(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
試料容器に収容された血液試料を吸引管を用いて吸引する試料吸引部、前記試料吸引部により吸引された血液試料および試薬から測定試料を調製する試料調製部、及び前記試料調製部により調製された測定試料を測定する測定部に接続されたコンピュータを、
一の血液試料に関する測定項目の測定指示を受け付ける手段、及び
受け付けられた測定項目の測定指示に基づいて、前記試料容器内の血液試料を吸引するよう前記試料吸引部を制御する手段、として機能させるためのコンピュータプログラムであって、
前記試料吸引部を制御する手段は、
前記一のグループに属する1又は複数の測定項目の測定指示のみが受け付けられた場合には、前記試料容器から第1の量の血液試料を吸引し、吸引された血液試料を前記試料調製部へ供給する試料供給動作を実行するよう前記試料吸引部を制御し、
前記一のグループに属する測定項目及び前記他の測定項目の測定指示が受け付けられた場合には、前記試料容器から前記一のグループに属する測定項目の測定用に前記第1の量の血液試料を吸引し、吸引された血液試料を前記試料調製部へ供給する第1試料供給動作と、前記試料容器から前記他の測定項目の測定用に第2の量の血液試料を吸引し、吸引された血液試料を前記試料調製部へ供給する第2試料供給動作とを実行するよう前記試料吸引部を制御し、
前記一のグループは、全血算測定項目、白血球を複数のグループに分類するための白血球分類項目、網赤血球に関する測定項目、有核赤血球に関する測定項目、幼若血液細胞に関する測定項目、又は異常リンパ球に関する測定項目を含み、
前記他の測定項目は、造血前駆細胞に関する測定項目である、
コンピュータプログラム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の血球分析装置は、どの検体に対しても予め定められた測定項目を測定するように構成され、どの測定においても一定量の血液試料を吸引管内に吸引するため、測定毎の検体の吸引条件が同一となる。そのため、例えば吸引管内の血液試料の濃度勾配が測定毎に同様となる。また、この血球分析装置では、吸引管におけるどの部位の血液試料をどの測定項目に使用するかが予め決められているため、どの測定においても、同程度に希釈された血液試料が同一の測定項目に使用される。従って、吸引管内の血液試料に生じている濃度勾配によって測定結果は影響を受けない。
【0008】
一方、特許文献2の検体分析装置のように、特許文献1の血球分析装置が検体毎に測定項目の種類・数を変更可能に構成された場合、各検体(血液試料)の吸引条件を同一にするためには、例えば一つの測定項目のみを測定する場合であっても全ての測定項目に対応可能な量の検体を一度に吸引する必要がある。
【0009】
また、特許文献1の血球分析装置が検体毎に測定項目の種類・数を変更可能に構成された場合に、特許文献2の血球分析装置のように測定に必要な量の検体のみを吸引すると、検体の吸引量が測定毎に相違することによって、吸引管内の検体の濃度勾配が検体毎にわずかにばらつくおそれがある。そのため、吸引管の同一部位の検体を同一の測定項目に使用した場合には、検体毎にわずかに希釈度合が異なることになり、測定結果が影響を受けるおそれがある。
【0010】
なお、サンプリングバルブを用いて血液試料を定量する血液分析装置のように、吸引管内に予め液体を充填せずに血液試料を吸引する場合であっても、測定毎に吸引管およびサンプリングバルブが洗浄されるため、吸引管およびサンプリングバルブの内壁には洗浄液が残留していることがある。そのため、検体の吸引量が測定毎に相違した場合には血液試料の濃度勾配が測定毎にわずかにばらつくおそれがある。共通する測定項目については、測定毎に検体の吸引条件が同一であることが望ましい。
【0011】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり
、検体毎に
種類・数が異なる測定項目の
測定指示が与えられた場合であっても、全測定項目に対応可能な量の検体を一度に吸引することなく、精度良く検体の測定を行うことができる血球分析装置、血球分析方法、及びコンピュータプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した課題を解決するために、本発明の第1の態様の血球分析装置は、血液試料を吸引するための吸引管を備え、当該吸引管を用いて、試料容器に収容された血液試料を吸引する試料吸引部と、前記試料吸引部により吸引された血液試料および試薬から測定試料を調製する試料調製部と、前記試料調製部により調製された測定試料を測定する測定部と、
一のグループに属する複数の測定項目、及び、前記一のグループに属さない他の測定項目のうち、少なくとも一つの
測定項目の測定指示を受け付ける情報処理部と、を備え、前記情報処理部は
、前記一のグループに属する1又は複数の測定項目の
測定指示のみを受け付けた場合には、
前記試料容器から第1の量の血液試料を吸引し、吸引された血液試料を前記試料調製部へ供給すべく、前記試料吸引部を制御し
、前記一のグループに属する測定項目及び前記他の測定項目の
測定指示を受け付けた場合には、
前記試料容器から前記一のグループに属する測定項目の測定用に前記第1の量の血液試料を吸引し、吸引された血液試料を前記試料調製部へ供給する第1試料供給動作と、
前記試料容器から前記他の測定項目の測定用に第2の量の血液試料を吸引し、吸引された血液試料を前記試料調製部へ供給する第2試料供給動作とを実行させるべく、前記試料吸引部を制御するように構成さ
れ、前記一のグループは、全血算測定項目、白血球を複数のグループに分類するための白血球分類項目、網赤血球に関する測定項目、有核赤血球に関する測定項目、幼若血液細胞に関する測定項目、又は異常リンパ球に関する測定項目を含み、前記他の測定項目は、造血前駆細胞に関する測定項目である。
【0013】
このような構成とすることにより、一のグループに属する測定項目の測定を行う場合には、前記一のグループから選択された測定項目の数および種類に関わらず第1の量の血液試料を吸引するので、どの測定においても血液試料の吸引量に差違がなく、測定毎の吸引条件を同一にすることができる。そのため、血液試料の吸引条件の違いによって、前記一のグループに含まれる測定項目の測定結果が影響を受けることがない。一方、上記一のグループに属する測定項目の測定に加えて他の測定項目の測定を行う場合には、上記一のグループに属する測定項目用の第1の量の血液試料を吸引する動作とは別に、他の測定項目用に第2の量の血液試料を吸引する。そのため、上記一のグループに属する測定項目用の血液試料の吸引条件は同一であり、精度良く測定を行うことができる。また、上記他の測定項目が指示されている場合にのみ第2の量の血液試料を吸引するので、上記他の測定項目の測定が不要な場合にまで第2の量の血液試料が吸引されることを防止することができる。
【0014】
上記態様において、前記試料吸引部は、希釈液を前記吸引管に予め充填し前記吸引管の先端側に空気層が形成された状態で、前記試料容器から血液試料を吸引するように構成されている。このように構成すれば、血液試料の定量精度を高めることができる。なお、吸引管内での血液試料の移動に伴って、吸引管の内壁に付着した希釈液により血液試料が希釈されて吸引管内の血液試料には濃度勾配が生じる。しかし、本発明では、上記一のグループに属する測定項目の測定を行う場合には、どの測定においても吸引量が一定となる。そのため、血液試料の吸引量の差異に起因して測定毎に血液試料の濃度勾配にばらつきが生じることを防止でき、血液試料の濃度勾配によって測定結果が影響を受けることを防止できる。
【0017】
前記第1の量は、前記一のグループに属する全ての測定項目の測定に必要な血液試料の量であってもよい。このようにすれば、前記一のグループから選択された測定項目の数および種類に関わらず、前記一のグループから選択された全ての測定項目の測定を行うことができる。
【0018】
前記情報処理部は、血液試料の測定に利用される測定プログラムが記憶された記憶部と、前記記憶部に記憶された前記測定プログラムを実行するプロセッサーと、を含み、前記他の測定項目は、前記記憶部に記憶された前記測定プログラムのバージョンアップにより追加される測定項目であってもよい。これにより、血球分析装置がユーザの手元に提供された後に、測定プログラムのバージョンアップによって測定項目が追加された場合であっても、バージョンアップ前から測定可能であった測定項目の測定精度が低下することを抑制しながら、追加項目の測定を行うことができる。
【0019】
上記態様において、前記情報処理部は
、前記一のグループに属する第1測定項目および第2測定項目の
測定指示を受け付けた場合には、前記吸引管に吸引された前記第1の量の血液試料のうち、前記吸引管の先端側の第1の領域に含まれる血液試料を前記第1測定項目の測定に用いるために前記試料調製部に供給し、前記吸引管の基端側の第2の領域に含まれる血液試料を前記第2測定項目の測定に用いるために前記試料調製部に供給するように前記試料吸引部を制御し
、前記第1測定項目の
測定指示を受け付けず、前記第2測定項目の
測定指示を受け付けた場合には、前記吸引管に吸引された前記第1の量の血液試料のうち、前記第2の領域に含まれる血液試料を前記第2測定項目の測定に用いるために前記試料調製部に供給するように前記試料吸引部を制御すべく構成されていてもよい。このように、測定項目別に、使用する血液試料の吸引管内の位置を定めることで、同一の測定項目についての測定は、検体が異なっても吸引の条件が共通となり、測定結果への影響が発生することを防止することができる。
【0020】
上記態様において、前記情報処理部は
、前記他の測定項目の
