特許第6027961号(P6027961)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6027961粘膜へ化合物を送るための媒体、それに関連する組成物、方法、及びシステム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6027961
(24)【登録日】2016年10月21日
(45)【発行日】2016年11月16日
(54)【発明の名称】粘膜へ化合物を送るための媒体、それに関連する組成物、方法、及びシステム
(51)【国際特許分類】
   A61K 9/127 20060101AFI20161107BHJP
   A61K 31/739 20060101ALI20161107BHJP
   A61K 35/74 20150101ALI20161107BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20161107BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20161107BHJP
【FI】
   A61K9/127
   A61K31/739
   A61K35/74 Z
   A61P29/00
   A61P37/06
【請求項の数】7
【全頁数】38
(21)【出願番号】特願2013-503958(P2013-503958)
(86)(22)【出願日】2011年4月7日
(65)【公表番号】特表2013-523838(P2013-523838A)
(43)【公表日】2013年6月17日
(86)【国際出願番号】US2011031606
(87)【国際公開番号】WO2011127302
(87)【国際公開日】20111013
【審査請求日】2014年4月3日
(31)【優先権主張番号】61/345,039
(32)【優先日】2010年5月14日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/321,527
(32)【優先日】2010年4月7日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】512259330
【氏名又は名称】シェン,ユエ
【氏名又は名称原語表記】SHEN,Yue
(73)【特許権者】
【識別番号】512259341
【氏名又は名称】マスマニアン,サーキス,ケイ.
【氏名又は名称原語表記】MAZMANIAN,Sarkis,K.
(74)【代理人】
【識別番号】100074332
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100114432
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 寛昭
(74)【代理人】
【識別番号】100171310
【弁理士】
【氏名又は名称】日東 伸二
(72)【発明者】
【氏名】シェン,ユエ
(72)【発明者】
【氏名】マスマニアン,サーキス,ケイ.
【審査官】 山中 隆幸
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2009/0124573(US,A1)
【文献】 特表2006−522135(JP,A)
【文献】 特表2012−524910(JP,A)
【文献】 Microb Pathog. 1996 Apr;20(4):191-202
【文献】 Proc Natl Acad Sci U S A. 2010 Feb 16;107(7):3099-104
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K35/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性環境を取り囲む脂質膜で形成されPSAを含む外膜小胞を有し、前記脂質膜がBacteroides fragilisの細胞膜から得られたものである、炎症性疾患又は炎症の処置に使用されるための薬用組成物。
【請求項2】
炎症性疾患が炎症性腸疾患である請求項記載の薬用組成物。
【請求項3】
有意な抑制活性を伴って機能性制御性T細胞の分化を誘導することに使用するための請求項1又は2に記載の薬用組成物。
【請求項4】
PSAが低分子量PSA(L-PSA)である請求項に記載の薬用組成物。
【請求項5】
前記制御性T細胞がT細胞活性を抑制する請求項又はに記載の薬用組成物。
【請求項6】
前記制御性T細胞がFoxP3を発現する請求項のいずれか1項に記載の薬用組成物。
【請求項7】
前記分化及び/又は抑制がインビトロで生じる請求項のいずれか1項に記載の薬用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
米国政府は、国立衛生研究所によって授与された授与No.DK078938に従って、本発明においていくらかの権利を有する。
【0002】
本開示は、粘膜へ化合物を送るための媒体、組成物、方法、及びシステムに関する。特に、本開示は、消化管の粘膜へ化合物を送るための媒体に関する。
【背景技術】
【0003】
所望の化合物又は物質を粘膜へ効率的に送ることは、具体的には、消化管へ送ることにおいて、また、特にヒトの消化管へ送ることにおいて、挑戦し続けられている。
【0004】
ヒトの消化管は、免疫機構の進行や機能において広範囲の影響を有する非常に多くの微生物(腸の微生物叢として知られている)を保有している。哺乳類の消化管に存在する無数の細菌種のなかでも、バクテロイデス門は、最も豊富なグラム陰性細菌門である。
【0005】
免疫調節に関わる微生物及び化合物を同定することは、特に興味深いことである。例えば、バクテロイデス フラギリス(Bacteroides fragilis)は、免疫調節の特性を有することを示しヒトと共生する微生物である。特に、バクテロイデス フラギリスの免疫調節特性は、細菌によるポリ多糖A(PSA)の産生と関連付けられている。
【0006】
グラム陰性細菌は、細菌産生物を出すための複雑な機構、III型分泌装置(T3SS)、T4SS、及び、T6SSを発達させており、これら装置は、宿主細胞に直接的に接触した後に細菌エフェクタの位置を変える複雑な表面器官を作る。他の分泌戦略は、グラム陰性細菌の表面から放出され、離れた標的細胞へ一式のカーゴ分子を送る外膜媒体(OMVs)である。多くのグラム陰性細菌(全てではないが)は、OMVsを作り出すようであるが、ヒトと共生する細菌の塩基配列は、普遍的にT3SS、T4SS、及びT6SSがないことが明らかになっている。
【0007】
しかしながら、B.フラギリス(又は共生細菌)が有益な微生物分子を免疫機構へ送り、B.フラギリス(又は共生細菌)が免疫調節特性を行うこととなるための機構及び/又は分子トリガーの同定は、挑戦し続けられている。
【0008】
クローン病や潰瘍性大腸炎といった炎症性腸疾患(IBD)は、様々な症状を示し、それによって、制御できない腸の炎症が消化管の深刻な病状を引き起こすこととなる。IBDは、合衆国において約100万人を苦しめている。IBDの医学的及び社会的な負荷に加え、病気の発生は、‘西洋’社会において驚くほどに増えており、現状の治療法は、かなり不十分なものである。IBDの原因は、何十年もの研究の後でも明らかにされないままであるが、免疫調節における腸細菌に関する不具合は、病気において重要な役割を有しているようである(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Braun, J. & Wei, B. Body traffic: ecology, genetics, and immunity in inflammatory bowel disease. Annu Rev Pathol 2, 401-429 (2007).8(1) pp. 2-6
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
開示の1以上の実施形態の詳細は、下記添付の図面及び記述において説明されている。他の特徴、課題、及び効果は、記述、図面及び請求項から明らかになり得る。
【0011】
外膜小胞(OMVs)、宿主細胞の細菌分子を標的とする分泌構造によって、PSAが宿主へ送られることを我々は明らかにした。PSAを含むOMVsは、宿主免疫機構の樹枝状細胞によって吸収される。OMVsの摂取に続き、Foxp3及び抗炎症サイトカインインターロイキン-10(IL-10)を発現する制御性T細胞(Treg)の分化を誘導するために、PSAは、樹枝状細胞を調整(プログラム)する。OMVsによるTregの細胞分化は、トール様受容体2(TLR2)の発現、及び、樹枝状細胞によるIL-10の産生を必要とする。
特に、精製されたOMVsは、機能性Tregsのインビトロにおける分化をPSA依存的に強い抑制活性を伴うように導く。PSAを含むOMVsで動物を処置することは、実験的な大腸炎を防止し、消化管における炎症誘発サイトカイン反応を抑制する。これらの発見は、共生細菌が小胞の分泌によって有利な微生物因子を提供することを明らかにし、また、IBDのためのプロバイオティクス療法における運送(デリバリー)の新しいやり方へと設計されるプロセスを明らかにする。
【0012】
一実施形態においては、粘膜へ化合物を送るための薬用組成物が提供され、該薬用組成物は、水性環境を取り囲んでいる脂質膜によって形成された外膜小胞と、製剤上適した担体とを有し、小胞がPSA配位子を含む。
【0013】
他の実施形態においては、水性環境を取り囲んでいる脂質膜によって形成されPSA配位子を含む外膜小胞と、製剤上適した担体とを有し、脂質膜がB.フラギリスの外膜から得られた、粘膜へ化合物を送るための薬用組成物が提供されている。
【0014】
段落〔0012〕の組成物におけるより詳しい実施形態においては、PSA配位子がL−PSAである。
【0015】
段落〔0012〕の組成物におけるさらなる他の実施形態においては、薬用組成物が、さらに、炎症性腸疾患の処置において使用されることが知られている薬剤又は処置剤の1種以上を含んでいる。
【0016】
一実施形態においては、炎症性疾患又は個体における炎症を処置する方法が、水性環境を取り囲んでいる脂質膜によって形成されPSA配位子を含む外膜小胞を有する組成物の有効量を投与することを有している。
【0017】
段落〔0016〕の方法の詳しい実施形態においては、炎症性疾患が炎症性腸疾患である。
【0018】
さらに他の実施形態においては、粘膜へ化合物を送るための媒体が、水性環境を取り囲んでいる脂質膜によって形成されPSA配位子を含む外膜小胞を有する。
【0019】
段落〔0018〕の具体的な実施形態においては、媒体が、PSA以外の化合物をさらに含む。
【0020】
別の実施形態においては、機能性Tregsを強力な抑制活性へと導くための方法であって、水性環境を取り囲んでいる脂質膜によって形成されPSA配位子を含む外膜小胞を利用する方法が提供される。
【0021】
段落〔0020〕の方法のさらに詳細な実施形態においては、Treg細胞がT細胞の増殖を抑制し、且つ/又は、さらに、樹枝状細胞の活性を減らすことにより免疫力を抑える。
【0022】
段落〔0020〕の方法の他の実施形態においては、方法が、さらに、共培養のためのDCsを提供することを有し、該方法においては、IL-10が産生され、IL-10の産生がDCsにおけるTLR2の発現の存在に依存し、IL-10のDC産生におけるPSA活性のみ(OMVsの非存在)と比較して、DCsにおけるTLR2発現が必要とされない。
【0023】
他の実施形態においては、炎症を減らす化合物、又は、インビトロにおける炎症性疾患の症状を改善する化合物を同定するための方法が提供され、該方法は、候補化合物を提供すること、及び、該化合物を伴ってTreg細胞を培養することを有し、さらには、T細胞を提供すること、そして、前記Treg細胞がT細胞活性を抑制するかどうかを測定することを有する。
【0024】
段落〔0023〕の実施形態のさらなる詳細においては、前記方法が樹枝状細胞をさらに有し、且つ/又は、前記Treg細胞がFoxp3を発現する。
【0025】
別の実施形態においては、薬剤としての使用のための細菌物質が提供され、該物質は、水性環境を取り囲んでいる脂質膜によって形成された外膜小胞とPSA配位子を含む小胞とを含んでいる。
【0026】
段落〔0025〕の薬剤のより詳しい実施形態においては、細菌物質が、さらに、賦形剤、及び/又は、炎症性腸疾患の処置において使用されることが知られている1種以上の薬剤を含んでいる。
【0027】
他の実施形態においては、炎症性疾患又は炎症の処置において使用される細菌物質が提供され、該材料は、水性環境を取り囲んでいる脂質膜によって形成された外膜小胞と、PSA配位子を含む小胞とを有する。
【0028】
段落〔0027〕の細菌物質のより具体的な実施形態においては、炎症性疾患が炎症性腸疾患である。
【0029】
他の実施形態においては、機能性Tregの分化を強い抑制活性に導くための組成物が、水性環境を取り囲んでいる脂質膜によって形成されPSA配位子を含む外膜小胞を有する。
【0030】
段落〔0029〕の組成物のより具体的な実施形態においては、TregがT細胞の活性を抑制し、且つ/又は、Treg細胞がFoxp3を発現する。
【0031】
さらに提供されるものは、免疫調節性、具体的には抗炎症性を有する微生物及びその関連物質を選抜するための方法及びシステムである。特に、いくつかの実施形態において、バクテロイデス フラギリスの1種に匹敵する免疫応答性を個々に誘導できる細菌物質の同定を可能にする方法及びシステムが提供される。
【0032】
他の実施形態においては、免疫調節特性を有する細菌物質を同定するための方法が記載されている。該方法は、T細胞のみを、又は抗原提示細胞の存在下でT細胞を候補細菌物質と接触させること、及び、IL-10、Foxp3、TGF31、TGF32、パーフォリン、及びグランザイムBからなる群より選択される1種以上の抗炎症生物標識、及び、IFNγ、IFNα、IFNβ、IL-1、IL-4、IL-5、IL-6、IL-8、IL-9、IL-13、IL-21、IL-22、IL-23、IL-17、TNFαからなる群より選択される1種以上の炎症生物標識のうちの少なくとも1種の発現を検出することを有する。該方法は、さらに、1種以上の抗炎症生物標識の発現の増加、又は、接触後における1種以上の抗炎症生物標識の発現の減少を検出することにより候補細菌物質の抗炎症性能を測定することを有している。
