項に記載の歩行者エアバッグ装置。
【請求項10】
前記主チャンバ(5)および前記各副チャンバ(18)が膨張時にほぼ長尺な形態を有し、前記各副チャンバ(18)の展開位置が前記主チャンバ(5)の膨張位置に対してほぼ直交する請求項1乃至9の何れか一項に記載の歩行者エアバッグ装置。
【請求項11】
前記主チャンバ(5)が膨張時にほぼ長尺な弓形の形態を有し、前記各副チャンバ(18)が膨張時にほぼ長尺形態を有し、前記副チャンバ(18)の展開位置はそれぞれ、前記主チャンバ(5)の対応する隣接領域に対してほぼ直交する請求項1乃至10の何れか一項に記載の歩行者エアバッグ装置。
【請求項12】
前記各副チャンバ(18)は、そのほぼ全長にわたって前記主チャンバ(5)に接続される請求項1乃至11の何れか1項に記載の歩行者エアバッグ装置。
【請求項13】
前記各副チャンバ(18)は、それが前記車両(20)の前記ウインドスクリーン(21)へと向かう湾曲した外表面を与える膨張形態を有する請求項1乃至12の何れか一項に記載の歩行者エアバッグ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歩行者エアバッグ装置に関し、特に、ウインドスクリーンを有する自動車両の歩行者エアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車両が歩行者との正面衝突に関与する際には、歩行者の身体が車両のウインドスクリーンに衝突するのが一般的であり、その結果、歩行者が重傷を負う可能性があり、また、車両がかなり破損する可能性がある。これを軽減しようとして、歩行者との衝突が生じている、または生じる可能性が高いことを車両センサが示す場合にウインドスクリーンの中央部分および/または車両の左右のAピラーを覆うように膨張する、いわゆる歩行者エアバッグを自動車両に設けることが提案されてきた。一般に、この一般タイプのエアバッグは、最初は、緊密に折り畳まれおよび/または丸められたパッケージ状態で設けられ、車両のフードまたはボンネットの後部の真下、または、ウインドスクリーンのベースとフードまたはボンネットの後部との間に設けられるカウルの真下に格納される。フードまたはボンネットの後部は、歩行者エアバッグが膨張するための十分な空間をもたせるために、適したエアバッグ、ピストン、または、他の装置によって持ち上げられてもよく、それにより、歩行者エアバッグは、車両のウインドスクリーンおよび隣接するAピラーの少なくとも一部を覆うのに効果的な態様で展開し、その結果、車両のこれらの部分による歩行者の衝撃が和らげられる。あるいは、膨張を始めるにつれてフード持ち上げ機能をそれ自体で果たすように歩行者エアバッグを構成することも可能である。そのような装置は、フードの真下の歩行者エアバッグにセル構造を組み込んでもよく、あるいは、フードまたはボンネットの後部を持ち上げるのに有効な方向で膨張するようにエアバッグを案内するための構造をエアバッグに隣接して備えてもよい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、言うまでもなく、車両のフードまたはボンネットの後部の真下の空間は非常に限られている可能性があり、そのため、歩行者のための適切な保護を確保できる十分に大きいエアバッグを都合良くパッケージングすることが難しい。また、そのような装置内にうまくパッケージングされるエアバッグが大きければ大きいほど、エアバッグを膨張させるために必要なガスの量も多くなる(それにより、大型のインフレータも必要になる)。歩行者エアバッグを膨張させるために大量のガスに依存することは、一般に、ゆっくりとした展開時間をもたらし、そのため、歩行者の負傷を防止する、または減少させるエアバッグの有効性に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0004】
