特許第6027939号(P6027939)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6027939
(24)【登録日】2016年10月21日
(45)【発行日】2016年11月16日
(54)【発明の名称】飛行機
(51)【国際特許分類】
   B64C 29/00 20060101AFI20161107BHJP
【FI】
   B64C29/00 A
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-96877(P2013-96877)
(22)【出願日】2013年5月2日
(65)【公開番号】特開2014-218105(P2014-218105A)
(43)【公開日】2014年11月20日
【審査請求日】2014年11月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】399009022
【氏名又は名称】香山 恒夫
(74)【代理人】
【識別番号】100102923
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 雄二
(72)【発明者】
【氏名】香山 恒夫
【審査官】 志水 裕司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−076670(JP,A)
【文献】 特開2006−021733(JP,A)
【文献】 特開2001−071998(JP,A)
【文献】 特開2007−118891(JP,A)
【文献】 特開2007−055372(JP,A)
【文献】 特開2003−206806(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/013084(WO,A1)
【文献】 米国特許第06293491(US,B1)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0151666(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64C 15/00 − 15/14
B64C 27/08 − 27/10
B64C 27/22 − 27/30
B64C 27/82
B64C 29/00
B64C 39/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の構成要素を含む飛行機。
(a)主胴体の両側に平行に副胴体を配置する。
(b)主胴体に中央を固定し両端を副胴体に固定した前翼と尾翼を設ける。
(c)主胴体に中央を固定し中間部分を副胴体に固定した主翼を設ける。
(d)上記の翼は、巡航速度における翼面荷重に合わせた揚力を発生する面積を有する。
(e)上記の両副胴体の前端部と後端部に、翼の長手方向に回転軸を向けた合計2対のプロペラを設け、前翼と尾翼の両端部に、翼を貫通する方向に回転軸を向けた合計2対のプロペラを設ける。
(f)上記の各プロペラを回転駆動して飛行中の方向転換用及び姿勢制御を行う制御装置を設ける。
(g)上記の両副胴体の中央部に、両副胴体と翼の両方に垂直な方向に回転軸を向けた一対の回転翼を設ける。
(h)上記回転翼、または上記翼を貫通する方向に回転軸を向けた合計2対の上記プロペラと上記回転翼とによって、滑走をして離着陸するときに不足した翼の揚力を補助する垂直方向の揚力を発生させる。
【請求項2】
合計4対の上記方向転換用及び姿勢制御用プロペラをそれぞれ独立に回転駆動して、目的とする進行方向に機体を向けるように制御する制御装置を設けたことを特徴とする請求項1に記載の飛行機。
【請求項3】
機体の傾きを検出する傾斜センサを設け、合計4対の上記方向転換用及び姿勢制御用プロペラをそれぞれ独立に回転駆動して、機体の傾きを修正するように制御する制御装置を設けたことを特徴とする請求項1または2に記載の飛行機。
【請求項4】
