(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
炭化水素生産時に、塩化ナトリウムの結晶化および析出のうちの少なくとも一方を抑制するために既存の地下坑井に注入される水の量を低減する方法であって、前記方法は、
処理水と混合されるべき混合位置に、貯蔵タンクからアスパラギン酸系ポリマーを加える工程と、
前記アスパラギン酸系ポリマーと前記処理水との混合物を前記混合位置から前記地下坑井にポンプ輸送する工程と、
炭化水素と随伴水とを含む地層流体を前記地下坑井からポンプ輸送する工程と、
随伴水のイオン濃度を監視する工程と、
塩化ナトリウムの結晶化および析出のうちの少なくとも一方を抑制する工程と、
を含む、方法。
前記アスパラギン酸系ポリマーは、前記アスパラギン酸系ポリマーのコポリマー、前記アスパラギン酸系ポリマーのターポリマー、アスパラギン酸系ポリマー誘導体、エンドキャップを有するアスパラギン酸系ポリマー、および前記アスパラギン酸系ポリマーの可溶塩のうちの1つ以上を含む、請求項1に記載の方法。
前記少なくとも1種の二塩基酸は、L−アスパラギン酸、無水マレイン酸、フマル酸、グルタミン酸、グルタル酸、アジピン酸、コハク酸、酒石酸、リンゴ酸、およびマレアミド酸のうちの少なくとも1つである、請求項4に記載の方法。
前記処理水は少なくとも1つの水源からの水を含み、前記少なくとも1つの水源は、表層水源、井戸水源、再生水源、排水源、生産水源および破砕流体源のうちの1つ以上を含む、請求項1に記載の方法。
前記アスパラギン酸系ポリマーは、前記処理水とともに、1パーツ・パー・ミリオン(ppm)〜1000ppmの濃度で、前記地下坑井に提供される、請求項12に記載の方法。
前記地下坑井に関連する層マトリックス内および前記地下坑井に関連する設備上のうちの少なくとも一方における塩化ナトリウムスケールを抑制することをさらに含む、請求項12に記載の方法。
請求項19に記載のシステムは制御装置をさらに備え、前記制御装置は、前記地下坑井に提供される処理水の流量を制御するため、および前記地下坑井に提供される処理水中におけるアスパラギン酸系ポリマーの濃度を制御するため、のうちの少なくとも一方のためのものである、システム。
前記制御装置は、前記地下坑井に提供される処理水の流量および前記アスパラギン酸系ポリマーの濃度のうちの少なくとも一方を調節することにより、水源から用いられる処理水の量を最小限にするように構成されている、請求項20に記載のシステム。
前記処理水と前記アスパラギン酸系ポリマーとの組み合わせは、前記ポンプに関連した表面上および前記地下坑井に関連する層マトリックス内のうちの少なくとも一方におけるスケール形成を最小限にする、請求項22に記載のシステム。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】炭化水素含有層の鹹水に起因するスケール形成を模擬するのに使用するための例示的な実験室的実験を示す図。
【
図2A】未処理の鹹水について
図1の実験室的実験を用いて得られた例示的な実験結果を示す図。
【
図2B】未処理の鹹水について
図1の実験室的実験を用いて得られた例示的な実験結果を示す図。
【
図2C】未処理の鹹水について
図1の実験室的実験を用いて得られた例示的な実験結果を示す図。
【
図2D】未処理の鹹水について
図1の実験室的実験を用いて得られた例示的な実験結果を示す図。
【
図3A】10ppmの割合のポリマーで処理した鹹水について
図1の実験室的実験を用いて得られた例示的な実験結果を示す図。
【
図3B】10ppmの割合のポリマーで処理した鹹水について
図1の実験室的実験を用いて得られた例示的な実験結果を示す図。
【
図3C】10ppmの割合のポリマーで処理した鹹水について
図1の実験室的実験を用いて得られた例示的な実験結果を示す図。
【
図3D】10ppmの割合のポリマーで処理した鹹水について
図1の実験室的実験を用いて得られた例示的な実験結果を示す図。
【
図4A】20ppmの割合のポリマーで処理した鹹水について
図1の実験室的実験を用いて得られた例示的な実験結果を示す図。
【
図4B】20ppmの割合のポリマーで処理した鹹水について
図1の実験室的実験を用いて得られた例示的な実験結果を示す図。
【
図4C】20ppmの割合のポリマーで処理した鹹水について
図1の実験室的実験を用いて得られた例示的な実験結果を示す図。
【
図4D】20ppmの割合のポリマーで処理した鹹水について
図1の実験室的実験を用いて得られた例示的な実験結果を示す図。
【
図5A】異なる期間にわたる、スケール抑制剤と脱イオン水との混合物を用いた一連のジャーテストの実験結果を示す図。
【
図5B】異なる期間にわたる、スケール抑制剤と脱イオン水との混合物を用いた一連のジャーテストの実験結果を示す図。
【
図5C】異なる期間にわたる、スケール抑制剤と脱イオン水との混合物を用いた一連のジャーテストの実験結果を示す図。
【
図5D】異なる期間にわたる、スケール抑制剤と脱イオン水との混合物を用いた一連のジャーテストの実験結果を示す図。
【
図6】特定の投与量レベルにおいて形成された析出物またはフロックの量についての定性的理解を判定する一連のジャーテストの実験結果を示す図。
【
図7】特定の濃度レベルのアスパラギン酸系ポリマーに対する一連の実験的ジャーテストからの実験結果を示す図。
【
図8】特定の濃度レベルのアスパラギン酸系ポリマーに対する一連の実験的ジャーテストからの実験結果を示す図。
【
図9】異なる鹹水調合物中において特定濃度レベルのアスパラギン酸系ポリマーについての一連の実験的ジャーテストからの実験結果を示す図。
【
図10】異なる鹹水調合物中において特定濃度レベルのアスパラギン酸系ポリマーについての一連の実験的ジャーテストからの実験結果を示す図。
【
図11】異なる鹹水調合物中において特定濃度レベルのアスパラギン酸系ポリマーについての一連の実験的ジャーテストからの実験結果を示す図。
【
図12】異なる鹹水調合物中において特定濃度レベルのアスパラギン酸系ポリマーについての一連の実験的ジャーテストからの実験結果を示す図。
【
図13】異なる分子量を有する異なるアスパラギン酸系ポリマーのスケール抑制を比較する一連のジャーテストの実験結果を示す図。
【
図14】いくつかのアスパラギン酸系ポリマーおよびいくつかの非アスパラギン酸系ポリマーのスケール抑制特性を比較する一連のジャーテストの実験結果を示す図。
【
図15A】水、鹹水、およびスケール抑制剤と鹹水との混合物のスケール抑制能力を比較する一連のジャーテストの実験結果を示す図。
【
図15B】水、鹹水、およびスケール抑制剤と鹹水との混合物のスケール抑制能力を比較する一連のジャーテストの実験結果を示す図。
【
図16A】水、鹹水、およびスケール抑制剤と鹹水との混合物のスケール抑制能力を比較する一連のジャーテストの実験結果を示す図。
【
図16B】水、鹹水、およびスケール抑制剤と鹹水との混合物のスケール抑制能力を比較する一連のジャーテストの実験結果を示す図。
【
図17】炭化水素採収井における岩塩スケール形成を抑制するための例示的システムを示す図。
【
図18】処理水の使用量および/またはアスパラギン酸系ポリマーの濃度レベルを制御するための
図17の例示的なシステムの例示的な制御装置を示す図。
【
図19】地下坑井および/または地下坑井に関連する設備におけるスケール形成を抑制するための例示的な方法を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、添付の図面に関連する以下の様々な実施形態の詳細な説明を参酌して、より完全に理解され得る。
本発明は様々な修正および代替形態を受け入れるが、それらのうちの特定のものを例として図面に示しており、詳細に説明する。しかしながら、本発明は本発明の態様を、記載する特定の実施形態に限定するものではないことを理解すべきである。むしろ、本発明は、本発明の要旨および範囲内にあるすべての変更物、均等物、および代替物を対象とするものとする。
【0010】
以下の記載は図面を参照しながら読むべきであり、同一の参照数字は、いくつかの図にわたって同一の要素を示している。詳細な説明および図面は、権利請求される本発明の例証となるいくつかの実施形態を示している。
【0011】
時として、油田の炭化水素には油田水が混じっている。例えば、ノースダコタの油田では、炭化水素はほぼ等量の鹹水が混じった層に存在し得る。炭化水素(例えば原油、天然ガス、など)が得られると、その炭化水素から鹹水が分離され、該鹹水は、例えば回収した鹹水を深い廃棄坑井に注入することによって、廃棄され得る。鹹水および他の油田水は、多くの場合、地理的位置に基づいて、無機物組成および/または無機物濃度が変化し得る。例えば、ノースダコタなどのいくつかの場所における鹹水の無機成分は、塩化物が優勢である。いくつかの例において、鹹水は高塩分を有し、岩塩とも呼ばれる約90%の塩化ナトリウム(NaCl)を含有し得る。高塩分鹹水は塩化カルシウム(CaCl
2)および塩化マグネシウム(MgCl
2)などの他の塩を含有し得る。一例において、1000ガロン(3.79m
3)(例えば約24バレル)の高塩分鹹水は1トン以上のNaClを含有し得る。おおよそのイオン濃度レベルを含む例示的な鹹水組成を以下で表1に示す。
【0012】
【表1】