【0033】
さらなる別の実施形態においては、免疫調節性能を有する細菌物質を同定するための方法が提供されている。該方法は、候補細菌物質を抗原提示細胞と接触させること、及び、接触の後に抗原提示細胞をT細胞とともに培養することを有している。該方法は、さらに、IL-10、Foxp3、TGF31、TGF32、パーフォリン、及びグランザイムBからなる群より選択される1種以上の抗炎症生物標識、及び、IFNγ、IFNα、IFNβ、IL-1、IL-4、IL-5、IL-6、IL-8、IL-9、IL-13、IL-21、IL-22、IL-23、IL-17、TNFαからなる群より選択される1種以上の炎症生物標識のうちの少なくとも1種の発現を検出することを有する。該方法は、さらに、1種以上の抗炎症生物標識の発現の増加、又は、培養後における1種以上の抗炎症生物標識の発現の減少を検出することにより候補細菌物質の抗炎症性能を測定することを有している。
【0034】
他の側面では、動物における免疫調節能力を備える細菌物質を同定するための方法が記載されている。該方法は、候補細菌物質を用いて組み換え遺伝子マーカー非ヒト動物に処置を施すことを有し、組み換え遺伝子マーカー非ヒト動物は、IL-10、Foxp3、TGF31、TGF32、パーフォリン、及びグランザイムBからなる群より選択される1種以上の標識された抗炎症生物標識、及び、IFNγ、IFNα、IFNβ、IL-1、IL-4、IL-5、IL-6、IL-8、IL-9、IL-13、IL-21、IL-22、IL-23、IL-17、TNFαからなる群より選択される1種以上の標識された炎症生物標識のうちの少なくとも1種を発現させるべく、遺伝子的に改質されている。該方法は、組み換え遺伝子マーカー非ヒト動物において1種以上のうちの少なくとも1種の抗炎症生物標識の発現又は処置後の1種以上のうちの少なくとも1種の炎症生物標識の発現を検出すること、及び、1種以上の抗炎症生物標識の発現の増加、又は、処置後における1種以上の炎症生物標識の発現の減少を検出することにより候補細菌物質の抗炎症性能を測定すること、をさらに有している。
【0035】
別の側面では、細菌物質を選別するためのシステムが記載されている。該システムは、少なくとも2種のT細胞と、抗原提示細胞と、IL-10、Foxp3、TGF31、TGF32、パーフォリン、及びグランザイムBからなる群より選択される1種以上の抗炎症生物標識、及び、IFNγ、IFNα、IFNβ、IL-1、IL-4、IL-5、IL-6、IL-8、IL-9、IL-13、IL-21、IL-22、IL-23、IL-17、TNFαからなる群より選択される1種以上の炎症生物標識のうちの少なくとも1種を検出するための試薬とを有し、これらは、上述した抗炎症細菌物質を同定する方法において、同時に、組み合わされて、又は連続的に使用される。
【0036】
上記の方法及びシステムは、医療、薬剤、獣医分野の利用、また、基礎的な生物研究や様々な用途に関連して使用され得るものであり、本開示の解釈において当業者によって特定でき、上記の方法及びシステムにおいては、免疫調節能力を調査すること、及び、特に物質の抗炎症能力を調べることが望ましい。
【0037】
明細書に組み込まれ、明細書の一部をなす添付の図面は、本開示の1以上の実施形態を示しており、詳細な記述及び実施例とともに、本開示の本質や実施を説明するのに役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1A図1は、バクテロイデス フラギリス(Bacteroides fragilis)からの外膜小胞(OMVs)がPSAを含むことを示している。図1Aは、EDL(電子密度層)に富んだB. fragilisの透過型電子顕微鏡によって検出された野生型B. fragilis及びB. fragilisΔPSAによって産生されたOMVsを示している。
図1B図1Bは、野生型細菌及びSA-変異体細菌から取り出した全細胞(WC)と外膜小胞(OMV)抽出物とのイムノブロット解析を示す。
図1C図1Cは、精製したOMVsを免疫金標識し、抗PSA及び抗IgG-金コロイド複合体(5nm)で染色し、電子顕微鏡で分析したものを示す。
図1D図1Dは、全細胞及びOMVsから調製した莢膜多糖製剤の糖タンパク質の染色を示す。
図2A図2は、OMVSがPSAに依存して、動物を実験的大腸炎、腸炎から保護することを示す典型的な結果を表している。図2Aは、死亡の日(4日目)までの初期重量からの減少として測定された、TNBS大腸炎(0日目)誘発後の、動物群における体重減少を報告する図を示す。全ての群が少なくとも4匹を含み、エラーバーが標準誤差(SEM)を示す。結果は、3つの独立した試験の代表的なものであり、一元ANOVAによって決定されたp値は、* P<0.05、*** P <0.001である。
図2B図2Bは、切除直後における未処理腸の画像を示し、媒体処理(エタノール)及びTNBS処理群(n= 4匹/群)からの、長さの定量化(グラフ)を示す。エラーバーはSEMを示す。結果は、独立して行われた3つの複合実験で示され、一元ANOVAによって決定されたp値は、*** P <0.001、NS:有意差なし である。
図2C図2Cは、各治療群を代表するヘマトキシリン及びエオシン(H&E)染色された腸部位の画像を示す。
図2D図2Dは、標準のスコアステム(オンライン)に従い、盲検病理学者(GWL)によって動物に与えられた大腸炎スコアを示す(Scheiffele and Fuss. (2001) Induction of TNBS colitis in mice. Current Protocols in Immunology. 1.19.1-15.19.14)。各印は、個々の動物を表す。結果は、独立して行われた3つの複合実験から示されており、 *** P <0.001、 NS:有意差なし。
図2E図2Eは、全腸から回収されたRNAのqRT-PCRによってサイトカイン転写解析したものを示す図である。エラーバーは、4匹/群からのSEMを示す。結果は、3つの独立した試験を代表したものである。
図2F図2Fは、腸間膜リンパ節の精製CD4+T細胞から回収されたRNAのqRT-PCRによってサイトカイン転写解析したものを示す図である。エラーバーは、4匹/群からのSEMを示す。結果は、3つの独立した試験を代表したものである。
図3A図3は、OMVs含有PSAが、処理されたDScと共培養されたT細胞からのIL-10産生及びFoxp3発現を誘導することを示唆する結果である。図3Aは、DCによって内在化されたOMVのフローサイトメトリー(FC)分析を示す。 OMVsは、FITC(フルオレセインイソチオシアネート)で標識し、種々の時間(図のように)、育ったDCと共に培養された。細胞は、抗CDl lcで染色した。百分率は、CD11C+OMV+個体数を示す。
図3B図3Bは、さまざまな時間(図のように)WT-OMVS及びΔPSA-OMVSとともに培養され、抗CDllc及び抗MHCIIで染色された、DCのFCプロットを示す。百分率は、CDl lc +細胞におけるMHCII個体数を示す。
図3C図3Cは、DC細胞又はDC-T細胞の共培養物からの培養上清のIL-10のためのELISA分析を示し、該分析においては、DCがOMVsを用いて18時間標的化され、洗浄され、一次CD4+T細胞とともに、又は該CD4+T細胞がなく共培養された。上清は、培養4日目に採取された。培地サンプルは、OMVsで標識化されないことを示したが、それ以外は同様に処理された。抗CD3は、T細胞反応を増強すべく、いくつかのサンプルに添加された。エラーバーは、3試料からのSEMを示す。結果は、5以上の独立した試験を代表するものであり、* P <0.05、** P <0.01である。
図3D図3D(左側)は、図3Cと同様にELISA分析を示しているが、IL-10-動物から分化されたDCsをも含んでいる。エラーバーは、3試料からのSEMを示す。結果は、3つの独立した試験の代表的なものであり、 *p <0.05、 NS:有意差なし。図3D(右側)は、図3Cと同様にELISA分析を示しているが、TLR2-/-動物から分化したDCsをも含む。SEA:ブドウ球菌腸毒素A。エラーバーは、3つの試料からのSEMを示す。結果は、3つの独立した試験の代表的なものであり、*はp <0.05、NS:有意差なし。
図3E図3Eは、インビトロでのDCsを用いた培養の後で、精製したT細胞サブセットから回収したRNAのqRT-PCRによって決定された、IL-10(左)及びFoxp3(右)の転写レベルを示す。共培養は、4日目に(c-e)に設定され、CD4 + CD25 +T細胞及びCD4 + CD25-T細胞は、磁気ビーズ分離(純度>95)によって精製され、RNAは、RNeasyミニキットで抽出された。相対値は、[β]-アクチンに対して標準化した。エラーバーは、3つの試料からのSEMを示す。結果は、3つの独立した試験の代表的なものであり、 * P <0.05、*** P <0.001、 NS:有意差なし。
図3F図3Fは、(c-e)に設定された共培養を示すが、Foxp3-GFPマウスからのCD4 +T細胞を用いた。 DCで標識化されたOMVを用いて4日間培養した後、細胞は、抗-CD4で染色され、FCを使ったGFP発現によってFoxp3が検出された。結果は、2つの独立した試験の代表的なものである。
図4A図4は、PSA含有OMVSによるTreg抑制作用のインビトロでの発生を示唆する典型的な結果を示す。図4Aは、OMVSで処理されたDCと4日間共培養した後におけるCD4+T細胞サブセットによるIL-10発現のFCヒストグラムを示す。脾臓のCD4+T細胞は、IL-10 GFPマウスから精製し、共培養の後で、抗CD4及び抗CD25で染色し、GFPの発現によりIL-10の発現を測定した。百分率は、CD4 ++ CD25 +およびCD4 + CD25-サブセットにおけるIL-10+個体数を示す。結果は、3つの独立した試験を代表したものである。
図4B図4Bは、培地(コントロール)、WT-OMVs、ΔPSA-OMVSで処理したDCsとの共培養の後における、精製されたCD4 + CD25 + T細胞による非投薬反応細胞のインビトロでの抑制を示す。細胞増殖は、CFSE希釈のFCによって測定した。 Treg:Teff比が示されており、百分率は、増殖細胞の合計を示している。No Treg:CD4 + CD25-細胞のみを示す。結果は、2つの独立した試験を代表したものである。
図4C図4Cは、(図4Bで1、2、3、4、5のように印が付けられているように)各増殖ピークにおけるCD4 +T細胞百分率量を示す。結果は、独立して行った3つの複合実験から示されており、 *** P <0.001、* p <0.05であり、NS:有意差なし。
図5図5は、野生型B. fragilisとPSA欠失変異体B. fragilisとが、インビトロ培養中において同様量のOMVsを産生することを示す。各OMVsの調製から回収された総タンパク量は、回収のときに培養のOD600によって標準化された。エラーバーは、SEMを示す。結果は、独立して行った10を超える試験の組み合わせから得た。p値は、スチューデントt検定によって決定され、 NS:有意差なし。
図6図6は、野生型B. fragilis精製されたOMVsの大部分がPSAを含むことを示し、精製OMVSにおけるPSAの免疫金標識化は、PSAに関連する10個のランダムサンプル(1μm×1μm)範囲のうち、WT-OMVSの60%以下で観察されるが、観察されるΔPSA-OMVsのいずれもPSAのためのポジティブ染色がされなかった。(抗IgG-金を用いたWT-OMVsの免疫金標識は、標識の特異性だけを確実にする)。
図7図7は、野生型B. fragilis又はPSA欠失変異B. fragilisから取り出したOMVsがタンパク質組成物において有意な差を示さないことを表している。プロテオーム質量分析法は、WT-OMVsとΔPSA-OMVsとの間における同定タンパク質(それぞれのタンパク質と識別される1種を超える特有のペプチド)の100%の重複を示している。同定された全てのタンパク質のうちで、それぞれ識別される特有のペプチドの数に従って、我々は、半定量的に比較的豊富なタンパク質の量を比較した。それらの大半は、独立して行われた違いを示さない。エラーは、SEMを示す。 p値は、スチューデントt検定によって決定され、 **:P <0.01、*:P <0.05、NS:有意差なし。
図8図8は、アクチン重合が、DCによるOMV摂取のために必要であることを示す。 DCによるOMVsの内在化のフローサイトメトリー分析は、サイトカラシンDを用いて前処理された。OMVsは、FITC(フルオレセインイソチオシアネート)で標識され、(示されているように)育てられたDCとともに種々の時間培養された。細胞は、抗CDl lcで染色された。百分率は、CD11c +OMV+個体数を示す。
図9図9は、WT-OMVs又はΔPSA-OMVsが、DCsの細胞質内に内在化及び局在化することを示している。 蛍光顕微鏡写真は、DCによるOMV(WT又はΔPSA)の内在化を示す。 OMVsは、FITC(灰色の矢印)で標識され、育てられたDCと共に2時間培養された。細胞は、固定処理され、細胞膜は、小麦胚芽凝集素(WGA)−テトラメチルローダミン(黒矢印)で染色された。スケールバー:7.5μm。
図10図10は、WT-OMVs及びΔPSA-OMVsが、DC活性化のための共刺激分子を上方制御することを示す。 WT-OMVs及びΔPSA-OMVsで(示されているように)様々な時間培養され、抗CD11c及び抗CD86で染色されたDCsのFCプロット。百分率は、CD11c+細胞におけるCD86 +の個体数を示す。
図11図11は、本明細書に記載の実施形態における生物標識のPSA誘導発現を示す。各図に示すデータは、3つの独立した実験を代表するものである。白色の棒は、PBS処置マウス由来の細胞を示し、灰色の棒は、PSA処置マウス由来の細胞を示す。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本明細書では、粘膜へ化合物を送るために適した媒体が記載されている。
【0040】
本明細書では、“野生型OMV”、“OMVs含有PSA”、及び“PSA−OMV”との用語は、同様な意味で用いられる。
【0041】
本開示の趣旨における“媒体”との用語は、化合物がその中に与えられ、また、該化合物がその中に入れられ、発現し且つ/又は性質を表す媒質を示している。典型的な媒体は、特に薬物に関連する有効成分の溶媒、担体、又は結合剤として通常作用する様々な媒質のいくつかを含んでいる。
【0042】