上記方向転換用及び姿勢制御用プロペラとともに、それぞれ上記回転軸の方向に向いた圧縮空気噴出口を設けたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の飛行機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、安全に低速飛行を行うことができる飛行機に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明者は、先に、低速でも安定に飛行することができるカナード型の飛行機を提供した(特許文献1参照)。本発明は、この型の飛行機を改良したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−76670
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の飛行機は、低速飛行を行うと失速して不安定になる。また、横風に弱く、強風下での離着陸は危険を伴う。上記の課題を解決するために、本発明は次のような飛行機を提供することを目的とする。
(1)巡航飛行に必要な小さめな翼を使用し、低速飛行を可能にする。
(2)低速飛行でも横風による影響を受けない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以下の構成はそれぞれ上記の課題を解決するための手段である。
【0006】
<構成1>
以下の構成要素を含む飛行機。
(a)主胴体の両側に平行に副胴体を配置する。
(b)主胴体に中央を固定し両端を副胴体に固定した前翼と尾翼を設ける。
(c)主胴体に中央を固定し中間部分を副胴体に固定した主翼を設ける。
(d)上記の翼は、巡航速度における翼面荷重に合わせた揚力を発生する面積を有する。
(e)上記の両副胴体の前端部と後端部に、翼の長手方向に回転軸を向けた合計2対のプロペラを設け、前翼と尾翼の両端部に、翼を貫通する方向に回転軸を向けた合計2対のプロペラを設ける。
(f)上記の各プロペラを回転駆動して飛行中の方向転換用及び姿勢制御を行う制御装置を設ける。
(g)上記の両副胴体の中央部に、両副胴体と翼の両方に垂直な方向に回転軸を向けた一対の回転翼を設ける。
(h)上記回転翼、または上記翼を貫通する方向に回転軸を向けた合計2対の上記プロペラと上記回転翼とによって、滑走をして離着陸するときに不足した翼の揚力を補助する垂直方向の揚力を発生させる。
【0008】
<構成2>
合計4対の上記方向転換用及び姿勢制御用プロペラをそれぞれ独立に回転駆動して、目的とする進行方向に機体を向けるように制御する制御装置を設けたことを特徴とする構成1に記載の飛行機。
【0009】
<構成3>
機体の傾きを検出する傾斜センサを設け、合計4対の上記方向転換用及び姿勢制御用プロペラをそれぞれ独立に回転駆動して、機体の傾きを修正するように制御する制御装置を設けたことを特徴とする構成1または2に記載の飛行機。
【0010】
<構成4>
上記方向転換用及び姿勢制御用プロペラとともに、それぞれ上記回転軸の方向に向いた圧縮空気噴出口を設けたことを特徴とする構成1乃至3のいずれかに記載の飛行機。
【発明の効果】
【0011】
<構成1の効果>
(1)垂直浮揚用プロペラを使用するので、全体に翼を小さめにすることができ、巡航速度での飛行時に空気抵抗を少なくすることができる。従って、高速飛行ができる。また、前翼や尾翼を、副胴体で連結することにより、低速飛行に適した翼構造を採用することができる。
(2)姿勢制御用プロペラによって、低速飛行時にも横風に影響されずに離着陸できる。
(3)垂直浮揚用プロペラによって、滑走距離の短い離着陸ができる。
<構成2の効果>
垂直方向の浮上をさらに容易にする。
<構成3の効果>
圧搾空気により、飛行機の進路を補正することができる。
<構成4の効果>
姿勢制御用プロペラを回転させて、機体の進行方向を制御し、機体を直進させたり方向転換させたりすることができる。
<構成5の効果>
垂直浮揚用プロペラを回転させて、機体の傾きを修正して、機体を安定に飛行させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は実施例1の飛行機を示す斜視図である。
図2】(a)は飛行機の平面図、(b)は側面図、(c)は正面図である。
図3】プロペラと制御装置の関係を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を実施例毎に詳細に説明する。