タオ・チェンらによる「Understanding the Mechanisms of Halite Inhibition and Evaluation of Halite Scale Inhibitor by Static and Dynamic Tests」(油田化学に関するSPE国際シンポジウム(SPE International Symposium on Oilfield Chemistry)、2009年4月20〜22日、テキサス州ザ・ウッドランズ)は、石油およびガス生産中における岩塩スケール形成の抑制は、岩塩抑制剤の濃度レベルのために困難であることを述べている。さらに、岩塩抑制剤の実験室試験は実施および/または再現するのが困難であった。
【0013】
岩塩スケールは、鹹水の無機成分に起因して石油およびガス産業において見られる多くのスケール(例えば炭酸塩スケール、硫酸塩スケールなど)のうちの1つである。鹹水の温度が低下した場合、または他の類似した理由で、岩塩スケールはガスの発生から縮合によって生じ得る。例えば、北ドイツのガス貯蔵器では、ガスが層から回収された際に岩塩の析出が見られた。
【0014】
鹹水が層中に存在する場合、岩塩は坑井孔内および/または坑井孔付近に沈積し得る。岩塩スケールは、生産レートの低下を含めて、坑井孔の性能を低下させることが分かっている。一部の例では、岩塩スケールは岩石層の間隙を通る流路を閉塞することがあり、時に坑井を放棄させる。岩塩スケールはまた、地層流体が冷えると、かつ/または気化すると、パイプ、チューブ、ポンプ、圧縮機等のようなトップサイド設備上においても形成し得る。一つの事例では、岩塩スケール形成は、特定の坑井現場(well site)の水中ポンプおよびジェットポンプにおいて観察され、スケールを除去するのに必要とされる中断時間中に生産の低下を生じる。一部の例では、淡水処理および/または化学処理を用いることにより岩塩スケールを制御する試みがなされてきた。酸性ベースの処理(acidic based treatments)のような化学処理は、限られた効果をもたらすのみであり、かつ/または環境に優しい製品を使用していない。生産中に坑井孔に淡水を導入する淡水処理は、多くの場合、一定間隔で用いられる比較的大量の処理水を必要とする。処理水(例えば淡水、再生水、地層水、など)による希釈は、比較的高塩分の鹹水を有する岩石層において岩塩スケール形成の制御を助けるために今日用いられる最も一般的な方法であり得る。
【0015】
高鹹水の領域を含む層からの石油および/またはガスの生産において、塩化ナトリウム塩の形成は、前記鹹水を希釈するために非常に大量の淡水の使用を必要とし得る。この希釈は、層の岩石(formation rock)中の間隙、坑井孔、およびポンプ設備が閉塞するのを防止する試みにおいて、スケール形成を低減するのを助け得る。しかしながら、多くの場所において、淡水は限られた資源であり得、そのため、坑井孔における淡水の使用量の低減およびスケール形成の抑制の双方を行うと考えられる方法が望ましい。北海の油田および/またはガス田などの一部の例では、炭化水素含有層(hydrocarbon bearing formation)中の鹹水を希釈するために海水が用いられ得る。しかしながら、いずれの場合も、淡水中の無機成分(例えば重炭酸イオン(bicarbonate))または海水中の無機成分(例えば硫酸イオン(sulphates))が他のスケール(例えば炭酸カルシウム)の形成をもたらし、かつ/または設備の腐食を引き起こし得る。例示的な処理水源の例示的な無機成分を下記の表2に示す。
【0016】
【表2】
生分解性ポリマーであるポリアスパラギン酸などのアスパラギン酸系ポリマーの使用は、付着性スケールの形成および/または可溶性スケールの形成を低減することによって、処理水の使用量(例えば淡水、海水、再生水、地層水、再生水、など)を著しく低減し得ることが判明している。一部の例では、前記アスパラギン酸系ポリマーは非毒性および/または非有害であり得る。一部の例では、前記アスパラギン酸系ポリマーは広範囲の温度にわたって安定性であり得る。一部の例では、前記アスパラギン酸系ポリマーは生分解性であり得、また生分解性に対する1つ以上の国際規格の基準(例えばOECD301、302、306、など)を満たし得る。一例において、前記アスパラギン酸系ポリマーは、処理水とともに坑井にポンプ輸送されるとき、5パーツ・パー・ミリオン(parts per million(百万分率):ppm)〜約1000ppmの範囲内の濃度で与えられてもよく、処理水の使用量を約50〜約95パーセント低減し得る。別の例において、坑井孔に導入される処理水流中において約100ppmの濃度でアスパラギン酸系ポリマー(例えばポリアスパラギン酸(polyaspartic acid)、など)を与えることは、処理水の使用の有意な低減を可能にすることが判明した。
【0017】
炭化水素生産業(例えば石油およびガス産業)においてなど、様々な産業界において用いられる化学物質の使用および/または特性を規制するために、多くの環境条例が世界中で施行されている。例えば、北海地域の鉱区からの石油および/またはガス生産を規制するために環境基準が確立されている。北海油田内に用いられるいかなる化学物質もそれらの基準を満たさなければならない。同様に、米国では、一組以上の環境条例が国家および/または州政府機関によって規定され得る。炭化水素採収井における使用について化学物質を評価する場合、国内法令および地方州法の明確な理解が必要とされる。例えば、多くの地域で、フラクシング(fraccing、水圧破砕)業において用いられる化学物質の毒性は、政府機関、環境監視団体および社会全般の監視を受けている。基準がより厳格になる、かつ/またはより広く導入されるおそれがあるので、より環境に優しい製品の要求が必要とされている。
【0018】
例えば、北海地域に存在する環境法令および規制は、それらの生分解、生物蓄積性および/または毒性の試験結果に基づいた化学物質の環境プロファイルの評価を義務づけている。化学物質の生分解を測定するための最も知られた試験は、経済協力開発機構(Organization for Economic Cooperation and Development:OECD)によって制定された規格である。これらのOECD試験は、実験室環境において、模擬環境において、かつ/または現場に基づいた(field−based)試験環境において、純粋に実施され得る方法を含む。生分解は多数の要因によって影響され得、前記試験は目的の用途の環境(例えば淡水環境、海水環境、土壌環境、水沈積物環境、下水処理場環境、など)に基づいて異なる。海洋環境において用いられる製品の生分解は、多くの場合、OECD306試験法を用いて評価される。下記の表3は、目的の用途の環境および試験分類に関連するOECD生分解試験の概要を含む。
【0019】
【表3】
OECDによって規定された最も高い生分解等級を達成するためには、化学物質は、28日間で60%超の生分解を示さなければならない。生物蓄積試験は、水とオクタノールとの間における化学物質の分配係数を評価し、log P
OWとして表わされる。非生物蓄積性であると見なされるためには、化学物質のlog P
OWは3未満の値を有さなければならない。しかしながら、化学物質の分子が700を超える分子量を有する場合には、生物蓄積するとは考えられていない。様々な毒性試験が特定の化学物質に対するEC
50(例えば、麻痺、平衡の喪失、および/または他の亜致死的エンドポイント)およびLC
50(例えば死亡)閾値を評価している。北海地域では、様々な規格が、非毒性であると見なされるためにはEC
50およびLC
50は10mg/L超でなければならないと規定している。
【0020】
下記の表4は、特定のアスパラギン酸系ポリマー(例えばポリアスパルタート)の環境試験結果を要約している。
【0021】
【表4】
これらの試験結果に基づいて、アスパラギン酸系ポリマーは、その好ましい環境プロファイルにより、北海における使用を承認されるであろう。それゆえ、アスパラギン酸系ポリマーは、環境影響が懸念される場合の類似した用途における使用に適し得る。
【0022】
図1は、炭化水素含有層の鹹水に起因する岩塩スケール形成を模擬するために用いられ得る例示的な実験室的実験100を示している。例示的な実験室的実験は、アスパラギン酸系ポリマーなどのポリマーの有効性を試験することを目指している。一部の例において、前記アスパラギン酸系ポリマーは、前記アスパラギン酸系ポリマーのコポリマー、前記アスパラギン酸系ポリマーのターポリマー、アスパラギン酸系ポリマー誘導体、エンドキャップを有するアスパラギン酸系ポリマー、および前記アスパラギン酸系ポリマーの可溶塩のうちの1つ以上、例えば、加熱環境(例えば炭化水素含有層マトリックス)中かつ/または加熱表面(例えば、設備の表面)上において鹹水からの岩塩スケール形成を少なくとも抑制するポリアスパラギン酸など、を含み得る。実験中、処理していない鹹水110を、設備(例えばポンプ)、坑井孔、および/または別の表面(例えば岩石層の間隙)などの加熱された表面と接触する地層鹹水(formation brine)の坑内環境を模擬するように流した。鹹水110は、岩石層において遭遇する鹹水(brine water)を模擬するように調剤した。例えば、実験鹹水調合物は、ノースダコタなどの天然ガスおよび/または原油含有層中に見られる鹹水を模擬し得る。模擬鹹水110は、上記の表1に示したように、様々な濃度の1種以上の溶解した無機物を含有し得る。例えば、前記鹹水は、ナトリウムイオン(Na
