(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記開孔の周縁部は、前記透液性表面シートより非肌側に配設される部材に接続することなく肌側に離間するように設けられている請求項1〜3いずれかに記載の吸収性物品。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1記載の吸収性物品では、吸収体に貫通穴が形成された領域のトップシートの表面が平坦であるため、クッション性がなく、肌との接触面積が大きくなって、擦れ、カブレ、かゆみなどの肌トラブルが生じたり、体液吸収時におけるべた付き感が生じたりするなどの問題があった。
【0008】
また、上記特許文献2記載の吸収性物品では、表面シートの凹凸状のエンボスの内、凸状エンボス部又は凹状エンボス部に開孔処理を施してあるため、体液が開孔を通じて表面シートを通過しやすい構造となっている。ところが、この表面シートを通過した体液が吸収体に吸収されるまでにある程度の時間を要するため、表面シートと吸収体との層間に体液が溜まりやすいという問題があった。特に、粘り気のあるドロッとした経血の場合、前記開孔を通じて表面シートを通過するのは容易となるが、その後吸収体に移行されにくく表面シートと吸収体との層間に溜まりやすいという問題がたびたび発生していた。
【0009】
更に、上記特許文献3記載の吸収性物品では、体液貯留空間として作用する第2凸部において、特に粘り気のあるドロッとした経血の場合、透液性表面シートを透過しにくいため、表面側に残る場合が考えられる。
【0010】
そこで本発明の主たる課題は、肌トラブルをなくし、体液吸収時におけるべた付き感を防止するとともに、体液を吸収体に素早く移行できるようにした吸収性物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために請求項1に係る本発明として、透液性表面シートと裏面シートとの間に吸収体が介在された吸収性物品において、
前記透液性表面シートに、間欠的に多数の第1エンボス及び第2エンボスが施されるとともに、前記第1エンボス及び第2エンボスを所定のパターンで配置した第1画成領域が吸収性物品の長手方向及び幅方向に沿って格子状に設けられ、且つ隣り合う前記第1画成領域で四隅が囲まれた部分に、これら各第1画成領域に配設された前記第2エンボスを含むように第2画成領域が設けられ、
前記第1画成領域に、前記第1エンボス及び第2エンボスを基端として肌側に膨出する多数の第1凸部が形成されるとともに、前記第2画成領域に、少なくとも前記第2エンボスを基端として前記第1凸部よりも相対的に低い高さで肌側に膨出する多数の第2凸部が形成され、
前記第1画成領域において、前記第1エンボスは、楕円形又は円形の閉合する仮想線上に中心が位置するように配置され、前記第2エンボスは、前記仮想線に沿った隣り合う前記第1エンボス同士の中間であって、中心が前記仮想線より内側に位置するとともに、前記第1凸部に該第2エンボスの内側縁が食い込むように配置されており、
前記透液性表面シートの前記第2凸部に、該透液性表面シートを貫通する開孔が設けら
れていることを特徴とする吸収性物品が提供される。
【0012】
上記請求項1記載の発明では、
透液性表面シートに間欠的に多数の第1エンボス及び第2エンボスを施すことによって、これらエンボスを基端として肌側に膨出する第1凸部及び第2凸部が多数形成された凹凸状の透液性表面シートを備えている。相対的に高く肌側に膨出する第1凸部で四隅が囲まれた領域に、相対的に低く肌側に膨出する第2凸部を形成しているため、この第2凸部及びその周辺は、四方が第1凸部で囲まれた一時的な体液の貯留空間となる。この体液貯留空間は、第1凸部と第2凸部とを同じ高さで構成した場合より大きな空間となり、多量の体液が一時貯留できるようになるため、肌面に体液が付着しにくく、さらっと感が向上できるとともに、体液が第2凸部及びその周辺から吸収体に素早く移行できるようになる。
【0013】
また、前記透液性表面シートに、肌側に膨出する多数の第1凸部と、前記第1凸部より相対的に低い高さで肌側に膨出する多数の第2凸部とからなる凹凸パターンを設けてあるため、透液性表面シートと肌との接触面積が低減して、擦れ、カブレ、かゆみなどの肌トラブルが減少するとともに、体液吸収時におけるべた付き感が防止できるようになる。
【0014】
また、前記透液性表面シートの前記第2凸部に、該透液性表面シートを貫通する開孔を設けてあるため、粘度の低いさらっとした体液はもとより、粘り気のあるドロッとした体液の場合でも、前記開孔を通じて透液性表面シートを容易に通過できるようになり、表面に液残りがなく、体液吸収時におけるべた付き感が解消できる。
【0015】
ここで、前記開孔は、前記第1凸部を避けて、これより相対的に高さの低い第2凸部に形成してあるため、第1凸部が肌側に膨出した形状が維持され、前記開孔を設けたことにより肌トラブルが引き起こされるようなことがなくなる。
【0016】
請求項2に係る本発明として、前記開孔に対応する前記吸収体の透液性表面シート側の面に窪み部が形成されている請求項1記載の吸収性物品が提供される。
【0017】
上記請求項
2記載の発明では
、前記開孔を通過した体液が吸収体の窪み部に入り込むことにより、吸収体に素早く吸収されるようになる。
【0018】
請求項
3に係る本発明として、前記開孔は、前記第2凸部の頂部に形成されている請求項1
、2いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0019】
上記請求項
3記載の発明では、前記開孔を第2凸部の頂部に形成することによって、前記開孔を通過した体液が、再びこの開孔を通じて肌側に逆戻りするのが抑えられ、表面のべた付き感がより一層解消できるようになる。
【0020】
請求項
4に係る本発明として、前記開孔の周縁部は、前記透液性表面シートより非肌側に配設される部材に接続することなく肌側に離間するように設けられている請求項1
