(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記基板には複数の前記取付箇所が設けられており、前記クリンチ器具配置処理では、複数の前記取付箇所に対応する複数の前記配置箇所のそれぞれに前記クリンチ器具が配置される請求項1または2に記載の部品取付装置。
前記基板に取り付けられる複数の部品のうちから前記リード部品をユーザが指定可能なユーザインターフェースをさらに備え、前記クリンチ器具配置処理では、前記ユーザインターフェースでユーザにより設定された前記リード部品の前記取付箇所に対応する前記配置箇所に前記クリンチ器具が配置される請求項4に記載の部品取付装置。
前記リード部品を取り付ける前記取付箇所の位置を示すデータから、前記クリンチ器具を配置する前記配置箇所の位置を求めた結果に基づいて、前記クリンチ器具配置処理で前記クリンチ器具を配置する位置を制御する請求項1ないし5のいずれか一項に記載の部品取付装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、リード部品の取付箇所と基板との位置関係は常に同じとは限らない。例えば、生産する基板の品種が変わったような場合には、リード部品の取付箇所と基板との位置関係を基板品種に応じて変更する必要が生じる。このような場合、上記のようなクリンチ機構によれば、基板を適宜移動させることで、基板とクリンチユニットとの位置関係を変更して、リード部品の取付箇所と基板との位置関係を変更することができる。
【0005】
しかしながら、リード部品の取付箇所と基板との位置関係を変更するのに十分な広さで、基板の移動範囲を常に確保できるとは限らない。例えば装置の小型化を図ったような場合には、基板の移動範囲は自ずと制約される。したがって、基板の移動のみによって、基板とクリンチユニットとの位置関係を変更する構成では、リード部品の取付箇所と基板との位置関係を変更できる範囲に限界があった。
【0006】
この発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、基板の移動範囲を広く要すること無く、リード部品の取付箇所と基板との位置関係の変更を可能とする技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明にかかる部品取付装置は、上記目的を達成するために、リード部品のリードを差し込むための差込孔がリード部品の取付箇所に対して形成された基板を作業位置に固定する基板固定手段と、リード部品を供給する部品供給手段と、部品供給手段から供給されたリード部品を作業位置に固定された基板上の取付箇所まで運搬して、リード部品のリードを取付箇所の差込孔に基板の一方主面側から差し込む部品取付処理を実行する作業ヘッドと、部品取付処理で差込孔に差し込まれて基板の他方主面から突出するリードに接触してリードを曲げるクリンチ器具を、着脱自在に支持する支持部材とを備え、クリンチ器具の配置箇所がリード部品の取付箇所に応じて変更可能であるようにクリンチ器具および支持部材を構成し、取付箇所に応じた配置箇所にクリンチ器具を配置するクリンチ器具配置処理を部品取付処理の開始前に実行することを特徴としている。
【0008】
この発明にかかる部品取付方法は、上記目的を達成するために、リード部品のリードを差し込むための差込孔がリード部品の取付箇所に対して形成された基板を作業位置に固定する基板固定工程と、部品供給位置に供給されたリード部品を作業位置に固定された基板上の取付箇所まで運搬して、リード部品のリードを取付箇所の差込孔に基板の一方主面側から差し込むことで、基板の他方主面から突出するリードにクリンチ器具を接触させてリードを曲げる部品取付工程とを備え、その配置箇所がリード部品の取付箇所に応じて変更可能であるクリンチ器具を、取付箇所に応じた配置箇所に配置するクリンチ器具配置工程を部品取付工程の開始前に実行することを特徴としている。
【0009】
このように構成された発明(部品取付装置、部品取付方法)では、リード部品のリードを差し込むための差込孔がリード部品の取付箇所に対して形成された基板が、作業位置に固定される。続いて、リード部品が基板の取付箇所まで運搬されて、このリード部品のリードが取付箇所の差込孔に基板の一方主面側から差し込まれる(部品取付処理、部品取付工程)。そして、クリンチ器具が、部品取付処理(工程)で差込孔に差し込まれて基板の他方主面から突出するリードに接触してリードを曲げる。こうして曲げられたリードが差込孔に係合して、リード部品が基板に取り付けられる。
【0010】
特に、この発明では、クリンチ器具の配置箇所がリード部品の取付箇所に応じて変更可能であるように構成されている。そして、取付箇所に応じた配置箇所にクリンチ器具を配置するクリンチ器具配置処理(工程)が部品取付処理(工程)の開始前に実行される。このような構成では、リード部品の取付箇所と基板との位置関係の変更が必要となった場合には、これに応じてクリンチ器具の配置箇所を変更して、変更後の配置箇所にクリンチ器具を配置することで、特に基板を移動させること無く、リード部品の取付箇所と基板との位置関係の変更に対応することができる。したがって、基板の移動範囲を広く要すること無く、リード部品の取付箇所と基板との位置関係の変更が可能となっている。
【0011】
ところで、リード部品の取付箇所は1つとは限らず、複数の取付箇所が基板に設けられる場合もある。このような場合、特許文献1のようなクリンチ機構によれば、取付箇所がクリンチユニットの上方に位置するように基板を移動させて、当該取付箇所にリード部品を取り付けるといった動作を、各取付箇所に繰り返し実行することで、複数の取付箇所それぞれにリード部品を取り付けることができる。しかしながら、取付箇所がクリンチユニットの上方に位置するまで基板を移動させるのに十分な広さで、基板の移動範囲を常に確保できるとは限らない。したがって、基板の移動を伴うかかる手法は、必ずしも適切とは言えなかった。
【0012】
そこで、本発明を適用することが考えられる。具体的には、基板には複数の取付箇所が設けられており、クリンチ器具配置処理では、複数の取付箇所に対応する複数の配置箇所のそれぞれにクリンチ器具が配置されるように、部品取付装置を構成しても良い。このような構成では、複数の取付箇所に対応する複数の配置箇所のそれぞれにクリンチ器具が配置される。そのため、特に基板を移動させること無く、複数の取付箇所のそれぞれにリード部品を取り付けることができ、好適である。
【0013】
また、作業位置に固定された基板に表面実装部品をさらに取り付けるように、部品取付装置を構成しても良い。このような構成では、リード部品と表面実装部品の両方を基板に取り付けることができ、部品取付装置の汎用性を向上させることができる。
【0014】