本発明の好ましい目的は、改良された歩行者エアバッグ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、ウインドスクリーンを有する自動車両の歩行者エアバッグ装置が提供され、装置は、膨張ガスを受けるための可膨張容積を有するエアバッグを備えるとともに、エアバッグの前記可膨張容積が、エアバッグの展開時にウインドスクリーンの少なくとも一部上にわたって、またはウインドスクリーンの少なくとも一部を横切って延びるように膨張するべく構成される主チャンバと、複数の副チャンバとを備え、前記副チャンバのそれぞれが、エアバッグの展開時に、主チャンバとウインドスクリーンとの間でそれぞれの展開位置をとり、それにより、主チャンバをウインドスクリーンから離間させるように膨張するべく構成されることを特徴とする。
【0006】
好ましくは、前記副チャンバのそれぞれの展開位置が互いに離間される。
【0007】
好適には、副チャンバの展開位置は、車両を横切る横方向で互いに離間される。
【0008】
都合良く、前記主チャンバおよび前記各副チャンバが可撓性材料から形成され、前記各副チャンバを形成する材料が主チャンバを形成する材料に接続される。
【0009】
好ましくは、前記可撓性材料が基布であり、前記各副チャンバを形成する基布が主チャンバを形成する基布に対して縫い合わされる。
【0010】
好適には、前記副チャンバが主チャンバと一体に形成される。
【0011】
都合良く、エアバッグが基布材料から形成され、副チャンバと主チャンバとが袋織り技術によって一体に形成される。
【0012】
好ましくは、各副チャンバの一部は、主チャンバを画定する可撓性材料のそれぞれの領域によって画定される。
【0013】
好適には、前記各副チャンバが前記主チャンバと流体連通状態で設けられる。
【0014】
好ましくは、前記流体連通は、主チャンバに形成される少なくとも1つの開口によってもたらされる。
【0015】
都合良く、装置は、作動時に所定量の膨張ガスを前記主チャンバ内へと方向付けるようになっているインフレータを更に備え、前記各副チャンバは、主チャンバからの前記膨張ガスの流れによって膨張するようになっている。
【0016】
好ましくは、前記各副チャンバの可膨張容積が前記主チャンバの可膨張容積よりも小さい。
【0017】
好適には、前記副チャンバの全体の可膨張容積が前記主チャンバの可膨張容積よりも小さい。
【0018】
都合良く、前記主チャンバおよび前記各副チャンバが膨張時にほぼ長尺な形態を有し、また、前記各副チャンバの展開位置が主チャンバの膨張位置に対してほぼ直交する。
【0019】
好ましくは、前記主チャンバが膨張時にほぼ長尺な弓形の形態を有し、各副チャンバが膨張時にほぼ長尺形態を有し、副チャンバの展開位置はそれぞれ、主チャンバの対応する隣接領域に対してほぼ直交する。
【0020】
好適には、前記各副チャンバは、そのほぼ全長にわたって主チャンバに接続される。
【0021】
都合良く、前記各副チャンバは、それが車両のウインドスクリーンへと向かう湾曲した外表面を与える膨張形態を有する。
【0022】
好ましくは、前記主チャンバは、互いに流体連通する複数の可膨張セルへと分割され、前記各副チャンバが前記セルのうちの少なくとも1つと流体連通状態で設けられる。
【0023】
本発明を更に容易に理解できるように、また、本発明の更なる特徴が分かるように、ここで、添付図面を参照して、本発明の実施形態を一例として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】可撓性材料の2つの重ね合わせシートを例示する、本発明を具現化する歩行者エアバッグの製造における初期段階を示す平面図である。
図2】主可膨張チャンバを画定するためにそれらの外周縁にわたって接続されるシートを示す、図1の図にほぼ対応する図である。
図3】エアバッグの構成において使用される可撓性材料の更なる断片を示す平面図である。
図4】エアバッグの他の部分を形成するために互いに接続される図3に例示される基布の断片を示す斜視図である。
図5】エアバッグのそれぞれの副可膨張チャンバを画定するために、図2に例示される主可膨張チャンバに接続される図4に例示されるタイプの多くの部分を示す斜視図である。
図6】自動車両のウインドスクリーンを横切る展開位置にある図5のエアバッグを示す斜視図である。
図7】車両のウインドスクリーンに対する膨張されたエアバッグの断面形態を示す、図6の線VII−VIIに沿う断面図である。
図8図5の斜視図に類似するが、本発明を具現化するエアバッグの別の形態を示す斜視図である。
図9】後方下側から見たエアバッグを示す、図8に例示されるエアバッグの斜視図である。
