(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6027982
(24)【登録日】2016年10月21日
(45)【発行日】2016年11月16日
(54)【発明の名称】アーク炉
(51)【国際特許分類】
F27B 3/20 20060101AFI20161107BHJP
F27B 3/08 20060101ALI20161107BHJP
F27B 3/02 20060101ALI20161107BHJP
F27B 3/18 20060101ALI20161107BHJP
F27D 17/00 20060101ALI20161107BHJP
F27B 3/22 20060101ALI20161107BHJP
C21C 5/52 20060101ALI20161107BHJP
【FI】
F27B3/20
F27B3/08
F27B3/02
F27B3/18
F27D17/00 101G
F27B3/22
C21C5/52
【請求項の数】8
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-551680(P2013-551680)
(86)(22)【出願日】2012年12月21日
(86)【国際出願番号】JP2012083273
(87)【国際公開番号】WO2013099807
(87)【国際公開日】20130704
【審査請求日】2015年8月25日
(31)【優先権主張番号】特願2011-285772(P2011-285772)
(32)【優先日】2011年12月27日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】501120122
【氏名又は名称】スチールプランテック株式会社
(72)【発明者】
【氏名】青 範夫
【審査官】
田中 永一
(56)【参考文献】
【文献】
特開平08−136138(JP,A)
【文献】
特開昭57−142477(JP,A)
【文献】
特開平02−238290(JP,A)
【文献】
特開2012−037157(JP,A)
【文献】
特開2002−156186(JP,A)
【文献】
特開2000−292064(JP,A)
【文献】
特公昭43−017050(JP,B1)
【文献】
実開昭56−103737(JP,U)
【文献】
特開昭52−138007(JP,A)
【文献】
特開2002−168417(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27B 3/00 − 3/28
F27D 17/00
C21C 5/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アーク電極に通電して形成されたアークにより原料を溶解するアーク炉であって、
溶解される原料が装入される炉本体と、
炉本体の上部開口を塞ぐ炉蓋と、
前記炉蓋の上方から前記炉本体内に挿入され、通電することによりアークを形成して原料を溶解するアーク電極と、
前記炉本体内の排ガスを排出する排気口と
を備え、
前記炉蓋は、該炉蓋を外した状態で、前記炉本体内に原料が前記上部開口からバケットにより装入されるよう構成されており、
前記アーク電極は、前記炉本体の水平面において、アーク加熱の中心が前記炉本体の中心から側方へ偏心するように配置され、
前記排気口は、前記アーク電極の偏心方向とは反対側の前記炉本体の側壁であって、前記排気口の最下部の高さ位置が、前記アーク炉の設計上の湯面の最高位置である湯面設定位置から500mm〜1mの範囲となる位置に設けられており、前記原料を装入するためには用いられないものであり、
前記アーク電極によるアーク加熱により発生した排ガスが前記炉本体に装入された原料の間を通って前記排気口から排出されることを特徴とするアーク炉。
【請求項2】
前記排気口を複数備え、各排気口からの排気風量調節または排気口の切り替えを可能にすることを特徴とする請求項1に記載のアーク炉。
【請求項3】
前記炉本体は、前記炉蓋を装着した状態で準密閉構造を有していることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のアーク炉。
【請求項4】
前記アーク電極からのアークにより溶解して形成された溶湯にO2ガスを吹き込むランスをさらに備えることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のアーク炉。
【請求項5】
