(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係るカテーテル組立体について好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら説明する。
【0026】
図1は、本実施形態に係るカテーテル組立体10の全体構成を示す斜視図である。
図2は、カテーテル組立体10の一部省略縦断面図である。
【0027】
カテーテル組立体10は、
図1に示すように、外針として機能する管状のカテーテル12と、カテーテル12の基端側に接続されるカテーテルハブ14と、先端に鋭利な針先17を有しカテーテル12の内部に挿通可能な管状の内針16と、内針16の基端側に接続される内針ハブ18と、内針16の抜去時に内針16の針先17を覆うプロテクタ20とを備える。カテーテル組立体10は、概略、以下のように使用される。
【0028】
カテーテル組立体10は、ユーザ(医師や看護師等)により内針ハブ18が把持操作されて、その先端部が患者の血管に穿刺される。カテーテル組立体10は、使用前(患者への穿刺前)の初期状態では、カテーテル12に内針16が挿通された2重管構造となり、且つ内針16がカテーテル12の先端から所定長だけ突出している。以下では、カテーテル組立体10の初期状態のことを、「穿刺可能状態」ということもある。また、カテーテル組立体10の初期状態では、カテーテルハブ14の基端側と内針ハブ18の先端側とが、プロテクタ20を介して接続されている。
【0029】
カテーテル組立体10は、穿刺可能状態で、2重管構造を構成するカテーテル12及び内針16が共に患者の血管内に挿入される。患者への穿刺後、カテーテル12の位置を保持した状態で、内針ハブ18を基端方向に後退移動させることで、カテーテルハブ14からプロテクタ20を離脱させると、内針ハブ18に接続された内針16も一体的に引き抜かれ、カテーテル12及びカテーテルハブ14から離脱される。この結果、カテーテル組立体10のうちカテーテル12とカテーテルハブ14だけが患者側に留置された状態となる。
【0030】
カテーテル12から内針16を抜去する際、内針ハブ18に対してプロテクタ20が先端方向に伸長することで、内針16はプロテクタ20内に収容される。これにより、内針16の外部への露出が防止される。カテーテル12から内針16を引き抜いた後、カテーテルハブ14の基端側に図示しない輸液チューブのコネクタを接続することで、輸液チューブから患者への輸液剤(薬液)の供給が実施される。
【0031】
以下、このカテーテル組立体10の構成について具体的に説明する。
【0032】
穿刺可能状態におけるカテーテル組立体10は、カテーテル12と内針16の2重管構造、カテーテルハブ14、プロテクタ20及び内針ハブ18が組み合わされて一つの組立体を構成し、一体的に取扱い可能となっている。
【0033】
カテーテル組立体10における外針として構成されたカテーテル12は、所定の長さに形成された可撓性を有する細径の管状部材である。カテーテル12の内部には、内腔12aが軸線方向に延在して貫通形成される。この内腔12aの内径は、内針16を挿通可能な大きさに設定されている。
【0034】
カテーテル12の構成材料としては、樹脂材料、特に、軟質樹脂材料が好適である。この場合、例えば、ポリテトラフルオロエテレン(PTFE)、エチレン・テトラフルオロエテレン共重合体(ETFE)、ベルフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA)等のフッ素系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂又はこれらの混合物、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド、ポリエーテルナイロン樹脂、前記オレフィン系樹脂とエチレンー酢酸ビニル共重合体との混合物等が挙げられる。カテーテル12は、全部又は一部の内部を視認できるように、透明性を有する樹脂で構成されてもよい。
【0035】
カテーテル12の基端には、カテーテルハブ14が接続固定される。カテーテルハブ14は、先細りとなる筒状に形成される。カテーテルハブ14の先端部の内側には、かしめピン22が配置され、このかしめピン22(
図2参照)によって、カテーテルハブ14の先端部とカテーテル12の基端部とが液密に相互固定される。カテーテルハブ14の基端には、外方に突出し且つ周方向に延在するフランジ部24が設けられる。以下では、カテーテル12とカテーテルハブ14との結合体を「カテーテル部材26」という。
【0036】
