特許第6028087号(P6028087)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6028087
(24)【登録日】2016年10月21日
(45)【発行日】2016年11月16日
(54)【発明の名称】回転式圧縮機および冷凍サイクル装置
(51)【国際特許分類】
   F04C 18/356 20060101AFI20161107BHJP
   F04C 23/00 20060101ALI20161107BHJP
【FI】
   F04C18/356 T
   F04C18/356 F
   F04C23/00 F
【請求項の数】9
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-507939(P2015-507939)
(86)(22)【出願日】2013年10月30日
(86)【国際出願番号】JP2013079430
(87)【国際公開番号】WO2014155803
(87)【国際公開日】20141002
【審査請求日】2015年4月7日
(31)【優先権主張番号】特願2013-66006(P2013-66006)
(32)【優先日】2013年3月27日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】505461072
【氏名又は名称】東芝キヤリア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】特許業務法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】青木 俊公
(72)【発明者】
【氏名】加藤 久尊
(72)【発明者】
【氏名】畑山 昌宏
(72)【発明者】
【氏名】川辺 功
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 桂一
【審査官】 鈴木 貴雄
(56)【参考文献】
【文献】 特許第4488104(JP,B2)
【文献】 特許第5079670(JP,B2)
【文献】 実開昭63−012685(JP,U)
【文献】 特開2014−34940(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/025025(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 18/356
F04C 23/00
F04C 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダ室を有するシリンダと、
前記シリンダ室内に収容されて回転軸の回転を受けて偏心回転するローラと、
前記ローラに当接して往復動し前記シリンダ室内を圧縮側と吸込み側に区画する、互いに前記回転軸の軸方向に重ねられる第1のベーンおよび第2のベーンと、
前記第1,第2のベーンを前記ローラに向って付勢する1つの付勢部材と、
を備え、
前記第1のベーンの後端部の前記軸方向に沿う両端部側に、前記軸方向の寸法が同じである第1のベーン側取付部が設けられ、前記第2のベーンの後端部の前記軸方向に沿う両端部側に、前記軸方向の寸法が同じである第2のベーン側取付部が設けられ、
前記第1,第2のベーン側取付部は、前記付勢部材側に突出する突出部であり、
前記軸方向において前記第2のベーン側の端部に設けられた前記第1のベーンの前記突出部と、前記軸方向において前記第1のベーン側の端部に設けられた前記第2のベーンの前記突出部とが重なった状態で前記付勢部材に嵌められることにより、前記第1,第2のベーンが前記付勢部材に取り付けられている、
回転式圧縮機。
【請求項2】
シリンダ室を有するシリンダと、
前記シリンダ室内に収容されて回転軸の回転を受けて偏心回転するローラと、
前記ローラに当接して往復動し前記シリンダ室内を圧縮側と吸込み側に区画する、互いに前記回転軸の軸方向に重ねられる第1のベーンおよび第2のベーンと、
前記第1,第2のベーンを前記ローラに向って付勢する1つの付勢部材と、
を備え、
前記第1のベーンの後端部の前記軸方向に沿う両端部側に、前記軸方向の寸法が同じである第1のベーン側取付部が設けられ、前記第2のベーンの後端部の前記軸方向に沿う両端部側に、前記軸方向の寸法が同じである第2のベーン側取付部が設けられ、
前記第1,第2のベーン側取付部は、前記ローラ側に凹む凹部であり、
前記軸方向において前記第2のベーン側の端部に設けられた前記第1のベーンの前記凹部と、前記軸方向において前記第1のベーン側の端部に設けられた前記第2のベーンの前記凹部とが合わさって形成される凹部内に前記付勢部材が嵌められることにより、前記第1,第2のベーンが前記付勢部材に取り付けられている、
回転式圧縮機。
【請求項3】
シリンダ室を有するシリンダと、
前記シリンダ室内に収容されて回転軸の回転を受けて偏心回転するローラと、
前記ローラに当接して往復動し前記シリンダ室内を圧縮側と吸込み側に区画する、互いに前記回転軸の軸方向に重ねられる第1のベーンおよび第2のベーンと、
前記第1,第2のベーンを前記ローラに向って付勢する1つの付勢部材と、
を備え、