前記ランスまたは別のランスで炭材を吹き込むことを特徴とする請求項4に記載のアーク炉。
【請求項6】
前記炉本体の側壁に設けられ、前記炉本体内の原料を加熱するためのバーナーをさらに備えることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のアーク炉。
【請求項7】
前記炉本体の底部には、前記炉本体内で原料が溶解して形成された溶湯に、攪拌ガスを吹き込むためのガス吹き込み部材をさらに備えることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のアーク炉。
【請求項8】
原料を一回で全量装入し、追装することなく操業が行われることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のアーク炉の操業方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄スクラップ等をアークにより溶解するアーク炉に関する。
【背景技術】
【0002】
アーク炉(「電気炉」ともいう)は、主に固体金属原料を炉内に装入後、電極を挿入して通電し、固体金属原料をアークにより溶解する設備であり、典型的なアーク炉である製鋼用アーク炉の場合には、原料として鉄スクラップや還元鉄(DRI)およびそれを高温でブリケット化したホット・ブリケット・アイアン(HBI)、冷銑(型銑)等が用いられる。
【0003】
このようなアーク炉では、原料の溶解に多くの電力を消費する。しかし、アーク炉においては、投入電力および酸素吹込みバーナーなどによる全入熱のうち実際に溶解に使用されるのは65〜75%程度であり、15〜25%程度は排ガスの顕熱として排出されている。
【0004】
そのため、溶解中に炉から発生する排ガスでスクラップを予熱しながら溶解し、必要とする電力を極力少なくする方法が数多く提案されている。
【0005】
例えば、特許文献1には、アーク炉とは別個に予熱槽を設け、その中で原料を排ガスにより予熱した後アーク炉に装入する技術が開示されている。
【0006】
また、特許文献2には、アーク炉の炉体自体を予熱容器として用い、他のアーク炉から排出された排ガスを上方から導入し、炉体側部の複数の排気口から排出して原料を予熱し、その後その炉体によりアーク炉操業する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特公昭59−52359号公報
【特許文献2】特開昭59−122886号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1に開示された技術では、予熱槽という新たな設備を設ける必要があるためコストが高くなる他、排ガスを水冷ダクトにより予熱槽に導く必要があり、十分に排ガスの顕熱を利用ができないという問題点がある。また、原料には油等が付着しているため、これに排ガスを供給すると悪臭を含む白煙が発生し、作業環境上好ましくない。
【0009】
特許文献2の技術ではこのような問題点は生じないものの、アーク炉の炉体自体を予熱槽として用いると、原料を予熱している間はアーク炉操業を行えず効率が悪いという問題点がある。
【0010】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであって、既存の設備を大幅に変更することなく低コストで原料の予熱とアーク炉熔解を同時に行えるアーク炉を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明は、
第1の態様として、アーク電極に通電して形成されたアークにより原料を溶解するアーク炉であって、溶解される原料が装入される炉本体と、炉本体の上部開口を塞ぐ炉蓋と、前記炉蓋の上方から前記炉本体内に挿入され、通電することによりアークを形成して原料を溶解するアーク電極と、前記炉本体内の排ガスを排出する排気口とを備え、前記炉蓋は、該炉蓋を外した状態で、前記炉本体内に原料が前記上部開口からバケットにより装入されるよう構成されており、前記アーク電極は、前記炉本体の水平面において、アーク加熱の中心が前記炉本体の中心から側方へ偏心するように配置され、前記排気口は、前記アーク電極の偏心方向とは反対側の前記炉本体の側壁であって、
前記排気口の最下部の高さ位置が、前記アーク炉の設計上の湯面の最高位置である湯面設定位置から500mm〜1mの範囲となる位置に設けられており、
前記原料を装入するためには用いられないものであり、前記アーク電極によるアーク加熱により発生した排ガスが前記炉本体に装入された原料の間を通って前記排気口から排出されることを特徴とするアーク炉を提供する。