カテーテル組立体10の使用に際し、カテーテルハブ14は、カテーテル12が血管に穿刺された状態で患者の皮膚上に露呈され、テープ等により皮膚上に貼り付けられて留置される。このようなカテーテルハブ14は、カテーテル12よりも硬質の材料によって構成されることが好ましい。カテーテルハブ14の構成材料は、特に限定されるものではないが、例えば、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリサルホン、ポリアリレート、メタクリレート−ブチレン−スチレン共重合体等の熱可塑性樹脂を好適に用いることができる。
【0037】
本実施形態において、カテーテルハブ14の内部には、止血弁28、シール部材30及びプラグ32が配設される。
【0038】
止血弁28は、その先端にスリットが形成された弁部29を有し、カテーテル12の血管への穿刺に伴ってカテーテル12の内腔を介してカテーテルハブ14内に流入した際に、カテーテルハブ14の基端側への血液の流入を阻止するものである。
【0039】
シール部材30は、気体の流通を許容し且つ液体の流通を遮断する材料(例えば、多孔質体)によって構成された環状の部材である。カテーテル12が血管に穿刺された際、カテーテル12を介してカテーテルハブ14内の先端側に血液が流入すると、カテーテルハブ14内の先端側に存在していた空気は、シール部材30を通過してカテーテルハブ14内の基端側へと排出される。この結果、カテーテルハブ14内の先端側は、液体(血液)で満たされるに至る。これにより、輸液剤への空気の混入が抑止される。
【0040】
プラグ32は、筒状に形成されており、カテーテルハブ14内で軸線方向に移動可能に配置される。
図2に示す初期位置(輸液チューブのコネクタが接続される前の位置)において、プラグ32の先端は、止血弁28の弁部29よりも基端側に位置する。カテーテルハブ14と輸液チューブのコネクタとの接続に際して当該コネクタによりプラグ32が先端方向に移動させられると、止血弁28に設けられた弁部29の弾性変形を伴って、当該プラグ32が止血弁28を貫通する。これにより、カテーテル部材26(カテーテルハブ14及びカテーテル12)を介して、輸液ラインから血管へと輸液を供給できる状態が形成される。
【0041】
内針16は、患者の皮膚を穿刺可能な剛性を有する管状部材である。内針16は、カテーテル12に比べて十分に長く形成され、カテーテル組立体10の穿刺可能状態(初期状態)において、その針先17がカテーテル12の先端開口から突出する。また、穿刺可能状態において、内針16は、その長手方向の途中部位がカテーテルハブ14の内部に挿通され、その基端側が内針ハブ18の内部で保持される。内針16の構成材料としては、例えば、ステンレス鋼、アルミニウム又はアルミニウム合金、チタン又はチタン合金のような金属材料が挙げられる。
【0042】
内針ハブ18は、カテーテル組立体10の基端側を構成するものである。内針ハブ18は、ユーザに把持される外殻を構成する中空状のハブ本体34と、ハブ本体34の基端側内部に嵌合される中空状の内針保持部材36とを備える。ハブ本体34は、所定の容積からなる中空部を有する細長状に形成された筒状部材であり、カテーテル組立体10の使用に際してユーザが把持して操作し易いように適度の大きさ(太さ、長さ)に形成される。ハブ本体34の先端寄りの箇所の内周部には、先端側が小径で基端側が大径となる段差34aが設けられる。
【0043】
内針保持部材36は、ハブ本体34の基端側に嵌合固定されて、内針16の基端部を固定保持している。この内針保持部材36は、先端側に向かって段階的に細径となる筒状に形成されている。最も細径な先端部は、内針16の基端側を保持(密着固定)する保持部36aとして構成され、最も大径な基端部は、ハブ本体34の内面に嵌合される係止部36bとして構成されている。
【0044】
係止部36bの内側には、フィルタ38が配置されている。フィルタ38は、シール部材30と同様に、液体を遮断し且つ気体を流通可能な部材からなる。このフィルタ38によって内針保持部材36の基端側が閉じられることにより、内針保持部材36の内部にフラッシュバックチャンバ40が形成される。フラッシュバックチャンバ40内には、内針16の基端部が突出している。このため、内針16及びカテーテル12を患者に穿刺すると、血液が内針16を介してフラッシュバックチャンバ40内に流入する。ユーザは、フラッシュバックチャンバ40内への血液の流入により、内針16及びカテーテル12の穿刺が正常になされたか否かを判断できる。
【0045】
プロテクタ20は、内針16をカテーテル12から抜去する際に、内針16を収容することにより内針16の針先17を覆うものである。