+)、カルシウムイオン(Ca
2+)、マグネシウムイオン(Mg
2+)、硫化物イオン、亜硝酸イオン、臭化物イオン、硝酸イオン、塩化物イオン、炭酸イオン、および/またはスケール沈積を形成することができる他のイオンを含有し得る。
【0023】
図1の例示的な実験100において、鹹水110は、第1ビーカー130からポンプ120によって、鹹水110が浸漬ヒーター150の発熱体140上を流れて、
その後、鹹水180が第2ビーカー160に流れ込むように、ポンプ輸送(115)される。一例において、発熱体140は、岩石層中の間隙、坑井孔の側面などの坑井孔内、または前記坑井孔に関連したポンプ内または他の機械類の表面内に見られる伝熱面を模擬する石英浸漬ヒーターであり得る。一部の例において、浸漬ヒーター150は所定の温度範囲(例えば約110℃〜約250℃)内の熱を提供するように構成され得る。示した例では、表示装置155は、発熱体140の温度の可視表示を提供し得る。示した例では、浸漬ヒーター150の発熱体140は124℃の熱を生じるように構成されていた。
【0024】
一部の例において、所定量の鹹水110を第1ビーカー130から第2ビーカー160に所定時間にわたってポンプ輸送(115)した。これらの場合において、鹹水110は、第2ビーカー160に進入する前に、主に浸漬ヒーター150の発熱体140の表面145の上を流れるように構成された。一例において、実験の実施(experimental run)は、約250mLの鹹水110を約1.5時間にわたってポンプ輸送してもよく、鹹水110はほぼ一定の流量(例えば3.1ミリリットル/分)でポンプ輸送された。一部の例では、前記流量は一定期間にわたってほぼ連続的であり得る。他の場合において、前記流量は一定期間にわたって可変であり得る。例えば、いくつかの場合において、前記流量は、第1期間には第1所定流量となり、かつ第2期間には第2所定流量となるように規定され得る。一部の例では、前記所定流量のうちの1つは約0であり得る。各実験の実施の間に、鹹水110の一部は蒸発し得る。一部の例では、約75ミリリットル(mL)が蒸発に失われた。
【0025】
図2A〜
図2Dは、鹹水110などの未処理の鹹水について
図1の実験室的実験100を用いて得られた例示的な実験結果200を示している。これらの試験については、いかなるスケール抑制剤も使用することなく(例えば、アスパラギン酸系ポリマーなしで)、
図1に関して上記に概説した実験プロセスを鹹水110とともに用いた。一部の例では、スケール210(例えば、岩塩、炭酸カルシウムなど)が浸漬ヒーター150の発熱体140の表面145上に形成し、前記スケールは、
図2Aに示すように、付着性スケール220、可溶性スケールまたは非付着性スケールのうちの1つ以上を含み得る。一部の例では、スケール220は、
図2Bに示すように、第2ビーカー160の表面225上に形成され得る。一部の例では、スケール210は、第1ビーカー130からポンプ輸送(115)される鹹水によって発熱体140の表面145から洗い流されてもよい。そのような場合には、生じたスケール210は、第2ビーカー160の表面225に付着することもあるし、または第2ビーカー160内の溶液中に粒状物質として残存することもある。一例において、第2ビーカー160内の鹹水110は、
図2Bに示すように、鹹水110によって発熱体140から洗い流されたスケール210から生じた付着性スケール220または粒状物質のいずれかのために混濁することもある。
【0026】
上記で検討したように、形成されたスケール210,220は、鹹水110に含有される1種以上のイオンのスケールを含み得る。一部の例では、スケール210,220は、発熱体140および/または第2ビーカー160などの実験装置の1つ以上の表面145,225に付着し得る。
図2Cおよび
図2Dは、非付着性スケールおよび/または可溶性スケールを洗い流した後の第2ビーカー160および発熱体140を示している。流出水(例えば鹹水110)を第2ビーカー160から除去した後に、第2ビーカー160の底をプラスチック棒で引っ掻いて(230)、付着性スケール220の存在を示した。同様に、発熱体140を濯いで、発熱体140の表面145から可溶性スケールおよび/または非付着性スケールを除去した。濯いだ後、
図2Dは発熱体140の表面145上の付着性スケール220を示す。
【0027】
一部の例では、発熱体140の先端部147における温度計170は、発熱体140の端部147で液滴が形成する毎に即時鹹水温度を監視するために用いられ得る。液滴が発熱体140を流れ落ちるにつれ各液滴の鹹水温度は、23℃から第2ビーカー160に落ちる前には約63℃に上昇した。一部の例では、発熱体140上に形成されたスケール220に起因する熱伝導の低下により、液滴温度が低下することもある(例えば約45℃〜約55℃の範囲内)。鹹水110がスケール抑制剤で処理された場合には、各液滴の温度は、未処理の鹹水110で見られたのと同じほどには低下しなかった。
【0028】
図3A〜
図3Dは、約10ppmの濃度のアスパラギン酸系ポリマーで処理された鹹水110について、
図1の実験室的実験100を用いて得た例示的な実験結果300を示している。同様に、
図4A〜
図4Dは、約20ppmの濃度のアスパラギン酸系ポリマーで処理された鹹水110について、
図1の実験室的実験100を用いて得た例示的な実験結果400を示している。
図3A、図3B、図4Aおよび図4Bにおいて見られるように、ポリアスパラギン酸などのアスパラギン酸系ポリマーの添加は、発熱体140および/または第2ビーカー160の表面145,225上のスケール210(例えば付着性スケール220、非付着性スケール、および/または可溶性スケール)を低減し得る。前記アスパラギン酸系ポリマーの濃度レベルの増大は、
図5Aにおける加熱された鹹水110に曝露された表面145,225上の双方の付着性スケール220の低減、および/または
図5Bに示すような第2ビーカー160中の鹹水180の濁り度の低減をもたらす。
図3C、図3D、図4Cおよび図4Dに示すように、発熱体140の表面145および/または第2ビーカー160の表面225を濯いで非付着性スケールおよび/または可溶性スケールを除去した後、付着性スケール220は、アスパラギン酸系ポリマー添加の濃度に関連して(例えば、濃度を約10ppmから約20ppmに増大すると)低減される。鹹水110をアスパラギン酸系ポリマーなどのスケール抑制剤で処理すると、処理した鹹水110の付着性スケール220は、非加熱表面(例えば第2ビーカー160の表面225)に対して低減される。
【0029】
要約すると、炭化水素含有層に関連した表面上におけるスケール形成を抑制する例示的な方法は、水源からの処理水を所定流量で坑井孔内に提供することと、ポリアスパラギン酸系ポリマーなどのスケール抑制剤を前記処理水とともに坑井孔内に提供することとを含み、前記スケール抑制剤は前記処理水に関して所定濃度で供給される。一部の例では、前記スケール抑制剤の所定濃度は約5ppm〜1000ppmであり得る。一部の例では、前記スケール抑制剤の所定濃度は約100ppmであり得る。これらは単に濃度の例である。前記所定濃度のスケール抑制剤は、処理水の使用率(usage rate)および/または使用する処理水の量を最小限にするか、または他の場合には低減するように調剤され得る。一部の例では、スケール形成の抑制は、岩塩スケール形成の抑制、炭酸カルシウムスケール形成の抑制、または岩塩スケール形成の抑制および炭酸カルシウムスケール形成の抑制、を含む。
【0030】
前記スケール抑制剤は、例えば、ポリスクシンイミドまたはポリアスパラギン酸のようなアスパラギン酸系ポリマー、および/または、前記アスパラギン酸系ポリマーのコポリマー、前記アスパラギン酸系ポリマーのターポリマー、アスパラギン酸系ポリマー誘導体、エンドキャップを有するアスパラギン酸系ポリマー、および前記アスパラギン酸系ポリマーの可溶塩のうちの1種以上などの生分解性ポリマーを含有し得る。一部の例では、スケール形成の抑制は可溶性スケールおよび/または結晶の形成を抑制することを含み得る。一部の例では、前記処理水および/またはアスパラギン酸系ポリマーの1つ以上は連続的に提供され得る。一部の例では、前記処理水および/またはアスパラギン酸系ポリマーの1つ以上は、可変率で提供される。いくつかの場合において、前記処理水およびアスパラギン酸系ポリマーは単一溶液として提供される。他の場合には、前記処理水およびアスパラギン酸系ポリマーは別々に提供されてもよい。
【0031】
岩塩スケール形成に対するアスパラギン酸系ポリマーの有効性を評価する別の例示的な実験室的実験では、加熱した過飽和合成鹹水溶液を用いた。前記合成鹹水を冷却し、沈積した岩塩を測定することによって、アスパラギン酸系ポリマーによる岩塩形成の軽減を評価した。前記合成鹹水は、下記の表5に与えられたものとほぼ同様の水の化学的性質(water chemistry)を備えるように調製した。
【0032】
【表5】