前記第1のベーンの後端部の前記軸方向に沿う両端部側に、前記軸方向の寸法が同じである第1のベーン側取付部が設けられ、前記第2のベーンの後端部の前記軸方向に沿う両端部側に、前記軸方向の寸法が同じである第2のベーン側取付部が設けられ、
前記軸方向において前記第1のベーンの前記第2のベーン側の端部に設けられた前記第1のベーン側取付部と、前記軸方向において前記第2のベーンの前記第1のベーン側の端部に設けられた前記第2のベーン側取付部とを用いて、前記第1,第2のベーンが前記付勢部材に取り付けられている、
回転式圧縮機。
【請求項4】
前記付勢部材は、コイルスプリングであ
請求項1乃至3のうちいずれか1項に記載の回転式圧縮機。
【請求項5】
前記第1,第2のベーンは、それぞれ、前記軸方向の中心線に対して対称な形状である、
請求項1乃至4のうちいずれか1項に記載の回転式圧縮機。
【請求項6】
回転式圧縮機と、
凝縮器と、
膨張装置と、
蒸発器と、
前記回転式圧縮機と前記凝縮器と前記膨張装置と前記蒸発器とを連通する冷媒管と、
を備え、
前記回転式圧縮機は、
シリンダ室を有するシリンダと、
前記シリンダ室内に収容されて回転軸の回転を受けて偏心回転するローラと、
前記ローラに当接して往復動し前記シリンダ室内を圧縮側と吸込み側に区画する、互いに前記回転軸の軸方向に重ねられる第1のベーンおよび第2のベーンと、
前記第1,第2のベーンを前記ローラに向って付勢する1つの付勢部材と、
を備え、
前記第1のベーンの後端部の前記軸方向に沿う両端部側に、前記軸方向の寸法が同じである第1のベーン側取付部が設けられ、前記第2のベーンの後端部の前記軸方向に沿う両端部側に、前記軸方向の寸法が同じである第2のベーン側取付部が設けられ、
前記第1,第2のベーン側取付部は、前記付勢部材側に突出する突出部であり、
前記軸方向において前記第2のベーン側の端部に設けられた前記第1のベーンの前記突出部と、前記軸方向において前記第1のベーン側の端部に設けられた前記第2のベーンの前記突出部とが重なった状態で前記付勢部材に嵌められることにより、前記第1,第2のベーンが前記付勢部材に取り付けられている、
冷凍サイクル装置。
【請求項7】
回転式圧縮機と、
凝縮器と、
膨張装置と、
蒸発器と、
前記回転式圧縮機と前記凝縮器と前記膨張装置と前記蒸発器とを連通する冷媒管と、
を備え、
前記回転式圧縮機は、
シリンダ室を有するシリンダと、
前記シリンダ室内に収容されて回転軸の回転を受けて偏心回転するローラと、
前記ローラに当接して往復動し前記シリンダ室内を圧縮側と吸込み側に区画する、互いに前記回転軸の軸方向に重ねられる第1のベーンおよび第2のベーンと、
前記第1,第2のベーンを前記ローラに向って付勢する1つの付勢部材と、
を備え、
前記第1のベーンの後端部の前記軸方向に沿う両端部側に、前記軸方向の寸法が同じである第1のベーン側取付部が設けられ、前記第2のベーンの後端部の前記軸方向に沿う両端部側に、前記軸方向の寸法が同じである第2のベーン側取付部が設けられ、
前記第1,第2のベーン側取付部は、前記ローラ側に凹む凹部であり、
前記軸方向において前記第2のベーン側の端部に設けられた前記第1のベーンの前記凹部と、前記軸方向において前記第1のベーン側の端部に設けられた前記第2のベーンの前記凹部とが合わさって形成される凹部内に前記付勢部材が嵌められることにより、前記第1,第2のベーンが前記付勢部材に取り付けられている、
冷凍サイクル装置。
【請求項8】
回転式圧縮機と、
凝縮器と、
膨張装置と、
蒸発器と、
前記回転式圧縮機と前記凝縮器と前記膨張装置と前記蒸発器とを連通する冷媒管と、
を備え、
前記回転式圧縮機は、
シリンダ室を有するシリンダと、
前記シリンダ室内に収容されて回転軸の回転を受けて偏心回転するローラと、
前記ローラに当接して往復動し前記シリンダ室内を圧縮側と吸込み側に区画する、互いに前記回転軸の軸方向に重ねられる第1のベーンおよび第2のベーンと、
前記第1,第2のベーンを前記ローラに向って付勢する1つの付勢部材と、
を備え、
前記第1のベーンの後端部の前記軸方向に沿う両端部側に、前記軸方向の寸法が同じである第1のベーン側取付部が設けられ、前記第2のベーンの後端部の前記軸方向に沿う両端部側に、前記軸方向の寸法が同じである第2のベーン側取付部が設けられ、
前記軸方向において前記第1のベーンの前記第2のベーン側の端部に設けられた前記第1のベーン側取付部と、前記軸方向において前記第2のベーンの前記第1のベーン側の端部に設けられた前記第2のベーン側取付部とを用いて、前記第1,第2のベーンが前記付勢部材に取り付けられている、
冷凍サイクル装置。
【請求項9】
前記付勢部材は、コイルスプリングである、