図2に示すように、プロテクタ20は、カテーテルハブ14の基端に解除可能に係合する内筒42と、内側に内筒42が配置され且つ内筒42に対して規制された範囲で軸線方向に相対変位可能な外筒62と、外筒62がその内側に挿入され外筒62に対して軸線方向にスライド可能な継管64とを有する。カテーテル12からの内針16の抜去操作に際して、プロテクタ20は、内針16の全長を覆うように伸長する(
図7参照)。
【0046】
図3Aは、
図2の部分拡大図であり、
図3Bは、
図3AにおけるIIIB−IIIB線に沿った一部省略縦断面図である。なお、
図3A及び
図3Bでは、内針ハブ18及び継管64の図示を省略している。
図4Aは、内筒42単体の斜視図であり、
図4Bは、組立途中の内筒42単体の斜視図である。内筒42は、カテーテル12からの内針16の引き抜きに伴って内針16の針先17を覆うものである。
【0047】
図3A〜
図4Aに示すように、内筒42は、中空状の内筒本体44と、この内筒本体44の外側に一体的に設けられたアーム46とを有する。内筒本体44は、シャッタ部材48を収容するシャッタ収容部50と、このシャッタ収容部50の先端側に突出して連設された先端筒部52と、シャッタ収容部50の基端側に突出して連接された基端筒部54とを有する。内筒本体44には、軸線方向に貫通するとともに、内針16が挿通可能な挿通孔55が設けられる。
【0048】
ここで、シャッタ収容部50に収容されるシャッタ部材48について説明する。
図3Bに示すように、シャッタ部材48は、板状部材をV字状に屈曲して形成した弾性部材であり、頂点を内筒42の先端側に向けた状態で、シャッタ収容部50内に形成された内部空間50aに配置される。内部空間50aは、内針16が挿通可能な挿通孔55の一部を構成する。
【0049】
カテーテル組立体10の初期状態において、内針16は内部空間50aを前後に貫通しており、この状態では、シャッタ部材48は、内針16の側面からの押圧により弾性圧縮変形されて、小さく閉じた状態とされる。シャッタ部材48の構成材料としては、例えば、Ni−Ti系合金のような擬弾性合金(超弾性合金を含む)、形状記憶合金、ステンレス鋼、コバルト系合金、金、白金のような貴金属、タングステン系合金、炭素系材料等が挙げられる。
【0050】
図3A及び
図3Bに示すように、先端筒部52は、円筒状であり、カテーテルハブ14と内筒42とが係合(接続)した状態で、カテーテルハブ14の基端に内嵌する。先端筒部52の中空部52aは、内針16が挿通可能な挿通孔55の一部を構成する。
【0051】
基端筒部54は、先端筒部52に比べて長尺な管状体である。基端筒部54の中空部54aは、内針16が挿通可能な挿通孔55の一部を構成する。先端筒部52の中空部52aと基端筒部54の中空部54aは、同一直線上に設けられ、且つ内部空間50aを介して連通している。
【0052】
図3A及び
図4Aに示すように、基端筒部54の外周部には、軸線方向に離間して設けられた第1突起部56及び第2突起部58が設けられる。本実施形態において、第1突起部56は、基端筒部54の外周部において、互いに反対側の箇所(180度位相がずれた箇所)に一対設けられている。同様に、第2突起部58は、基端筒部54の外周部において、互いに反対側の箇所に一対設けられている。第2突起部58の突出高さは、第1突起部56の突出高さよりも低い。
【0053】
図3A及び
図3Bに示すように、基端筒部54の先端寄りの箇所には、基端筒部54の内外を連通する側孔60が設けられる。また、
図3Aに示すように、基端筒部54内で側孔60に臨む箇所には、溝75が設けられる。
図2に示すように、内筒42には、挿通孔55(具体的には、基端筒部54に設けられた中空部54a)に臨むように配置され、外筒62に対して解除可能に係合するストッパ66が設けられる。
【0054】
ストッパ66は、内筒42の外側に配置された外筒62に係合可能な第1位置(
図3B参照)と、当該第1位置よりも内筒42の内方の位置であって外筒62との係合が解除され且つ挿通孔55内に進入する第2位置(
図6A参照)とに変位可能である。本実施形態において、ストッパ66は、側孔60内に配置され、ヒンジ部68を介して基端筒部54に一体的に形成される。ヒンジ部68は、ストッパ66と基端筒部54との間に介在する弾性変形可能な部分である。
【0055】
内針16の針先17がストッパ66よりも先端側に位置する状態では、ストッパ66は内針16によって外側に押圧され、外筒62に係合することで、外筒62が内筒42に対して後退することが阻止される。一方、内針16の針先17がストッパ66よりも基端側に移動すると、ストッパ66が内側方向に変位して外筒62との係合が解除されることで、外筒62が内筒42に対して後退移動可能となる。
