特許第6027775号(P6027775)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6027775遮光塗料、遮光膜、該遮光膜を有する樹脂レンズ、および該樹脂レンズの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6027775
(24)【登録日】2016年10月21日
(45)【発行日】2016年11月16日
(54)【発明の名称】遮光塗料、遮光膜、該遮光膜を有する樹脂レンズ、および該樹脂レンズの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 3/00 20060101AFI20161107BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20161107BHJP
   C09D 5/00 20060101ALI20161107BHJP
   C09D 7/12 20060101ALI20161107BHJP
【FI】
   G02B3/00 Z
   G02B3/00 A
   C09D201/00
   C09D5/00 Z
   C09D7/12
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-125072(P2012-125072)
(22)【出願日】2012年5月31日
(65)【公開番号】特開2013-250440(P2013-250440A)
(43)【公開日】2013年12月12日
【審査請求日】2014年10月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】390022459
【氏名又は名称】京セラオプテック株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104318
【弁理士】
【氏名又は名称】深井 敏和
(72)【発明者】
【氏名】本宮 慎介
(72)【発明者】
【氏名】藤井 隆春
(72)【発明者】
【氏名】杉田 丈也
(72)【発明者】
【氏名】▲秋▼本 和昌
【審査官】 廣田 健介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−059185(JP,A)
【文献】 特開2002−331616(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/041506(WO,A1)
【文献】 特開平07−082510(JP,A)
【文献】 特開2011−186437(JP,A)
【文献】 特開2000−227505(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 1/00−1/18
G02B 3/00−3/14
G02B 5/00−5/136
G02B 27/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶解度パラメーターが8.0〜8.5のシクロオレフィン系ポリマーから構成される樹脂レンズの遮光膜を形成するための遮光塗料であって、溶解度パラメーターが7.9〜8.1の変性ポリオレフィンを、全樹脂含有量に対して50質量%以上含む、ことを特徴とする遮光塗料。
【請求項2】
さらに無機黒色微粒子、油溶性黒色染料、およびシリカ微粒子を含む請求項1に記載の遮光塗料。
【請求項3】
請求項1または2に記載の遮光塗料を用いて得られた遮光膜。
【請求項4】
請求項3に記載の遮光膜を有する樹脂レンズ。
【請求項5】
前記樹脂レンズがレンズアレイプレートであり、該レンズアレイプレートのレンズ部を除く表面および周面に前記遮光膜を有する請求項4に記載の樹脂レンズ。
【請求項6】
樹脂レンズ本体を成形する工程と、
得られた樹脂レンズ本体の少なくともレンズ面を除く部位に請求項1または2に記載の遮光塗料を塗布して、遮光膜を形成する工程とを含む、樹脂レンズの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば正立等倍レンズアレイプレート等の光学素子用樹脂レンズに適用される遮光塗料、遮光膜、該遮光膜を有する樹脂レンズ、および該樹脂レンズの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スキャナ、ファクシミリなどの画像読取装置、またはLEDプリンタなどの画像形成装置には、縮小光学系または正立等倍光学系が用いられる。特に、正立等倍光学系は、縮小光学系を用いる場合に比べて、装置全体の小型化が容易であるという利点を有する。