測定指示を受け付けた場合には、吸引された前記第2の量の血液試料を複数に分割するように前記試料吸引部を制御し、前記試料吸引部により分割された血液試料のそれぞれと試薬とから複数の測定試料を調製するように前記試料調製部を制御し、前記試料調製部により調製された前記複数の測定試料のそれぞれを測定するように前記測定部を制御し、前記測定部により得られた前記複数の測定試料のそれぞれについての測定データに基づいて、前記他の測定項目についての測定結果を生成するように構成されていてもよい。造血前駆細胞のように末梢血中における存在数が少ない成分を測定する場合に、測定回数を1回だけとすると、調製した測定試料中に検出可能な程度に測定対象の成分が含有されず、測定誤差を生ずる可能性がある。1つの測定試料中には検出可能な程度に測定対象の成分が含有されていない場合であっても、他の測定試料中には検出可能な量の当該成分が含有されている場合があるため、上記のように複数の測定試料のそれぞれを測定する構成とすることにより、当該成分を高い確実性で検出することが可能となる。
【0021】
上記態様において、前記血球分析装置は、表示部をさらに備え、前記情報処理部は
、前記一のグループに関する測定項目及び前記他の測定項目の
測定指示を受け付けた場合には、前記一のグループに属する測定項目についての測定結果および前記他の測定項目についての測定結果を、同一画面上に表示するように前記表示部を制御すべく構成されていてもよい。これにより、ユーザは1つの画面上で上記一のグループに属する測定項目及び上記他の測定項目についての測定結果を確認することができる。
【0022】
また、本発明の第2の態様の血球分析方法は、血液試料に関する測定項目の
測定指示を受け付けるステップと、受け付けられた測定項目
の測定指示に基づいて、試料容器に収容された血液試料を吸引管を用いて吸引し、吸引された血液試料を、測定に使用される測定試料を調整するための試料調製部へ供給するステップと、試料調製部に供給された血液試料および試薬から測定試料を調製するステップと、調製された測定試料を測定するステップと、を有し、前記測定項目の
測定指示を受け付けるステップでは、一のグループに属する複数の測定項目、及び、前記一のグループに属さない他の測定項目のうち、少なくとも一つの測定項目の
測定指示を受け付け、前記血液試料を吸引するステップは
、前記一のグループに属する1又は複数の測定項目の
測定指示のみが受け付けられた場合には、
前記試料容器から第1の量の血液試料を吸引し、吸引された血液試料を前記試料調製部へ供給する試料供給動作を実行し
、前記一のグループに属する測定項目及び前記他の測定項目の
測定指示が受け付けられた場合には、
前記試料容器から前記一のグループに属する測定項目の測定用に前記第1の量の血液試料を吸引し、吸引された血液試料を前記試料調製部へ供給する第1試料供給動作と、
前記試料容器から前記他の測定項目の測定用に第2の量の血液試料を吸引し、吸引された血液試料を前記試料調製部へ供給する第2試料供給動作とを実行
し、
前記一のグループは、全血算測定項目、白血球を複数のグループに分類するための白血球分類項目、網赤血球に関する測定項目、有核赤血球に関する測定項目、幼若血液細胞に関する測定項目、又は異常リンパ球に関する測定項目を含み、前記他の測定項目は、造血前駆細胞に関する測定項目である。
【0023】
上記構成により、本発明の第1の態様と同様の効果を奏することができる。
【0024】
また、本発明の第3の態様のコンピュータプログラムは、試料容器に収容された血液試料を吸引管を用いて吸引する試料吸引部、前記試料吸引部により吸引された血液試料および試薬から測定試料を調製する試料調製部、及び前記試料調製部により調製された測定試料を測定する測定部に接続されたコンピュータを、一の血液試料に関する測定項目の
測定指示を受け付ける手段、及び受け付けられた測定項目
の測定指示に基づいて、前記試料容器内の血液試料を吸引するよう前記試料吸引部を制御する手段、として機能させるためのコンピュータプログラムであって、前記試料吸引部を制御する手段は
、前記一のグループに属する1又は複数の測定項目の
測定指示のみが受け付けられた場合には、
前記試料容器から第1の量の血液試料を吸引し、吸引された血液試料を前記試料調製部へ供給する試料供給動作を実行するよう前記試料吸引部を制御し
、前記一のグループに属する測定項目及び前記他の測定項目の
測定指示が受け付けられた場合には、
前記試料容器から前記一のグループに属する測定項目の測定用に前記第1の量の血液試料を吸引し、吸引された血液試料を前記試料調製部へ供給する第1試料供給動作と、
前記試料容器から前記他の測定項目の測定用に第2の量の血液試料を吸引し、吸引された血液試料を前記試料調製部へ供給する第2試料供給動作とを実行するよう前記試料吸引部を制御
し、
前記一のグループは、全血算測定項目、白血球を複数のグループに分類するための白血球分類項目、網赤血球に関する測定項目、有核赤血球に関する測定項目、幼若血液細胞に関する測定項目、又は異常リンパ球に関する測定項目を含み、前記他の測定項目は、造血前駆細胞に関する測定項目である。
【0025】
上記構成により、本発明の第1の態様と同様の効果を奏することができる。
【0026】
また、本発明の第4の態様の血球分析装置は、第1測定モード、及び、前記第1測定モードで測定される測定項目に加えて他の測定項目を測定する第2測定モードを有する血球分析装置であって、血液試料を吸引するための吸引管を備え、当該吸引管を用いて、試料容器に収容された血液試料を吸引する試料吸引部と、前記試料吸引部により吸引された血液試料および試薬から測定試料を調製する試料調製部と、前記試料調製部により調製された測定試料を測定する測定部と、血液試料に関する測定項目の
測定指示を受け付ける情報処理部と、を備え、前記情報処理部は、
複数の測定項目を有するグループから選択された1又は複数の測定項目の測定指示のみを受け付けた場合には、前記第1測定モードにおい
て、前記グループから選択された1又は複数の測定項目の測定用に
前記試料容器から第1の量の血液を吸引し、吸引された血液試料を前記試料調製部へ供給すべく、前記試料吸引部を制御し、
前記グループに含まれる測定項目及び前記グループに属さない他の測定項目の測定指示を受け付けた場合には、前記第2測定モードにおい
て、前記グループに含まれる測定項目の測定用に
前記試料容器から前記第1の量の血液を吸引し、吸引された血液試料を前記試料調製部へ供給する第1試料供給動作と、前記グループに属さない他の測定項目の測定用に
前記試料容器から第2の量の血液を吸引し、吸引された血液試料を前記試料調製部へ供給する第2試料供給動作とを実行させるべく、前記試料吸引部を制御するように構成さ
れ、前記一のグループは、全血算測定項目、白血球を複数のグループに分類するための白血球分類項目、網赤血球に関する測定項目、有核赤血球に関する測定項目、幼若血液細胞に関する測定項目、又は異常リンパ球に関する測定項目を含み、前記他の測定項目は、造血前駆細胞に関する測定項目である。
【0027】
上記構成により、本発明の第1の態様と同様の効果を奏することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば
、検体毎に
種類・数が異なる測定項目の
測定指示が与えられた場合であっても、全測定項目に対応可能な量の検体を一度に吸引することなく、精度良く検体の測定を行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
【0031】
(実施の形態1)
[血球分析装置の構成]
図1は、本実施の形態に係る血球分析装置の全体構成を示す斜視図である。本実施の形態に係る血球分析装置1は、血液試料に含まれる白血球、赤血球、血小板等の血球を検出し、各血球を計数する多項目血球分析装置である。
図1に示すように、血球分析装置1は、測定ユニット2と、測定ユニット2の前面側に配置された搬送ユニット4と、測定ユニット2及び搬送ユニット4を制御可能な情報処理ユニット5とを備えている。
【0032】
測定ユニット2の前面には、ユーザが測定モード(マニュアル測定モード及びサンプラ測定モード。詳しくは後述する。)の切替を指示するためのモード切替スイッチ26aと、ユーザが血液試料の測定開始を指示するための測定開始スイッチ26bとが設けられている。モード切替スイッチ26aが押下されると、デフォルトの測定モードであるサンプラ測定モードからマニュアル測定モードに動作モードが切り替わり、試料容器Tを測定ユニット2の内部に取り込むための取込口27から後述するように試料容器搬送部25が送り出される。ユーザは測定対象の血液試料が収容された試料容器(採血管)Tを試料容器搬送部25に載せ、測定開始スイッチ26bを押下すると、試料容器搬送部25と共に試料容器Tが測定ユニット2の内部に取り込まれる。測定ユニット2は試料容器Tから血液試料を吸引し、当該血液試料の測定を開始する。試料容器Tは、管状をなしており、上端が開口している。内部には患者から採取された血液試料が収容され、上端の開口は蓋部により密封されている。試料容器Tは、透光性を有するガラス又は合成樹脂により構成されており、内部の血液試料が視認可能となっている。また、試料容器Tの側面には、バーコードラベルが貼付されている。このバーコードラベルには、試料IDを示すバーコードが印刷されている。
【0033】
<測定ユニットの構成>
測定ユニットの構成について説明する。
図2は、測定ユニットの構成を示すブロック図である。
図2に示すように、測定ユニット2は、血液を試料容器Tから吸引する試料吸引部21と、試料吸引部21により吸引した血液から測定に用いられる測定試料を調製する試料調製部22と、試料調製部22により調製された測定試料から血球を検出する検出部23とを含む測定機構2aとを有している。また、測定ユニット2は、搬送ユニット4のラック搬送部43によって搬送されたラックLに収容された試料容器Tを測定ユニット2の内部に取り込むための取込口と、ラックLから試料容器Tを測定ユニット2の内部に取り込み、試料吸引部21による吸引位置まで試料容器Tを搬送する試料容器搬送部25とをさらに有している。