請求項6乃至8のうちいずれか1項に記載の冷凍サイクル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、回転式圧縮機と、この回転式圧縮機を備えて冷凍サイクル回路を構成する冷凍サイクル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、回転式圧縮機を備えた冷凍サイクル装置がある。この種の回転式圧縮機では、駆動部としての電動機が、回転軸を介して圧縮機構部に連結されている。圧縮機構部は、シリンダ室を形成するシリンダと、シリンダ室で偏心回転するローラと、ローラに当接してシリンダ室内を圧縮側と吸込み側に区画するベーンとを備えている。1個のローラに対して1枚のベーンが用いられており、ベーンの先端はローラ周壁に摺接する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4488104号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ベーンの先端部は、ローラに摺接するため、摩耗する。ベーンの先端部が摩耗することを抑制するために、ベーンにおいてローラに摺接する部位に特殊な表面処理を施しており、コストが高くなる傾向になる。このため、ベーンの先端部が摩耗することを抑制することが求められている。また、ベーンの取付作業の効率を向上することが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態に係る回転式圧縮機は、シリンダと、ローラと、第1のベーンおよび第2のベーンと、付勢部材とを備える。
上記シリンダは、シリンダ室を有する。上記ローラは、上記シリンダ室内に収容されて回転軸の回転を受けて偏心回転する。上記第1および第2のベーンは、互いに上記回転軸の軸方向に重ねられ、上記ローラに当接して往復動し上記シリンダ室内を圧縮側と吸込み側に区画する。上記付勢部材は、上記第1,第2のベーンを上記ローラに向って付勢する。
上記第1のベーンの後端部の上記軸方向に沿う両端部側に、上記軸方向の寸法が同じである第1のベーン側取付部が設けられ、上記第2のベーンの後端部の上記軸方向に沿う両端部側に、上記軸方向の寸法が同じである第2のベーン側取付部が設けられ、上記軸方向において前記第1のベーンの上記第2のベーン側の端部に設けられた上記第1のベーン側取付部と、上記軸方向において前記第2のベーンの上記第1のベーン側の端部に設けられた上記第2のベーン側取付部とを用いて、上記第1,第2のベーンが上記付勢部材に取り付けられる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、第1の実施形態に係る冷凍サイクル装置を示す概略図である。
図2図2は、同回転式圧縮機の第1のシリンダ室とその近傍を示す平面図である。
図3図3は、同第1のシリンダの要部断面図である。
図4図4は、同回転圧式圧縮機の第1,第2のベーンの変形例を示す側面図である。
図5図5は、同回転圧式圧縮機の第1,第2のベーンの変形例を示す側面図である。
図6図6は、第2の実施形態に係る冷凍サイクル装置の回転式圧縮機の第1のシリンダ室内を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
第1の実施形態に係る回転式圧縮機と冷凍サイクル装置とを、図1〜5を用いて説明する。図1は、冷凍サイクル装置60を示す概略図である。図1に示すように、冷凍サイクル装置60は、回転式圧縮機Kと、凝縮器20と、膨張装置21と、蒸発器22と、アキュームレータ23と、冷媒管Pとを備えている。冷媒管Pは、これらの装置を、記載の順番に連通している。
【0008】
回転式圧縮機Kは、本実施形態では、一例として、2つのシリンダを備える2シリンダタイプである。図1には、回転式圧縮機Kを示す断面図が示されている。回転式圧縮機Kは、密閉ケース1と、この密閉ケース1に収容された電動機部2と、圧縮機構部3と、回転軸4と、主軸受7と、副軸受8とを備えている。
【0009】
電動機部2は、密閉ケース1の上部に配置されている。圧縮機構部3は、密閉ケース1の下部に配置されている。密閉ケース1の下部は潤滑油で満たされており、圧縮機構部3の大部分は、潤滑油中に位置している。
【0010】
電動機部2と圧縮機構部3とは、互いに回転軸4を介して連結されている。回転軸4は、電動機部2が発生する動力を圧縮機構部3に伝達する。電動機部2が回転軸4を回転駆動することにより、圧縮機構部3が後述するようにガス冷媒を吸込んで圧縮しかつ吐出する。
【0011】
前記圧縮機構部3は、上部に第1のシリンダ5aを備え、下部に第2のシリンダ5bを備えている。これら第1のシリンダ5aと第2のシリンダ5bとの間には、中間仕切り板6が介在される。
【0012】
第1のシリンダ5aの上面には、主軸受7が重ねられて配置されている。主軸受7は、密閉ケース1内周壁に取付けられている。第2のシリンダ5bの下面には、副軸受8が重ねられて配置されている。副軸受8は、第2のシリンダ5bと中間仕切り板6とともに、ボルト70によって、第1のシリンダ5aに固定されている。
【0013】
回転軸4の主軸部4aは、主軸受7に回転自在に枢支される。回転軸4の副軸部4bは、副軸受8に回転自在に枢支される。回転軸4は、第1のシリンダ5aと中間仕切り板6と第2のシリンダ5bとを貫通している。
【0014】
回転軸4は、第1の偏心部41と、第2の偏心部42とを備えている。第1の偏心部41は、第1のシリンダ5aの第1のシリンダ室10a内に収容されている。第2の偏心部42は、第2のシリンダ5bの第2のシリンダ室10b内に収容されている。第1の偏心部41と第2の偏心部42とは、同一直径を有するとともに、略180°の位相差を有しており、互いにずれて配置されている。