【0003】
画像読取装置の場合、正立等倍結像光学系は、ライン状光源と、正立等倍レンズアレイと、ラインイメージセンサとから構成される。正立等倍レンズアレイとして、片面または両面に複数の微小レンズを規則的に配列した透明な平板状レンズアレイプレートを、個々のレンズの光軸が一致するように対向して配置した一対の正立等倍レンズアレイプレートが知られている。このような正立等倍レンズアレイプレートは、特定の樹脂材料を用いて射出成型などで形成できるため、比較的安価に製造することができる。そのため、レンズアレイプレートを長手方向に複数組み合わせることで種々のサイズに応じた正立等倍レンズアレイを提供できる。
【0004】
正立等倍レンズアレイプレートでは、隣接したレンズ間に光線を隔離するための壁が無いため、正立等倍レンズアレイプレートに斜めに入射した光線が、プレート内部を斜めに進んで隣接したレンズに入り込み、出射して所定の結像位置でない位置に達する、いわゆるクロストークが発生し、これがフレアノイズ(ゴーストともいう)の原因になるという問題がある。
【0005】
また、正立等倍レンズアレイプレート内に入射した光線が、レンズアレイプレートの内壁面で反射する場合にも、クロストークが発生し、これがフレアノイズ(ゴーストともいう)の原因になる。
【0006】
このようなフレアノイズを防止するために、例えば、レンズアレイプレートの表面に遮光膜を形成することが提案されている(特許文献1)。
また、カメラ、顕微鏡等の光学機器に使用されるレンズへの入射光が表面反射や内面反射を起して、フレアやゴーストが生じるのを防止するために、特定組成からなる遮光膜を形成することが提案されている(特許文献2〜4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010‐286741号公報
【特許文献2】特開2011‐141493号公報
【特許文献3】特開2011‐164494号公報
【特許文献4】特開2009‐227966号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記したレンズアレイプレートやその他の光学材料の製造では、近時、光学特性に優れたシクロオレフィンポリマー(COP)(例えば、日本ゼオン(株)製の「ゼオネックス」(登録商標)等)、シクロオレフィンコポリマー(COC)(例えば、三井化学(株)製の「アペル」(登録商標) 、Topas Advanced Polymers社製の「TOPAS」(登録商標)等)が多く使用されている。これらの環状構造を有するシクロオレフィン系光学樹脂は、分子の末端基に官能基が少ないため、吸湿しにくく、かつ屈折率や形状変化が少ない等の利点がある。このシクロオレフィン系樹脂としては、例えば、次のような反応式で得られる構造式(II)で表わされるものがある。なお式中RからRは水素原子、有機基等の置換基である。
【化1】
【0009】
しかし、上記シクロオレフィン系光学樹脂は、分子構造中に電気的な偏りが小さく(電荷が小さく)、表面張力が大きいために、樹脂表面の濡れ性が悪く、そのためシクロオレフィン系光学樹脂を使用して成形した光学素子(樹脂レンズ)に、例えば遮光のために塗膜を形成させる場合、実用性のある密着強度を得ることができず、形成させた塗膜が剥離しやすいという問題がある。
【0010】
従って、本発明は、樹脂レンズに対する密着性が改善された遮光塗料、この遮光塗料を用いて得られた遮光膜、該遮光膜を有する樹脂レンズ、および該樹脂レンズの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明は、以下の構成を有する。
(1) 溶解度パラメーターが8.0〜8.5のシクロオレフィン系ポリマーから構成される樹脂レンズの遮光膜を形成するための遮光塗料であって、溶解度パラメーターが7.9〜8.1の変性ポリオレフィンを、全樹脂含有量に対して50質量%以上含む、ことを特徴とする遮光塗料。
(2)さらに無機黒色微粒子、油溶性黒色染料、およびシリカ微粒子を含む(1)に記載の遮光塗料。