図10】エアバッグの断面形態を示す、図8の線X−Xに沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
最初に図1から図5を参照して、本発明に係る簡単な形状の歩行者エアバッグの構成および結果として得られる形態について説明する。
【0026】
図1は、歩行者エアバッグ1を形成する可撓性材料の一対のほぼ同一のシート2,3を示す。シート2,3は、織布材料から形成されるのが好ましく、また、図示の実施形態では、いずれもほぼ長方形である。シート2,3は、図1では、互いに重ね合わされる関係を成して示される。図2に示されるように、2つのシート2,3は、膨張ガスを受けるための主可膨張チャンバ5をシート間に画定するために、それらの外周縁のほぼ全範囲に沿って外周縫い目4により相互に接続される。主チャンバ5は、長尺であり、ほぼ長方形である。
【0027】
なお、各シート2,3には、その長い辺のうちの一方に沿うほぼ中央位置に、外側に突出するタブ6が設けられる。2つのタブ6は、シートが重ね合わされるときに位置合わせされ、また、2つのシートを接続する外周縫い目4は、位置合わせされたタブ6の一端部を起点として、長方形シートの外周にわたって延び、位置合わせされたタブ6の反対側の端部で終端する。したがって、これらのタブ6は、それらの長さに沿って接続されずに協働してエアバッグに首部7を形成し、首部は、エアバッグへのガス入口開口8を画定する。首部7は、ガス発生器などのインフレータに対して周知の態様で取り付けられるようになっており、それにより、インフレータの作動時、大量の膨張ガスが主可膨張チャンバ5の内容積中へと方向付けられ、その結果、エアバッグ1が膨張する。
【0028】
しかしながら、図1および図2に示される2つの基布シートのうちの下側のシート3に複数の開口9が設けられることに留意すべきである。これらの開口9はシート3の長さに沿って互いに離間され、また、各開口はそれぞれのガス流れポートを形成する。ガス流れポートの目的については以下で更に詳しく説明する。
【0029】
ここで、図3を考慮すべく参照すると、副可膨張チャンバをエアバッグ1に形成するために使用される可撓性材料の3つの断片10,11,12が示される。好ましい実施形態において、3つの断片10,11,12は、エアバッグの主チャンバ5を画定するために使用される2つのシート2,3と同じタイプの織布から形成される。なお、基布の断片のうちの2つの断片10,11はほぼn形状またはほぼu形状であり、したがって、各断片は、比較的短い直線縁部13と、比較的長い弓形縁部14とを有する。基布の他の断片12は、形状がほぼ長方形であり、したがって、一対の比較的短い縁部15と、一対の比較的長い縁部16とを有する。長方形の基布片12の短い縁部15は、長さが他の2つの基布片10,11の弓形縁部14にほぼ等しい。
【0030】
図4に示されるように、長方形の基布片12のそれぞれの短い縁部15は、小さい方の基布片10,11のうちの対応する一方によって各端部が閉じられる長尺な上端開放チャネル17を形成するために、他の断片10,11のそれぞれの弓形縁部14に対してその長さに沿って接続される。小さい方の断片10,11のそれぞれの弓形縁部14と長方形断片の短い縁部15との相互接続により、チャネル17の下面は弓形である。
【0031】
図面の図1から図7に示される実施形態では、4つのほぼ同一の上端開放基布チャネル17が前述した態様で形成される。
【0032】
ここで、図5を考慮すべく参照すると、図2の主可膨張チャンバ5が斜視図で示される。図示のように、4つの上端開放チャネル17は、互いに離間されたほぼ平行な関係を成して主チャンバ5の真下に配置される。特に、後側シート3を貫通して形成されるそれぞれの開口9を覆うように各チャネル17が主チャンバの後側シート3に当接して位置される状態で、チャネルが主チャンバ5の長さに沿って離間される。この場合、各チャネル17は、長い縁部16および短い縁部13が例えば縫い合わせによって後側シート3に接続される。
【0033】
したがって、前述したように、また、図5に示されるように、各チャネル17が主チャンバ5の後側シート3に接続されると、チャネル17は、後側シート3のそれぞれの領域と協働してそれぞれの副チャンバ18を画定することが分かる。後側シート3に形成される開口9はそれぞれ、主チャンバ5と副チャンバ18との間に流れポートを形成し、したがって、主チャンバ5の可膨張容積と副チャンバ18との間に流体連通をもたらす。