【0015】
第1の偏心部41の周面に第1のローラ9aが嵌合されて第1のシリンダ5aの第1のシリンダ室10a内に収容されている。第2の偏心部42の周面に第2のローラ9bが嵌合されて第2のシリンダ5b内に収容されている。第1,第2のローラ9a,9bは、回転軸4の回転にともなって、それぞれ周壁の一部が、第1のシリンダ室10aおよび第2のシリンダ室10bの周壁に沿って接触しながら偏心回転する。
【0016】
第1のシリンダ室10aは、第1のシリンダ5aの内側の空間であり、主軸受7と中間仕切り板6とによって閉塞されることによって、形成されている。第2のシリンダ室10bは、第2のシリンダ5bの内側の空間であり、中間仕切り板6と副軸受8とによって閉塞されることによって、形成されている。
【0017】
第1のシリンダ室10aと第2のシリンダ室10bの直径および、回転軸4の軸方向に沿う長さである高さ寸法は、互いに同一に設定されている。第1のローラ9aは第1のシリンダ室10aに収容され、第2のローラ9bは第2のシリンダ室10bに収容される。
【0018】
主軸受7には、一対の吐出マフラ11が取り付けられている。これら一対の吐出マフラ11は、二重に重ねられる。各吐出マフラ11には、吐出孔が設けられる。吐出マフラ11は、主軸受7に設けられる吐出弁機構12aを覆っている。副軸受8には、吐出マフラ13が取付けられている。吐出マフラ13は、副軸受8に設けられる吐出弁機構12bを覆っている。吐出マフラ13には、吐出孔は設けられていない。
【0019】
主軸受7の吐出弁機構12aは、第1のシリンダ室10aに連通し、圧縮作用にともない第1のシリンダ室10a内の圧力が上昇して所定の圧力に達したときに開放して、圧縮されたガス冷媒を吐出マフラ11内に吐出する。副軸受8の吐出弁機構12bは第2のシリンダ室10bに連通し、圧縮作用にともない第2のシリンダ室10b内の圧力が上昇して所定の圧力に達したときに開放して、圧縮されたガス冷媒を吐出マフラ13へ吐出する。
【0020】
副軸受8と、第2のシリンダ5bと、中間仕切り板6と、第1のシリンダ5aおよび主軸受7とに亘って吐出ガス案内路が設けられる。吐出マフラ13へ吐出されたガス冷媒は上記吐出ガス案内路を介して上部側の二重の吐出マフラ11内へ導かれ、吐出弁機構12aを介して吐出されたガス冷媒と混合されて密閉ケース内に吐出される。
【0021】
第1のシリンダ5aには第1のベーン部51が設けられる。第1のベーン部51は、第1のベーン51aと第2のベーン51bとを備えている。第1のベーン51aおよび第2のベーン51bは、回転軸4の軸方向である第1のシリンダ5aの高さ方向に沿って重ねて配置される。第2のベーン51bは、第1のベーン51aに対して、主軸受7側に配置される。
【0022】
第1,第2のベーン51a,51bの後端部には、後述するように付勢部材である1つのコイルスプリング16aの一端部が当接する。コイルスプリング16aは、第1,第2のベーン51a,51bの先端部が第1のローラ9aの外周面に当接するように、第1,第2のベーン51a,51bを第1のローラ9aに向って付勢する。第1,第2のベーン51a,51bに対するコイルスプリング16aの取付構造については、後で具体的に説明する。
【0023】
第1のシリンダ5aには、第1のシリンダ室10a内に開放するベーン溝17aが設けられている。さらに、第1のシリンダ5aには、ベーン溝17aの後端部にベーン背室18aが設けられている。
【0024】
ベーン溝17aには、第1のシリンダ5aの高さ方向に重ねて、第1,第2のベーン51a,51bが往復動自在に収容される。第1,第2のベーン51a,51bの先端部は、第1のシリンダ室10a内に対して突没自在であり、後端部はベーン背室18aに突没自在である。
【0025】
ベーン背室18aは、密閉ケース1内に開放している。このため、第1,第2のベーン51a,51bの後端には、密閉ケース1内の圧力が作用する。
【0026】
第1,第2のベーン51a,51bの先端部は、平面視で略円弧状に形成されている。これら先端部は、第1のシリンダ室10aに突出した状態で、平面視で円形状の第1のローラ9aの周壁に、第1のローラ9aの回転角度に拘わらず、線接触する。
【0027】
さらに、第1のシリンダ5aの外周壁には、スプリング収容孔19aが設けられている。スプリング収容孔19aは、ベーン背室18を介して第1のシリンダ室10a側まで設けられる。
【0028】
コイルスプリング16aは、スプリング収容孔19aに収容される。そして、コイルスプリング16aが圧縮機構部3として組立てられると、コイルスプリング16aの一端部が密閉ケース1の内周壁に当接する。コイルスプリング16aの他端部は、軸方向に重ねて配置された第1,第2のベーン51a,51bの両方に当接して、第1,第2のベーン51a,51bを、第1のローラ9aに向って付勢する。
【0029】
第2のシリンダ5bには、第2のベーン部52が設けられる。第2のベーン部52は、第1のベーン52aと第2のベーン52bとを備えている。第1のベーン52aおよび第2のベーン52bは、回転軸4の軸方向である第2のシリンダ5bの高さ方向に重ねて配置される。第2のベーン52bは、第1のベーン52aに対して、副軸受8側に配置される。