【0012】
本発明において、前記排気口を複数備え、各排気口からの排気風量調節または排気口の切り替えを可能にすることが好ましい。また、前記炉本体は、前記炉蓋を装着した状態で準密閉構造を有していることが好ましい。また、前記アーク電極からのアークにより溶解して形成された溶湯にO
2ガスを吹き込むランスをさらに備えることが好ましく、前記ランスまたは別のランスで炭材を吹き込むことが好ましい。さらに、前記炉本体の側壁に設けられ、前記炉本体内の原料を加熱するためのバーナーをさらに備えることが好ましい。さらにまた、前記炉本体の底部には、前記炉本体内で原料が溶解して形成された溶湯に、攪拌ガスを吹き込むためのガス吹き込み部材をさらに備えることが好ましい。
【0013】
また、
本発明は、第2の態様として、原料を一回で全量装入し、追装することなく操業が行われること
を特徴とする上記第1の態様のアーク炉の操業方法を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、アーク電極が、炉本体の水平面において、アーク加熱の中心が炉本体の中心から側方へ偏心するように配置されており、炉本体内の排気は、アーク電極の偏心方向とは反対側の炉本体の側壁であって、原料が存在する範囲の高さ位置に設けられた排気口から行われるため、アーク加熱やランスによるO
2ガスの供給、バーナー等により高温になった排ガスの熱が、溶解されていない原料に吸熱されて原料の予熱に寄与し、高温のガス流を有効利用して電力原単位を減少させることができる。また、従来のアーク炉に対してアーク電極の挿入位置と排気口の位置を変更するだけであるから、既存の設備を大幅に変更する必要はない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態に係るアーク炉を示す垂直断面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るアーク炉を示す水平断面図である。
【
図3A】本発明の効果を説明するための模式垂直断面図である。
【
図3B】本発明の効果を説明するための模式水平断面図である。
【
図4】本発明の他の実施形態に係るアーク炉を示す垂直断面図である。
【
図5】本発明のさらに他の実施形態に係るアーク炉を示す垂直断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は本発明の一実施形態に係るアーク炉を示す垂直断面図、
図2はその水平断面図である。このアーク炉は、交流式の製鋼用アーク炉として構成され、鉄スクラップ等の鉄系原料をアーク加熱して溶解するための炉本体1を備えている。炉本体1は、円筒状をなす水冷構造の胴部(炉殻)2と、耐火物で内張された底部3とを有している。熱ロスを少なくする観点からは、胴部2も耐火物で内張されていることが好ましい。
【0017】
炉本体1の上部の開口は炉蓋4で閉塞されるようになっている。炉蓋4が装着された状態で、炉蓋4の上方から3本のアーク電極5が炉本体1内の底部3近傍まで垂直に挿入されるようになっている。炉本体1は炉蓋4が装着された状態で、炉蓋4と胴部(炉殻)2の隙間や電極孔とアーク電極5との隙間以外を密閉して、できる限り外気侵入を防いだ準密閉構造となることが好ましい。また、熱ロスを少なくする観点から炉蓋4の内側が耐火物で覆われていることが好ましい。炉本体1へのスクラップ等の原料の装入は、炉蓋4およびアーク電極5を外した状態でバケットにより行われる。
【0018】
3本のアーク電極5は黒鉛からなり、アーク電極5に通電することによりその先端からアークを発生させて鉄スクラップ等の原料Sを溶解する。これらアーク電極5は、炉本体1の水平面において、それらによるアーク加熱の中心が炉本体1の中心から側方へ偏心するように配置されている。
【0019】
一方、アーク電極5の偏心方向とは反対側の炉本体1の側壁には、原料装入範囲の高さ位置に、排気口6が設けられている。排気口6は、炉本体1の周方向に沿って複数(図では3つの例を示す)設けられており、排気口6から排気ダクト7を経てファン8により、集塵設備(図示せず)に送られるようになっている。各排気口6の排気ダクト7には、ダンパー7aが設けられており、各排気口6からの排気風量調節または排気口6の切り替えが可能となっている。これにより、原料Sの予熱を調整することができる。また、炉本体1の底部にはアーク溶解後の溶湯を出湯する出湯口9が設けられている。
【0020】
炉本体1には、O
