特許第6027732号(P6027732)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6027732仮締切り構造体および仮締切り構造体の施工方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6027732
(24)【登録日】2016年10月21日
(45)【発行日】2016年11月16日
(54)【発明の名称】仮締切り構造体および仮締切り構造体の施工方法
(51)【国際特許分類】
   E02B 7/00 20060101AFI20161107BHJP
   E02D 19/04 20060101ALI20161107BHJP
【FI】
   E02B7/00 Z
   E02D19/04
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2011-233090(P2011-233090)
(22)【出願日】2011年10月24日
(65)【公開番号】特開2013-91923(P2013-91923A)
(43)【公開日】2013年5月16日
【審査請求日】2014年10月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000201478
【氏名又は名称】前田建設工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074332
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 昇
(72)【発明者】
【氏名】片山 博司
(72)【発明者】
【氏名】内田 治文
(72)【発明者】
【氏名】山之口 寛
【審査官】 越柴 洋哉
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−100830(JP,A)
【文献】 特開平09−041389(JP,A)
【文献】 特許第4588804(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 7/00− 8/08
E02D 19/00−19/22
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中に位置する構造物の壁面に固設される下部支持枠と、周囲の水と前記壁面との間に作業空間を形成すべく、下部支持枠に固定支持されることなく前記壁面の高さ方向に沿って積載されて筒体に構成される複数のユニットと、水上に位置する構造物の壁面に固設され、前記筒体に構成される複数のユニットのうちの最上段の前記ユニットが固定される上部支持枠とを備え、
前記ユニットは、略円弧状の輪郭線を形成するように、多角形の鋼製枠により構成され
下段の前記鋼製枠は、鋼製枠の輪郭線および該輪郭線の両端部を結ぶ仮想直線で形成される領域を密閉するように、板部材が固着され、さらに、鋼製枠および板部材は、前記仮想直線に対して直交方向に分割できるように構成されることを特徴とする仮締切り構造体。
【請求項2】
最下段を除いた前記鋼製枠は、複数の枠片に分割できるように構成されることを特徴とする請求項1に記載の仮締切り構造体。
【請求項3】
各ユニットは、壁面に当接して位置決めするための戸当たりを有し、該戸当たりは、ボルトの挿通位置を調整できるように、長孔が形成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の仮締切り構造体。
【請求項4】
水中に位置する構造物の壁面に下部支持枠を固設し、周囲の水と前記壁面との間に作業空間を形成すべく、下部支持枠に固定支持されることなく壁面の高さ方向に沿って複数のユニットを積載して、筒体を構成し、水上に位置する構造物の壁面に上部支持枠を固設し、前記筒体に構成される複数のユニットのうちの最上段の前記ユニットを上部支持枠に固定するようにし、前記ユニットを、多角形の鋼製枠により構成することで、略円弧状の輪郭線を形成し、最下段の前記鋼製枠に板部材を固着して、鋼製枠の輪郭線および該輪郭線の両端部を結ぶ仮想直線で形成される領域を密閉し、さらに、鋼製枠および板部材を、前記仮想直線に対して直交方向に分割できるようにしたことを特徴とする仮締切り構造体の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、水力発電所の取水口などに設置されるスクリーンを取替工事する際に、水の流入を遮断するために用いられる仮締切りの構造体および仮締切り構造体の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