【0030】
第1,第2のベーン52a,52bの後端部には、後述するように付勢部材である1つのコイルスプリング16bの一端部が当接する。コイルスプリング16bは、第1,第2のベーン52a,52bの先端部が第2のローラ9bの外周面に当接するように、第1,第2のベーン52a,52bを第2のローラ9bに向って付勢する。第1,第2のベーン52a,52bに対する、コイルスプリング16bの取付構造については、後で具体的に説明する。
【0031】
第2のシリンダ5bには、第2のシリンダ室10bに開放するベーン溝17bが設けられている。さらに、第2のシリンダ5bには、ベーン溝17bの後端部にベーン背室18bが設けられている。
【0032】
ベーン溝17bには、第2のシリンダ5bの高さ方向に重ねて、第1,第2のベーン52a,52bが往復動自在に収容される。第1,第2のベーン52a,52bの先端部は、第2のシリンダ室10b内に対して突没自在であり、後端部はベーン背室18bに突没自在である。
【0033】
ベーン背室18bは、密閉ケース1内に開放している。このため、第1,第2のベーン52a,52bの後端には、密閉ケース1内の圧力が作用する。
【0034】
第1,第2のベーン52a,52bの先端部は、平面視で略円弧状に形成されている。これら先端部は、第2のシリンダ室10bに突出した状態で、平面視で円形状の第2のローラ9bの周壁に、第2のローラ9bの回転角度に拘わらず、線接触する。
【0035】
さらに、第2のシリンダ5bの外周壁には、スプリング収容孔19bが設けられている。スプリング収容孔19bは、ベーン背室18bを介して第2のシリンダ室10b側まで設けられる。
【0036】
コイルスプリング16bは、スプリング収容孔19bに収容される。そして、コイルスプリング16bが圧縮機構部3として組立てられると、コイルスプリング16bの一端部が密閉ケース1の内周壁に当接する。コイルスプリング16bの他端部は、第1,第2のベーン52a,52bの両方に当接して、第1,第2のベーン52a,52bを、第2のローラ9bに向って付勢する。
【0037】
コイルスプリング16aは、起動時等、密閉ケース1内の圧力が低い状態であって、密閉ケース1内の圧力だけでは第1,第2のベーン51a,51bを第1のローラ9aに対して十分に押し付けられないときに、第1,第2のベーン51a,51bを第1のローラ9aに付勢するものである。コイルスプリング16bも同様である。
【0038】
密閉ケース1の上端部には吐出用の冷媒管Pが接続される。この冷媒管Pには、凝縮器20と膨張装置21と蒸発器22およびアキュームレータ23が、順次連通するよう設けられる。
【0039】
アキュームレータ23から延出された2本の吸込み用の冷媒管Pが、回転式圧縮機Kの密閉ケース1を介して第1のシリンダ室10aおよび第2のシリンダ室10bに接続される。このようにして、冷凍サイクル装置の冷凍サイクル回路Rが構成される。
【0040】
図2は、第1のシリンダ室10aとその近傍を示す平面図である。第2のシリンダ室10bとその近傍の平面形状は、図2に示す第1のシリンダ室10aとその近傍の平面形状と同様である。そこで、図2では、第2のシリンダ室10bとその近傍に配置される構成の符号を括弧内に記載し、第1のシリンダ室10aとその近傍の構成の符号に併記している。以下、図2を第2のシリンダ室10bとその近傍の構成の説明にも用いる。
【0041】
図2に示すように、密閉ケース1と第1のシリンダ5aの外周壁から第1のシリンダ室10aに亘って、吸込み用孔25が設けられる。同様に、密閉ケース1と第2のシリンダ5bの外周壁から第2のシリンダ室10bに亘って、吸込み用孔25が設けられる。
【0042】
両吸込み用孔25には、アキュームレータ23から分岐された吸込み用の冷媒管Pが挿入されて固定される。第1,第2のシリンダ5a,5bでは、第1,第2のベーン部51,52と溝17a,17bを挟んで第1,第2のシリンダ5a,5bの円周方向一方側に吸込み用孔が設けられ、他方側に吐出弁機構12に連通する吐出切欠き26が設けられる。
【0043】
このようにして構成される回転式圧縮機Kは、電動機部2に通電され回転軸4が回転駆動すると、第1のシリンダ室10aにおいて第1,第2のベーン51a,51bの後端に密閉ケース1内の圧力とコイルスプリング16aの付勢力とが作用する。この付勢力により第1,第2のベーン51a,51bが第1のローラ9aの周壁に弾性的に当接するとともに、第1のローラ9aが偏心回転を行う。
【0044】
同様に、第2のシリンダ室10bにおいて第1,第2のベーン52a,52bの後端に密閉ケース1内の圧力とコイルスプリング16bの付勢力とが作用する。この付勢力により第1,第2のベーン52a,52bが第2のローラ9bの周壁に弾性的に当接するとともに、第2のローラ9bが偏心回転を行う。
【0045】
第1,第2のローラ9a,9bの偏心回転にともない、吸込み用の冷媒管Pから、第1,第2のベーン部51,52によって区画された第1,第2のシリンダ室10a,10bの吸込み側にガス冷媒が吸込まれる。さらに、ガス冷媒は、第1,第2のベーン部51,52によって区画された、第1,第2のシリンダ室10a,10bの圧縮側へ移動し圧縮される。圧縮側の容積が小さくなりガス冷媒の圧力が所定圧にまで上昇したとき、吐出弁機構12が開き、ガス冷媒は吐出孔26から吐出される。