〜3いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0021】
上記請求項
4記載の発明では、前記開孔の周縁部が、吸収体など前記透液性表面シートより非肌側に配設される部材に接続することなく肌側に離間しているため、前記開孔を通じて透液性表面シートを通過した体液が、再びこの開孔を通じて肌側に逆戻りするのが防止できるようになる。
【0022】
請求項5に係る本発明として、前記開孔の周縁部は、前記吸収体の前記窪み部を被覆している請求項
2記載の吸収性物品が提供される。
【0023】
上記請求項
5記載の発明では、前記開孔の周縁部が、吸収体の窪み部を被覆しているため、前記開孔を通過した体液が吸収体の窪み部にそのまま浸入し、この窪み部を通じて吸収体に吸収されやすくなる。
【0024】
請求項
6に係る本発明として、前記開孔の面積は、0.01mm
2〜8mm
2である請求項1〜
5いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0025】
上記請求項
6記載の発明では、開孔の面積が小さすぎると、粘り気のあるドロッとした経血などが通過できなくなるし、開孔の面積が大きすぎると、開孔を通じて体液の逆戻りが生じるおそれがあるため、所定の範囲に規定したものである。
【0026】
請求項
7に係る本発明として、前記開孔は、少なくとも体液排出部に対応する領域に設けられている請求項1〜
6いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0027】
上記請求項
7記載の発明では、前記開孔を少なくとも体液排出部に対応する領域に設けることにより、この領域の体液の吸収が良好になり、体液吸収時におけるべた付き感が防止でき、肌トラブルも生じなくなる。
【発明の効果】
【0028】
以上詳説のとおり本発明によれば、肌トラブルがなくなり、体液吸収時におけるべた付き感が防止できるとともに、体液が吸収体に素早く移行できるようになる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
【0031】
〔生理用ナプキン1の基本構造〕
本発明に係る生理用ナプキン1は、
図1乃至
図4に示されるように、ポリエチレンシート、ポリプロピレンシートなどからなる不透液性裏面シート2と、経血やおりものなどを速やかに透過させる透液性表面シート3と、これら両シート2,3間に介在された綿状パルプまたは合成パルプなどからなる吸収体4と、前記透液性表面シート3と吸収体4との間に備えられた親水性のセカンドシート5とを備えたものである。
【0032】
以下、さらに前記生理用ナプキン1の構造について詳述すると、
前記不透液性裏面シート2は、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂シートなどの少なくとも遮水性を有するシート材が用いられるが、この他にポリエチレンシート等に不織布を積層したラミネート不織布や、さらには防水フィルムを介在して実質的に不透液性を確保した上で不織布シート(この場合には防水フィルムと不織布とで不透液性裏面シートを構成する。)などを用いることができる。近年はムレ防止の観点から透湿性を有するものが用いられる傾向にある。この遮水・透湿性シート材は、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に無機充填剤を溶融混練してシートを成形した後、一軸または二軸方向に延伸することにより得られる微多孔性シートである。
【0033】
次いで、前記透液性表面シート3は、有孔または無孔の不織布や多孔性プラスチックシートなどが好適に用いられる。不織布を構成する素材繊維としては、たとえばポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維とすることができ、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等の適宜の加工法によって得られた不織布を用いることができる。これらの加工法の内、スパンレース法は柔軟性、スパンボンド法はドレープ性に富む点で優れ、サーマルボンド法及びエアスルー法は嵩高で圧縮復元性が高い点で優れている。
【0034】
前記不透液性裏面シート2と透液性表面シート3との間に介在される吸収体4は、たとえば綿状パルプと高吸水性ポリマーとにより構成されている。前記高吸水性ポリマーとしては、高吸水ポリマー粒状粉(SAP)や高吸水ポリマー繊維(SAF)を用いることができる。前記パルプとしては、木材から得られる化学パルプ、溶解パルプ等のセルロース繊維や、レーヨン、アセテート等の人工セルロース繊維からなるものが挙げられ、広葉樹パルプよりは繊維長の長い針葉樹パルプの方が機能および価格の面で好適に使用される。吸収体4の製造方法は、柔軟性に富むように積繊パルプとすることが望ましいが、嵩を小さくできるエアレイド吸収体としてもよい。前記吸収体4は、形状保持および拡散性向上のため、クレープ紙や不織布などからなる被包シート(図示せず)で囲繞してもよい。
【0035】
また、前記吸収体4には合成繊維を混合しても良い。前記合成繊維は、例えばポリエチレン又はポリプロピレン等のポリオレフィン系、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系、ナイロンなどのポリアミド系、及びこれらの共重合体などを使用することができるし、これら2種を混合したものであってもよい。また、融点の高い繊維を芯とし融点の低い繊維を鞘とした芯鞘型繊維やサイドバイサイド型繊維、分割型繊維などの複合繊維も用いることができる。
【0036】
