(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、上記遊星歯車機構を備えた自動変速機の中で、遊星歯車機構の回転要素のひとつに対するブレーキとして機械式係合機構を設け、この機械式係合機構と組み合わされて変速段を形成する摩擦係合機構を設けた自動変速機がある。
【0006】
このような自動変速機では、上記「機械式係合機構」は、例えば、前進側で車速が所定値以下または後進側では常時係合状態となるように構成した場合、摩擦係合機構に対する元圧遮断機構がフェールしていた場合には、摩擦係合機構に対する作動油の供給が遮断されず、前進段が成立する場合がある。そこで、元圧遮断機構の動作確認を行うセンサを設けることが望ましいが、固有のセンサを設けることはコストアップの要因となる。
【0007】
そこで、本発明の目的は、コストアップを抑制しながら元圧遮断機構の動作確認を可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、
自動変速機の油圧制御装置であって、前記自動変速機は、複数の係合機構と、前記複数の係合機構の係合・開放の組合せに応じて所定の変速段を形成する複数の遊星歯車機構と、を備え、前記複数の係合機構は、前記遊星歯車機構の回転要素のひとつを該回転要素の回転方向に応じて前記自動変速機のケーシングに固定する機械式係合機構と、前記機械式係合機構と組み合わされて変速段を形成する摩擦係合機構と、を含
み、前記油圧制御装置は、前記摩擦係合機構に対する作動油の供給を不能とする第1の位置と、前記摩擦係合機構に対する作動油の供給を可能とする第2の位置と、に位置可能な弁体を備える遮断弁と、ライン圧を検出するライン圧検出手段と、を備え、前記遮断弁は、前記弁体が前記第1の位置にある時には、前記ライン圧検出手段にライン圧が供給され、前記弁体が前記第2の位置にある時には、前記ライン圧検出手段にライン圧が供給されないよう、油路を切り替
え、前記弁体を前記第1の位置にセットした後、前記ライン圧検出手段がライン圧を検出しない場合に前記遮断弁が故障していると判断する、ことを特徴とする油圧制御装置が提供される。
【0009】
この構成によれば、前記ライン圧検出手段を、ライン圧の検出と、前記遮断弁の動作確認とで兼用できる。したがって、コストアップを抑制しながら元圧遮断機構の動作確認が可能となる。
【0010】
また、本発明によれば、自動変速機の油圧制御装置であって、前記自動変速機は、複数の係合機構と、前記複数の係合機構の係合・開放の組合せに応じて所定の変速段を形成する複数の遊星歯車機構と、を備え、前記複数の係合機構は、前記遊星歯車機構の回転要素のひとつを該回転要素の回転方向に応じて前記自動変速機のケーシングに固定する機械式係合機構と、前記機械式係合機構と組み合わされて変速段を形成する摩擦係合機構と、を含み、前記油圧制御装置は、前記摩擦係合機構に対する作動油の供給を不能とする第1の位置と、前記摩擦係合機構に対する作動油の供給を可能とする第2の位置と、に位置可能な弁体を備える遮断弁と、ライン圧を検出するライン圧検出手段と、ライン圧を調圧する調圧弁と、ライン圧を変更するための制御油圧を、前記
遮断弁を介して前記調圧弁に供給するライン圧制御弁と、ライン圧を所定油圧に維持するために、前記
遮断弁を介して前記調圧弁にライン圧を供給するライン圧供給油路と、を備え、前記遮断弁は、前記弁体が前記第1の位置にある時には、前記ライン圧検出手段にライン圧が供給され、前記弁体が前記第2の位置にある時には、前記ライン圧検出手段にライン圧が供給されないよう、油路を切り替え、かつ、前記弁体が前記第2の位置にある時には、前記調圧弁に制御油圧が供給されて前記ライン圧供給油路からライン圧が供給されず、前記弁体が前記第1の位置にある時には、前記調圧弁に前記制御油圧が供給されずに前記ライン圧供給油路からライン圧が供給されるよう、油路を切り替える、ことを特徴とする油圧制御装置が提供される。