塩が溶解するまで、合成鹹水溶液を80℃で保って加熱した。様々な濃度のアスパラギン酸系ポリマーのジャーテストを実施するために、合成鹹水溶液を多数のジャーに入れ、前記合成鹹水が約80℃を維持するように前記ジャーを加熱した。前記アスパラギン酸系ポリマー(例えばポリアスパルタート)を、脱イオン(DI)水中1%溶液として、約0ppm(例えば「ブランク」)〜約300ppm(例えば30ppm、40ppm、50ppm、75ppm、200ppmおよび300ppm)の濃度で前記合成鹹水試験液を収容した各ジャーに添加した。次に、その容器を4℃で24時間保ち、試験期間にわたって観察を行った。前記容器中で観測された生じた固形物を0.45ミクロンのフィルタを通してろ過し、イソプロピルアルコール(IPA)で洗浄して乾燥させ、どれくらいのスケールが様々な濃度のアスパラギン酸系ポリマーを投与した溶液に対して「ブランク」中に存在したかを評価した。結果を下記で表6に示す。
【0033】
【表6】
このように、この試験において岩塩スケール形成を最小にするためには、約75ppmのアスパラギン酸系ポリマーの投与量が有効であった。この試験は、スピカ(Spicka)らによる「Successful Deployment of a Green Multifunctional Scale Inhibitor, a Case Study From the Rockies」と題された、SPE153952、石油技術者協会(Society of Petroleum Engineer)、2012年の論文において、特に多機能スケール抑制剤が岩塩および他のスケールのスケール形成を抑制する能力のその評価について、さらに検討されており、前記文献は、参照により本願に余すところなく援用される。
【0034】
ジエチレントリアミン(diethylenetriamine:DETA)ホスホナート、リン酸エステルおよびビニルスルホン化コポリマー(vinyl sulfonated copolymers:Vs−Co)などの様々な他のスケール抑制剤の化学的性質は油田において有用であることが分かっており、長年にわたって広範囲に用いられてきた。これらのタイプの化学的性質は、1種以上の新たなスケール抑制剤(様々なアスパラギン酸系ポリマー)を評価する場合に比較として用いられ得る。アスパラギン酸系ポリマー(例えばポリアスパルタート)が、硫酸バリウムスケール(例えば、静止瓶試験を用いて)および炭酸カルシウムスケール(例えば、動的チューブブロック試験を用いて)を抑制する能力を比較するために、油田業界において一般的な試験を用いて、実験室試験を行った。結果として、アスパラギン酸系ポリマーは、下記で表7に示すように、炭酸カルシウムスケール形成および硫酸バリウムスケール形成を他の環境に優しくない化学物質と同様のレベルで抑制することが判明した。
【0035】
【表7】
鹹水(例えば高塩分鹹水)を含有する層マトリックスを有する炭化水素生産地下坑井における特定のアスパラギン酸系ポリマー(例えばポリアスパルタート)の有効性を評価するために、いくつかの現場試験を行った。第1試験では、限界採収井(marginally producing well)(例えば坑井1)はプロダクションパッカーを有さないロッドポンプ採油井(rod pumped well)であり、約25バレル(bbl)(3.98m
3)/日の石油、約3万立方フィート(MCF)(849.5m
3)/日のガス、および約150bbl(23.85m
3)/日の鹹水を生産していた。表1に記載した鹹水からの岩塩形成を制御するために、130bbl(20.67m
3)/日の処理水(例えば表2に記載した淡水)を、地層水(例えば鹹水)1bbl(0.16m
3)当たり約0.8bbl(0.13m
3)の淡水の比率を維持するように注入中に制御した。前記淡水と地層水との組み合わせは、環境制御型電子顕微鏡法(environmental scanning electron microscopy:ESEM)を用いた現場試験および実験室試験において示すように、地下坑井に関連する設備上において炭酸カルシウムスケール形成を生じた。
【0036】
岩塩形成を制御し、同時に淡水の使用を低減するために、アスパラギン酸系ポリマー(例えばポリアスパルタート)を、坑井から生産される水の総量(total water)に基づいて100ppmの濃度で地下坑井に与えた。一部の例では、アスパラギン酸系ポリマーの投与量は、坑井に注入される処理水(例えば淡水)の合計量(combined volume)と、溶液中のアスパラギン酸系ポリマーの量(volume)とに基づき得る。一部の例では、アスパラギン酸系ポリマーの投与量濃度は、処理水の合計量と、坑井から生産される水の総量との組み合わせに基づいてもよい。前記アスパラギン酸系ポリマーを淡水源に導入し、次いで、組み合わせた処理水およびアスパラギン酸系ポリマーをバックサイド処理によって地下坑井の前記層に注入することによって、前記アスパラギン酸系ポリマーを系に導入した。最初は、アスパラギン酸系ポリマーを含有する処理水を、1bbl(0.16m
3)の地層水に対して0.8bblの(0.13m
3)処理水の同じ比率で注入した。
【0037】
この現場試験中、前記処理を監視し、地下坑井に注入される抑制淡水(例えば処理水とアスパラギン酸系ポリマーとの組み合わせ)の量を、処理水の使用を最適化するまで、徐々に低減した。試験の間、試験中に起こり得たいかなる岩塩沈積も生産障害を引き起こさないことを保証するために、75bbl(11.92m
3)のまとまった淡水(a 75 bbl slug of fresh water)を2週間ごとにケーシングに流し込んだ。処理レジメンの安定化の後、抑制淡水処理を元の量(original volumes)の70%に低減した。地下坑井の監視は岩塩沈積がないことを示し、生産された地層水のESEM分析も、処理が開始する前に収集したフィルタのESEM画像と比較した場合に、炭酸カルシウムスケールが軽減されていたことを示した。
【0038】
6週間の淡水処理量の低減の後、抑制処理水の注入をさらに70%低減して、元の量の約50%に低減した。この間、坑井内では岩塩形成は観測されず、アスパラギン酸系ポリマーが岩塩形成を能動的に抑制していたことを示した。スケール抑制剤の不在下で淡水注入量を低減する先の試みの間には、地下坑井内、および地下坑井に関連する設備の表面上において、岩塩スケール形成および/または沈積が見られた。ESEMフィルタ解析はさらに、炭酸カルシウムスケールの継続的な好結果の軽減も同様に示した。しばらくしてアスパラギン酸系ポリマー処理の継続的な成功の後、抑制処理水の注入は、注入された初期の量の約25%までさらに低減され、このプログラムは現在のところ依然として成功裡に適用されている。
【0039】
処理プログラムの実施後、長期間にわたってスケールに関連する不具合は報告されなかった。表8に見られるように、地層流体の生産に変化はなく、抑制淡水の注入のみが減少した。この淡水処理における75%の減少は、水の輸送および廃棄のコストの低減により、経営者に対して有意な節約をもたらした。成功した処理の結果として、坑井所有者は、第2坑井を第2現地試験に用いることを要求した。表8は、アスパラギン酸系ポリマーによる処理プログラムが開始する前と、上述したような現場試験結果に基づいて処理プログラムが最適化された(例えば、淡水の使用の最小限化)後とにおける坑井の生産高の比較を示している。
【0040】
【表8】
第2坑井(坑井2)の現場試験において、地下坑井の底孔温度は約280°F(137.8℃)と比較してより高い生産レベルを有し、約900bbl(143.1m
3)/日の高塩分地層水(例えば表9の鹹水)、163bbl(25.91m
3)/日の石油、および219MCF/日のガスを生産していた。
【0041】
【表9】
坑井2は、当初はESPを完備していたが、化学的プログラムの開始の直前にジェットポンプに改装された。岩塩スケール形成を制御するために、地層水を125bbl(19.87m
3)/日の淡水(例えば表10の処理水)で希釈した。
【0042】
【表10】
坑井1で用いた処理プログラムと同様に、アスパラギン酸系ポリマーを、坑井2に注入する前に、総随伴水量(total produced water volume)に基づいて、100ppmの濃度で、処理水に導入した。抑制淡水(例えば処理水およびアスパラギン酸系ポリマーの組み合わせ)を坑井の底の地層水と混じり合うように動力油ラインを介して与えた。処理プログラムの試行を開始する前に、高い温度および非互換性水の混合により、前記坑井内において炭酸カルシウムスケール形成が生じ、ポンプを点検したときに、ジェットポンプ上に沈積物として観測された。炭酸カルシウムスケールおよび炭酸カルシウムスケールもESEMによって検出された。
【0043】
化学処理を確立し、用いる淡水の量を初期量の70%に低減した後、ESEM分析は、岩塩スケールの軽減とともに、炭酸カルシウムスケールが軽減されていることを示した。前記アスパラギン酸系ポリマーの性能は、注入した処理水の量のさらなる低減を可能にし、経営者が淡水消費量を低減するという地方自治体の要請を満たすことを可能にした。坑井2における現在の最適化された処理は、随伴水量に基づいた多機能スケール抑制剤での処理の間に、初期の注入量の50%の淡水を注入している。
【0044】
用いる注入水の量が少ないため、ポンプはより大量の地層流体を回収することができ、坑井所有者が石油およびガスの生産を増大することを可能にした(表11)。
【0045】
【表11】