【0046】
上部側において重ねられて配置される2つの吐出マフラ11内において、第1のシリンダ室10aから吐出されたガス冷媒と、第2のシリンダ室10bから吐出されたガス冷媒が合流する。そして、この合流したガス冷媒は、密閉ケース1内に放出される。密閉ケース1内に放出されたガス冷媒は、電動機部2を構成する部品相互間に設けられるガス案内路を介して密閉ケース1上端部に充満し、冷媒管Pから回転式圧縮機Kの外部へ吐出される。また、圧縮されたガス冷媒の圧力は、第1のベーン部51の第1,第2のベーン51a,51bの後端と、第2のベーン部52の第1,第2のベーン52a,52bの後端に作用する
高圧のガス冷媒は、凝縮器20に導かれて凝縮し、液冷媒に変る。この液冷媒は膨張装置21に導かれて断熱膨張し、蒸発器22に導かれて蒸発しガス冷媒に変る。蒸発器22において周囲の空気から蒸発潜熱を奪い、冷凍作用をなす。
【0047】
回転式圧縮機Kが空気調和機に搭載されていれば、冷房作用をなす。さらに、冷凍サイクルにおける回転式圧縮機Kの吐出側に四方切換え弁を設けて、ヒートポンプ式冷凍サイクル回路を構成してもよい。四方切換え弁により冷媒の流れを逆に切換えて、回転式圧縮機Kから吐出されたガス冷媒を直接、室内熱交換器へ導くように構成すれば、この冷凍サイクルは暖房作用をなす。
【0048】
また、回転式圧縮機Kの運転によって密閉ケース1内の圧力が高くなるにつれて、第1,第2のベーン51a,51bの後端部に作用する圧力(背圧力)が大きくなり、第1のローラ9aに対する押付力が大きくなる。同様に、第1,第2のベーン52a,52bの第2のローラ9bに対する押付力が大きくなる。
【0049】
ここで、第1のベーン部51の第1,第2のベーン51a,51bと、第2のベーン部52の第1,第2のベーン52a,52bと、第1,第2のベーン51a,51bに対するコイルスプリング16aの取付構造と、第1,第2のベーン52a,52bに対するコイルスプリング16bの取付構造について、具体的に説明する。
【0050】
まず、第1のベーン部51の第1,第2のベーン51a,51bについて説明する。図3は、第1のシリンダ5aの要部断面図である。図3に示すように、第1のベーン51aおよび第2のベーン51bは、同じ形状である。このため、第2のベーン51bを代表して説明する。第2のベーン51bは、本体部81と、第2のベーン側取付部である取付用突出部82と、位置ずれ防止用突出部83とを備えている。
【0051】
本体部81は、第2のベーン51bにおいて第1のローラ9aに接触する先端部を備える部分である。取付用突出部82は、本体部81の後端に設けられており、本体部81の後端からベーン背室18a側に突出している。
【0052】
取付用突出部82は、本体部81の後端において、回転軸4の軸方向に沿って両端部側に設けられている。両取付用突出部82は、同じ形状である。このため、一方の取付用突出部82の回転軸4の軸方向に沿う長さL1と、他方の取付用突出部82の回転軸4の軸方向に沿う長さL1は、同じ長さである。また、両取付用突出部82の、第1のベーン51bの移動方向に沿う長さL2も、同じである。そのため、第2のベーン51bを組込む際に、上下を逆にしても支障がなく、上下の方向を気にせずに組み込むことが可能である。
【0053】
位置ずれ防止用突出部83は、第2のベーン51bの後端において回転軸4の軸方向の中心に設けられている。両取付用突出部82と位置ずれ防止用突出部83との間の長さL3は、互いに同じである。
【0054】
このように、両取付用突出部82の形状が同じであるとともに、一方の取付用突出部82と位置ずれ防止用突出部83との間の距離L3と、他方の取付用突出部82と位置ずれ防止用突出部83との間の距離L3とが互いに同じであることによって、第2のベーン51bは、回転軸4の軸方向の中心線C1に対して対称な形状となる。
【0055】
第1のベーン51aは、第2のベーン51bと同じ形状である。第1のベーン51aは、第2のベーン51bと同様に、本体部81と、第1のベーン側取付部である取付用突出部82と、位置ずれ防止用突出部83とを備える。そのため、第1のベーン51aを組込む際に、上下を逆にしても支障がなく、上下の方向を気にせずに組み込むことが可能である。
【0056】
ここで、取付用突出部の長さL1について、具体的に説明する。図3に示すように、第1,第2のベーン51a,51bが第1のシリンダ5a内に収容されて互いに回転軸4の軸方向に重ねられると、第1,第2のベーン51a,51bの取付用突出部82の一方どうしが互いに重なる。コイルスプリング16aの内側には、上述のように重なった第1,第2のベーン51a,51bの取付用突出部82が嵌る。このことによって、コイルスプリング16aの一端部が、第1,第2のベーン51a,51bに取付けられる。取付用突出部82の長さL1は、図3に示すように2つ重ねられたときにコイルスプリング16a内に固定される長さを有している。取付用突出部82は、2つ並んだときに、コイルスプリング16aの一端部を固定する機能を有するようになる。
