(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6027799
(24)【登録日】2016年10月21日
(45)【発行日】2016年11月16日
(54)【発明の名称】頻尿治療用組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/192 20060101AFI20161107BHJP
A61K 31/198 20060101ALI20161107BHJP
A61P 13/02 20060101ALI20161107BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20161107BHJP
【FI】
A61K31/192
A61K31/198
A61P13/02
A61P43/00 121
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-156058(P2012-156058)
(22)【出願日】2012年7月12日
(65)【公開番号】特開2013-35833(P2013-35833A)
(43)【公開日】2013年2月21日
【審査請求日】2015年3月3日
(31)【優先権主張番号】特願2011-154884(P2011-154884)
(32)【優先日】2011年7月13日
(33)【優先権主張国】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】306014736
【氏名又は名称】第一三共ヘルスケア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161160
【弁理士】
【氏名又は名称】竹元 利泰
(74)【代理人】
【識別番号】100146581
【弁理士】
【氏名又は名称】石橋 公樹
(72)【発明者】
【氏名】工月 達郎
(72)【発明者】
【氏名】鳥住 保博
(72)【発明者】
【氏名】吉池 通晴
【審査官】
高橋 樹理
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−052210(JP,A)
【文献】
Int. J. Urol.,2005年,12(8),779-782
【文献】
Biomed. Res.,2005年,26(1),29-33
【文献】
J. Urol.,2005年,173(1),314-7
【文献】
Exp. Neurol.,2003年,183(1),232-240
【文献】
Biomedical Research,2003年,Vol.24, No.3,173-180
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロキソプロフェンナトリウム又はその水和物、並びに、L−グルタミン酸又はその塩及びグリシンからなる群より選ばれる1種以上のアミノ酸、を含有する、頻尿、尿失禁、又は尿意切迫感の予防及び/又は治療用の医薬組成物。
【請求項2】
ロキソプロフェンナトリウム又はその水和物が、ロキソプロフェンナトリウム2水和物である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
ロキソプロフェンナトリウム又はその水和物とグリシンの配合比が、ロキソプロフェンナトリウム無水物に換算した1重量部に対し、グリシン0.5〜500重量部である、請求項1又は2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
ロキソプロフェンナトリウム又はその水和物とL−グルタミン酸又はその塩の配合比が、ロキソプロフェンナトリウム無水物に換算した1重量部に対し、L−グルタミン酸又はその塩0.5〜200重量部である、請求項1又は2に記載の医薬組成物。
【請求項5】
経口投与用である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロキソプロフェンナトリウム又はその水和物を含有する、頻尿等の下部尿路症状(LUTS)を予防及び/又は治療する医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