まず、従来の仮締切り構造体に説明する前に、水力発電所の構成について説明する。該水力発電所は、河川、湖沼などを利用して、水を高い位置から急速に流下させて、その水力で、水車を動かして、これを動力として発電機を回転して、電気を発生させるものである。この水力発電所は、構造によって、水路式発電所と、ダム式発電所とに分類される。水路式発電所は、河川をせき止めて直ちに取水し、比較的緩やかな水路で水を下流に導き、河川の勾配による落差を得て発電する方式となっている。ダム式発電所は、河川を横断してダムをつくり、ダム上流側の水位を上昇させて得られる落差を利用して発電する方式をとっている。
【0003】
ダム式発電所10は、例えば、図11に示すように、ダム躯体11と、水圧鉄管12と、発電所13とを備えている。
【0004】
ダム躯体11は、下流側において、発電所13に向かって急傾斜する壁面hが形成されている。また、上流側において、水をせき止めて上池111をつくるための直立した壁面Hが形成されている。そして、図12に示すように、直立した上流側の壁面Hの下側に、複数の取水口110,…が形成されている。この取水口110は、後述する水圧鉄管12の一端部が接続されている。また、取水口110の開口周縁部に、スクリーンSが設置されている。また、取水口110は、後述する発電所13の水車130よりも高位置に形成されている。
【0005】
水圧鉄管12は、ダム躯体11に貫設されている。そして、水圧鉄管12の一端部が、ダム躯体11の取水口110に連通している。また、水圧鉄管12の他端部が、後述する発電所13の水車130に配置されている。すなわち、水圧鉄管12は、水車130に向かって下方傾斜するように、ダム躯体11に貫設されている。また、排水管120がダム躯体11に貫設されている。この排水管120の一端部が、直立した壁面Hを貫通して、水圧鉄管12の下方(後述する仮締切り構造体15の真下)に位置している。また、排水管120の他端部が、傾斜した壁面hを貫通して外部に連通している。そして、排水管120は、上池111の水を下流側に排水するようになっている。
【0006】
発電所13は、水車130と、発電機131と、吸出管132と、鉄塔133とを備えている。水車130は、取水口110から水圧鉄管12を通って流下する水の位置エネルギーによって回動する。発電機131は、回動する水車130の機械エネルギーによって駆動して、該機械エネルギーを電気エネルギーに変換する。吸出管132は、その一端部が水車130に配置されている。また、吸出管132の他端部が、発電所13の下流側の下池134に連通している。そして、吸出管132は、水車130の駆動に使用された水を下池134に排水する。鉄塔133は、発電所13の敷地内に立設されている。そして、鉄塔133のアーム1330には、送電線1331が配線され、この送電線1331を介して需用者に対して電力輸送が行われる。
【0007】
つぎに、従来の仮締切り構造体について説明する。該仮締切り構造体15は、上述したダム躯体11の上流側の壁面Hの取水口110に設置されるスクリーンSを取替工事する際に、上池111の水が流入するのを防止するために使用されるものである。
【0008】
仮締切り構造体15としては、例えば、図13(a),(b)に示すように、底板ユニット16と、ケーソン17とを備えているものが公知になっている(特許文献1)。
【0009】
底板ユニット16は、下部支持桁160と、型枠161とを備えている。そして、ケミカルアンカーAによって、下部支持桁160および型枠161を、ダム躯体11の上流側の壁面Hの所定位置(取水口110よりも下側の位置)に固定する。その後、型枠161に水中コンクリートを流し込んで養生させる。
【0010】