【0034】
まず、試料容器搬送部25の構成について説明する。試料容器搬送部25は、試料容器Tを挿入可能な穴部を有する試料容器セット部25bを備えている。試料容器Tは、ユーザによって試料容器セット部25bにセットされる。かかる試料容器セット部25bは、図示しないステッピングモータの動力によって、Y方向へ水平移動可能である。
【0035】
測定ユニット2の内部には、バーコード読取部26が設けられている。試料容器セット部25bは、バーコード読取部26の近傍のバーコード読取位置26a及び試料吸引部21による吸引位置21aへ移動可能である。試料容器セット部25bがバーコード読取位置26aへ移動したときには、バーコード読取部26により試料バーコードが読み取られる。また、試料容器セット部25bが吸引位置へ移動したときには、試料吸引部21により、セットされた試料容器Tから血液試料が吸引される。
【0036】
図3は、測定ユニット2が備える測定機構の構成を示す模式図である。
図2及び
図3に示すように、試料吸引部21の先端部には、吸引管211が設けられている。吸引管211には、チューブを介してシリンジポンプ212が接続されている。また、試料吸引部21は、鉛直方向に移動可能であり、下方に移動されることにより、吸引位置まで搬送された試料容器Tの蓋部を前記吸引管211が貫通するようになっている。上述したチューブ内には希釈液が充填されており、シリンジポンプ211が駆動されてチューブ内の希釈液が移動することで、吸引管211が試料容器内部の血液試料を吸引するように構成されている。
【0037】
試料調製部22は、第1混合チャンバ221、第2混合チャンバ222、第3混合チャンバ223、第4混合チャンバ224、及び第5混合チャンバ225の5つのチャンバを備えている。吸引管211によって試料容器Tから吸引された血液試料は、シリンジポンプ212によって、第1混合チャンバ221、第2混合チャンバ222、第3混合チャンバ223、第4混合チャンバ224、第5混合チャンバ225のうちの何れかのチャンバへ供給される。
【0038】
また、測定ユニット2には、試薬を収容するための試薬容器を設置することが可能であり、流体回路に試薬容器を接続することができるようになっている。具体的には、本実施形態で用いられる試薬容器は、生理食塩水である希釈液(洗浄液)を収容するための希釈液容器201a、ヘモグロビン溶血剤を収容するためのヘモグロビン溶血剤容器201b、赤血球を溶解させる白血球分類用溶血剤を収容するための白血球分類用溶血剤容器202a、白血球分類用染色液を収容するための白血球分類用染色液容器202b、白血球及び有核赤血球検出用の溶血剤を収容するための有核赤血球検出用溶血剤容器203a、白血球及び有核赤血球検出用の染色液を収容するための有核赤血球検出用染色液容器203b、骨髄芽球等の幼若細胞及びリンパ球系の異常細胞検出用の染色液を収容するための幼若細胞検出用染色液容器204b、網赤血球検出用の染色液を収容するための網赤血球検出用染色液容器205a、及び血小板検出用の染色液を収容するための血小板検出用染色液容器205bである。
【0039】
希釈液容器201a及びヘモグロビン溶血剤容器201bは第1混合チャンバ221にチューブを介して接続されており、ダイアフラムポンプによって第1混合チャンバ221に希釈液及びヘモグロビン溶血剤のそれぞれを供給可能となっている。
【0040】
白血球分類用溶血剤容器202a及び白血球分類用染色液容器202bは第2混合チャンバ222にチューブを介して接続されており、ダイアフラムポンプによって第2混合チャンバ222に白血球分類用溶血剤及び白血球分類用染色液のそれぞれを供給可能となっている。
【0041】
有核赤血球検出用溶血剤容器203a及び有核赤血球検出用染色液容器203bは第3混合チャンバ223にチューブを介して接続されており、ダイアフラムポンプによって第3混合チャンバ223に有核赤血球検出用溶血剤及び有核赤血球検出用染色液のそれぞれを供給可能となっている。
【0042】
希釈液容器201a及び幼若細胞検出用染色液容器204bは第4混合チャンバ224にチューブを介して接続されており、ダイアフラムポンプによって第4混合チャンバ224に希釈液及び幼若細胞検出用染色のそれぞれを供給可能となっている。
【0043】
希釈液容器201a、網赤血球検出用染色液容器205a、及び血小板検出用染色液容器205bは第5混合チャンバ225にチューブを介して接続されており、ダイアフラムポンプによって第5混合チャンバ225に希釈液、網赤血球検出用染色、血小板検出用染色液のそれぞれを供給可能となっている。
【0044】
検出部23は、赤血球及び血小板に関する測定を行う第1検出器D1、ヘモグロビンに関する測定を行う第2検出器D2、白血球に関する測定を行う第3検出器D3を備えている。
【0045】
前記第1混合チャンバ221は、赤血球及び血小板に関する分析に用いられるRBC/PLT測定試料並びにヘモグロビンに関する分析に用いられるHGB測定試料を調製する部位である。第1混合チャンバ221で調製されたRBC/PLT測定試料は、第1検出器D1での測定(以下、「RBC/PLT測定」という。)に用いられ、HGB測定試料は、第2検出器D2での測定(以下、「HGB測定」という。)に用いられる。
【0046】
前記第2混合チャンバ222は、白血球分類に用いられるDIFF測定試料を調製する部位である。第2混合チャンバ222で調製されたDIFF測定試料は、第3検出器D3での白血球分類測定に用いられる。
【0047】
前記第3混合チャンバ223は、白血球及び有核赤血球の検出に用いられるWNR測定試料を調製する部位である。第3混合チャンバ223で調製されたWNR測定試料は、第3検出器D3での白血球及び有核赤血球の測定(以下、「WNR測定」という。)に用いられる。
【0048】
前記第4混合チャンバ224は、幼若細胞の検出に用いられるWPC測定試料及び造血前駆細胞の検出に用いられるHPC測定試料を調製する部位である。第4混合チャンバ224で調製されたWPC測定試料は、第3検出器D3での幼若細胞測定(以下、「WPC測定」という。)に用いられ、第4混合チャンバ224で調製されたHPC測定試料は、第3検出器D3での造血前駆細胞測定(以下、「HPC測定」という。)に用いられる。
【0049】
前記第5混合チャンバ225は、網赤血球の検出に用いられるRET測定試料及び血小板の光学測定に用いられるPLT−F測定試料を調製する部位である。第5混合チャンバ225で調製されたRET測定試料は、第3検出器D3での網核赤血球測定(以下、「RET測定」という。)に用いられ、PLT−F測定試料は、第3検出器D3での血小板の光学測定(以下、「PLT−F測定」という。)に用いられる。
【0050】
第1検出器D1は、RBC測定(赤血球数の測定)及びPLT測定(血小板数測定)を行うRBC/PLT検出器として構成されている。このRBC/PLT検出器D1はシースフローDC検出法によりRBC及びPLTの測定を行うことができる。
【0051】
前記第2検出器D2は、HGB測定(血液中の血色素量の測定)を行うHGB検出器として構成されている。このHGB検出器D2は、SLS−ヘモグロビン法によりHGB測定を行うことができる。
【0052】
前記第3検出器D3は、WNR測定、白血球分類測定、WPC測定、HPC測定、及びRET測定を行うことができる光学検出器として構成されている。WNR測定では、WBC(白血球)及びNRBC(有核赤血球)を検出可能であり、白血球分類測定では、NEUT(好中球)、LYMPH(リンパ球)、EO(好酸球)、及びMONO(単球)の検出が可能であり、WPC測定では骨髄芽球等の幼若細胞(BLAST)及びリンパ球系の異常細胞の検出が可能であり、HPC測定ではHPC(造血前駆細胞)の検出が可能であり、RET測定ではRET(網赤血球)の検出が可能であり、PLT−F測定ではPLT−F(血小板)の検出が可能である。かかる第3検出器D3では、半導体レーザを使用したフローサイトメトリー法により上記の各測定を行うことが可能である。また、上記の各測定により得られた測定データを情報処理ユニット5が解析処理する。
【0053】
第3検出器D3は、フローセルを有しており、当該フローセル中に送り込まれた測定試料に対して半導体レーザ光を照射し、このときに発生した前方散乱光、側方散乱光、及び側方蛍光を受光して、前方散乱光強度、側方散乱光強度、及び側方蛍光強度を検出するようになっている。このようにして得られた前方散乱光強度、側方散乱光強度、及び側方蛍光強度の各光学情報を含む測定データが、測定ユニット2から情報処理ユニット5へと送信され、情報処理ユニット5により解析される。
【0054】
<搬送ユニットの構成>
次に、搬送ユニット4の構成について説明する。
図1に示すように、血球分析装置1の測定ユニット2の前方には、搬送ユニット4が配置されている。かかる搬送ユニット4は、測定ユニット2へ血液試料を供給するために、複数の試料容器Tを保持したラックLを搬送することが可能である。
【0055】