本開示の趣旨における化合物又は物質に関連する“送る”及び“運送”との用語は、元々の位置から標的位置へと化合物又は物質が移動することを示しており、具体的には、1以上の細胞、組織、又は器官のそれぞれによって形成される位置への移動を示している。具体的には、送られる化合物に関連する少なくとも1種の活性が1以上の細胞、組織、又は器官のそれぞれで機能するように移動が行われるときに、本明細書の趣旨においては、化合物が送られる。
【0043】
本明細書にて用いられる“化合物”との用語は、1種以上の化学元素で構成された様々な化学物質を示し、生体分子に限定されず、特に薬物を含む様々な物質、分子、又は成分を包含している。本明細書にて用いられる“生体分子”との用語は、糖類、アミノ酸類、ペプチドタンパク質、オリゴヌクレオチド類、ポリヌクレオチド類、ポリペプチド類、有機分子、ハプテン類、エピトープ類、生物細胞、生物細胞の一部、ビタミン類ホルモン類などに限定されないがこれらを包含する生物的活性に関連する物質化合物又は成分を示す。本明細書にて用いられる“薬物”との用語は、生物体へと吸着されたときに、通常の体の機能を変化させる物質を示す。本開示の趣旨において薬物は、具体的には、疾患の処置、治療、予防、又は、疾患の診断において使用される化学物質、又は、別途、肉体的若しくは精神的な健全性を高めるために使用される化学物質を包含している。
【0044】
例えば、PSAが上記の‘化合物’である場合には、小胞によって、PSAに加え異なる化合物が、さらに送られ得る。
【0045】
本開示の趣旨における“粘膜”との用語は、ほぼ内胚葉性であり、上皮において表面に広がり、吸収や分泌に関与する内膜を示す。それぞれ粘膜は、外部環境及び内部器官にさらされる様々な体腔との境界に配されている。粘膜は、鼻、口、唇、まぶた、耳、生殖器、肛門などの様々な場所において、皮膚とつながっている。
【0046】
本明細書において記載されている組成物、及び関連する方法、システムにおいては、媒体は、送られる1種以上の化合物を含む小胞によって形成されている。
【0047】
本開示の趣旨における“小胞”は、水性環境において集合した、膜形成脂質と、さらなる分子とによって形成された超分子複合体である。具体的には、本明細書で記載された小胞においては、膜形成脂質が、細胞質としても示される内部水性環境を取り囲む脂質層に配置されている。
【0048】
本明細書において用いられる“膜形成脂質”又は“両親媒性脂質”との用語は、親水性及び疎水性の両方を有し、水性環境下において脂質層構造となって集まったものを示し、脂質層構造は、極性脂質として知られる両親媒性分子の1つの層又は両親媒性分子が反対方向を向く2つの層のいずれかからなる。それぞれの極性分子は、親水性部分、即ち、誘導体化されたリン酸基や糖基などの極性基と、疎水性部分、即ち、長鎖炭化水素とを有している。例示される極性脂質としては、リン脂質、スフィンゴ脂質、糖脂質、エーテル脂質、ステロール類、及び、ホスフォコリン類が挙げられる。両親媒性脂質としては、限定されないが、膜脂質、即ち、ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)、ジオレオイルホスフォエタノールアミン(DOPE)、又はジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)などのリン脂質、又は、生物膜を構成する両親媒性脂質が挙げられる。実施形態においては、小膜の膜は、細胞膜(細胞内部を外部環境と分け、水性環境を取り囲む生物膜)に類似した脂質二重層によって形成され、具体例としてはB.fragilisの外膜である。
【0049】
本明細書に記載されている小胞は、小胞の膜に付随しているか、又は、小胞の水性環境に含有されているリポ多糖(LPS)をも含む。本明細書にて用いられる“リポ多糖”との用語は、共有結合で結合された脂質及び多糖で構成された巨大分子を示し、これは、グラム陰性細菌の外膜にあり、内毒素(エンドトキシン)として作用し、動物において強い免疫反応を引き起こす。具体例としては、本明細書に記載されている小胞は、当業者によって同定されるB.Fragilisの1種以上のLPSを含む。
【0050】
本明細書にて記載されている小胞は、小胞の膜に付随しているか、又は、小胞の水性環境に含有されているペプチドグリカンをも含み得る。本明細書にて用いられる“ペプチドグリカン”との用語は、糖類及びアミノ酸類で構成された高分子化合物を示し、細菌(古細菌でなく真正細菌)の細胞膜の外方側でメッシュ状の層を形成しており、細胞壁を形成している。具体例としては、本明細書に記載された小胞は、当業者によって同定されるB.Fragilisの1種以上のペプチドグリカンを含む。
【0051】
小胞に含まれ得るさらなる化合物としては、膜タンパク質、膜糖脂質、核酸が挙げられ、特に、B.Fragilisの膜タンパク質、膜糖脂質、核酸が挙げられる。
【0052】
本開示の趣旨における典型的な小胞としては、物質を貯蔵又は移動できる膜で覆われた小さな嚢が挙げられる。小胞は、膜形成脂質の特性によって自然発生的に形成されるか、又は、細菌膜から調製され得る。大抵の小胞は、膜に含まれる物質、及び/又は、水性環境に含まれる物質に依存して特異的な作用を有している。
【0053】
ある実施形態においては、本明細書にて記載されている小胞は、細菌の膜の一部によって形成されている。ある実施形態においては、小胞は、細菌の外膜小胞(OMVs)によって形成されている。
【0054】
ある実施形態においては、本明細書にて記載されている小胞は、B.Fragilisの膜の一部によって形成され、特に、実施例で例示されているように、B.FragilisのOMVから形成されている。
【0055】
ある実施形態においては、送られる化合物は、薬物、候補薬物、栄養補助食品(食事制限を補助することを意図するか、又は食物とみなされない1種以上の成分(ビタミン類又はアミノ酸類)を含む経口用の製品)、又は、粘膜への運送が望まれる他の化合物であり得る。これら1種以上の化合物は、本明細書に記載された小胞に、適した量で含まれ得る。適した量は、送られる特定の化合物により当業者によって決定され得る。
【0056】
ある実施形態においては、1種以上の両イオン性のポリ多糖、特にポリ多糖Aを含む。
【0057】
本明細書において用いられる“両イオン性のポリ多糖”との用語は、グリコシド結合によって1種以上の単糖が結合したものを有する合成又は天然の高分子化合物を示し、該高分子化合物は、少なくとも1つの正電荷部分と、少なくとも1つの負電荷部分とを有する。両イオン性のポリ多糖としては、限定されず、単糖又は二糖の高分子化合物から、単糖を数百から数千含む高分子化合物まで、あらゆる長さの高分子が挙げられる。ある実施形態においては、両イオン性のポリ多糖は、繰り返し単位を含み、各繰り返し単位は、2〜10の単糖を有し、正電荷部分(例えば、自由正電荷アミノ部分)と、負電荷部分(スルホン酸塩、硫酸塩、リン酸塩、及びホスホン酸塩部分など)とを有する。ある実施形態においては、ZPsは、500Daと2,000,000Daとの間の分子量を有する。ある実施形態においては、ZPsは、200Daと2500Daとの間の分子量を有する。典型的なZPSとしては、限定されず、Bacteroides FragilisからのPSA及びPSB、Staphylococcus aureusからのCP5/CD8、及び、Streptococcus pneumoniaからのSp1/CP1が挙げられる。両イオン性のポリ多糖は、天然資源から、特に細菌資源から、具体的には精製によって単離され得る。両イオン性のポリ多糖は、化学的又は生化学的な方法によっても、また、微生物遺伝子組み換え技術によっても、当業者によって識別されて調製され得る。従って、これらの方法や技術については、本明細書においてさらなる詳細を記載していない。
【0058】
本明細書において用いられる“ポリ多糖A”(又はPSA、PSA配位子)との表現は、Bacteroides fragilisのPSA遺伝子座によって産生される分子及びその誘導体を示し、その遺伝子座としては、限定されず、繰り返し単位のポリマー{→3)α-d-AAT Galp(l→4)-[β-d- Galf(1→3)]α-d-GalpNAc(l→3)-[4,6-ピルビン酸]β-d-Galp(l→}が挙げられ、AATGalは、アセトアミド−アミノ−2,4,6−トリデオキシガラクトースであり、ガラクトピラノシル残基は、0−4及び0−6で結合するピルビン酸置換基によって改質されている。第1のポリ多糖(例えばPSA)に対して本明細書にて用いられる“誘導体”との用語は、構造的に第一のポリ多糖に関連している第二のポリ多糖を示し、該第二のポリ多糖は、第一のポリ多糖に存在しない特徴を引き起こし第一のポリ多糖の機能的特性を維持する改質によって第一のポリ多糖から誘導される。従って、PSAのポリ多糖誘導体は、繰り返し単位の改質、又は、1種以上の繰り返し単位の糖成分の改質によって元々のポリ多糖とは通常異なり、該改質は、元々のポリ多糖に存在しないさらなる機能に関連し得るし、関連しないこともあり得る。しかしながら、PSAのポリ多糖の誘導体は、PSAの抗炎症活性と関連する、本明細書に記載されたPSAに関係した1以上の作用的活性を維持している。
【0059】
ある実施形態においては、低分子量PSA(L−PSA)が、70kDa〜200kDaであり、高分子量PSA(H−PSA)が、200kDaを超える。
【0060】
ある実施形態においては、前記粘膜が、個々の消化管の粘膜であり、特に、腸粘膜、胃粘膜、食道粘膜、頬粘膜、口腔粘膜および/または頬粘膜である。
【0061】
ある実施形態においては、本明細書において記載されている小胞が、添付Aとして含まれUS仮出願S/N 61/321,527に記載されたもののような手段や用途に関連して使用され得る。この記載は、本開示の一部をなし、全体として本明細書において参照されて組み込まれる。
【0062】
ある実施形態においては、本明細書において記載されている小胞が、添付Bとして含まれUS出願S/N 12/766787に記載されたもののような方法やシステムに関連して使用され得る。この記載は、本開示の一部をなし、全体として本明細書において参照されて組み込まれる。
【0063】
ある実施形態においては、本明細書において記載されている小胞が、個々の粘膜へ前記化合物を送る方法において使用される。具体例としては、該方法は、物質が膜と接触できる環境下においてしばらくの間、前記化合物を含む小胞と粘膜とを接触させることを有している。該方法においては、小胞が、水性環境を取り囲む脂質膜によって形成され、送られる化合物が、小胞の水性環境中に含まれている。
【0064】
他の実施形態においては、前記小胞又はOMVを含む組成物又は薬用組成物は、物質が膜と接触できる環境下においてしばらくの間、粘膜と接触される。
【0065】
本明細書にて用いられている“接触”又は“培養”との用語は、2つのものの間における相互作用的若しくは非相互作用的な働き又は影響の少なくとも1つが発揮されるような環境下にてしばらくの間提供される、2つのものの間における空間的な関係の発生を引き起こす行為を示している。特に、培養は、小胞と粘膜との間で行われ、小胞と粘膜との間で直接的な接触、及び/又は、相互作用を引き起こすこととなるか、又は、小胞の間接的な作用の後で(例えば、膜と直接的に反応する他の物質の作用又は改質の後で)粘膜の改質を引き起こすこととなる。
【0066】
接触又は培養を行うための適当な条件は、前記化合物、前記粘膜、及び実験計画の観点において本開示の記述に沿って当業者によって判断される。
【0067】
ある実施形態においては、本明細書における小胞は、粘膜へ化合物を送るための組成物に含まれ得る。該組成物は、本明細書に記載された1以上の小胞を含み、必要に応じて、小胞の溶媒、担体、結合剤、又は希釈剤として作用するさらなる媒体と組み合わされる。
【0068】
“条件”との用語は、−動物又はヒトの状況に関するときに−本明細書にて用いられているように、通常、全体的に又は1以上の部分における個々の体の身体状況を示し、該身体状況は、完全な肉体的、精神的、場合により社会的に健全な状況に付随する、全体的に又は1以上の部分における個々の体の身体状況と一致しない。本明細書に記載された条件としては、限定されないが、不調や疾患が挙げられ、“不調”との用語は、体若しくは体のいずれかの部分の機能的な異常に関連した生体の条件を示し、“疾患”との用語は、体若しくは体のいずれかの部分の通常の機能を損ない、特徴的な兆候及び症状が典型的に現れる生体の条件を示している。典型的な条件としては、限定されないが、けが、障害、疾患(精神的、肉体的疾患を含む)、症候群、感染症、常軌を逸した行動、個々の体若しくはその一部における機能及び構造の非定型的な変化が挙げられる。
【0069】
特には、前記化合物が抗炎症化合物として使用される実施形態においては、前記条件は、炎症又は炎症反応に関連するどのような条件にもなり得る。又は、炎症性疾患それ自体として記載された条件になり得る。2つのものに関して本明細書において用いられる“関連する”との表現は、第1のものの発生が第2のものの発生に付随して起こるような2つのものの関係を示し、該関係としては、限定されないが、因果関係、及び、兆候/症状−疾患関係が挙げられる。
【0070】
ヒトにおける炎症(又は、炎症性疾患)に関連する条件としては、限定されないが、炎症性腸疾患が挙げられ、限定されないが、クローン病、潰瘍性大腸炎、喘息、皮膚炎、関節リウマチ、重症筋無力症、グレーブス病、多発性硬化症(MS)、及び、乾癬が挙げられる。当業者は、適当な診断基準を用いて上記の疾患を起こしているものを識別できる。
【0071】
ある実施形態においては、PSAを含有するOMVsを含む組成物、薬用組成物は、炎症性疾患の予防のために使用され得る。該疾患としては、限定されないが、炎症性腸疾患(クローン病、潰瘍性大腸炎を含む)、喘息、皮膚炎、関節リウマチ、重症筋無力症、グレーブス病、多発性硬化症、乾癬が挙げられる。
【0072】
本明細書にて用いられる“処置”又は“処置された”との用語は、医療の一部であるか否かに関わらず、どのような作業も示すか、又は、動物又はヒトにおける医学的又は外科的な条件を伴うものである。そのような処置は、医学的又は非医学的な作業者によって行われ得る。
【0073】
ある実施形態においては、前記組成物が個々に投与され、前記組成物が薬用組成物であり得る。また、該組成物は、それぞれPSAを含有する1以上の小胞を含んでいる。より具体的な実施形態においては、薬用組成物は、それぞれPSAを含有する1以上の小胞と、1以上の他の化合物と、及び/又は、薬理的に可能な若しくは適した担体/媒体を含む。