【0056】
アーム46は、カテーテルハブ14の基端に外側から解除可能に係合するものであり、本実施形態では、シャッタ収容部50の左右側面に一対設けられる。具体的には、
図2、
図4A及び
図4Bに示すように、各アーム46は、シャッタ収容部50の左右側面から外側に突出した支持部69と、支持部69の外端に連設され内筒本体44の軸線方向に対して平行に延在するアーム基部70と、アーム基部70の先端側に連設された係合端部72とを有する。アーム基部70は、その基端が支持部69よりも基端方向に突出しているため、その分、軸線方向の長さを大きく取ることができる。係合端部72の先端内側には、カテーテルハブ14のフランジに係合可能な係合爪73が一体的に設けられる。
【0057】
図4Aに示すように、係合端部72は、何らの外力も作用しない自然状態では、先端方向に向かって外側に広がるように傾斜しており、係合端部72とアーム基部70との接続箇所が弾性変形することで、内筒本体44の軸線に対して垂直な方向に変位可能に構成される。このアーム46の動作については、内筒42と外筒62との関係の説明箇所において説明する。
【0058】
本実施形態において、内筒42は、単一の部材(
図8Aに示す内筒形成部品100)を長手方向の中間位置で半分に折り曲げて形成されたものである。すなわち、
図4Bに示すように、内筒42は、その軸線(内腔)を基準として一方の側部(図示例では上部)を構成する第1部位74と、他方の側部(図示例では下部)を構成する第2部位76により構成されたものであり、第1部位74と第2部位76の各々の基端がヒンジ部78により連結されてなる一体成形部品である。第1部位74と第2部位76とが所定の位置関係で重なり合うことにより第1部位74と第2部位76との間に挿通孔55が形成される。
【0059】
本実施形態では、第1部位74は、主として内筒42の上側を構成し、第2部位76は、主として内筒42の下側を構成し、上述した一対のアーム46は、第1部位74に一体的に設けられ、ストッパ66は、第2部位76に設けられる。なお、一対のアーム46は、下側の側部を構成する第2部位76に設けられてもよい。ストッパ66は、上側の側部を構成する第1部位74に設けられてもよい。一対の第1突起部56の一方は、第1部位74に設けられ、一対の第1突起部56の他方は、第2部位76に設けられる。一対の第2突起部58の一方は、第1部位74に設けられ、一対の第2突起部58の他方は、第2部位76に設けられる。
【0060】
図3A及び
図3Bに示すように、外筒62は、アーム46を収容可能なアーム収容部80と、このアーム収容部80の基端側から突出した筒状部82とを有する。ここで、
図5Aは、外筒62単体を先端上方から見た斜視図であり、
図5Bは、外筒62単体を基端上方から見た斜視図であり、
図5Cは、外筒62単体を基端下方から見た斜視図である。
【0061】
図5A〜
図5Cに示すように、アーム収容部80は、上部及び先端部が開口した箱状に形成されている。カテーテル組立体10の穿刺可能状態では、アーム収容部80の内部に、カテーテルハブ14の基端と内筒42の先端側(一対のアーム46及びシャッタ収容部50)が配置される。
図5Aに示すように、アーム収容部80の左右両側の内側面には、内筒42のアーム46を摺動可能に案内するガイド溝84が、外筒62の軸線方向に沿って形成される。各ガイド溝84は、アーム収容部80の先端側に開口する。
【0062】
図5Cに示すように、アーム収容部80の基端の上部及び下部には、外筒62の軸線方向に貫通する開口86が設けられる。外筒62の筒状部82には、アーム収容部80の内部と連通する内腔82aが、軸線方向に貫通形成される。筒状部82の先端寄りの箇所の上部及び下部には、筒状部82の内外を貫通する一対の長孔状のスリット90が、筒状部82の軸線方向に沿って設けられる。
【0063】
図5B及び
図5Cに示すように、外筒62の先端には、前記一対のスリット90に対応して、一対の係合部92が設けられる。一対の係合部92は、アーム収容部80の基端に設けられた開口86内に突出するように設けられる。係合部92は、内方からの押圧力が作用した際には、外側に弾性変形可能である。外筒62の基端の外側面には、外方に突出し且つ周方向に延在する外側フック94が設けられる。
【0064】
次に、上記のように構成された内筒42と外筒62との関係(接続状態)について説明する。