2ガスの供給および炭材の吹き込みを行うためのランス10が設けられている。なお、
図2ではランス10を2本描いているが、本数は限定されない。また、ランス10からO
2ガスと炭材を吹き込んでいるが、別々のランスから供給してもよい。
【0021】
また、炉本体1の側壁には、バーナー11が設けられている。バーナー11による燃焼熱により溶解の進捗が遅い領域における原料Sの溶解を促進させてアーク電極5の偏りによる原料Sの溶け残りを補うようになっている。なお、
図2ではバーナー11を2本描いているが、本数は限定されない。
【0022】
次に、このように構成されるアーク炉の操業について説明する。
最初に、炉蓋4を外した状態で、炉本体1内に原料Sをバケット(図示せず)により装入する。原料Sとしては、鉄スクラップや還元鉄(DRI)およびそれを高温でブリケット化したホット・ブリケット・アイアン(HBI)、冷銑(型銑)、自動車シュレッダダスト(ASR)等が用いられる。また、これら固体原料に加えて、原料の一部として別途溶銑を装入することもできる。
【0023】
次いで、炉蓋4を装着し、アーク電極5を炉本体内に挿入する。アーク電極5を炉蓋4に装着しておき、炉蓋4とアーク電極とを一体的に炉本体1に装着するようにしてもよい。
【0024】
この状態で、アーク電極5に通電してアーク12を形成し、原料Sを溶解する。このとき、アーク電極5は、炉本体1の水平面において、それらによるアーク加熱の中心が炉本体1の中心から側方へ偏心するように配置されおり、
図3A、
図3Bに示すように、最初に、その炉本体1の中心から側方へ偏心したアーク加熱の中心およびその近傍の領域Mにおいて原料Sがアーク12により溶解されて行くが、炉本体1内のアーク電極5と反対側の領域Nはアーク電極5から離れているため、領域Nに存在する原料Sは溶解されない。この状態で、炉本体1内の排気は、アーク電極5の偏心方向とは反対側の炉本体1の側壁の原料Sが存在する高さ位置に設けられた排気口6から行われるため、
図3A、
図3Bに示すように、アーク加熱により高温になった排ガス流Gが、溶解していない原料Sの隙間を通って排気口6から排気される。したがって、この高温の排ガス流Gの熱が原料Sに吸熱され、原料Sが予熱される。
【0025】
このアーク加熱の際には、ランス10によりO
2ガスを供給し、原料Sの溶解を補助する。溶解が進行し、炉内に溶湯Lが溜まってきたら、ランス10からスラグ中に補助熱源としての炭材をインジェクションしてスラグフォーミング操業に移行し、アーク電極5の先端をスラグ中に埋没させ、アーク12がスラグ内に形成されるようにする。この補助熱源としての炭材は供給された酸素と反応し、原料Sの溶解に寄与する。
【0026】
このようにしてアーク12による加熱およびアーク12により形成された溶湯Lの熱および高温のガス流Gによって原料Sが溶解して行く。このとき、炉本体1内のアーク電極5側と反対側の領域Nでは原料Sが高温の排ガスで予熱され、溶湯からの伝熱により溶解が進む。また全体の熱バランス上、溶け残りが生じやすい箇所には、バーナー11により原料Sを補助的に加熱することが好ましい。そして、全ての原料Sが溶解した時点で炉本体1を傾動させて出湯口9から溶湯を出湯する。
【0027】
本実施形態によれば、アーク電極5は、それらによるアーク加熱の中心が炉本体1の中心から偏心するように配置されており、炉本体1内の排気は、アーク電極5の偏心方向とは反対側の炉本体1の側壁であって、原料Sが存在する高さ位置に設けられた排気口6から行われるため、アーク加熱により高温になった排ガスの熱が、溶解されていない原料Sに吸熱されて原料Sの予熱に寄与し、高温のガス流を有効利用して電力原単位を減少させることができる。従来のアーク炉では、アーク電極による加熱の中心が炉本体の中心と一致するようにし、かつ排ガスは炉蓋に接続されたダクトを介して上方に排出されていたため、顕熱を有する高温の排ガスはそのまま炉本体の外部に排出されていたが、本実施形態では高温の排ガスの顕熱を原料Sの溶解が終わる溶解末期まで予熱に有効利用することができる。また、従来のアーク炉に対してアーク電極5の挿入位置と排気口6の位置を変更するだけであるから、既存の設備を大幅に変更する必要はない。
【0028】
本実施形態においては、上述したように、炉本体1は炉蓋4を装着した状態で準密閉構造となることが好ましい。これによりアーク電極5による溶解領域から排気口6に向かう流れを形成しやすくなる。このように準密閉構造とすることにより、溶解によって生じるガス成分、ランス10からの酸素ガスやバーナー11およびわずかな隙間から導入される空気の量と排気口6からの排気量がバランスする。