わが国の高齢化の進行に伴い、排尿に関して様々症状を訴える患者が増えている。最近では、排尿に関する症状を、蓄尿症状、排尿症状、排尿後症状の3つに分類されており、これらの症状を総称して、下部尿路症状(Lower Urinary Tract Symptoms:LUTS)と呼ばれている。下部尿路症状には、頻尿、尿意切迫感、尿失禁、排尿遅延、残尿感等の症状が含まれる。いずれの症状においても原因となりうる基礎疾患(前立腺肥大や高血圧など)がある場合にはまずその治療が行われるが、加齢による頻尿や切迫性尿失禁等の場合によく処方される抗コリン薬が追加される場合もある。しかし、抗コリン薬は、効果が高い反面、口渇や便秘等の副作用の発現率が高いことが知られている。
【0003】
ロキソプロフェンナトリウム又はその水和物は、シクロオキシゲナーゼを阻害する非ステロイド系解熱鎮痛薬として知られており、有効性及び安全性に優れ、臨床で幅広く使用されている。また、ロキソプロフェンナトリウムは、夜尿症の治療や、夜間頻尿に対して排尿回数の減少効果があることが報告されている(例えば、特許文献1、非特許文献1〜3参照)。
【0004】
アミノ酸の一種であるグリシンは、混合アミノ酸製剤の成分として用いられるほか、制酸剤として効果を有することが知られている。また、同じくアミノ酸の一種であるL−グルタミン酸は、調味料の成分であるL−グルタミン酸ナトリウムの中間体として製造されるほか、混合アミノ製剤の成分として用いられている。さらに、いずれの成分も、矯味剤等の用途で医薬品添加物としても用いられている。
一方、アミノ酸の抗浮腫作用を期待し、グリシン、グルタミン酸及びアラニン含有組成物を前立腺肥大症患者に投与して、当該疾患による尿閉に基づく排尿困難、頻尿、残尿感、夜間頻尿等に軽度な改善がみられたことが報告されている(例えば、非特許文献4参照)。しかし、当該組成物は、アミノ酸の抗浮腫作用を利用した前立腺肥大による尿道圧迫の改善と、前立腺肥大に基づいた残尿感などの排尿困難症を、浮腫を緩和させることにより、間接的に改善をもたらすものであり、尿閉のない患者の頻尿や尿量に対する抑制効果についての報告はない。
【0005】
また、具体的データは開示されていないが、ロキソプロフェンナトリウム又はその水和物による胃粘膜障害を、グリシンが抑制することが記載されている(例えば、特許文献2参照)。
しかしながら、ロキソプロフェンナトリウム又はその水和物と、グリシン又はグルタミン酸を併用した場合の抗頻尿効果についての報告はなく示唆もない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第7547688号
【特許文献2】特開第2006−52210号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】臨床医薬 21巻 1号 89〜95頁 2005年
【非特許文献2】Acta.Med.Okayama,2004,Vol.58(1),45−49
【非特許文献3】Acta.Med.Okayama,2008,Vol.62(6),373−378
【非特許文献4】新薬と臨床 第18巻 第5号 123〜125頁 1969年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述のように、既存の抗コリン作用に基づく下部尿路症状の治療剤は、汎用されていて有効性が高いが、副作用発現率が20.9〜54.6%と高いという問題点がある。すなわち、本発明の課題は、有効性が高く、かつ副作用の少ない優れた下部尿路症状の予防及び/又は治療用の医薬組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、ロキソプロフェンナトリウム又はその水和物、ならびに、L−グルタミン酸又はその塩、及びグリシンから選ばれる1種以上のアミノ酸を併用することにより、下部尿路症状に対して優れた効果が得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0010】
すなわち、本発明は以下の(1)〜(5)を提供する。