図2に示すように、搬送ユニット4は、分析が行われる前の血液試料を収容する試料容器Tを保持する複数のラックLを一時的に保持することが可能な分析前ラック保持部41と、測定ユニット2によって血液試料が吸引された試料容器Tを保持する複数のラックLを一時的に保持することが可能な分析後ラック保持部42と、血液試料を測定ユニット2に供給するために、ラックLを図中矢印X方向へ水平に直線移動させ、分析前ラック保持部41から受け付けたラックLを分析後ラック保持部42へ搬送するラック搬送部43とを備えている。血球分析装置1は、上述したようにユーザが手動で試料容器搬送部25に試料容器Tをセットするマニュアル測定モードでの測定動作だけでなく、搬送ユニット4によりラックLを搬送し、搬送されたラックLから自動的に測定ユニット2内に試料容器を取り込むサンプラ測定モードでの測定動作も可能である。サンプラ測定モードでは、分析前ラック保持部41にセットされたラックLがラック搬送部43によりX方向へ移動され、測定ユニット2により、ラックLに保持された試料容器から血液試料が吸引位置で吸引され、測定が行われる。ラックLに保持された全ての試料容器から血液試料が吸引されると、ラックLは分析後ラック保持部42に移送される。
【0056】
なお、以下では、マニュアル測定モードによる測定動作についてのみ説明する。
【0057】
<情報処理ユニットの構成>
次に、情報処理ユニット5の構成について説明する。情報処理ユニット5は、コンピュータにより構成されている。
図4は、情報処理ユニット5の構成を示すブロック図である。
図4に示すように、コンピュータ5aは、本体51と、表示部52と、入力部53とを備えている。本体51は、CPU51a、ROM51b、RAM51c、ハードディスク51d、読出装置51e、入出力インタフェース51f、通信インタフェース51g、及び画像出力インタフェース51hを備えており、CPU51a、ROM51b、RAM51c、ハードディスク51d、読出装置51e、入出力インタフェース51f、通信インタフェース51g、及び画像出力インタフェース51hは、バス51jによって接続されている。
【0058】
CPU51aは、RAM51cにロードされたコンピュータプログラムを実行することが可能である。そして、後述するような試料分析用並びに測定ユニット2及び搬送ユニット4の制御用のコンピュータプログラム54aを当該CPU51aが実行することにより、コンピュータ5aが情報処理ユニット5として機能する。
【0059】
ROM51bは、マスクROM、PROM、EPROM、又はEEPROM等によって構成されており、CPU51aに実行されるコンピュータプログラム及びこれに用いるデータ等が記録されている。
【0060】
RAM51cは、SRAMまたはDRAM等によって構成されている。RAM51cは、ハードディスク51dに記録されているコンピュータプログラム54aの読み出しに用いられる。また、CPU51aがコンピュータプログラムを実行するときに、CPU51aの作業領域として利用される。
【0061】
ハードディスク51dは、オペレーティングシステム及びアプリケーションプログラム等、CPU51aに実行させるための種々のコンピュータプログラム及び当該コンピュータプログラムの実行に用いられるデータがインストールされている。後述するコンピュータプログラム54aも、このハードディスク51dにインストールされている。また、このコンピュータプログラム54aは、イベントドリブン型のコンピュータプログラムである。
【0062】
また、ハードディスク51dには、血球分析装置1による試料の分析結果を格納するための分析結果データベース55が設けられている。分析結果データベース55は、血液試料が採取された患者を特定するための患者ID、患者の氏名、患者が所属する診療科、主治医等の患者属性情報と、血液試料ID(検体番号)、測定日、測定時刻、測定値、血液試料に異常が検出された場合に付与される異常情報等の測定情報とを含んだ分析結果情報を格納する。
【0063】
読出装置51eは、フレキシブルディスクドライブ、CD−ROMドライブ、またはDVD−ROMドライブ等によって構成されており、可搬型記録媒体54に記録されたコンピュータプログラムまたはデータを読み出すことができる。また、可搬型記録媒体54には、コンピュータを情報処理ユニット5として機能させるためのコンピュータプログラム54aが格納されており、コンピュータ5aが当該可搬型記録媒体54からコンピュータプログラム54aを読み出し、当該コンピュータプログラム54aをハードディスク51dにインストールすることが可能である。
【0064】
なお、前記コンピュータプログラム54aは、可搬型記録媒体54によって提供されるのみならず、電気通信回線(有線、無線を問わない)によってコンピュータ5aと通信可能に接続された外部の機器から前記電気通信回線を通じて提供することも可能である。例えば、前記コンピュータプログラム54aがインターネット上のサーバコンピュータのハードディスク内に格納されており、このサーバコンピュータにコンピュータ5aがアクセスして、当該コンピュータプログラムをダウンロードし、これをハードディスク51dにインストールすることも可能である。
【0065】
また、ハードディスク51dには、例えば米マイクロソフト社が製造販売するWindows(登録商標)等のマルチタスクオペレーティングシステムがインストールされている。以下の説明においては、本実施の形態に係るコンピュータプログラム54aは当該オペレーティングシステム上で動作するものとしている。
【0066】
入出力インタフェース51fは、例えばUSB,IEEE1394,又はRS-232C等のシリアルインタフェース、SCSI,IDE,又は IEEE1284等のパラレルインタフェース、及びD/A変換器、A/D変換器等からなるアナログインタフェース等から構成されている。入出力インタフェース51fには、キーボード及びマウスからなる入力部53が接続されており、オペレータが当該入力部53を使用することにより、コンピュータ5aにデータを入力することが可能である。また、入出力インタフェース51fは、測定ユニット2及び搬送ユニット4に接続されている。これにより、情報処理ユニット5は、測定ユニット2及び搬送ユニット4のそれぞれを制御可能となっている。
【0067】
通信インタフェース51gは、Ethernet(登録商標)インタフェースである。通信インタフェース51gはLANを介して図示しないホストコンピュータに接続されている。コンピュータ5aは、通信インタフェース51gにより、所定の通信プロトコルを使用して当該LANに接続されたホストコンピュータとの間でデータの送受信が可能である。
【0068】
画像出力インタフェース51hは、LCDまたはCRT等で構成された表示部52に接続されており、CPU51aから与えられた画像データに応じた映像信号を表示部52に出力するようになっている。表示部52は、入力された映像信号にしたがって、画像(画面)を表示する。
【0069】
本実施の形態に係る血球分析装置1は、情報処理ユニット5において測定オーダの受付が可能である。ユーザは、情報処理ユニット5の入力部53を操作することで、血液試料毎に測定オーダを入力することができる。また、ユーザは血球分析装置1と通信可能に接続された臨床検査情報管理装置6(
図2参照)に測定オーダを入力することもできる。この場合、測定オーダは臨床検査情報管理装置6から情報処理ユニット5へ送信される。このようにして入力された測定オーダは、ハードディスク51dに記憶され、測定動作に用いられる。血球分析装置1は、上述したようにRBC、PLT、HGB、WBC、NRBC、NEUT、LYMPH、EO、MONO、BLAST、HPC、RET、PLT−F等の測定項目について血液試料の分析が可能である。また、血球分析装置1では、1又は複数の測定項目からなるグループ測定項目が定められており、グループ測定項目を指定した測定オーダを受け付けることが可能である。グループ測定項目としては、全血算測定項目(CBC)、白血球分類項目(DIFF)、網赤血球に関する測定項目(RET)、血小板に関する測定項目(PLT−F)、幼若血液細胞に関する測定項目(WPC)および造血前駆細胞に関する測定項目(HPC)がある。全血算測定は、血液疾患の診断、経過観察、貧血、感染症、出血の有無等を検査する場合に頻用される測定であり、少なくとも、赤血球数、白血球数、ヘモグロビン量、ヘマトクリット値、平均赤血球容積、平均赤血球血色素量、平均赤血球血色素濃度、血小板数が算出される。グループ測定項目CBCは、RBC、PLT、HGB、WBC等からなり、グループ測定項目DIFFは、NEUT、LYMPH、EO、MONO、BASOからなり、グループ測定項目RETはRETからなり、グループ測定項目PLT−FはPLT−Fからなり、グループ測定項目WPCはBLAST等からなり、グループ測定項目HPCは、CBC、DIFF、RET、PLT−Fに含まれる各項目とHPCとからなる。例えば、グループ測定項目CBCを指定した測定オーダが入力された場合には、グループ測定項目CBCに含まれる測定項目であるRBC、PLT、HGB、WBC等について血液試料の測定が行われ、グループ測定項目HPCを指定した測定オーダが入力された場合には、グループ測定項目CBC、DIFF、RET、及びPLT−Fに含まれる測定項目であるRBC、PLT、HGB、WBC、NEUT、LYMPH、EO、MONO、RET、PLT−F等と、グループ測定項目HPCに含まれる測定項目であるHPCとについて血液試料の測定が行われる。
【0070】
この血球分析装置1では、グループ測定項目CBC,DIFF,RET,PLT−Fの少なくとも一つはどの検体に対しても測定されるため、グループ測定項目CBC,DIFF,RET,PLT−Fは基本項目として設定されている。一方、グループ測定項目HPCに含まれる単項目であるHPCは、ユーザの要望に応じて追加的に測定される追加項目として設定されている。
【0071】
[血球分析装置1の測定動作]
以下、本実施の形態に係る血球分析装置1の測定動作について説明する。
【0072】
図5は、血球分析装置1がマニュアル測定モードで測定動作を行う場合の情報処理ユニット5の処理手順を示すフローチャートである。血球分析装置1が起動されると、情報処理ユニット5のCPU51aは、プログラム及び各種設定値の初期化等の初期化処理を実行する(ステップS101)。この初期化処理を行うことにより、測定ユニット2が測定スタンバイ状態(測定開始が可能な状態)となる。