なお、リード部品と表面実装部品の両方が取付可能な構成では、基板に取り付けられる複数の部品のうち何れの部品がリード部品であるかを、把握できない場合がある。このような場合、部品の種別を問わず、全部品に対してクリンチ器具を配置することも考えられる。しかしながら、本来、取り付けに際してクリンチ器具を要さない表面実装部品に対してまでクリンチ器具を配置することは無駄な動作であり、適切とは言えない。
【0015】
そこで、基板に取り付けられる複数の部品のうちからリード部品をユーザが指定可能なユーザインターフェースをさらに備え、クリンチ器具配置処理では、ユーザインターフェースでユーザにより設定されたリード部品の取付箇所に対応する配置箇所にクリンチ器具が配置されるように、部品取付装置を構成しても良い。このような構成では、ユーザによってリード部品が指定されるため、、基板に取り付けられる複数の部品のうち何れの部品がリード部品であるかを、把握することができる。そして、クリンチ器具配置処理では、こうして把握されたリード部品の取付箇所に対応する配置箇所に、クリンチ器具を適切に配置することができる。その結果、表面実装部品に対してクリンチ器具を配置するといった無駄な動作の発生を抑止することができる。
【0016】
また、リード部品を取り付ける取付箇所の位置を示すデータから、クリンチ器具を配置する配置箇所の位置を求めた結果に基づいて、クリンチ器具配置処理でクリンチ器具を配置する位置を制御するように、部品取付装置を構成しても良い。このような構成では、、リード部品の取付箇所の位置に応じて、クリンチ器具の配置箇所の位置を適切に制御することができる。したがって、取付箇所に設けられた差込孔に差し込まれたリードを、配置箇所に配置されたクリンチ器具に的確に接触させてしっかりと曲げることができ、リード部品を取付箇所に確実に取り付けることができる。
【0017】
さらに、リード部品を取付箇所に取り付ける角度を示すデータから、クリンチ器具を配置箇所に配置する角度を求めた結果に基づいて、クリンチ器具配置処理でクリンチ器具を配置する角度を制御するように、部品取付装置を構成しても良い。このような構成では、リード部品を取り付ける角度に応じて、クリンチ器具を配置する角度を適切に制御することができる。したがって、取付箇所に設けられた差込孔に差し込まれたリードを、配置箇所に配置されたクリンチ器具に的確に接触させてしっかりと曲げることができ、リード部品を取付箇所に確実に取り付けることができる。
【0018】
また、クリンチ器具を収容する収容部材をさらに備え、作業ヘッドが収容部材から配置箇所までクリンチ器具を運搬して、クリンチ器具配置処理を実行するように部品取付装置を構成しても良い。このような構成では、リード部品およびクリンチ器具の両方の運搬を共通の作業ヘッドで実行できる。そのため、リード部品およびクリンチ器具それぞれに対して、運搬のための構成を設ける必要が無く、装置の小型化や低コスト化等を図ることが可能となる。
【0019】
この際、クリンチ器具配置処理の実行時における支持部材の位置は、部品取付処理の実行時における支持部材の位置よりも、部品取付処理の実行時における基板の一方主面の位置の側にあるように、部品取付装置を構成しても良い。このような構成では、作業ヘッドが部品取付処理のために移動する範囲と、作業ヘッドがクリンチ器具配置処理のために移動する範囲とを近接させることができる。そのため、作業ヘッドの移動範囲を広く確保する必要が無く、装置構成の簡素化を図ることができる。
【0020】
また、基板を作業位置まで搬送する基板搬送手段をさらに備え、基板固定手段は、基板搬送手段が作業位置まで搬送した基板を固定する部品取付装置において、基板搬送手段が基板を作業位置に搬送するより前に、クリンチ器具配置処理を実行するように、部品取付装置を構成しても良い。このような構成では、クリンチ器具配置処理の実行の際には、作業位置に基板が無いため、取付部材へのアクセスが容易となる。その結果、取付部材へクリンチ器具を配置するクリンチ器具配置処理を簡便に実行することができる。
【発明の効果】
【0021】
以上のように、この発明によれば、基板の移動範囲を広く要すること無く、リード部品の取付箇所と基板との位置関係の変更が可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1は、本発明を適用可能な部品取付装置の概略構成を示す平面図である。また、
図2は、
図1に示す部品取付装置の部分正面図である。さらに、
図3は、
図1に示す部品取付装置の主要な電気的構成を示すブロック図である。これらの図に示す部品取付装置1は、表面実装部品Psおよびリード部品Plの両方を基板Sに対して取付可能な構成を具備する。なお、
図1、
図2および以下で示す図では、各図の方向関係を明確にするために、Z軸方向を鉛直方向とするXYZ直交座標軸を適宜示すこととする。
【0024】
部品取付装置1では、基台11上に基板搬送機構2が配置されており、基板Sを所定の搬送方向Xに搬送可能となっている。より詳しくは、基板搬送機構2は、基台11上において基板Sを
図1の右側から左側へ搬送する一対のコンベア21、21を有している。そして、コンベア21、21は制御ユニット200の駆動制御部210からの指令に応じて、基板Sの搬送を実行する。具体的には、コンベア21、21は、装置外部より搬入した基板Sを、所定の作業位置L(
図1および
図2に示す基板Sの位置)で停止させ、図略の固定手段により固定して保持する。そして、後述するヘッドユニット6が作業位置Lに固定された基板Sへの電子部品P(表面実装部品Ps、リード部品Pl)の取り付けを完了すると、コンベア21、21は基板Sを装置外部へ搬出する。
【0025】
また、基台11上には、作業位置Lに固定された基板Sを下方から補助的に支持するバックアップ部3が配置されている。このバックアップ部3は、平板状のバックアッププレート31(プッシュアッププレート)の上面に着脱自在に配置された複数のクリンチピン100を下方から基板Sに突き当てることで、基板Sを支持する。このようなクリンチピン100が用いられる理由は次のとおりである。
【0026】
この部品取付装置1では、表面実装部品Psおよびリード部品Plが基板Sに取り付けられる。これらのうちリード部品Plの取り付けは、リード部品Plに一定の荷重を掛けつつ、リード部品Plのリードを基板Sに差し込んで行われる。そのため、コンベア21、21による保持のみでは、リード部品Plの取り付けに伴う荷重によって基板Sが撓むおそれがある。そこで、リード部品Plの取付箇所に応じた配置箇所にクリンチピン100を配置して、当該取付箇所をクリンチピン100で支持することで、リード部品Plの取り付けによる基板Sの撓みを抑制することとしている。さらに、リード部品Plを基板Sに取り付けるためには、リード部品Plのリードlをクリンチする必要もある。そこで、このクリンチピン100は、基板Sの撓みを抑制する機能のほか、基板Sに取り付けられたリード部品Plのリードlをクリンチする機能も兼ね備える。なお、生産する基板Sの品種が異なれば、リード部品Plの取付箇所も異なる。そこで、クリンチピン100の配置箇所は、リード部品Plの配置箇所に応じて変更可能となっている。
