特許第6027904号(P6027904)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6027904
(24)【登録日】2016年10月21日
(45)【発行日】2016年11月16日
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/475 20060101AFI20161107BHJP
   A61F 13/533 20060101ALI20161107BHJP
【FI】
   A61F13/475 130
   A61F13/533 100
【請求項の数】8
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-16659(P2013-16659)
(22)【出願日】2013年1月31日
(65)【公開番号】特開2014-147446(P2014-147446A)
(43)【公開日】2014年8月21日
【審査請求日】2016年1月21日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104927
【弁理士】
【氏名又は名称】和泉 久志
(72)【発明者】
【氏名】葭葉 恵
【審査官】 笹木 俊男
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−215388(JP,A)
【文献】 米国特許第06013066(US,A)
【文献】 特開2004−008596(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/15 〜 13/84
A61L 15/16 〜 15/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透液性表面シートと裏面シートとの間に吸収体が介在されるとともに、前記吸収体の両側部にそれぞれ略長手方向に沿ってエンボスが付与された吸収性物品において、
前記エンボスは、直線部と、この直線部の端部を基点として吸収性物品の幅方向外側に突出する円弧状部とを交互に複数配置したパターンで形成されるとともに、前記円弧状部の吸収性物品長手方向寸法が、前記直線部の吸収性物品長手方向寸法より長く形成されていることを特徴とする吸収性物品。
【請求項2】
前記吸収体の両側部にそれぞれ複数の前記エンボスが形成され、
幅方向外側に位置するエンボスの方が幅方向内側に位置するエンボスより、隣接するエンボス同士の間隔を狭く設定する構成及び/又はエンボスの溝幅を大きく設定する構成を有している請求項1記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記エンボスは、前記円弧状部の溝幅が前記直線部の溝幅よりも大きく設定されている請求項1、2いずれかに記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記吸収体の両側部にそれぞれ複数の前記エンボスが形成され、
隣接するエンボス同士が間隔をあけて互いに交差しない条件の下で、幅方向内側に位置するエンボスの前記円弧状部の一部を、幅方向外側に位置するエンボスの前記円弧状部の内側に入り込ませるように配置している請求項1〜いずれかに記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記吸収体の両側部にそれぞれ複数の前記エンボスが形成され、
隣接するエンボスの前記円弧状部が吸収性物品の幅方向に対し位置ずれするように位相をずらして配置されている請求項1〜いずれかに記載の吸収性物品。
【請求項6】
装着時に股間部に対応する区間では、その前後区間より、前記円弧状部の溝幅を大きく設定する構成、前記円弧状部の吸収性物品長手方向寸法を長く設定する構成、前記直線部の吸収性物品長手方向寸法を短く設定する構成、前記円弧状部の曲率半径を小さく設定する構成、前記円弧状部の前記直線部を基点とした吸収性物品幅方向外側への突出量を大きく設定する構成、のいずれか又は任意の組合せの構成を有している請求項1〜5いずれかに記載の吸収性物品。
【請求項7】
前記直線部の端部同士を直線エンボスで接続した連結部が形成されることにより、前記直線部及び連結部が連続する1本の線上に設けられている請求項1〜6いずれかに記載の吸収性物品。