【0057】
第1,第2のベーン51a,51bが同じ形状であることによって、第1,第2のベーン51a,51bを第1のシリンダ室10a内に取り付ける際に、第1,第2のベーン51a,51bの位置を取り違えても、言い換えると、図3に示す第1のベーン51aの位置に第2のベーン51bが配置され、かつ、図3に示す第2のベーン51bの位置に第1のベーン51aが配置されても、互いに並ぶ第1のベーン51aの取付用突出部82と第2のベーン51bの取付用突出部82とにコイルスプリング16aが固定される。
【0058】
次に、第2のベーン部52の第1,第2のベーン52a,52bについて説明する。本実施形態では、第2のベーン部52は、第1のベーン部51と同様の構造を有している。このため、第2のベーン部52の説明に、図3を利用する。図3において、第2のベーン部52の構造を示す符号は、第1のベーン部51の対応する構造の符号に並んで括弧内に記載する。
【0059】
図3は、第2のシリンダ5bの第2のシリンダ室10b内を示す断面図である。図3に示すように、第1,第2のベーン52a,52bとは、同じ形状である。このため、第2のベーン52bを代表して説明する。第2のベーン52bは、本体部91と、第2のベーン側取付部である取付用突出部92と、位置ずれ防止用突出部93とを備えている。
【0060】
本体部91は、第2のベーン52bにおいて第2のローラ9bに接触する先端部を備える部分である。取付用突出部92の後端に設けられており、本体部91の後端からベーン背室18b内に突出している。
【0061】
取付用突出部92は、本体部91の後端において、回転軸4の軸方向に沿って両端部に設けられている。両取付用突出部92は、同じ形状である。このため、一方の取付用突出部92の回転軸4の軸方向に沿う長さL4と、他方の取付用突出部92の回転軸4の軸方向に沿う長さL4は、同じ長さである。また、両取付用突出部92の、第2のベーン52bの移動方向に沿う長さL5も、同じである。そのため、組込む際に、上下を気にせずに組み込むことが可能である。
【0062】
位置ずれ防止用突出部93は、第1のベーン52aの後端において回転軸4の軸方向の中心に設けられている。両取付用突出部92と位置ずれ防止用突出部93との間の長さL6は、互いに同じである。
【0063】
このように、両取付用突出部92の形状が同じであるとともに、一方の取付用突出部92と位置ずれ防止用突出部93との間の距離L6と、他方の取付用突出部92と位置ずれ防止用突出部93との間の距離L6とが互いに同じであることによって、第2のベーン52bは、回転軸4の軸方向の中心線C2に対して対称な形状となる。
【0064】
第1のベーン52aは、第2のベーン52bと同じ形状である。第1のベーン52aは、第2のベーン52bと同様に、本体部91と、取付用突出部92と、第1のベーン側取付部である位置ずれ防止用突出部93とを備える。そのため、組込む際に、上下を気にせずに組み込むことが可能である。
【0065】
ここで、取付用突出部の長さL4について、具体的に説明する。図3に示すように、第1,第2のベーン52a,52bが第2のシリンダ5bに収容されて互いに回転軸4の軸方向に重ねられると、第1,第2のベーン52a,52bの取付用突出部92の一方どうしが互いに重なる。コイルスプリング16bの内側には、上述のように重なった第1,第2のベーン52a,52bの取付用突出部92が嵌る。このことによって、コイルスプリング16bの一端部が、第1,第2のベーン52a,52bに取付けられる。取付用突出部92の長さL4は、図3に示すように2つ重ねられたときにコイルスプリング16b内に固定される長さを有している。取付用突出部92は、2つ並んだときに、コイルスプリング16bの一端部を固定する機能を有するようになる。
【0066】
また、コイルスプリング16bは、取付用突出部92と位置ずれ防止用突出部93との間に配置される。コイルスプリング16bは、位置ずれ防止用突出部93に接触することによって、取付用突出部92に対して位置がずれることが防止される。
【0067】
第1,第2のベーン52a,52bが同じ形状であることによって、第1,第2のベーン52a,52bを第2のシリンダ室10b内に取り付ける際に、第1,第2のベーン52a,52bの位置を取り違えても、言い換えると、図3に示す第1のベーン52aの位置に第2のベーン52bが配置され、かつ、図3に示す第2のベーン52bの位置に第1のベーン52aが配置されても、互いに並ぶ第1のベーン52aの取付用突出部92と第2のベーン52bの取付用突出部92とにコイルスプリング16bが固定される。
【0068】
このように構成される回転式圧縮機Kでは、第1のベーン部51が第1,第2のベーン51a,51bを備えている。言い換えると、第1のベーン部51は、ベーンを2つに分割した構造である。このため、第1,第2のベーン51a,51bにおいて第1のローラ9aに当接する部分の摩耗が部分的に進むことを抑制できる。
【0069】
