(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1及び第2ストッパーは、前記第1及び前記第2係合部の一方において一部が突出した突出部と、前記第1及び前記第2係合部の他方において前記突出部と係合する制止部と、から構成されている、
請求項7に記載のアイソレータシステム。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、適宜図面を参照しながら、実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
【0009】
なお、発明者らは、当業者が本開示を十分に理解するために添付図面および以下の説明を提供するのであって、これらによって特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図するものではない。
【0010】
(実施の形態1)
以下、アイソレータシステムの一例として、実施の形態1でアイソレータシステム100について、
図1〜9を用いて説明する。
【0011】
実施の形態1におけるアイソレータシステム100は、滅菌された環境で、例えば細胞の培養、操作、観察等の作業を行うための装置である。尚、滅菌とは、微生物や細胞等を殺菌して無菌に近づけることを示すものとする。
【0012】
なお、本実施形態において、Z軸は、アイソレータシステム100が立設する垂直方向に沿う軸であり、上側に向かう方向を+Z方向とし、下側(下方)に向かう方向を−Z方向とする。Y軸は、アイソレータシステム100の正面と背面とに直交する方向に沿う軸であり、作業空間の内部で作業を行うための開口が設けられた正面から、正面とは反対側の背面に向かう方向を−Y方向とし、背面から正面に向かう方向を+Y方向とする。X軸は、正面から見て左右の側面に直交する方向に沿う軸であり、正面から見て左側面から右側面へ向かう方向を+X方向とし、右側面から左側面に向かう方向を−X方向とする。
【0013】
[1−1.全体構成]
図1は、実施の形態1におけるアイソレータシステム100の正面図である。
図2、3は、実施の形態1におけるアイソレータシステム100の斜視図であり、開閉状態を示す。
【0014】
図1に示すように、実施の形態1におけるアイソレータシステム100は、第1アイソレータ110と、第2アイソレータ130と、パスボックス150と、インキュベータ170と、を備え、各装置は気密状態で連結されている。
【0015】
[1−2.第1アイソレータの構成]
図2に示すように、第1アイソレータ110は、第1本体ケース111と、空調部116と、制御部119と、を有する。
【0016】
図3に示すように、第1本体ケース111は、前面板112、作業台にあたる底面板114、背面板、上面板、及び、左右の側面板117a,117bで構成され、箱状の第1作業空間Aを形成する。第1本体ケース111は、例えば直方体状の箱体により、外部からの菌の侵入が抑制された第1作業空間Aとして区画される。第1アイソレータ110では、底面板114、背面板、上面板、及び、左右の側面板117a,117bは、清掃や消毒のしやすいステンレス鋼板で構成されている。
【0017】
前面板112は、ガラス板で構成され、前面に作業手の挿入部である複数の開口113が設けられている。複数の開口113のそれぞれには、グローブ(図示せず)が装着される。前面板112は、上端部にもうけられたヒンジを軸として開閉することができる。これにより、第1本体ケース111の前面開口を開閉することができる。左右の側面板117a,117bには、パスボックス150やインキュベータ170を装着するための開口が設けられている。第1アイソレータ110では、右側面板117aの右開口H1(第1開口)にパスボックス150が装着され、パスボックス150の第1受渡口153の第1扉D1が右側面板117aの一部を構成する。また、左側面板117bの左開口(図示せず)にインキュベータ170が装着され、インキュベータ170の扉(図示せず)が左側面板117bの一部を構成する。作業時において、作業者は、グローブを介して第1本体ケース111内で作業を行う。上面板には、作業で用いられるものを吊り下げる吊下棒(図示せず)が設けられている。
【0018】