【請求項8】
前記エンボスは、溝方向に沿って連続的又は間欠的に形成されている請求項1〜7いずれかに記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主には生理用ナプキン、おりものシート、失禁パッド、医療用パッド、トイレタリー等に使用される吸収性物品に係り、特に吸収体が比較的薄い場合であっても、吸収体がヨレにくく、横漏れを生じにくくした吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、前記吸収性物品として、ポリエチレンシートまたはポリエチレンシートラミネート不織布などの不透液性裏面シートと、不織布または透液性プラスチックシートなどの透液性表面シートとの間に粉砕パルプ等の紙綿(高吸水性樹脂混入)からなる吸収体を介在したものが知られている。
【0003】
近年は、比較的嵩のある吸収性物品の場合には、持ち運びに不便である、または収納性が悪いなどの問題があるとともに、物流の効率化や省資源化などの要請から、体液排出部位における吸収体の厚みが8mm以下、好ましくは5mm以下の薄型吸収性物品が好まれる傾向にある。
【0004】
ところが、吸収体の薄型化に際しては、脚圧などによって吸収体にヨレが発生し、横漏れが生じやすくなるという問題があることが従来より知られている。このようなヨレなどを防止するための技術として、下記特許文献1には、吸収性本体の少なくとも排泄部対向部において、吸収体の一対の側部は、一対の側部の間に位置する幅方向中央部よりも圧縮されることにより、一対の高圧縮領域を形成しており、前記高圧縮領域は、吸収体の幅方向外端部まで形成されており、且つ吸収体の長手方向前後端部までは形成されていない吸収性物品が開示されている。
【0005】
また、下記特許文献2には、排泄部領域における表面シート及び吸収体の両側部に、平面視して幅方向外方に凸状に湾曲する一対の内側溝が形成されており、一対の内側溝それぞれの幅方向外側における表面シート及び吸収体に、平面視して幅方向外方に凸状に湾曲する一対の外側溝が形成された吸収性物品が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−125485号公報
【特許文献2】特開2010−136972号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1記載の吸収性物品では、吸収体の体液排出部の両側部のみに圧縮された高圧縮領域が形成され、この高圧縮領域が前後端部までは形成されていないため、吸収した体液を前後に拡散させる効果が少なく、体液排出部近傍に体液が溜まりやすく横漏れが生じる危険性が高かった。また、吸収体が圧縮されない前後部では、吸収体がヨレやすく、このヨレによって肌との密着性が低下するため漏れが生じやすかった。
【0008】
また、上記特許文献2記載の吸収性物品では、一対の内側溝と外側溝を形成することにより吸収体を圧密化し、ヨレを発生しにくくしているが、前記内側溝及び外側溝が単に幅方向外方に凸状に湾曲する形状であるため、幅方向外側からの脚圧に対して十分な抵抗性が得られにくく、吸収体のヨレが生じるおそれがあった。
【0009】
そこで本発明の主たる課題は、吸収体をヨレにくくするとともに、横漏れしにくい吸収性物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために請求項1に係る本発明として、透液性表面シートと裏面シートとの間に吸収体が介在されるとともに、前記吸収体の両側部にそれぞれ略長手方向に沿ってエンボスが付与された吸収性物品において、
前記エンボスは、直線部と、この直線部の端部を基点として吸収性物品の幅方向外側に突出する円弧状部とを交互に複数配置したパターンで形成されるとともに、前記円弧状部の吸収性物品長手方向寸法が、前記直線部の吸収性物品長手方向寸法より長く形成されていることを特徴とする吸収性物品が提供される。
【0011】
上記請求項1記載の発明では、吸収体の両側部にそれぞれ略長手方向に沿って付与されるエンボスとして、直線部と、この直線部の端部を基点として吸収性物品の幅方向外側に突出する円弧状部とを交互に複数配置したパターンで形成してあるため、吸収体の両側部の剛性が高められ、脚圧に対する抵抗性が向上する結果、吸収体がヨレにくく、且つヨレによる漏れが防止できるようになっている。特に、前記エンボスは、直線部を基点として幅方向外側に突出する円弧状部を複数備えるため、幅方向外側からの脚圧が前記円弧状部において分散吸収され、この円弧状部においてしっかりと受け止められ、吸収体のヨレが確実に防止できるようになっている。