【0027】
さらに、バックアップ部3は、駆動制御部210からの指令に応じてバックアッププレート31を昇降させる昇降機構35を備えている。具体的には、コンベア21、21が基板Sを作業位置Lに固定している際には、昇降機構35はバックアッププレート31の上面を初期高さz0に位置決めして、クリンチピン100の上端で基板Sを下方から支持する。一方、コンベア21、21が基板Sを搬送する際には、昇降機構35はバックアッププレート31の上面を初期高さz0から下降させて、搬送中の基板Sとクリンチピン100との干渉を防止する。
【0028】
コンベア21、21の前方側(+Y軸方向側)および後方側(−Y軸方向側)には、部品供給部4が配置されている。この部品供給部4は、表面実装部品供給部4sとリード部品供給部4lとで構成される。表面実装部品供給部4sは、電子部品Pとしての表面実装部品Psを供給するフィーダ41sをX軸方向に多数並べた構成を具備する。各フィーダ41sは、表面実装部品Psを収納・保持したテープを巻き回したリール(図示省略)を設けたテープフィーダであり、表面実装部品Psをヘッドユニット6に供給可能となっている。具体的には、テープには、集積回路(IC)、トランジスタ、コンデンサ等の小片状のチップ電子部品Psが所定間隔おきに収納、保持されている。そして、フィーダ41sは、リールからテープをヘッドユニット6側に送り出すことで、該テープ内の表面実装部品Psを間欠的に部品吸着位置に繰り出す。その結果、ヘッドユニット6の取付ヘッド61に装着された吸着ノズル62によって表面実装部品Psのピックアップが可能となる。
【0029】
一方、リード部品供給部4lは、電子部品Pとしてのリード部品Plを供給するフィーダ41lをX軸方向に多数並べた構成を具備する。各フィーダ41lは、例えば特開2007−180280号公報に記載されたフィーダと同様に、複数のリード部品Plを所定間隔おきに保持するキャリアテープ(図示省略)を設けたものであり、キャリアテープをヘッドユニット6側に送り出すことによって、リード部品Plを間欠的に部品吸着位置に送り出す。その結果、ヘッドユニット6の取付ヘッド61に装着された吸着ノズル62によってリード部品Plのピックアップが可能となる。
【0030】
ヘッドユニット6は、取付ヘッド61の吸着ノズル62により吸着保持した電子部品Pを基板Sに搬送して、ユーザより指示された取付箇所に移載するものである。具体的には、ヘッドユニット6は、前方側でX軸方向に一列に配列された6個の取付ヘッド61Fと、後方側でX軸方向に一列に配列された6個の取付ヘッド61Rとの合計12個の取付ヘッド61を有している。すなわち、
図1および
図2に示すように、ヘッドユニット6では、鉛直方向Zに延設された取付ヘッド61Fが6本、X軸方向に等ピッチで列状に設けられている。また、取付ヘッド61Fに対して後方側(−Y軸方向側)にも、前列と同様に構成された後列が設けられている。つまり、鉛直方向Zに延設された取付ヘッド61Rが6本、X軸方向に等ピッチで列状に設けられている。なお、取付ヘッド61Fと取付ヘッド61RとはX軸方向に半ピッチずれて配置されており、
図1に示すように平面視でジグザグ状に配置されている。このため、Y軸方向から見ると、
図2に示すように12本の取付ヘッド61は互いに重なり合うことなくX軸方向に一列に並んでいる。
【0031】
吸着ノズル62が装着される各取付ヘッド61の先端部は、圧力切換機構7を介して負圧発生装置、正圧発生装置、及び大気のいずれかに連通可能とされている。そして、制御ユニット200の把持制御部220が圧力切換機構7をコントロールすることで取付ヘッド61の先端部に与える圧力を切り換え可能となっている。したがって、圧力切換によって負圧発生装置からの負圧吸着力を取付ヘッド61の先端部に与えると、当該先端部に装着された吸着ノズル62が電子部品Pを吸着して保持する。逆に、正圧発生装置からの正圧を取付ヘッド61の先端部に与えると、吸着ノズル62による電子部品Pの吸着保持が解除されて、電子部品Pが基板Sに取り付けられる。そして、電子部品Pの取付後、吸着ノズル62は大気開放とされる。このようにヘッドユニット6では把持制御部220による負圧吸着力及び正圧供給の制御により電子部品Pの着脱が可能となっている。
【0032】
各取付ヘッド61はヘッドユニット6に対して図略のノズル昇降駆動機構により昇降(Z軸方向の移動)可能に、かつ図略のノズル回転駆動機構によりノズル中心軸回りに回転(
図2のR方向の回転)可能となっている。これらの駆動機構のうちノズル昇降駆動機構は電子部品Pの吸着もしくは取付を行う時の下降位置(下降端)と、電子部品Pの搬送を行う時の上昇位置(上昇端)との間で取付ヘッド61を昇降させるものである。一方、ノズル回転駆動機構は吸着ノズル62を必要に応じて回転させるための機構であり、回転駆動により電子部品Pを取付時における所定のR方向に位置させることが可能となっている。なお、これらの駆動機構については、それぞれZ軸サーボモータMz、R軸サーボモータMrおよび所定の動力伝達機構で構成されており、駆動制御部210によりZ軸サーボモータMzおよびR軸サーボモータMrを駆動制御することで、各取付ヘッド61をZ軸方向およびR方向に移動させることができる。
【0033】
これら取付ヘッド61を保持するヘッドユニット6は、基台11の所定範囲にわたりX軸方向及びY軸方向(X軸及びZ軸方向と直交する方向)に移動可能となっている。すなわち、ヘッドユニット6は、X軸方向に延びる取付ヘッド支持部材63に対してX軸に沿って移動可能に支持されている。また、取付ヘッド支持部材63は、両端部がY軸方向の固定レール64に支持され、この固定レール64に沿ってY軸方向に移動可能になっている。そして、このヘッドユニット6は、X軸サーボモータMxによりボールねじ66を介してX軸方向に駆動され、取付ヘッド支持部材63はY軸サーボモータMyによりボールねじ68を介してY軸方向へ駆動される。したがって、駆動制御部210がX軸サーボモータMxおよびY軸サーボモータMyを駆動制御することで、XY面内の所定位置にヘッドユニット6を移動させることができる。その結果、ヘッドユニット6を適宜移動させて、取付ヘッド61に吸着された電子部品Pを部品供給部4から取付箇所まで搬送するといった動作が実行できる。
【0034】