前記透液性表面シート3と吸収体4との間に配置される親水性のセカンドシート5は、体液に対して親水性を有するものであればよい。具体的には、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維を用いることにより素材自体に親水性を有するものを用いるか、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維を親水化剤によって表面処理し親水性を付与した繊維を用いることができる。このセカンドシート5は、後述するように、前記透液性表面シート3の裏面側(非肌側)に熱融着(エンボス)により接合され、両シートを積層状態としたまま透液性表面シート3と共にエンボス10、11の加工処理が施される。
【0037】
前記セカンドシート5と吸収体4とは、ホットメルト接着剤等により接合するのが望ましい。前記セカンドシート5と吸収体4とが接合していることにより、経血等を前記セカンドシート5から速やかに吸収体4に浸透させ吸収させることができるようになる。
【0038】
〔透液性表面シート3の凹凸パターンについて〕
本生理用ナプキン1では、
図2及び
図4に示されるように、透液性表面シート3に、肌側に膨出する多数の第1凸部14、14…と、前記第1凸部14より相対的に低い高さで肌側に膨出する多数の第2凸部15、15…とが形成されている。前記第1凸部14…及び第2凸部15…について、以下具体的に説明する。
【0039】
前記第1凸部14…及び第2凸部15…を形成するに際しては、
図2に示されるように、前記透液性表面シート3及びセカンドシート5に、前記透液性表面シート3の肌面側(表面側)からのエンボスにより、間欠的に多数の第1エンボス10及び第2エンボス11を施す。前記第1エンボス10及び第2エンボス11を間欠的に施すとは、各エンボス10、11によるエンボス部とエンボスが施されない離間部とが交互に形成されることであり、ナプキン幅方向又は長手方向に亘って連続するエンボス線が施されないということである。
【0040】
前記透液性表面シート3とセカンドシート5とは、前記第1エンボス10及び第2エンボス11で接合されている。前記第1エンボス10及び第2エンボス11としては、熱エンボス、超音波エンボスなど公知のエンボス手段を採用できる。
【0041】
前記透液性表面シート3は、
図2に示されるように、前記第1エンボス10及び第2エンボス11を所定のパターンで配置した第1画成領域12が生理用ナプキン1の長手方向及び幅方向に沿って格子状に設けられるとともに、隣り合う前記第1画成領域12、12…で四隅が囲まれた部分に、これら第1画成領域12に配設された少なくとも前記第2エンボス11を含むように第2画成領域16が設けられるようにするのが好ましい。前記第2画成領域16は、
図2に示す例では、周囲の第1画成領域12に配設された第2エンボス11が1つずつ四隅に配置されたエンボスパターンとされている。前記第2画成領域16では、第1画成領域12に配設された少なくとも第2エンボス11が含まれている。このため、前記第2画成領域16は、前記第1画成領域12と一部が重なるように設けられている。
【0042】
前記第1画成領域12は、
図2に示すように隣り合う第1画成領域12、12同士で一部のエンボス(第1エンボス10)が共通するように区画してもよいし、図示しないが、第1画成領域12、12同士が離間するように(隣り合う第1画成領域12、12同士で共通する第1エンボス10を持たないように)配置してもよい。
【0043】
前記第1画成領域12は、前記第2画成領域16より相対的に大きな面積で形成されている。また、第1画成領域12内に設けられるエンボス10、11の数は、第2画成領域16に設けられるエンボスの数より相対的に多く配置されている。
【0044】
前記第1画成領域12には、前記第1エンボス10及び第2エンボス11を基端として、肌側に膨出する第1凸部14が形成されている。また、前記第2画成領域16には、少なくとも前記第2エンボス11を基端として、前記第1凸部14より相対的に低い高さで肌側に膨出する第2凸部15が形成されている。
【0045】
前記第1凸部14及び第2凸部15は、
図3及び
図4に示されるように、透液性表面シート3をセカンドシート5より肌側に膨出させることにより形成したものであり、透液性表面シート3とセカンドシート5との間にはそれぞれドーム状の空間部が設けられるようになっている。この空間部の体積は、第1凸部14の方が第2凸部15より相対的に大きく形成され、且つ前記空間部の高さは、第1凸部14の方が第2凸部15より相対的に大きく形成されている。
【0046】
図4に示されるように、前記第2凸部15の肌側に膨出する高さH2(第2凸部15の頂部におけるセカンドシート5の非肌面から透液性表面シート3の肌面までの高さ)は、第1凸部14の肌側に膨出する高さH1(第1凸部14の頂部におけるセカンドシート5の非肌面から透液性表面シート3の肌面までの高さ)より相対的に低く設定されている(H1>H2)。前記第1凸部14の高さH1は、2.1mm〜4.0mmが好ましく、第2凸部15の高さH2は、1.0mm〜2.0mmが好ましい。前記第1凸部14の高さH1と第2凸部15の高さH2の差(H1−H2)は、0.5mm〜3.0mmが好ましい。
【0047】
前記第1凸部14及び第2凸部15を設けることにより、透液性表面シート3と肌面との接触面積が低減するので、肌ざわり感が良好になる。つまり、透液性表面シート3と肌面との接触点が、肌側へ相対的に高く膨出した第1凸部14の頂部となり、肌面と複数の点状に接触するので、接触面積が低減し、肌当たりが良好となる。また、肌面との接触が複数の点状となり、接触部分以外では肌面との間に空間ができるので、この空間を通じて体液の流動性がよくなり、体液が吸収体に移行しやすくなる。
【0048】
また、前記第2凸部15が第1凸部14より相対的に低い高さで肌側に膨出することにより、以下のような効果が奏される。前記第2凸部15及びその周辺には、
図2及び