増産による収益は、水の輸送および廃棄に関連するコストの削減と相まって、坑井所有者に対して1年当たり100万ドル以上の追加収入をもたらした。他の現地試験において、前記アスパラギン酸系ポリマーは7つの坑井を処理するために成功裡に用いられており、スケール形成(例えば岩塩スケール、炭酸カルシウムスケール、など)の軽減を維持しながら、淡水注入量を元の量の約25%〜約75%の範囲に低減している。処理プログラムが開始する前に、地方監督官庁は、坑井経営者が坑井2を処理するために使用する局所供給源から得られる淡水の消費量を低減することを要請していた。前記要請に従うために、淡水注入量を低減する試みは、中断時間により、岩塩沈積および生産低下をもたらした。前記アスパラギン酸系ポリマーを用いることによって、坑井経営者は、スケール形成を最小限にし、処理水の使用を最小限にし、かつ坑井の生産性を増大することが同時にできた。
【0046】
図5A〜
図16Bに示した実験結果は、異なるスケール抑制剤(例えばアスパラギン酸系ポリマーおよび非アスパラギン酸系ポリマー)の異なる濃度に関してスケール抑制性能を試験するために調剤された一連のジャーテストにおいて実施されたものである。例えば、第1鹹水、例えば、ナトリウム/カルシウム鹹水は、37グラムのNaClと、7.4グラムのCaCl
2とを100gの水に添加し、その水を約80℃〜85℃に加熱することによって生成した。第2鹹水、すなわち塩化ナトリウム系鹹水(sodium chloride based brine)は、37gのNaClを100gの水に添加し、その水を約80℃〜85℃に加熱することによって生成した。
【0047】
図5A〜
図5Dは、鹹水からのスケール形成を抑制するためにスケール抑制剤と脱イオン水との混合物を用いた一連のジャーテスト500の実験結果を示している。脱イオン水中のスケール抑制剤、すなわちアスパラギン酸系ポリマー(例えばポリアスパルタート)の濃度は、ジャーテストにおける各ジャーの適切な投与を可能にするために、重量で10,000ppmとなるように調剤した。例えば、0.25gは25グラムの鹹水中で100ppmを提供するであろう。この一連のジャーテスト500において、25gの第1ナトリウム/カルシウム系鹹水(first sodium/calcium based brine)を含むいくつかのジャーに、異なる濃度510(例えば50ppm、100ppm、200ppmおよび300ppm)の脱イオン水中のアスパラギン酸系ポリマーを投与した。前記ジャーを異なる所定の期間
520(例えば4時間、24時間、4日間)にわたって放置した。その後、任意の非付着性スケールを濯いだ後にスケールの量を測定した。前記ジャーの各々の中に存在するスケールの量をブランク(例えば0ppm)に対するスケール抑制のパーセンテージとして示す。
図5A〜
図5Cに示すように前記試験を3回繰り返し、その結果を平均して
図5Dに示した。図に示すように、約50ppm〜100ppmの比較的低い投与量の脱イオン水中のアスパラギン酸系ポリマーでさえ、25%の岩塩スケール形成の低減をもたらし、約100ppm〜300ppmの濃度において有意なスケールの低減が見られ得る。
【0048】
図6は、特定の投与量レベルで形成された析出物またはフロックの量についての定性的理解を判定する一連のジャーテスト
600の実験結果を示している。一部の例では、フロックおよび/またはフレークはスケール抑制プロセスの一部として形成され得る。一部の例では、結晶の形態がスケール抑制剤の存在によって変化し、その結果、形成し得る結晶が表面上にスケール沈積物を形成することができず、溶液中に残存することがある。
図6に見られるように、スケール形成および/または析出物形成は、アスパラギン酸系抑制剤の濃度レベル610が低いほど、より優勢である。濃度レベル610が増大すると、フロックの形成が増大するにつれ、析出および付着性スケールの形成は減少する。
【0049】
図7および
図8は、
図5A〜
図5Cに関して上記で検討したジャーテストに類似した、特定の濃度レベルのアスパラギン酸系ポリマーに対する一連の実験的ジャーテスト
700からの実験結果を示している。ここで、様々な濃度720の脱イオン水中アスパラギン酸系スケール抑制剤を、測定量の第1ナトリウム/カルシウム系鹹水を含むジャーに添加した。図に示すように、スケール抑制は、約500ppm未満の投与量では、4時間と24時間との間で減少し得る。
【0050】
図9および
図10は、異なる鹹水調合物中において特定の濃度レベルのアスパラギン酸系ポリマーに対する一連の実験的ジャーテストからの実験結果を示している。ここで、
図9は、脱イオン水中アスパラギン酸系ポリマーを特定の濃度レベル820で第1ナトリウム/カルシウム系鹹水に添加することによって実施した一連の4時間のジャーテスト810を示している。
図10は、脱イオン水中アスパラギン酸系ポリマーを特定の濃度レベル820で第2ナトリウム系鹹水に添加することによって実施した一連の4時間のジャーテスト830を示している。第2ナトリウム系鹹水のスケール形成(例えば、0ppmで4.49gのスケール)は、第1ナトリウム/カルシウム系鹹水のスケール形成(例えば、0ppmで2.3gのスケール)よりはるかに高いことが分かることは注目に値する。しかしながら、300ppmのような高い投与量レベルでは、アスパラギン酸系ポリマー溶液は岩塩スケール形成を最小限にすることにおいて大きな効果を有する。
【0051】
図11および
図12は、
図5A〜
図5C、
図7および
図8に関して上記で検討したジャーテストに類似した、異なる鹹水調合物中において特定の濃度920のアスパラギン酸系ポリマーについての一連の実験的ジャーテスト910,1010からの実験結果を示している。ここでは、様々な濃度920の、異なる分子量を有するアスパラギン酸系ポリマーのような異なるアスパラギン酸系スケール抑制剤を脱イオン水と溶液に組み合わせ、測定量の第1ナトリウム/カルシウム系鹹水を含むジャーに添加した。図に示すように、このアスパラギン酸系ポリマーについて、このアスパラギン酸系ポリマーのスケール形成を抑制する能力は、すべての投与量レベルにおいて4時間と24時間との間で安定したままであるように見える。
【0052】
一部の例において、様々な濃度の異なる非アスパラギン酸系ポリマーの岩塩スケール形成を抑制する能力を評価するために一連の実験ジャーテストを行った。例えば、異なる非アスパラギン酸系ポリマーを水ブランクと比較して、非アスパラギン酸系ポリマーの岩塩スケール形成を抑制する能力のパーセンテージ尺度を提供した。いくつかの非生物分解性スケール抑制剤ポリマーはイリノイ州ネーパーヴィルのナルコ社−エコラボ社(Nalco Company − an Ecolab Company of Naperville, Illinois)によって提供された。例えば、
NALCO 46025はpH3.2を有する分子量(MW)4400のポリアクリレートであり、
NALCO 46037はpH5.8を有する分子量12000のアクリル、アクリルアミド、スルホナートのターポリマーであり、
NALCO 46350は、pH3.8を有する分子量6000のアクリルおよびアクリルアミドのコポリマーである。ドイツ国ヴリシンゲンのデクエスト アーゲー(Dequest AG)、サーモフォス社(Thermphos company)によって提供された別の生分解性ポリマーは、
DEQUEST(登録商標)PB11625であり、該ポリマーはpH7.0を有する分子量<1000のカルボキシメチルイヌリンである。前記ジャーテストにおいて、これらの非アスパラギン酸系ポリマーを脱イオン水と溶液に組み合わせて、第1ナトリウム/カルシウム鹹水中において所望の投与濃度をなすように、重量によって添加した。前記ジャーテストの結果はひいき目にみても決定的ではなかった。しかしながら、実験結果の表面的な観察(casual observation)は、カルボキシメチルイヌリン、および最高濃度のアクリルとアクリルアミドとのコポリマーは、ポリアクリレート、およびアクリルとアクリルアミドとスルホナートとのターポリマーよりも、より高濃度レベルにおいてスケール形成を抑制するより良好な能力を有するように見えることを示した。
【0053】
一部の例において、異なる分子量(例えば約2000と、約15000、約4000、約7000などとの間)のアスパラギン酸系ポリマーの作用の間における岩塩スケール抑制の差を評価するために、ジャーテストを行った。
図13は、異なる分子量を有する異なるアスパラギン酸系ポリマーのスケール抑制を比較する一連のジャーテストの実験結果を示している。これらの特定の実験室的実験中、ほとんど差は見られなかった。例えば、岩塩スケール形成の抑制において、高分子量(例えば約15000)のアスパラギン酸系ポリマーおよび脱イオン水の溶液の能力は、低分子量(例えば約2000)のアスパラギン酸系ポリマーおよび脱イオン水の溶液の能力とほぼ同様であるように見えた。
【0054】
図14は、第2ナトリウム系鹹水に添加した場合の、いくつかのアスパラギン酸系ポリマーと、上記で検討した
NALCO46025、46037、46350、および
DEQUEST11625などのいくつかの非アスパラギン酸系ポリマー1420とのスケール抑制特性を比較する一連のジャーテストの実験結果を示している。上記の一連の実験では、水が鹹水を希釈することによって岩塩スケール形成を少なくとも部分的に抑制する能力を有することに留意した。それゆえ、以前に検討した実験、すなわちポリマー溶液中の付加的な脱イオン水の添加において、試験したポリマーの1つ以上のスケール抑制特性は正確に特定されていなかった可能性がある。これらの結果に基づいて、第2の一連のジャーテスト1450は、「ブランク」および試験ポリマーに対して、1.25gの最高投与量レベルの水を用いて行った。