【0034】
エアバッグ1は、最初は、車両のウインドスクリーン21の直ぐ前方の位置で、自動車両20のフードまたはボンネット19の後部の下側において緊密に詰め込まれたパッケージ(図示せず)の状態で設けられる。特に、エアバッグ1は、その首部7および関連する入口開口8を介して、フードまたはボンネット8の後部の真下に装着されるガス発生器などのインフレータ22に流体接続される。
【0035】
図6および図7は、前述した実施形態に係る歩行者エアバッグ1が取り付けられた自動車両20を例示しており、インフレータ22の作動後の膨張状態のエアバッグ1を示す。フードまたはボンネット19の後部は、歩行者エアバッグ1が膨張するための十分な空間をもたせるために、例えば他のエアバッグ、ピストン、または、他の持ち上げ装置によって持ち上げられ、それにより、歩行者エアバッグ1は、車両のウインドスクリーン21および隣接するAピラー23の少なくとも一部を覆うのに効果的な態様で展開し、その結果、車両のこれらの部分による歩行者の衝撃が和らげられる。
【0036】
特に、図7を考慮すると、インフレータ22の初期作動時に、矢印24により概略的に示されるように、エアバッグの主要な前後の基布シート2,3間に画定される主チャンバ5内へと大量の膨張ガスが首部7を通じて高速で方向付けられることに留意すべきである。ガスのこの流れは、エアバッグ1の主チャンバ5を急速に膨張させるのに役立ち、それにより、図6に示されるように、エアバッグ1が車両20のウインドスクリーン21をほぼ横切って延びるようにその初期のパッケージング形態から素早く展開することが確保される。
【0037】
主チャンバ5がほぼ完全な膨張に達すると、矢印25により概略的に示されるように、膨張ガスの二次的な流れが、主チャンバ5の後側シート3にある流れポート9を通じて、したがって副チャンバ18内へと起こり、それにより、図5から図7に示されるように副チャンバ18がそれらの長尺な膨張形態をとるように膨張される。
【0038】
特に図6に示されるように、副チャンバ18は、それらの膨張された展開位置では、車両を横切る横方向で互いに離間される。とりわけ、副チャンバ18の展開位置が互いにほぼ平行で且つ主チャンバ5の長さに対して直交する。
【0039】
また、図7に示されるように、副チャンバ18は、エアバッグ1の主チャンバ5と車両のウインドスクリーン21との間で展開位置をとるように膨張し、したがって、主チャンバ5の後側シート3をウインドスクリーンから離間させて、主チャンバ5とウインドスクリーンとの間にキャビティ26を形成するのに役立ち、各キャビティ26は隣接する副チャンバ18間に形成される。各副チャンバ18の湾曲した下面は、車両のウインドスクリーンまたは隣接する構造体に当接するように配置される。各副チャンバ18は、その膨張形態では、主チャンバ5をウインドスクリーンから離間させるのに効果的な「フェンダー」に相当すると考えることができ、それにより、主チャンバの緩衝特性が向上される。
【0040】
隣接する副チャンバ18間のキャビティ26によってエアバッグの主チャンバ5が車両のウインドスクリーン21から離間される前述した膨張特性は、エアバッグ1に衝突する歩行者の頭部に与えられる保護をかなり向上させることが分かってきた。保護のレベルにおけるこの向上は、エアバッグ全体の所定の全可膨張容積にわたってエネルギーをエアバッグ1により吸収できる距離の増大によってもたらされると考えられる。エアバッグの展開時に膨張してエアバッグの大きな主チャンバ5をウインドスクリーン21から離間させる「フェンダー」を形成する副チャンバ18を設けると、バッグに衝突する歩行者の頭部または胴体に与えられる衝撃保護のレベルの低下を何ら伴うことなく、エアバッグ1全体の全可膨張容積を従来技術の装置と比べて減少させることができる。
【0041】