【0073】
測定スタンバイ状態において、ユーザはモード切替スイッチ26aを押下することで、サンプラ測定モードからマニュアル測定モードに切り替える。このとき、測定ユニット2の前面から試料容器搬送部25が送出される。このようにモード切替スイッチ26aが押下されることにより、情報処理ユニット5にマニュアル測定モードの設定指示が与えられる。
【0074】
情報処理ユニット5のCPU51aは、上記のようなマニュアル測定モードの設定指示が与えられたか否かを判別する(ステップS102)。マニュアル測定モードの設定指示が与えられていない場合には(ステップS102においてNO)、CPU51aは再度ステップS102の処理を繰り返す。
【0075】
一方、マニュアル測定モードの設定指示が与えられた場合には(ステップS102においてYES)、CPU51aは表示部52に測定モード設定ダイアログを表示させる(ステップS103)。
図6は、測定モード設定ダイアログを示す図である。
図6に示すように、測定モード設定ダイアログ700には、全血測定モードを設定するためのラジオボタン701と、HPC測定モードを設定するためのラジオボタン702とが設けられている。全血測定モードとは、全血検体を試料として使用する場合の測定モードであり、HPC測定モードとは、造血前駆細胞を検出するための測定モードである。
【0076】
ユーザは、ラジオボタン701または702を選択することで、測定モードを設定する。なお、測定モードのデフォルト値は全血測定モードである。
【0077】
また、測定モード設定ダイアログ700には、OKボタン703とキャンセルボタン704とが設けられている。ユーザは、上記のラジオボタン701または702を選択することで測定モードを指定した上で、その測定モードによる試料の測定を実行する場合には、OKボタン703を選択する。一方、ユーザは試料測定を中止する場合には、キャンセルボタン704を選択する。
【0078】
CPU501は、何れの測定モードの設定を受け付けたかを判別する(ステップS104)。全血測定モードの設定を受け付けた場合(ステップS104において「全血」)、CPU51aは、測定オーダ入力ダイアログを表示部52に表示させる(ステップS105)。
【0079】
図7は、測定オーダ入力ダイアログを示す図である。測定オーダ入力ダイアログ710には、試料ID(検体番号)を入力するための入力ボックス711と、血液試料が採取された患者に割り当てられた患者IDを入力するための入力ボックス712とが設けられている。ユーザは、入力部53を操作することにより、入力ボックス711に試料IDを入力し、入力ボックス712に患者IDを入力することができる。また、ユーザは情報処理ユニット5に接続されたハンディバーコードリーダを用いて試料容器Tに付された試料バーコードを読み取らせることで、試料ID及び患者IDを入力することもできる。
【0080】
また、測定オーダ入力ダイアログ710には、測定項目を指定するための複数のチェックボックス713〜717が設けられている。チェックボックス713〜717は、グループ測定項目を指定するためのチェックボックスである。さらに具体的には、チェックボックス713は、CBCを指定するためのチェックボックスであり、チェックボックス714は、DIFFを指定するためのチェックボックスであり、チェックボックス715は、RETを指定するためのチェックボックスであり、チェックボックス716は、PLT−Fを指定するためのチェックボックスであり、チェックボックス717は、WPCを指定するためのチェックボックスである。なお、全血測定においてはCBCは必須の項目であり、チェックボックス713は最初から選択された状態であり、この選択を外すことはできないようになっている。
【0081】
また、測定オーダ入力ダイアログ710には、OKボタン718とキャンセルボタン719とが設けられている。ユーザは、上記の入力ボックス711、712に試料ID及び患者IDを入力し、チェックボックス713〜714の少なくとも1つを選択することでグループ測定項目を指定した上で、その測定オーダによる試料の測定を実行する場合には、OKボタン718を選択する。一方、ユーザは試料測定を中止する場合には、キャンセルボタン719を選択する。
【0082】
ユーザが測定オーダ入力ダイアログ710のOKボタン718を選択することで、測定オーダが情報処理ユニット5に与えられる。CPU51aは、このようにして測定オーダを受け付け、当該測定オーダをハードディスク51dに記憶させる(ステップS106)。ユーザは、情報処理ユニット5に測定オーダを与えた後、試料容器Tを試料容器セット部25bに載置し、測定開始スイッチ26bを押下する。これにより、情報処理ユニット5に測定開始が指示され、試料容器Tが試料容器搬送部25と共に測定ユニット2の内部に移送される。
【0083】
CPU51aは、測定開始指示を受け付けたか否かを判別する(ステップS107)。測定開始指示を受け付けていない場合には(ステップS107においてNO)、CPU51aは再度ステップS107に処理を戻す。一方、CPU51aは、測定開始指示を受け付けた場合には(ステップS107においてYES)、全血測定モードにおける試料の測定(以下、「全血測定」という。)を測定ユニット2に実行させるための制御処理である全血測定制御処理を実行する(ステップS108)。全血測定制御処理の詳細については後述する。
【0084】
全血測定制御処理では、測定オーダで指定された測定項目について血液試料の測定が行われる。測定ユニット2において血液試料が測定された結果生成されたデータ(以下、「測定データ」という。)は、情報処理ユニット5へ送信される。情報処理ユニット5のCPU51aは、受信した測定データを解析し(ステップS109)、各測定項目の測定値(例えば、血球の計数値)を求める。CPU51aは、このようにして得られた血液試料の分析結果を分析結果データベース55に格納し、当該分析結果を表示部52に表示させる(ステップS110)。
【0085】
なお、測定動作において血液試料が吸引された試料容器Tは、測定ユニット2の外部に排出される。
【0086】
ユーザは、血球分析装置1を停止させる場合には、入力部53を操作することにより、シャットダウンの指示を情報処理ユニット5に与える。CPU51aは、シャットダウンの指示を受け付けたか否かを判別し(ステップS111)、シャットダウンの指示を受け付けていない場合には(ステップS111においてNO)、ステップS102に処理を戻す。一方、シャットダウンの指示を受け付けた場合には(ステップS111においてYES)、CPU51aは、シャットダウン処理を実行し(ステップS112)、処理を終了する。
【0087】
ステップS104において、HPC測定モードの設定を受け付けた場合(ステップS104において「HPC」)、CPU51aは、測定オーダ入力ダイアログを表示部52に表示させる(ステップS113)。HPC測定モードが設定された場合の測定オーダ入力ダイアログは、上述した全血測定モードが設定された場合の測定オーダ入力ダイアログ710のうち、測定項目を指定するための複数のチェックボックス713〜717、オープン測定を指定するためのチェックボックス718、及び血液吸引センサー(血液吸引センサーによって血液の有無を確認する測定動作)を指定するためのチェックボックス720がないものと同じである。つまり、HPC測定モードが設定された場合の測定オーダ入力ダイアログには、試料IDを入力するための入力ボックスと、患者IDを入力するための入力ボックスと、ホスト問合せを指定するためのチェックボックスと、OKボタンと、キャンセルボタンとが設けられている。
【0088】
HPC測定モードでは、WPC以外の全グループ測定項目、即ち、CBC、DIFF、RET、PLT−F、及びHPCのそれぞれが自動的に指定される。つまり、ユーザは、上記の2つの入力ボックスのそれぞれに試料ID及び患者IDを入力することで、上記のグループ測定項目CBC、DIFF、RET、PLT−F、及びHPCが指定された測定オーダを入力することができる。このようにしてユーザは測定オーダを入力した上で、その測定オーダによる試料の測定を実行する場合には、測定オーダ入力ダイアログのOKボタンを選択する。一方、ユーザは試料測定を中止する場合には、キャンセルボタンを選択する。
【0089】
ユーザが測定オーダ入力ダイアログのOKボタンが選択することで、CPU51aが測定オーダを受け付け、当該測定オーダをハードディスク51dに記憶させる(ステップS114)。ユーザは、情報処理ユニット5に測定オーダを与えた後、試料容器Tを試料容器セット部25bに載置し、測定開始スイッチ26bを押下する。これにより、情報処理ユニット5に測定開始が指示され、試料容器Tが試料容器搬送部25と共に測定ユニット2の内部に移送される。
【0090】
CPU51aは、測定開始指示を受け付けたか否かを判別する(ステップS115)。測定開始指示を受け付けていない場合には(ステップS115においてNO)、CPU51aは再度ステップS115に処理を戻す。一方、CPU51aは、測定開始指示を受け付けた場合には(ステップS115においてYES)、HPC測定モードにおける試料の測定を測定ユニット2に実行させるための制御処理であるHPC測定制御処理を実行する(ステップS116)。HPC測定制御処理の詳細については後述する。
【0091】
HPC測定制御処理では、WPCを除く各グループ測定項目に含まれる測定項目について血液試料の測定が行われる。測定ユニット2において血液試料が測定された結果生成された測定データは、情報処理ユニット5へ送信される。情報処理ユニット5のCPU51aは、受信した測定データを解析し(ステップS109)、HPC測定モードにおける血液試料の分析結果を分析結果データベース55に格納し、当該分析結果を表示部52に表示させる(ステップS110)。その後の処理は、上述したステップS111以降の内容と同じである。