ケーソン17は、複数の積載ユニット170,…を備えている。該各積載ユニット170,…は、高さ方向に水平分割されている。また、各積載ユニット170は、図13(c)に示すように、水平部171と、一対の折曲部172,172とを備えている。水平部171は、ダム躯体11の壁面Hに対して平行する。各折曲部172は、水平部171に対して直角になるように、水平部171の両端部が互いに内側に向かって折り曲げられて形成されている。そして、底板ユニット16の上において、複数の積載ユニット170,…が、ダム躯体11の上流側の壁面Hの高さ方向に沿って積載されて、ケーソン(筒体)17が構成される。ケーソン17が底板ユニット16の上に設置された際、ダム躯体11の上流側の壁面Hと、ケーソン17の水平部171および各折曲部172とで、角柱状の作業空間が形成されることになる(図示せず)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2005−139865号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、前記従来の仮締切り構造体15の場合、ダム底において、底板ユニット16の下部支持桁160および型枠161にケーソン17を固定しているため、下部支持桁160、型枠161、ケーソン17は、周囲から作用する水圧(揚圧力)と、底部から真上に向かって作用する水圧(浮力)とを受けることになる。底部から真上に向かって作用する水圧は、一定圧力であるが、周囲から作用する水圧は、深くなるにつれて大きくなる。これらの水圧に耐えつつ、ケーソン17を支持するためには、下部支持桁160および型枠161は必然的に大型化してしまう。したがって、水中作業において、大型化した下部支持桁160および型枠161を、ダム躯体11の壁面Hに設置する作業が大掛かりになる。これに加えて、下部支持桁160と、型枠161と、水中コンクリートとが必要となるため、部品点数が多く、その分、作業に手間が掛かり、コスト高になるという問題がある。
【0013】
また、ダム底において、底板ユニット16の下部支持桁160および型枠161にケーソン17を固定しているため、固定箇所が水中にあって、その固定状態を外部から容易に視認できないという問題がある。
【0014】
そこで、本発明は、水中作業を軽減できて、支持部材に対する固定状態を外部から容易に視認できる仮締切り構造体および仮締切り構造体の施工方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に係る仮締切り構造体は、水中に位置する構造物の壁面に固設される下部支持枠と、周囲の水と前記壁面との間に作業空間を形成すべく、下部支持枠に固定支持されることなく前記壁面の高さ方向に沿って積載されて筒体に構成される複数のユニットと、水上に位置する構造物の壁面に固設され、前記筒体に構成される複数のユニットのうちの最上段の前記ユニットが固定される上部支持枠とを備え、前記ユニットは、略円弧状の輪郭線を形成するように、多角形の鋼製枠により構成され、最下段の前記鋼製枠は、鋼製枠の輪郭線および該輪郭線の両端部を結ぶ仮想直線で形成される領域を密閉するように、板部材が固着され、さらに、鋼製枠および板部材は、前記仮想直線に対して直交方向に分割できるように構成されることを特徴とする。
【0016】
かかる構成によれば、水中での作業において、下部支持枠のみを構造物の壁面に固定するので、水中での作業の簡素化が図れて、作業性がよくなる。また、下部支持枠は、ユニットを筒体に構成する際に使用するためのもので、複数のユニットを支持できる強度があればよい。すなわち、ユニットにより構成された筒体を、水中において固定支持することはないので、水圧に耐え得る強度は考慮する必要がなく、大型にする必要もない。したがって、作業にかかる労力を大幅に軽減できるようになる。
【0017】
しかも、筒体を構成する最上段のユニットを、水上に位置する構造物の壁面に固設される上部支持枠に固定することで、その固定状態を外部から容易に視認することができる。
【0019】
また、ユニットが多角形の鋼製枠により構成されるので、鋼製枠の多角面によって水圧が分散されるようになり、水圧に対して十分な耐力をもつようになる。
【0021】
また、最下段の鋼製枠において、鋼製枠と、該鋼製枠に固着された板部材とを、鋼製枠の略円弧状の輪郭線の両端部を結ぶ仮想直線に対して直交方向に分割できるように構成することで、最下段の鋼製枠を、複数に分割した状態で現場に搬送できるようになる。また、複数に分割した鋼製枠および板部材を一体化するように組み立てるので、大掛かりの搬送機械などが不要になり、作業にかかる労力を大幅に低減できるようになる。
【0022】
また、本発明によれば、最下段を除いた前記鋼製枠は、複数の枠片に分割できるように構成するようにしてもよい。
【0023】
かかる構成によれば、鋼製枠が複数の枠片に分割されるので、分割された枠片が組み立てられることで、鋼製枠が作製される。そして、下部支持枠の上において、組み立てられた鋼製枠が順次積載されて、筒体が組み立てられる。このように、鋼製枠が分割されることで、下部支持枠においての組立作業が効率よく行える。