(1)ロキソプロフェンナトリウム又はその水和物、並びに、L−グルタミン酸又はその塩及びグリシンからなる群より選ばれる1種以上のアミノ酸、を含有する、下部尿路症状の予防及び/又は治療用の医薬組成物。
(2)ロキソプロフェンナトリウム又はその水和物が、ロキソプロフェンナトリウム2水和物である、(1)に記載の医薬組成物。
(3)ロキソプロフェンナトリウム又はその水和物とグリシンの配合比が、ロキソプロフェンナトリウム無水物に換算した1重量部に対し、グリシン0.5〜500重量部である、(1)又は(2)に記載の医薬組成物。
(4)ロキソプロフェンナトリウム又はその水和物とL−グルタミン酸又はその塩の配合比が、ロキソプロフェンナトリウム無水物に換算した1重量部に対し、L−グルタミン酸又はその塩0.5〜200重量部である、(1)又は(2)に記載の医薬組成物。
(5)経口投与用である、(1)〜(4)のいずれか1に記載の医薬組成物。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、優れた下部尿路症状の予防及び/又は治療用の医薬組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明における「ロキソプロフェンナトリウム又はその水和物」は、ロキソプロフェンナトリウム、ロキソプロフェンナトリウム1水和物、ロキソプロフェンナトリウム2水和物を含む。本発明においては、ロキソプロフェンナトリウム2水和物が好ましく、かかるロキソプロフェンナトリウム2水和物は、第15改正日本薬局方に収載されており、容易に入手可能である。
【0013】
本発明における「グリシン」は、第15改正日本薬局方に収載されており、市販品を容易に入手可能である。
【0014】
本発明における「L−グルタミン酸又はその塩」としては、L−グルタミン酸、L−グルタミン酸ナトリウム、L−グルタミン酸カリウム、L−グルタミン酸塩酸塩等を挙げることができる。本発明における「L−グルタミン酸又はその塩」としては、L−グルタミン酸が好ましい。L−グルタミン酸やL−グルタミン酸の塩については、医薬品添加物事典2005に記載されており、市販品を容易に入手可能である。
【0015】
本発明の医薬組成物における、ロキソプロフェンナトリウム又はその水和物とグリシンの含有比率は、ロキソプロフェンナトリウム(無水物)に換算した1重量部に対し、グリシンの含有比率として、通常0.1〜1000重量部であり、0.5〜500重量部が好ましく、1〜200重量部がより好ましい。
【0016】
本発明の医薬組成物における、ロキソプロフェンナトリウム又はその水和物とL−グルタミン酸又はその塩の含有比率は、ロキソプロフェンナトリウム(無水物)に換算した1重量部に対し、L−グルタミン酸の含有比率として、通常0.1〜1000重量部であり、0.5〜200重量部が好ましく、1〜100重量部がより好ましい。
【0017】
本発明の医薬組成物は、下部尿路症状の予防及び/又は治療に用いられるものである。下部尿路症状には、蓄尿症状として頻尿、尿失禁(尿漏れ)、尿意切迫感があり、排尿症状には、尿の勢いが弱くなる、排尿遅延、腹圧排尿等があり、排尿後症状には、残尿感等がある。本発明の医薬組成物は、蓄尿症状及び排尿後症状の予防及び/又は治療に使用されるのが好ましく、頻尿、尿失禁、尿意切迫感、残尿感の予防及び/又は治療に対して使用されるのがより好ましく、頻尿の予防及び/又は治療に対して使用されるのが特に好ましい。
【0018】
本発明の医薬組成物は、経口用又は非経口用のいずれでもよいが、経口用が好ましい。本発明の医薬組成物が経口用である場合、その剤形は特に限定されないが、固形製剤が好ましい。
本発明の医薬組成物の剤形が固形製剤の場合、具体的には、第15改正日本薬局方に記載されている顆粒剤、散剤、カプセル剤、錠剤、又は丸剤等を挙げることができる。本発明の医薬組成物の剤形は、顆粒剤、散剤、カプセル剤又は錠剤が好ましく、錠剤がより好ましい。かかる錠剤においては、口腔内崩壊錠やチュアブル錠、トローチ剤等も含まれる。
【0019】
本発明の医薬組成物にかかる製剤を製造する際に使用される医薬品添加物としては、薬学的に許容される担体、例えば賦形剤、結合剤、崩壊剤、崩壊補助剤、滑沢剤、流動化剤、光沢化剤、発泡剤、防湿剤、界面活性剤、安定化剤、乳化剤、抗酸化剤、充填剤、防腐剤、保存剤、甘味剤、矯味剤、清涼化剤、香料、芳香剤、着色剤、コーティング剤、分散剤、消泡剤等を挙げることができる。
