(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6027863
(24)【登録日】2016年10月21日
(45)【発行日】2016年11月16日
(54)【発明の名称】グロープラグおよびグロープラグの製造方法
(51)【国際特許分類】
F23Q 7/00 20060101AFI20161107BHJP
【FI】
F23Q7/00 605B
F23Q7/00 605M
【請求項の数】13
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-255887(P2012-255887)
(22)【出願日】2012年11月22日
(65)【公開番号】特開2014-102057(P2014-102057A)
(43)【公開日】2014年6月5日
【審査請求日】2015年8月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】特許業務法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】新野 聡
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 勝照
【審査官】
礒部 賢
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−151455(JP,A)
【文献】
国際公開第2011/052624(WO,A1)
【文献】
特開平11−176563(JP,A)
【文献】
実開昭54−059968(JP,U)
【文献】
特表2008−519234(JP,A)
【文献】
国際公開第2012/042941(WO,A1)
【文献】
特開2008−209102(JP,A)
【文献】
国際公開第2009/057597(WO,A1)
【文献】
特開2010−108606(JP,A)
【文献】
特開2007−051861(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23Q 7/00 − 7/26
H05B 3/02 − 3/18
H05B 3/40 − 3/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線に沿って延び、通電によって発熱するヒータ部と、
前記軸線に沿って延び、直接または他の部材を介して前記ヒータ部の後端側に接続された中軸と
を備えるグロープラグであって、
前記中軸の少なくとも一部における前記軸線に垂直な断面には、凹部が形成されていることを特徴とする、
グロープラグ。
【請求項2】
請求項1に記載のグロープラグであって、
前記中軸の少なくとも一部における前記断面は、線対称であることを特徴とする、
グロープラグ。
【請求項3】
請求項2に記載のグロープラグであって、
前記断面において、前記線対称の対称軸は、1本のみであることを特徴とする、
グロープラグ。
【請求項4】
請求項3に記載のグロープラグであって、
前記中軸の少なくとも一部における前記断面の輪郭線は、直線と曲線とによって構成されており、
前記凹部は、2本の前記直線によって形成されているとともに、前記曲線に対向する位置に形成されていることを特徴とする、
グロープラグ。
【請求項5】
請求項1から請求項3に記載のグロープラグであって、
前記中軸の少なくとも一部における前記断面には、さらに、凸部が形成されており、
前記断面における前記凹部と前記凸部の数は、同じであることを特徴とする、
グロープラグ。
【請求項6】
軸線に沿って延び、通電によって発熱するヒータ部と、
前記軸線に沿って延び、直接または他の部材を介して前記ヒータ部の後端側に接続された中軸と
を備えるグロープラグであって、
前記中軸の少なくとも一部における前記軸線に垂直な断面は、前記軸線に沿った方向に連続的に変化しており、
前記連続的な変化は、相似形ではない形状に変化することであることを特徴とする、
グロープラグ。
【請求項7】
請求項6に記載のグロープラグであって、
前記中軸の少なくとも一部における前記断面は、楕円形であり、
前記連続的な変化は、前記楕円形における長径と短径の長さの比が連続的に変化することであることを特徴とする、
グロープラグ。
【請求項8】
請求項6に記載のグロープラグであって、
前記中軸の少なくとも一部における前記断面は、多角形であり、
前記連続的な変化は、前記多角形における少なくとも2辺の長さの比が連続的に変化することであることを特徴とする、
グロープラグ。
【請求項9】
軸線に沿って延び、通電によって発熱するヒータ部と、
前記軸線に沿って延び、直接または他の部材を介して前記ヒータ部の後端側に接続された中軸と
を備えるグロープラグであって、
前記中軸の少なくとも一部は、捩れた形状であることを特徴とする、
グロープラグ。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれか一項に記載のグロープラグであって、