【0011】
この構成によれば、
前記ライン圧検出手段を、ライン圧の検出と、前記遮断弁の動作確認とで兼用できる。したがって、コストアップを抑制しながら元圧遮断機構の動作確認が可能となる。また、前記ライン圧制御弁によりライン圧を制御しつつ、前記ライン圧制御弁によるライン圧の制御が困難となった場合であっても、ライン圧を所定油圧に維持することができる。
【0012】
また、本発明に
よれば、
自動変速機の油圧制御装置であって、前記自動変速機は、複数の係合機構と、前記複数の係合機構の係合・開放の組合せに応じて所定の変速段を形成する複数の遊星歯車機構と、を備え、前記複数の係合機構は、前記遊星歯車機構の回転要素のひとつを該回転要素の回転方向に応じて前記自動変速機のケーシングに固定する機械式係合機構と、前記機械式係合機構と組み合わされて変速段を形成する摩擦係合機構と、を含み、前記油圧制御装置は、前記摩擦係合機構に対する作動油の供給を不能とする第1の位置と、前記摩擦係合機構に対する作動油の供給を可能とする第2の位置と、に位置可能な弁体を備える遮断弁と、ライン圧を検出するライン圧検出手段と、を備え、前記遮断弁は、前記弁体が前記第1の位置にある時には、前記ライン圧検出手段にライン圧が供給され、前記弁体が前記第2の位置にある時には、前記ライン圧検出手段にライン圧が供給されないよう、油路を切り替え、前記自動変速機は、非走行レンジである所定のレンジを備え、前記所定のレンジが選択された時には、前記弁体を前記第1の位置にセットし、その後に、前記ライン圧検出手段がライン圧を検出しない場合は前記遮断弁が故障していると判断
する、ことを特徴とする油圧制御装置が提供される。
【0013】
この構成によれば、
前記ライン圧検出手段を、ライン圧の検出と、前記遮断弁の動作確認とで兼用できる。したがって、コストアップを抑制しながら元圧遮断機構の動作確認が可能となる。また、前記ライン圧検出手段によって前記遮断弁が前記第1の位置にスティックする故障を検出できる。
【0014】
また、本発明においては、前記摩擦係合機構に対する作動油の供給と遮断とを切り替える係合制御弁と、前記摩擦係合機構に対する作動油の油圧を検出する作動油圧検出手段と、を更に備え、前記係合制御弁による前記摩擦係合機構に対する作動油の供給は、前記遮断弁を介して行われるように油路が設定され、前記係合制御弁が作動油の供給状態で、かつ、前記弁体が前記第2の位置にある場合に前記摩擦係合機構に作動油が供給され、前記係合制御弁を作動油の非供給状態とした場合に、前記作動油圧検出手段が作動油の油圧を検出した場合は前記係合制御弁が故障していると判断してもよい。
【0015】
この構成によれば、前記係合制御弁の故障を検出できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、コストアップを抑制しながら元圧遮断機構の動作確認が可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は本発明の一実施形態に係る自動変速機1のスケルトン図である。
図1を参照して、自動変速機1は、その変速機ケースを構成するケーシング12内に回転自在に軸支された入力軸10と、ケーシング12に支持された支持部材12aに、入力軸10と同軸回りに回転自在に支持された出力部材11と、を備える。
【0019】
入力軸10には、内燃機関や電動機といった駆動源(不図示)からの動力が入力され、該動力により入力軸10は回転する。入力軸10と駆動源との間には発進デバイスを設けることができる。発進デバイスを設けることで、変速ショックの緩和等を図ることができる。発進デバイスとしては、クラッチタイプの発進デバイス(単板クラッチや多板クラッチ等)や、流体継手タイプの発進デバイス(トルクコンバータ等)を挙げることができる。