【0074】
他の実施形態においては、それぞれPSAを含有する1以上の小胞と、1以上の他の化合物と、及び/又は、薬理的に可能な若しくは適した担体/媒体を含む上記の薬用組成物は、この組成物に与えられた炎症条件又は炎症を伴う個体/対象物において、改善を示す。
【0075】
ある実施形態においては、本明細書にて記載された小胞は、賦形剤又は希釈剤を伴って薬用組成物中に含まれ得る。特に、ある実施形態においては、薬用組成物は、相溶可能であり薬学的に適切な1以上の媒体、特に薬学的に適切な希釈剤又は賦形剤と組み合わされて、本明細書にて記載された小胞を含む。
【0076】
本明細書に記載された“賦形剤”との用語は、薬物の有効成分にとって薬学的に可能な又は適した担体として用いられる不活性な物質を示している。本明細書にて開示された薬学的な組成物に適した賦形剤としては、個々の体が本明細書の小胞を吸収する性能を高めるどのような物質も挙げられる。適した賦形剤としては、本明細書に記載の小胞を有する製剤を使いやすくて正確な用量のものとすべく、製剤の容量を増すために用いられ得るものが挙げられる。一回量における賦形剤の使用に加え、賦形剤は、本明細書に記載の小胞の取り扱いを容易にするために製造工程においても使用され得る。投与経路や薬剤調製に応じて、様々な賦形剤が用いられ得る。典型的な賦形剤としては、限定されないが、付着防止剤、結合剤、コーティング剤の崩壊剤、充填剤、香味料(甘味料など)や着色剤、流動促進剤、潤滑剤、防腐剤、吸着剤が挙げられる。
【0077】
薬学的に許容され若しくは適当な担体は、限定されないが、有機又は無機の、固体状又は液体状の賦形剤であり得る。該賦形剤は、経口適用や注射といった適用の選択態様に適し、また、一般的な薬学的製剤による態様で投与される。そのような製剤としては、錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤などの固形物、また、溶液、乳化液、懸濁液などのような液状物が挙げられる。前記担体としては、デンプン、乳糖、ブドウ糖、ショ糖、デキストリン、セルロース、パラフィン、脂肪酸グリセリド、水、アルコール、アラビアゴムなどが挙げられる。必要であれば、補助剤、安定剤、乳化剤、滑沢剤、結合剤、pH調整剤、等張剤、及び、他の一般的な添加物が添加され得る。
【0078】
薬学的に許容され若しくは適当な担体は、腸の正常でない状況に適し、又は、食用組成物に適していると知られている他の化合物(例えば、ビタミンC、ビタミンEなどの抗酸化剤、セレン、又は亜鉛)を含み得る。食用組成物としては、限定されないが、牛乳、ヨーグルト、豆腐、チーズ、発酵乳、牛乳ベースの発酵製品、アイスクリーム、発酵させた穀物ベースの製品、牛乳ベース粉末、乳児用調製粉乳、錠剤、液状細菌懸濁物、乾燥経口サプリメント、又は、湿潤経口サプリメントが挙げられる。
【0079】
本明細書で用いられる“希釈剤”との用語は、組成物の有効成分を希釈又は運ぶために利用される希釈のための物質を示している。適当な希釈剤としては、薬学上の製剤の粘度を減らすことができるどのような物質も挙げられる。
【0080】
ある実施形態においては、組成物、化合物、及び、特に薬用組成物は、腸への投与のために調製され、該腸への投与は、限定されないが、i)錠剤、カプセル、又はドロップとして経口(口経由)により、ii)腸栄養チューブ、十二指腸栄養チューブ、又は胃瘻により、及びiii)直腸坐剤により行われる。
【0081】
ある実施形態においては、本明細書に記載のPSAを含む小胞は、各個体の状況を処置又は予防する方法において使用され得る。
【0082】
該方法は、組成物又は薬用組成物の有効量を各個体に与えることを含む。本明細書で用いられる“各個体”との用語は、単一の生物器官を示し、該器官においては、限定されないが、動物、特に高等動物、特に哺乳類などの脊椎動物、特にヒトなどで炎症が生じる。
【0083】
“有効量”、“有効な量”、又は、“Xに有効な量”とは、化合物が投与されたときに、処置を必要としている疾患の1以上の症状をある程度治す、取り除く、減少させる、又は改善させるために有効な、又は、予防を必要としている疾患の臨床的指標若しくは症状の開始を遅らせるために有効な、化合物、組成物、又は薬用組成物の量のことである。従って、例えば、有効量は、下記に示すように、化合物/組成物/薬用有効成分の‘改善’作用を示す量である。
【0084】
“有効量”は、処置を必要としている疾患のために知られているインビトロ及びインビボのモデルシステムに関係する化合物を用いて実験することにより、実験的に測定され得る。有効量は、各個体の体重、性別、年齢、及び病歴によって変わり、また、患者の重症度、疾患の種類、投与の様式などによっても変わる。有効量は、所定の実験を行うことにより、容易に決定され、例えば、滴定(有効用量が見つかるまで用量を増やして投与すること)、及び/又は、過去の患者に有効な量を参照することによって決定される。一般的に、本発明の有効量は、患者の体重に対して、約0.1mg/kg及び約20mg/kgの間の範囲の用量で管理される。
【0085】
本明細書にて用いられるように、“予防的な有効量”は、疾患に関連する1以上の症状の悪化、再発、又は開始を予防又は減少させるために十分な(又は、他の治療法(例えば他の予防剤)の予防的作用を向上又は改善するために十分な)、化合物/組成物/薬用組成物の量である。
【0086】
さらに期待されることは、本発明の化合物/組成物/薬用組成物が、別々で又は組み合わされて、炎症性疾患の治療や予防において有用であると知られている既知の1種以上の薬剤と併せて用いられ得ることである。
【0087】
例えば、本発明の化合物/組成物/薬用組成物は、限定されないが、スルファサラジン(アザルフィジン)、メサラジン(アサコール、ペンタサ)、免疫抑制剤(イムラン、6-MP、シクロスポリン)、メトトレキサート、TNF-α阻害剤(レミケード、ヒュミラ)、及び、コルチコステロイド(エントコート、プレドニゾン)といったIBDの処置において有用であると知られている薬物/処置の1つ又はその併用物と組み合わされ得る。潰瘍性大腸炎の他の処置(実験的)としては、アロエベラ、酪酸、ボスウェリア、プロバイオティクス、抗生物質、免疫抑制療法、及び、ニコチンが挙げられる。
【0088】
例えば、本発明の化合物/組成物/薬用組成物は、限定されないが、アボネックス(製品名)、ベタセロン(製品名)、およびコパクソン(製品名)、レビフ(製品名)、エクスタビア(製品名)、ノバントロン(製品名)(ミトキサントロン)、タイサブリ(製品名)(ナタリズマブ)、及びジレニア(製品名)(フィンゴリモド)といったMSの処置において有用であると知られている薬物/処置の1つ又はその併用物と組み合わされ得る。他の薬剤としては、静脈内免疫グロブリン(IVIG)療法、メトトレキサート、アザチオプリン(イムラン(製品名))、及びシクロホスファミド(シトキサン(製品名));コルチコステロイド;シトキサン(製品名)(シクロホスファミド)、イムラン(製品名)(アザチオプリン)、メトトレキサート、血漿交換、パルスソリューションメドロール(製品名)(IVメチルプレドニゾロン);プレドニゾン、デカドロン(製品名)(デキサメタゾン);メドロール(製品名)(経口メチルプレドニゾロン);血漿(血漿交換)、静注免疫グロブリン(IVIG)療法が挙げられる。
【0089】
他の実施形態においては、これら他の薬物がOMVs自体の中に入って送られること、又は作用を発揮することが可能である。
【0090】
本明細書における“改善された”、“改善”、及び、他の文法上の変形は、処置によってもたらされる個体/対象物におけるどのような有利な変化をも包含する。有利な変化は、処置がないときよりも患者の状態が良くなるものである。“改善された”とは、限定されないが、望ましくない状況を予防すること、状況の悪化の速度を遅らせること、望ましくない状況の進行を遅らせること、本来の普通の状況に回復すること、処置がないときよりもより多い回復又はより長い回復の維持を患者に引き起こすこと(即ち、患者の炎症の程度が少なくなる(若しくはなくなる)、又は、ヒトが通常、症状を有さない状態にある)、再発の回数及び/又は程度を減らすこと、及び、磁気共鳴映像法(MRI)画像において観察される新たな部位の進行を減らすことを包含する。
【0091】
より具体的には、IBDにおける改善としては、限定されないが、腹部のけいれんや痛み、血便、下痢、腸動を伴う緊急、発熱、食欲不振、体重減少、粘液便、大腸の潰瘍形成、および貧血(血液の損失に起因する)といった1種以上の臨床的IBD症状における重症度又は持続を減少させることが挙げられる。例えば、MSにおける改善は、限定されないが、視覚障害、しびれ、めまい/回転性めまい、膀胱や腸の機能不全、虚弱、ふるえ、運動障害、性機能障害、ろれつが回らない、痙性(脚のこわばり)、嚥下障害、慢性的にうずく痛み、うつ病、軽度の認知、記憶困難といった1種以上の臨床的MS症状における重症度又は持続を減少させることが挙げられる。
【0092】
さらには、“改善された”、“改善”、及び、他の文法上の変形は、重症度、持続、及び/又は、炎症性疾患の合併症の進行リスクを軽減させるいかなる変化も包含する。IBDにおいては、例えば、‘改善’とは、IBD対象物におけるリスクを減少させることを意味し、IBD対象物において進行するものとしては、潰瘍から多量の出血、腸の穿孔(破裂)、狭窄や閉塞、瘻孔(異常通路)と肛門周囲疾患、中毒性巨大結腸(大腸の急性非閉塞性拡張)、及び、悪性腫瘍(例えば、結腸癌)がある。
【0093】
ある実施形態においては、膜形成脂質、小胞、PSAの少なくとも2つと、送られる1以上のさらなる化合物とが、本明細書に記載の方法で用いられる適当な他の薬物と併せて、場合によっては、システム内に取り込まれる。
【0094】
前記システムは、キットオブパーツの態様で提供され得る。キットオブパーツにおいては、膜形成脂質、小胞、PSA、付加化合物、薬剤、及び、他の薬物が、1以上の組成物中に含まれ得る。又は、膜形成脂質、小胞、PSA、付加化合物、薬剤、及び、他の薬物のそれぞれが、適当な媒体とともに組成物中に含まれ得る。
【0095】
付加成分としては、標識された分子が挙げられ、特に、抗炎症若しくは炎症生物標識に特異的な、又は、その発現に関連する分子に特異的な標識された捕捉剤が挙げられ、又は、本開示を参照する当業者によって識別されるマイクロ流体チップ、標準品、付加成分が挙げられる。
【0096】
本明細書にて用いられる“捕捉剤”との用語は、標的に特異的に結合する化合物を示す。第1の化合物が第2の化合物に結合することに関連する、本明細書において用いられる“特異的に”、“特異的な”、又は“特異的”との表現は、第1の化合物及び第2の化合物のそれぞれの安定複合体が、存在する他の分子を伴って、認識すること、接触すること、及び構造形成することを実質的に伴わずに、第1の化合物及び第2の化合物の安定複合体を認識すること、接触すること、及び構造形成することを意味している。特定の典型的な結合は、抗原抗体相互反応、細胞受容体−リガンド相互反応、ポリヌクレオチドハイブリダイゼーション、酵素基質相互反応などである。“安定複合体”によって示されるものは、通常、より大きい安定性が好ましいものの、検出可能であって、安定性の任意レベルを必要としない複合体である。ある実施形態においては、キットが、標識されたポリヌクレオチド又は標識された抗体を含む。
【0097】
本明細書に記載された方法を実施すべく、適当な取扱説明書及び他の必要な試薬を伴ってキットが提供される。キットは、通常、分離された容器に入れられた組成物を有する。例えば、実験を実施すべくテープやCD−ROMなどの電子媒体又は紙に記載、録音された取扱説明書は、通常、キットに備えられている。キットは、使用される特定の方法に応じて、梱包された試薬及び材料(即ち、洗浄緩衝液など)も備え得る。
【0098】
本明細書にて用いられる“免疫調節”との用語は、炎症性反応がないことに関連する状態を促進する性能を示している。特定の免疫調節性能は、抗炎症特性を有し、抗炎症との用語は、炎症を抑制又は減少させる物質又は処置の特性に関する。
【0099】
本明細書にて用いられる“炎症”、“炎症状態”、又は“炎症反応”との用語は、病原体、損傷細胞、又は刺激物などの有害な刺激に対する個体血管組織の複雑な生体反応を示し、サイトカインの分泌、より具体的には炎症誘発性サイトカインの分泌を包含し、即ち、小膠細胞などの活性化免疫細胞によって主に産生され炎症反応の増幅に関与するサイトカインの分泌を包含する。典型的な炎症誘発性サイトカインとしては、限定されないが、IL-1、IL-6、TNFα、IL-17、IL21、及びIL23が挙げられる。典型的な炎症としては、急性炎症及び慢性炎症が挙げられる。本明細書にて用いられる“急性炎症”との表現は、血漿および白血球による組織における浸潤による炎症(腫脹、発赤、疼痛、発熱、機能の損失)の典型的な兆候によって特徴付けられる短期間の過程を示す。急性炎症は、典型的には、障害刺激が存在する間、刺激が取り除かれ、収まり、瘢痕化(線維症)によって守られるまで引き起こされる。本明細書にて用いられる“慢性炎症”との表現は、同時活性炎症、組織破壊、及び修復活動によって特徴付けられる状況を示す。慢性炎症は、上記の急性炎症の典型的な兆候によっては特徴付けられない。一方で、慢性的に炎症を起こしている組織は、単核免疫細胞(単球、マクロファージ、リンパ球、形質細胞)の侵入、組織破壊、及び、血管新生や線維症を含む修復活動によって特徴付けられる。
【0100】
本明細書にて用いられる“物質”との用語は、特定の又は明確な化学構造のものを示す。“細菌物質”との用語は、細菌由来のものを示し、例えば、生細菌、死細菌、及び、特に、加熱死細菌、細菌抽出物、細菌起源の精製分子、細菌起源の精製分子の組み合わせ、細菌起源の精製分子の1種分子又はその分子の組み合わせを含む小胞、又は、細菌起源の精製小胞などがある。具体的には、細菌物質は、外膜小胞(OMVs)によって形成又は該外膜小胞を含み、該外膜小胞は、細菌表面から取り出された小胞であって、一式のカーゴ分子を離れた標的細胞へ送る。より具体的には、細菌物質は、B.Fragilisの外膜小胞(OMVs)によって形成又は該外膜小胞を含み、さらに具体的には、そのようなOMVsは、さらに、PSAで構成されている。
【0101】
細菌物質は、同じ細菌由来の物質、及び、2種以上の異なる細菌由来の物質を含む。
【0102】