前記中軸の先端部と後端部の少なくとも一方は、柱状の部材が折り畳まれることによって形成されていることを特徴とする、
グロープラグ。
【請求項11】
請求項1から請求項10のいずれか一項に記載のグロープラグであって、
前記ヒータ部は、セラミックヒータであることを特徴とする、
グロープラグ。
【請求項12】
軸線に沿って延び、通電によって発熱するヒータ部と、前記軸線に沿って延び、直接または他の部材を介して前記ヒータ部の後端側に接続された中軸とを備えるグロープラグの製造方法であって、
(a)柱状の部材を準備する工程と、
(b)前記部材の少なくとも一部に対して凹部を形成することによって前記中軸を作製する工程と
を備えることを特徴とする、
グロープラグの製造方法。
【請求項13】
請求項12に記載のグロープラグの製造方法であって、さらに、
(c)前記部材の先端部と後端部の少なくとも一方を折り畳むことによって、前記中軸を作製する工程を備えることを特徴とする、
グロープラグの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グロープラグおよびグロープラグの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、グロープラグに関する技術としては、例えば、特許文献1に記載されたものが知られている。特許文献1に記載されたグロープラグでは、セラミックヒータと中軸とが環状の部材によって接続されている。そして、セラミックヒータがエンジンからの燃焼圧を受けると、セラミックヒータと中軸に応力が生じる。この応力を緩和するために、特許文献1に記載されたグロープラグでは、中軸の一部に、他の部分よりも径が小さい径小部が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−207988号公報
【特許文献2】特開平11−281059号公報
【特許文献3】特開平6−229551号公報
【特許文献4】特開2007−32877号公報
【特許文献5】特開2008−151455号公報
【特許文献6】特開2007−198618号公報
【特許文献7】特開2008−209102号公報
【特許文献8】特開平11−72229号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載されたグロープラグでは、中軸の断面が円形であるため、応力を緩和するために径小部を長くすると、エンジンの振動によって中軸が共振し、中軸やセラミックヒータが破損してしまうおそれがあるといった課題があった。なお、中軸の共振は、径小部を有する中軸に限らず、径小部を有さない中軸にも共通する課題であった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することが可能である。
【0006】
(1)本発明の一形態によれば、グロープラグが提供される。このグロープラグは、軸線に沿って延び、通電によって発熱するヒータ部と;前記軸線に沿って延び、直接または他の部材を介して前記ヒータ部の後端側に接続された中軸とを備え;前記中軸の少なくとも一部における前記軸線に垂直な断面には、凹部が形成されている。この形態のグロープラグによれば、中軸に凹部が形成されているので、中軸の固有振動数がエンジンの振動数と一致しにくくなる。したがって、中軸がエンジンの振動によって共振するのを抑制することができる。
【0007】
(2)上記形態のグロープラグにおいて、前記中軸の少なくとも一部における前記断面は、線対称であってもよい。この形態のグロープラグによっても、中軸がエンジンの振動によって共振するのを抑制することができる。
【0008】
(3)上記形態のグロープラグの前記断面において、前記線対称の対称軸は、1本のみであってもよい。この形態のグロープラグによっても、中軸がエンジンの振動によって共振するのを抑制することができる。
【0009】
(4)上記形態のグロープラグにおいて、前記中軸の少なくとも一部における前記断面の輪郭線は、直線と曲線とによって構成されており、前記凹部は、2本の前記直線によって形成されているとともに、前記曲線に対向する位置に形成されていてもよい。この形態のグロープラグによっても、中軸がエンジンの振動によって共振するのを抑制することができる。
【0010】
(5)上記形態のグロープラグにおいて、前記中軸の少なくとも一部における前記断面には、さらに、凸部が形成されており;前記断面における前記凹部と前記凸部の数は、同じであってもよい。この形態のグロープラグによっても、中軸がエンジンの振動によって共振するのを抑制することができる。
【0011】
(6)本発明の他の態様によれば、グロープラグが提供される。このグロープラグは、軸線に沿って延び、通電によって発熱するヒータ部と;前記軸線に沿って延び、直接または他の部材を介して前記ヒータ部の後端側に接続された中軸とを備え;前記中軸の少なくとも一部における前記軸線に垂直な断面は、前記軸線に沿った方向に連続的に変化しており;前記連続的な変化は、相似形ではない形状に変化することである。この形態のグロープラグによれば、中軸の固有振動数が、エンジンの振動数と一致しにくくなるので、中軸がエンジンの振動によって共振するのを抑制することができる。