(3)上記(1)または(2)に記載の遮光塗料を用いて得られた遮光膜。
(4)上記(3)に記載の遮光膜を有する樹脂レンズ。
(5)前記樹脂レンズがレンズアレイプレートであり、該レンズアレイプレートの凸レンズ部を除く上下面および周面に前記遮光膜を有する(4)に記載の樹脂レンズ。
(6)樹脂レンズ本体を成形する工程と、得られた樹脂レンズ本体の少なくともレンズ面を除く部位に上記(1)または(2)に記載の遮光塗料を塗布して、遮光膜を形成する工程とを含む、樹脂レンズの製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、密着性が悪い樹脂レンズに対しても、高い塗膜密着性で遮光膜を形成することができ、その結果、レンズ面以外からの入射光の入射を阻止することができるという効果がある。
また、本発明の遮光塗料が、樹脂レンズの屈折率と同じか、あるいはそれより高い屈折率を有すること、ならびに樹脂レンズと遮光膜との界面に相互に溶解した相溶層を形成し、界面が鏡面とならないことに起因して、内部反射をも効果的に阻止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係る遮光膜を形成した正立等倍レンズアレイプレートを示す概略斜視図である。
図2】本発明に係る遮光膜を形成した正立等倍レンズアレイプレートを示す部分断面図である。
図3】実施例における表面反射率の測定結果を示すグラフである。
図4】実施例における内面反射率の測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(遮光塗料)
本発明の遮光塗料は、樹脂レンズを構成する光学樹脂に近似した溶解度パラメーター(SP)を有する樹脂を含む。ここで、溶解度パラメーター(SP)とは、高分子の溶剤による溶解や高分子同士の相溶性の尺度となるものであって、溶解度パラメーターが近い程、溶解または相溶しやすくなる。以下の説明では、樹脂レンズを構成する光学樹脂に近似した溶解度パラメーターを有する樹脂を「相溶樹脂」と呼ぶ。
【0016】
光学樹脂の溶解度パラメーターをSとしたとき、相溶樹脂の溶解度パラメーターは、S±2.0、好ましくはS±1.0の範囲内であるのが良好な相溶性を得るうえで好ましい。
樹脂レンズを構成する光学樹脂としては、例えばシクロオレフィン系ポリマー、ポリカーボネート、ポリエステル系樹脂(PET等)、アクリル系樹脂(PMMA等)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、OKP(特殊ポリエステル、大阪ガスケミカル社製)などが一般に使用されている。
【0017】
シクロオレフィン系ポリマーには、シクロオレフィンポリマー(COP)(例えば、日本ゼオン(株)製の「ゼオネックス」(登録商標)等)、シクロオレフィンコポリマー(COC)(例えば、三井化学(株)製の「アペル」(登録商標) 、Topas Advanced Polymers社製の「TOPAS」(登録商標)等)が挙げられる。シクロオレフィンポリマーの溶解度パラメーターは、約8.0〜8.5であり、またシクロオレフィンコポリマー(COC)の溶解度パラメーターは、約8.0〜8.5である。
また、その他の光学用に使用される樹脂の溶解度パラメーターは、次の通りである。ポリカーボネート:約11.3 、PET:約10.7、PMMA:9.0〜10.7、ポリエチレン:約8.0、ポリプロピレン:約7.9、ポリスチレン:9.0〜9.2である。これ以外にも同様の溶解度パラメーター範囲を有するポリエステル樹脂なども使用可能である。
【0018】
相溶樹脂は、塗料のベース樹脂と混合して使用してもよく、あるいはそれ自体でベース樹脂として単独で使用してもよい。ベース樹脂は、主として、後述する添加剤を固定するバインダーとなるものである。
【0019】
使用可能なベース樹脂としては、例えば、アクリル樹脂(9.5)、ポリアミド樹脂(10〜13)、ポリウレタン樹脂、ニトロセルロース樹脂(10.7)、塩化ビニル‐酢酸ビニル共重合樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂(9.7〜10.9)、アルキド樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂(8.3〜8.9)、変性ポリオレフィン樹脂(7.9〜8.1)等があげられる。ここで、括弧内の数値は、溶解度パラメーター値を示している。なお、ポリオレフィン樹脂は、ポリエチレン、ポリプロピレン等をいう。