【0020】
出力部材11は、入力軸10と同心の出力ギヤを備え、入力軸10の回転は以下に述べる変速機構により変速されて出力部材11に伝達される。出力部材11の回転は、例えば、不図示のカウンタ軸、差動歯車装置を介して駆動輪に伝達されることになる。
【0021】
自動変速機1は変速機構として、遊星歯車機構P1乃至P4と、係合機構C1〜C3、B1〜B3及びF1を備える。本実施形態の場合、遊星歯車機構P1乃至P4はいずれもシングルピニオン型の遊星歯車機構である。
【0022】
回転要素は合計で12個設けられている。遊星歯車機構P1乃至P4は、サンギヤS1乃至S4と、リングギヤR1乃至R4と、ピニオンギヤを支持するキャリアCr1乃至Cr4と、を回転要素として備え、入力軸10と同軸上に配設されている。
【0023】
後述する
図3の速度線図におけるギヤレシオに対応する間隔での並び順で順序付けを行うと、遊星歯車機構P1のサンギヤS1、キャリアCr1、リングギヤR1を、この順に、第1の回転要素、第2の回転要素、第3の回転要素、と呼ぶことができる。同様に、遊星歯車機構P2のリングギヤR2、キャリアCr2、サンギヤS2を、この順に、第4の回転要素、第5の回転要素、第6の回転要素、と呼ぶことができる。同様に、遊星歯車機構P3のサンギヤS3、キャリアCr3、リングギヤR3を、この順に、第7の回転要素、第8の回転要素、第9の回転要素、と呼ぶことができる。同様に、遊星歯車機構P4のリングギヤR4、キャリアCr4、サンギヤS4を、この順に、第10の回転要素、第11の回転要素、第12の回転要素、と呼ぶことができる。
【0024】
係合機構C1〜C3、B1〜B3及びF1は、遊星歯車機構P1乃至P4の所定の回転要素間、入力軸10と所定の回転要素との間、又は、所定の回転要素とケーシング12との間、のいずれかを解除可能に連結する。本実施形態の場合、係合機構C1〜C3はクラッチであり、係合機構B1〜B3及びF1はブレーキである。係合機構C1〜C3及びB1〜B3を係合状態(締結状態)と開放状態(解除状態)とで切り換えることで、また、係合機構F1の状態を切り替えることで、入力軸10から出力部材11への動力伝達経路が切り換えられ、複数の変速段が実現される。
【0025】
本実施形態の場合、係合機構C1〜C3及びB1〜B3は、いずれも摩擦式の油圧係合機構を想定している。摩擦式の油圧係合機構としては、乾式又は湿式の単板クラッチ、乾式又は湿式の多板クラッチ等が挙げられる。その駆動には電磁制御弁を用いる。
【0026】
係合機構F1は、所定の回転要素(ここではキャリアCr1、Cr2)の一方向の回転のみ規制する一方向回転許容状態と、その双方向の回転を規制する回転阻止状態と、その双方向の回転を許容する双方向回転許容状態と、に切り替え可能な機械式係合機構である。係合機構F1としては、例えば、公知のツーウェイクラッチを採用可能である。公知のツーウェイクラッチとしては、その電磁アクチュエータの制御により、一方向回転許容状態、回転阻止状態、及び、双方向回転許容状態に切り替えることが可能であり、一方向回転許容状態は更に、正方向の回転許容状態と逆方向の回転許容状態とに切り替え可能であるが、本実施形態では一方向回転許容状態は片側の回転方向の許容状態のみ利用する。状態の切り替えは電磁制御弁を用いた油圧制御による。
【0027】
次に、各構成間の連結関係について
図1を参照して説明する。
【0028】
遊星歯車機構P3のサンギヤS3は、入力軸10に連結されている。リングギヤR3は遊星歯車機構P2のサンギヤS2に連結されている。キャリアCr3は遊星歯車機構P1のリングギヤR1及び遊星歯車機構P4のキャリアCr4に連結されている。遊星歯車機構P2のキャリアCr2は遊星歯車機構P1のキャリアCr1に連結されている。リングギヤR2は出力部材11に連結されている。