空調部116は、第1作業空間A内の空調を行うために、第1本体ケース111の上部に設けられる。空調部116は、第1本体ケース111内の上面板に設けられた気体供給口(図示せず)と、底面板114の正面側と背面側に設けられた気体排出口(図示せず)とを有する。第1本体ケース111内には気体供給口から空気が供給され、気体排出口から空気が排出される。一般にアイソレータでは、本体ケース内の無菌環境を確保するために、気体供給口にHEPAフィルタなどの微粒子捕集フィルタが設けられ、微粒子捕集フィルタを介して空気が本体ケース内に供給される。また、気体排出口にも微粒子捕集フィルタが設けられ、作業室内の空気は微粒子捕集フィルタを介して本体ケースから排出される。また、アイソレータでは、過酸化水素などの滅菌物質を本体ケース内に噴霧し、本体ケース内を滅菌する滅菌処理が実行される。
【0019】
制御部119は、第1本体ケース111の上部に設けられ、空調部116や温度制御部等の制御を行う。
【0020】
さらに、第1アイソレータ110は、第1本体ケース111の下方に、その他に観察装置や遠心分離機などの実験に必要な実験装置や滅菌ガス発生装置を備えている。実験装置は、第1作業空間Aからアクセス可能に設けられている。
【0021】
[1−3.第2アイソレータの構成]
図2、
図3に示すように、第2アイソレータ130の構成は、装着される各種装置の違いやそれらの位置の違いによって、第1アイソレータ110の構成と多少相違するが、基本的な構成は同様である。
【0022】
図2に示すように、第2アイソレータ130は、本体ケース131と、空調部136と、制御部139と、を有する。
【0023】
図3に示すように、第2本体ケース131は、前面板132、作業台にあたる底面板134、背面板、上面板、及び、左右の側面板137a,137bで構成され、箱状の第2作業空間Bを形成する。第2本体ケース131は、例えば直方体状の箱体により、外部からの菌の侵入が抑制された第2作業空間Bとして区画される。第2アイソレータ130では、底面板134、背面板、上面板、及び、左右の側面板137a,137bは、清掃や消毒のしやすいステンレス鋼板で構成されている。
【0024】
前面板132は、ガラス板で構成され、前面に作業手の挿入部である複数の開口133が設けられている。複数の開口133のそれぞれには、グローブ(図示せず)が装着される。左右の側面板137a,137bには、パスボックス150やインキュベータを装着するための開口が設けられている。第2アイソレータ130では、左側面板137bの第2開口H2にパスボックス150が装着され、パスボックス150の第2受渡口154の第2扉D2が左側面板137bの一部を構成する。また、第2アイソレータ130では、右側面板137aには開口を設けてないが、開口を設けて2台目のインキュベータ170を装着してもよい。その場合、インキュベータ170の扉(図示せず)が右側面板137aの一部を構成する。作業時において、作業者は、グローブを介して第2本体ケース131内で作業を行う。上面板には、作業で用いられるものを吊り下げる吊下棒(図示せず)が設けられている。
【0025】
空調部136は、第2作業空間B内の空調を行うために、第2本体ケース131の上部に設けられる。空調部136は、第2本体ケース131内の上面板に設けられた気体供給口(図示せず)と、底面板134の正面側と背面側に設けられた気体排出口(図示せず)とを有する。第2本体ケース131内には気体供給口から空気が供給され、気体排出口から空気が排出される。
【0026】
制御部139は、第2本体ケース131の上部に設けられ、空調部136や温度制御部等の制御を行う。
【0027】
さらに、第2アイソレータ130は、第2本体ケース131の下方に、その他に観察装置や遠心分離機などの実験に必要な実験装置や滅菌ガス発生装置を備えている。実験装置は、第2作業空間Bからアクセス可能に設けられている。実施の形態1におけるアイソレータシステム100は、それぞれの第1及び第2アイソレータ110,130が、それぞれが制御部や空調部、各種装置を備えているが、共有して1つだけ設ける構成にしてもよい。これにより、省スペースと低コスト化を図れる。
【0028】
[1−4.パスボックスの構成]
パスボックス150は、作業者が外部から第1アイソレータ110や第2アイソレータ130の内部に作業物を入れるために設けられる。また、作業者が第1アイソレータ110と第2アイソレータ130との間で作業物を移動させるために設けられる。パスボックス150は、作業物を一時的に保管する搬送空間Cを形成する箱状の受渡ケース151を備える。受渡ケース151の正面には、正面開口
158が設けられ、正面開口
