(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
エンジン(13)の排気ポート(55A)に接続される排気管上流部(61A)と、当該排気管上流部(61A)に対して排気ガスを浄化する触媒装置(63)を備えた排気マフラー装置において、
前記排気管上流部(61A)は、排気ポート接続部(72)、筒状管部(73)、及び、前記触媒装置(63)に接続される接続管部(74)をそれぞれ溶接して一体化した小組体(90)として形成され、
前記触媒装置(63)は、内部触媒体(80)と、当該内部触媒体(80)の外周に巻かれる保持マット(81)と、当該保持マット(81)が外周に巻かれた前記内部触媒体(80)を保持する筒状ケース(82)とを有し、
前記接続管部(74)の後端(74B)と前記触媒装置(63)の前記筒状ケース(82)とが溶接によって一体化されて組み立てられ、
前記接続管部(74)の板厚(T1)を前記筒状ケース(82)の板厚(T2)に対して2倍以上厚く且つ筒状ケース(82)に組み付けられた保持マット(81)の厚さよりも小さく形成するとともに、前記後端(74B)の内径(D1)と前記内部触媒体(80)の外径(D2)とを同一に形成し、前記筒状ケース(82)の端部(84)に当該端部(84)が縮径された縮径部(84A)が設けられ、前記筒状ケース(82)の前記端部(84)が前記接続管部(74)の外周に重なるように、前記接続管部(74)の前記後端(74B)が、前記縮径部(84A)に嵌合され、この嵌合部分で前記接続管部(74)の外周と前記縮径部(84A)の前端とが外側から溶接されていることを特徴とする排気マフラー装置。
前記触媒装置(63)は、径方向よりも軸方向に長いセラミック触媒装置であり、当該触媒装置(63)を内部に収納するマフラー本体(66)によってその周囲を覆われることを特徴とする請求項1記載の排気マフラー装置。
前記排気管上流部(61A)には、前記排気管上流部(61A)を外側から覆うアウターパイプ(75)がさらに溶接されていることを特徴とする請求項2記載の排気マフラー装置。
前記排気管上流部(61A)は、車体に固定される取付ハンガー部(64)を有し、当該取付ハンガー部(64)を前記排気管上流部(61A)に溶接によって固定する固定部(124)を備え、前記固定部(124)は、前記排気管上流部(61A)との間に補強板(76)を挟んで溶接されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の排気マフラー装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の構成では、排気管の下流端を拡大した部分に金属パイプを圧入するため、構造が複雑になる。また、特許文献2の構成では、膨出部を形成するため、構造が複雑になるとともに、膨出部が筒状ケースの内部に露出する場合、膨出部が排気の流れに影響する可能性がある。また、特許文献1のような排気管に触媒装置を追加し、触媒装置を備えた排気マフラーを形成する場合、触媒装置の上流側の排気管の内部の状態、特に溶接部の状態を確認できることが望ましい。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、触媒装置を備えた排気マフラー装置において、簡単な構成で溶接の裏ビードの発生を防止し、且つ、触媒装置の上流側の排気管の内部の状態を確認できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明は、エンジン(13)の排気ポート(55A)に接続される排気管上流部(61A)と、当該排気管上流部(61A)に対して排気ガスを浄化する触媒装置(63)を備えた排気マフラー装置において、前記排気管上流部(61A)は、排気ポート接続部(72)、筒状管部(73)、及び、前記触媒装置(63)に接続される接続管部(74)をそれぞれ溶接して一体化した小組体(90)として形成され、前記触媒装置(63)は、内部触媒体(80)と、当該内部触媒体(80)の外周に巻かれる保持マット(81)と、当該保持マット(81)が外周に巻かれた前記内部触媒体(80)を保持する筒状ケース(82)とを有し、前記接続管部(74)の後端(74B)と前記触媒装置(63)の前記筒状ケース(82)とが溶接によって一体化されて組み立てられ、前記接続管部(74)の板厚(T1)を前記筒状ケース(82)の板厚(T2)に対して2倍以上厚く且つ筒状ケース(82)に組み付けられた保持マット(81)の厚さよりも小さく形成するとともに、前記後端(74B)の内径(D1)と前記内部触媒体(80)の外径(D2)とを同一に形成し、前記筒状ケース(82)の端部(84)に当該端部(84)が縮径された縮径部(84A)が設けられ、前記筒状ケース(82)の前記端部(84)が前記接続管部(74)の外周に重なるように、前記接続管部(74)の前記後端(74B)が、前記縮径部(84A)に嵌合され、