【0012】
(7)上記形態のグロープラグにおいて、前記中軸の少なくとも一部における前記断面は、楕円形であり、前記連続的な変化は、前記楕円形における長径と短径の長さの比が連続的に変化することであってもよい。この形態のグロープラグによっても、中軸がエンジンの振動によって共振するのを抑制することができる。
【0013】
(8)上記形態のグロープラグにおいて、前記中軸の少なくとも一部における前記断面は、多角形であり、前記連続的な変化は、前記多角形における少なくとも2辺の長さの比が連続的に変化することであってもよい。この形態のグロープラグによっても、中軸がエンジンの振動によって共振するのを抑制することができる。
【0014】
(9)本発明の他の態様によれば、グロープラグが提供される。このグロープラグは、軸線に沿って延び、通電によって発熱するヒータ部と;前記軸線に沿って延び、直接または他の部材を介して前記ヒータ部の後端側に接続された中軸とを備え;前記中軸の少なくとも一部は、捩れた形状である。この形態のグロープラグによれば、中軸の固有振動数が、エンジンの振動数と一致しにくくなるので、中軸がエンジンの振動によって共振するのを抑制することができる。
【0015】
(10)上記形態のグロープラグにおいて;前記中軸の先端部と後端部の少なくとも一方は、柱状の部材が折り畳まれることによって形成されていてもよい。この形態のグロープラグによれば、中軸の先端部と後端部との間は、先端部および後端部よりも細い径小部となる。この中軸の径小部は、中軸の先端部および後端部よりも剛性が低く曲がりやすい。したがって、この形態のグロープラグによれば、中軸の径小部によって、中軸およびヒータ部に生じた応力を緩和することができる。また、この形態のグロープラグによれば、径小部を形成するための切削加工を省略することができる。この結果、切削によって削られる部分の材料の無駄を低減することができる。さらに、切削加工によって中軸が要求寸法を満たさなくなることを抑制することができる。
【0016】
(11)上記形態のグロープラグにおいて;前記ヒータ部は、セラミックヒータであってもよい。
【0017】
(12)本発明の他の態様によれば、グロープラグの製造方法が提供される。このグロープラグの製造方法は、軸線に沿って延び、通電によって発熱するヒータ部と、前記軸線に沿って延び、直接または他の部材を介して前記ヒータ部の後端側に接続された中軸とを備えるグロープラグの製造方法であって;(a)柱状の部材を準備する工程と;(b)前記部材の少なくとも一部に対して凹部を形成することによって前記中軸を作製する工程とを備える。この形態のグロープラグの製造方法によれば、中軸の固有振動数が、エンジンの振動数と一致しにくいグロープラグを容易に製造することができる。
【0018】
(13)上記形態のグロープラグの製造方法は、さらに;(c)前記部材の先端部と後端部の少なくとも一方を折り畳むことによって、前記中軸を作製する工程を備えてもよい。この形態のグロープラグの製造方法によれば、中軸およびヒータ部に生じた応力を緩和することのできる径小部を中軸に形成することができる。また、この形態のグロープラグの製造方法によれば、径小部を形成するための切削加工を省略することができる。この結果、切削によって削られる部分の材料の無駄を低減することができる。さらに、切削加工によって中軸が要求寸法を満たさなくなることを抑制することができる。
【0019】
本発明は、グロープラグ以外の種々の形態で実現することも可能である。例えば、グロープラグの製造方法やグロープラグの設計方法等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施形態としてのグロープラグの断面の構成を示す説明図である。
【
図3】第1実施形態の変形例における中軸の断面の複数の例を示す説明図である。
【
図4】第1実施形態の変形例における中軸の断面の複数の例を示す説明図である。
【
図5】第2実施形態としての中軸の断面の複数の例を示す説明図である。
【
図6】第3実施形態における中軸の一部を示す説明図である。
【
図7】第4実施形態における中軸の一部を示す説明図である。
【
図8】第5実施形態における中軸の一部を示す説明図である。
【
図9】第5実施形態の変形例における中軸の一部を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明の実施の形態を実施形態に基づいて以下の順序で説明する。
A.第1実施形態:
B.第2実施形態:
C.第3実施形態:
D.第4実施形態:
E.第5実施形態:
F.変形例:
【0022】
A.第1実施形態:
図1は、本発明の一実施形態としてのグロープラグ100の断面の構成を示す説明図である。以下では、