図2に示すように、内筒42の基端筒部54は、外筒62の筒状部82に挿入され、内筒42に設けられた第1突起部56及び第2突起部58は、外筒62に設けられた一対のスリット90に挿入される。カテーテル組立体10の穿刺可能状態(初期状態)では、ストッパ66は、内針16による外側方向への押圧作用下に下側のスリット90に挿入され、且つ、外筒62に設けられた係合部92に係合しているため、内筒42に対する外筒62の基端方向への変位が規制された状態となっている。内筒42に対する外筒62の先端方向の変位は、アーム収容部80の後壁とシャッタ収容部50の基端とが当接することにより、規制されている。また、この状態では、
図3Bに示すように、内筒42に設けられたアーム46は、外筒62のアーム収容部80内に位置するため、アーム収容部80の内壁によって、弾発力に抗してアーム46の拡開が阻止され、閉じた状態となっている。
【0065】
一方、内針16がストッパ66よりも基端側に移動することに伴ってストッパ66が内方に変位してストッパ66と係合部92との係合が解除されると、内筒42に対する外筒62の基端方向への変位が可能となる。アーム基部70は、その基端が支持部69よりも基端方向に突出していることにより軸線方向の長さを大きくとることができるため、ガイド溝84によるガイド作用と相俟って、内筒42と外筒62との相対移動をスムーズにすることができる。
【0066】
ここで、
図6Aは、カテーテルハブ14とプロテクタ20とが分離した状態を示す縦断面図であり、
図6Bは、
図6AのVIB−VIB線に沿った縦断面図である。
【0067】
図6Aに示すように、内筒42に対して外筒62が基端方向に変位すると、内筒42に設けられた第1突起部56が、外筒62に設けられた係合部92に当接することにより、内筒42に対する外筒62の基端方向への変位が規制される。また、この場合、
図6Bに示すように、アーム46の係合端部72が、アーム収容部80から先端方向に突出することで、アーム収容部80によるアーム46に対する拡開規制が解除される。この結果、弾性復元力によりアーム46が外側方向に変位する(拡開する)に至る。
【0068】
図2に示すように、継管64は、外筒62の筒状部82を収容可能な内腔64aを有し、外筒62に対し相対的に摺動自在に組み付けられている。継管64の先端寄りの内側面には、内方に突出し且つ周方向に延在する内側フック96が設けられる。内側フック96は、外筒62に設けられた外側フック94に係合可能である。継管64の基端部の外側面には、外方に突出し且つ周方向に延在する外側フック98が設けられる。外側フック98は、ハブ本体34の内周部に設けられた段差34aに係合可能である。
【0069】
上述した内針ハブ18及びプロテクタ20の各部材(ハブ本体34、内針保持部材36、内筒42、外筒62、継管64)を構成する材料は、特に限定されるものではなく、例えば、カテーテルハブ14の説明で挙げたものを適用することができる。この場合、全ての部材が同じ材料により成形されてもよく、部材毎に異なる材料により成形されてもよい。
【0070】
本実施形態に係るカテーテル組立体10は、基本的には以上のように構成されるものであり、以下、その作用及び効果について説明する。
【0071】
図2に示すように、カテーテル組立体10の初期状態(穿刺可能状態)において、内針16がカテーテル12に挿入されて針先17がカテーテル12の先端から所定長だけ突出し、内筒42の先端筒部52はカテーテルハブ14の基端に挿入され、外筒62は内筒42に対して可動範囲内で最も先端側に移動している。また、
図3Bに示すように、内筒42に設けられた一対のアーム46は外筒62のアーム収容部80内に位置することにより閉じた状態である。閉じた一対のアーム46はカテーテルハブ14のフランジ部24に係合することにより、カテーテルハブ14と、内筒42を含むプロテクタ20との分離が阻止されている。
【0072】
また、
図2に示すように、カテーテル組立体10の初期状態(穿刺可能状態)において、内針16の針先17はストッパ66よりも先端側に位置し、ストッパ66は内筒42の基端筒部54よりも外側に突出して外筒62の係合部92に係合することにより、外筒62が内筒42に対して基端方向に移動することが阻止されている。さらに、継管64は最大まで内針ハブ18内に挿入され、外筒62の筒状部82は最大まで継管64に挿入されている。この状態で、アーム収容部80は、内針ハブ18の先端側に挿入されている。なお、シャッタ部材48は、内針16によって内部空間50aの片側に寄るように弾性変形した状態で収容されている。
【0073】
カテーテル組立体10は、穿刺可能状態で、ユーザ(医師や看護師等)により内針ハブ18が把持操作されて、カテーテル12及び内針16が患者の血管に穿刺される。穿刺後、内針16、内針ハブ18及びプロテクタ20からなる結合体(以下、「内針ユニット21」という)をカテーテル部材26から離脱させるための離脱操作(内針16の抜去操作)が実施される。