また、部品取付装置1には、電子部品Pを撮像する2種類のカメラ(部品認識カメラC1、部品検査カメラC2)が設けられている。部品認識カメラC1は、照明部およびCCD(Charge Coupled Device)カメラなどから構成されて、基台11上に配置されており、各取付ヘッド61の吸着ノズル62による電子部品Pの吸着状態を確認するために主に用いられる。具体的には、駆動制御部210がヘッドユニット6を適宜移動させることで、部品認識カメラC1の上方に吸着ノズル62の吸着する電子部品Pを移動させる。そして、この状態で部品認識カメラC1の撮像した電子部品Pの画像が制御ユニット200(の画像処理部230)に転送される。制御ユニット200は、この画像に基づいて駆動制御部210によりR軸サーボモータMrを制御することで、取付ヘッド61をR方向に適宜回転させて、基板Sに取り付けられる電子部品Pの角度を適切に調整する。
【0035】
一方、部品検査カメラC2は、照明部およびCCDカメラなどから構成されて、ヘッドユニット6に搭載されており、基板Sに取り付けられた電子部品Pの取付状態を検査するために主に用いられる。具体的には、駆動制御部210がヘッドユニット6を適宜移動させることで、電子部品Pの取付箇所の上方に部品検査カメラC2を移動させる。そして、この状態で部品検査カメラC2の撮像した電子部品Pの画像が画像処理部230に転送される。画像処理部230は、転送されてきた電子部品Pの画像から、電子部品Pの取付状態の良否を判定する。
【0036】
後に詳述するように、この実施形態では、ヘッドユニット6の取付ヘッド61によって、バックアッププレート31上の所定の配置箇所にクリンチピン100を配置する。つまり、バックアップ部3の後方側(−Y軸方向側)に配置されたオードノズルチェンジャ81では、取付ヘッド61の先端部に取り付け可能な吸着ノズル62として、電子部品P用の吸着ノズル62pとクリンチピン100用の吸着ノズル62cとが準備されており、取付ヘッド61に取り付ける吸着ノズル62をこれらの間で交換することができる。また、バックアップ部3の前方側(+Y軸方向側)には、複数のクリンチピン100を収容するストッカ82が配置されている。そして、クリンチピン100用の吸着ノズル62cが取り付けられた取付ヘッド61を用いて、ストッカ82からバックアッププレート31へとクリンチピン100を吸着・搬送することで、バックアッププレート31の所定の配置箇所にクリンチピン100を配置することができる。なお、この際の取付ヘッド61の移動は、上述の電子部品Pの搬送と同様にして、駆動制御部210によって制御される。
【0037】
図3に示すように、部品取付装置1には、ユーザとのインターフェースとして機能するディスプレイ91および入力機器92を備える。ディスプレイ91は、部品取付装置1の動作状態等を表示する機能のほか、タッチパネルで構成されてユーザからの入力を受け付ける入力端末としての機能も有する。また、入力機器92は、マウスやキーボードで構成されており、ユーザからの入力を受け付ける機能を果たす。なお、これらディスプレイ91および入力機器92に対する入出力の制御は、制御ユニット200の入出力制御部240によって実行される。
【0038】
このように構成された部品取付装置1全体の動作は、主制御部250によって統括的に制御される。つまり、この主制御部250は、記憶部260に記憶されているプログラムやデータに基づいてバス270を介して制御ユニット200の各部と互いに信号のやり取りを行って、装置1全体を制御する。具体的には、記憶部260には、ピン配置プログラム261および取付プログラム262(生産プログラム)が記憶されている。ピン配置プログラム261は、クリンチピン100をバックアッププレート31の配置箇所に配置するために、取付ヘッド61等を制御するためのプログラムである。また、取付プログラム262は、電子部品Pを基板Sの取付箇所に取り付けるために、取付ヘッド61等を制御するためのプログラムであり、基板Sに対して電子部品Pを取り付ける位置、角度のほか、取付手順等の情報が組み込まれている。続いては、主制御部250の制御下で実行される動作の一例について説明する。
【0039】
図4は、
図1の部品取付装置で実行される動作の一例を示すフローチャートである。同図では、生産基板の品種が切り換えられた際のフローチャートが示されている。つまり、ユーザインターフェース91、92を介して、ユーザより基板品種の切換が指示されると、同図のフローチャートが実行される。ステップS101では、記憶部260に記憶されている取付プログラム262から、基板Sに電子部品Pを取り付ける位置および角度を示す基板データが読み出される。そして、この基板データは、ディスプレイ91に一覧で表示される(
図5)。
【0040】
図5は、ディスプレイへの基板データの表示態様の一例を示す図である。
図5に示すようにディスプレイ91では、電子部品P1、P2…のそれぞれについて、当該電子部品を取り付ける位置(X座標、Y座標)と、当該電子部品を取り付ける角度(R角度)が示される。また、ディスプレイ91では、電子部品P1、P2…のそれぞれがリード部品Plであるか否かを指定するためのリード部品チェックボックスが示される。そして、ユーザは、ディスプレイ91のタッチパネル機能あるいは入力機器92を用いて、リード部品Plである電子部品Pのリード部品チェックボックスにチェックを入れる(ステップS102)。ちなみに、
図5の例では、電子部品P2、P6のリード部品チェックボックスにチェックが入れられている。
【0041】
ステップS103では、ステップS102でのユーザの入力結果に基づいて、リード部品Plの搭載情報が抽出される。具体的には、同ステップでは、ユーザによってリード部品Plであると指定された電子部品P2、P6の取付箇所の位置(X座標、Y座標)が抽出される。そして、リード部品P2、P6の取付箇所の位置から、クリンチピン100の配置箇所の位置が求められる。なお、リード部品Plの取付箇所とクリンチピン100の配置箇所とは、Z軸方向への位置が異なるのみである。したがって、リード部品P2、P6の取付箇所の位置(X座標、Y座標)が、クリンチピン100の配置箇所の位置(X座標、Y座標)として求められる。
【0042】
また、このステップS103では、ユーザによってリード部品Plであると指定された電子部品P2、P6の取付角度(R方向)が抽出されて、クリンチピン100の配置角度として求められる。つまり、後に
図7等を示しつつ詳述するように、クリンチピン100は、リード部品Plのリードlをリード受け溝123で受けて、リードlをクリンチする。したがって、リードlに対してリード受け溝123が傾いていると、リードlをリード受け溝123で適切に受けることができず、リードlを確実にクリンチできないおそれがある。そこで、リード部品Plの取付角度にクリンチピン100の配置角度を合わせて、リードlをリード受け溝123で的確に受けるために、ステップS103では、リード部品Plの取付角度(R方向)がクリンチピン100の配置角度(R方向)として求められる。