158には、周囲環境に対して気密性を有する搬送空間Cと外部とを隔てる正面扉152が設けられている。また、受渡ケース151の左右の側面には、第1及び第2受渡口153、154が設けられている。第1受渡口153は、第1アイソレータ110の右側面板117aの第1開口H1に装着され、パスボックス150の搬送空間Cと第1アイソレータ110の第1作業空間Aとを連通させている。同様に第2受渡口154は、第2アイソレータ130の左側面板137bの第2開口H2に装着され、パスボックス150の搬送空間Cと第2アイソレータ130の第2作業空間Bとを連通させている。第1及び第2受渡口153、154には、それぞれ開閉可能な第1及び第2扉D1,D2が取り付けられている。第1受渡口153の第1扉D1は、受渡ケース151内の搬送空間Cと第1本体ケース111内の第1作業空間Aとを隔てており、第2受渡口154の第2扉D2は、受渡ケース151内の搬送空間Cと第2本体ケース131内の第2作業空間Bとを隔てている。
【0029】
図4、5は、実施の形態1におけるアイソレータシステム100の斜視図及びトレイ160周辺の拡大斜視図である。
【0030】
受渡ケース151は、底面板155、上面板、背面板、左右の側面板及び正面扉152とで内部の搬送空間Cを形成している。底面板155には、作業で用いられる物品を載置するトレイ160が設けられており、トレイ160は、後述する移動機構により左右に移動可能である。
【0031】
[1−5.インキュベータの構成]
インキュベータ170は、内部に収容室(図示せず)を備える。この収容室は、培養物を収容する室であり、例えば直方体状の箱体によって外部からの菌の侵入が抑制される空間として区画される。本実施形態において、収容室はステンレス鋼板によって区画されている。インキュベータ170は、第1アイソレータ110に対して着脱可能に構成されている。これにより、インキュベータ170毎に培養物の管理ができる。例えば、ドナー毎に専用のインキュベータ170を使用することにより、培養物の取り違え等の不具合を抑制できる。
【0032】
[1−6.移動機構の構成]
図6〜11を用いて、トレイの移動機構について説明する。
【0033】
図6は、実施の形態1におけるスライドトレイ周辺の構成を示す斜視図で、
図7は、その上視図である。
図8は、
図7における8−8端面図であり、
図9は、9−9端面図である。
【0034】
図6、7に示すように、トレイ160は、搬送空間Cの底面板155上に移動可能に取り付けられる。底面板155には、レールR1(第1係合部)が取り付けられる。レールR1は、トレイ160の載置面の裏面に取り付けられたレールR2(第2係合部)と係合される。レールR1とレールR2とが、トレイ160の移動を可能とする移動機構を構成する。トレイ160には、滅菌ガスが回り込みやすいように、載置面から裏面へ貫通した複数の貫通孔166が形成されている。トレイ160の移動方向(X方向)の両端には、載置面から下方へ向かって屈曲した把持部164a、164bが形成されている。そのため、作業者がトレイ160を移動させる際に、把持部164a、164bを保持して引っ張ることで、容易に第1作業空間A内や第2作業空間B内にトレイ160を引き出すことができる。また、トレイ160の移動方向と直交する方向(Y方向)の両端には、載置面から上方へ立設した立設部165が形成されている。そのため、作業で用いる物品を載置面に置いた状態で、第1作業空間A内や第2作業空間B内にトレイ160を移動させたときに、物品が落下することを抑制することができる。さらに、トレイ160における第1及び第2扉D1,D2の回動軸側(−Y方向側)のコーナーには、緩衝部材167がナット168で取り付けられている。緩衝部材167は、曲面を有した樹脂やシリコン部材であり、第1及び第2扉D1,D2に対して曲面で当接するよう設けられている。そのため、トレイ160が第1及び第2扉D1,D2に当接した際に、第1及び第2扉D1,D2やトレイ160を傷つけることを抑制できるだけでなく、衝突による塵埃(パーティクル)の発生を抑制することができる。また、移動機構には、トレイ160の移動範囲を規制するストッパーが設けられている。尚、ストッパーについては、後述する。作業者がトレイ160を引き出しすぎることを規制し、物品の落下等を抑制することができる。
【0035】
次に、
図8〜11を用いて、トレイ160の移動機構を構成するレールR1及びレールR2について説明する。
図10、11は、実施の形態1における第1及び第2レールを示す斜視図である。
図10、11は、下側(−Z)から上側(+Z)へ向かって見たトレイ160等を示している。
図10は、トレイ160がパスボックス150(
図5)内に設けられている状態を示している。
図11は、トレイ160が第1作業空間A側に移動された状態を示している。尚、
図10、11における第1案内部156A、156Bは夫々、
図9における2つの第1案内部156における−Y側の第1案内部156、+Y側の第1案内部156に対応している。又、
図10、11における第2案内部161A、161Bは夫々、