本明細書にて用いられる“細菌”との用語は、単細胞で原核生物であり、典型的には長さが数μmであり、様々な形状を有する微生物の大きな集団を示す。具体的には、本開示の趣旨における細菌には、ヒト細菌叢の細菌が包含され、即ち、唾液、口若しくは膣の粘膜、消化管において、皮膚の深層などのヒト組織や体液、表面に生息する微生物の集団が包含される。細菌叢としては、腸内細菌叢(ヒトの消化管において検出される細菌)、膣内細菌叢(ヒト女性において子宮から体外部へつながる線維筋性の管状経路において検出される細菌)、皮膚細菌叢(ヒトの皮膚において検出される細菌)が挙げられる。より具体的には、本発明の趣旨における細菌は、腸内細菌叢のバクテロイデス(bacteroidetes)の1種以上によって形成され、特に、グラム陰性属であり、芽胞を形成しない嫌気性のバチルス細菌であり、当業者によって識別されるヒトに共生するバクテロイデスの1種以上によって形成される。代表的なバクテロイデスは、B. fragilisである。
【0103】
本明細書にて用いられる“組み換え遺伝子マーカー非ヒト動物”との用語は、様々な遺伝子組み換え技術のいずれか又は生まれながらに形質転換された非天然の遺伝子材料を含有する動物に関する。そのような非天然の遺伝子材料(遺伝子導入)は、“生物マーカー(生物標識)”(本明細書にて定義)として作用し、且つ/又は、非ヒト動物においてRNA又はタンパク質を産生する能力を保有している。
【0104】
本明細書にて用いられる“T細胞”との用語は、当業者によって識別され異なる細胞型を含むリンパ球(白血細胞又は白血球)の下位集団を示す。本開示におけるTヘルパー細胞は、(Th1、Th2、及びTh17などの)エフェクターTh細胞、即ち、他の白血球を刺激又は他の白血球と反応するサイトカイン、タンパク質、又はペプチドを分泌するTh細胞を包含し、また、(Tregなどの)サプレッサーTh細胞、即ち、免疫機構を抑制し、それによって免疫機構の恒常性及び自己抗原への耐性を維持するTh細胞を包含する。
【0105】
本明細書にて用いられる“抗原提示細胞”との用語は、その表面において主要組織適合性遺伝子複合体(MHC)とともに、異物抗原複合体を現す細胞を示す。具体的には、抗原提示細胞は、樹枝状細胞、マクロファージ、B細胞、及び、当業者によって識別される他の細胞を包含する。
【0106】
本明細書にて用いられる“接触”又は“培養”との用語は、2つのものの間における相互作用的若しくは非相互作用的な働き又は影響の少なくとも1つが発揮されるような環境下にてしばらくの間提供される、2つのものの間における空間的な関係の発生を引き起こす行為を示している。特に、培養は、細胞物質と細胞との間で行われ、細胞物質と細胞との間で直接的な接触、及び/又は、相互作用を引き起こすこととなるか、又は、細胞物質の間接的な作用の後で(例えば、細胞と直接的に反応する他の物質の作用又は改質の後で)細胞の改質を引き起こすこととなる。
【0107】
“処置すること”又は“処置”は、細菌物質、化合物、組成物、又は薬用組成物を局所的投与又は全身投与によって行うことができる。全身投与としては、消化管内投与(例えば、経口投与、胃栄養チューブ、十二指腸栄養チューブ、胃瘻、経腸栄養、経直腸投与)、及び、非経口の投与(例えば、静脈内投与、動脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、皮内投与、腹腔内投与、及び膀胱内注入)が挙げられる。典型的な投与としては、経皮投与に限定されないが、吸入投与(喘息治療薬など)、浣腸、点眼薬(結膜上に)、点耳剤、鼻腔内経路(例えば、充血除去剤点鼻薬)、及び膣内投与が挙げられる。
【0108】
同様に、クローン病、潰瘍性大腸炎、喘息、皮膚炎、関節リウマチ、重症筋無力症、グレーブス病、多発性硬化症、乾癬に限定されないが、このような炎症性疾患を患っている個体に与えられる薬用組成物の量は、当業者によって実験的に決定される。
【0109】
抗原提示細胞のT細胞との典型的な培養は、精製した抗原提示細胞をT細胞の培養細胞へ加えること又は精製したT細胞を抗原提示細胞の培養細胞へ加えることによって、抗原提示細胞を含む培養細胞とT細胞を含む培養細胞との混合によってインビトロで行われる。T細胞及び抗原提示細胞とのインビボにおけるさらなる典型的な培養は、T細胞を含む個体の組織へ抗原提示細胞を移植すること、又は、抗原提示細胞を含む個体組織へT細胞を移植することを有する。ある実施形態においては、個体は、標識された炎症又は抗炎症生物標識を発現するように遺伝子的に改質されたヒト以外の遺伝子組み換え動物である。
【0110】
インビトロ又はインビボで、物質とT細胞又は抗原提示細胞とを接触させること、及び、抗原提示細胞とT細胞とを培養することのさらなる操作及び技術は、本開示を参照する当業者によって識別される。
【0111】
本明細書にて記載された方法及びシステムにおいては、炎症生物標識又は抗炎症生物標識の発現の検出は、当業者によって識別される技術によってインビトロ又はインビボで行われ、標識された生物標識などの標識分子、又は、生物標識若しくはそれに関する分子に特異的な標識分子を使用することを有している。
【0112】
本明細書にて用いられる“検出すること”、又は“検出”との用語は、被検体若しくは関連シグナルの存在、又は存在の事実を、試験サンプル、反応混合物、分子複合体、物質に限定されずこれらを包含する空間の一部において測定することを示す。検出は、被検体若しくは関連シグナルの量又は質量の測定(定量とも称される)を示す、又は該測定に関連する、又は該測定を含む“定量的な”ものであり、限定されないが、被検体若しくは関連シグナル量又は濃度を測定するために設計されたどのような分析も包含する。検出は、定量されない他の被検体若しくは関連シグナルの存在量に対して、被検体若しくは関連シグナルの量又は種類の識別を示す、又は該識別に関連する、又は該識別を含む“定量的な”ものである。
【0113】
本明細書において複合体の成分又は分子として用いられる“標識”及び“標識された”との用語は、検出可能な分子に関連し、この標識としては、限定されないが、放射性同位元素、蛍光色素分子、化学発光色素、発色剤、酵素、酵素基質、酵素補因子、酵素阻害剤、染料、金属イオン、ナノ粒子、金属ゾル、リガンド(例えば、ビオチン、アビジン、ストレプトアビジンまたはハプテンなど)などが挙げられる。“蛍光色素分子(フルオロフォア)”との用語は、検出画像において蛍光を発することができる物質又はその一部に関する。従って、本明細書にて用いられる“シグナル”若しくは“標識シグナル”との用語は、標識の検出を可能にする標識から放たれたシグナルを示し、該シグナルとしては、限定されないが、放射能、蛍光、化学発光、酵素反応の結果における化合物の生成などが挙げられる。
【0114】
検出は、生物標識、その前駆体若しくは類似物、及び/又は、それに関連する被検体の発現の程度を検出することによって行われ得る。2つのものに関して本明細書にて用いられる“関連する”との表現は、第1のものの発生が第2のものの発生に関係するような2つのものの間における関係を示し、該関係としては、限定されないが、因果関係、及び、兆候/症状−疾患関係が挙げられる。具体的には、検出は、定性的又は定量的に行われ、RNA、タンパク質、その前駆体、異なる型(即ち、mRNA、tRNA、及びrRNA)、分解産物のような分子の検出、及び/又は、それらに関連する特性の検出又は測定を包含する。検出を行うための技術及び操作は、本開示の記述に接した当業者によって識別される。
【0115】
生物標識の発現を検出する典型的な方法としては、限定されないが、ELISA、Q-PCR、及び、FACSによる細胞内サイトカイン染色検出などの当業者に知られている方法が挙げられる。ある実施形態においては、生物標識の発現は、生物標識若しくはそれに関連した分子に特異的な抗体を使用して行われた培養細胞における蛍光に基づく計測情報によって検出され、抗体は、蛍光色素分子で標識され、該抗体としては、すべてではないが、低分子ダイ(染料)、タンパク質発色団、粒子ドット、及び金微粒子が挙げられる。ある実施形態においては、生物標識の発現は、生物標識プロモータの転写制御において、インビボ(例えば、動物組織)又はインビトロ(培養細胞)にて、標識の発現を検出することにより検出される。これら実施形態にいくつかにおいては、生物標識は、具体的には、IL-10又はFoxp3であり得る。さらなる技術は、本開示の記述に接した当業者によって識別されるため、さらに詳細に記述をしない。
【0116】
本明細書にて記載された方法及びシステムにおいては、候補細菌物質の抗炎症能力は、1種以上の抗炎症生物標識の発現の増加、又は、接触及び/又は培養後の1種以上の炎症生物標識の発現の減少によって測定され得る。生物標識の増加及び/又は減少の測定は、接触及び/又は培養後の炎症生物標識の検出された発現と、接触及び/又は培養がないときの同じ生物標識の発現における予め検出された発現との比較によって行われる。生物標識発現の増加及び/又は減少の測定は、検出された標識の発現と、接触及び/又は培養がないときのコントロール細胞における同じ生物標識の検出された発現とを比較することにより行われる。
【0117】
具体例が実施例において行われており、該実施例においては、抗炎症生物標識であるIL-10、Foxp3、TGF31、TGF-32、パーフォリン、及びグランザイムBの発現の増加と、炎症生物標識であるTNFα又はIL-17Aの発現の減少とが、バクテロイデス フラギリスの作用機構と関連付けられており、該作用機構は、上記の発現型とバクテロイデス フラギリスの生物活性との間の関係、特に抗炎症作用の関係を支持するものである。バクテロイデス フラギリスの抗炎症活性は、当業者によって識別され、また、様々な刊行物や特許公報に記載されており、該特許公報としては、限定されないが、US05679654, US07083777, US2004092433, WO07092451 、及び、WO2009062132が挙げられ、これらは、全体として、本明細書に参照として組み込まれる。候補細菌物質の特異的な抗炎症活性が、産生される特定のサイトカインセットの測定、また、本明細書に記載された方法によって識別される候補細菌物質により活性化される細胞のさらなる測定に基づいて測定され得るということは、当業者によって理解され得る。
【0118】
ある実施形態においては、抗炎症の発現における増加の検出、又は、炎症生物標識の発現における減少の検出は、IL-10、Foxp3、TGF31、TGF32、パーフォリン、及びグランザイムB、又はその組み合わせなどの抗炎症生物標識を誘導する物質の性能、又は、IFNγ、IFNα、IFNβ、IL-1、IL-4、IL-5、IL-6、IL-8、IL-9、IL-13、IL-21、IL-22、IL-23、IL-17、TNFα又はその組み合わせなどの炎症サイトカインを抑制する物質の性能を示す。
【0119】
ある実施形態においては、前記方法は、インビトロ又はインビボにおける候補細菌物質をT細胞と、T細胞単独又は抗原提示細胞の存在下で接触させること、及び、IL-10、Foxp3、TGF31、TGF-32、パーフォリン、及びグランザイムBからなる群より選択される抗炎症生物標識の少なくとも1種の発現を検出することを有しており、該方法においては、接触後の抗炎症生物標識の発現の増加が、候補細菌物質の抗炎症性能を示している。具体的には、これら実施形態のいくつかにおいては、IL-10、Foxp3、TGF31、TGF-32、パーフォリン、及び/又はグランザイムBの発現が、Foxp3発現T細胞、より具体的には、Foxp3発現Treg細胞において行われる。
【0120】
ある実施形態においては、前記方法は、候補細菌物質と抗原提示細胞とを接触させること、及び、接触後に抗原提示細胞をT細胞と培養することを有している。前記方法は、さらに、Foxp3、IL-10、TGF31、TGF32、TGF32、パーフォリン、及びグランザイムBからなる群より選択される抗炎症生物標識の少なくとも1種の発現を検出することを有し、該方法においては、培養後における生物標識発現の増加の検出が、候補物質の抗炎症性能を示す。具体的には、これら実施形態のいくつかにおいては、IL-10、パーフォリン、及び/又はグランザイムBの発現が、Foxp3発現T細胞、より具体的には、Foxp3発現Treg細胞において行われる。
【0121】
ある実施形態においては、前記方法は、候補細菌物質をT細胞と単独又は抗原提示細胞の存在下でT細胞と接触させること、及び、IL- 17及びTNFαからなる群より選択される抗炎症生物標識の少なくとも1種の発現を検出することを有しており、該方法においては、接触後における炎症生物標識の発現の減少が、候補細菌物質の抗炎症性能を示している。
【0122】
ある実施形態においては、前記方法は、候補細菌物質を抗原提示細胞と接触させること、及び、接触後に抗原提示細胞をT細胞と培養することを有している。該方法は、さらに、IL-17 及びTNFαからなる群より選択される炎症生物標識の少なくとも1種の発現を検出することを有し、該方法においては、接触後における炎症生物標識の発現の減少が、候補細菌物質の抗炎症性能を示す。
【0123】
ある実施形態においては、候補細菌物質は、純粋系における細菌を含む。他の実施形態においては、候補細菌物質は、混合系における細菌を含む。細菌は、生きた細菌、死んだ細菌、細菌から単利した抽出物又は産物、それらを組み合わせたものであり得る。細菌は、研究所からのもの、ATCCなどの貯蔵所からのもの、動物から単離されたもの、ヒトから単離されたもの、又はその組み合わせであり得る。
【0124】
ある実施形態においては、動物からの単離物は、フンから単離される。単離物は、腸内内容物、又は、フンと腸内内容物との組み合わせであり得る。ある実施形態においては、ヒトからの単離物は、便から単離される。該単離物は、腸内内容物、又は、便と腸内内容物との組み合わせであり得る。
【0125】
ある実施形態においては、前記方法は、組み換え遺伝子マーカー非ヒト動物、具体的には、マウスやラットなどの組み換え遺伝子マーカー哺乳類動物を、候補物質で処置すること、及び、処置の後に組み換え遺伝子マーカー動物における生物標識の発現を検出することを有する。組み換え遺伝子マーカー非ヒト動物は、IL-10、Foxp3、TGF31、TGF-32、パーフォリン、グランザイムB、及びIL17、TNFαからなる群より選択される標識された抗炎症又は炎症生物標識を発現するように遺伝的に改質されている。
【0126】
具体的には、ある実施形態においては、上述した組み換え遺伝子マーカー非ヒト動物モデルは、前記物質で、経口的に又は静脈注射により処置されるか、又は、経口強制投与によって生きた細菌を永続的に植えつけられ、そして、Foxp3又はIL-10の生物標識発現量が、脾臓、腸間膜リンパ節、小腸、大腸、肺、膵臓、及び骨髄などのマウスの様々な部分において、物質の免疫調節能力の測定値として表される。