【0012】
また、前記円弧状部の間に直線部が設けられているため、幅方向中心側から外側に向けて拡散する体液が前記直線部に達すると、前記直線部に沿った方向の流れ、すなわち吸収性物品の略長手方向に沿った方向の流れに変換されるので、幅方向外側への拡散が低減され、横漏れが確実に防止できるようになる。
【0013】
また、上記請求項記載の発明では、前記エンボスの各部の吸収性物品長手方向寸法について規定し、前記円弧状部の長さを直線部の長さより長くすることによって、脚圧に対する抵抗性を高め、吸収体のヨレを防止している。
【0014】
請求項に係る本発明として、前記吸収体の両側部にそれぞれ複数の前記エンボスが形成され、
幅方向外側に位置するエンボスの方が幅方向内側に位置するエンボスより、隣接するエンボス同士の間隔を狭く設定する構成及び/又はエンボスの溝幅を大きく設定する構成を有している請求項1記載の吸収性物品が提供される。
【0015】
上記請求項記載の発明では、前記吸収体の両側部にそれぞれ複数のエンボスを形成した場合において、幅方向外側に位置するエンボスの方が幅方向内側に位置するエンボスより、隣接するエンボス同士の間隔を狭く設定する構成及び/又はエンボスの溝幅を大きく設定する構成を有することによって、幅方向外側の方が幅方向内側より吸収体の剛性が高くなり、吸収体のヨレが防止できるとともに、体液の拡散方向を前記直線部に沿う方向に変換しやすくなる。
【0016】
請求項に係る本発明として、前記エンボスは、前記円弧状部の溝幅が前記直線部の溝幅よりも大きく設定されている請求項1、2いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0017】
上記請求項記載の発明では、主に幅方向外側からの脚圧に対して抵抗する役割を担う前記円弧状部について、円弧状部の溝幅を直線部の溝幅よりも大きく設定することによって、脚圧に対する抵抗性をより一層高め、吸収体のヨレを防止している。
【0018】
請求項に係る本発明として、前記吸収体の両側部にそれぞれ複数の前記エンボスが形成され、
隣接するエンボス同士が間隔をあけて互いに交差しない条件の下で、幅方向内側に位置するエンボスの前記円弧状部の一部を、幅方向外側に位置するエンボスの前記円弧状部の内側に入り込ませるように配置している請求項1〜いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0019】
上記請求項記載の発明では、前記吸収体の両側部にそれぞれ複数の前記エンボスを形成した場合において、幅方向内側に位置するエンボスの前記円弧状部の一部を、幅方向外側に位置する前記円弧状部の内側に入り込ませるように配置し、前記エンボスをいわば多重線状に設けることによって、円弧状部の剛性を更に高め、脚圧に対する抵抗性を増し、吸収体のヨレをより一層防止している。
【0020】
請求項に係る本発明として、前記吸収体の両側部にそれぞれ複数の前記エンボスが形成され、
隣接するエンボスの前記円弧状部が吸収性物品の幅方向に対し位置ずれするように位相をずらして配置されている請求項1〜いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0021】
上記請求項記載の発明では、隣接するエンボスの前記円弧状部が吸収性物品の幅方向に対し位置ずれするように位相をずらして配置することによって、円弧状部の吸収性物品長手方向の配置範囲がより広い範囲に亘って存在するようになるため、確実に脚圧に抵抗できるようになる。
【0022】
請求項6に係る本発明として、装着時に股間部に対応する区間では、その前後区間より、前記円弧状部の溝幅を大きく設定する構成、前記円弧状部の吸収性物品長手方向寸法を長く設定する構成、前記直線部の吸収性物品長手方向寸法を短く設定する構成、前記円弧状部の曲率半径を小さく設定する構成、前記円弧状部の前記直線部を基点とした吸収性物品幅方向外側への突出量を大きく設定する構成、のいずれか又は任意の組合せの構成を有している請求項1〜5いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0023】