図4に示されるように、四方が高く膨出した前記第1凸部14、14…で囲まれた一時的な体液の貯留空間Sが形成されるようになる。この体液貯留空間Sは、第1凸部14と第2凸部15との間のスペースでは保持しきれない大量の体液が排出された場合でも、第2凸部15の高さH2より貯留水位が上昇した第1凸部14の高さH1まで拡大して体液を保持することができるようになっている。ここで、第2凸部15の高さH2より貯留水位が上昇した場合でも、透液性表面シート3は第1凸部14の頂部で肌面に接しているため、体液貯留空間Sに溜まった体液が肌面に付着しにくく、さらっと感が維持できるようになる。また、体液貯留空間Sに一時貯留された体液は、エンボス10、11や第1凸部14、第2凸部15の表面及び後段で詳述する第2凸部15に設けられた開孔20から吸収体4に素早く移行されるようになる。
【0049】
これに対して、仮に前記第1凸部14、第2凸部15の区別がなく、
図5に示されるように、同じ高さの凸部で形成した場合、凸部同士の間のわずかな隙間しか体液貯留空間として利用することができず、大量の体液が排出された場合には、体液の貯留水位が上昇して体液が肌面と接触し、べた付きが生じていた。
【0050】
次に、前記第1画成領域12に設けられるエンボスパターン及び第1凸部14の断面形状について、
図6〜
図8に基づいて詳しく説明する。はじめにエンボスパターンについて説明すると、
図6に示されるように、前記第1画成領域12において、第1エンボス10は、閉合する仮想線13上に第1ンボス10の中心C
10が位置するように配置されている。つまり、前記第1エンボス10は、第1画成領域12内に存在する複数の第1エンボス10、10…の中心C
10を通る仮想線13を引いたとき、この仮想線13が楕円形、円形、多角形などの閉合する形状線で形成されている。
【0051】
前記仮想線13は、生理用ナプキン1の長手方向に長い楕円形に形成するのが好ましい。すなわち、第1画成領域12内の第1エンボス10、10…はそれぞれ、楕円形の仮想線13上に中心C
10、C
10…が位置するように間欠的に配置するのがよい。このように第1エンボス10、10…を楕円形の仮想線13に沿って配置した場合、この第1エンボス10、10…を基端とした第1凸部14が楕円形の底面で肌側に膨出するようになり、楕円形の短手方向(ナプキン幅方向)における第1凸部14の外形線の勾配が、楕円形の長手方向(ナプキン長手方向)における第1凸部14の外形線の勾配より相対的に急勾配となるため、第1凸部14の頂部に存在する体液が急勾配となる楕円形の短手方向(ナプキン幅方向)に流れやすくなり、この楕円形の短手方向に形成された体液貯留空間Sに体液が流れ込みやすくなる。
【0052】
前記仮想線13の平面寸法は、
図6に示されるように、長手寸法L
13が4.0mm〜10.0mm、短手寸法W
13が3.5mm〜7.5mmとするのがよい。
【0053】
前記第1エンボス10は、前記仮想線13に沿って間欠的に配置されている。前記仮想線13に沿って配置される第1エンボス10の数は、少なくとも3つ、好ましくは4つ乃至8つ、より好ましくは
図6に示される4つとするのがよい。楕円形の仮想線13に4つの第1エンボス10、10…を配置する場合、楕円形の四半円点、つまり仮想線13と楕円形の長手方向中心線CL及び幅方向中心線CWとの各交点に中心C
10が位置するようにそれぞれ配置するのが好ましい。これにより、第1エンボス10、10…で囲まれた領域がより明確に肌側に膨出するようになり、第1凸部14がきっちりと形成できるようになる。
【0054】
前記第1エンボス10は、第2エンボス11より相対的に大きな面積で形成するのがよい。具体的には、第1エンボス10の面積は、第2エンボス11の面積の2倍〜4倍、好ましくは3倍程度とするのがよい。これにより、第1エンボス10、10…によって肌側に膨出する第1凸部14がより明確に形成されるようになるとともに、前記第2エンボス11、11…を付与することにより設けられる後述する流下促進斜面17がより明確になり、体液がこの流下促進斜面17に沿って流れやすくなる。第1エンボス10及び第2エンボス11の面積とは、各エンボス10、11の底面の面積のことである。なお、第1エンボス10と第2エンボス11とを同等の面積で形成してもよいし、第1エンボス10より第2エンボス11の方が大きな面積となるように形成してもよい。
【0055】
前記第1エンボス10の平面形状は、
図6に示されるように、両側縁が直線からなるとともに、両端縁が半円弧からなる長円形とするのがよい。この長円形の第1エンボス10は、長手方向を前記仮想線13の接線方向に配向するのが好ましい。これにより、第1エンボス10、10…で囲まれた領域がより明確に肌側に膨出するようになり、第1凸部14がきっちりと形成できるようになる。また、前記第1エンボス10の平面形状は、長円形の他、円、楕円、四角形、多角形など種々の形態で形成することも可能である。
【0056】
前記第1エンボス10の平面寸法(エンボス底面の寸法)は、
図6に示されるように仮想線13の接線方向に長い平面形状とした場合、長手寸法L
10を1.0mm〜5.0mm、短手寸法W
10を0.5mm〜3.0mmとするのが好ましい。
【0057】
一方、第2エンボス11は、
図6に示されるように、前記仮想線13に沿った隣り合う第1エンボス10、10同士の中間であって、第2エンボス11の中心C
11が前記仮想線13より内側に位置するように配置されている。つまり、第2エンボス11の中心C
11は、前記仮想線13より内側の半径方向に偏心量Uを有するように配置されている。
【0058】
前記第2エンボス11の中心C
11を仮想線13より内側に位置させる際の偏心量U(第2エンボス11の中心C
11と仮想線13との前記仮想線13の半径方向の離間距離)は、仮想線13が第2エンボス11のエンボス内を通過する範囲とするのがよい。つまり、第2エンボス11を円形とした場合、前記偏心量Uは、第2エンボス11の半径以内とするのが好ましい。仮にこれより内側に偏心させた場合には、第2エンボス11によって前記第1凸部14の膨出高さが低下し、第1凸部14の傾斜による体液の流れを阻害するおそれがある。