【0029】
また、排気口6の最下部の高さ位置は、溶湯Lの湯面に近いほうが好ましく、湯面設定位置から500mm〜1mの範囲が好ましい。このような位置に排気口6を設けることにより、高温の排ガスをより長く溶解末期まで原料S中に流すことができ、予熱効果を高めることができる。
【0030】
原料の予熱効果を最大限発揮するためには、通常のアーク炉において行われている原料の追装を行わずに一回で全量装入(一回装入)することが好ましい。そのためには、炉本体1の高さを通常のアーク炉よりも2〜4割高くし且つ底面積を大きくすることにより、炉本体1の容積を2倍程度にすることが好ましい。例えば70ton炉の場合、炉本体1の容積を140ton炉相当とする。つまり、従来の70ton炉の直径が5800mmφであったものを、7300mmφとする。
【0031】
また、予熱効果を高める観点からは、アーク電極5による加熱中心を炉本体の直径の20〜30%程度偏心させることが好ましい。ただし、炉壁保護の観点からは、アーク電極5と炉壁との間を従来の交流炉(複数回装入炉)と同程度に離すことが好ましい。
【0032】
ところで、一回装入を行うために炉本体1の高さを高くすると、アーク電極5の長さが必然的に長くなるため、原料装入の際に嵩密度の高い原料(1.0ton/m
3以上;以下高密度原料という)によってアーク電極5が折損する可能性がある。このようなアーク電極5の折損を防止するためには、
図4に示すように、炉本体1に隣接するように高密度原料S1を装入するための装入チャンバー20を設けることが好ましい。また、高密度原料は、比表面積が小さく、酸化されにくいため、図示のように、装入チャンバー20を炉本体1の側壁の排気口6が形成されている部分に設けることが好ましい。これにより排気口6から排出された排ガスにより高密度原料を酸化の懸念なく予熱することができる。この場合には、図示するように、炉内予熱後の排ガスを排気口6から装入チャンバー20へ排出するようにして装入チャンバー20内の高密度原料S1を予熱可能にし、装入チャンバー20の排気はその側部の排気口21から行うようにする。装入チャンバー20から炉本体1内への高密度原料S1の装入は、下部の排気口6を通じてプッシャー25を用いて行うようにすることができる。嵩密度の低い原料(1.0ton/m
3未満)の原料についてはアーク電極5を折損させる蓋然性が小さいため、炉本体1の上部開口からバケット装入すればよい。
【0033】
炉本体1内のアーク電極5側と反対側の原料Sの溶解を促進するために、
図5に示すように、炉底3に攪拌ガスを吹き込むためのガス吹き込みプラグ30を設けて溶湯Lをガスバブリングにより攪拌することが好ましい。
【0034】
実際に本実施形態に従ってアーク炉操業を行った結果、通常のアーク炉よりも電力原単位を75〜100kWh/t程度低減できることが確認された。具体的には、通常のアーク炉の電力原単位が350〜400kWh/tであるのに対し、本実施形態のアーク炉では250〜325kWh/t程度まで低減することができることが判明した。
【0035】
なお、本発明は上記実施形態に限定されることなく、種々の変形が可能である。例えば、原料Sの溶け残りが懸念されない場合には、バーナー11は設ける必要はない。
【0036】
また、上記実施形態では、交流式アーク炉を用いた例を示したが、直流式アーク炉であってもよい。直流式アーク炉の場合には、炉底電極を設けてアーク電極との間に電圧をかける方式であるため、アーク電極の本数は限定されず、少なくとも1本あればよい。
【0037】
さらに、上記実施形態では、製鋼用のアーク炉について説明したが、製鋼用に限らず、他の金属の溶解を行うものであってもよい。
【0038】
さらにまた、上記実施形態では、炭材をランスから吹き込んでいるが、炭材として塊コークスやASRを炉蓋4の装入口から装入してもよい。
【0039】
さらにまた、製鋼用アーク炉の場合には、アーク電極と同様に酸素ランスを挿入し、酸素吹錬を行ってもよい。その場合には、例えば、正方形の3つの頂点をなすようにアーク電極5を配置し、残りの一つの頂点に酸素ランスを挿入するようにすることができる。
【符号の説明】
【0040】
1;炉本体
2;胴部(炉殻)
3;底部
4;炉蓋
5;アーク電極
6;排気口
7;排気ダクト
7a;ダンパー
8;ファン
9;出湯口
10;ランス
11;バーナー
12;アーク
20;装入チャンバー
21;排気口
25;プッシャー
30;ガス吹き込みプラグ
L;溶湯
S;原料