図1におけるグロープラグ100の下方をグロープラグ100の先端側とし、上方を後端側として説明する。
【0023】
グロープラグ100は、自動車用のディーゼルエンジン等の内燃機関において、燃焼の補助を行なう発熱体としての機能を有している。グロープラグ100は、主な構成要素として、主体金具10と、外筒20と、セラミックヒータ30と、中軸40と、連結筒50と、封止部材60と、絶縁部材70と、接続端子80とを備えている。
【0024】
主体金具10は、軸線Oに沿って延びる略円筒状の部材であり、本実施形態では、炭素鋼によって形成されている。主体金具10の後端側の外周面には、グロープラグ100を内燃機関のシリンダヘッドに固定するためのネジ溝部11が形成されており、このネジ溝部11がシリンダヘッド(図示せず)のプラグ取り付け孔に螺合することによって、グロープラグ100が内燃機関に固定される。主体金具10の先端には、外筒20が設けられている。
【0025】
外筒20は、軸線Oに沿って延びる略円筒状の金属部材であり、内部の軸孔21内にセラミックヒータ30を保持する。外筒20には、テーパ状のテーパ部23が設けられており、このテーパ部23がプラグ取り付け孔に設けられたシート面(図示せず)に接する。これにより、エンジンの燃焼室の気密が確保される。
【0026】
セラミックヒータ30は、軸線Oに沿って延びる略円柱状の部材であり、基体31と、抵抗発熱体32とを備えている。セラミックヒータ30の先端は、外筒20の外部に露出しており、セラミックヒータ30の後端は、主体金具10の軸孔12内に収容されている。セラミックヒータ30は、電力が供給されることによって発熱するヒータ部として機能する。
【0027】
基体31は、軸線Oに沿って延びる柱状の部材であり、絶縁性のセラミックによって形成されている。本実施形態では、基体31は、窒化珪素によって形成されている。ただし、基体31は、窒化珪素に限らず、例えば、アルミナやサイアロン等の他の絶縁性のセラミックによって形成されていてもよい。
【0028】
抵抗発熱体32は、基体31の内部に埋設されたU字状の部材であり、通電によって抵抗発熱する導電性のセラミックによって形成されている。本実施形態では、抵抗発熱体32は、タングステンカーバイドによって形成されている。ただし、抵抗発熱体32は、タングステンカーバイドに限らず、例えば、二珪化モリブデンや二珪化タングステン等の他の導電性のセラミックによって形成されていてもよい。抵抗発熱体32の後端側には、電極取出部32a、32bが形成されている。
【0029】
電極取出部32aは、セラミックヒータ30の外表面に露出すると共に、連結筒50に電気的に接続され、抵抗発熱体32の正電位側端子として機能する。
【0030】
電極取出部32bは、電極取出部32aよりも先端側に形成されており、外筒20と電気的に接続され、抵抗発熱体32の接地側端子として機能する。本実施形態では、電極取出部32a、32bは、抵抗発熱体32と同じ材料で形成されており、抵抗発熱体32と一体となって形成されている。ただし、電極取出部32a、32bは、抵抗発熱体32と別体であってもよい。
【0031】
中軸40は、軸線Oに沿って延びる金属製の棒状の部材であり、主体金具10の軸孔12内のうち、セラミックヒータ30の後端側に配置されている。セラミックヒータ30と中軸40とは、金属製の連結筒50によって接続されている。中軸40の詳細については、後述する。
【0032】
連結筒50は、導電性を有する筒状の部材であり、圧入によって中軸40およびセラミックヒータ30の外側から嵌められている。連結筒50は、内周側において電極取出部32aと電気的に接続されている。すなわち、連結筒50は、中軸40と抵抗発熱体32とを電気的に接続している。
【0033】
封止部材60は、主体金具10の軸孔12の内周面と中軸40の後端部における外周面との間に配置された円筒状の部材であり、絶縁性および弾性を有する材料によって形成されている。本実施形態では、封止部材60は、フッ素ゴムによって形成されている。ただし、封止部材60は、シリコーンゴムなどの一般的な封止材によって形成されていてもよい。封止部材60は、主体金具10の軸孔12内において中軸40の後端部を支持することによって、中軸40の揺れを抑制するとともに、主体金具10と中軸40との間の気密を確保する。
【0034】
絶縁部材70は、封止部材60よりも後端側に配置された円筒状の部材であり、耐熱性および絶縁性を有する材料によって形成されている。本実施形態では、絶縁部材70は、ナイロン(登録商標)によって形成されている。ただし、絶縁部材70は、PPS樹脂(ポリフェニレンサルファイド樹脂)等の他の絶縁材料によって形成されていてもよい。絶縁部材70は、主体金具10と、中軸40及び接続端子80とを離間することによって、これらの部材の短絡を抑制する。
【0035】
接続端子80は、中軸40の後端部に加締めによって固定された金属製の部材である。
【0036】