上記請求項6記載の発明では、装着時に股間部に対応する区間は脚圧が特に大きく作用する部分であるため、この脚圧に対する抵抗力を大きくしてヨレを防止する手段として、吸収体の剛性を高めるための構成を幾つか規定している。
【0024】
請求項7に係る本発明として、前記直線部の端部同士を直線エンボスで接続した連結部が形成されることにより、前記直線部及び連結部が連続する1本の線上に設けられている請求項1〜6いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0025】
上記請求項7記載の発明では、前記直線部の端部同士を直線エンボスで接続した連結部を形成することにより、前記直線部及び連結部が連続する1本の線上に設けられるようになるため、体液が長手方向に拡散しやすくなる。
【0026】
請求項8に係る本発明として、前記エンボスは、溝方向に沿って連続的又は間欠的に形成されている請求項1〜7いずれかに記載の吸収性物品が提供される。本発明では、前記エンボスは、溝方向に沿って連続的に形成したものだけでなく、間欠的に形成することも可能である旨を規定している。
【発明の効果】
【0027】
以上詳説のとおり本発明によれば、吸収体がヨレにくく、横漏れが発生しにくい吸収性物品が提供できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明に係る生理用ナプキン1の一部破断展開図である。
図2】そのII−II線矢視図である。
図3】吸収体4の平面図である。
図4】(A)は本生理用ナプキン1、(B)は比較例に係る、脚圧と体液の流れの方向を示す模式図である。
図5】エンボス10の拡大図(その1)である。
図6】エンボス10の拡大図(その2)である。
図7】エンボス10の拡大図(その3)である。
図8】エンボス10の拡大図(その4)である。
図9】エンボス10の拡大図(その5)である。
図10】他の形態に係る吸収体4の平面図である。
図11】エンボス10の拡大図(その6)である。
図12】エンボス10の拡大図(その7)である。
図13】(A)、(B)は、エンボス10の拡大図(その8)である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
【0030】
〔生理用ナプキン1の基本構成〕
本発明に係る生理用ナプキン1は、図1に示されるように、ポリエチレンシート、ポリプロピレンシートなどからなる不透液性裏面シート2と、経血やおりものなどを速やかに透過させる透液性表面シート3と、これら両シート2,3間に介在された綿状パルプまたは合成パルプなどからなる吸収体4と、この吸収体4の形状保持および拡散性向上のために前記吸収体4を囲繞するクレープ紙5と、表面両側部にそれぞれ長手方向に沿って配設されたサイド不織布7,7とから構成されている。前記吸収体4の周囲において、そのナプキン長手方向の前後端縁部では、前記不透液性裏面シート2と透液性表面シート3との外縁部がホットメルトなどの接着剤やヒートシール等の接着手段によって接合され、またその両側縁部では吸収体4の端縁よりも側方に延出している前記不透液性裏面シート2と前記サイド不織布7とがホットメルトなどの接着剤やヒートシール等の接着手段によって接合され、外周に吸収体4の存在しない外周フラップ部Fが形成されている。
【0031】
以下、さらに前記生理用ナプキン1の構造について詳述すると、
前記不透液性裏面シート2は、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂シートなどの少なくとも遮水性を有するシート材が用いられるが、この他にポリエチレンシート等に不織布を積層したラミネート不織布や、さらには防水フィルムを介在して実質的に不透液性を確保した上で不織布シート(この場合には防水フィルムと不織布とで不透液性裏面シートを構成する。)などを用いることができる。近年はムレ防止の観点から透湿性を有するものが用いられる傾向にある。この遮水・透湿性シート材は、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に無機充填剤を溶融混練してシートを成形した後、一軸または二軸方向に延伸することにより得られる微多孔性シートである。