【0074】
離脱操作では、カテーテル部材26の位置を保持した状態で、内針ハブ18を基端方向に後退移動させる。そうすると、内針ハブ18を構成する内針保持部材36に保持されている内針16がカテーテル12に対して後退移動を開始する。一方、内針16を所定量後退移動させるまでは、プロテクタ20は、カテーテル部材26に対して変位しない状態(移動停止状態)となっている。
【0075】
内針ハブ18を所定量後退移動させると、ハブ本体34の先端側に設けられた段差34a(
図2参照)が継管64の基端側の外側フック98に係合するため、ハブ本体34の後退移動に伴って継管64も後退移動する。ハブ本体34がさらに後退移動すると、継管64の先端側の内側フック96が、筒状部82の基端側の外側フック94に係合する。この状態では、外筒62、継管64及び内針ハブ18が最大まで伸長した状態となっている。また、この状態では、内針ハブ18が継管64に対して後退移動するとともに、継管64が外筒62に対して後退移動することによりプロテクタ20が伸長しているため、
図7に示すように、内針16は、全長にわたって、内針ハブ18及びプロテクタ20によって覆われる。
【0076】
一方、内針ハブ18がカテーテル部材26に対して後退移動する過程において、内針16も内筒42に対して後退移動する。その際、内針16の針先17(
図2参照)が、内筒42内に配置されたシャッタ部材48よりも基端側に移動すると、内針16からの押圧によって拡張が規制されていたシャッタ部材48が、弾性復元力によって内部空間50a内で拡張する(
図6Bに示す状態のシャッタ部材48を参照)。この結果、内部空間50aにおける内針16の移動経路が遮断されるに至るため、内針16の針先17が内筒42の先端から再突出することが防止される。但し、この時点では、内筒42に設けられたアーム46は依然として閉じており、内筒42とカテーテルハブ14との係合は維持されている。
【0077】
内筒42内で内針16がさらに後退移動し、針先17が、内筒42に設けられたストッパ66よりも基端側に移動すると、ストッパ66が内針16からの押圧から解放されることで、ヒンジ部68の弾性復元力によって、ストッパ66が内筒42の内側方向に変位する(
図6Aに示す状態のストッパ66を参照)。ストッパ66が内筒42の内側方向に変位すると、ストッパ66と外筒62に設けられた係合部92との係合が解除されるため、内筒42に対する外筒62の基端方向への変位が可能となる。このため、外筒62、継管64及び内針ハブ18が軸線方向に相対変位して最大まで伸長した状態からさらに内針ハブ18を基端方向へ移動操作すると、外筒62が内筒42に対して基端方向に変位する。
【0078】
そして、この変位に伴い、
図6Bに示すように、アーム46の係合端部72が、アーム収容部80から先端方向に突出すると、アーム収容部80によるアーム46に対する拡開規制が解除されるため、弾性復元力によりアーム46が能動的に外側方向に変位する(拡開する)。これにより、内筒42に設けられたアーム46とカテーテルハブ14に設けられたフランジ部24との係合が解除されるため、内針ハブ18の基端方向への移動に伴って、内筒42がカテーテルハブ14から分離する。そうすると、内針ハブ18に接続された内針16もカテーテル12から引き抜かれ、内針ユニット21がカテーテル部材26から離脱されるに至る。この結果、内針ユニット21がカテーテル部材26から分離し、カテーテル組立体10のうちカテーテル部材26だけが患者側に留置された状態となる。
【0079】
内針ユニット21がカテーテル部材26から分離した状態では、内針16の全長は、プロテクタ20と内針ハブ18内に収容され、内針16の針先17が覆われた状態となっている。一方、カテーテル12から内針16を引き抜いた後、カテーテルハブ14の基端側に図示しない輸液チューブのコネクタを接続することで、輸液チューブから患者への輸液剤(薬液)の供給が実施される。
【0080】
本実施形態に係るカテーテル組立体10によれば、内針16の抜去操作に際して内針16がプロテクタ20内に収容された後に、内筒42のアーム46とカテーテルハブ14との係合が解除されるようになっているので、内針16が露出した状態でプロテクタ20とカテーテルハブ14とが分離することがない。このため、カテーテル組立体10の使用後は、プロテクタ20によって針先17を確実に保護することができ、カテーテル組立体10の取扱い時の安全性を高めることができる。
【0081】
また、本実施形態の場合、内筒42と外筒62との相対変位に伴ってアーム46が能動的に開くことによって、アーム46とカテーテルハブ14との係合が解除される構成であるため、内針ハブ18を基端方向に引っ張るだけの簡単な操作で、且つ小さい操作力で、内針16の抜去操作を行うことができる。