この嵌合部分で前記接続管部(74)の
外周と前記縮径部(84A)
の前端とが
外側から溶接されていることを特徴とする。
この構成によれば、排気管上流部は、排気ポート接続部、筒状管部、及び、触媒装置に接続される接続管部をそれぞれ溶接して一体化した小組体として形成され、触媒装置は、内部触媒体と当該内部触媒体を保持する筒状ケースとを有し、接続管部の後端と触媒装置の筒状ケースとが溶接によって一体化されて組み立てられ、接続管部の板厚を筒状ケースの板厚に対して厚く形成するとともに、筒状ケースの端部が接続管部の外周に重なるように、接続管部の後端と触媒装置とを溶接したため、接続管部の後端と触媒装置との溶接部において、接続管部の板厚によって裏ビードの発生を簡単な構成で防止できるとともに、接続管部の後端と触媒装置とを溶接する前に、小組体として形成された排気管上流部の内部を確認することができる。
【0006】
また、上記構成において、前記触媒装置(63)は、径方向よりも軸方向に長いセラミック触媒装置であり、当該触媒装置(63)を内部に収納するマフラー本体(66)によってその周囲を覆われる構成としても良い。
この場合、マフラー本体によって触媒装置の周囲を覆うため、径方向よりも軸方向に長いセラミック触媒装置であっても、触媒装置をマフラー本体によって保護できるとともに、マフラー本体の小型化も図ることもできる。
【0007】
また、前記排気管上流部(61A)には
、前記排気管上流部(61A)を外側から覆うアウターパイプ(75)がさらに溶接され
ている構成としても良い。
この場合、排気管上流部には、
前記排気管上流部(61A)を外側から覆うアウターパイプがさらに溶接され
ているため、アウターパイプと排気管上流部との溶接部の状態を、接続管部の後端と筒状ケースとの溶接前に確認でき、また、マフラー本体はアウターパイプに溶接されるため、接続管部の後端と筒状ケースとの溶接後に溶接することができ、また、マフラー本体は触媒装置の下流となるため、マフラー本体とアウターパイプとの溶接部の裏ビードを許容できる。このため、セラミック触媒装置を収容し、しかも、排気管上流部からマフラー本体まで溶接で一体に構成した排気マフラー装置を容易に車体に組み付けすることができる。
【0008】
さらに、前記排気管上流部(61A)は、車体に固定される取付ハンガー部(64)を有し、当該取付ハンガー部(64)を前記排気管上流部(61A)に溶接によって固定する固定部(124)を備え、前記固定部(124)は、前記排気管上流部(61A)との間に補強板(76)を挟んで溶接されている構成としても良い。
この場合、取付ハンガー部を補強板に溶接する際の排気管上流部内の裏ビードの発生を防止できる。このため、溶接の作業性が良く、生産性を向上できる。
また、前記内部触媒体(80)の上流端(80A)及び保持マット(81)の上流端(81A)は、前記筒状ケース(82)の軸方向において同一の位置に位置す
る構成としても良い
。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る排気マフラー装置では、排気管上流部の接続管部の後端と触媒装置との溶接部において、接続管部の板厚によって裏ビードの発生を防止できるとともに、接続管部の後端と触媒装置とを溶接する前に、小組体として形成された排気管上流部の内部を確認することができる。
また、マフラー本体によって触媒装置の周囲を覆うため、径方向よりも軸方向に長いセラミック触媒装置であっても、触媒装置をマフラー本体によって保護できるとともに、マフラー本体の小型化も図ることもできる。
また、アウターパイプと排気管上流部との溶接部の状態を、接続管部の後端と筒状ケースとの溶接前に確認できる。マフラー本体はアウターパイプに溶接されるため、接続管部の後端と筒状ケースとの溶接後に溶接することができ、また、マフラー本体は触媒装置の下流となるため、マフラー本体とアウターパイプとの溶接部の裏ビードを許容できる。このため、セラミック触媒装置を収容し、しかも、排気管上流部からマフラー本体まで溶接で一体に構成した排気マフラー装置を容易に車体に組み付けすることができる。