【0032】
次いで、前記透液性表面シート3は、有孔または無孔の不織布や多孔性プラスチックシートなどが好適に用いられる。不織布を構成する素材繊維としては、たとえばポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維とすることができ、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等の適宜の加工法によって得られた不織布を用いることができる。これらの加工法の内、スパンレース法は柔軟性、スパンボンド法はドレープ性に富む点で優れ、サーマルボンド法及びエアスルー法は嵩高でソフトである点で優れている。
【0033】
前記不透液性裏面シート2と透液性表面シート3との間に介在される吸収体4は、たとえばフラッフ状パルプと高吸水性ポリマーとにより構成されている。前記高吸水性ポリマーとしては、高吸水ポリマー粒状粉(SAP)や高吸水ポリマー繊維(SAF)を用いることができる。前記パルプとしては、木材から得られる化学パルプ、溶解パルプ等のセルロース繊維や、レーヨン、アセテート等の人工セルロース繊維からなるものが挙げられ、広葉樹パルプよりは繊維長の長い針葉樹パルプの方が機能および価格の面で好適に使用される。吸収体4の製造方法は、パルプに熱融着性の繊維及び高吸水性ポリマーを混合し、薄型化が可能なように、エアレイド法でウェブを形成した後、加熱接着させることが好ましい。
【0034】
本生理用ナプキン1は、薄型のスリムナプキンとして用いる場合に特に効果的であり、このときの吸収体厚としては、0.5mm〜10mmとするのが好ましい。吸収体厚が0.5mmより小さいと、後段で詳述するエンボス10を付与したときの効果が得られにくく、吸収体のヨレや横漏れが生じやすくなる。一方10mmより大きいとエンボス10を付与しなくても、そもそも吸収体自体に十分な剛性を有し、吸収体両側部でのヨレやこれに伴う漏れなどの問題が起こりにくい。
【0035】
本例のように、吸収体4を囲繞するクレープ紙5を設ける場合には、結果的に透液性表面シート3と吸収体4との間にクレープ紙5が介在することになり、吸収性に優れる前記クレープ紙5によって体液を速やかに拡散させるとともに、これら経血等の逆戻りを防止するようになる。吸収体4としてエアレイド吸収体を使用した場合、吸収体自体の吸収性能が優れるため、クレープ紙5を使用していなくてもよい。また、前記クレープ紙5は、不織布や低目付のエアレイド不織布を使用してもよい。また、吸収体4を囲繞せずに、吸収体4と透液性表面シート3との間のみに介在させたり、吸収体4と透液性表面シート3との間及び吸収体4と不透液性裏面シート2との間にそれぞれ介在させたりすることができる。
【0036】
一方、本生理用ナプキン1の表面がわ両側部にはそれぞれ、長手方向に沿ってかつナプキン1のほぼ全長に亘ってサイド不織布7,7が設けられ、このサイド不織布7,7の一部が側方に延在されるとともに、同じく側方に延在された不透液性裏面シート2の一部とによってウイング状フラップW、Wが形成されている。
【0037】
前記サイド不織布7としては、重要視する機能の点から撥水処理不織布または親水処理不織布を使用することができる。たとえば、体液が浸透するのを防止する、あるいは肌触り感を高めるなどの機能を重視するならば、シリコン系、パラフィン系、アルキルクロミッククロリド系撥水剤などをコーティングした撥水処理不織布を用いることが望ましい。また、前記ウイング状フラップW、Wにおける体液の吸収性を重視するならば、合成繊維の製造過程で親水基を持つ化合物、例えばポリエチレングリコールの酸化生成物などを共存させて重合させる方法や、塩化第2スズのような金属塩で処理し、表面を部分溶解し多孔性とし金属の水酸化物を沈着させる方法等により合成繊維を膨潤または多孔性とし、毛細管現象を応用して親水性を与えた親水処理不織布を用いるようにすることが望ましい。
【0038】
上記生理用ナプキン1においては、図3に示されるように、前記透液性表面シート3を積層する前に吸収体4の両側部にそれぞれ略長手方向に沿って付与したエンボス10、10…を有するようにし、吸収体4の剛性を高めて脚圧に対する抵抗力を向上させ、吸収体4をヨレにくくするとともに、吸収した体液を前記エンボス10、10…の溝方向に沿って迅速かつ効果的に拡散させるようにしている。以下、前記エンボス10について説明する。