図9における2つの第2案内部161における−Y側の第2案内部161、+Y側の第2案内部161に対応している。又、
図10、11におけるスペーサー162A、162Bは夫々、
図9における2つのスペーサー162における−Y側のスペーサー162、+Y側のスペーサー162に対応している。なお、
図10、11において、複数の貫通孔166の一部の記載が省略されている。
【0036】
レールR1及びレールR2は、第1位置及び第2位置の間おいてX方向に沿って、トレイ160を移動させるのに用いられる。第1位置は、第1作業空間A内の位置である。トレイ160が第1位置に移動された際、把持部164a、164bのうちの、少なくとも把持部164aが第1作業空間A内に設けられることになる。第2位置は、例えば、X方向において搬送空間Cの第1位置とは反対側の位置である。第2位置は、第2作業空間B内の位置である。トレイ160が第2位置に移動された際、把持部164a、164bのうちの、少なくとも把持部164bが第2作業空間B内に設けられることになる。
【0037】
レールR1(
図9)は、第1案内部156と、第1案内部156を底面板155に固定するナット157と、を備える。第1案内部156は、樹脂で形成されている。第1案内部156は、X方向に沿って延びる長尺形状を呈している。第1案内部156は、X方向と平行に2本設けられている。2本の第1案内部156(
図10、11における156A、B)は、移動方向(X方向)と交差するY方向において並べられている。2本の第1案内部156は、それぞれ、ナット157で底面板155に固定される部分(「第1部分」とも称する)と、固定される部分から上方(+Z方向)へ立ち上がるように延伸した部分(「第2部分」とも称する)と、上方へ延伸した部分の上部で2本間の外側方向(Y方向)へ屈曲した部分(「第3部分」とも称する)とにより構成させている。これにより、第1案内部156の屈曲した部分と底面板155との間には、第2案内部161が入り込む空間(隙間)が形成される。つまり、2本の第1案内部156の一方の第1案内部156A(第2のレール)は、前述の第1乃至第3部分を有しており、第1案内部156Aの第3部分と底面板155との間に隙間(「第1隙間」とも称する)が形成されるように曲げられている。第1案内部156Aの第3部分は、Y方向において他方の第1案内部156Bから離れる方向(−Y)に向かって曲げられている。又、第1案内部156B(第1のレール)は、前述の第1乃至第3部分を有しており、第1案内部156Bの第3部分(第2曲片)と底面板155との間に隙間(「第2隙間」とも称する)が形成されるように曲げられている。第1案内部156Bの第3部分(第1曲片)は、Y方向において第1案内部156Aから離れる方向(+Y)に向かって曲げられている。
【0038】
レールR2は、第2案内部161と、トレイ160と第2案内部161との間に配置されるスペーサー162と、第2案内部161とスペーサーとトレイ160の裏面に固定するナット163と、を備える。第2案内部161は、金属であるステンレス板で形成されている。スペーサー162は、樹脂で形成されている。第2案内部161は、X方向に沿って延びる長尺形状を呈している。第2案内部161は、第1案内部156と平行(X方向)に2本設けられている。2本の第2案内部161(
図10、11における161A、B)は、移動方向(X方向)と交差するY方向において並べられている。2本の第2案内部161は、それぞれ、スペーサー162(
図10、11における162A、B)にナット163で固定される部分(「第4部分」とも称する)、スペーサー162に固定される部分から下方(−Z方向)へ折れ曲がるように延伸した部分(「第5部分」とも称する)、下方へ延伸した部分の下部で2本間の内側方向(Y方向)へ屈曲した部分(「第6部分」とも称する)により構成されている。これにより、第2案内部161とスペーサー162との間には、第1案内部156が入り込む空間が形成される。つまり、第2案内部161A(第4のレール)は、前述の第4乃至第6部分を有しており、第2案内部161Aの第6部分(第2挿入片)が第1隙間に挿入されるように曲げられている。第2案内部161Aの第6部分は、Y方向において第2案内部161Bに近づく方向(+Y)に向かって曲げられている。又、第2案内部161B(第3のレール)は、前述の第4乃至第6部分を有しており、第2案内部161Bの第6部分(第1挿入片)が第2隙間に挿入されるように曲げられている。第2案内部161Bの第6部分は、Y方向において第2案内部161Aに近づく方向(−Y)に向かって曲げられている。ここで、スペーサー162は、トレイ160の移動方向(X方向)の両端に形成された把持部164a、164bが、トレイ160が移動した際に第1案内部156と衝突しないようにするために設けられている。