【0010】
また、排気管上流部は、取付ハンガー部を排気管上流部に溶接によって固定する固定部は、排気管上流部を小組体として形成する際に形成されるため、取付ハンガー部の固定部を、接続管部の後端と筒状ケースとの溶接の前に確認することができる。
さらに、固定部は、排気管上流部との間に補強板を挟んで溶接され、補強板は、取付ハンガー部を固定部で溶接する前に予め溶接されているため、補強板の溶接部を接続管部の後端と筒状ケースとの溶接の前に確認することができるとともに、取付ハンガー部を補強板に溶接する際の排気管上流部内の裏ビードの発生を防止できる。このため、溶接の作業性が良く、生産性を向上できる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態に係る排気マフラー装置を備えた自動二輪車について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る自動二輪車の左側面図である。
図1に示すように、自動二輪車10は、車両前部に配置されるハンドル11によって操向可能に設けられた前輪12と、前輪12の後方に配置される駆動源としてのエンジン13と、エンジン13の後方に配置され、エンジン13によって駆動される後輪14と、前輪12と後輪14との間に配置されるシート15とを有し、このシート15に乗員が跨って座る形態の鞍乗り型車両である。
【0013】
自動二輪車10の車体フレーム40は、前輪12を支持するフロントフォーク16を操向可能に支持するヘッドパイプ41と、ヘッドパイプ41から車両後方へ後下がりに延びるメインフレーム42と、メインフレーム42の後部から後上がりに車両後部へ延びる左右一対のシートレール43と、メインフレーム42の後部から下方に延びる左右一対のピボットプレート44とを有している。
後輪14を軸支するスイングアーム18は、ピボットプレート44に揺動自在に軸支されている。スイングアーム18の後部とシートレール43の後部との間には、リヤクッション19が掛け渡されている。
【0014】
自動二輪車10は、樹脂製の車体カバー20によって覆われている。車体カバー20は、車両の前面を覆うフロントカバー21と、フロントカバー21の後部から車両後部まで連続して設けられ、車両の側面を覆う左右一対のサイドカバー22と、エンジン13の上方で車両の上部を覆うアッパーカバー25と、ピボットプレート44を覆うピボットプレートカバー27とを有している。
前輪12の上方には、フロントフェンダ28が配置され、ハンドル11の周囲にはハンドルカバー26が配置されている。後輪14の上方には、リヤフェンダ29が配置されている。
【0015】
エンジン13は、エンジンステー(不図示)によって、メインフレーム42に吊り下げられるようにして支持されている。
エンジン13は、シリンダ軸線54が車両前後方向に略水平に延びる単気筒の水平エンジンであり、車両後方側から順に、クランクケース52、シリンダブロック53、及び、シリンダヘッド55を有している。変速機(不図示)は、クランクケース52内に一体に設けられている。変速ペダル56は、クランクケース52に設けられる。
クランクケース52の左側面には、エンジン13の出力軸31が突出している。後輪14は、出力軸31のドライブスプロケット32と後輪14のドリブンスプロケット33との間に巻き掛けられたチェーン34を介して駆動される。
エンジン13の下面には、車幅方向に延びるステップステー47が取付けられ、運転者用のステップ48は、ステップステー47に設けられる。
【0016】
シリンダヘッド55の上方には、シリンダヘッド55の吸気ポートに接続されるスロットルボディ17が設けられている。
シリンダヘッド55の下面に形成された排気ポート55Aには、チェーン34の反対側の車両の右側を通って車両後部へ延びる排気マフラー装置60が接続されている。
【0017】
図2は、排気マフラー装置60の側面図である。
図1及び
図2に示すように、排気マフラー装置60は、排気ポート55Aに接続されて後方に延びる排気管61と、排気管61に接続され、排気管61を通った高温・高圧の排気ガスを減圧して外部に排出するマフラー62とを有している。排気管61の後部はマフラー62内に延びており、排気ガスを浄化する触媒装置63は、排気管61の後部に設けられてマフラー62内に収納されている。