【0059】
前記第2エンボス11は、
図6に示されるように、平面形状が円形であるのが好ましい。第2エンボス11を円形とすることにより、仮想線13の中心側に膨出する円弧部分が第1凸部14の外側に膨出する湾曲面と対向して、第2エンボス11による後述する流下促進斜面17がきっちりと形成できるようになる。前記第2エンボス11の平面形状は、円形の他、長円形、楕円、四角形、多角形など種々の形態で形成することも可能である。前記第2エンボス11として長手方向と短手方向を有する平面形状で形成した場合、長手方向が近接する仮想線13の接線方向と平行するように配置するのが好ましい。
【0060】
前記第2エンボス11の平面寸法(エンボス底面の寸法)は、
図6に示されるように円形(長手寸法L
11=短手寸法W
11)とした場合、0.5mm〜3.0mmとするのが好ましい。また、長手方向と短手方向を有する平面形状で形成した場合、長手寸法L
11を0.5mm〜4.0mm、短手寸法W
11を0.5mm〜3.0mmとするのが好ましい。
【0061】
前記第2エンボス11の幅(円形の場合の直径)は、前記第1エンボス10の幅(長円形の場合の短手寸法)とほぼ同じ寸法で形成するのがよい。これにより、第1凸部14及び後述する流下促進斜面17が確実に形成されるとともに、エンボスによる硬さの影響が緩和できるようになる。すなわち、第1エンボス10と第2エンボス11とをほぼ同等の幅で形成することにより、第1エンボス10の中心C
10を通る仮想線13より第2エンボス11の中心C
11を内側に位置させたときに、第1エンボス10の内側縁を基端として肌側に膨出する第1凸部14に、第2エンボス11の内側縁が食い込むように配置されるため、後述する流下促進斜面17が確実に形成できるようになる。
【0062】
前記第2エンボス11は、前記仮想線13に沿って隣り合う第1エンボス10、10の中間に、1又は複数配置することができる。
図6に示す例では、隣り合う第1エンボス10、10間の中央部に、1つの第2エンボス11が配置されている。すなわち、楕円形の仮想線13に対して、長手方向及び短手方向の各頂部に第1エンボス10が配置され、その中間部にそれぞれ第2エンボス11が配置されている。このため、
図2に示されるように、第1画成領域12を縦横に格子状に配列した状態では、隣り合う前記第1画成領域12、12…で四隅が囲まれた部分の近傍には、4つの第2エンボス11、11…が位置するようになる。なお、第1エンボス10、10間に2つ以上の第2エンボス11…を配置する場合には、ほぼ等間隔に離間して配置するのがよい。
【0063】
次に、前記第1画成領域12に形成される第1凸部14の断面形状について説明する。前記第1凸部14の断面形状は、隣接する第1エンボス10、10の中心を通る断面(ナプキン幅方向の断面)では、
図7に示されるように、前記第1エンボス10、10を基端とし、前記仮想線13を底面とする外側に膨出するドーム状の外形で形成されている。
【0064】
一方、対角部分に存在する第2エンボス11、11を通る断面(斜め方向の断面)では、
図8に示されるように、前記第2エンボス11の中心C
11を仮想線13より内側に位置させてあるため、第1エンボス10によって形成されたドーム状の外形より内側に喰い込んで第2エンボス11が施されるようになる。このため、この断面視で、第2エンボス11の近傍領域には、第1凸部14の外形が内側に凹んだような、内側に膨出するとともに前記第1エンボス10、10を通る断面視の外形線より相対的に急勾配な流下促進斜面17が形成されるようになる。この流下促進斜面17は、
図6に示されるように、第2エンボス11から第1凸部14の中心に向けて所定の範囲に及ぶように形成されている。
【0065】
このように、第1凸部14に流下促進斜面17が設けられることにより、第1凸部14の頂部に体液が存在する場合、この体液は、前記第2エンボス11を施すことによって急勾配となった流下促進斜面17の方に流れやすくなり、前記第2エンボス11が施された体液貯留空間Sに流れ込みやすくなる。したがって、透液性表面シート3の表面に液残りすることがなくなり、肌面に体液が付着しにくく、表面のさらっと感が向上できるようになる。
【0066】
また、第1エンボス10及び第2エンボス11がそれぞれ間欠的に設けられているため、エンボスによる硬さの影響が少なく、肌ざわりの良さが維持できるようになる。
【0067】
一方、前記第2画成領域16では、
図2に示されるように、周囲の四方に配置された各第1画成領域12の少なくとも第2エンボス11を基端として、これら第2エンボス11、11…で囲まれた領域の透液性表面シート3が肌側に膨出することにより、第2凸部15が形成されている。
【0068】
前記第2画成領域16は、
図2に示される例では、周囲の四方に配置された各第1画成領域12に配設された第2エンボス11を1つずつ含むように設けられることにより、合計4つの第2エンボス11、11…が配設されている。前記第2画成領域16では、各第1画成領域12に配設された第2エンボス11を2つ以上含むようにしてもよいし、第1エンボス10を含むようにしてもよい。
【0069】
第2画成領域16では、この4つの第2エンボス11、11…は閉合する第2仮想線18上に中心が位置するように配置されている。前記第2仮想線18は、ナプキン長手方向に長い楕円形であるのが好ましいが、円形、多角形、ナプキン幅方向に長い楕円形としてもよい。前記第2仮想線18の平面寸法は、
図2に示されるように、長手寸法L
18が2.0mm〜4.0mm、短手寸法W
18が2.0mm〜3.5mmとするのがよい。
【0070】
前記第2凸部15の断面形状は、
図4に示されるように、いずれの方向の断面視においても外形が外側に膨出するドーム状に形成されている。
【0071】