【0039】
〔エンボス10〕
前記エンボス10は、図3に示されるように、吸収体4の長手方向の前端から後端に亘ってナプキン長手方向にほぼ沿う直線上に間隔をあけて複数配置された直線部11、11…と、この直線部11、11の間であって、前記直線部11の端部を基点としてナプキン幅方向外側に突出する円弧状部12とからなり、前記直線部11と円弧状部12が交互に複数配置されたパターンで形成されている。前記エンボス10は、吸収体4の幅方向両側部にそれぞれ左右対称で1対又は2対以上の複数に亘って配置され、図示例では左右にそれぞれ3本ずつナプキン幅方向にほぼ等間隔で配置されている。
【0040】
前記エンボス10を形成することによって、吸収体4の両側部が圧密化され剛性が高くなるため、装着時に幅方向外側から脚圧がかかってもヨレにくく、このヨレによる横漏れが防止できるとともに、体液の幅方向外側への拡散が抑えられ横漏れが防止できるようになる。
【0041】
ここで、吸収体4の剛性を高めるためには、図4(B)に示されるように、ナプキン長手方向に沿った直線状のエンボスを付与するパターンも考えられる。しかしながら、直線状のエンボスの場合には、幅方向外側からの脚圧に対して、エンボス線が幅方向内側に湾曲したり折れ曲がったりしやすく、脚圧に対する抵抗力がほとんど得られないため、吸収体のヨレの発生を抑えることができない。これに対して、本生理用ナプキン1では、図4(A)に示されるように、特に、前記エンボス10は、直線部11を基点として幅方向外側に突出する円弧状部12を複数有するため、幅方向外側からの脚圧が前記円弧状部12において分散吸収され、この円弧状部12においてしっかりと受け止めることができるため、脚圧がかかっても吸収体4がヨレにくく、且つヨレによる横漏れが防止できるようになる。
【0042】
また、前記円弧状部12、12の間に直線部11が設けられているため、吸収体4の幅方向中央部から外側に向かう体液の流れを直線部11に沿った方向の流れ、すなわちナプキン長手方向に沿った方向の流れに変換しやすくなるので、幅方向外側への拡散が低減し、横漏れが確実に防止できるようになる。
【0043】
前記エンボス10は、図3に示されるように、円弧状部12のナプキン長手方向寸法aを、直線部11のナプキン長手方向寸法bより長く形成することが好ましい。前述の通り円弧状部12は、脚圧に対する抵抗力を生じさせる部分であるので、円弧状部12の寸法を直線部11の寸法より大きくすることによって、脚圧に対する抵抗性が高まるようになる。前記円弧状部12の長手方向寸法aとしては、16mm以上100mm以下、好ましくは20mm以上30mm以下とするのがよい。また直線部11の長手方向寸法bとしては、3mm以上20mm以下、好ましくは5mm以上10mm以下とするのがよい。
【0044】
更に、前記円弧状部12の前記直線部11を基点としたナプキン幅方向外側への突出量cは、3mm以上10mm以下、好ましくは5mm以上10mm以下とするのがよい。また、前記円弧状部12は、単一の曲率半径Rを有する円弧によって形成することが好ましく、このときの前記曲率半径Rは、8mm以上50mm以下、好ましくは10mm以上20mm以下とするのがよい。
【0045】
また、エンボス10の溝幅は、エンボス底部において0.5mm以上3mm以下、好ましくは1mm以上2mm以下とするのがよい。なお、エンボス10の溝幅は、後段で詳述するように、エンボス線毎に違えても良いし、1つのエンボス線において部分的に違えても良いが、このような場合でも前述の範囲内の溝幅で形成することが望ましい。
【0046】
前記エンボス10は、吸収体4の幅方向両側部にそれぞれ、1本又はナプキン幅方向に所定の間隔をあけて複数本で設けられ、好ましくは体圧に対する抵抗力を高めるとともに体液のナプキン長手方向への拡散性を高めるため複数本設けるようにする。前記エンボス10を両側部にそれぞれ複数設ける場合には、全てのエンボス10、10…で直線部11、11…及び円弧状部12、12…のナプキン長手方向に沿う配設ピッチを一致させ、直線部11、11…及び円弧状部12、12…がナプキン幅方向に一致するパターンで配置することが好ましい。これにより、円弧状部12、12…がナプキン幅方向に多段的に形成されるため、幅方向外側からの脚圧に対する抵抗力を高めることができるとともに、直線部11、11…もナプキン幅方向に多段的に形成されるため、幅方向中心側からの体液の流れを確実にナプキン長手方向の流れに変換することができるようになる。