【0092】
<全血測定制御処理>
次に、全血測定制御処理について説明する。
図8は、情報処理ユニット5における全血測定制御処理の手順を示すフローチャートである。
【0093】
全血測定制御処理において、まずCPU51aは、測定ユニット2に、88μLの血液試料を吸引させる(ステップS201)。この88μLの血液試料は、全血測定における各測定項目についての測定に用いられる血液試料であり、これ以外の測定には使用されない。この処理により、測定ユニット2が制御され、取り込まれた試料容器Tから試料吸引部21により88μLの血液試料が吸引される。
【0094】
次にCPU51aは、測定ユニット2に、RBC/PLT測定試料の調製及びRBC/PLT測定を実行させる(ステップS202)。この処理により、測定ユニット2が制御され、吸引管211から第1混合チャンバ221に4μLの血液試料が吐出され、希釈液容器201aから第1混合チャンバ221に1mLの希釈液が供給され、第1混合チャンバ221内で血液試料と希釈液とが混合撹拌されることにより、RBC/PLT測定試料が調製される。また、調製されたRBC/PLT測定試料の一部は、第1検出器D1へと供給され、RBC/PLT測定が実行される。
【0095】
次にCPU51aは、測定ユニット2に、HGB測定試料の調製及びHGB測定を実行させる(ステップS203)。この処理により、測定ユニット2が制御され、ヘモグロビン溶血剤容器201bから第1混合チャンバ221に所定量のヘモグロビン溶血剤が供給され、第1混合チャンバ221内に残留しているRBC/PLT測定試料とヘモグロビン溶血剤とが混合撹拌されることにより、HGB測定試料が調製される。また、調製されたHGB測定試料は、第2検出器D2へと供給され、HGB測定が実行される。
【0096】
次にCPU51aは、測定ユニット2に、WNR測定試料の調製及びWNR測定を実行させる(ステップS204)。この処理により、測定ユニット2が制御され、吸引管211から第3混合チャンバ223に17μLの血液試料が吐出され、有核赤血球検出用溶血剤容器203aから第3混合チャンバ223に1mLの有核赤血球検出用溶血剤が供給され、有核赤血球検出用染色液容器203bから第3混合チャンバ223に20μLの有核赤血球検出用染色液が供給され、第3混合チャンバ223内で血液試料と試薬とが混合撹拌されることにより、WNR測定試料が調製される。また、調製されたWNR測定試料は、第3検出器D3へと供給され、WNR測定が実行される。
【0097】
次にCPU51aは、ハードディスク51dに記憶された測定オーダにおいてDIFFが指定されているか否かを判別する(ステップS205)。測定オーダにおいてDIFFが指定されている場合には(ステップS205においてYES)、CPU51aは、測定ユニット2に、DIFF測定試料の調製及びDIFF測定を実行させ(ステップS206)、ステップS208へ処理を移す。この処理により、測定ユニット2が制御され、吸引管211から第2混合チャンバ222に17μLの血液試料が吐出され、白血球分類用溶血剤容器202aから第2混合チャンバ222に1mLの白血球分類用溶血剤が供給され、白血球分類用染色液容器202bから第2混合チャンバ222に20μLの白血球分類用染色液が供給され、第2混合チャンバ222内で血液試料と試薬とが混合撹拌されることにより、DIFF測定試料が調製される。また、調製されたDIFF測定試料は、第3検出器D3へと供給され、DIFF測定が実行される。
【0098】
一方、測定オーダにおいてDIFFが指定されていない場合には(ステップS205においてNO)、CPU51aは、測定ユニット2に、DIFF測定試料の調製に使用される量と同量の血液試料を廃棄させ(ステップS207)、ステップS208へ処理を移す。これにより、吸引管211から17μLの血液試料が吐出されることとなる。
【0099】
CPU51aは、ハードディスク51dに記憶された測定オーダにおいてRETが指定されているか否かを判別する(ステップS208)。測定オーダにおいてRETが指定されている場合には(ステップS208においてYES)、CPU51aは、測定ユニット2に、RET測定試料の調製及びRET測定を実行させ(ステップS209)、ステップS211へ処理を移す。この処理により、測定ユニット2が制御され、吸引管211から第5混合チャンバ225に5μLの血液試料が吐出され、希釈液容器201aから第5混合チャンバ225に1mLの希釈液が供給され、網赤血球検出用染色液容器205aから第5混合チャンバ225に20μLの網赤血球検出用染色液が供給され、第5混合チャンバ225内で血液試料と試薬とが混合撹拌されることにより、RET測定試料が調製される。また、調製されたRET測定試料は、第3検出器D3へと供給され、RET測定が実行される。RET測定試料がRET測定に供された後、第5混合チャンバ225に残留した液体は廃棄され、第5混合チャンバ225が洗浄される。
【0100】
一方、測定オーダにおいてRETが指定されていない場合には(ステップS208においてNO)、CPU51aは、測定ユニット2に、RET測定試料の調製に使用される量と同量の血液試料を廃棄させ(ステップS210)、ステップS211へ処理を移す。これにより、吸引管211から5μLの血液試料が吐出されることとなる。
【0101】
CPU51aは、ハードディスク51dに記憶された測定オーダにおいてPLT−Fが指定されているか否かを判別する(ステップS211)。測定オーダにおいてPLT−Fが指定されている場合には(ステップS211においてYES)、CPU51aは、測定ユニット2に、PLT−F測定試料の調製及びPLT−F測定を実行させ(ステップS212)、ステップS214へ処理を移す。この処理により、測定ユニット2が制御され、吸引管211から第5混合チャンバ225に5μLの血液試料が吐出され、希釈液容器201aから第5混合チャンバ225に1mLの希釈液が供給され、血小板検出用染色液容器205bから第5混合チャンバ225に20μLの血小板検出用染色液が供給され、第5混合チャンバ225内で血液試料と試薬とが混合撹拌されることにより、PLT−F測定試料が調製される。また、調製されたPLT−F測定試料は、第3検出器D3へと供給され、PLT−F測定が実行される。
【0102】
一方、測定オーダにおいてPLT−Fが指定されていない場合には(ステップS211においてNO)、CPU51aは、測定ユニット2に、PLT−F測定試料の調製に使用される量と同量の血液試料を廃棄させ(ステップS213)、ステップS214へ処理を移す。これにより、吸引管211から5μLの血液試料が吐出されることとなる。
【0103】
CPU51aは、ハードディスク51dに記憶された測定オーダにおいてWPCが指定されているか否かを判別する(ステップS214)。測定オーダにおいてWPCが指定されている場合には(ステップS214においてYES)、CPU51aは、測定ユニット2に、WPC測定試料の調製及びWPC測定を実行させる(ステップS215)。この処理により、測定ユニット2が制御され、吸引管211から第4混合チャンバ224に5μLの血液試料が吐出され、希釈液容器201aから第4混合チャンバ224に1mLの希釈液が供給され、幼若細胞検出用染色液容器204bから第5混合チャンバ225に20μLの幼若細胞検出用染色液が供給され、第4混合チャンバ224内で血液試料と試薬とが混合撹拌されることにより、WPC測定試料が調製される。また、調製されたWPC測定試料は、第3検出器D3へと供給され、WPC測定が実行される。ステップS215の処理が完了した後、CPU51aは、メインルーチンの全血測定制御処理の呼出アドレスに処理をリターンする。
【0104】
一方、測定オーダにおいてWPCが指定されていない場合には(ステップS214においてNO)、CPU51aは、測定ユニット2に、WPC測定試料の調製に使用される量と同量の血液試料を廃棄させる(ステップS216)。これにより、吸引管211から5μLの血液試料が吐出されることとなる。ステップS216の処理が完了した後、CPU51aは、メインルーチンの全血測定制御処理の呼出アドレスに処理をリターンする。
【0105】
上述したような全血測定においては、どのような測定項目が指定されていたとしても、常に同量(88μL)の血液試料が吸引され、同一の測定項目についての測定では、吸引管211において常に同じ位置の血液試料が使用される。このことを以下に詳しく説明する。
【0106】
図9は、血液試料を吸引したときの吸引管211の状態を模式的に示す断面図である。
図9に示すように、全血測定においては、88μLの血液試料801が吸引管211の内部に吸引される。これは、先端付近まで希釈液802が充填された吸引管211が試料容器T内に挿入された状態で、シリンジポンプ212が駆動されることにより、吸引管211の内部の希釈液802が移動し、これに伴って試料容器T内の血液試料が吸引管内に移動することで実現される。また、血液試料801の希釈化を抑制するために、希釈液802と血液試料801との間には空気層803が介在される。
【0107】
吸引された88μLの血液試料801は、吸引管211内の位置によって使用対象の測定項目が定まっている。つまり、88μLの血液試料が吸引された直後、即ち、吸引された血液試料が全く吐出されていない状態において、吸引管211の先端の位置211aの血液試料は、RBC、PLT、HGBの測定に使用される血液試料であり、位置211aの上方の位置211bの血液試料は、WNR測定に使用される。また、位置211bよりもさらに上方の位置211cの血液試料はDIFF測定に使用され、位置211cよりもさらに上方の位置211dの血液試料はRET測定に使用され、位置211dよりもさらに上方の位置211eの血液試料はPLT−F測定に使用され、位置211eよりもさらに上方の位置211fの血液試料はWPC測定に使用される。