図14に示すように、前記非アスパラギン酸系ポリマーのいずれも、アスパラギン酸系ポリマーが見せたほど大きなスケール形成の低減を見せなかった。事実、ポリアクリレート、アクリルとアクリルアミドとスルホナートとのターポリマー、およびアクリルとアクリルアミドとのコポリマーの各々は、それぞれ、スケール形成の純増を経験した。カルボキシメチルイヌリンは岩塩スケール形成の低減を見せたが、純減は、3つの異なるアスパラギン酸系ポリマーに対する岩塩形成の低減よりも著しく少なかった。さらに、異なるアスパラギン酸系ポリマー1470の各々の間における分子量の差は、試験したアスパラギン酸系ポリマー1470の間で岩塩スケール抑制特性に有意差を生じるようには見えなかった。
【0055】
図15Aおよび
図15Bは、前述の第2ナトリウム系鹹水溶液において4時間にわたる水およびアスパラギン酸系スケール抑制剤のスケール抑制能力を「ブランク」と比較した一連の20mLのジャーテストの実験結果を示している。以前の通りに、異なる濃度1510の水1520、アスパラギン酸系ポリマー1530、および同一の第2の塩化ナトリウム系鹹水1540の添加を有する一連の「ブランク」ジャーを用いて一連のジャーを調製する。同様に、
図16Aおよび
図16Bは、前述の第2ナトリウム系鹹水溶液において24時間にわたる水およびアスパラギン酸系スケール抑制剤のスケール抑制能力を「ブランク」と比較した一連の20mLのジャーテストの実験結果を示している。以前の通りに、異なる濃度1610の水1620、アスパラギン酸系ポリマー1630、および同一の第2の塩化ナトリウム系鹹水1640の添加を有する一連の「ブランク」ジャーを用いて一連のジャーを調製する。図に示すように、水の添加1520,1620、およびアスパラギン酸系ポリマーの添加1530,1630の双方は、特に約300ppmを超える濃度レベルで、岩塩スケール形成の低減を提供するように見える。アスパラギン酸系ポリマーの添加1530,1630の間に第2ナトリウム系鹹水溶液の希釈を回避するために、アスパラギン酸系ポリマーは同一の第2塩化ナトリウム系鹹水溶液に溶解されている。
図15Bおよび
図16Bは、
図15Aおよび
図16Aの表に示した実験結果のグラフ表示を提供している。
【0056】
図17は地下坑井1710におけるスケール形成を最小限にするための例示的なシステム1700を示している。例示的なシステム1700は、層マトリックス1720を含む炭化水素(例えば石油、天然ガス、など)にアクセスするための坑井孔1715を備えた地下坑井1710を含み得る。所望の炭化水素1725は、鹹水1727と共に、前記層マトリックス内に見られ得る。一部の例では、前記鹹水は、表1、表5および表9において上述した鹹水のような高塩分鹹水であり得る。地下坑井1710は、層マトリックス1720に処理水を提供するため、および/または処理(例えば、石油および/または天然ガスなどの炭化水素の鹹水からの分離)のために炭化水素1725と鹹水1727(例えば地層流体1729)との混合物を前記層マトリックスから地
表に取り出すためのポンプ1717,1719および管類および/またはパイプ1718などの炭化水素採収井の操業に関連する設備を備え得る。上記で検討したように、鹹水1727の無機成分は、層マトリックス内(例えば間隙内)において、および/または地層流体(例えば炭化水素1725と鹹水1727との混合物および/または乳濁液、炭化水素1725または鹹水1727)に接するダウンホールポンプ1217、表面ポンプ1719、管類および/またはパイプ1718,1721などの地下坑井1710の操業に関連する設備上においてスケール形成を生じ得る。
【0057】
地層マトリックス1720内および/または地下坑井の操業に関連する設備(例えばポンプ1717,
1719および/または管類および/またはパイプ1718,1721など)内におけるスケール形成を防止するために、処理水は、坑井孔1715内の管類および/またはパイプ1718によって層マトリックス1720に提供され得る。1つ以上の水源は、処理水1741として地下坑井1710に用いられる水を提供し得る。例えば、水源は、表層水源1742(例えば湖、川、など)、帯水層1747内の水にアクセスするための井戸1744等を含む淡水源のような1つ以上の異なる水源から水を受容し得る水保持タンク1740を備え得る。例えば、システム1700は、処理水1741として用いるために、水を表層水源1742から水保持タンク1740へポンプ輸送するためのポンプ1743を備え得る。同様に、システム1700は、処理水1741として用いるために、水を井戸1744から水保持タンク1740へポンプ輸送するためのポンプ1745を備え得る。一部の例では、前記水源は、地層流体水(例えば鹹水1727)の供給源、再生水(例えば排水処理施設)の供給源、生産水(production water)(例えば地層流体1729からの炭化水素1749から分離された随伴水1748)の供給源などのような1つ以上の非淡水源から得られた処理水1741を保持するための保持タンク1747を備え得る。
【0058】
システム1700は、一定量のアスパラギン酸系ポリマー1755を保持するための保持タンク1750または他の貯蔵コンテナをさらに備え得る。一部の例では、ポンプ1751は、アスパラギン酸系ポリマー1755を処理水に添加される場所にポンプ輸送するために用いられ、所望の濃度が得られるように制御され得る。一部の例では、アスパラギン酸系ポリマーは溶液および/または固体形態で貯蔵され得る。上記で議論したように、アスパラギン酸系ポリマー1755は、アスパラギン酸系ポリマーのコポリマー(例えばグルタミン酸、コハク酸、リンゴ酸、マレアミド酸(maleiamic acid)、酒石酸、アコニット酸、ソルビタール(sorbital)、など)、アスパラギン酸系ポリマーのターポリマー(例えばグルタミン酸、コハク酸、リンゴ酸、マレアミド酸(maleiamic acid)、酒石酸、アコニット酸、ソルビタール、など)、アスパラギン酸系ポリマー誘導体(例えばエタノールアミン、タウリン、アミノプロピル第四級アミンおよびラウリルアミン(laurlyamine)、など)、エンドキャップを有するアスパラギン酸系ポリマー(例えばアジピン酸、クエン酸、タウリン(traurine)、安息香酸、ホウリックアシッド(fouric acid)、ステアリン酸、グリホサート、テレフタル酸、トランス桂皮酸(trans cinammic acid)など)、および前記アスパラギン酸系ポリマーの可溶塩(例えば、ナトリウム、カリウム(postassium)、リチウム、アンモニウム、カルシウム、バリウムなどのようなアルカリ金属およびアルカリ土類金属の塩)の1つ以上を含み得る。一部の例では、前記アスパラギン酸系ポリマーは、1つ以上のグラフト(例えばアクリル酸、メタクリル酸、酢酸ビニル、ビニルスルホン酸、炭水化物、多糖類など)を含み得る。例えば、前記アスパラギン酸系ポリマーは、ポリスクシンイミドおよび/またはポリスクシンイミドの誘導体であってもよい。一部の例では、前記アスパラギン酸系ポリマーは、少なくとも1種の二塩基酸を用いて形成され得る。例えば、前記二塩基酸は、L−アスパラギン酸、無水マレイン酸、グルタミン酸、グルタル酸(gluataric acid)、アジピン酸、コハク酸、酒石酸、リンゴ酸、マレアミド酸(maliemic acid)、フマル酸等のうちの少なくとも1つであり得るが、これらに限定されるものではない。一部の例では、前記アスパラギン酸系ポリマーは、ポリアスパラギン酸ナトリウム塩のような1種以上のアスパラギン酸系ポリマーの可溶性塩を含み得る。
【0059】
上記で検討したように、処理水1741およびアスパラギン酸系ポリマー1755の双方は、地下坑井1710内および/または地下坑井1710に関連する設備1717,1718,1719,1721内のスケール形成を抑制するために用いられ得る。例えば、処理水1741は、地下坑井1710内および/または地下坑井1710に関連する設備1717,1718,1719,1721の表面上におけるスケール形成を少なくとも部分的に抑制するために地下坑井1710に提供され得る。同様に、アスパラギン酸系ポリマー1755は、地下坑井1710内および/または地下坑井1710に関連する設備1717,1718,1719,1721の表面上におけるスケール形成を少なくとも部分的に抑制するために用いられ得る。アスパラギン酸系ポリマー1755は、1つ以上の水源1742,1743,1747,1748から得られた処理水1741中において所定濃度で地下坑井1710に提供され得る。
【0060】
制御装置1760は、地下坑井1710の操業の少なくとも一部を制御するように構成され得る。例えば、制御装置1760は、ポンプ1765を用いて、処理水1741を所定率で地下坑井1710に提供するための非一時的コンピュータ可読媒体に格納された命令を処理するように構成され得る。制御装置1760はまた、アスパラギン酸系ポリマー1755を、処理水1741内における所定濃度および/または地下坑井から生じる随伴水1748の量に対応する濃度のような地下坑井1710から生じる水の量に対応する所定濃度などの所定濃度で、地下坑井に提供するように構成され得る。一部の例では、制御装置1760は、地下坑井に提供される水の流量および/またはアスパラギン酸系ポリマーの濃度を調節することにより、水源から使用される水の量を最小限にするか、または他の場合には低減するように構成され得る。