【0047】
吸収体4の両側部にそれぞれ複数のエンボス10、10…を形成する場合、特に幅方向外側の吸収体4のヨレを防止するとともに、幅方向外側で体液の流れを変換しやすくするため、次の構成を備えるようにすることができる。1つ目は、図5に示されるように、幅方向外側に位置するエンボス10の方が幅方向内側に位置するエンボス10より、ナプキン幅方向に隣接するエンボス10、10同士の間隔を狭く設定する構成である。2つ目は、図6に示されるように、幅方向外側に位置するエンボス10の方が幅方向内側に位置するエンボス10より、エンボス10の溝幅を大きく設定する構成である。上記2つの構成は、何れか一方のみを備えることもできるし、両方を同時に備えることもできる。幅方向外側の領域は、脚圧が強く作用するとともに、体液がそれ以上外側に拡散すると漏れに直結する領域であるため、この幅方向外側の領域に上記構成を採用したエンボス10を備えることによって、エンボス10による効果を高めている。
【0048】
前記エンボス10は、ナプキン長手方向の全長に亘って溝幅がほぼ等幅となるように形成してもよいが、脚圧に対する抵抗力を高め、吸収体4のヨレを防止するため、部分的に溝幅を太く設定することができる。具体的には、図7に示されるように、ナプキン長手方向の全長に亘って又はナプキン長手方向の所定区間において、円弧状部12の溝幅を直線部11の溝幅よりも大きく設定することができる。前述の通り円弧状部12は幅方向外側からの脚圧を受け止めて抵抗力を発生させる部分であるので、この円弧状部12の溝幅を相対的に太く形成することによって、脚圧に対する抵抗力を高めることができる。一方、直線部11は、前述の通り主に幅方向中心側から外側に向けて拡散する体液の流れをナプキン長手方向の流れに変換する役割を果たす部分であり、脚圧に対する抵抗力にはそれほど影響を与える部分ではないため、この直線部11の溝幅を太くすることは逆に吸収体4の長手方向への湾曲に対する抵抗になり装着感を悪化させる原因となる場合があるので好ましくない。
【0049】
前記吸収体4の両側部にそれぞれ複数のエンボス10、10…を形成する場合において、図8に示されるように、各エンボス10は、隣接するエンボス10、10同士が間隔をあけて互いに交差しない条件の下で、ナプキン幅方向内側に位置するエンボス10の円弧状部12の一部を、その直ぐ幅方向外側に位置するエンボス10の円弧状部12の内側に入り込ませるように配置することによって、前記複数のエンボス10、10…が多重線状に設けられるようにしてもよい。これによって、円弧状部12の剛性を更に高めることができ、脚圧に対する抵抗性が増し吸収体4のヨレがより一層低減するようになる。また、直線部11についても多重線状に設けられるため、体液の流れをより確実に受け止めて直線部11に沿う流れに変換することができ、横漏れが確実に防止できるようになる。なお、幅方向内側の円弧状部12を幅方向外側の円弧状部12の内側に入り込ませるとは、幅方向内側の円弧状部12の先端部分が幅方向外側に隣接するエンボス10の直線部11より幅方向外側に位置するように配置することである。
【0050】
前記円弧状部12は、単一の曲率半径の円弧によって形成することが好ましいが、このとき円弧状部12が直線部11の端部から幅方向外側に突出しはじめる円弧の突出基端位置としては、図9に示されるように、円弧状部12に沿って延長した仮想円14のナプキン長手方向の最大位置15と直線部11との位置関係で、任意に設定することができる。具体的には、図9(A)に示されるように、仮想円14のナプキン長手方向の最大位置15が前記直線部11に一致する場合、同図9(B)に示されるように、仮想円14のナプキン長手方向の最大位置15が前記直線部11より幅方向外側にある場合、同図9(C)に示されるように、仮想円14のナプキン長手方向の最大位置15が前記直線部11より幅方向内側にある場合のいずれでもよい。図9(A)、(C)のケースでは、円弧状部12が直線部11の基端部よりナプキン長手方向に拡がることがないため、円弧状部12の剛性が比較的高く、脚圧に対する抵抗性が大きくなる。また、図9(B)のケースでは、円弧状部12が直線部11の基端部よりナプキン長手方向に拡がるため、円弧状部12の長さに対して直線部11の長さを相対的に長く形成することができるので、体液の流れを受け止める長さが長くなり、横漏れが防止しやすくなる。