【0127】
ある実施形態においては、樹枝状細胞、T細胞、T調節、B細胞、又はマクロファージがマウスから精製又は分化され、IL-10(T細胞分析の場合はFoxp3)の発現は、緑色蛍光タンパク質(GFP)によって標識される。これら実施形態においては、候補細菌物質は、上述した細胞タイプの1種と接触させられ、GFP発現量が測定され、試験される物質の免疫調節能力が示されることとなる。一方、樹枝状細胞又は他の抗原提示細胞は、物質とともに培養され、該物質は、洗浄除去され、続いて樹枝状細胞はT細胞と培養され、T細胞から免疫調節活性を引き起こす樹枝状細胞の能力を測定する。GFP発現は、蛍光活性セルソーター(FACS)又はマイクロプレートリーダーを用いて測定され得る。
【0128】
ある実施形態においては、IL-10、Foxp3、TGF32、パーフォリン、及びグランザイムBからなる群より選択される少なくとも1種の抗炎症生物標識の検出、及び、IL-17及びTNFαからなる群より選択される少なくとも1種の標識された炎症生物標識の検出のための、T細胞、抗原提示細胞、及び試薬が、本明細書に記載された方法に従った、免疫調整能力を有する細菌物質を識別するためのシステムに含まれ得る。
【0129】
一実施形態においては、前記システムは、マウスから精製又は分化された樹枝状細胞、T細胞、T調節、B細胞、及び/又はマクロファージを、ある実施形態において含み、IL-10(T細胞分析の場合はFoxp3)の発現は、緑色蛍光タンパク質(GFP)によって標識される。
【0130】
前記システムは、キッツオブパーツの態様で提供され得る。キットオブパーツにおいては、方法を実施するための多配位捕獲薬剤及び他の薬物が独立してキットに含まれ得る。抗原提示細胞、T細胞、及び試薬は、1種以上の組成物に含まれ、各細胞及び試薬は、適当な媒体とともに組成物中に存在し得る。
【0131】
さらなる成分としては、本開示の記述に接した当業者によって識別される、標識分子、特に抗炎症生物標的又は炎症生物標的又はその発現に関連する分子に特異的な標識捕獲薬物、マイクロ流体チップ、標準品、付加成分が挙げられる。
【0132】
組成物の適当な担体薬物、補助試薬、また、キットの一般的な製造及び梱包に適した識別に関する詳細は、本開示の記述に接した当業者によって認識され得る。
【実施例】
【0133】
本明細書にて記載された小胞、組成物、それに関する方法、システムは、実例によって記載される続く実施例において詳細に示され、また、これらに限定されるものではない。
【0134】
具体的には、続く実施例は、PSA(又はPAS配位子)を含むOMVsを細胞と接触させること、及び、生物標識の発現を検出することのための典型的な細胞培養、方法を示している。当業者は、OMVsと、PSAと、さらなる小胞のためのバクテロイデス フラギリスと、OMVs又は他の小胞のPSAへさらに物質が送られることとのために詳細に記載された特徴の妥当性を、本開示によって、理解するであろう。
【0135】
下記の材料及び方法は、本明細書にて例示された免疫調節物質の検出のためのすべての方法及びシステムのために用いられた。
【0136】
<細菌株、培養条件、マウス>
B. fragilis 株NCTC 9343をアメリカンタイプカルチャーコレクションから得た。その同系のPSA欠失変異株と、mpi44変異株(PSAのみ産生するが他の多糖を産生しない)とは、「M.J. Coyne, A.O. Tzianabos, B.C. Mallory, V.J. Carey, D.L. Kasper and L.E. Comstock, (2001) Polysaccharide biosynthesis locus required for virulence of Bacteroides fragilis, Infect. Immun. 69: 4342-4350.」に記載されている。細菌は、1L ddH20中に37g BHI (BD #237200)、0.5μ g/mlヘミン (Sigma H5533)、及び0.5μg/ml ビタミンK(Sigma V3501)を含む富栄養培地、又は、1LのRPMI (Invitrogen SKU#11835-030)中に、8g グルコース、1% FBS、0.5μg/ml ヘミン、及び0.5μg/ml ビタミンKを含む特製の最少培地のいずれかにて育てられた。C57BL/6及び Balb/c株のSPFマウスをTaconic Farms (Germantown, NY)から購入した。TLR2 ノックアウトマウス及びIL-10 ノックアウトマウスをJackson laboratoriesから購入した。IL-10GFPマウスをシンシナティ小児病院のクリストファーカープ研究所から購入した。Foxp3GFPマウスは、ロサンゼルスのカリフォルニア大学のTalal Chatila研究所から譲り受けた。
【0137】
<EDLに富んだ細菌集団の単離>
パーコール(GE Healthcare #17- 0891-01)不連続濃度勾配遠心分離を野生型B.fragilis及びΔB.fragilis(Patrick S, Reid JH. (1983) Separation of capsulate and non- capsulate Bacteriodes fragilis on a discontinuous density gradient. J Med Microbiol. 16(2): 239-41.)のEDLの単離のために用いた。即ち、20%、40%、60%、80%のパーコール勾配(PBSで希釈)を14ml試験管(各層2ml)中に調製した。次に、PBS中に再度懸濁させたB. fragilis培養物を20%パーコール層の上部に注意深く加えた。さらに、勾配を室温にて800gで20分間遠心分離処理した。EDLに富んだ細菌を分離後に、40%〜60%の界面部分から取り戻した。
【0138】
<OMVの精製及び標識化>
斯かる方法には、E.coliからのOMVsの調製のために既に記載されている方法(Amanda L. Horstman and Meta J. Kuehn. (2000) Enterotoxigenic Escherichia coli secretes active heat-labile enterotoxin via outer membrane vesicles. J Biol Chem. 275: 12489-12496.)を適用した。即ち、EDLに富んだB.fragilisを特製のMM中で育てた。4℃にて2時間、40,000gにて遠心分離することにより細菌がない培地の上清からOMVsを回収し、さらにPBSで2回洗浄し、0.45μmの細長いカラム(Millipore #20-218)で濾過した。精製したOMVsの全タンパク質濃度をブラッドフォード法(Biorad #500-0205)によって測定した。FITCで標識されたOMVsを既に知られた方法によって調製した(Nicole C. Kesty and Meta J. Keuhn. (2004) Incorporation of heterologous outer membrane and periplasmic proteins into Escherichia coli outer membrane vesicles. J Biol Chem. 279: 2069-2076)。即ち、OMVsを室温で1時間、染色緩衝液(lmg/ml FITC (Thermo Scientific #46424), 100mM NaCl, 50mM Na2CO3, pH 9.2)中においた。標識されたOMVsを4℃で30分間40,000gで遠心分離することにより回収し、PBS+200ml NaClで2回洗浄した。
【0139】
<細菌の超薄膜切片の電子顕微鏡観察>
EDLに富んだB. fragilisの超薄膜切片を既に知られた方法によって作製した(Patrick S, McKenna JP, O'Hagan S, Dermott E. (1996) A comparison of the haemagglutinating and enzymic activities of Bacteroides fragilis whole cells and outer membrane vesicles. Microb Pathog. 20(4): 191-202.)。即ち、カコジル酸緩衝液の2.5%(v/v)グルタールアルデヒド(Sigma, G5882)溶液中で4℃にて終夜、サンプルを固定し、さらに、暗所にて室温で3時間、四酸化オスミウム(1%、w/v)中で固定を行った。いずれの固定処理においても、ルテニウムレッド(lmg/ml, Sigma R2751)を配合した。そして、濃度勾配のある一連のアルコールで脱水した後に、固定処理したサンプルをエポキシ樹脂に包埋した。超薄膜切片を切り出し、フォルムバー/炭素被覆銅グリッド(EMS #FCF200-Cu)上にてTEMによる観察の前に、2%酢酸ウラニル及びクエン酸鉛によってネガティブ染色した。
【0140】
<精製したOMVsの免疫金標識>
この方法には、既に知られた手法を適用した(Patrick S, McKenna JP, O'Hagan S, Dermott E. (1996) A comparison of the haemagglutinating and enzymic activities of Bacteroides fragilis whole cells and outer membrane vesicles. Microb Pathog. 20(4): 191-202.)。即ち、精製したOMVの小さな1滴をフォルムバー/炭素被覆金グリッド(EMS #FF200-Au)上に置き、自然乾燥させた。これらのグリッドの“OMVs”の側が下になるように抗体及び洗浄液の小滴の上にグリッドを浮かべることにより、室温にて免疫金標識を行った。具体的には、0.12%グリシンに5分間おいた後、10%FBS中でサンプルを10分間ブロック処理した。続いて、5nmの金が結合した第2の抗体IgG(Dr. Paul Webster, House Ear Institute, ロサンゼルス から贈呈)をサンプルに塗布し、PBSで再び4分間の洗浄を5回行った。標識後、サンプルを1%グルタールアルデヒド中で5分間固定し、液滴がグリッドを透過するように、PBSの1分間の洗浄を4回、H2Oの1分間の洗浄を4回行い、よく洗浄した。2%メチルセルロースの3〜5%酢酸ウラニルの液滴上にグリッドを氷温で10分間置くことにより対比染色を行った。最後に、輪状針金を用いてグリッドを染色液から取り除き、自然乾燥させた。メチルセルロースの薄膜によって覆われたサンプルを輪状針金から取り除き、透過型電子顕微鏡観察(TEM)に用いた。
【0141】
<糖タンパク質分析>
全細胞抽出物又はOMVs(B. fragilis変異株mpi44由来)から精製されたPSAをSDS-PAGEに供し、続いて、PSAの存在を現すべく、ゲルを糖タンパク質染色キット(G bioscience #786-254)により染色した。
【0142】
<化学的にTNBSで誘発された実験的大腸炎>
この操作としては、既に知られた方法(Scheiffele and Fuss. (2001) Induction of TNBS colitis in mice. Current Protocols in Immunology.15.19.1-15.19.14.)を採用した。即ち、野生型(Balb/c)オスのマウスを、TNBS投与の前に、PBS、WT-OMV(5μg)、又はΔPSA-OMV(5μg)で1日おきに1週間、経口的に処置した。処置されたマウスをイソフルランで麻酔し、2%TNBS(50% EtOH中、Sigma P2297)の直腸への投与を3.5Fカテーテル(Instech Solomon; SIL-C35)によって行った。TNBS投与の後、経口投与をさらに2回続け、最後の処置の後、マウスを1〜2日間分析した。
【0143】
机上の実験例においては、TNBS投与の前にPBS、WT-OMV(5μg)、又はΔPSA-OMV(5μg)で1日おきに1週間、経口的にマウスを処置する前に、―上述したように―、同じマウスをTNBSで処置し得る。処置されたマウスを、次に、イソフルランで麻酔し、2%TNBS(50% EtOH中、Sigma P2297)の直腸への投与を3.5Fカテーテル(Instech Solomon; SIL-C35)によって行った。TNBS投与の後、経口投与をさらに2回続け、最後の処置の後、マウスを1〜2日間分析した。我々が予測したことは、この操作を採用することにより、これらマウスにおける大腸炎の程度が改善し、良くなり、治癒することであった。この予測は、PSAのみを用いた従前の研究において(Round ら. 2010)TNBS処理の前及び後の両方においてそれぞれ大腸炎を予防し、減少させたという事実に基づき、また、我々の本結果のいくつかにおいてマウスでのOMV作用がPSA濃度依存的であるという事実に基づく。
【0144】
<組織の病理学的分析>
マウスの結腸を中性の10%ホルマリン緩衝液(ScyTek Laboratories CAS#50-00-0)中で固定し、H & E 染色のためにパシフィックパソロジー(Pacific Pathology)によって処理した。各結腸部位の大腸炎スコアを病理学者(Dr. Gregory Lawson, David Geffen School of Medicine, UCLA, ロサンゼルス)によって盲検方式により評価した。組織構造画像を20倍の倍率で光学顕微鏡(Zeiss)を用いて取得した。
【0145】
<定量リアルタイムPCR>
Trizol試薬(Invitrogen #15596-018)を用いてマウス組織から、又は、RNeasy ミニキット(Qiagen #74104)を用いて精製細胞からRNAを収集した。iSCRIPT cDNA 合成キット(BioRad #170-8890)をcDNAの変換のために用い、IQ SYBR Green supermix (BioRad #172-8882)をリアルタイムPCRのために用いた。本試験において用いたプライマーは、TNF (F- 5'ACG GCA TGG ATC TCA AAG AC 3' (配列番号1)); (R- 5' GTG GGT GAG GAG CAC GTA GT 3') (配列番号2); IL-17 (F- 5' TTA AGG TTC TCT CCT CTG AA 3'(配列番号3)); (R- 5' TAG GGA GCT AAA TTA TCC AA 3') (配列番号4); IL- 10 (F- 5' GGT TGC CAA GCC TTA TCG GA 3'(配列番号5)); (R- 5' ACC TGC TCC ACT GCT TGC T 3') (配列番号6); Foxp3 (F- 5' GCA ATA GTT CCT TCC CAG AGT TCT 3'(配列番号7));R- 5' GGA TGG CCC ATC GGA TAA G 3'(配列番号8);アクチン (F-5' TTC GTT GCC GGT CCA CA 3'(配列番号9); R-5' ACC AGC GCA GCG ATA TCG-3' (配列番号10)である。