排気マフラー装置60は、排気管61に設けられた前部ハンガー部64(取付ハンガー部)、及び、マフラー62に設けられた後部ハンガー部65を介して、車体側にボルト等によって固定される。
【0018】
マフラー62は、排気管61よりも大径の円筒状に形成された本体ケース66(マフラー本体)を有し、複数の隔壁67A,67B及び後壁68によって本体ケース66の内部空間が複数の膨張室X,Y,Zに仕切られた多段膨張式である。前側の膨張室Xと後側の膨張室Yとは、中央の膨張室Zを通って隔壁67A,67Bを貫通する第1連通管69によって連通し、膨張室Yと膨張室Zとは隔壁67Bを貫通する第2連通管70によって連通し、膨張室Zは、隔壁67B及び後壁68を貫通するテールパイプ71によってマフラー62の外側に連通している。
本体ケース66の前部には、排気管61が接続される上流端66A側ほど小径になるテーパー部66Bが形成されている。
排気ガスは、排気管61から膨張室Xに流入し、第1連通管69を通って膨張室Yに流入し、流れ方向を反転して第2連通管70を通って膨張室Zに流入し、再び流れ方向を反転してテールパイプ71を通って外部に排出される。
【0019】
図3は、排気管61の後部の断面図である。
図2及び
図3に示すように、排気管61は、複数の管を溶接で接合することで、前後に延びる一本の管状に形成されている。
排気管61は、排気ポート55Aに接続されるフランジを備えた排気ポート接続部72と、排気ポート接続部72から略同一径で触媒装置63側へ延びる管部73(筒状管部)と、管部73から延びて触媒装置63に接続される下流テーパー管部74(接続管部)と、管部73との間に隙間を開けた状態で管部73を外側から覆うアウターパイプ75とを有する排気管上流部61Aと、この排気管上流部61Aの下流端に接続される排気管下流部61Bとを備えている。排気管下流部61Bは、触媒装置63と、触媒装置63の下流側に接続されるテーパー管88及び管89を有している。
【0020】
排気管上流部61Aの下流テーパー管部74は、管部73の後端73Aの外周面に嵌合する前側接続部74Aと、触媒装置63に接続される後側接続部74B(接続管部の後端)と、前側接続部74Aと後側接続部74Bとの間で下流側の後側接続部74B側ほど拡径するテーパー部74Cとを有している。前側接続部74Aは、溶接ビード121によって外側から溶接される。
また、下流テーパー管部74は、金属板をプレス成形して形成した一対の半割り部材78A,78Bを、合わせ面78Cで溶接して円錐状の管になるように形成されている。このため、テーパー形状の設計の自由度を向上できるとともに、生産性を向上できる。
【0021】
アウターパイプ75は、縮径された端部75Aを上流端に有し、管部73の外周面に嵌合された端部75Aが溶接されて固定される。端部75Aは、溶接ビード122によって外側から溶接される。アウターパイプ75の下流端は、管部73の後端73Aの近傍に位置している。
マフラー62の本体ケース66の上流端66Aは、アウターパイプ75の外周面75Bに溶接ビード123によって外側から溶接される。マフラー62のテーパー部66B及びアウターパイプ75の内側の空間は、膨張室Xである。
管部73の外周面においてアウターパイプ75の上流側には、断面半円状の補強板76が溶接されている。前部ハンガー部64は、補強板76及びアウターパイプ75に溶接ビード124(固定部)(
図2)によって外側から溶接して固定されている。
【0022】
図4は、触媒装置63の断面図である。
図3及び
図4に示すように、触媒装置63は、円筒状の触媒体80(内部触媒体)と、触媒体80の外周に巻かれる保持マット81と、保持マット81を介して内部に触媒体80を保持する保持筒82(筒状ケース)とを備えて構成されている。
触媒装置63は排気管上流部61Aよりも大径に形成されており、排気管上流部61Aから触媒装置63に流入した排気ガスは、触媒体80によって浄化されるとともに、圧力が緩和される。
【0023】
触媒体80は、その円筒形状の外郭の内部に、軸線方向に沿って延びる多数の細孔を有するハニカム状の多孔構造体であり、内部の表面積が大きく構成されている。上記各細孔の壁には、排気ガス成分を分解する白金、ロジウム及びパラジウムが触媒として担持されている。触媒体80の基材は、多孔質のセラミックスが用いられているため、白金やロジウム等の触媒が担持され易い。ここで、セラミックスの材質の好ましい一例としては、コージェライト、ムライト、アルミナ、アルカリ土類金属のアルミネート、炭化ケイ素、窒化ケイ素等、或いはこれらの類似物を含む各種耐熱性セラミックスを用いることが可能である。