【実施例1】
【0014】
図1は実施例1の飛行機を示す斜視図、図2の(a)は飛行機の平面図、(b)は側面図、(c)は正面図である。図3は、プロペラと制御装置の関係を示すブロック図である。
図に示すように、主胴体11の両側に平行に副胴体12を配置している。主胴体11に中央を固定し両端を副胴体12に固定した前翼13と尾翼15を設ける。主胴体11に中央を固定し中間部分を副胴体12に固定した主翼14を設ける。両副胴体12の前端部20と後端部22に、翼の長手方向に回転軸を向けた合計2対の姿勢制御用プロペラ18を設ける。前翼13と尾翼15の両端部に、翼を貫通する方向に回転軸を向けた合計2対の垂直浮揚用プロペラ16を設ける。
【0015】
さらに、この実施例では、両副胴体12の中央部に、副胴体12と翼の両方に垂直な方向に回転軸を向けた回転翼17を設けた。なお、両副胴体12の前端部20もしくは後端部22に、圧縮空気噴出口26を設けてもよい。回転翼17は、矩形のプロペラで、飛行中に空気抵抗を増やさないように、肉厚の薄いものが好ましい。また、前翼13と尾翼15は、全体として翼厚が同じで、薄いもののため、図面では厚みを示していない。
【0016】
本発明の飛行機は、安全に低速飛行を行うことを可能にする。低速飛行を行うと従来型は失速して不安定になる。本発明の飛行機の形体は、主胴体11の両側に副胴体12を設け、カナード型のように、前翼13と主翼14と尾翼15を設けている。尾翼15は、安定板としての役割を持つ。これら三翼を主胴体11と副胴体12固定する。この事によって全体の剛性を高める。副胴体12の前端部20と後端部22に設けた水平方向と垂直方向に向けたプロペラ(ファン)16を駆動する。離着陸時に下方に向かって空気を流せば揚力を発生しそれだけ翼の負担は少なくなり低速飛行を可能とする。
【0017】
また、横風に対しては垂直に取り付けたプロペラ18を回し横風に対応する。又、低速時の安全性の確保は、例えば、機体に傾斜センサ30を設ける。片方に傾くとセンサーによりこれを感知して、制御装置28が、プロペラ16のいずれかを駆動して元の姿勢に戻して安定を計る事が出来る。又垂直に取り付けた前方のプロペラ18を、制御装置28が飛行中に駆動すれば、補助翼を作動させずに高度を失う事なく水平飛行のまま方向転換を行う事ができる。
【0018】
さらに、横風着陸の場合、制御装置28が、前後の4基のプロペラ18を横方向に向かって風を吹き出すように駆動すれば着陸コースを外れる事なく着陸する事が出来る。又先端の垂直に取り付けた一対のプロペラ18と後端の垂直の一対のプロペラ18をそれぞれ反対方向に向けて作動すれば、機体は水平状態のまま急角度で方向を変える事ができる。
【0019】
揚力の増加及び方向転換を行う力は、プロペラ(ファン)18によって行う方法の他に、圧搾空気を使用する方法がある。副胴体12の前端あるいは後端から圧搾空気を噴出して、反動による作用を利用してプロペラと同様な方向転換効果を得る事ができる。
【0020】
四隅に水平状態に取り付けたプロペラ16による揚力が少ない場合は、副胴体12に設けた左右二基の回転翼17による揚力を加える事によって、回転翼17の揚力分だけ固定翼の負担が少なくなり、低速飛行を可能にする事が出来る。なお、垂直浮揚用プロペラ16や回転翼17は、垂直離着陸ができるようなものではない。垂直離着陸用とするとサイズも出力も大きなものになり、燃料消費量が大きくて不経済になる。垂直方向に揚力を発生させる補助的なものでよい。離着陸時に垂直方向に揚力を発生させるだけで、滑走距離を短くする顕著な効果がある。
【0021】
本型式のような副胴体12を持つ飛行機は、副胴体12を主なる燃料タンクとして使用して、主胴体11に燃料を積まない事にすれば、万が一の場合、胴体から出火せず安全性を高める事が出来る。
【0022】
円筒形の副胴体12は、耐圧燃料タンクとして使用する事が出来るので、液化ガス(プロパンガスなど)の使用も可能になり、燃料の選択肢を増す事が出来る。
【0023】
現在のように飛行機の速度が速くなると、巡航速度に合わせて翼の面積を決めると、離着陸時には翼が小さすぎて揚力が不足する。揚力を高めるために離着陸速度を速くすると、危険が増して使用に耐えなくなる。