【0039】
この構成により、第1案内部156と第2案内部161が鍵状に係合するようにレールR1とレールR2とが係合され、トレイ160がX方向の両側へ移動自在となる。レールR1とレールR2とは、第1案内部156と第2係合部161とが係合することで、互いにZ方向へ離れないように係合される。
【0040】
次に、
図10、11を用いて、トレイ160の移動を規制する第1及び第2ストッパーについて説明する。
<構成>
第1案内部156B及び第2案内部161Bには、第1ストッパーとしての機能を発揮する突出部51B(第1突片)及び静止部52B(第1当接片)が設けられる。突出部51B及び静止部52Bは、第1位置に移動したトレイ160が更に第1アイソレータ110側(−X)に移動するのを規制する。
【0041】
突出部51Bは、第2隙間内において、第2案内部161Bの第6部分から−Y側に向かって突出する突片である。突出部51Bは、例えば、第2案内部161Bの長手方向(X方向)において第2案内部161Bの略中央よりも+X側に設けられる。
【0042】
静止部52B(
図6)は、第1位置に移動したトレイ160が更に第1アイソレータ110側(−X)に移動するのを規制するべく、第2隙間内において突出部51Bと当接して係合する当接片である。つまり、静止部52Bは、突出部51Bと当接することにより、トレイ160を第1位置において静止させる機能を有する。静止部52Bは、トレイ160を−X側に移動させる際の突出部51Bの移動路上に設けられるように、第1案内部156Bにおける−X側の端部に着脱可能(着脱自在)に取り付けられる。静止部52Bは、第1片521、第2片522を有する。第1片521は、YZ平面に略平行な状態とされており、第1案内部156Bの−X側の端部に対して、例えば螺子523を用いて着脱可能に取り付けられる。第2片522は、第2隙間に挿入されるように、第1片521における−Z側の端部から+X側に向かって曲げられている。
【0043】
第1案内部156A及び第2案内部161Aには、第2ストッパーとしての機能を発揮する突出部51A(第2突片)及び静止部52A(第2当接片)が設けられる。突出部51A及び静止部52Aは、第2位置に移動したトレイ160が更に第2アイソレータ130側(+X)に移動するのを規制する。
【0044】
突出部51Aは、第1隙間内において、第2案内部161Aの第6部分から+Y側に向かって突出する突片である。突出部51Aは、例えば、第2案内部161Aの長手方向(X方向)において第2案内部161Aの略中央よりも−X側に設けられる。
【0045】
静止部52Aは、第2位置に移動したトレイ160が更に第2アイソレータ130側(+X)に移動するのを規制するべく、第1隙間内において突出部51Aと当接して係合する当接片である。つまり、静止部52Aは、突出部51Aと当接することにより、トレイ160を第2位置において静止させる機能を有する。静止部52Aは、トレイ160を+X側に移動させる際の突出部51Aの移動路上に設けられるように、第1案内部156Aにおける+X側の端部に着脱可能(着脱自在)に取り付けられる。尚、静止部52Aは、静止部52Bと同様な構成であるので、その説明については省略する。
<取り付け>
第2案内部161A、161Bが固定されているトレイ160は、第1案内部156A、156Bが固定されている底面板155に対して、例えば、第1取付手順又は第2取付手順によって取り付けられる。
=第1取付手順=
静止部52Aが第1案内部156Aから取り外される。第2案内部161A、161Bの第6部分における−X側の端部が夫々、第1案内部156A、156Bの+X側の端から第1及び第2隙間に挿入される。つまり、トレイ160は、第2作業空間B側(+X)から搬送空間C側(−X)へ向かってスライドされるようにして、底面板155に取り付けられる。この後、
静止部52Aが第1案内部156Aに取り付けられる。
=第2取付手順=
静止部52Bが第1案内部156Bから取り外される。第2案内部161A、161Bの第6部分における+X側の端部が夫々、第1案内部156A、156Bの−X側の端から第1及び第2隙間に挿入される。つまり、トレイ160は、第1作業空間A側(−X)から搬送空間C側(+X)へ向かってスライドされるようにして、底面板155に取り付けられる。この後、
静止部52Bが第1案内部156Bに取り付けられる。
<動作>