【0029】
クラッチC1は入力軸10と遊星歯車機構P1のキャリアCr1(及びこれに連結されるキャリアCr2)とを連結及び連結解除する。クラッチC2は、遊星歯車機構P3のリングギヤR3と遊星歯車機構P4のサンギヤS4とを連結及び連結解除する。クラッチC3は入力軸10と遊星歯車機構P4のリングギヤR4とを連結及び連結解除する。
【0030】
ブレーキB1はケーシング12と遊星歯車機構P1のサンギヤS1とを連結及び連結解除する。ブレーキB2はケーシング12と遊星歯車機構P4のサンギヤS4とを連結及び連結解除する。ブレーキB3はケーシング12と遊星歯車機構P4のリングギヤR4とを連結及び連結解除する。
【0031】
ブレーキF1はケーシング12と遊星歯車機構P2のキャリアCr2(及びこれに連結されるキャリアCr1)とを連結及び連結解除する。連結解除の場合、ブレーキF1は双方向回転許容状態にある。連結の場合、ブレーキF1は一方向回転許容状態又は回転阻止状態にある。
【0032】
次に、
図2(A)は自動変速機1が備える係合機構の係合表(締結表)、
図2(B)は自動変速機1が備える遊星歯車機構のギヤレシオ、
図3は自動変速機1の速度線図である。
【0033】
図2(A)1の係合表の例において、「○」は係合状態(構成間を連結する状態)であることを示し、無印は開放状態であることを示す。ブレーキF1については、「○」は回転阻止状態であることを示し、「△」は一方向回転許容状態であることを示し、無印は双方向回転許容状態であることを示す。回転阻止状態及び一方向回転許容状態は係合状態と呼ぶことにする。「ギヤレシオ」は入力軸10−出力部材11間のギヤレシオを示す。
【0034】
自動変速機1では、各変速段において係合機構C1〜C3、B1〜B3及びF1のうちの3つを係合状態とすることで、前進10段、後進1段(RVS)の変速段を実現している。本実施形態の場合、ブレーキB1は、ブレーキF1(およびブレーキF2)と組み合わされて変速段(ここでは1速段)を形成する摩擦係合機構である。
【0035】
図3の速度線図は、入力軸10への入力に対する各要素の、各変速段における回転速度比を示している。縦軸は速度比を示し、「1」が入力軸10と同回転数であることを示し、「0」は停止状態であることを示す。横軸は遊星歯車機構P1〜P4の回転要素間のギアレシオに基づいている。λはキャリアCrとサンギヤSとのギヤレシオを示している。
【0036】
<制御装置>
図4は自動変速機1の制御装置100のブロック図である。制御装置100は、CPU等の処理部101と、RAM、ROM等の記憶部102と、外部デバイスと処理部101とをインターフェースするインターフェース部103と、を備える。
【0037】
処理部101は記憶部102に記憶されたプログラムを実行し、各種のセンサ110の検出結果に基づいて、各種のアクチュエータ120を制御する。各種アクチュエータ120の中には、後述する制御弁等が含まれる。
【0038】
各種のセンサ110には、自動変速機1やその駆動源に設けられる各種のセンサが含まれるが、後述する制御例との関係では、例えば、入力回転センサ111、出力回転センサ112、シフトポジションセンサ113、フットブレーキセンサ114、油圧センサ115が含まれる。入力回転センサ111は入力軸10の回転を検出するセンサである。出力回転センサ112は、出力部材11の回転を検出するセンサであり、検知対象は出力部材11自体であってもよいが、出力部材11の回転が伝達されるカウンタ軸等、他の部位でもよい。シフトポジションセンサ113は運転者が選択した変速段を検知する。フットブレーキセンサ114はブレーキペダルに対する運転者の操作の有無を検知する。油圧センサ115には、後述する油圧センサPS−D、油圧スイッチOIL−PR等が含まれる。