【0024】
また、本発明によれば、各ユニットは、壁面に当接して位置決めするための戸当たりを有し、該戸当たりは、ボルトの挿通位置を調整できるように、長孔が形成されるような構成を採用することができる。
【0025】
かかる構成によれば、構造物の壁面に対する各ユニットの取付位置を、ボルトが挿通される長孔によって位置調整しつつ取り付けることができる。
【0026】
また、本発明にかかる仮締切り構造体の施工方法は、水中に位置する構造物の壁面に下部支持枠を固設し、周囲の水と前記壁面との間に作業空間を形成すべく、下部支持枠に固定支持されることなく壁面の高さ方向に沿って複数のユニットを積載して、筒体を構成し、水上に位置する構造物の壁面に上部支持枠を固設し、前記筒体に構成される複数のユニットのうちの最上段の前記ユニットを上部支持枠に固定するようにし、前記ユニットを、多角形の鋼製枠により構成することで、略円弧状の輪郭線を形成し、最下段の前記鋼製枠に板部材を固着して、鋼製枠の輪郭線および該輪郭線の両端部を結ぶ仮想直線で形成される領域を密閉し、さらに、鋼製枠および板部材を、前記仮想直線に対して直交方向に分割できるようにしたことを特徴とする。
【0027】
かかる構成によれば、下部支持枠において、複数のユニットを積載して、筒体を構成した後、水上に位置する筒体の最上段のユニットを上部支持枠に固定するようにしているので、水中における作業性が改善される分、全体の作業性も向上できるようになる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、水中に位置する構造物の壁面に固設した下部支持枠において、複数のユニットを壁面の高さ方向に沿って積載して筒体を構成し、該筒体を、水上に位置する構造物の壁面に固設した上部支持枠に固定するようにしたので、水中における作業を軽減できて、上部支持枠に対する筒体の固定状態を外部から容易に視認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明に係る一実施形態の仮締切り構造体を示す斜視図。
図2図1の正面図。
図3図1の側面図。
図4】(a)は、仮締切り構造体の底板ユニットを示す平面図、(b)は、図4(a)の底板ユニットの鋼製枠を分割した状態を示す平面図。
図5】(a)は、仮締切り構造体の複数の積載ユニットを示す平面図、(b)は、各積載ユニットの鋼製枠を分割した状態を示す平面図。
図6】仮締切り構造体の戸当たりを示す正面図。
図7】仮締切り構造体の上部支持枠および最上段の積載ユニットを示す平面図。
図8】本発明の一実施形態に係る仮締切り構造体の施工手順を示す図であり、ダム躯体の壁面に下部支持枠を取り付けた状態を示す側面図。
図9】下部支持枠に、底板ユニットを取り付けた状態を示す側面図。
図10】底板ユニットの上に、複数の積載ユニットを順次積載して筒体を構成した状態を示す側面図。
図11】ダム式発電の全体構成を示す斜視図。
図12図11の正面図。
図13】(a)は、ダム躯体の上流側の壁面との間に角柱状の作業空間が形成される、従来の仮締切り構造体を示す正面図、(b)は、図13(a)の側面図、(c)は、図13(a)の要部の平面図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明に係る仮締切り構造体の一実施形態について図1図10を参照しながら説明する。なお、本実施形態においては、ダム式発電所10におけるダム躯体11の取水口110に設置される仮締切り構造体を例にとって説明する。
【0031】
本実施形態に係る仮締切り構造体1は、図1図3に示すように、下部支持枠2と、底板ユニット3と、複数の積載ユニット5A〜5Dと、上部支持枠7とを備えている。
【0032】
下部支持枠2は、図2および図3に示すように、ダム躯体11の取水口110、すなわち、水中に位置するダム躯体11の壁面(以下、単に壁面という。)Hに固設されている。そして、下部支持枠2は、取付部20と、支持部21と、補強部22とを備えている。取付部20は、壁面Hに対して直交する一対の直状部200を備えている。
【0033】
そして、下部支持枠2の各直状部200,200に、複数本(本実施形態では、3本)の下部受け桁25,…が所定の間隔をおいて架設され、該各下部受け桁25に、最下段の積載ユニット5Aの各第1直状部500が仮固定される。この理由としては、最下段の積載ユニット5Aの上に、残りの積載ユニット5B〜5Dを順次積載して、筒体6を構成するためである。筒体6を構成した後は、筒体6の下部支持枠2への仮固定を解除し、上部支持枠7に筒体6の上部(最上段の積載ユニット5D)を固定する。