【0061】
システム1700は、1つ以上のイオン濃度レベルを監視するためなど、処理水1741および/または随伴水1748のような様々な水の化学的性質および/または地層流体1729の化学的性質を分析するための1つ以上のセンサー1790を備え得る。例えば、制御装置1760は、地下坑井1710の適切な操業を保証するために、かつ/またはスケール形成の適切な抑制を保証するために、アスパラギン酸系ポリマー1755の濃度および/または流量、および/または処理水1741の流量を制御するように構成され得る。
【0062】
一部の例では、制御装置1760はユーザインタフェース1770を備えてもよいし、またはユーザインタフェース1770と関連付けられていてもよい。例えば、ユーザインタフェース1770は、スケール形成、水の使用、および/またはシステム1700の障害および/または他のエラー状態に関連した警告および/または警報についての情報を含む、地下坑井1710の操業についての情報を使用者に提供するために用いられ得る。一部の例では、制御装置1760は、ユーザインタフェース1770を通じて、処理水1741の所望の流量や、アスパラギン酸系ポリマー1755の所望の濃度についての情報、および/または処理水1741、随伴水1748および/または地層流体1729の無機成分についての情報などの情報を使用者から受信するように構成され得る。一部の例では、制御装置1760は、ローカルエリアネットワーク、広域ネットワーク、インターネット、セルラーネットワーク等のようなネットワーク1787への有線接続および/または無線接続を備え得る。制御装置1760は、携帯装置1782(例えば携帯電話、タブレットなど)および/またはコンピュータ1784のような、遠隔監視サイト1780における1つ以上の装置と情報を交換するように構成され得る。例えば、制御装置1760は、水使用率(water use rates)、アスパラギン酸系ポリマーの情報、水の化学的性質の情報、炭化水素生産レート等のような操業情報を通信するように構成され得る。同様に、制御装置1760は、例えば、新たな目標処理水使用率および/またはアスパラギン酸系ポリマーの新たな濃度レベルを提供することによって、制御装置1760の動作を修正および/または変更するために用いられ得る遠隔監視サイト1780からの1つ以上のコマンドおよび/または動作設定値を受信するように構成され得る。
【0063】
図18は、
図17の例示的な制御装置1760の概略図
1800である。いくつかの場合において、制御装置1760は、1つ以上のセンサー1815、および/または、
図17のセンサー1790のような制御装置1760の外部のセンサーに接続するための1つ以上の端子1855を備え得るが、これは必須ではない。
図18の例示的な実施形態において、制御装置1760は、プロセッサ(例えばマイクロプロセッサ、マイクロコントローラなど)1810、任意選択のセンサー1815、任意選択のユーザインタフェース1820およびメモリ1830を備える。プロセッサ1810は、センサー1815、メモリ1830、ユーザインタフェース1820、および/またはI/Oブロック1850に接続され得る。
【0064】
一部の例では、入力/出力ブロック(I/Oブロック)1850は、1つ以上の信号を受信するため、および/または1つ以上の信号を提供するためのものであり得る。一例において、I/Oブロック1850は、例示的なシステム1700のポンプ1717,1719,1743,1745,1751および/または1つ以上のセンサー1790などの1つ以上のシステム構成要素と、時に有線インタフェースを介して、通信するために用いられ得る。一部の例では、I/Oブロック1850は、別の地下坑井にある別の制御装置および/または2つ以上の地下坑井の動作を監視および/または制御するように構成された監視制御装置と、時に有線および/または無線インタフェースを介して、通信するために用いられ得る。
【0065】
I/Oブロック1850は、1つ以上のポンプ1717,1719,1743,1745,1751、他の制御装置、および/またはセンサー1790から制御線を受容するように構成された1つ以上の端子1855(例えば入力端子、出力端子、ユニバーサル端子など)を備え得る。一部の例では、端子1855の割り当てはプログラム可能であってもよく、例えば、端子は入力または出力のいずれかとして構成されてもよく、かつ/または特定の端子の機能性はプログラムされてもよい。一例において、端子1855の各々は、特定の設定(installation)に従って、システム構成要素の1つ以上に割り当てられてもよく、かつ/または制御装置を形成してもよく、各端子1855の機能性は接続された装置の特性に依存し得る。例えば、端子1855のうちの1つは、ワイヤ端子がポンプにコマンドを提供するために用いられる場合などに出力として構成され得、かつ、前記ワイヤ端子のうちの別の1つは、前記ワイヤ端子が水の化学的性質を感知する(例えば、イオン濃度を感知する、pHを感知する、など)ためのセンサーのようなセンサーからセンサー信号を受信するために用いられることになっている場合に入力として構成され得る。他の場合において、端子1855または端子1855のうちのいくつかの割り当ては固定されていてもよい。
【0066】
例示的な制御装置1760のプロセッサ1810は、監視制御装置から受信した制御コマンドおよび/またはメモリ1830から読み出したコマンドを処理することによって動作し得、それらのコマンドは、制御装置1760を通じて、例示的なシステム1700の1つ以上のシステム構成要素を制御するか、または少なくとも部分的に制御し得る。プロセッサ1810は、例えば、監視制御装置から、ユーザインタフェースから、および/またはメモリから、前記アスパラギン酸系ポリマーの所定流量および/または濃度レベル、および/または地層水中および/または随伴水中の監視イオン濃度(例えばカルシウムイオン濃度等)の濃度レベルを受信してもよく、かつその受信情報に基づいて適当なシステム構成要素を制御し得る。
【0067】
図18の例示的な実施形態において、制御装置1760のユーザインタフェース1820は、提供された場合、制御装置1760が、情報を表示すること、および/または求めること、並びに1つ以上のユーザとの対話処理(user interactions)を受け入れることを可能にする任意の適当なユーザインタフェースであり得る。例えば、ユーザインタフェース1820は、使用者が、所望の流量および/または濃度レベル等についての情報のようなデータを入力することを可能にし得る。一部の例では、ユーザインタフェース1820は表示装置と、別個のキーパッドとを備え得る。表示装置は任意の適当な表示装置であってよい。いくつかの場合において、表示装置は液晶表示装置(LCD)を備えてもよいし、液晶表示装置であってもよく、場合によっては、固定セグメント表示装置またはドットマトリックスLCD表示装置であってもよい。所望により、ユーザインタフェース1820は、表示装置とキーパッドとの双方として機能するタッチスクリーンLCDパネルであってもよい。
【0068】
例示的な制御装置1760のメモリ1830は、プロセッサ1810と通信していてもよい。メモリ1830は、前述の所望のイオン濃度レベル、アスパラギン酸系ポリマーの所定濃度、および/または、処理水の所望の流量などの任意の所望の情報を格納するために用いられ得る。前記メモリはまた、制御装置1760によって実行され得る1つ以上のアルゴリズムを格納してもよい。一部の例では、プロセッサ1810は、特定の設定において目前に(at hand)制御装置1760に接続される例示的なシステム1700の特定のシステム構成要素を制御するのに適したアルゴリズムに従って動作し得る。一部の例では、プロセッサ1810が処理水流および/またはアスパラギン酸系ポリマー濃度を、生産レートの変化、随伴水1748および/または、地層流体1729のイオン濃度の変化、処理水の組成の変化等のような1つ以上の他のパラメータの変化に応じて制御することを可能にし得る命令は、メモリ1830に格納され得る。一部の例では、メモリ1830は、以下で検討するように、処理水の使用率を低減するための方法を実施するため、かつ/または、地下坑井1710内および/または地下坑井1710の操業に関連する設備の表面上におけるスケール形成を制御および/または抑制するための命令を格納するように構成され得る。
【0069】
一部の例では、メモリ1830は、例示的なシステム1700の構成についての情報を含む1つ以上のデータ構造435を格納するために用いられ得る。例えば、データ構造1835は、特定の処理水流量、アスパラギン酸系ポリマーを形成する濃度レベル、処理水、地層流体および/または随伴水中の1つ以上のイオンのイオン濃度、炭化水素生産レート、および/または、地下坑井の動作についての他の操業情報のうちの2つ以上の間の関連性についての情報を格納するために用いられ得る。一部の例では、データ構造1835は、別の制御装置および/またはユーザへのコマンドを発行するため、および/または別の制御装置および/またはユーザからの情報を要求するための情報を含み得る。メモリ1830は、RAM、ROM、EPROM、フラッシュメモリー、ハードドライブおよび/またはその他同種のものを含むが、これらに限定されない任意の適当な種類の記憶装置であり得る。一部の例では、プロセッサ1810は、メモリ1830内に情報を格納し、後に格納した情報を読み出し得る。例えば、メモリ1830は水使用率、アスパラギン酸に基づく濃度レベルおよび/または使用率、炭化水素生産レート、水廃棄率(water disposal rates)、イオン濃度レベル等についての傾向情報を格納するために用いられ得る。