これは、ベーンを2つに分割することにより、各ベーンつまり第1,第2のベーン51a,51bの密閉ケース内の圧力が作用する後端部の面積が半分になるため、第1のローラ9aに向って付勢する押付力も、ベーンが1つである構造に対して半分になる。このため、第1,第2のベーン51a,51b先端部の面圧を抑制して摩耗を抑制することができるためである。特に、圧縮負荷等により、回転軸が撓んでローラの外周面とブレード先端部が部分的に接触する片当たり状態が発生した場合でも、局部的な面圧を抑制し、摩耗を抑制することができる。
【0070】
さらに、第1,第2のベーン51a,51bの両端部に形成される取付用突出部82の長さL1を全て同じにすることにより、第1,第2のベーン51a,51bの取付位置を互いに逆にした場合であっても、第1,第2のベーン51a,51bに対してスプリング16aを固定することができる。このため、第1,第2のベーン51a,51bの取付間違えが生じても、不具合が生じないため、取付作業をやり直すことがない。
【0071】
このように、本実施形態では、第1のシリンダ室内に設置されるベーンの摩耗が進むことを抑制できるとともに、第1,第2のベーン51a,51bの取付間違えが生じても作業をやり直すことがないので、取付作業の効率を向上することができる。
【0072】
また、第1,第2のベーン51a,51bのそれぞれは、軸方向の中心線C1に対し対称な形状にすることによって、第1,第2のベーン51a,51bの製造効率を向上することができる。この点について具体的に説明する。
【0073】
第1,第2のベーン51a,51bは、それぞれ、軸方向の中心線C1に対して対称な形状であることによって、それぞれの両端部に設けられる取付用突出部82を、同様の工程で作成することができる。例えば、取付用突出部82を切削することによって形成する場合では、この切削工程の内容を、同じにすることができる。このため、第1,第2のベーン51a,51bの製造効率を向上することができる。
【0074】
また、第1,第2のベーン51a,51bが互いに同じ形状であることによって、製造効率をさらに向上することができる。
【0075】
上述の、第1のベーン部51における効果は、第2のベーン部52においても同様である。図4,5は、第1,第2のベーン51a,51bの別の形状を示している。図4,5に示すよう、位置ずれ防止用突出部83を備えていなくても、同様の効果が得られる。これは、第2のベーン52a,52bにおいても同様である。
【0076】
次に、第2の実施形態に係る回転式圧縮機と冷凍サイクル装置とを、図6を用いて説明する。なお、第1の実施形態と同様の機能を有する構成は、第1の実施形態と同一の符号を付して説明を省略する。本実施形態では、第1,第2のベーン部において第1,第2のベーンの形状が第1の実施形態に対して異なる。他の構造は、第1の実施形態と同じである。上記異なる点を具体的に説明する。
【0077】
図6は、本実施形態における第1のシリンダ室10a内を示す断面図である。図6に示すように、本実施形態において、第1,第2のベーン51a,51bは、第1のベーン側取付部および第2のベーン側取付部として取付用凹部84を備えている。取付用凹部84は第1,第2のベーン51a,51bの後端部の回転軸の軸方向に沿う両端部側に設けられている。このため、第1,第2のベーン51a,51bは、両取付用凹部84間が突出する形状となる。両端部側に設けられた取付用凹部84の回転軸4の軸方向に沿う長さL7は、第1,第2のベーン51a,51bにおいて、それぞれ同一である。したがって、第1,第2のベーン51a,51bは、それぞれ、上下を逆にしても支障がなく、上下を気にせずに組み込むことができる。また、第1のベーン51aと第2のベーン51bの位置を逆にして組み込んでも支障がない。
【0078】
取付用凹部84の回転軸4の軸方向に沿う長さL7は、第1,第2のベーン51a,51bが図6に示すように重ねられたとき、第1,第2のベーン51a,51bの取付用凹部84が合わさって形成される凹部内にコイルスプリング16aが嵌る大きさを有している。
【0079】
本実施形態において、第1のベーン51aは、回転軸の軸方向の中心線C1に対して対象な形状である。第2のベーン51bは、第1のベーン51aと同じ形状である。
【0080】
本実施形態では、第1,第2のベーン51a,51bのそれぞれの両端に設けられる取付用凹部84の長さL7が全て同じであることによって、第1の実施形態と同様の効果が得られる。
【0081】
なお、本実施形態では、第1,第2のベーン51a,51bについて説明したが、第1,第2のベーン52a,52bも、同様に、取付用凹部が形成される形状であってもよい。
【0082】
これらの実施形態によれば、ベーンの先端部が局部的に摩耗することを抑制しつつ、ベーンの取作業の効率を向上できる。
【0083】
第1のベーン51a,52aに形成される取付用突出部82,92は、第1のベーン側取付部の一例である。第2のベーン51b,52bに形成される取付用突出部82,92は、第2のベーン側取付部の一例である。第1のベーン51aに形成される取付用凹部84は、第1のベーン側取付部の一例である。第2のベーン51bに形成される取付用凹部84は、第2のベーン側取付部の一例である。
【0084】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6