【0034】
支持部21は、図3に示すように、取付部20の各直状部200と下部受け桁25との結合部から斜め下方に向かって架設される。すなわち、取付部20および支持部21を側面視した場合、直角三角形状の開口部2aが形成されている。
【0035】
補強部22は、図3に示すように、取付部20の各直状部200に、各一端部が所定の間隔をおいて固着され、各他端部が、支持部21の中途部に固着されている。したがって、取付部20の各直状部200が、一対の補強部22,22によって2点支持されることで、取付部20の各直状部200および下部受け桁25が水平方向に支持される。
【0036】
底板ユニット3は、図4(a)に示すように、輪郭線が略円弧状を形成するように、多角形(6角)の鋼製枠30により構成されている。具体的に説明すると、一対の第1直状部300,300と、第2直状部301と、屈曲部302とを備えている。各第1直状部300は、両側端部に位置して、壁面Hに対して直交する。第2直状部301は、前記輪郭線の頂部に位置して、壁面Hに対して平行する。屈曲部302は、各第1直状部300および第2直状部301との間に配置され、中央部が所定角度に屈曲している。そして、鋼製枠30は、図4(b)に示すように、屈曲部302の中途部が分割できるように構成されており、複数の枠片303,…に分割される。
【0037】
さらに、底板ユニット3は、図4(a)に示すように、鋼製枠30の輪郭線および該輪郭線の両端部を結ぶ仮想直線(一点鎖線)Lで形成される半円形の領域を密閉するように、鋼製枠30に板部材31が固着されている。そして、図4(b)に示すように、鋼製枠30および板部材31は、前記仮想直線に対して直交方向に分割できるように構成されている。また、板部材31は、複数の桁310,…が格子状に骨組みされ、その骨組みされた裏側に、略半円形状の平板311が固着されている。
【0038】
積載ユニット5A〜5Dは、図5(a)に示すように、底板ユニット3と同様に、輪郭線が略円弧状を形成するように、多角形(6角)の鋼製枠50により構成され、壁面Hに対して直交する一対の第1直状部500,500と、壁面Hに対して平行する第2直状部501と、各第1直状部500および第2直状部501の間に配置された屈曲部502とを備えている。また、積載ユニット5の鋼製枠50も、図5(b)に示すように、複数の枠片503,…に分割される。そして、積載ユニット5A〜5Dは、壁面Hとの間に作業空間Wを形成すべく、下部支持枠2に、下部受け桁25を介して、壁面Hの高さ方向に沿って順次積載されて略筒体6が構成される。そして、各積載ユニット5A〜5Dの間には、内部への浸水を防止すべく、シール部材(パッキン)が介装されている(図示せず)。
【0039】
また、積載ユニット5A〜5Dの各第1直状部500は、図6に示すように、壁面Hに当接して位置決めするための戸当たり504を備えている。この戸当たり504は、ボルト(図示せず)の挿通位置を調整できるように、長孔5040が形成されている。この長孔5040は、鋼製枠50側が高く、壁面H側が低くなるように傾斜している。すなわち、長孔5040にボルトを挿通した際、挿通したボルトの先端部に、壁面H内に配置された鉄筋が当接した場合は、該鉄筋を避けるように、長孔5040に挿通されたボルトの位置を、長孔5040の端部側にずらすように調整する。この戸当たり504が壁面Hに固定されることで、鋼製枠50が壁面Hに対して位置決めされる。
【0040】
上部支持枠7は、図1図3および図7に示すように、水上に位置するダム躯体11の壁面Hに固設され、水上に位置する最上段の積載ユニット5Dが固定される。そして、上部支持枠7は、取付部70と、支持部71と、補強部72とを備えている。取付部70は、壁面Hに対して直交する一対の直状部700,700を備えている。そして、図7に示すように、上部支持枠7の各直状部700の間に、第1上部受け桁73aが架設されるとともに、該第1上部受け桁73aの中途部と、上部支持枠7の各直状部700の中途部に、一対の第2上部受け桁73b,73bが斜めに架設される。そして、第1上部受け桁73aおよび各第2上部受け桁73bに、最上段の積載ユニット5Dが固定される。なお、上部支持枠7に対して下部支持枠2の大きくなっており、重量も小さくなっている。この理由としては、水深に比例して大きくなる水圧(揚圧力)がかかる筒体6の下部を直接支持するのではなく、水上おいて、筒体6の上部が上部支持枠7に固定されることで、筒体6にかかる水圧を間接的に受けるようにしたためである。