【0070】
一部の例では、図
18に示すように、制御装置1760はデータポート1840を備え得る。データポート1840は、ブルートゥース(商標)ポートのような無線ポートまたは他の無線プロトコルであり得る。他の場合において、データポート1840は、シリアルポート、パラレルポート、CAT5ポート、USB(ユニバーサルシリアルバス)ポートおよび/またはその他同種のものなどの有線ポートであり得る。いくつかの場合において、データポート1840はUSBポートであってもよく、USBフラッシュドライブまたは他のいくつかのデータソースから情報をダウンロードおよび/またはアップロードをするために用いられ得る。他の遠隔装置も所望通りに用いられ得る。
【0071】
データポート1840は、プロセッサ1810と通信するように構成され得、所望により、情報をプロセッサ1810にアップロードするため、および/または情報をプロセッサ1810からダウンロードするために用いられ得る。アップロードおよび/またはダウンロードされ得る情報としては、例えば、構成情報、割合情報(rate information)、濃度情報等が挙げられ得る。いくつかの場合において、データポート1840は以前に形成された制御装置構成をプロセッサ1810にアップロードするために用いられてもよく、それにより構成プロセスを促進する。例えば、1つ以上の地下坑井は、異なる坑井および異なる場所と同様の水の化学的性質および/または鹹水の化学的性質を有し得る。一部の例では、データポート1840は、制御装置1760を用いて形成された制御装置構成をダウンロードするために用いられてもよく、その結果、前記制御装置構成は他の類似した地下坑井システム制御装置に転送されて、それらの構成プロセスを促進し得る。一部の例では、データポート1840は、分析を目的として、メモリ1830内に格納されたデータをダウンロードするために用いられてもよい。例えば、データポート1840は、傾向ログ、障害ログ、および/または警告ログ、またはそれらの一部をUSBメモリスティック(時にサムドライブまたはジャンプドライブとも称される)、パーソナルコンピュータ、ラップトップ、iPAD(登録商標)または他のタブレット型コンピュータ、PDA、スマートフォン、または他の遠隔装置などの遠隔装置に所望通りにダウンロードするために用いられ得る。一部の例では、前記データは、MS EXCEL(登録商標)、MS WORD(登録商標)、テキスト、XNL、および/またはアドビPDF(登録商標)ファイルに変換可能であってもよいが、これはもちろん必須ではない。
【0072】
一部の例では、地下坑井に注入される水の量を低減する方法は、地下坑井にアスパラギン酸系ポリマーを提供することを含み、前記方法を実施するための命令は、前記制御装置のメモリ1830に少なくとも部分的に格納され得る。一部の例において、前記アスパラギン酸系ポリマーは、前記アスパラギン酸系ポリマーのコポリマー、前記アスパラギン酸系ポリマーのターポリマー、アスパラギン酸系ポリマー誘導体、エンドキャップを有するアスパラギン酸系ポリマー、および前記アスパラギン酸系ポリマーの可溶塩のうちの1つ以上を含み得る。例えば、前記アスパラギン酸系ポリマーは、ポリスクシンイミドおよび/またはポリスクシンイミドの誘導体であってもよい。一部の例では、前記アスパラギン酸系ポリマーは、少なくとも1種の二塩基酸を用いて形成されてもよい。例えば、前記二塩基酸は、L−アスパラギン酸、無水マレイン酸、および/またはフマル酸のうちの少なくとも1つであり得る。一部の例では、前記アスパラギン酸系ポリマーは、ポリアスパラギン酸ナトリウム塩のような1種以上のアスパラギン酸系ポリマーの可溶性塩を含み得る。
【0073】
一部の例では、地下坑井にアスパラギン酸系ポリマーを提供することは、アスパラギン酸系ポリマーを流体中において所定濃度で提供することを含み、前記所定濃度のアスパラギン酸系ポリマーは、約1ppm〜約1000ppmの範囲内で提供され得る。実例において、前記アスパラギン酸系ポリマーの濃度は、約1パーツ・パー・ミリオン(ppm)〜約1000ppmの範囲内の濃度のポリアスパラギン酸および/またはポリアスパラギン酸塩の濃度を含み得る。
【0074】
一部の例では、地下坑井に注入される水の量を低減する方法は、塩化ナトリウム(例えば岩塩)の結晶化および/または析出を抑制することを含み得る。例えば、地下坑井に注入された水、地下坑井に提供されたアスパラギン酸系ポリマー、または地下坑井に注入された水および地下坑井に提供されたアスパラギン酸系ポリマーの双方の組み合わせは、塩化ナトリウムおよび/または1種以上の他の結晶および/または塩化カルシウムおよび/または硫酸バリウムなどのスケール形成物質の結晶化および/または析出を抑制し得る。一部の例では、地下坑井に注入される水の量を低減する方法は、アスパラギン酸系ポリマーと、少なくとも1つの水源からの処理水との組み合わせを注入することを含み得る。前記処理水は、表層水源(例えば川、湖、池、など)、井戸水源、再生水源、排水源、生産水源、および/または破砕流体源のうちの1つ以上から得られ得る。一部の例では、前記地下坑井に注入される水の量を低減する方法は、坑井に注入される処理水の量を約5パーセント〜約95パーセント低減することを含み得る。一部の例では、淡水源(例えば川、湖、他の表層水源、淡水井戸など)から得られる処理水の量は、再生水源、排水源、生産水源および/または破砕流体源などの別の供給源から得られる一定量の水、アスパラギン酸系ポリマーおよび/または別の供給源から得られた水とアスパラギン酸系ポリマーとの組み合わせの使用を用いて、低減され得る。例えば、水は、水処理施設からの水を再利用することによって、炭化水素および/または鹹水等の混合物を含む地層流体から分離された水から得られ得る。
【0075】
別の例において、
図19に示すように、地下坑井および/または地下坑井に関連する設備におけるスケール形成を抑制する方法、すなわち方法1900は、参照番号1910において、前記地下坑井に処理水を提供することによって開始し得る。例えば、前記地下坑井に処理水を提供することは、前記地下坑井に処理水を第1所定率で注入すること、および/または前記処理水の地下坑井への注入率を第2注入率に調節することを含み、第2注入率は第1注入率未満である。参照番号1920では、前記地下坑井にアスパラギン酸系ポリマーが提供され得る。一部の例では、アスパラギン酸系ポリマーは、処理水とともに、1パーツ・パー・ミリオン(ppm)〜1000ppmの濃度で、前記地下坑井に提供される。例えば、アスパラギン酸系ポリマーは、約25パーツ・パー・ミリオン(ppm)〜500ppmの処理水中のアスパラギン酸系ポリマーの所定濃度をもたらす割合で地下坑井に提供され得る。一部の例では、前記地下坑井および/または地下坑井に関連する設備におけるスケール形成を抑制する方法は、処理水中におけるアスパラギン酸系ポリマーの濃度を調節することを含み得る。
【0076】
図19の方法は、アスパラギン酸系ポリマーを用いて、地下坑井に関連する層マトリックス内および/または地下坑井に関連する設備上における塩化ナトリウムスケールを抑制すること、および/または1種以上の他のスケール形成(例えば炭酸カルシウムスケール形成、硫酸バリウムスケール形成等)を抑制することをさらに含み得る。一部の例において、前記アスパラギン酸系ポリマーは、前記アスパラギン酸系ポリマーのコポリマー、前記アスパラギン酸系ポリマーのターポリマー、アスパラギン酸系ポリマー誘導体、エンドキャップを有するアスパラギン酸系ポリマー、および前記アスパラギン酸系ポリマーの可溶塩のうちの1つ以上を含み得る。例えば、前記アスパラギン酸系ポリマーは、ポリスクシンイミドおよび/またはポリスクシンイミドの誘導体であってもよい。一部の例では、前記アスパラギン酸系ポリマーは、少なくとも1種の二塩基酸を用いて形成されてもよい。例えば、前記二塩基酸は、L−アスパラギン酸、無水マレイン酸、グルタル酸(gluataric acid)、アジピン酸、コハク酸、酒石酸、リンゴ酸、マレアミド酸(maliemic acid)、フマル酸等のうちの少なくとも1つであり得るが、これらに限定されるものではない。一部の例では、前記アスパラギン酸系ポリマーは、ポリアスパラギン酸ナトリウム塩のような1種以上のアスパラギン酸系ポリマーの可溶性塩を含み得る。上記で検討したように、
図19の方法1900を実施するための命令は、制御装置1760のプロセッサ1810によって使用するためのメモリ1830に少なくとも部分的に格納され得る。
【0077】
このように本開示のいくつかの例示的な実施形態を記載したが、当業者には、本願に添付する特許請求の範囲内において、さらに他の実施形態が製造され用いられてもよいことが容易に分かるであろう。この文書によって包含される本開示の多数の利点は、前述の記載において述べられている。しかしながら、この開示は、多くの点で単なる実例であることが理解されるであろう。本開示の範囲を超えることなく、詳細について、特に部品の形状、大きさ、および配置に関して、変更がなされてもよい。本開示の範囲は、もちろん、添付した特許請求の範囲が表現されている言語において定義される。