【0039】
<油圧システム>
図5は自動変速機1の油圧システムの一部を示し、特に、ブレーキB1への作動油をフェールセーフ目的で遮断する元圧遮断機構周辺(遮断弁CUT−V周辺)の油圧回路の構成を示す図である。
【0040】
ポンプPは(脈流状態の)作動油を供給するポンプであり、調圧弁M−REGはライン圧中の脈流成分を除去してライン圧を調圧する。制御弁LS−Aは、運転状態等に応じて、ライン圧を変更するための制御油圧を調圧弁M−REGに供給するライン圧制御弁であり、流量制御可能なノーマルクローズタイプの電磁弁である。制御油圧は、
遮断弁CUT−Vを介してライン圧調圧弁M―REGに供給される。なお、図中、ノーマルクローズタイプの制御弁はN/Cと、ノーマルオープンタイプの制御弁はN/Oと表記されている。
【0041】
遮断弁CUT−Vはポート間の連通状態を切り替える弁体SPを備える。弁体SPは、制御弁SH−Dによる作動油の供給、遮断とリターンスプリングとによって変位可能となっている。
【0042】
制御弁SH−Dは、ノーマルオープンタイプの電磁弁であり、OFF時に作動油を遮断弁CUT−Vに供給し、ON時に作動油の供給を遮断する。
図5では、制御弁SH−DがON時の状態を示し、遮断弁CUT−Vに対する作動油の供給が遮断されている。この時、弁体SPはリターンスプリングの付勢により同図に示す左側の位置(「作動位置」とも呼ぶ)に位置している。制御弁SHDをOFFにすると、遮断弁CUT−Vに対して作動油が供給され、弁体SPは不図示の右側の位置(「セット位置」とも呼ぶ)に変位する。
【0043】
弁体SPが「作動位置」にある場合、ポートP0とポートP1が連通状態となり、ポートP1とポートP2とは遮断状態となる。また、ポートP3とポートP4が連通状態となり、ポートP5とポートP6とは遮断状態となる。
図5中、実線矢印は弁体SPが「作動位置」にある場合の作動油の流れ方向を示している。
【0044】
弁体SPが「セット位置」にある場合、ポートP1とポートP2が連通状態となり、ポートP0とポートP1とは遮断状態となる。また、ポートP3とポートP4とは遮断状態となる。更に、ポートP5とポートP6とが連通状態となる。
図5中、破線矢印は弁体SPが「作動位置」にある場合の作動油の流れ方向を示している。
【0045】
ポートP0は作動油を排出するポートである。ポートP1はブレーキB1と連通している。ポートP2は制御弁LS−G及び油圧センサPS−Dと連通している。
【0046】
制御弁LS−Gは、ブレーキB1用の係合制御弁であって、遮断弁CUT−Vを介してブレーキB1に作動油を供給する流量制御可能な電磁弁であり、ON時に作動油を供給し、OFF時に作動油の供給を遮断する。制御弁LS−GがONの場合、油圧センサSR1とポートP2に作動油が供給される。制御弁LS−GがONで、かつ、弁体SPを「セット位置」に変位すると、ブレーキB1に作動油が供給されてブレーキB1を係合状態とすることができる。また、油圧センサPS−Dの検知結果からブレーキB1が係合状態にあるか否かを判定できる。弁体SPが「作動位置」に位置している場合は、制御弁LS−GをONにしてもブレーキB1に作動油が供給されず、ブレーキB1の作動油はポートP0から排出される。
【0047】
つまり、遮断弁CUT−Vは、制御弁LS−Gが異常によりON状態となったとしても、ブレーキB1に作動油が供給されないようにするためのフェールセーフとして機能させることができる。ブレーキB1は