【0146】
<蛍光顕微鏡法>
インビトロで分化したBMDCをLab-Tek IIの8ウェルチャンバースライド(Nunc #154534)に50,000細胞/ウェルとなるように播種した。FITCで標識したOMVを培養細胞に10μg/mlで添加した。2時間の培養後、細胞を4%PFA中で室温にて2時間固定処理した。PBSで5分間の洗浄を3回行った後、WGA(Invitrogen W849)のテトラメチルローダミン複合体の1μg/mlによって4℃で1時間染色処理した。そして、プロロングゴールド褪色防止剤(P36930)を、膜染色の後、十分に洗浄した細胞に塗布した。LSM 510顕微鏡、及び、油浸Plan- Neofluar 63x/1.25を用いて蛍光画像を取得した。
【0147】
<フローサイトメトリー法及び染色法>
OMV取得操作又は活性操作由来のBMDCを収集し、5%マウス血清中で氷温にて30分間ブロック処理した。ブロック処理の後、氷温にて30分間、抗CD11c-APC、抗-MHCII-FITC、又は、抗-CD86-PE (ebioscience社)で染色し、フローサイトメトリーの前に4℃にてFACS緩衝液(HBSS (Ca2+/Mg2+なし)、 1% FBS、2mM EDTA、10mM HEPES)で2回洗浄した。同様に、インビトロでのBMDC-T細胞共培養物由来の細胞をブロック処理し、回収の前にPMA/イオノマイシンを用いて4〜4.5時間再刺激したこと以外は、抗-CD4-APC/抗-CD25-PEを用いて同様に染色した。全てのフローサイトメトリーは、BD FACSCaliburを用いて行い、結果は、FlowJoを用いて解析した。
【0148】
<インビトロでのBMDC-T細胞の共培養>
骨髄を異なるマウス株から収集し、既に知られているように(Mazmanian, Liu, Tzianabos, and Kasper (2005) An Immunomodulatory Molecule of Symbiotic Bacteria Directs Maturation of the Host Immune System. Cell 122: 1 107-118)、20ng/ml GM-CSF (Miltenyi Biotec #9517571)の存在下にて8日間、インビトロで分化させた(細胞純度 > 90%)。CD4+ 脾臓のT細胞を、磁気ビーズ精製法(Miltenyi Biotec #130-090-860)によって単離した(細胞純度 > 95%)。OMVで標的化されたBMDCs(10μl/ml OMVs, 100,000細胞/ml, 12〜24時間)をHBSSで洗浄し、そして、抗-CD3を0.01μl/mlとなるように添加(0日、図3C、3D, 3E,3F、図4A)、2ng/mlTGFbを添加(0日、図3C、D及びF、図4A)、及び、5ng/ml II-2を添加(1日及び3日、全てインビトロDC-T細胞共培養法)した丸底の96ウェルプレート中でCD4+T細胞(1,000,000細胞/ml)とともに培養した。培養4日後、上清をELISA法(ebioscience #88- 7104-77)のために収集し、又は、細胞を染色若しくはフローサイトメトリーのために回収した。
【0149】
<インビトロでの抑制操作>
BMDC(WT- OMV又はAPSA-OMVで標識化)−T細胞共培養物から精製されたCD4+CD25+細胞をTreg(Miltenyi Biotec, #130-091-041)源として用いた。マイトマイシンC(Sigma M4278)で処理されたCD4欠失マウス脾臓をAPCs(100,000 細胞/ml)として用いた。マウス脾臓から直接的に精製されたCD4+CD25-T細胞を37℃にて10分間、CFSEで標的化し、続いて、PBSで最初の洗浄を行い、培地で2回目の洗浄を行い、キラー細胞(Teff)として直ちに使用した(500,000 細胞/ml)。この操作は、5μg/mlの抗-CD3(ebioscience #16-0031-86)を添加した、200μl容積の96ウェル丸底プレートにおいて行った。Teff:Treg比は、滴定され、細胞は、培養後2〜3日後にFACS分析のために収集された。
【0150】
<統計的解析>
スチューデントT検定及び一元ANOVAをそれぞれ一対比較及び2群以上の比較のために採用した。統計的な有意差を示す群を識別すべく、ANOVAによる群間の有意差を、ポストホックテストとしてのNewman-Keuls 検定を使用することにより解析した。全てのエラーバーは、SEM(誤差範囲)を示している。NS:有意差なし、* p<0.05; *** p<0.01; *** p<0.001。
【0151】
(試験例1)
免疫調製性莢膜多糖PSAをB. fragilisのOMVsへ活性的に入れる。
【0152】
B. fragilisのEDLに富んだ超薄膜切片を材料及び方法において記載したように調製し、透過型電子顕微鏡で撮影した。
【0153】
図1Aに示される結果は、細菌によってOMVsが豊富に産生され、細菌外膜から外方で出ていることを示している(図1A、より高い倍率)。先行技術においては、PSAの欠失によりB. fragilisの免疫調節能力がなくなること示されている(Mazmanian, Liu, Tzianabos, and Kasper (2005) An Immunomodulatory Molecule of Symbiotic Bacteria Directs Maturation of the Host Immune System. Cell 122: 1 107-118.)、(Mazmanian, Round, and Kasper (2008) A microbial symbiosis factor prevents intestinal inflammatory disease. Nature. 453 (7195) 620-625.)。PSA変異株(B. fragilisΔPSA)の電子顕微鏡写真は、OMV合成において欠損がないことを示し、また、産生されたOMVの大きさ、形状、存在量が、野生型細菌と区別できないことを示している(図1A及び図5)。具体的には、図1Aに示された結果は、細菌表面から小胞が活発に出ていることを示している。
【0154】
PSAがB. fragilisのOMVsと関連しているか否かを測定するために、野生型細菌及びΔPSA細菌由来の精製した小胞を、材料及び方法の段落で記載したように、イムノブロット解析に供した。
【0155】
図1Bに示した結果は、B. fragilisΔPSA由来のOMVsと異なり、野生型由来の小胞がPSAにとって免疫活性を示すことを表している。B. fragilisは、細菌表面を覆う少なくとも8種の異なる莢膜多糖を産生し、該多糖は、PSA, PSB, PSC, PSD, PSE, PSF, PSG, 及び PSHと称される。PSBは、小胞調製において検出される一方で、PSGは、存在しない。これは、包括される所定の多糖のOMVsへの選択性を示している(図1B)。従って、図1Bの結果は、PSAとPSBとは小胞と関連している一方で、PSGは、単に細菌表面に観察されるのみであることを示している。莢膜多糖の欠失変異体は、各抗血清への選択性を確実なものとする。
【0156】
イムノブロット解析による結果は、材料及び方法の段落で記載したように行った免疫金標識の試験によって裏付けられた。精製した小胞の免疫金標識の結果が図1Cに示されており、PSAが物理的にOMVsと関連し、野生型B. fragilis由来のOMVsの大部分がPSAによってポジティブに染まることをこの結果が裏付けている(図6)。PSAがないことによりOMVsの分子組成が変わらないことを検証すべく、プロテオーム解析が質量分析によって行われ、これにより、野生型細菌由来又はPSA-変異細菌由来の小胞の間のタンパク質組成において大きな量的又は質的な違いがないことがわかった(図7)。
【0157】
PSAは、繰り返し単位を有する不均一な高分子化合物である。全細胞抽出物から回収したクロマトグラフィーによるPSAのサイズ分離を実施し、全細胞から調製した莢膜多糖の抗PSAを用いたイムノブロット解析を行い、材料及び方法に示したようにOMVsを精製した。
【0158】
図1Dに示された関連する結果は、驚くべきことに、低分子量種、L-PSAのみがOMVsと関連していることを表し、PSAの小胞への特異的な取り込みを示す。具体的には、図1Dの結果は、低分子量PSA(L-PSA)のみが小胞に取り込まれ、これと異なり、高分子量(H-PSA)種は、細菌細胞外膜に付随して留まることを示している。
【0159】
上記の結果により、免疫調節性の莢膜多糖PSAは、B. fragilisのOMVs中へ活発に入る。
【0160】
(試験例2)
OMVsは、PSA濃度依存的に、実験的な大腸炎及び腸の炎症から動物を保護する。
【0161】
OMVsが疾患の臨床症状を改善することができるかどうかを調査するために、マウスをTNBS(2,4,6-トリニトロベンゼンスルホン酸)誘発性大腸炎の間、OMVsを用いた強制経口投与により処置した。
【0162】
図2Aに示す結果が示していることは、TNBSの直腸投与の後にコントロール動物が急速に体重を減少させた(図2A、TNBS+PBS)こと、媒体処理されたマウス(図2A、ETOH+PBS)と比べて回復しなかったことである。注目すべきは、OMVsが経口的に与えられたTNBSマウスは、特に、体重減少が予防された(図2A、TNBS+WT-OMV)。最も重要なことは、B. fragilisΔPSA由来のOMVsが投与されると、体重減少がTNBS動物と区別つかなくなり(図2A、TNBS+ΔPSA-OMV)、これは、消耗性疾患の予防にPSAが関与していることを証明している。
【0163】
胃への強制投与の後に結腸で無傷の小胞を検出する我々の試みは、宿主由来の小胞の観察によって結果が混乱するものとなり、既に報告したように(実験データ無し)、無菌(菌がない)マウスにおいても混乱するものとなった。
【0164】
結腸長さの減少は、TNBS大腸炎の特徴であるため、結腸長さの測定を、盲腸から直腸まで削除した直後に、操作されていない腸において行い、媒体処理群(EtOH)及びTNBS群(n=4、匹/群)の長さの定量化(グラフ)を行った。具体的には、測定は、死亡後(疾患誘発後4日)に行った。
【0165】
図2Bに示す結果は、PSA含有小胞で処置した動物における通常の腸の長さを示し、PSAがないOMVsで処置した動物におけるものではない(図2B)。
【0166】
実験的大腸炎の結果は、腸の構造における激しい病理的変化を引き起こした。従って、各処置群を代表するヘマトキシリン及びエオシン(H&E)染色された腸部位は、図2Cに示されるように提供された。図2Cの画像は、結腸組織の組織学的分析において、PSA含有小胞の経口投与により改善したTNBS処置動物において重大な疾患が観察されたことを示している。
【0167】
図2Cの結果は、クローン病で観察される病変に類似した腸を通して、局所性病変においてTNBS大腸炎が現れ盲検病理学者によって割り当てられた動物における大腸炎のスコアによって確認されたものである。定量的に疾患を評価すべく、臨床症状を標準のスコアシステム(Scheiffele及び Fuss. (2001) Induction of TNBS colitis in mice. Current Protocols in Immunology.15.19.1-15.19.14.)を使用して、盲検病理学者によって評価した。図2Dに示された結果は、TNBS及びΔPSA-OMVで処置された動物が全て深刻な影響を受けたものの、WT-OMVSが大幅にほとんどの動物の疾患を減少させた。野生型細菌由来のOMVsで処置した動物は、病理学上の重大な疾患がほとんどなく、病変が観察されたときは、その病変は、ΔPSA-OMVが与えられた動物と比較して小さく、ほとんど正常な組織構造を保持していた。
【0168】
上記の結果は、OMVsの疾患予防活性のためにPSAが必要であることを証明している。
【0169】
(試験例3)
OMVsを含有するPSAがTNFα/IL-17発現を抑制し、IL-10発現を高める。
【0170】
大腸炎に関連する標準的な炎症性及び抗炎症性サイトカインの産生を、試験例2に例示したように処置されたマウスにおいて測定した。具体的には、サイトカイン転写分析を、腸全体から、又は腸間膜リンパ節由来の精製されたCD4+T細胞から回収されたRNAのqRT-PCR法により行った。
【0171】
3つの独立した試験を代表する関連結果が、図2E(腸全体)及び図2F(腸間膜リンパ節由来の精製されたCD4 + T細胞)に報告されている。これらの結果は、炎症性生物標識/サイトカイン腫瘍壊死因子(TNF-α)及びIL-17Aの転写レベルが、TNBS処置動物で上昇するが、PSA濃度に依存して、OMV投与により減少することを示している(図2E)。病状からの保護と矛盾せず、OMVsは経口的にΔPSA-OMVが与えられた動物と比較して、抗炎症性生物標識/サイトカインIL-10レベルの生産増加を誘発した(図2F)。腸間膜リンパ節(MLNs)由来の精製されたCD4+T細胞によって産生されたサイトカイン解析は、PSAに応答して、IL-10が確かにT細胞によって生産されることを確実とした(図2F)。疾患に必要とされるTh17細胞の浸潤が、OMVsによって有意に削減し、強力な炎症性マーカーのTNF-αのレベルとなった(図2F)。我々は、B. fragilisのOMVsへPSAが入ることが、実験的大腸炎の病理学的および免疫学的症状から動物を保護すると結論付けている。
【0172】
(試験例4)
B. fragilis由来のOMVsを含むPSAが樹枝状細胞反応を含む
【0173】