前述の通り、前記第2画成領域16に形成される第2凸部15は、体液貯留空間Sに設けられるものであるので、前記第2凸部15の基端となる第2エンボス11は、体液貯留空間Sに形成されている。このため、体液貯留空間Sに溜まった体液は、第2エンボス11を通じて吸収体4側に吸収されやすくなっている。
【0072】
前記第1画成領域12において、前記仮想線13の線上に前記第1エンボス10及び第2エンボス11が重なる割合は、仮想線13の長さに対し、30%〜80%が好ましく、65%〜75%がより好ましい。また、第2画成領域16において、第2エンボス11、11…の中心を通る円形又は楕円形の第2仮想線18を引いたとき、この第2仮想線18の線上に前記第2エンボス11が重なる割合は、第2仮想線18の長さに対し、30%〜80%が好ましく、35%〜45%がより好ましい。エンボスを付加することによって、透液性表面シート3とセカンドシート5が接合され、接合部分の繊維が密になって体液が吸収されやすくなるが、仮想線13、18上のエンボスの割合が30%より小さいと、体液吸収の効果が生じにくくなる一方で、この割合が80%より大きいと、エンボスによる硬さを感じやすくなる。
【0073】
〔開孔20及び窪み部21について〕
本生理用ナプキン1では、
図2に示されるように、上述の凹凸パターンが付与された透液性表面シート3の前記第2凸部15に、該透液性表面シート3を厚み方向に貫通する開孔20が設けられている。
【0074】
これによって、粘度の低いさらっとした経血はもとより、粘度の高い粘り気のあるドロッとした経血でも、前記開孔20を通じて透液性表面シート3の通過が容易となり、表面の液残りが生じにくく、体液吸収時におけるべた付き感が解消する。
【0075】
特に、本生理用ナプキン1では、上述の通り、第1凸部14に流下促進斜面17を形成することにより、第2凸部15が設けられた体液貯留空間Sに体液が流れ込みやすい構造となっているため、体液貯留空間Sに流れ込んだ体液が、第2凸部15に形成された前記開孔20を通じて透液性表面シート3を通過しやすくなっている。
【0076】
ここで、前記透液性表面シート3に設けられる開孔20は、第1凸部14を避けて、これより相対的に低い高さの第2凸部15に形成されているため、第1凸部14が第2凸部15より高く肌側に膨出した状態が維持でき、第1凸部14によって肌面と接触するので、前記開孔20を設けたことにより肌トラブルが生じるようなおそれがなくなる。
【0077】
本生理用ナプキン1では、上述の凹凸パターンが付与された透液性表面シート3とセカンドシート5との積層体を吸収体4の肌面に積層した状態で、前記第2凸部15、15…に、透液性表面シート3の表面側からピンエンボスを施すことによって、
図4に示されるように、透液性表面シート3及びセカンドシート5にそれぞれ開孔20、22を形成するとともに、吸収体4の透液性表面シート3側の面に窪み部21を形成するのが望ましい。
【0078】
このように、本生理用ナプキン1では、前記透液性表面シート3及びセカンドシート5にそれぞれ開孔20、22を形成するとともに、吸収体4の透液性表面シート3側の面に窪み部21を形成してあるため、粘度の低いさらっとした経血はもとより、粘度の高い粘り気のあるドロッとした経血でも、前記開孔20、22を通じた透液性表面シート3及びセカンドシート5の通過が容易となり、表面の液残りが生じにくく、体液吸収時におけるべた付き感が解消する。また、これら開孔20、22を通過した体液が吸収体4の窪み部21に入り込むことにより、体液が吸収体4に素早く吸収されるようになる。
【0079】
前記ピンエンボスは、前記吸収体4の肌面にセカンドシート5及び透液性表面シート3を積層した状態で、透液性表面シート3の表面側から先端が細く鋭く尖った針状のニードル状突起を突き刺すことによって、透液性表面シート3及びセカンドシート5にそれぞれ開孔20、22を形成するとともに、吸収体4に窪み部21を形成するものである。
【0080】
前記ピンエンボスは、ドーム状に膨出した第2凸部15の頂部に前記ニードル状突起を突き刺すことにより、前記第2凸部15の頂部からナプキン厚み方向に対して同一軸上に前記開孔20、22及び窪み部21を形成するのが好ましい。前記第2凸部15の頂部に前記開孔20を形成することによって、この開孔20を通じて透液性表面シート3を通過した体液が、再びこの開孔20を通じて肌側に逆戻りするのが抑制され、表面の液残りがより一層生じにくくなる。
【0081】
前記透液性表面シート3の開孔20は、前記ピンエンボスによって透液性表面シート3を表面側と裏面側との厚み方向に貫通させた貫通孔である。前記開孔20は、平面視円形状に形成するのが好ましいが、楕円形や長円形、多角形状に形成してもよい。
【0082】
前記第2凸部15にピンエンボスを施した際、
図4に示されるように、透液性表面シート3の開孔20の周縁部は、透液性表面シート3より非肌側に配設される部材(セカンドシート5や吸収体4)に接続することなく、この部材より肌側に離間して設けてもよいし、
図9に示されるように、吸収体4の窪み部21を被覆するように形成してもよい。
【0083】
すなわち、
図4に示される例では、透液性表面シート3に開孔20を形成した状態で、前記第2凸部15において、透液性表面シート3が肌側にドーム状に膨出し、透液性表面シート3とセカンドシート5との間にドーム状の空間部が形成された状態が維持されている。これによって、前記開孔20を通じて透液性表面シート3を通過した体液が肌側に逆戻りするのがより一層防止できるようになる。前記透液性表面シート3の開孔20の周縁部が非肌側の部材に接続することなく肌側に離間するように設けるには、ピンエンボスを施す際に、先端が特に細く鋭く尖ったニードル状突起を用いて、このニードル状突起で透液性表面シート3を突き刺すことにより透液性表面シート3が吸収体4側に引っ張られることなくスムーズに開孔20が形成されるようにしてもよいし、透液性表面シート3を熱可塑性の素材で構成し、所定温度に加熱したニードル状突起でピンエンボスを施すことによって、前記透液性表面シート3を軟化させながら開孔20を形成するようにしてもよい。前記開孔20の周縁は、