図2(A)に示すように低速段で係合状態とされる。変速段がニュートラルレンジ(Nレンジ)やパーキングレンジ(Pレンジ)といった非走行レンジの場合、弁体SPは「作動位置」に位置させる。制御弁LSーGが異常によりON状態となったとしても、ブレーキB1が係合状態にならず、低速段の組み合わせが成立してしまって異常走行を生じる事態を回避できる。
【0048】
制御弁SH−A及び制御弁SH−Bは、ブレーキF1の状態を切り替える切替弁TWC−Vを駆動する電磁弁である。
【0049】
次に、弁体SPの位置と、調圧弁M−REG、油圧スイッチOIL−PR及び制御弁LS−Aとの関係について説明する。
【0050】
遮断弁CUT−VのポートP3は、油圧スイッチOIL−PR及び調圧弁M−REGの調圧ポートに油路OLを介して接続されている。ポートP4にはライン圧が入力される。ポートP5は調圧弁M−REGの調圧ポートに油路を介して接続され、ポートP6は制御弁LS−Aに油路を介して接続されている。
【0051】
弁体SPがセット位置にある場合、上述したとおり、ポートP3とポートP4とは遮断される。したがって、油圧スイッチOIL−PRにはライン圧が供給されず、ライン圧は検出されない。また、調圧弁M−REGの調圧ポートには油路OLを介するライン圧の供給はない。一方、ポートP5とポートP6とは連通する。したがって、調圧弁M−REGの調圧ポートには制御弁LS−Aから制御油圧が供給され、ライン圧が制御油圧にしたがった油圧に制御される。
【0052】
弁体SPが作動位置にある場合、上述したとおり、ポートP5とポートP6とは遮断される。したがって、調圧弁M−REGの調圧ポートには制御弁LS−Aからの制御油圧が供給されない。また、ポートP3とポートP4とは連通される。したがって、油圧スイッチOIL−PRにはライン圧が供給され、ライン圧が検出される。また、調圧弁M−REGの調圧ポートには油路OLを介してライン圧が供給され、ライン圧が所定油圧に維持される。ここでの所定油圧は、例えば、制御弁LS−Aで制御可能な最大油圧か、或いは、システムの最大油圧とし、弁体SPがセット位置にある場合よりも昇圧されることが好ましい。
【0053】
以上の構成によると、弁体SPをセット位置から作動位置に変位させる制御を行ったにもかかわらず、作動位置に変位しなかった場合には、油圧スイッチOIL−PRによってライン圧が検出されないことになる。したがって、弁体SPのスティックにより
遮断弁CUT−Vが故障していると判断することができる。油圧スイッチOIL−PRを、ライン圧の検出と、遮断弁CUT−Vの動作確認とで兼用でき、コストアップを抑制しながら元圧遮断機構の動作確認が可能となる。
【0054】
また、弁体SPが作動位置でスティックした場合、調圧弁M−REGの調圧ポートには油路OLを介してライン圧が供給され、ライン圧が所定油圧に維持される。この結果、最低限必要な動作が可能となり、例えば、ブレーキF1の状態を切り替える切替弁TWC−Vの動作等が行える。
【0055】
<制御例>
図6は、制御装置100の処理例を示すフローチャートである。この処理例は、Nレンジへのシフト要求があってから、走行レンジへのシフト要求があった場合に関連する処理例を示している。なお、前提として、弁体SPはセット位置にあり、ブレーキB1は係合状態にある場合を想定している。
【0056】
S2ではNレンジが要求されたか否かを判定する。該当する場合はS4へ進み、該当しない場合はS6へ進む。S4では制御弁LS−Gをオフにする。正常であれば、これによりブレーキB1が開放する。S6では油圧センサPS−D及び制御弁LS−Gの動作確認のため、油圧センサPS−Dの検出結果を取得する。S8ではS6で取得した検出結果に基づき、油圧センサPS−Dが所定の油圧(例えばブレーキB1を係合させる油圧)を検出したか否かを判定する。検出した場合は、制御弁LS−Gをオフにしたにも関わらず、オンの状態にある。したがって、S50へ進み油圧センサPS−D又は制御弁LS−Gが故障であると判断する。所定の油圧を検出しない場合はS10へ進む。