以上の構成により、接続端子80から電力が供給されると、中軸40、連結筒50および電極取出部32aを通じて抵抗発熱体32に電力が供給され、セラミックヒータ30が発熱する。そして、抵抗発熱体32の電極取出部32bは、外筒20、主体金具10(テーパ部23)、エンジン(シート面)を通じて接地されている。
【0037】
図2は、中軸40の詳細を示す説明図である。
図2(A)には、中軸40の正面図が示されており、
図2(B)には、中軸40の側面図が示されている。また、
図2(C)には、軸線Oに垂直な平面によって中軸40を切断した場合における断面が示されている。
【0038】
図2(C)に示すように、中軸40の少なくとも一部には、凹部45が形成されている。中軸40に凹部45が形成されていると、中軸40の固有振動数がエンジンの振動数と一致しにくくなる。したがって、本実施形態によれば、中軸40がエンジンの振動によって共振するのを抑制することができる。なお、中軸40の凹部45は、例えば、柱状の部材の少なくとも一部に対してプレス加工を施すことによって形成される。
【0039】
本実施形態では、中軸の少なくとも一部における断面は、線対称である。そして、断面における線対称の対称軸は、1本のみである。さらに、中軸の少なくとも一部における断面の輪郭線は、直線と曲線とによって構成されており、凹部45は、2本の直線によって形成されているとともに、曲線Cに対向する位置に形成されている。このような断面形状は、加工性が優れている上に、中軸40の共振を効果的に抑制することができる。
【0040】
さらに、中軸40の先端部41と後端部42は、柱状の部材が折り畳まれることによって形成されている。このため、中軸40の先端部41と後端部42との間は、先端部41および後端部42よりも細い径小部44となる。この中軸40の径小部44は、中軸40の先端部41および後端部42よりも剛性が低く曲がりやすい。したがって、本実施形態によれば、中軸40の径小部44によって、中軸40およびセラミックヒータ30に生じた応力を緩和することができる。
【0041】
また、本実施形態のように、柱状の部材の先端部および後端部を折り畳むことによって、中軸40を作製すれば、径小部44を形成するための切削加工を省略することができる。この結果、切削によって削られる部分の材料の無駄を低減することができる。さらに、切削加工によって中軸40が要求寸法を満たさなくなることを抑制することができる。
【0042】
また、本実施形態では、柱状の部材の先端部および後端部を折り畳んだ後に、プレス加工を施すことによって、中軸40の先端部41及び後端部42の断面が円形となっている。このようにすることによって、連結筒50や接続端子80の中軸40への固定が容易となる。なお、断面が半月状の柱状の部材を折り畳むことによって、断面が円形の先端部41及び後端部42を形成してもよい。
【0043】
このように、本実施形態では、中軸40に凹部45が形成されているので、中軸40の固有振動数がエンジンの振動数と一致しにくくなる。したがって、中軸40がエンジンの振動によって共振するのを抑制することができる。また、本実施形態では、共振を抑制することができるので、径小部44を長くすることができ、中軸40を軽量化することが可能となる。なお、セラミックヒータ30は、本発明の「ヒータ部」に相当する。
【0044】
図3及び
図4は、第1実施形態の変形例における中軸40の断面の複数の例を示す説明図である。この
図3に示すように、中軸40の凹部45は、任意の形状であってもよい。例えば、凹部45の形状は、三角形や四角形等の多角形であってもよく、円弧形状であってもよく、また、U字形状であってもよい。また、中軸40には、複数の凹部45が形成されていてもよい。これらの凹部45は、柱状の部材に対してプレス加工や曲げ加工等を施すことによって形成される。また、
図4に示すように、中軸40の断面における線対称の対称軸は、2本以上であってもよい。また、中軸40の断面の輪郭線は、直線のみや曲線のみによって形成されていてもよい。また、中軸40の断面は、線対称でなくてもよい。
【0045】
B.第2実施形態:
図5は、第2実施形態としての中軸40bの断面の複数の例を示す説明図である。
図1から
図4に示した第1実施形態との違いは、中軸40bの断面において、さらに、凸部46が形成されている点と、凹部45と凸部46の数が同じであるという点だけであり、他の構成は第1実施形態と同じである。中軸40bの断面がこのような形状であっても、中軸40bの固有振動数がエンジンの振動数と一致しにくくなるので、中軸40bがエンジンの振動によって共振するのを抑制することができる。なお、これらの凹部45や凸部46は、柱状の部材に対してプレス加工や曲げ加工等を施すことによって形成される。
【0046】
C.第3実施形態:
図6は、第3実施形態における中軸40cの一部を示す説明図である。
図6(A)は、中軸40cの側面を示しており、
図6(B)は、中軸40cの軸線Oに垂直な断面を示している。
図1から