【0041】
支持部71は、図3に示すように、取付部70の各直状部700と第1上部受け桁73aとの結合部から斜め上方に向かって架設される。すなわち、取付部70および支持部71を側面視した場合、直角三角形状の開口部7aが形成されている。
【0042】
補強部72は、図3に示すように、取付部70の各直状部700に、各一端部が所定の間隔をおいて固着され、各他端部が、支持部71の中途部に固着されている。したがって、取付部70の各直状部700が、一対の補強部72,72によって2点支持されることで、取付部70の各直状部700および第1上部受け桁73aが水平方向に支持される。
【0043】
つぎに仮締切り構造体1の施工方法について、図3図5(a)および図8図12を参照して説明する。まず、スクリーンSの取替工事がしやすいように、下流側に支障のない程度に上池の水位が下げられる。
【0044】
この状態で、図8に示すように、スクリーンSが取り付けられたダム躯体11の取水口110の周縁部の壁面Hに、下部支持枠2が固設される。そして、図9に示すように、下部支持枠2に、下部受け桁25を介して底板ユニット3が取り付けられる。そして、図10に示すように、底板ユニット3に、鋼製枠50で構成される複数の積載ユニット5A〜5Dが順次積載されて、筒体6が構成される。この際、底板ユニット3に、最下段の積載ユニット5Aが仮固定され、その後、残りの積載ユニット5B〜5Dが、最下段の積載ユニット5Aの上に順次積載されて、筒体6が構成される。この筒体6が構成されることによって、壁面Hと各積載ユニット5A〜5Dによる筒体6との間に、スクリーンSを取替工事するのに必要とされる略半円形状の作業空間Wが形成される(図3および図5(a)参照)。なお、各ユニット5A〜5Dの各接合部には、筒体6の内部への浸水を防止すべく、シール部材(パッキン)が介装される(図示せず)。
【0045】
そして、上部支持枠7がダム躯体11の上部の壁面Hに固設される。その後、上部支持枠7に上部受け桁73が架設されて、該上部受け桁73に最上段の積載ユニット5Dが固定される(図3参照)。その後、下部支持枠2に対する最下段の積載ユニット5Aの仮固定が解除される。
【0046】
そして、仮締切り構造体1を壁面Hに設置した後、ダム躯体の上池の水の高さが元に戻される。この際、仮締切り構造体1の下部支持枠2および各積載ユニット5A〜5Dにより構成された筒体6に対して、底部から真上に向かって作用する水圧(浮力)と、周囲から作用する水圧(揚圧力)とが加わることになるが、上部支持枠7に、前記筒体6が固定されることで、これらの水圧が上部支持枠7によって間接的に受けられることになる。
【0047】
このように、本発明によれば、ダム躯体の壁面Hに固設された下部支持枠2において、複数の積載ユニット5が壁面Hの高さ方向に沿って積載され、水上に位置する前記壁面Hに固設された上部支持枠7に、筒体6の上部(最上段の積載ユニット5D)が固定されるようにしたので、水中作業を大幅に軽減できて、上部支持枠7に対する筒体6の固定状態を外部から容易に視認することができる。
【0048】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、種々変更することができる。
【0049】
例えば、前記実施形態の場合、各積載ユニット5A〜5Dに、輪郭線が略円弧状の多角形の鋼製枠50を使用したが、半円形状の鋼製枠を使用してもよい。
【0050】
また、前記実施形態の場合、壁面Hに沿って積載される積載ユニット5A〜5Dによって、筒体6を構成するようにしたが、細長い板部材を幅方向に接続して筒体を構成する矢板工法にも適用できる。
【0051】
また、前記実施形態の場合、水力発電所の取水口110に設けられる仮締切り構造体1を例にとって説明したが、港湾工事や河川工事の改修工事などにも適用できる。
【符号の説明】
【0052】
1…仮締切り構造体、2…下部支持枠、3…底板ユニット、30,50…鋼製枠、303,503…枠片、5A〜5D…積載ユニット、504…戸当たり、5040…長孔、6…筒体、11…ダム躯体、110…取水口、H…壁面、W…作業空間
図1
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図5
図6
図7
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図13