【0057】
S10では制御弁SH−Dにより弁体SPを作動位置に変位する。S12は、油圧スイッチOIL−PR、
遮断弁CUT−V及び制御弁SH−Dの動作確認のため、油圧スイッチOIL−PRの検出結果を取得する。S14ではS12で取得した検出結果に基づき、油圧スイッチOIL−PRが所定の油圧(例えばライン圧)を検出したか否かを判定する。検出した場合は、油圧スイッチOIL−PRが正常で弁体SPが作動位置に変位したことが確認されたことになり、S16へ進み、油圧スイッチOIL−PR、
遮断弁CUT−V及び制御弁SH−Dは正常であると判断する。検出しない場合は弁体SPがセット位置に位置したまま、或いは、油圧スイッチOIL−PRが油圧検知不能であるとみなす。したがって、S50へ進み、油圧スイッチOIL−PR、
遮断弁CUT−V又は制御弁SH−Dが故障であると判断する。
【0058】
S18ではNレンジにシフトすべく、各係合機構の制御弁を適宜駆動する。以上により、Nレンジへのシフトと、油圧回路系の故障判定が行えたことになる。
【0059】
次に、Nレンジから走行レンジへの切り替え時の処理に移る。S20では、走行レンジが要求されたか否かを判定する。該当する場合はS22へ進む。
【0060】
S22では、油圧スイッチOIL−PR、
遮断弁CUT−V及び制御弁SH−Dの動作確認のため、油圧スイッチOIL−PRの検出結果を取得する。S24ではS22で取得した検出結果に基づき、油圧スイッチOIL−PRが所定の油圧(例えばライン圧)を検出したか否かを判定する。検出した場合は、油圧スイッチOIL−PRが正常で弁体SPが作動位置に維持されていることが確認されたことになり、S26へ進み、油圧スイッチOIL−PR、
遮断弁CUT−V及び制御弁SH−Dは正常であると判断する。検出しない場合は油圧スイッチOIL−PRの故障か、弁体SPがセット位置に変位してしまっているとみなす。したがって、S50へ進み、油圧スイッチOIL−PR、
遮断弁CUT−V又は制御弁SH−Dが故障であると判断する。
【0061】
S28では、要求されている走行レンジを実現すべく、各係合機構の制御弁を適宜駆動する。このとき、弁体SPはセット位置に変位させる。S30では要求されている走行レンジへの切り替えが完了する。
【0062】
S32からS38は走行中に故障判断を行う処理である。S32では、現在の走行レンジがブレーキB1の係合が不要な走行レンジ(例えば6速から10速)か否かを判定する。該当する場合はS34へ進む。S34では弁体SPを作動位置に変位する。S36では油圧スイッチOIL−PR、
遮断弁CUT−V及び制御弁SH−Dの動作確認のため、油圧スイッチOIL−PRの検出結果を取得する。S38ではS36で取得した検出結果に基づき、油圧スイッチOIL−PRが所定の油圧(例えばライン圧)を検出したか否かを判定する。検出した場合は、油圧スイッチOIL−PRが正常で弁体SPが作動位置に維持されていることが確認されたことになり、S40へ進み、油圧スイッチOIL−PR、
遮断弁CUT−V及び制御弁SH−Dは正常であると判断する。検出しない場合は油圧スイッチOIL−PRの故障か、弁体SPがセット位置に変位してしまっているとみなす。したがって、S50へ進み、油圧スイッチOIL−PR、
遮断弁CUT−V又は制御弁SH−Dが故障であると判断する。
【0063】
S50で故障と判断した場合、S52へ進みNレンジへのシフトは禁止する。Nレンジが要求されている場合であっても、他のレンジを維持又は他のレンジへ変更し、ドライバに対して、故障の報知等を行う。
【0064】
以上により一単位の処理を終了する。なお、ここではNレンジに関する処理を例示したが、Pレンジなどの他の非走行レンジにも適用可能である。