【0024】
保持マット81は、セラミックス製の繊維を圧縮又は集積して長尺のマット状に形成したものであり、触媒体80の外表面に巻き付けられ、触媒体80と保持筒82との間に狭持される。保持マット81は、繊維が絡み合った集合体であるため、比較的大きな弾性を有している。ここで、保持マット81の材質は、耐熱性及び弾性を有するものであれば良く、繊維状の金属を集積したものやグラスウール等を用いることもできる。
触媒体80に巻かれた状態の保持マット81の長手方向の長さは、触媒体80の長手方向(軸方向)の長さよりも小さく形成されている。
【0025】
保持筒82の材質は、強度及び耐熱性の高い金属が用いられ、例えばステンレスのような鋼材を用いることができる。
保持筒82は、軸方向に同一径で延びる円筒状のストレート部83と、排気の上流側の端部84(筒状ケースの端部)に形成される縮径部84Aとを有している。縮径部84Aは、軸方向に同一厚さのストレート部83の端を絞り加工によって縮径して形成されており、外径及び内径が小さくなっている。保持筒82の全長は触媒体80の全長よりも長い。
【0026】
図4に示すように、排気管上流部61Aの下流テーパー管部74の後側接続部74Bは、縮径部84Aの内周部に嵌合されて、溶接ビード125によって外側から溶接される。後側接続部74Bの端面85の位置は、ストレート部83の先端の位置に略一致している。
本実施の形態では、後側接続部74Bの板厚T1(接続管部の板厚)は、縮径部84Aの板厚T2(筒状ケースの板厚)よりも大きく設定されている。このように、縮径部84Aの内側の後側接続部74Bの板厚T1を縮径部84Aの板厚T2よりも厚くすることで、溶接ビード125の裏ビードが発生することを防止できる。これにより、排気ガスが通る後側接続部74Bの内周面の裏ビードの発生を防止でき、排気効率を向上できる。ここで、一例として、板厚T1は2mmであり、板厚T2は1mmであり、板厚T1を板厚T2の2倍以上とすることが、裏ビードの発生の防止のために好ましい。また、下流テーパー管部74の板厚は一様であり、全体に亘って板厚T1と同じ厚さになっている。
【0027】
触媒体80は、保持マット81が外周に巻かれた状態で、縮径部84Aとは反対側の下流端83Aから圧入されることで、保持筒82内に組み付けられる。
触媒体80の上流端80A及び保持マット81の上流端81Aは、保持筒82の軸方向において略同一の位置に位置するように互いに近接しているとともに、後側接続部74Bの端面85から隙間Sを確保した位置まで挿入されている。この隙間Sは、各部品の寸法公差や熱膨脹を考慮して端面85が触媒体80に接触しないようにしつつ、できるだけ小さく設定されている。
【0028】
また、後側接続部74Bの内径D1は、保持マット81と触媒体80との径方向の境界部86の径D2と略同一に形成されており、後側接続部74Bの内周面79と境界部86とは、径方向において略同一の位置に位置している。ここで、径D2は、保持マット81の内径、及び、触媒体80の外径と一致する。
このように、隙間Sをできるだけ小さくし、且つ、後側接続部74Bの内径D1と境界部86の径D2とを略同一にすることで、後側接続部74Bから触媒体80に流れる排気ガスの流れをスムーズにすることができる。すなわち、下流テーパー管部74の内周面79に沿って流れる排気ガスGは、後側接続部74Bの内周面に沿って真直ぐに触媒体80内に流れ、排気ガスGが保持マット81の上流端81Aに直接当たることを防止できる。このため、排気ガスGが保持マット81に及ぼす熱等の影響を抑制できるとともに、排気ガスGの流れをスムーズにすることができ、排気効率を向上してエンジン性能を向上できる。
【0029】
また、触媒体80の上流端80A及び保持マット81の上流端81Aは、保持筒82の軸方向において略同一の位置に位置するように互いに近接しているため、上流端80Aと上流端81Aとのずれによって隙間Sの部分に不必要な空間が形成されることを防止できる。このため、排気ガスの乱れを防止してエンジン性能を向上できる。
さらに、保持筒82に縮径部84Aを設け、この縮径部84Aに下流テーパー管部74の後側接続部74Bを嵌合させるため、内径D1と径D2とを略同一にする構成において、保持マット81の厚さが大きい場合であっても、下流テーパー管部74の板厚を必要以上に厚くしなくても良くなり、軽量化を図ることができる。