【0051】
ところで、装着時に体液排出部Hを含む股間部に対応する区間では、その前後区間と比較して脚圧が強く作用するので、この区間のエンボス10は特に脚圧に対抗可能な特別な構成を備えるようにすることが望ましい。例えば、装着時に股間部に対応する区間は、その前後区間と比較して、円弧状部12の溝幅を相対的に大きく設定する構成(図10)、円弧状部12のナプキン長手方向寸法aを相対的に長く設定する構成、直線部11のナプキン長手方向寸法bを相対的に短く設定する構成、円弧状部12の曲率半径Rを相対的に小さく設定する構成、円弧状部12の直線部11を基点としたナプキン幅方向外側への突出量cを相対的に大きく設定する構成のいずれか又は任意の組合せとすることができる。
【0052】
前記エンボス10は、図11に示されるように、隣接する直線部11、11の端部同士を直線エンボスで接続した連結部13を形成することにより、直線部11及び連結部13が連続する1本の線上に設けられるようにすることができる。これによって、幅方向中心側から外側に向けて拡散する体液が必ず直線部11又は連結部13に接するようになり、この直線部11及び連結部13に沿ったナプキン長手方向の流れが生じやすくなり、横漏れがより一層確実に防止できるようになる。
【0053】
前記エンボス10は、溝方向に沿ってエンボス溝が連続する連続的なエンボスによって形成することも可能であるし、圧搾部と間欠部とが交互に配置された間欠的なエンボスに形成することも可能である。また、吸収体4の両側部にそれぞれ複数のエンボス10、10…を形成する場合、全てのエンボス10を連続的又は間欠的に設けることもできるし、図12に示されるように、連続的なエンボス10と間欠的なエンボス10とを混在させることもできる。連続線と間欠線とを配置したエンボス10、10…の場合には、図示例のように、連続的なエンボス10を幅方向外側に配置し、間欠的なエンボス10を幅方向内側に配置することが好ましい。これにより、幅方向外側の脚圧に対する抵抗性が増し、吸収体4をヨレにくくすることができるとともに、幅方向外側で体液をより確実に受け止め、直線部11に沿う流れを生じさせることができ、横漏れが確実に防止できるようになる。前記エンボス10を間欠的とした場合、エンボス線方向に沿う間欠長さeは、隣接するエンボス10、10間の間隔dより小さくすることが好ましい(d>e)。これにより、体液が間欠的なエンボス10に沿って流れやすくなり、隣接するエンボス10に拡散しにくくなる。
【0054】
吸収体4の両側部にそれぞれ複数のエンボス10、10…を形成する場合、上記形態例では、隣接するエンボス10、10の円弧状部12が幅方向に一致する同じ位相で配置していたが、図13に示されるように、隣接するエンボス10、10の円弧状部12がナプキン幅方向に対し位置ずれするように位相をずらして配置してもよい。これにより、エンボス10、10…全体として、円弧状部12のナプキン長手方向の配置範囲がより広い範囲に亘って存在するようになるため、確実に脚圧に抵抗でき、吸収体4のヨレが防止できるようになる。図13に示される例は、隣接するエンボス10、10の円弧状部12の配置位置を1/2周期ずらしたパターンであり、(A)は直線部11と円弧状部12とからなるもの、(B)は更に連結部13を設たものである。これにより、エンボス10、10全体として、円弧状部12がナプキン長手方向の全てに亘って存在するようになる。
【0055】
上記生理用ナプキン1の製造に当たっては、前記エンボス10は、吸収体4をクレープ紙5で囲繞した後、表面側(肌当接面側、透液性表面シート3の配設側)からの圧搾により付与することができる。また、吸収体4と透液性表面シート3との間に親水性のセカンドシート(図示せず)を配置する場合には、前記吸収体4とセカンドシートとを積層した状態で、セカンドシートの表面側から付与してもよい。
【符号の説明】
【0056】
1…生理用ナプキン、2…不透液性裏面シート、3…透液性表面シート、4…吸収体、5…クレープ紙、7…サイド不織布、10…エンボス、11…直線部、12…円弧状部、13…連結部
図1
図2
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図13