【0108】
全血測定において特定の測定項目のみしか測定を実行しない場合には、測定の対象でない測定項目に対応する血液試料は廃棄される。つまり、測定の対象でない測定項目に対応する血液試料が、他の測定項目についての測定に用いられることがなく、測定項目に対応付けられた位置の血液試料は、その測定項目についての測定にのみ使用される。例えば、CBC及びRETについてしか測定を行わない場合には、位置211aの位置の血液試料がRBC、PLT、HGBの測定に使用され、位置211bの血液試料がWNR測定に使用される。DIFFの測定が行われないことから、位置211cの血液試料が廃棄され、位置211dの血液試料がRET測定に使用される。PLT−F、WPCの測定は行われないことから、位置211e及び211fの血液試料は廃棄される。
【0109】
血液試料の吸引において、シリンジポンプ212が動作することで希釈液が移動すると、希釈液が通過した管路の壁面には微小ではあるが希釈液が付着している。この部分に試料容器Tから血液試料が上昇することで血液試料が希釈液と混合される。このような血液試料と希釈液との混合は、空気層803の付近において発生するため、空気層803に近い位置の血液試料は濃度が低く、空気層803から離れた位置の血液試料は濃度が高くなる。このように吸引管211内の血液試料は位置によって濃度が異なることから、例えば、1つの測定項目についての測定を、あるときは吸引管211の先端の位置の血液試料を使用し、別のときには吸引管211の空気層803に近接する位置の血液試料を使用するようにすると、それぞれの測定に使用される血液試料の希釈度合が互いに異なり、正確な測定結果を得ることができなくなる。このようなことから、上記のように測定項目別に使用する血液試料の吸引管211内の位置を定めることで、同一の測定項目についての測定は、血液試料が異なっても吸引の条件が共通となり、血液試料の間で希釈度合の違いによる測定結果への影響が発生することを抑制することができる。
【0110】
<HPC測定制御処理>
次に、HPC測定制御処理について説明する。
図10は、情報処理ユニット5におけるHPC測定制御処理の手順を示すフローチャートである。
【0111】
HPC測定モードでは、WPCを除く全グループ測定項目を指定した全血測定を実行した後に、HPC測定試料の調製及びHPC測定試料の測定(以下、「HPC測定」という。)が4回実行される。HPC測定制御処理において、まずCPU51aは、測定ユニット2に、88μLの血液試料を吸引させる(ステップS301)。この88μLの血液試料は、全血測定における各測定項目についての測定に用いられる血液試料であり、HPC測定には使用されない。この処理により、測定ユニット2が制御され、取り込まれた試料容器Tから試料吸引部21により88μLの血液試料が吸引される。
【0112】
次にCPU51aは、測定ユニット2に、RBC/PLT測定試料の調製及びRBC/PLT測定を実行させる(ステップS302)。続いて、CPU51aは、測定ユニット2に、HGB測定試料の調製及びHGB測定(ステップS303)、WNR測定試料の調製及びWNR測定(ステップS304)、DIFF測定試料の調製及びDIFF測定(ステップS305)、RET測定試料の調製及びRET測定(ステップ306)、PLT−F測定試料の調製及びPLT−F測定(ステップS307)を順次実行させる。なお、ステップS302の処理はステップS202の処理と、ステップS303の処理はステップS203の処理と、ステップS304の処理はステップS204の処理と、ステップS305の処理はステップS206の処理と、ステップS306の処理はステップS209の処理と、ステップS307の処理はステップS212の処理と、それぞれ同様であるので、詳細な説明を省略する。
【0113】
次にCPU51aは、測定ユニット2に、吸引管211内に残留する血液試料を廃棄させ、吸引管211を含む血液試料の流路の洗浄動作を実行させる(ステップS308)。以上により、1回目に吸引した88μLの血液試料は全て吸引管211から排除される。
【0114】
続いてCPU51aは、測定ユニット2に、100μLの血液試料を吸引させる(ステップS309)。この100μLの血液試料は、HPC測定に用いられる血液試料であり、他の測定項目についての測定には使用されない。この処理により、測定ユニット2が制御され、取り込まれた試料容器Tから試料吸引部21により100μLの血液試料が吸引される。
【0115】
次にCPU51aは、HPC測定の回数を示す変数Nの初期値として“0”をRAM51cに記憶させ(ステップS310)、測定ユニット2に、HPC測定試料の調製及びHPC測定を実行させる(ステップS311)。この処理により、測定ユニット2が制御され、吸引管211から第4混合チャンバ224に17μLの血液試料が吐出され、希釈液容器201aから第4混合チャンバ224に希釈液が供給され、幼若細胞検出用染色液容器204bから第5混合チャンバ225に幼若細胞検出用染色液が供給され、第4混合チャンバ224内で血液試料と試薬とが混合撹拌されることにより、HPC測定試料が調製される。また、調製されたHPC測定試料は、第3検出器D3へと供給され、HPC測定が実行される。
【0116】
CPU51aは、変数Nの値が“4”以上であるか否かを判別し(ステップS312)、“4”未満である場合には(ステップS312においてNO)、変数Nの値を“1”だけインクリメントし(ステップS313)、ステップS311へ処理を移す。これにより、再度HPC測定試料の調製及びHPC測定が実行される。
【0117】
ステップS312において変数Nの値が“4”以上である場合には(ステップS312においてYES)、CPU51aは、メインルーチンのHPC測定制御処理の呼出アドレスに処理をリターンする。
【0118】
HPC測定モードにおいては、上記のように4回HPC測定が行われる。つまり、測定ユニット2から情報処理ユニット5へ送信される測定データには、HPCについての4つの測定データが含まれる。よってHPC測定モードにおける血液試料の測定が実行された場合のステップS109の処理では、取得された4つの測定値を平均する処理が行われる。
【0119】
上述したように、HPC測定モードにおける血液試料の測定においては、まず88μLの血液試料が吸引され、この88μLの血液試料を使用して基本項目(全血測定モードで測定可能な測定項目)についての測定が実行され、その後、100μLの血液試料が吸引され、この100μLの血液試料を使用してHPCについての測定が実行される。これにより、全血測定モードと同一の血液試料の吸引条件で、基本項目(CBC、DIFF、RET、PLT−F)についての測定を実行することができ、吸引条件の相違による血液試料の濃度のバラツキの影響を抑制することができる。
【0120】
また、全血測定モードにおける測定対象の測定項目と、HPC測定モードにおける基本項目の測定における測定対象の測定項目とが相違する場合でも、それぞれにおいて同量(88μL)の血液試料が吸引され、測定が行われる。このように、基本項目についての測定が行われる場合、測定モードが全血測定モードであるかHPC測定モードであるかに関らず、また、測定対象の測定項目に関らず、吸引される血液試料の量が常に同一とされるため、血液試料の希釈度合が常に同程度となり、血液試料の濃度のバラツキの影響を抑制することができる。
【0121】
次に、上記のような測定動作により得られた分析結果を示す画面について説明する。
図11及び
図12は、血球分析装置1の分析結果一覧画面の例を示す図である。分析結果一覧画面は、ユーザが入力部53に対して所定の操作、つまり、分析結果一覧画面の表示を指示する操作を行うことで、表示部52に表示される。
図11及び
図12に示すように、分析結果一覧画面900には、分析結果データベース55に格納されている分析結果データを一覧表示するためのリスト表示部901が設けられている。リスト表示部901は、分析結果データベース55から抽出された複数の分析結果データがリスト形式で表示される。かかるリスト表示部901には、検体番号(試料ID)を表示する領域、測定日を表示する領域、測定時刻を表示する領域等が含まれており、ユーザは当該リスト表示部901にリスト形式で表示された分析結果データを参照することで、測定情報を確認したい血液試料に対応する分析結果データを探すことができる。また、リスト表示部901における任意の行はマウスのクリック操作等により選択可能であり、これにより選択された行に対応する分析結果データが選択される。ユーザにより1つの行が選択されると、その行の背景色が選択されていないことを示す色(例えば、白色)から選択されたことを示す色(例えば、青色)に切り替わる。
図11及び
図12においては、ハッチングを付した行が選択されていることを示している。
【0122】
分析結果一覧画面900において、リスト表示部901の右方には測定値をリスト表示するための測定値表示部902が設けられており、リスト表示部901の下方には患者属性情報を表示するための患者属性情報表示部903が設けられている。リスト表示部901において分析結果データが選択されると、その分析結果データに含まれる測定値が測定値表示部902に表示され、また、前記分析結果データに含まれる患者属性情報が患者属性情報表示部903に表示される。
【0123】
図11には、全血測定モードにおいて測定された血液試料の分析結果データが選択された状態の分析結果一覧画面900が示されている。
図11における測定値表示部902には、測定された基本項目についての測定値が表示されている。
【0124】