【0030】
触媒体80の全長は保持マット81の全長より長く、上流端80A及び上流端81Aは軸方向に揃えて配置されているため、保持マット81の下流端81Bが触媒体80の下流端80Bよりも軸方向にはみ出すことを防止できる。このため、保持マット81が邪魔にならず、圧入の作業性が良い。
図3に示すように、保持筒82の下流端83Aの内周部には、排気の下流側ほど小径になるテーパー管88が嵌合されて溶接される。テーパー管88の下流端には、後端が閉塞された管89が接続されており、排気ガスは、管89の外周面に形成された複数の小孔89Aを通って膨張室Xに流入する。
【0031】
図2に示すように、触媒装置63は、径方向よりも軸方向に長く形成されているが、マフラー62の本体ケース66によって周囲を覆われているため、細長い触媒装置63であっても強度を十分に確保できる。また、触媒装置63が細長いため、マフラー62を径方向に小型化でき、配置スペースに余裕が無い鞍乗り型車両であっても、排気マフラー装置60を配置し易い。
また、触媒装置63を本体ケース66に収納するため、マフラー62の周囲に配置される部品を触媒装置63の輻射熱から保護することができる。さらに、単一の触媒体80を本体ケース66の上流側で小径に形成されたテーパー部66Bに配置するため、マフラー62を小型化しつつ、触媒体80を排気ガスの熱で迅速に活性化できる。
【0032】
ここで、排気マフラー装置60の製造工程について説明する。
排気マフラー装置60は、触媒装置63を有する排気管下流部61Bと排気管上流部61Aとを接続した後に、本体ケース66を接続することで組立てられる。
図5は、触媒装置63の製造工程を示す図である。
図5に示すように、まず、コーティング装置100によって円筒状の基材に触媒組成物の溶液がコーティングされ、加熱炉101によって焼成されることで、触媒組成物が基材に定着され、触媒体80が形成される。コーティング及び焼成の工程は、1回または複数回実施される。
次いで、圧入工程では、触媒体80に保持マット81が巻き付けられ、縮径部84Aとは反対側の下流端83Aから、触媒体80及び保持マット81が保持筒82に圧入され、触媒装置63が完成する。その後、触媒装置63の下流端83Aの内周部には、管89(
図3)と一体に溶接されたテーパー管88が嵌合されて溶接される。
なお、ここでは、コーティング及び焼成の工程は、圧入工程の前に行われるものとして説明したが、これに限らず、圧入工程の後の工程のみ、或いは、圧入工程の前後の両方の工程でコーティング及び焼成を行っても良い。
【0033】
排気管上流部61Aは、
図3に示すように、排気ポート接続部72(
図2)、管部73、下流テーパー管部74、アウターパイプ75、補強板76及び前部ハンガー部64を予め一体に溶接して形成された小組体90として用意される。小組体90が形成された段階で、溶接ビード121,122,124及び補強板76の溶接部の裏ビードの有無がチェックされ、必要であれば、裏ビードは除去される。
次に、小組体90の下流テーパー管部74の後側接続部74Bが保持筒82の縮径部84Aに嵌合され、溶接ビード125によって溶接される。ここで、後側接続部74Bの板厚T1は、縮径部84Aの板厚T2よりも大きく設定されているため、溶接ビード125の裏ビードの発生を防止できる。
【0034】
本実施の形態では、排気管上流部61Aを小組体90として形成し、後側接続部74Bを縮径部84Aに挿入する前に排気管上流部61Aの内部を確認できる構成とし、且つ、後側接続部74Bの板厚T1を厚くすることで縮径部84Aと小組体90とを溶接する溶接ビード125の裏ビードの発生を防止するため、触媒体80の上流側の管内に裏ビードが形成されることを防止できる。このため、触媒体80の上流側の裏ビードが脱落して触媒体80に侵入することを防止できる。
また、前部ハンガー部64の前部は、管部73の表面に設けられた補強板76に溶接されるため、溶接ビード124の前部の裏ビードが管部73の内部に形成されることを防止できる。さらに、前部ハンガー部64の後部は、アウターパイプ75に溶接されるが、アウターパイプ75の内部は排気の流れにおいて触媒体80の下流に位置するため、溶接ビード124の後部の裏ビードの発生を許容できる。このため、溶接が容易である。
【0035】