例えば、把持部164aに対して+Xから−Xへ向かう力が付与された場合、トレイ160は、第1アイソレータ110側に移動する。トレイ160が第1位置まで移動した際、突出部51Bと静止部52Bとが当接して係合する。この際、トレイ160は、第1アイソレータ110側へ更に移動するのが規制されて、第1位置で静止した状態となる。又、例えば、把持部164bに対して−Xから+Xへ向かう力が付与された場合、トレイ160は、第2アイソレータ130側に移動する。トレイ160が第2位置まで移動した際、突出部51Aと静止部52Aとが当接して係合する。この際、トレイ160は、第2アイソレータ130側へ更に移動するのが規制されて、第2位置で静止した状態となる。
【0046】
[2.効果等]
本開示のアイソレータシステム100は、周囲環境に対して気密性を有する第1作業空間Aを形成する第1アイソレータ110と、周囲環境に対して気密性を有する第2作業空間Bを形成する第2アイソレータ130と、第1アイソレータ110と第2アイソレータ130との間に設けられ、第1作業空間Aと第2作業空間Bとを気密性を維持したまま連通可能な搬送空間Cを形成するパスボックス150と、を備える。パスボックス150は、搬送空間Cの底面155に、作業で用いる物品を載置する板状のトレイ160と、第1アイソレータ110側及び第2アイソレータ130側の両方向へ向かってトレイ160の移動を可能にする移動機構(レールR1、レールR2)と、を有する。トレイ160は、第1アイソレータ110側へ移動したときには、第1アイソレータ110側の把持部164a(第1端部)が第1作業空間A内に位置し、第2アイソレータ130側へ移動したときには、第2アイソレータ130側の把持部164b(第2端部)が第2作業空間B内に位置する。
【0047】
これにより、例えば作業者らが第1アイソレータ110と第2アイソレータ130のどちらで作業している場合であっても、パスボックス150内のトレイ160に載置した物品を取り出しやすくなる。よって、アイソレータシステム100の操作性を向上させることができる。
【0048】
また、本開示のアイソレータシステム100において、第1アイソレータ110は、パスボックス150側の右側面117aに第1開口H1を形成し、第2アイソレータ130は、パスボックス150側の側面137bに第2開口H2を形成している。パスボックス150は、第1アイソレータ110側の右側面117aに第1開口H1と気密性を有して接続される第1受渡口153を形成し、第2アイソレータ130側の側面137bに第2開口H2と気密性を有して接続される第2受渡口154を形成している。第1受渡口153には第1受渡口153を密閉可能な第1扉D1が設けられ、第2受渡口154には第2受渡口154を密閉可能な第2扉D2が設けられている。第1扉D1は、第1作業空間A側に向かって開閉可能であり、第2扉D2は、第2作業空間B側に向かって開閉可能である。
【0049】
これにより、例えば両側の扉ともに内側に開閉されるため、トレイ160における載置領域を確保でき、かつ、第1作業空間A又は第2作業空間B内に引き出しやすくなる。よって、アイソレータシステム100の操作性を向上させることができる。本実施の形態では、第1扉D1が第1受渡口153に、第2扉D2が第2受渡口154に設けられたが、第1扉D1が第1開口H1に、第2扉D2が第2開口H2に設けられる構成にしてもよい。つまし、少なくともどちらか一方に設けられた扉が、両側において内側に開閉されればよい。
【0050】
また、本開示のアイソレータシステム100において、移動機構は、搬送空間Cの底面155に設けられ、トレイ160の移動を案内するレールR1(第1係合部)と、作業で用いる物品を載置するトレイ160の載置面の裏面に設けられ、レールR1に係合されるレールR2(第2係合部)と、を備える。
【0051】
これにより、例えばトレイ160の強度が高まり、トレイ160の載置面に物品を安定した状態で載置したままトレイ160の移動が可能となる。よって、アイソレータシステム100の操作性を向上させることができる。
【0052】
また、本開示のアイソレータシステム100において、レールR1及びレールR2は、トレイ160の移動方向と平行な2本の線形状である。
【0053】
これにより、例えばトレイ160の移動がスムーズになる。よって、アイソレータシステム100の操作性を向上させることができる。
【0054】
また、本開示のアイソレータシステム100において、トレイ160の両端(第1端部及び第2端部)には、トレイ160の載置面から下方へ向かって屈曲した把持部164が形成されている。
【0055】
これにより、例えば作業者が把持部164a、164bを持ってトレイ160を引き出すことができるため、容易にトレイ160を引き出すことができる。よって、アイソレータシステム100の操作性を向上させることができる。
【0056】