【0020】
これらのベース樹脂のうち、光学樹脂の溶解度パラメーターが近似した樹脂を相溶樹脂として使用する。例えばシクロオレフィンポリマー(COP)の溶解度パラメーターは、8.0〜8.5であるので、ポリオレフィン樹脂(7.5〜9.0)、塩素化ポリオレフィン樹脂(8.3〜8.9)、変性ポリオレフィン樹脂(7.9〜8.1)が相溶樹脂として使用可能である。
【0021】
相溶樹脂は、ベース樹脂を含む全樹脂含有量に対して35質量%以上、好ましくは45質量%以上含むであるのが適当である。ベース樹脂が全て相溶樹脂であってもよい。相溶樹脂の添加量が上記範囲であると、塗膜(遮光膜)と樹脂レンズとが界面で相互に溶解し、樹脂レンズに対する密着性を向上させることができる。
【0022】
次に、遮光塗料に添加する他の添加剤を説明する。
<屈折率調整剤>
屈折率調整剤は、樹脂レンズ等を形成する光学樹脂の屈折率に対して、同等またはそれ以上の屈折率を遮光塗料に持たせるために添加されるものであって、例えば酸化チタン(IV)、酸化銅(CuO)等の高屈折率無機微粒子(非黒色粒子)が挙げられる。これらの無機微粒子を配合することにより、樹脂レンズの内面反射および表面反射を低下させ、迷光を効果的になくすことができる。また、上記無機微粒子以外にも、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、酸化スズ、酸化アルミニウムなどの無機微粒子も同様の目的で添加することができる。
【0023】
これらの無機微粒子は、平均粒子径が 100nm以下、好ましくは10〜50nmであるのがよい。
無機微粒子は、遮光塗料の総量に対して1.0〜20.0質量%、好ましくは1.0〜15.0質量%であるのがよい。
【0024】
<遮光性付与剤>
遮光性付与剤は、塗料を黒色化し、塗膜の光吸収特性および遮光性を向上させるために添加されるものであって、例えばカーボンブラック、チタン酸ブラック等の無機微粒子(黒色粒子)が使用される。添加量は、遮光塗料の総量に対して1.0〜30.0質量%、好ましくは1.0〜20.0質量%であるのがよい。
【0025】
また、同様な目的のために、油溶性黒色染料(低極性溶剤用)、樹脂着色剤を、上記黒色粒子と共に、あるいは単独で添加してもよい。添加量は、遮光塗料の総量に対して1.0〜30.0質量%、好ましくは1.0〜15.0質量%であるのがよい。
【0026】
<光吸収剤>
光吸収剤として、例えば石英、シリカの微粒子(透明性粒子)等が挙げられる。光吸収剤を添加することで、表面に凹凸形状を形成することができ、塗膜の光吸収性(光吸収化)が向上し、入射光を吸収・トラップすることで迷光を効果的になくすことが可能になる。
【0027】
これらの光吸収剤は、平均粒子径が20μm以下、好ましくは10μm以下 であるのがよい。光吸収剤の添加量は、遮光塗料の総量に対して1.0〜20.0質量%、好ましくは1.0〜15.0 質量%であるのがよい。
【0028】
<希釈剤>
希釈剤は、上記ベース樹脂、相溶樹脂、屈折率調整剤、遮光性付与剤、光吸収剤等を配合した遮光塗料を使用して樹脂レンズに遮光膜を形成するにあたり、遮光塗料を塗布するのに適した粘度に調整するために使用される。
希釈剤としては、各種の有機溶剤が使用可能であるが、電気的な偏りの大きいアセトン、メタノールよりも、電気的な偏りの小さい酢酸エチル、シクロヘキサン、キシレン、トルエン、エチルベンゼン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン(MEK)、トリメチルベンゼン(1,2,4-トリメチルベンゼン、1,3,5-トリメチルベンゼン等)、その他の芳香族炭化水素、石油ナフサ等を使用するのが望ましい。これらの希釈剤は、適宜、2種以上を混合して使用してもよい。
【0029】
<遮光塗料の調製方法>
液体状のベース樹脂と液体状の相溶樹脂とを所定の混合比で専用容器に入れ、これに屈折率調整剤、遮光性付与剤(黒色微粒子、油溶性黒色染料)、光吸収剤等をそれぞれ所定量加え、混合・分散を行うことにより、塗料が得られる。なお、上記成分以外に有機溶剤を添加してもよい。
【0030】
<遮光膜の形成方法>