【0043】
続いて、ステップS104において取付ヘッド61の吸着ノズル62がクリンチピン用の吸着ノズル62cに交換されると、ステップS105のクリンチピン配置処理が実行される。このクリンチピン配置処理では、ステップS103で求められた配置位置および角度に基づいて、クリンチピン100がバックアッププレート31に配置される。詳述すると、主制御部250は、ストッカ82に収容されている配置対象のクリンチピン100を部品検査カメラC2で撮像して、当該クリンチピン100の角度を把握する。具体的には、クリンチピン100のリード受け溝123(
図7)、あるいはクリンチピン100に付されたマーカを認識した結果に基づいて、クリンチピン100の角度が把握される。そして、ステップS103で求められた配置位置および角度と、部品検査カメラC2により認識したクリンチピン100の角度に基づいて、クリンチピン100のバックアッププレート31への配置が実行される(
図6)。ここで、
図6は、バックアッププレートへのクリンチピンの配置態様の一例を模式的に示した平面図である。
図6に示すように、ユーザが指定したリード部品Plを取り付ける位置および角度に応じて、クリンチピン100がバックアッププレート31に配置される。
【0044】
なお、クリンチピン配置処理においては、バックアッププレート31の上面の高さが初期高さz0から変更される。この理由は次のとおりである。つまり、作業位置Lに固定された基板Sに電子部品Pを取り付ける際は、取付ヘッド61は、部品取付高さzfにある基板Sの表面Sfに対して作業を行う。これに対して、クリンチピン100の配置を行う際には、取付ヘッド61は、バックアッププレート31の上面に対して作業を行う。したがって、取付ヘッド61は、部品取付高さzfにある基板Sの表面Sfと、バックアッププレート31の上面との両方にアクセスできるだけの移動範囲を有する必要がある。そのため、クリンチピン配置処理時のバックアッププレート31の上面の高さが、部品取付高さzfと大きく異なると、取付ヘッド61の移動範囲を広く確保する必要があるが、この移動範囲を確保することは必ずしも簡単でない。
【0045】
これに対応するため、クリンチピン配置処理を実行するにあたっては、初期高さz0よりも部品取付高さzfの側に、バックアッププレート31の上面の高さを上昇させる。このような構成では、取付ヘッド61が基板Sに電子部品Pを取り付けるために移動する範囲と、取付ヘッド61がクリンチピン100を配置するために移動する範囲とを近接させることができる。そのため、取付ヘッド61の移動範囲を広く確保する必要が無く、装置1の構成の簡素化を図ることができる。
【0046】
ステップS105において、リード部品Plの取り付けに必要な全てのクリンチピン100が配置されて、クリンチピン配置処理が完了すると、取付ヘッド61の吸着ノズル62が電子部品用の吸着ノズル62pに交換されるとともに(ステップS106)、基板Sが搬入されて作業位置Lに固定される(ステップS107)。こうして、電子部品Pの取付を開始するための準備が完了する。
【0047】
ステップS108の表面実装部品取付処理では、表面実装部品Psの基板Sへの取り付けが実行される。具体的には、表面実装部品供給部4sが供給する表面実装部品Psを、取付ヘッド61が吸着ノズル62pで吸着保持して、基板Sの表面Sfの取付箇所まで搬送する。そして、吸着ノズル62pに正圧が与えられて、吸着ノズル62pから基板Sの取付箇所へ表面実装部品Psが取り付けられる。この取付動作が全ての表面実装部品Psについて実行されると、ステップS109が実行される。
【0048】
ステップS109のリード部品取付処理では、リード部品Plの基板Sへの取り付けが実行される。具体的には、リード部品供給部4lが供給するリード部品Plを、取付ヘッド61が吸着ノズル62pで吸着保持して、基板Sの表面Sfの取付箇所まで搬送する。そして、取付ヘッド61によって、Z軸方向から下向きにリード部品Plへ一定の荷重を掛けつつ、取付箇所に設けられた差込孔にリード部品Plのリードを差し込む。この際、リード部品Plに掛ける荷重の調整は、Z軸サーボモータMzの駆動電流を制御することで行なわれる。また、リード部品Plの取付位置の下方には、クリンチピン100が配置されているため、基板Sの裏面Sbから突出したリード部品Plのリードはクリンチピン100によってクリンチされる。こうして、リード部品Plが基板Sに取り付けられる。この取付動作が全てのリード部品Plについて実行されると、ステップS110が実行される。
【0049】
ステップS110では、基板Sが作業位置Lから搬出され、続くステップS111では、全ての基板Sの生産が完了したか否かが判断される。そして、生産が未完了である場合(ステップS111で「NO」の場合)には、ステップS107に戻って、基板Sの生産が継続される。一方、生産が完了している場合(ステップS111で「YES」の場合)には、生産基板を終了する。
【0050】
以上が、部品取付装置1の構成および動作の詳細である。続いては、部品取付装置1で用いられるクリンチピン100の構成および動作の詳細について説明する。
図7は、クリンチピンの一例を概略的に示す斜視図である。
図8は、
図7のクリンチピンの部分断面を概略的に示す断面図である。このクリンチピン100は、抵抗やコンデンサといったリード部品Plを基板Sに取り付けるためにバックアッププレート31に配置されるものであり、
図7および
図8では、クリンチピン100の作業対象であるリード部品Pl、基板Sやバックアッププレート31が併記されている。なお、
図7では、基板Sに隠れる構成についても、基板Sを透かして示している。
【0051】
リード部品Plからは、針金状のリードlが所定本数(図の例では2本)延設されている。このリードlは、リード部品Plを基板Sに連結する機能と、リード部品Plを基板Sのパターンに電気的に接続する機能とを果たす。一方、基板Sには、リード部品Plのリードlを差し込むための差込孔hが、部品Pの取付箇所Waに対して設けられている。差込孔hは基板Sを貫通しており、基板Sの表面Sf(一方主面)から裏面Sb(他方主面)へ向かう部品取付方向D(Z軸方向に平行な方向)から差込孔hに差し込まれて基板Sの下方に突出したリードlが折り曲げられることで、リード部品Plが基板Sに取り付けられる。
【0052】
図7および