また、本開示のアイソレータシステム100において、レールR1は、トレイ160の載置面の裏面に固定されるスペーサー162と、スペーサー162に固定されレールR2からトレイ160が外れることを規制する第1案内部161と、を備える。スペーサー162の鉛直方向(Z方向)の長さは、把持部164a、164bの鉛直方向(Z方向)の長さより長くなるように構成されている。
【0057】
これにより、トレイ160の移動範囲を広くとることができる。よって、アイソレータシステム100の操作性を向上させることができる。
【0058】
また、本開示のアイソレータシステム100において、移動機構には、トレイ160の移動範囲を規制する第1ストッパーとしての突出部51B及び静止部52B、第2ストッパーとしての突出部51A及び静止部52Aが設けられている。
【0059】
これにより、作業者がトレイ160を引き出しすぎることを規制し、物品の落下等を抑制することができる。よって、アイソレータシステム100の操作性を向上させることができる。
【0060】
また、第1案内部156A、156B及び第2案内部161A、161Bは、トレイ160の移動方向(X方向)と平行な2本の直線状の部材である。突出部51B、静止部52B、突出部51A、静止部52Aは夫々、第2案内部161B、第1案内部156B、第2案内部161A、第1案内部156Aに設けられている。従って、第1案内部156A、156B及び第2案内部161A、161Bに第1及び第2ストッパーが設けられている。
【0061】
これにより、例えば当該第1及び第2ストッパーを小型化することが可能となる。よって、例えば、搬送空間Cのスペースを広げることが可能となる。
【0062】
また、突出部51Bは、第2案内部161Bにおける+X側の端部寄りの位置から突出している。突出部51Aは、第2案内部161Aにおける−X側の端部寄りの位置から突出している。静止部52Bは、第1ストッパーとしての機能を発揮する際に、第1案内部156Bにおける−X側の端部において突出部51Bと係合する。静止部52Aは、第2ストッパーとしての機能を発揮する際に、第2案内部156Aにおける+X側の端部において突出部51Aと係合する。
【0063】
よって、例えば第1位置又は第2位置においてトレイ160を静止させることができる。従って、例えばトレイ160上に載置されている機器を、第1作業空間A又は第2作業空間Bに移動させる移動作業が容易な、使い勝手の良いアイソレータシステム100を提供することができる。
【0064】
また、静止部52A、52Bは夫々、第1案内部156A、156Bに対して着脱可能に取り付けられる。よって、底面板155に対しトレイ160を、例えば第1又は第2取付手順によって、比較的容易に取り付けることが可能となる。
【0065】
また、第1案内部156A、156Bは、トレイ160の移動方向(X方向)に沿って延びる長尺形状を呈し、X方向と交差するY方向において並べられている。第2案内部161A、161Bは、X方向に沿って延びる長尺形状を呈し、第1案内部156A、156Bと係合する。各案内部がY方向において例えば2本ずつ並べられているので、例えば、トレイ160が略水平とされた状態を維持しつつトレイ160を移動させることができる。
【0066】
また、第1案内部156A、156Bの第3部分は、底面板155との間に第1及び第2隙間が形成されるように曲げられている。第2案内部161A、161Bの第6部分は、トレイ160をX方向に沿って移動させるべく第1及び第2隙間に挿入される。
【0067】
従って、トレイ160における上下方向(Z方向)の移動を規制した状態で、トレイ160をX方向において確実に移動させることができる。
【0068】
また、静止部52Aは、第1案内部156Aにおける+X側の端部に着脱自在に取り付けられる。静止部52Bは、第1案内部156Bにおける−X側の端部に着脱自在に取り付けられる。よって、静止部52A、52Bの着脱が容易となる。従って、底面板155に対しトレイ160を、例えば第1又は第2取付手順によって、更に容易に取り付けることが可能となる。
【0069】
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、実施の形態1を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用可能である。また、上記実施の形態1で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施の形態とすることも可能である。
【0070】
また、上述の実施の形態は、本開示における技術を例示するためのものであるから、特許請求の範囲またはその均等の範囲において種々の変更、置き換え、付加、省略などを行うことができる。