【0082】
本実施形態の場合、アーム46は、アーム収容部80内に配置された状態ではアーム収容部80によって外側方向への変位が規制される。一方、内筒42に対して外筒62が後退移動する際、アーム46がアーム収容部80から突出することに伴いアーム46が弾性復元力によって外側方向に変位する。この構成によれば、内針16の抜去前においてはアーム収容部80によってアーム46が外側方向に広がることが阻止されることで、カテーテルハブ14とプロテクタ20との係合が確実に維持される。また、内針16の抜去時においては、アーム46自体の弾性復元力を利用してアーム46が外側方向に広がるため、カテーテルハブ14とプロテクタ20との係合の解除が確実になされ、分離操作をスムーズに遂行することができる。
【0083】
本実施形態の場合、内針16の針先17がストッパ66よりも先端側に位置する状態では、ストッパ66は内針16に押圧され、外筒62に係合することで、前記外筒62が前記内筒42に対して後退することが阻止される。一方、内針16の針先17がストッパ66よりも基端側に移動したとき、ストッパ66が内側方向に変位して外筒62との係合が解除されることで、外筒62が内筒42に対して後退移動可能となる。この構成によれば、内針16の抜去に伴うストッパ66の作動により、プロテクタ20内に内針16の針先17が完全に収容された後に、外筒62が内筒42に対して後退移動可能となる。このため、針先17を露出させることなくカテーテルハブ14とプロテクタ20とを分離する操作をより一層確実に遂行することができる。
【0084】
次に、主として
図8A〜
図10Cを参照し、上述したカテーテル組立体10の組立方法を説明する。
図8Aに、折り曲げられることにより内筒42を形成する内筒形成部品100を示す。内筒形成部品100におけるシャッタ収容部50(
図2参照)に相当する箇所51に、シャッタ部材48を挿入し(
図8A参照)、その後、内筒形成部品100をヒンジ部78の位置で半分に折り曲げることにより、内筒42を形成する(
図8B参照)。
【0085】
一方、ハブ本体34の基端側から継管64を挿入し(
図8C参照)、次に、ハブ本体34の基端側から内針保持部材36を挿入し、ハブ本体34に内針保持部材36を固定する(
図8D参照)。次に、ハブ本体34の先端側から外筒62を挿入することにより、ハブ本体34内に配置された継管64に外筒62を挿入する(
図8E参照)。この場合、外筒62の基端が弾性変形を伴って縮径することにより、外筒62に設けられた外側フック94(
図2参照)が、継管64に設けられた内側フック96を乗り越えて、継管64内に外筒62が挿入される。
【0086】
次に、外筒62の先端側から内筒42を挿入し、内筒42を外筒62に対して所定位置に位置決めし、仮組み状態とする(
図8F参照)。仮組み状態での内筒42と外筒62との関係を
図10Aに示す。外筒62に内筒42を所定位置まで挿入する過程では、係合部92が外側に弾性変形することにより、第2突起部58が係合部92を乗り越えて係合部92よりも基端側まで移動することができる。
【0087】
図10Aに示すように、仮組み状態において、内筒42に設けられた第1突起部56と第2突起部58との間に、外筒62に設けられた係合部92が配置されることで、内筒42が外筒62に対して所定位置に位置決めされる。このように、本実施形態では、内筒42に設けられた第1突起部56及び第2突起部58と、外筒62に設けられた係合部92とにより、内筒42を外筒62に対して所定位置に位置決め可能な位置決め手段102が構成される。
【0088】
仮組み状態において、内筒42は外筒62に対して最大まで挿入されておらず、内筒42に設けられたアーム46の係合端部72は、外筒62のアーム収容部80の先端側から突出しているため、アーム基部70に対して係合端部72が外側方向に傾斜した状態、すなわちアーム46が開いた状態となっている。以下では、説明の便宜上、
図8F及び
図10Aに示す半製品を「セーフティ部材104」とよぶ。このように組み立てられたセーフティ部材104は、内針16及びカテーテル部材26に組み合わされてカテーテル組立体10として完成するまでに、輸送、保管等によって一定期間この状態が保持されることがある。
【0089】
次に、カテーテル部材26及び内針16と、セーフティ部材104との組立工程を説明する。カテーテル部材26に内針16を挿入するとともに、仮組み状態のセーフティ部材104に内針16を挿入する(
図9A参照)。
図10Bに示すように、内筒42に内針16を挿入すると、内針16によってストッパ66が押圧されることで、ストッパ66が外側方向に変位して基端筒部54から外方に突出した状態となる。