図8に示すように、クリンチピン100は、Z軸方向に延びる円筒形状を有している。より具体的には、クリンチピン100は、Z軸方向に延びる円筒形状のベース部材110の上端にリード受け部材120を取り付けた概略構成を備える。ベース部材110の上端には、Z軸に対して回転対称な形状を有して、上方に開口する嵌合孔111が形成されている。一方、リード受け部材120は、円盤形状の頭部121および当該頭部121から下方に突出する棒状の嵌合突起122で構成されており、Z軸に対して回転対称な形状を有している。そして、リード受け部材120の嵌合突起122がベース部材110の嵌合孔111に上方から嵌合した状態で、リード受け部材120がベース部材110に支持される。
【0053】
嵌合突起122の径は、嵌合孔111の径よりも小さい。そのため、嵌合突起122は、嵌合孔111に対して隙間を持って嵌合する。したがって、部品取付方向Dに直交する面内(XY平面内)において、リード受け部材120はベース部材110に対して変位することができる。また、嵌合突起122を取り囲むように並ぶ複数のボールで構成されたボールベアリング130が、リード受け部材120の頭部121の下面とベース部材110の上面の間に配置されている。したがって、このボールベアリング130の機能によって、リード受け部材120は、ベース部材110に対して滑らかに変位することができる。
【0054】
具体的には、リード受け部材120は、部品取付方向Dに直交する面内で平行移動したり、部品取付方向Dに延びる軸を中心として回転移動したりすることができる。ちなみに、リード受け部材120の平行移動は、嵌合突起122と嵌合孔111との隙間の範囲に規制される。また、リード受け部材120の回転移動は、回転規制部材190によって規制されている。
【0055】
この回転規制部材190は中空の円筒形状を有しており、部品取付方向Dからリード受け部材120に被せられるとともに、棒状の固定部材195によってベース部材110に固定されている。回転規制部材190の頭部には、スリット191が形成されており、リード受け部材120の頭部121に形成された突出部121aがスリット191から上方に突き出ている。突出部121aの幅は、スリット191の幅よりも狭く、スリット191と突出部121aとの間には隙間が設けられている。その結果、リード受け部材120は、スリット191と突出部121aの隙間の範囲で回転することが可能となっている。
【0056】
リード受け部材120の頭部121の上面には、突出部121aに重なるようにして、リード受け部材120の径方向に切られて上方および側方に開口するリード受け溝123が所定個数(図の例では2本)形成されている。これらリード受け溝123は、リード部品Plのリードlに対応して設けられており、リード受け部材120の中心線(回転対称軸)に対して回転対称(図の例では180度対称)に形成されている。リード受け溝123は、リード受け部材120の中心線のやや外側から周面にかけて形成されており、リード受け部材120の周面に向けて下る斜面形状を有する。より詳しくは、リード受け溝123は、急斜面と当該急斜面より傾斜角の小さい緩斜面とをアールで滑らかに接続した形状を有し、リード受け部材120の中心線から周面に向けて急斜面から緩斜面へ到るように形成されている。
【0057】
リード部品Plを基板Sにクリンチする際には、クリンチピン100のリード受け溝123が基板Sの差込孔hの下方に位置するように、クリンチピン100が基板Sの下方の配置箇所Wbに配置される。そして、リード部品Plのリードlを差込孔hに差し込んだ状態から、リード部品Plが下方に押し込まれる。これによって、基板Sの下方に突出したリードlが、リード受け溝123に接触した後さらに押し込まれて、リード受け溝123の形状に沿って折れ曲がる。こうして、リードlがクリンチされて、リード部品Plが基板Sに取り付けられる。この際、
図8に示すように、リードlの端はリード受け部材120の周面より外側に突出する。
【0058】
さらに、リード受け部材120の頭部121の上面には、支持突起124が形成されており、クリンチピン100は、この支持突起124で基板Sの裏面Sbに接して、基板Sを支持する。これによって、リード部品Plの取り付けに伴って働く荷重に抗して、基板Sをクリンチピン100で支持して、基板Sの撓みが抑制されている。また、ベース部材110の下端には、磁石135がネジ止めされており、クリンチピン100は、磁力によってバックアッププレート31に装着されている。これによって、基板Sからの力に抗して、クリンチピン100をバックアッププレート31上にしっかりと立設することができる。
【0059】
以上に説明したように、この実施形態では、リード部品Plのリードlを差し込むための差込孔hがリード部品Plの取付箇所Waに対して形成された基板Sが、作業位置Lに固定される。続いて、リード部品Plが基板Sの取付箇所Waまで運搬されて、このリード部品Plのリードlが取付箇所Waの差込孔hに基板Sの表面Sf側から差し込まれる(リード部品取付処理)が実行される。そして、クリンチピン100が、リード部品取付処理で差込孔hに差し込まれて基板Sの裏面Sbから突出するリードlに接触してリードlを曲げる。こうして曲げられたリードlが差込孔hに係合して、リード部品Plが基板に取り付けられる。
【0060】
特に、この実施形態では、クリンチピン100の配置箇所Wbがリード部品Plの取付箇所Waに応じて変更可能であるように構成されている。そして、取付箇所Waに応じた配置箇所Wbにクリンチピン100を配置するクリンチピン配置処理がリード部品取付処理の開始前に実行される。このような構成では、リード部品Plの取付箇所Waと基板Sとの位置関係の変更が必要となった場合には、これに応じてクリンチピン100の配置箇所Wbを変更して、変更後の配置箇所Wbにクリンチピン100を配置することで、特に基板S(の作業位置L)を移動させること無く、リード部品Plの取付箇所Waと基板Sとの位置関係の変更に対応することができる。したがって、基板Sの移動範囲を広く要すること無く、リード部品Plの取付箇所Waと基板Sとの位置関係の変更が可能となっている。
【0061】
ところで、リード部品Plの取付箇所Waは1つとは限らず、上述のように複数の取付箇所Waが基板Sに設けられる場合もある。このような場合、特許文献1のようなクリンチ機構によれば、取付箇所Waがクリンチユニットの上方に位置するように基板Sを移動させて、当該取付箇所Waにリード部品Plを取り付けるといった動作を、各取付箇所Waに繰り返し実行することで、複数の取付箇所Waそれぞれにリード部品Plを取り付けることができる。しかしながら、取付箇所Waがクリンチユニットの上方に位置するまで基板Sを移動させるのに十分な広さで、基板Sの移動範囲を常に確保できるとは限らない。したがって、基板Sの移動を伴うかかる手法は、必ずしも適切とは言えなかった。
【0062】