図4に示した第1実施形態との違いは、中軸40に凹部45が形成されていない代わりに、中軸40cの断面が軸線Oに沿った方向に連続的に変化しているという点だけであり、他の構成は第1実施形態と同じである。
【0047】
具体的には、中軸40cの断面は、軸線Oに沿った方向に相似形ではない形状に変化している。本実施形態では、中軸40cの断面は、楕円形における長径と短径の長さの比が連続的に変化することによって、円形から楕円形に変化している。中軸40cがこのような形状であっても、中軸40cの固有振動数がエンジンの振動数と一致しにくくなるので、中軸40cがエンジンの振動によって共振するのを抑制することができる。なお、中軸40cのこのような形状は、絞り加工や鍛造等によって形成される。
【0048】
D.第4実施形態:
図7は、第4実施形態における中軸40dの一部を示す説明図である。
図7(A)は、中軸40dの側面を示しており、
図7(B)は、中軸40dの軸線Oに垂直な断面を示している。
図6に示した第3実施形態との違いは、楕円形における長径と短径の長さの比が連続的に変化することに代えて、四角形における少なくとも2辺の長さの比が連続的に変化しているという点だけであり、他の構成は第3実施形態と同じである。中軸40dがこのような形状であっても、中軸40dの固有振動数がエンジンの振動数と一致しにくくなるので、中軸40cがエンジンの振動によって共振するのを抑制することができる。
【0049】
E.第5実施形態:
図8は、第5実施形態における中軸40eの一部を示す説明図である。
図1から
図4に示した第1実施形態との違いは、中軸40eに凹部45が形成されていない代わりに、中軸40eの少なくとも一部が90度だけ捩れた形状であるという点だけであり、他の構成は第1実施形態と同じである。中軸40eがこのような形状であっても、中軸40eの固有振動数がエンジンの振動数と一致しにくくなるので、中軸40eがエンジンの振動によって共振するのを抑制することができる。
【0050】
図9は、第5実施形態の変形例における中軸40e1の一部を示す説明図である。この
図9に示すように、中軸40e1の一部は、連続して捩れた形状であってもよい。中軸40e1がこのような形状であっても、中軸40e1の固有振動数がエンジンの振動数と一致しにくくなるので、中軸40e1がエンジンの振動によって共振するのを抑制することができる。
【0051】
F.変形例:
なお、この発明は上記の実施形態や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0052】
F1.変形例1:
上記実施形態では、セラミックヒータ30と中軸40は、連結筒50によって接続されている。これに対して、変形例では、セラミックヒータ30と中軸40とが連結筒50を介さずに直接接続されていてもよい。
【0053】
F2.変形例2:
上記実施形態では、ヒータ部として、セラミックヒータ30が中軸40に接続されている。これに対して、変形例では、ヒータ部として、金属製のシース管内に発熱コイルが配置されたメタルヒータが、中軸40に接続されていてもよい。
【0054】
F3.変形例3:
上記実施形態では、中軸40の先端部41と後端部42の両方が、柱状の部材が折り畳まれることによって形成されている。これに対して、変形例では、中軸40の先端部41または後端部42の一方のみが、柱状の部材が折り畳まれることによって形成されていてもよい。
【0055】
F4.変形例4:
上記実施形態では、中軸40dの断面において、四角形における辺の長さの比が連続的に変化している。これに対して、変形例では、三角形や五角形等における少なくとも2辺の長さの比が連続的に変化していてもよい。すなわち、中軸の断面において、多角形における少なくとも2辺の長さの比が連続的に変化していればよい。
【0056】
F5.変形例5:
上記第5実施形態では、中軸40eの少なくとも一部が90度だけ捩れた形状である。これに対して、変形例では、中軸40の少なくとも一部が45度だけ捩れた形状であってもよい。すなわち、中軸40の少なくとも一部は、捩れた形状であればよい。また、変形例では、中軸40は、複数の棒状の部材が束ねられた状態で捩れた形状であってもよく、螺旋状に捩れた形状であってもよい。
【0057】
本発明は、上述の実施形態や実施例、変形例に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態、実施例、変形例中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【符号の説明】
【0058】
10…主体金具
11…ネジ溝部
12…軸孔
20…外筒
21…軸孔
23…テーパ部
30…セラミックヒータ
31…基体
32…抵抗発熱体
32a…電極取出部
32b…電極取出部
40…中軸
40b…中軸
40c…中軸
40d…中軸
40e…中軸
40e1…中軸
41…先端部
42…後端部
44…径小部
45…凹部
46…凸部
50…連結筒
60…封止部材
70…絶縁部材
80…接続端子
100…グロープラグ