樹枝状細胞(DCs)は、腸管内腔に突出し、腸内粒子を捕食し、その後、T細胞反応を開始するためにMLNsに移行する。確かに、動物に経口投与されたPSAは、MLNにおいてCD11c+DCsと関連している。従って、出願人は、PSAを含有するOMVsもDCsに取り込まれることができるかどうかを試験しようとした。
【0174】
サイトカラシンDを用いた細胞の処理が小胞の取り込みを阻害するため、アクチン濃度に依存して、骨髄由来DCsが急速にOMVSを内在化するという結果が図3Aに示されている(図3A及び図8)。細胞内における局在を共焦点顕微鏡により確認した(図9)。
【0175】
T細胞活性化マーカーのDCにおけるPSAを媒介した誘導をも調べた。図3Bに示す結果は、WT-OMVS及びΔPSA-OMVs両方の内在化に引き続き、T細胞活性化マーカー(MHCII、CD86)の発現が均等に上昇することを示している(図3Bおよび図10を参照)。MHC及び共刺激性分子の発現増加は、B. fragilis 由来のOMVsを含むPSAがT細胞応答に影響を与えることを示している。
【0176】
(試験例5)
OMVsを含有するPSAが、DCs IL-10によってCD4+T細胞におけるIL-10の発現を誘発する。
【0177】
試験例1〜3に例示した実験によって示された大腸炎におけるOMVs含有PSAの保護機能を考慮して、サプレッサーT細胞の応答の誘導におけるOMVsの生物学的作用を試験した。具体的には、大腸炎を阻害することが知られている様々な制御性T細胞(Treg)の集団として、Treg細胞の発達を促進するOMVsの能力を試験した。
【0178】
図3Cに示す結果が示していることは、WT-OMVSがインビトロでのDC-T細胞の共培養からのIL-10の発現を誘発する一方で、これらの条件下のみでは、IL-10がDCsから産生されないことである。増加が媒体制御において検出されたものの、B. fragilisΔPSAから精製された小胞は、WT-OMVSよりもIL-10を大幅に少なく誘導した。 DCsからのIL-10の産生は、CD4+ IL-10+T細胞の発達をインビボ及びインビトロで支えることが知られている。 従って、図3Cに示されているものと同様のELISA分析は、IL-10-/-動物から分化したDCsを含むように行われた。
【0179】
図3D(左側)に示した結果が示していることは、IL-10-/-DCsが野生型OMVsで処置されたときに、DC-T細胞の共培養におけるIL-10産生の大幅な減少が、DCsによるIL-10の発現を示唆し、パラクリン様式でCD4 + T細胞からIL-10を誘発することを必要とすることである。
【0180】
(試験例6)
OMVsを含むPSAは、DCsを直接的なFoxp3 Tregの発達及び/又は拡張へ仕向ける。
【0181】
微生物リガンドは、パターン認識受容体のいくつかのクラスによって感知され、PSAは、Th1サイトカイン産生を誘発すべく、トール様受容体2(TLR2)によって信号を送ることが示されている。一連の実験は、従って、TLR2が野生型OMVs(PSAを含む)によるIL-10の誘導のために必要とされるかどうかを試験するために実施され、最近の報告では、Treg機能及びIL-10発現がTLR2の影響を受けることが示されている。
【0182】
図3D(右側)における結果が示していることは、野生型のDCsと比較して、TLR2(TLR2-/-動物由来のDC)の不在が、OMVsに対応して、IL-10産生を完全に抑制するということである。両方のDCは、スーパー抗原(SEA)の刺激に対して同じように反応し、PSAセンシングにおける特定の欠陥を示し、TLR2-/-DCsによるT細胞活性の一般的な不足を示さなかった(図3D)。転写因子Foxp3を発現するCD4+CD25+T細胞は、重要なTregサブセットである。最近の研究で示されていることは、CD4 + CD25 + FOXP3 +TregsがIL-10を発現させ、TregsからのIL-10産生が腸の炎症を防ぐために必要であるということである。
【0183】
OMVsにおけるPSAによって誘導されるIL-10の源を測定すべく、CD4 + CD25 +T細胞及びCD4 + CD25-T細胞を、DCsとの共培養の後で精製し、IL-10及びFoxp3の発現をqRT-PCRによって測定した。
【0184】
図3Eに記載された結果が示していることは、特に、PSA-OMVがCD4 + CD25 + Treg集団において、IL-10の発現を大幅に誘発するが、CD4+ CD25-のT細胞からは誘発しないことである。 B. fragilisΔPSAから精製したOMVsは、T細胞集団からのIL-10産生を制御媒体と同じ程度にて、促進することができないということである。PSA依存的に、CD4+CD25+ T細胞において、OMVsによってFoxp3の発現も有意に増加した(図3E)。
【0185】
共培養は、図3C〜Eに示された実験と同様に設定されたが、Foxp3-GFPマウスからのCD4 +T細胞を使用した。 OMVで標的化されたDCで4日間培養後、FCを使ったGFP発現によって検出される抗CD4及びFoxp3で染色した。
【0186】
2つの独立した試験の代表的な結果が図3Fに示されている。
CD4 + T細胞におけるFoxp3の転写の増加と矛盾せず、CD4+ Foxp3 + T細胞の比率が、PSA-OMV処置でなく、WT-OMV処置に応じて増加した(図3F)。総称して、PSAを含むOMVsは、完全にインビトロな培養系において、直接的にTregの発達及び/又は拡張へとDCを仕向ける。
【0187】
(試験例7)
PSA含有OMVsは、IL-10が媒介するFoxp3 Treg抑制作用を誘発する。
【0188】
細胞療法としてTregsを使用することが、IBD、自己免疫、アレルギーのために提案されている。 OMVsで処置されたDCを用いた4日間の共培養の後に、CD4+T細胞サブセットによるIL-10発現を調べた。脾臓のCD4+ T細胞をIL-10-GFPマウスから精製し、共培養の後に抗CD4及び抗CD25で染色し、GFPの発現によりIL-10の発現を測定した。
【0189】
精製されたDCs及びT細胞の関連したOMV処置の図4Aにおける結果は、PSAがCD4 + CD25 + TregからIL-10の特異的な産生を促進することを示している。
【0190】
この知見に基づき、PSAの能力が調べられ、CD4 + CD25、培地(コントロール)、OMVs、ΔPSA-OMVsで処置したDCsとの共培養の後に、精製されたCD4 + CD25+ T細胞によるキラー細胞のインビトロ及びエクスビボでの抑制の抑制能を促進することが調べられた。 CD4 + CD25-キラー細胞(エフェクター細胞、Teff)が野生型マウスの脾臓から精製され、細胞内の色素CFSE(カルボキシスクシンイミジルエステル)で識別化され、Tregsとともに培養され、3日間抗CD3で刺激された。細胞増殖は、CFSE希釈のFCによって測定した。
【0191】
図4B及び4Cに示された結果は、ΔPSA-OMVSに反応するCD4 + CD25 + T細胞と比較して、WT-OMV処理したDCを用いた状況から回復したTregsが、有意に強化された抑制能を表示することを示している。
【0192】
従って、他に多数の微生物リガンド(LPS、リポタンパク質、ペプチドグリカンなど)を含むOMVs由来のPSAの特定の不在は、機能的なTregsを誘導するB. fragilis小胞の能力をなくす。
【0193】
(試験例8)
PSAは、Foxp3 Tregにおける様々な生物標識の組み合わせを誘発する。
【0194】
Foxp3-GFPマウスを、経口的に6日間、1日おきに精製したPSAで処置した。 MLNsが抽出され、CD4 + Foxp3 +T細胞、又はCD4+ Foxp3-T細胞が、±GFP発現(純度> 99%)に基づいて、FACSによって精製された。RNAを抽出し、q-PCRに用いた。
【0195】
図11に示す結果は、PSAが、IL-10、TGF-β、パーフォリン、及びグランザイムAなどの複数の抗炎症性遺伝子を誘導することと、TNFα及びIL17(特にIL17A)を阻害することとを連携させることを実証している。
【0196】
上記の結果は、B.フラジリス(B. fragilis)のプロバイオティクス活性の分子機構を提供し、制御性T細胞への免疫受容体伝達と関連する微生物リガンドのための影響力にある例を明示している。具体的には、上記の結果は、宿主細胞への細菌分子を標的とする外膜小胞(OMVs)、分泌構造PSAによって、PSAが宿主に送られることを示す。 PSA含有OMVSは、宿主免疫系の樹枝状細胞によって内在化される。 OMVSを取り込んだ後、PSAは、Foxp3及び抗炎症性サイトカインインターロイキン-10(IL-10)を発現する制御性T細胞(Treg)の分化を誘導するように、樹枝状細胞を仕向ける。 OMVSによるTregの発達は、樹枝状細胞によるトール様受容体2(TLR2)の発現とIL-10産生とを必要とする。驚くべきことに、PSA依存的に、精製されたOMVSは、強力な抑制活性を伴って機能性Tregのインビトロでの分化を誘導する。 PSAを含有するOMVsで動物を処理することは、実験的大腸炎を防ぎ、腸における炎症性サイトカイン反応を抑制する。これらの知見は、共生細菌が小胞分泌によって有益な微生物因子を提供すること、IBDのためのプロバイオティクス療法の伝達のための斬新な手法への設計されるプロセスを証明している。
【0197】
具体的には、上記の結果は、PSAを含有するOMVsによって誘発されたTregsが、機能的に抑制され、培養中のT細胞の活性を阻害することを示している。これは、微生物リガンドによるインビトロでのTreg発達の最初の証明であり、固有免疫受容体シグナルがTreg細胞を調節するという、広く推測された考えに対する原理証明を提供している。IBDのための現状の治療法は、無効であるか、又は重大な副作用を持っているため、プロバイオティクスは、免疫調節のための進化した斬新な機構を利用することによる有望な新しい治療選択に相当する。複数の組織において免疫反応が抑制されることを考慮すると、独創性に富んだ我々のPSAによるインビトロでのTregの発達は、自己免疫、喘息、アレルギーなどの多数の炎症性疾患に対する、新規細胞治療の興味深い可能性を示唆している。
【0198】
免疫調節を媒介する微生物によって作られる分子を同定すべく、細菌産物の画分が精製され、全細菌が使用されるときに同様な結果が得られる純粋な化合物を得るまで、同じ操作が上記のように行われる。また、上記の取り組みは、この活性を有するそれぞれのクローン菌株においてなくなった免疫調節分子を同定すべく、興味ある微生物の変異コレクションを選別するために使用することができる。
【0199】
我々の以前の研究では、PSAが単独で、マウスにおける大腸炎を治療及び予防することが示されている(Roundら2010)。従って、我々が得た今回の結果が示すことは、PSAを含む野生型OMVがマウスでの大腸炎を防ぐこと、及び、OMVを用いたこの効果が我々の提示したPSAに依存していると考えられることである、野生OMVは、同じTNBSマウスモデルにおける大腸炎の治療に有効であり、IBDを有するヒトに対して有益であり又は改善活性を有する。
【0200】
ここで注目すべきことは、炎症性疾患(IBDなど)の発症予測マーカーが知られていないものの、一度識別されたこれらの予測マーカーは、疾患の発症を防ぐために、上述したような物質/組成物/OMVsによって、疾患が進行するリスクのある物/人間が同様に処置されることを意味しているということである。
【0201】
別の実施形態においては、OMVs(PSAを含む)が、所定の酵素が発現しないように、又は所定の酵素の発現を減らすように改質され得る。凝集活性及び酵素活性(例えば、アルカリ性及び酸性のホスファターゼ、エステラーゼ、リパーゼ、ホスホヒドロラーゼ、グルコサミニダーゼなどの加水分解酵素)を、当業者に知られている分子又は物理的方法を用いて減らす。このような改質OMVsは、その後、炎症又は炎症性疾患を治療または予防するために使用され得る。
【0202】
上記の例は、当該技術分野に対して、本開示の小胞、システム、及び方法の実施形態を使用及び実施するための完全な開示と説明とを当業者を与えるために提供されており、その開示の範囲に関して限定することを意図していない。本開示を実施するために当業者によって明らかである上記様式の変更は、以下の特許請求の範囲の範囲内であることが意図されている。明細書に記載されている全ての特許公報及び刊行物は、本開示に関係する当業者の技術レベルを示すものである。本開示に記載された全ての参考文献は、各参考文献が個別に全体的に参考として援用されるときに、同じ程度で参照として援用される。
【0203】
技術背景、要約、詳細な説明、及び実施例において記載された各記述(特許公報、特許出願公報、学術論文、抄録、実験マニュアル、書籍、又はその他の開示を含む)の開示全体は、参照により本明細書に援用される。
【0204】
本開示は、特定の組成物又は生物システムに限定されるものでなく、当然のごとく、変えることができると理解すべきである。また、本明細書で使用する用語は、特定の実施形態のみを説明する目的のためのものあると理解されるべきであり、限定することを意図するものではない。本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用されるときに、単数形の“a”、“an”、“the”は、内容について別段の明確な指示がない限り、“複数”の対象を包含する。“複数”との用語は、内容について別段の明確な指示がない限り、2つ以上の対象を包含する。別段の規定がない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、関係する当業者によって一般的に理解されるような同じ意味を有している。
【0205】
本明細書に記載したものと類似した又は同等の任意の方法および材料が、適切な材料と方法の具体例を試験するために使用され得る。
【0206】
開示の多数の実施形態が記載されている。それにもかかわらず、種々の変更が、本発明の思想および範囲から逸脱することなく行うことができると理解されるべきである。従って、他の実施形態は、以下の特許請求の範囲の範囲内にある。
【0207】
本発明を好ましい実施形態に関連して説明してきたが、当業者が容易に理解できるように、本発明の原理および範囲から逸脱することなく改良及び変更を利用できると理解されたい。従って、このような変形例は、以下の特許請求の範囲内で実施され得る。
【0208】
<参考文献>
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