小組体90と触媒装置63とを溶接ビード125で溶接した後には、マフラー62の本体ケース66に排気管上流部61Aの後部及び触媒装置63が挿入され、本体ケース66の上流端66Aがアウターパイプ75の外周面75Bに嵌合されて溶接ビード123によって溶接される。本体ケース66は、排気ガスの流れにおいて触媒体80の下流に位置するアウターパイプ75に溶接されるため、溶接ビード123の裏ビードの発生を許容できる。このため、溶接が容易である。
【0036】
以上説明したように、本発明を適用した実施の形態によれば、排気管上流部61Aは、排気ポート接続部72、管部73、及び、触媒装置63に接続される下流テーパー管部74をそれぞれ溶接して一体化した小組体90として形成され、触媒装置63は、触媒体80と触媒体80を保持する保持筒82とを有し、下流テーパー管部74の後側接続部74Bと触媒装置63の保持筒82とが溶接によって一体化されて組み立てられ、下流テーパー管部74の後側接続部74Bの板厚T1を保持筒82の縮径部84Aの板厚T2に対して厚く形成するとともに、保持筒82の端部84が下流テーパー管部74の外周に重なるように、下流テーパー管部74の後側接続部74Bと触媒装置63の保持筒82とを溶接したため、後側接続部74Bと保持筒82との溶接部である溶接ビード125において、後側接続部74Bの板厚T1によって裏ビードの発生を防止できるとともに、後側接続部74Bと保持筒82とを溶接する前に、小組体90として形成された排気管上流部61Aの内部を確認することができる。これにより、触媒体80の上流側の裏ビードが脱落して触媒体80に侵入することを防止できる。
【0037】
また、マフラー62の本体ケース66によって触媒装置63の周囲を覆うため、径方向よりも軸方向に長いセラミックス製の触媒体80を備えた触媒装置63であっても、触媒装置63を本体ケース66によって保護できるとともに、マフラー62の小型化も図ることもできる。
また、排気管上流部61Aには、下流テーパー管部74の後側接続部74Bと保持筒82との溶接前に、アウターパイプ75がさらに溶接され、アウターパイプ75と本体ケース66とは、後側接続部74Bと保持筒82との溶接後に、溶接によって一体化されて組み立てられるため、アウターパイプ75の溶接ビード122の裏ビードの状態を、後側接続部74Bと保持筒82との溶接前に確認でき、また、本体ケース66はアウターパイプ75に溶接されるため、後側接続部74Bと保持筒82との溶接後に本体ケース66を溶接することができ、また、本体ケース66は触媒装置63の下流となるため、本体ケース66とアウターパイプ75との溶接部である溶接ビード123の裏ビードを許容することができる。このため、セラミックス製の触媒体80を備えた触媒装置63を収容し、しかも、排気管上流部61Aから本体ケース66まで溶接で一体に構成した排気マフラー装置60を容易に車体に組み付けすることができる。また、排気マフラー装置60を排気管上流部61Aから本体ケース66まで溶接で一体に構成できるため、外観性を向上できる。
【0038】
さらに、排気管上流部61Aは、車体に固定される前部ハンガー部64を有し、前部ハンガー部64を排気管上流部61Aに溶接によって固定する溶接ビード124は、排気管上流部61Aを小組体90として形成する際に形成されるため、前部ハンガー部64の溶接ビード124の裏ビードを、下流テーパー管部74の後側接続部74Bと保持筒82との溶接の前に確認することができる。
また、溶接ビード124は、排気管上流部61Aの管部73との間に補強板76を挟んで溶接され、補強板76は、前部ハンガー部64を溶接ビード124で溶接する前に予め管部73に溶接されているため、補強板76の溶接部の裏ビードを後側接続部74Bと保持筒82との溶接の前に確認することができるとともに、前部ハンガー部64を補強板76に溶接する溶接ビード124の裏ビードの発生を防止できる。このため、溶接の作業性が良く、生産性を向上できる。
【0039】
なお、上記実施の形態は本発明を適用した一態様を示すものであって、本発明は上記実施の形態に限定されるものではない。
上記の実施の形態では、縮径部84Aは、ストレート部83の端を絞り加工によって縮径して形成されるものとして説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、ストレート部83の端の内周部にパイプ状のスペーサーを嵌合させることで、ストレート部83の内径を縮径させて縮径部を形成しても良い。