図4に示されるように、非肌側に延在することなく、左右の縁部が対向するように形成してもよいし、図示しないが、周縁が非肌側に屈曲して、非肌側のセカンドシート5や吸収体4に接しない程度に若干非肌側に延びるように形成してもよい。
【0084】
一方、
図9に示される例では、透液性表面シート3の開孔20の周縁部及びセカンドシート5の開孔22の周縁部がそれぞれ吸収体4側に引き伸ばされ、吸収体4の窪み部21の内面を被覆するように形成されている。これによって、透液性表面シート3の開孔20を通過した体液は、引き伸ばされた開孔20の周縁部に沿って、吸収体4の窪み部21にそのまま浸入するようになり、この窪み部21を通じた吸収体4への体液吸収が生じやすくなる。本例では、肌側に膨出する第2凸部15を構成する透液性表面シート3のうち、開孔20の周縁部のみが引き伸ばされて非肌側のセカンドシート5や吸収体4に接続され、それ以外の第2凸部15は肌側に膨出した状態が保持されている。すなわち、前記第2凸部15の内部は、開孔20から延在する透液性表面シート3の周囲にドーナツ状の空間が形成されるようになる。前記透液性表面シート3の開孔20の周縁部が吸収体4の窪み部21を被覆するように形成するには、ピンエンボスを施す際に、先端が若干細くなったニードル状突起を用い、透液性表面シート3の表面側に突き刺したときに、肌側に膨出した部分では開孔せず、ニードル状突起の先端がセカンドシート5や吸収体4部分まで達したときに、これらの反力が加わることによって透液性表面シート3を貫通できるような構成とすることができる。
【0085】
前記透液性表面シート3に設けられる開孔20の面積は、前記第2凸部15が肌側に膨出する基端の面積に対して、0.1%〜50%、好ましくは3%〜30%、より好ましくは5%〜15%とするのがよい。具体的な前記開孔20の面積としては、0.01mm
2〜8mm
2、好ましくは0.1mm
2〜8mm
2、より好ましくは0.3mm
2〜5mm
2とするのがよい。開孔20の面積が小さすぎると、粘り気のあるドロッとした経血などが通過できなくなるし、開孔20の面積が大きすぎると、開孔20を通じて体液の逆戻りが生じるおそれがあるとともに、開孔20を大きくするに従って吸収体4の窪み部21が大きくなる関係上、吸収体4の体液の吸収容量が減少するという問題が生じるようになる。
【0086】
前記窪み部21は、前記吸収体4の表面側(透液性表面シート3側)から前記ピンエンボスを施すことによって、前記吸収体4を所定の深さまで圧搾した凹部である。この窪み部21は、吸収体4の裏面側まで貫通せず、吸収体4の底部を有している。前記窪み部21は、前記透液性表面シート3の開孔20に対して、ナプキン厚み方向にほぼ同軸上に形成されている。前記窪み部21の周辺では、吸収体の繊維が密に形成されており、繊維の毛管現象による体液の引き込み作用が高められている。
【0087】
前記窪み部21は、吸収体4の表面側と裏面側とを貫通せずに、所定の深さを有する窪み状に形成するのが好ましい。これにより、窪み部21の底部からの体液吸収も可能になり、吸収体4の吸収容量が低減するのが抑えられるようになる。前記窪み部21の深さは、吸収体4の厚みの20%〜90%、好ましくは30%〜60%とするのがよい。
【0088】
前記窪み部21の断面形状は、
図4に示されるように、底部にいくに従って細くなる円錐状に形成するのが好ましい。前記吸収体4の肌側面における窪み部21の面積は、該窪み部21を透液性表面シート3の表面側からニードル状突起を突き刺すことによって形成する関係上、前記透液性表面シート3の開孔20とほぼ同等かそれより小さく形成され、具体的には0.01mm
2〜6mm
2、好ましくは、0.1mm
2〜6mm
2とするのがよい。
【0089】
前記セカンドシート5の開孔22は、前記ピンエンボスによってセカンドシート5を表面側と裏面側との厚み方向に貫通させた貫通孔である。この開孔22は、前記透液性表面シート3の開孔20に対して、ナプキン厚み方向にほぼ同軸上に形成されている。
【0090】
前記開孔22は、平面視円形状に形成するのが好ましいが、前記透液性表面シート3の開孔20に合わせて楕円形や長円形、多角形状に形成してもよい。前記開孔22の面積は、該開孔22を透液性表面シート3の表面側からニードル状突起を突き刺すことによって形成する関係上、前記透液性表面シート3の開孔20とほぼ同等かそれより小さく形成され、具体的には、0.01mm
2〜7mm
2、好ましくは、0.1mm
2〜7mm
2とするのがよい。
【0091】
前記開孔22の周縁部は、前記透液性表面シート3の開孔20の周縁部と同様に、
図4に示されるように、吸収体4の肌側に離間するように形成してもよいし、
図9に示されるように、吸収体4の窪み部21を被覆するように形成してもよい。
【0092】
ところで、前記ピンエンボスは、
図1に示されるように、全ての第2凸部15、15…に施してもよいし、
図10に示されるように、着用者の体液排出部に対応する領域にのみ施してもよい。
【0093】
また、前記ピンエンボスは、所定の領域に存在する全ての第2凸部15に対し施してもよいし、1箇所置きや複数箇所置きなどのように数箇所に1つの割合で施すようにしてもよい。
【0094】
〔製造方法〕
次に、前記生理用ナプキン1の製造方法のうち、前記透液性表面シート3に凹凸パターンを形成した後、ピンエンボス加工を施す工程について詳細に説明する。
【0095】
前記透液性表面シート3に凹凸パターンを形成するとともに、透液性表面シート3とセカンドシート5との積層構造を製造するには、
図11に示される凹凸パターン加工装置30が使用される。
【0096】