これに対して、この実施形態によれば、クリンチピン配置処理を実行することで、複数の取付箇所Waに対応する複数の配置箇所Wbのそれぞれにクリンチピン100が配置される。そのため、リード部品取付処理では、特に基板Sを移動させずに作業位置Lに固定したまま、複数の取付箇所Waのそれぞれにリード部品Plを取り付けることができ、好適である。
【0063】
また、この実施形態では、作業位置Lに固定された基板Sに対しては、リード部品Plの他に表面実装部品Psも取り付けられる。このような構成では、リード部品Plと表面実装部品Psの両方を基板Sに取り付けることができ、部品取付装置1の汎用性を向上させることができる。
【0064】
なお、このようにリード部品Plと表面実装部品Psの両方が取付可能な構成では、基板Sに取り付けられる複数の電子部品Pのうち何れの電子部品がリード部品Plであるかを、把握できない場合がある。このような場合、電子部品Pの種別を問わず、全電子部品Pに対してクリンチピン100を配置することも考えられる。しかしながら、本来、取り付けに際してクリンチピン100を要さない表面実装部品Psに対してまでクリンチピン100を配置することは無駄な動作であり、適切とは言えない。
【0065】
これに対して、この実施形態では、基板Sに取り付けられる複数の電子部品Pのうちからリード部品Plをユーザが指定可能なっている。そして、クリンチピン配置処理では、ユーザにより設定されたリード部品Plの取付箇所Waに対応する配置箇所Wbにクリンチピン100が配置される。このような構成では、ユーザによってリード部品Plが指定されるため、基板Sに取り付けられる複数の電子部品Pのうち何れの電子部品がリード部品Plであるかを、把握することができる。そして、クリンチピン配置処理では、こうして把握されたリード部品Plの取付箇所Waに対応する配置箇所Wbに、クリンチピン100を適切に配置することができる。その結果、表面実装部品Psに対してクリンチピン100を配置するといった無駄な動作の発生を抑止することができる。
【0066】
また、この実施形態では、リード部品Plの取付箇所Waの位置を示すデータから、クリンチピン100の配置箇所Wbの位置が求められる。そして、この結果に基づいて、クリンチピン配置処理でクリンチピン100を配置する位置が制御される。そのため、リード部品Plの取付箇所Waの位置に応じて、クリンチピン100の配置箇所Wbの位置を適切に制御することができる。したがって、取付箇所Waに設けられた差込孔hに差し込まれたリードlを、配置箇所Wbに配置されたクリンチピン100に的確に接触させてしっかりと曲げることができ、リード部品Plを取付箇所Waに確実に取り付けることができる。
【0067】
さらに、この実施形態では、リード部品Plを取り付ける角度を示すデータから、クリンチピン100を配置する角度が求められる。そして、この結果に基づいて、クリンチピン配置処理でクリンチピン100を配置する角度が制御される。そのため、リード部品Plを取り付ける角度に応じて、クリンチピン100を配置する角度を適切に制御することができる。したがって、取付箇所Waに設けられた差込孔hに差し込まれたリードlを、配置箇所Wbに配置されたクリンチピン100に的確に接触させてしっかりと曲げることができ、リード部品Plを取付箇所Waに確実に取り付けることができる。
【0068】
また、この実施形態では、取付ヘッド61がストッカ82から配置箇所Wbまでクリンチピン100を運搬して、クリンチピン配置処理を実行している。このような構成では、リード部品Plおよびクリンチピン100の両方の運搬を共通の取付ヘッド61で実行できる。そのため、リード部品Plおよびクリンチピン100それぞれに対して、運搬のための構成を設ける必要が無く、装置1の小型化や低コスト化等を図ることが可能となる。
【0069】
また、この実施形態では、コンベア21、21が基板Sを作業位置Lに搬送するより前に、クリンチピン配置処理が実行されている。このような構成では、クリンチピン配置処理の実行の際には、作業位置Lに基板Sが無いため、バックアッププレート31へのアクセスが容易となる。その結果、バックアッププレート31へのクリンチピン100の配置を簡便に実行することができる。
【0070】
その他
上述のように、上記実施形態では、部品取付装置1が本発明の「部品取付装置」の一例に相当し、コンベア21、21が本発明の「基板固定手段」、「基板搬送手段」の一例に相当し、リード部品供給部4lが本発明の「部品供給手段」の一例に相当し、取付ヘッド61が本発明の「作業ヘッド」の一例に相当し、バックアッププレート31が本発明の「支持部材」の一例に相当し、クリンチピン100が本発明の「クリンチ器具」の一例に相当し、ステップS109が本発明の「部品取付処理」の一例に相当し、クリンチピン配置処理S105が本発明の「クリンチ器具配置処理」の一例に相当し、ディスプレイ91あるいは入力機器92が本発明の「ユーザインターフェース」の一例に相当し、ストッカ82が本発明の「収容部材」の一例に相当する。また、ステップS107が本発明の「基板固定工程」の一例に相当し、ステップS109が本発明の「部品取付工程」の一例に相当し、ステップS105が本発明の「クリンチ器具配置工程」の一例に相当する。
【0071】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したものに対して種々の変更を加えることが可能である。例えば、クリンチピン100の具体的な構成は上記のものに限られず、バックアッププレート31への配置箇所Wbを適宜変更できる構成であれば良い。そこで、例えば次のようにクリンチピン100を構成しても良い。
【0072】
図9は、クリンチピンの変形例にかかる構成を概略的に示す斜視図である。
図10および
図11は、
図9に示したクリンチピンの構成および動作を概略的に示す部分断面図である。なお、
図9〜
図11に示すクリンチピン100の構成は、
図7、
図8で示したものと部分的に共通する。したがって、以下では、異なる構成について主に説明することとし、共通部分については相当符号を付して説明を適宜省略する。
【0073】
変形例にかかるクリンチピン100は、クリンチピン100は、Z軸方向に延びる円筒形状のベース部材110の上端にリード受け部材120を固定した概略構成を備える。リード受け部材120の上面には、回転対称な形状を有するリード受け部材120の径方向に切られて上方および側方に開口するリード受け溝123が所定個数(図の例では2本)形成されている。そして、
図7および
図8を用いて説明した内容と同様にして、クリンチピン100は、リード部品Plのリードlをクリンチする。
【0074】