【0090】
このように、仮組み状態のセーフティ部材104に内針16を挿入したら、内針16の基端を内針保持部材36に固着する。この場合、紫外線硬化型接着剤を内針保持部材36の所定箇所に塗布し、塗布された紫外線硬化型接着剤に紫外線を照射して硬化させることにより、内針16の基端と内針保持部材36とを固着させてもよい。
【0091】
なお、本実施形態の場合、カテーテル部材26の内部に、止血弁28、シール部材30及びプラグ32(
図2等参照)が配置されるが、別の実施形態では、これらは無くてもよい。
【0092】
次に、内針保持部材36の基端部(係止部)の内側にフィルタ38を、例えば、溶着、接着等により固定する(
図9B参照)。
【0093】
次に、
図10Cに示すように、カテーテル部材26をセーフティ部材104に対して基端方向に押し込むことにより、内筒42を外筒62に対して基端方向に最大まで移動させる。この場合、セーフティ部材104に対するカテーテル部材26の基端方向への押し込みを開始する時点で、内筒42に設けられたアーム46は開いた状態であるため、カテーテルハブ14が内筒42を押圧する際、アーム46の先端がカテーテルハブ14の基端に突き当たることがない。このため、アーム46を座屈させることなくカテーテルハブ14と内筒42とを接続することができる。
【0094】
内筒42が外筒62に対して基端方向に移動する過程において、内筒42に設けられたアーム46は、アーム収容部80内に収容されることに伴い内側方向に変位し、閉じた状態となる。これにより、カテーテルハブ14の基端に設けられたフランジ部24とアーム46の係合端部72とが係合し、カテーテルハブ14と内筒42との分離が阻止された状態となる。
【0095】
また、内筒42が外筒62に対して基端方向に移動する過程において、内筒42に設けられたストッパ66は、外筒62に設けられた係合部92を乗り越える。この場合、係合部92が弾性変形して外側に変位することにより、ストッパ66は係合部92を乗り越えることができる。そして、ストッパ66は、スリット90に達した時点で、スリット90に入り込んで係合部92に係合する。これにより、内筒42と外筒62との軸線方向の相対移動が阻止された状態が形成される。
【0096】
以上の組立工程を経ることにより、
図1及び
図2に示す状態のカテーテル組立体10が完成する。
【0097】
以上説明したように、本実施形態では、内筒42及び外筒62に位置決め手段102が設けられるため、カテーテルハブ14と内筒42とを軸線方向に相対変位させてカテーテルハブ14と内筒42とを係合させる組立時において、内筒42に設けられたアーム46を開いた状態に保持しておくことで、アーム46とカテーテルハブ14とが干渉することがない。これにより、アーム46を座屈させることなくカテーテルハブ14と内筒42とを接続することができる。
【0098】
本実施形態の場合、位置決め手段102は、内筒42に設けられた第1突起部56及び第2突起部58と、外筒62に設けられた係合部92とにより構成される(
図10A参照)。この構成によれば、第1突起部56及び第2突起部58と係合部92との係合作用により、簡易な構成で、組立工程において内筒42と外筒62とを仮組み状態とするための位置決めを確実に行うことができる。
【0099】
本実施形態の場合、カテーテル組立体10の使用時において、内針16の抜去操作に伴い外筒62が内筒42に対して後退移動した際に、第1突起部56と係合部92とが当接することで、外筒62の内筒42に対するそれ以上の移動が制限される(
図6A参照)。このように、組立時にはアーム46を開いた状態に維持するための位置決め手段102を構成する第1突起部56が、製品完成後(使用時)には、内筒42に対する外筒62の後退移動範囲を規制する手段として機能する。このように第1突起部56に複数の機能を持たせたため、内筒42に設ける突起の数を少なくすることができる。
【0100】
本実施形態の場合、第2突起部58の突出高さは、第1突起部56の突出高さよりも低い。この構成によれば、内筒42と外筒62との仮組み状態を形成するために内筒42を外筒62に挿入する際に、内筒42に設けられた第2突起部58が外筒62に設けられた係合部92を容易に乗り越えることがでる。一方、第2突起部58は、組立時に内筒42と外筒62とが分離しない程度の係合力が得られれば十分であるため、仮組み状態を保持するのには支障がない。
【0101】
上記において、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改変が可能なことは言うまでもない。