【0020】
また、本発明の顆粒剤又は錠剤の態様として、水溶性の高分子などで製剤をコーティングしたものや、糖で錠剤をコーティングしたものも好適である。すなわち、フィルムコーティング顆粒、フィルムコーティング錠、糖衣錠等が好ましい顆粒剤及び錠剤の態様として挙げることができる。
【0021】
本発明の医薬組成物の製剤の製造方法は、特に限定されないが、例えば、第15改正日本薬局方製剤総則に記載の方法を用いて、製造することができる。
また、本発明の医薬組成物の剤形が錠剤の場合、有効成分と医薬品添加物をともに造粒して顆粒を製造し、必要に応じて医薬品添加物を添加して混合した後、打錠して錠剤を製造してもよい。ロキソプロフェンナトリウム又はその水和物と、L−グルタミン又はその塩及びグリシンから選ばれる1種以上のアミノ酸とは、同一の顆粒に含まれるように製造してもよいし、別の顆粒に含まれるように製造してもよい。
【実施例】
【0022】
本発明をより詳細に説明するため、以下に実施例を記載するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0023】
(試験例)ロキソプロフェンナトリウム、並びに、L−グルタミン酸又はグリシンの併用による排尿回数変化及び排尿量変化の検討
【0024】
1.被験物質
ロキソプロフェンナトリウム2水和物は第一三共株式会社製のものを、グリシンは株式会社ペプチド研究所製のものを、L−グルタミン酸は和光純薬株式会社製のものをそれぞれ使用した。各被験物質は、必要量を秤量し、0.5%トラガントゴム水溶液に溶解して調製した。
【0025】
2.適格ラットの選抜
SD雄性ラット(7週齢、チャールスリバー社)を代謝ゲージに収容し、消灯約30分前に、媒体(0.5%トラガントゴム水溶液)4.0mL/bodyを経口投与した。ゲージ下にデジタル天秤を設置して、天秤上の容器に累積的に排泄尿のみを蓄尿し、その重量変化をPowerLab(登録商標)(エイディ インスツルメンツ ピーティワイ リミテッド社製)を介してパソコンに記録した。投与から8時間分を解析し、排尿量(重量)、排尿回数及び排尿時刻(投与後時間)を算出した。測定中は、自由飲水、自由摂食とした。算出された個別のラットのデータを基に、被験薬物評価試験への使用の適否を判断し、適格ラットとして選抜した。選抜したラットのそれぞれの個体における媒体投与後4時間までの排尿量(重量)、排尿回数の数値を基に、それぞれ同一の個体(ラット)に後述の被験物質又は媒体を投与したときの投与後4時間までの排尿量(重量)、排尿回数の数値を、下記の式1及び式2を用いてそれぞれの個体(ラット)の排尿回数変化率(%)及び排尿量変化率(%)を求め、その平均で各投与群の変化率(%)として算出した。
【0026】
3.投与群の割付
上記スクリーニングで選抜した適格ラットを上記2のスクリーニングの翌日に、表1の群に割付を行ったうえで代謝ケージに収容し、消灯約30分前に媒体に被験物質を溶解又は懸濁して経口投与した。
【0027】
【表1】
【0028】
ラットを収容した代謝ケージ下にデジタル天秤を設置し、天秤上の容器に累積的に排泄尿のみを蓄尿し、その重量変化を、PowerLab(登録商標)を介してパソコンに記録した。一晩を通じて測定し、投与から4時間後の排尿量(重量)、排尿回数及び排尿時刻(投与後時間)を算出した。測定中は、自由飲水、自由摂食とした。なお、排尿回数変化及び排尿量変化は下記式1又は2にて算出した。
【0029】
【数1】
【0030】
【数2】
【0031】
4.併用試験におけるロキソプロフェンの投与量の選択
ロキソプロフェン単剤の排尿動態に与える影響を確認するとともに、併用試験に供する投与量を選択する目的で試験を実施し、媒体投与群(媒体→媒体)とロキソプロフェン単独投与群(媒体→ロキソプロフェン1mg/kg、3mg/kg、10mg/kg)とのコントロール時の排尿動態に与える影響を測定した結果を表2に示した。
【0032】
【表2】
【0033】