特にこのクリンチピン100は、クリンチされてリード受け部材120の周面より突出したリードlに対して、追加的な加工を行う追加加工機構140を有する。この追加加工機構140は、Z軸方向に延びる円筒形状を有した中空の外筒141と、外筒141の中空部を横断するように外筒141の内壁に架かるブリッジ142と、ブリッジ142から下方に延びて外向きフランジ143aを下端に有するシャフト143とで構成される。この追加加工機構140は、次のようにしてベース部材110に取り付けられている。
【0075】
図10および
図11に示すように、ベース部材110の内部には、Z軸方向に延びる内部空間150が形成されている。内部空間150は、上端がリード受け部材120で閉塞され、下端が蓋部材160で閉塞されている。この蓋部材160は、上方を向いて内部空間150に突出する凸部161を有する。内部空間150を囲むベース部材110の内壁には内向きフランジ110aが設けられており、内部空間150は、内向きフランジ110aより下側の下方空間150aと、内向きフランジ110aより上側の上方空間150bとに大別される。
【0076】
そして、追加加工機構140のシャフト143は、ベース部材110の内部空間150に配置されて、Z軸方向に移動自在となっている。具体的には、内向きフランジ110aで囲まれる孔に対して、シャフト143の上端が下方から挿入されている。そして、シャフト143の下端のフランジ143aが下方空間150aに位置し、シャフト143の上端がフランジ143aから上部空間bへ突出している。その結果、フランジ143aが蓋部材160の凸部161に突き当たる下方位置(
図10の位置)と、フランジ143aがフランジ110aに突き当たる上方位置(
図11の位置)との間で、シャフト143はZ軸方向に移動できる。
【0077】
追加加工機構140のブリッジ142は、ベース部材110に設けられた横孔151に配置されている。この横孔151は、ベース部材110を水平方向に貫通しつつ上方空間150bに連通しており、ブリッジ142の可動域を確保するためにZ軸方向に所定の幅を持って設けられている。そして、ブリッジ142は横孔151内を移動することで、ベース部材110と干渉すること無くシャフト143に伴ってZ軸方向に移動できる。
【0078】
追加加工機構140の外筒141は、ベース部材110およびリード受け部材120の外側に嵌められて、横孔151から突出するブリッジ142の両端で支持される。こうして、外筒141は、ブリッジ142を介してシャフト143に接続されており、シャフト143に伴ってZ軸方向へ移動できる。
【0079】
このように、外筒141、ブリッジ142およびシャフト143で構成される追加加工機構140は、Z軸方向へ移動自在となっている。そして、この追加加工機構140の移動は、クリンチピン100に設けられた圧入孔171および圧縮バネ172によって実行される。つまり、ベース部材110を貫通する圧入孔171は下方空間150aに連通しており、圧入孔171から下方空間150aに圧入された空気はシャフト143を下面から押し上げる。一方、圧縮バネ172は、上方空間150bにおいて、リード受け部材120とブリッジ142の間に設けられており、ブリッジ142を介してシャフト143を押し下げる。このような構成を具備していることから、圧入孔171から空気を圧入することで、シャフト143に伴って外筒141を上昇できる一方、圧入孔171を大気圧に開放することで、シャフト143に伴って外筒141を下降できる。具体的には、チューブを介して圧力調整機構(それぞれ図示を省略)に圧入孔171は接続されており、この圧力調整機構によって圧入孔171への空気の圧入や、圧入孔171の大気圧への開放が実行される。
【0080】
また、追加加工機構140は、外筒141の上方でリード受け部材120の外側に嵌められたリング状の基板保護部材144をさらに備える。この基板保護部材144は、リード受け溝123の傾斜面の下端よりやや上方に位置している。したがって、
図10の状態において、リード受け溝123に沿って曲げられたリードlは、リード受け溝123の傾斜面と基板保護部材144の間から外側に突出する。そのため、
図11の位置まで外筒141を上昇させることで、外筒141の上端に形成された刃141aと基板保護部材144とでリードlを挟んで、リードlを切断することができる。このように、変形例にかかるクリンチピン100は、クリンチされたリードlに対して切断加工を施すことができる。以上が、クリンチピン100の変形例にかかる構成および動作の説明である。
【0081】
このように、変形例にかかるクリンチピン100は、リードlの切断加工を追加的に行うものであった。しかしながら、リードlに対して追加的に実行したい加工は切断加工に限られない。具体的には、リード受け溝123に沿わせるだけではリードlの曲げが不十分であるような場合には、リードlをさらに曲げる加工を追加的に実行できることが好適となる。そこで、変形例にかかるクリンチピン100に対して、例えば次のような変更を加えても良い。
【0082】
具体的には、外筒141の上端の刃および基板保護部材144を排除すると良い。このような構成では、外筒141によってリードlの切断を行う代わりに、リード受け溝123に沿って曲がったリードlに対して、追加的に曲げ加工を施すことができる。具体的には、外筒141を上昇させることで、リード受け溝123から外側に突出したリードlを外筒141で押し遣って曲げることで、追加の曲げ加工を実行できる。
【0083】
また、このようなクリンチピン100に対する変形以外にも、種々の変更を加えることが可能である。例えば、上記実施形態では、クリンチピン100の把持は、吸着によって実行されていた。しかしながら、クリンチピン100の把持態様は吸着に限られない。具体的に、空気圧で爪を開閉可能なチャックを用いて、これらの把持を行うようにしても良い。また、表面実装部品Psあるいはリード部品Plの把持態様についても、同様の変形が可能である。
【0084】
また、上記実施形態では、表面実装部品Psおよびリード部品Plの両方を基板Sに取り付け可能な部品取付装置1に対して本発明を適用した場合について説明を行なった。しかしながら、例えば、表面実装部品Psの基板Sへの取り付けを行わない部品取付装置1に対して本発明を適用することも可能である。
【0085】
また、上記実施形態では、鉛直方向の上方から下方へ向けて電子部品Pは取り付けられており、換言すれば、部品取付方向Dは、鉛直下方を向いていた。しかしながら、部品取付方向Dはこれに限られず、例えば鉛直上方を向く方向であっても良い。
【0086】
また、上記実施形態では、電子部品Pの取り付けとクリンチピン100の配置とを共通の取付ヘッド61で実行していた。しかしながら、電子部品Pの取り付けを行う取付ヘッド61とは別に、クリンチピン100の配置を行う機構を設けても構わない。