【0024】
又一方で、離着陸時の安全な速度に合わせた翼面積にすると、巡航飛行の時には翼が大きすぎて空気抵抗が増し経済運航が出来ない。そこで一般に行われているのは、翼の高揚力装置である。これは飛行機が前進する事によって空気の流れを利用し高揚力を発生する方法で、安全な速度を作り運航する方法である。この方法は、非常に有効で現在多く利用されている。
【0025】
しかし今日の飛行機の滑走拒理は非常に長くなって経費がかかるようになっている。そこで、やや巡航速度に合わせた高い翼面荷重の小さめの翼で、離着陸時に於いて安全な飛行速度を得るように、本機を開発した。
【0026】
図2に示すように、本発明の飛行機の特長としては、主胴体11と2本の副胴体12に、前翼13と主翼14及び尾翼15を固定して一体化したものである。前翼13と尾翼15の両端にプロペラ(ファン)16を取り付けてモーターで作動する。4基のモーターは、飛行機の姿勢制御のためにそれぞれ独立に駆動制御される。
【0027】
通常は一定の回転数で制御し、左右前後のバランスを崩す事なく浮力を得て、安定した飛行が出来る。又なんらかの力により空力的に機体の姿勢が崩れた場合、傾斜センサ30がこれを感知して、各モーターの駆動力を調整して、機体を水平に保持し、安定な安全運航を行う事が出来る。
【0028】
又、副胴体12上の2ヶ所の回転翼17を作動する事によって揚力が増えるので、低速飛行が可能になり離着陸の滑走距離を短くする事が出来る。又、本飛行機の副胴体12の前後に垂直に取り付けたプロペラ18によって、方向変換や横風に対応する事が出来る。
【0029】
例えば、補助翼や方向舵を使用せずに、前後どちらかの垂直に取り付けたプロペラ18を同じ方向に向けて駆動すれば、飛行方向を変える事が出来る。又横風着陸の場合には、4ヶ所にある垂直のプロペラ18を風に向かって駆動すれば、横に流される事なく着陸を行う事が出来る。
【0030】
以上本機の構造とシステムは、飛行機が低速になって翼の揚力だけでは飛行が維持出来ない場合、プロペラや回転翼17を使って揚力を発生させて補い、低速飛行を安全に行うことができる。
【0031】
以上の飛行機の利点を整理すると以下のようになる。
1 水平に取り付けた4基のプロペラ16と副胴体12に取り付けた回転翼17を作動する事によって揚力を発生させれば、翼の負担が少なくなるので低速飛行が可能になり安全性が増す。
2 垂直に取り付けた前後4枚の翼の中に設置したプロペラ18を作動させる事によって補助翼を使用しないで方向変換を行う事が出来る。
3 前翼13と尾翼15の両端付近に取り付けたプロペラ16や18は、それぞれ機体の姿勢センサーの出力信号を受けた駆動装置により、それぞれ独立に回転駆動されて、機体を水平に保持し、目的とする方向に向けるので、低速飛行時の安定と安全を計る事が出来る。
4 前後4ヶ所に垂直に取り付けたプロペラ18によって、離着陸時の横風によって機体が流されるのを防ぐ事が出来る。
5 主胴体11及び副胴体12と各翼を結合する事によって強度と剛性を高める事が出来る。
6 副胴体12を円筒状にすると、耐圧構造とする事が出来るので、液化ガス(例えばプロパンガス)等を使用出来て燃料に対して選択肢を増す事が出来る。又炭酸ガスの発生も少ない。
7 副胴体12を燃料タンクとして使用して胴体と胴体付近に燃料を積まなければ万が一の場合胴体は燃えないので安全性の高い飛行機となる。
8 副胴体12の回転翼17を作動すれば、離着陸距離を短くする事が出来るので、小さな空港でも運用が可能な飛行機になる。
9 本機は急角度でしかも低速で離着陸が可能なため、空港近くまで高空で飛来して急角度でアプローチし、着陸する事が出来るので、空港周辺の騒音区域を減らす事が出来る。
10 本機は低速でしかも滑走距離が短いので、タイヤの消耗を減らす事が出来る。
11 万が一不時着した場合即時に燃料タンクを切り離して、人の乗っている胴体より遠ざけて安全性を高める構造とする。
【符号の説明】
【0032】
11 主胴体
12 副胴体
13 前翼
14 主翼
15 尾翼
16 垂直浮揚用プロペラ
17 回転翼
18 姿勢制御用プロペラ
20 前端部
22 後端部
24 エンジン
26 圧縮空気噴出口
28 制御装置
30 傾斜センサ
図1
図2
図3