前記凹凸パターン加工装置30は、表面に、前記第1凸部14に対応する多数の凸状部と、前記第2凸部15に対応する多数の凸状部と、前記第1エンボス10に対応する多数の凹状部と、前記第2エンボス11に対応する多数の凹状部とが配置された第1エンボスロール31と、この第1エンボスロール31に対向配置されるとともに、表面に前記第1エンボスロール31の凸状部に対応する多数の凹状部と、前記第1エンボスロール31の凹状部に対応する多数の凸状部とが配置された第2エンボスロール32と、表面がフラットなフラットロール33とを備えた装置であり、前記透液性表面シート3を前記第1エンボスロール31と第2エンボスロール32との間を通過させることにより前記第1エンボスロール31の凸状部と第2エンボスロール32の凹状部との噛み合わせによって、前記第1凸部14及び第2凸部15の加工処理を行い、次いで前記透液性表面シート3が第2エンボスロール32表面を走行し、透液性表面シート3のエンボス加工部分を前記第2エンボスロール32の凹状部及び凸状部に保持した状態のまま、別途繰り出されたセカンドシート5と積層され、これら透液性表面シート3とセカンドシート5との積層状態で第2エンボスロール32とフラットロール33との間を通過させることにより、前記第2エンボスロール32の凸状部によって第1エンボス10及び第2エンボス11の加工処理を行い、透液性表面シート3とセカンドシート5とを熱融着して接合するようにしたものである。
【0097】
次に、前記凹凸パターン加工装置30によって製造した透液性表面シート3とセカンドシート5との積層体を吸収体4の上面に積層した後、ピンエンボス加工を施す工程について説明する。
【0098】
前記ピンエンボス加工としては、前記透液性表面シート3とセカンドシート5との積層構造を吸収体4の上面に積層した状態で、平板状又はロール状の表面に多数のニードル状突起が備えられたエンボス装置によって、前記ニードル状突起が前記透液性表面シート3の第2凸部15に位置するように位置合わせをした上で、前記透液性表面シート3の第2凸部15に、透液性表面シート3の表面側からピンエンボスを施す方法を用いることができる。
【0099】
また、前記ピンエンボス加工を施すに当たって、前記凹凸パターン加工装置30を変形した加工装置34によって、前記透液性表面シート3の凹凸パターン加工とピンエンボスとを同時に施すようにしてもよい。前記加工装置34は、
図12に示されるように、表面に、前記第1凸部14に対応する多数の凸状部35a、35a…と、前記第2凸部15に対応する多数の凸状部35b、35b…と、前記第1エンボス10に対応する多数の凹状部(図示せず)と、前記第2エンボス11に対応する多数の凹状部35c、35c…と、前記第2凸部15に対応する凸状部35bの頂部に設けられる凹状部35dとが配置された第1エンボスロール35と、この第1エンボスロール35に対向配置されるとともに、表面に、前記第1エンボスロール35の凸状部35aに対応する多数の凹状部36a、36a…と、前記第1エンボスロール35の凸状部35bに対応する多数の凹状部36b、36b…と、前記第1エンボスロール35の凹状部35cに対応する多数の凸状部36c、36c…と、前記第1エンボスロール35の凹状部35dに多数のニードル状突起36d、36d…とが配置された第2エンボスロール36と、この第2エンボスロール36に対向配置されるとともに、表面に前記ニードル状突起36dに対応する多数の凹状部37a、37a…が配置された第3エンボスロール37と、前記第2エンボスロール36に対向配置された表面がフラットなフラットロール38とを備えた装置であり、前記透液性表面シート3を前記第1エンボスロール35と第2エンボスロール36との間を通過させることにより前記第1エンボスロール35の凸状部35aと第2エンボスロール36の凹状部36aとの噛み合わせによって第1凸部14の加工処理と、前記第1エンボスロール35の凸状部35bと第2エンボスロール36の凹状部36bとの噛み合わせによって第2凸部15の加工処理と、前記第1エンボスロール35の凹状部35dと第2エンボスロール36のニードル状突起36dとの噛み合わせによって透液性表面シート3の第2凸部15に設けられる開孔20の開孔処理とを行い、次いで前記透液性表面シート3が第2エンボスロール36表面を走行し、透液性表面シート3の加工部分を第2エンボスロール36の凹状部、凸状部及びニードル状突起36dに保持した状態のまま、別途繰り出されたセカンドシート5と積層され、これら透液性表面シート3とセカンドシート5との積層状態で第2エンボスロール36と第3エンボスロール37との間を通過させることにより、前記第2エンボスロール36のニードル状突起36dと第3エンボスロール37の凹状部37aとの噛み合わせによってセカンドシート5に設けられる開孔22の開孔処理と、前記第2エンボスロール36の凸状部36cなどによって第1エンボス10及び第2エンボス11により透液性表面シート3とセカンドシート5とを熱融着して接合する加工処理とを行い、最後に前記透液性表面シート3及びセカンドシート5が第2エンボスロール36の表面を走行し、透液性表面シート3の加工部分を前記第2エンボスロール36の凹状部、凸状部及びニードル状突起36dに保持するとともに、セカンドシート5の開孔処理部分を前記第2エンボスロール36のニードル状突起36dに保持した状態のまま、別途繰り出された吸収体4と積層され、これら透液性表面シート3、セカンドシート5及び吸収体4の積層状態で第2エンボスロール36とフラットロール38との間を通過させることにより、前記第2エンボスロール36のニードル状突起36dを前記吸収体4に突き刺すことによって吸収体4に窪み部21の加工処理を行うようにしたものとすることができる。
【0100】
〔他の形態例〕
(1)上記形態例では、仮想線13をナプキン長手方向に長い楕円形としたが、円形や多角形などでもよく、またナプキン幅方向に長い形状に形成してもよい。
(2)前記セカンドシート5として、エアレイド吸収体に高吸水性樹脂を混入したものなどを用いることにより、前記セカンドシート5を吸収体として機能させ、前記吸収体4をなくしてもよい。