遮光塗料を樹脂レンズの表面に塗布して所定厚みの遮光膜を形成するには、遮光塗料を希釈剤で希釈して、所定の粘度に調整する。遮光塗料の塗布方法は、特に制限されず、浸漬法、刷毛塗り法、スプレー法、スクリーン印刷法、 バーコード印刷法、パッド印刷法、インクジェット印刷法、真空蒸着法 などが挙げられる。
形成される遮光膜の厚さは、十分な遮光性が得られる厚さであればよく、通常1〜20μm、好ましくは3〜15μm程度であるのが適当である。
【0031】
(樹脂レンズ)
次に、本発明の遮光塗料を用いて、レンズアレイプレート(以下、レンズアレイと略称する)に遮光膜を形成する方法を、図1図2を参照して説明する。図1図2は、正立等倍レンズアレイユニットを示しており、第1のレンズアレイ1、第2のレンズアレイ2、および連結部3によって構成される。
ここで、第1および第2のレンズアレイ1、2は、例えば、透明な光学樹脂(例えばシクロオレフィンポリマー(COP))を射出成形することにより作成される。
【0032】
第1のレンズアレイ1には、複数の第1のレンズ10が設けられる。複数の第1のレンズ10は光軸が互いに平行になるように姿勢が定められる。また、第1のレンズ10は、第1のレンズ10の光軸に垂直な第1の方向に沿って互いに密着するように配置される。
【0033】
第2のレンズアレイ2には、複数の第2のレンズ20(図2)が設けられる。複数の第2のレンズは、第1のレンズ20と同様に、光軸が互いに平行になるように姿勢が定められる。また、第2のレンズ20は、第2のレンズ20の光軸に垂直な方向に沿って並ぶように配置される。
【0034】
第1のレンズアレイ1と第2のレンズアレイ2とは、連結部3によって連結される。各第1のレンズ10の光軸と何れかの第2のレンズ20の光軸とが重なるように、第1のレンズアレイ1と第2のレンズアレイ2との位置が合わせされる。
【0035】
図2に示すように、連結部3には、複数の透光孔30が形成される。透光孔30は各第1のレンズ10から第2のレンズ20に向けて貫通している。なお、連結部3の第1のレンズ10側の面は絞りとして機能し、透光孔30以外の面に入射する光を遮光する。したがって、第1のレンズ10、透光孔30、および第2のレンズ20によって単位光学系が構成される。
【0036】
各単位光学系が、正立等倍光学系となるように且つ物体側に実質的にテレセントリックとなるように、第1のレンズ10および第2のレンズ20が設計され、単位光学系が構成される。
【0037】
なお、第1のレンズ10の第1面(連結部3側と反対側の面)および第2のレンズ20の両面が凸面になるように形成することにより、正立等倍性が単位光学系に設けられる。なお、第1のレンズ20の第2面(連結部3と対向する面)は凸面、凹面、および平面のいずれであってもよい。
【0038】
図2に示すように、第1のレンズアレイ1は、その周面11および物体面側の表面(但し、レンズ10は除く)に本発明に係る遮光膜4が形成されている。第2のレンズアレイ2は、周面21に遮光膜4が形成されている。
【0039】
これによって、第1のレンズアレイ1の表面に対して、斜めから入射した光は、レンズ10以外の面において遮光され、第1のレンズアレイ1内に入射されることがない。また、レンズ10を通って斜めから入射した光は、第1のレンズアレイ1の周面内面で内部反射することなく遮光される。そのため、迷光やクロストークをも防止することが可能となる。
そのため、光の入射角のうち、所定の角度以上の入射角が正立等倍レンズアレイに入射するのが制限され、そのため殆どのクロストークを防止することができる。その結果、光学性能を向上させた正立等倍レンズアレイユニットおよびこれを用いた画像読取装置を提供することが可能となる。
【0040】
以上、本発明の遮光塗料を用いて遮光膜を正立等倍レンズアレイユニットに適用した場合について述べたが、本発明の遮光塗料、およびこれを用いて得られる遮光膜は、正立等倍レンズアレイユニットの他にも種々の光学機器に使用される樹脂レンズに適用可能である。このような光学機器としては、例えばカメラ、双眼鏡、顕微鏡、携帯電話用カメラなどが挙げられる。
【実施例】
【0041】
次に、実施例を挙げて本発明の遮光塗料をより詳細に説明するが、本実施例は本発明の一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。なお、実施例において使用した試験法は以下の通りである。
【0042】