特定の実施形態に関連して本発明を前述してきたが、特許請求の範囲に記載される発明の範囲から逸脱することなく、エアバッグ装置に対して様々な修正または変更を行なうことができることは言うまでもない。例えば、図1から図7に示される実施形態は、互いに縫い合わされた後に主チャンバ5の後側シート3に対しても縫い合わされる基布の別個の断片10,11,12から形成される副チャンバ18を備えるように前述されたが、本発明の変形では、副チャンバ18をそれぞれ主チャンバ5と一体に形成できることが想起される。例えば、主チャンバおよび副チャンバをそれ自体公知のいわゆる「袋織り」技術によって同時に織ることができることが提案される。そのような装置では、副チャンバ18を画定する基布片が主チャンバ5を画定する基布シートと同時に織られることが想起され、その場合、断片およびシートを形成する縦糸および横糸は、副チャンバ18と主チャンバ5との間に一体の相互接続する縫い目を形成するように選択された領域で織り合わされる。
【0042】
図8から図10は、多くの点で図1から図7に示される前述した簡単な装置に類似する本発明に係るエアバッグ実施形態を概略的に示す。図8から図10の装置と図1から図7の装置との間の主な違いは、図8から図10に示される装置がより複雑に形成された主チャンバ5を有するという点である。特に、主チャンバ5が図8の上側から見てほぼ弓形の形態を有する。また、この改変された実施形態では、全部で6個の副チャンバ18が設けられ、この場合、副チャンバ18は、図示のようにそれらの長尺な膨張形態においてもはや互いに平行でない。特に、副チャンバ18は、それらの膨張位置では、それらがインフレータ22(この装置では、主チャンバ5内に設けられることが提案される)から離れて後方向でエアバッグ1の横軸27(展開時に車両の縦軸とほぼ一致する)へ向けて収束するように互いに対して配置される。それにもかかわらず、主チャンバ5の弓形の形態に起因して、各副チャンバ18は、依然として、それが取り付けられ、または形成する長尺な主チャンバ5の対応する部分に対してほぼ直交する。
【0043】
図8から図10の装置と図1から図7の装置との間の他の主な違いは、図8から図10の装置では、図10の断面図に最も明確に示されるように、主チャンバ5が複数の可膨張セルへと分割されるという点である。図示の特定の装置において、主チャンバ5は、2つのそのようなセル、すなわち、前方に位置されるセル28と後方に位置されるセル29とに分割される。2つのセルは、それぞれがほぼ長尺であり、また、両方のセルが展開時に自動車両のウインドスクリーンを横切ってほぼ横方向に延びるように互いに接続され、または(例えば、「袋織り」技術によって)互いに一体形成される。2つのセル28,29は、例えば主チャンバのかなりの長さにわたって延びることができる狭い流路30を介して互いに流体連通した状態で設けられる。なお、この装置において、副チャンバ18はそれぞれ、後方へ膨張できるセル29の下面の対応する流れポート9を介して主チャンバ5と流体連通状態で設けられる。
【0044】
他の点では、図8から図10の改変された装置は、特に主チャンバと自動車両のウインドスクリーンとの間でそれぞれの展開位置をとることにより主チャンバをウインドスクリーンから離間させるような副チャンバ18の膨張に関して、図1から図7の装置と同様の態様で動作する。
【0045】
用語「備える」および「備えている」およびその変形は、この明細書および特許請求の範囲において使用される際には、指定された特徴、ステップ、または、整数が含まれることを意味する。これらの用語は、他の特徴、ステップ、または、整数の存在を排除するように解釈されるべきでない。
【0046】
前述した説明または以下の特許請求の範囲または添付図面に開示される特徴は、必要に応じて、それらの特定の形式で、あるいは、開示される機能を果たすための手段または開示された結果を達成するための方法またはプロセスに関して表わされるが、本発明をその様々な形態で実現するために別々に、またはそのような特徴の任意の組み合わせで利用されてもよい。
【0047】
本発明を前述した典型的な実施形態と関連して説明してきたが、この開示が与えられると、多くの等価な改変または変更が当業者に明らかである。したがって、前述した本発明の典型的な実施形態は、例示的であって限定的でないと見なされる。本発明の思想および範囲から逸脱することなく、記載された実施形態に対して様々な変更がなされてもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10