図12には、HPC測定モードにおいて測定された血液試料の分析結果データが選択された状態の分析結果一覧画面900が示されている。HPC測定モードにおいて測定された血液試料の分析結果には、上述したようにHPC測定についての測定結果が含まれる。
図12に示すように、HPC測定モードにおいて測定された血液試料の分析結果データが選択されると、測定値表示部902には、基本項目についての測定値の下方にHPCについての測定値904が表示される。
【0125】
図13及び
図14は、分析結果詳細画面の例を示す図である。分析結果詳細画面は、上述したステップS110において表示部52に表示される画面である。また、ユーザが分析結果一覧画面900のリスト表示部901において1つの行をダブルクリックする等、分析結果データを指定して分析結果詳細画面の表示を指示する操作を行うことによっても、当該分析結果データについての分析結果詳細画面が表示部52に表示される。
【0126】
図13には、全血測定モードにおいて測定された血液試料の分析結果データを表示する分析結果詳細画面が示されている。分析結果詳細画面910には、グループ測定項目別に測定値を表示する複数の領域、即ち、CBC測定値表示部911、RET測定値表示部912、DIFF測定値表示部913、及びPLT−F測定値表示部914が設けられている。CBC測定値表示部911には、WBC、RBC、HGB、PLT等のCBCに属する項目についての測定値が表示される。RET測定値表示部912には、RET%(成熟赤血球数と網赤血球数との和に対する網赤血球数の比率)、RET#(網赤血球数)等のRETに属する項目についての測定値が表示される。また、DIFF測定値表示部913には、NEUT#(好中球数)、LYMPH#(リンパ球数)、EO#(好酸球数)、MONO#(単球数)等のDIFFに属する測定項目についての測定値が表示される。PLT−F測定値表示部914には、PLT−Fに属する測定項目であるIPF(幼若血小板比率)の測定値が表示される。また、上記のCBC測定値表示部911、RET測定値表示部912、DIFF測定値表示部913、PLT−F測定値表示部914において、特定の測定項目については、正常範囲の中における測定値の位置を示すグラフが表示される。
【0127】
分析結果詳細画面910においては、CBC測定値表示部911、RET測定値表示部912、DIFF測定値表示部913、PLT−F測定値表示部914のうち、分析結果データに測定値が含まれているグループ測定項目に対応するものだけが表示されるようになっている。つまり、分析結果データにCBCの測定値のみが含まれており、DIFF、RET、PLT−Fの測定値が含まれていない場合(即ち、当該血液試料を測定するときに与えられた測定オーダにおいてCBCのみが指定されていた場合)、分析結果詳細画面においてCBC測定表示部911が表示され、RET測定値表示部912、DIFF測定値表示部913、PLT−F測定値表示部914は表示されない。
【0128】
また、分析結果詳細画面910には、血液試料の測定の結果、WBCに関する異常が検出された場合に、当該異常を示す情報を表示するためのWBCフラグ表示部915と、血液試料の測定の結果、RBCに関する異常が検出された場合に、当該異常を示す情報を表示するためのRBCフラグ表示部916と、血液試料の測定の結果、PLTに関する異常が検出された場合に、当該異常を示す情報を表示するためのPLTフラグ表示部917とが設けられており、また、測定結果の確認等が必要であることを示す情報を表示するためのアクション表示部918と、測定エラーの発生又は再測定が必要であること等を示す情報を表示するためのエラー/ルールコメント表示部919とが設けられている。
【0129】
図14には、HPC測定モードにおいて測定された血液試料の分析結果データを表示する分析結果詳細画面が示されている。
図14に示す分析結果詳細画面910には、CBC測定値表示部911、RET測定値表示部912、DIFF測定値表示部913、及びPLT−F測定値表示部914に加え、HPC測定値表示部920が設けられている。HPC測定値表示部920には、HPCに属する測定項目であるHPC#(造血前駆細胞数)の測定値が表示される。
【0130】
以上のような構成とすることにより、血球分析装置1が全血測定モードで試料の測定を行うときには、測定項目に関わらず一定量(88μL)の血液試料を1回の吸引動作で試料容器Tから吸引するので、迅速に血液試料の測定を行うことができる。また、血球分析装置1がHPC測定モードで試料の測定を行うとき、即ち、基本項目(CBC、DIFF、RET、PLT−F)及びHPCの各項目について測定を行うときには、HPC項目を測定するための血液試料の吸引とは別に、全血測定モードと同量(88μL)の血液試料を1回の吸引動作で試料容器Tから吸引し、この血液試料を用いて基本項目(CBC、DIFF、RET、PLT−F)の測定を行うので、血液試料の吸引量が変化することによる基本項目の測定結果への影響を抑制することができる。なお、血液試料の吸引量が変化することを防ぐために、HPC測定モードで必要な検体量(基本項目用の88μL+HPC項目用の100μL)を全血測定モードの場合にも吸引する構成が考えられるが、本実施形態では全血測定モードでは基本項目用の血液試料のみを吸引する。これにより、HPC項目の測定が不要な場合にまでHPC項目用の検体を吸引することを防止できる。なお、測定プログラムのバージョンアップにより血球分析装置1の測定項目を後から追加することになった場合であっても、基本項目用の吸引と、追加項目用の吸引とを別々に行うことにより、基本項目の測定結果に影響を与えることなく、追加された測定項目の測定を行うことが可能となる。
【0131】
造血前駆細胞のように末梢血中における存在数が少ない成分を測定する場合に、測定回数を1回だけとすると、調製した測定試料中に検出可能な程度に測定対象の成分が含有されず、測定誤差を生ずる可能性がある。本実施の形態に係る血球分析装置では、HPC測定モードにおいては1つの血液試料についてHPC測定試料が4回調製され、HPC測定が4回実行される。このため、1つのHPC測定試料中には検出可能な程度に測定対象の成分(造血前駆細胞)が含有されていない場合であっても、他のHPC測定試料中には検出可能な量の当該成分が含有されている場合があり、4回の測定を実施することで当該成分を高い確実性で検出することが可能となる。
【0132】
(その他の実施の形態)
上述した実施の形態においては、ユーザがグループ測定項目を指定した測定オーダを血球分析装置1に与え、この測定オーダにしたがって血液試料の測定を実行する構成について述べたが、これに限定されるものではない。グループ測定項目に属する各測定項目(RBC、PLT、HGB、WBC、HPC等)を直接指定した測定オーダを受け付け、この測定オーダにしたがって血液試料の測定を実行する構成としてもよい。この場合、例えば、RBC、PLT、WBC、及びRETを指定した測定オーダを受け付けた場合に、第1の量の血液試料を吸引し、この吸引した血液試料を用いてRBC、PLT、WBC、及びRETについての測定を実行し、RBC、PLT、WBC、及びHPCを指定した測定オーダを受け付けた場合に、第1の量の血液試料を吸引し、この吸引した血液試料を用いてRBC、PLT、及びWBCについての測定を実行し、第2の量の血液試料を吸引し、この吸引した血液試料を用いてRETについての測定を実行する構成とすることができる。
【0133】
また、上述した実施の形態においては、マニュアル測定モードにおいての動作についてのみ説明したが、サンプラ測定モードにおいても本発明を実施してもよい。
【0134】
また、上述した実施の形態においては、測定ユニットと情報処理ユニットとが別々に設けられている構成について述べたが、これに限定されるものではない。測定ユニットに相当する機能と情報処理ユニットに相当する機能とを1つの筐体内に備える血球分析装置であってもよい。
【0135】
また、上述した実施の形態においては、測定ユニット2にはCPU等の演算部を設けず、情報処理ユニット5のCPU51aによって測定ユニット2の動作制御を行う構成について述べたが、これに限定されるものではない。測定ユニットにCPU及びメモリ等からなる制御部を設け、この制御部によって測定機構の動作制御を行う構成としてもよい。
【0136】
また、上述した実施の形態においては、単一のコンピュータ5aによりコンピュータプログラム54aの全ての処理を実行する構成について述べたが、これに限定されるものではなく、上述したコンピュータプログラム54aと同様の処理を、複数の装置(コンピュータ)により分散して実行する分散システムとすることも可能である。
【0137】
また、上述した実施の形態においては、基本項目(CBC,DIFF等)の測定に加えて造血前駆細胞の測定を実行する場合に、基本項目用の血液試料を吸引し、吸引された血液試料を試料調製部へ供給する動作と、造血前駆細胞の測定用の血液試料を吸引し、吸引された血液試料を試料調製部へ供給する動作とをそれぞれ行う例を示したが、本発明はこれに限られない。例えば、コンピュータプログラム54aのバージョンアップにより、基本項目の測定に加えて、マラリア原虫またはCRP(C反応性蛋白)の測定を可能とした場合に、基本項目用の血液試料を吸引し、吸引された血液試料を試料調製部へ供給する動作と、マラリア原虫またはCRP測定用の血液試料を吸引し、吸引された血液試料を試料調製部へ供給する動作とを実行するようにしてもよい。これにより、基本項目の測定精度が低下することなく、追加されたマラリア原虫またはCRPの測定を行うことができる。
【0138】
また、上述した実施の形態においては、グループ測定項目CBCにNRBC(有核赤血球)が含まれているが、本発明はこれに限られない。CBCからNRBCを除き、測定オーダ入力ダイアログ710において、CBCを選択するためのチェックボックスとは別に、NRBCを選択するためのチェックボックスを設けてもよい。