・碁盤目セロテープ(登録商標)試験:JIS K 5600 または5400に準拠して、塗膜を1mm間隔100マス格子パターンで切り込み後、粘着テープ(TQC ISO粘着テープ)で剥離を行い、100マス中の剥離したマスの数で塗膜の密着力を評価した。
【0043】
・遮光・光吸収特性評価試験:塗膜について、オリンパス(株)製の反射率測定器(USPM―RU)を用いて、波長380〜780nmの光の反射率測定を行なった
【0044】
(実施例1)
ベース樹脂液体(PMMA樹脂:DIC製の「アクリディックCL-1000」)と、相溶樹脂液体(変性ポリオレフィン樹脂:日本製紙ケミカル製の「アウローレン200S」)とを質量比で60:40の割合(固形分の割合)で専用容器に投入した後、これに、遮光塗料総量に対して、屈折率調整剤(酸化チタン:関東化学製の「NanoTec」)6.0質量%、無機黒色微粒子(カーボンブラック:東海カーボン製の「トーカブラック#8500/F」)5.0質量%、油溶性黒色染料 (黒色アゾ染料:オリエント化学製の「Oil Black 860」)10.0質量%、およびシリカ微粒子(水澤化学工業製の「Mizukasil P527」)3.0質量%を加え、自動攪拌・分散装置((株)シンキー社製の「泡取り廉太郎」(ARE310))にて約20分間混合及び分散を行い、遮光塗料を得た。
【0045】
(実施例2)
ベース樹脂液体:相溶樹脂液体を質量比で50:50とした他は、実施例1と同様にして遮光塗料を得た。
【0046】
(実施例3)
ベース樹脂液体を使用せず、相溶樹脂液体(変性ポリオレフィン樹脂:日本製紙ケミカル製の「アウローレン200S」)のみを使用した他は、実施例1と同様にして遮光塗料を得た。
【0047】
(比較例1)
相溶樹脂液体を使用せず、ベース樹脂液体(PMMA樹脂:DIC製の「アクリディックCL-1000」)のみを使用した他は、実施例1と同様にして遮光塗料を得た。
【0048】
(比較例2)
ベース樹脂液体:相溶樹脂液体を質量比で70:30とした他は、実施例1と同様にして遮光塗料を得た。
【0049】
(比較例3)
樹脂成分として、実施例1で使用したベース樹脂液体:相溶樹脂液体に代えて、市販のエポキシ系黒色塗料(キヤノン化成(株)製の商品名「GT−7」)を使用した他は、実施例1と同様にして遮光塗料を得た。
【0050】
(密着性評価)
以上の実施例および比較例で得られた遮光塗料をそれぞれ希釈剤(キシレン、エチルベンゼン、石油ナフサ、1,2,4-トリメチルベンゼンおよび1,3,5-トリメチルベンゼンを混合した希釈剤)で希釈して、粘度を調整した後、この塗料にシクロオレフィンポリマー(前出のゼオネックス(登録商標)E48R)からなる厚さ15mmの平行平面基材を浸漬し、引き上げて、60℃で90分間加熱して硬化させ、基材表面に厚さ約10μmの遮光膜を形成した。この遮光膜に対して碁盤目セロテープ(登録商標)剥離試験を行い、遮光膜の密着性を評価した。その結果を表1に示す。
使用した希釈剤の混合比率は以下の通りである。
トルエン 60質量%
エチルベンゼン 30質量%
石油ナフサ 5質量%
1,2,4−トリメチルベンゼン 4質量%
1,3,5−トリメチルベンゼン 1質量%
【表1】
【0051】
(遮光・光吸収特性)
上記密着性評価の試験結果より、結果が良好な実施例1、実施例3について表面反射率および内面反射率の測定を行なった。比較のため、比較例3についても同様にして試験した。
なお、表面反射率は、オリンパス(株)製の反射率測定器(USPM―RU)を用い、対物レンズ倍率10倍、入射角度3.4にて遮光膜の反射率を測定して求めた。内面反射率は、上記実施例ならびに比較例で使用した平行平面基材の一方ののみに遮光膜を形成した基材の裏面(遮光膜を形成していない面)より同様の条件にて光を照射し、反射率を測定して求めた。
試験結果を図3および図4に示す。図3図4から明らかなように、実施例1、実施例3で得た遮光膜は、比較例3の遮光膜と比較して反射率が低く、従って遮光・光吸収特性に優れていることがわかる。そのため、このような遮光膜を樹脂レンズに用いることにより、クロストークの発生原因となる表面反射および内面反射光を低減できる。
【符号の説明】
【0052】
1 第1のレンズアレイ
2 第2のレンズアレイ
3 連結部
10 第1のレンズ
11 周面
20 第2のレンズ
21 周面
30 透光孔
図1
図2
図3
図4