投与4時間後までの累積排尿回数および累積排尿量は、表2に示すようにロキソプロフェン単独投与により用量依存的に減少した。媒体投与群での変化を100%とした場合、累積排尿回数は1mg/kg、3mg/kg、10mg/kg群で約20%〜60%抑制された、同様に累積排尿量は、約30%〜60%減少した。
各投与群内で見ると、累積排尿回数に関しては3mg/kg以上の群で、累積排尿量に関しては1mg/kg以上の群で各々コントロールに対して有意な減少が見られた。一般的に非ステロイド系解熱鎮痛薬の場合、排尿回数の減少にはまず排尿量が減少し、その程度が大きくなるにつれて排尿回数にも影響が波及すると推察されることから、ロキソプロフェンは1mg/kg以上で明らかにその効果が発現していると考えられた。よって、累積排尿量では有意な減少が見られる一方、累積排尿回数では有意な減少が見られなかった1mg/kgを用い、併用時の累積排尿回数を主要評価項目として併用試験を行うこととした。
【0034】
5.併用効果の確認試験1
試験は2回に分けて行った。1回目の試験では媒体投与群、ロキソプロフェン単独投与群(1mg/kg)、ロキソプロフェン(1mg/kg)+L−グルタミン酸併用投与群、ロキソプロフェン+グリシン併用投与群で実施し、2回目の試験では、媒体投与群、L−グルタミン酸単独投与群、グリシン単独投与群で実施した。試験結果を表3及び表4に示した。
【0035】
【表3】
【0036】
【表4】
【0037】
表3及び表4に示したように、ロキソプロフェン単独投与群(1mg/kg)、グリシン単独投与群、及びL−グルタミン酸単独投与群における排尿回数は、媒体投与群(100%)と比較してそれぞれ95.9%、81.5%、及び114.0%であった。このことから、ロキソプロフェンナトリウム2水和物の1mg/kg単独投与、L−グルタミン酸、又はグリシンの各薬剤を単独で投与した場合には、媒体投与群の排尿回数変化と比較して全く変化がなかったか、もしくは極めて小さな排尿回数の減少効果しか示さなかった。
一方、ロキソプロフェン単独では効果を示さない用量である1mg/kgのロキソプロフェンとL−グルタミン酸を併用投与した群(ロキソプロフェン+L−グルタミン酸併用投与群)では、媒体投与群(100%)と比較して66.3%、また、1mg/kgのロキソプロフェンとグリシンを併用投与した群(ロキソプロフェン+グリシン併用投与群)では、媒体投与群(100%)と比較して56.4%と排尿回数が顕著に減少した。特にロキソプロフェンとグリシンを併用した場合では、排尿回数が半数以下に減少した。このことから、ロキソプロフェンナトリウム又はその水和物と、L−グルタミン酸又はグリシンを併用することにより、排尿回数が顕著に減少することがわかった。
また、排尿量においては、表3及び表4に示したように、ロキソプロフェン単独投与群に比較して、ロキソプロフェン+L−グルタミン酸併用投与群及びロキソプロフェン+グリシン併用投与群は、排尿量が明らかに減少した。この排尿量変化は、L−グルタミン酸やグリシンを単独で投与した群と比較し、顕著な減少効果であった。
【0038】
6.併用効果の確認試験2
媒体投与群、ロキソプロフェン(3mg/kg)+グリシン(5mg/kg)併用投与群、ロキソプロフェン(3mg/kg)+グリシン(500mg/kg)併用投与群にて、前記併用効果の確認試験1と同様の方法にて併用効果の確認試験を実施した。
試験結果を表5に示した。
【0039】
【表5】
【0040】
表5に示したとおり、ロキソプロフェン3mg/kgと、グリシン5mg/kg又は500mg/kgとを併用した群において、優れた排尿回数の減少及び排尿量の減少が認められた。これらの効果は、表1のロキソプロフェン3mg/kg単独投与群と比較しても、優れた効果であった。
【0041】
上記の結果から、ロキソプロフェンナトリウム又はその水和物に、L−グルタミン酸又はグリシンを併用投与することにより、下部尿路症状、特に頻尿に対するロキソプロフェンナトリウム又はその水和物の単独投与に優る効果が期待できる一方で、ロキソプロフェンナトリウムを減量した場合でも併用効果を発揮することがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、下部尿路症状を有する患者に対する、有効性と安全性を兼ね備えた予防及び/又は治療用の医薬組成物として利用できる。