(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記噴霧装置は、前記本体ケース内の前後一方側上部の左右一方側に取り付けられたノズルから前後他方側下部の左右他方側へ向かって略対角線状に滅菌液をミスト状にした滅菌ミストを噴霧する、
請求項1に記載のアイソレータシステム。
前記噴霧装置は、前記本体ケース内の前後一方側上部の左右一方側に取り付けられたノズルから前後他方側下部の左右他方側へ向かって略対角線上に前記滅菌ミストを噴霧し、
前記第2拡散ファンは、前記本体ケース内の左右他方側の上部から前面側下部へ空気を吹き出す、
請求項11に記載のアイソレータシステム。
前記噴霧装置は、前記滅菌液を吸水する吸水管と、吸水する前記滅菌液の流量を調節する送液装置と、吸水した前記滅菌液を噴霧するノズルと、前記ノズルに空気を送り込み前記ノズルから前記滅菌液をミスト状にして噴霧させる圧縮機と、を備え、
前記送液装置の流量が、前記圧縮機で空気を送り込むことにより前記ノズル内が陰圧になることで前記ノズル内に引き込まれる前記滅菌液の流量より小さく設定されることによって、前記噴霧装置が前記滅菌ミストを間欠的に噴霧する、
請求項12に記載のアイソレータシステム。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、適宜図面を参照しながら、実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
【0009】
なお、発明者らは、当業者が本開示を十分に理解するために添付図面および以下の説明を提供するのであって、これらによって特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図するものではない。
【0010】
(実施の形態1)
以下、アイソレータシステムの一例として、実施の形態1でアイソレータシステム100について、
図1〜12を用いて説明する。
【0011】
実施の形態1におけるアイソレータシステム100は、滅菌された環境で、例えば細胞の培養、操作、観察等の作業を行うための装置である。尚、滅菌とは、微生物や細胞等を殺菌して無菌に近づけることを示すものとする。
【0012】
なお、本実施形態において、Z軸は、アイソレータシステム100が立設する垂直方向に沿う軸であり、上側に向かう方向を+Z方向とし、下側(下方)に向かう方向を−Z方向とする。Y軸は、アイソレータシステム100の正面と背面とに直交する方向に沿う軸であり、作業空間の内部で作業を行うための開口が設けられた正面から、正面とは反対側の背面に向かう方向を−Y方向とし、背面から正面に向かう方向を+Y方向とする。X軸は、正面から見て左右の側面に直交する方向に沿う軸であり、正面から見て左側面から右側面へ向かう方向を+X方向とし、右側面から左側面に向かう方向を−X方向とする。
【0013】
[1.構成]
[1−1.アイソレータシステム]
アイソレータシステム100の全体構成について、
図1〜4を用いて説明する。
図1及び
図2は実施の形態1に係るアイソレータシステム100の正面図及び斜視図、
図3は実施の形態1に係るインキュベータ200装着時のアイソレータシステム100の斜視図、
図4は実施の形態1に係るアイソレータシステム100の構成を示す概略図である。
【0014】
図1に示すように、実施の形態1におけるアイソレータシステム100は、アイソレータ110、遠心機ユニット120、観察ユニット130、滅菌ユニット140、空調ユニット150、制御ユニット160、パスボックス170及び空調ユニット180を備える。
【0015】
図2に示すように、アイソレータ110は、周囲と隔離された略箱状の作業空間Aを形成する。詳細な構成については、後述する。遠心機ユニット120は、アイソレータ110の下部に設けられ、作業空間Aから接続できる。遠心機ユニット120は、作業空間A内で作業するサンプルを遠心分離させるための遠心機121を内部に備えている。観察ユニット130は、アイソレータ110の下部に設けられ、作業空間Aから接続できる。観察ユニット130は、作業空間A内で作業するサンプルを観察するための観察装置131を内部に備えている。また、観察ユニット130は、内部に設けられた観察装置131を昇降可能な昇降機構133と、外部に設けられ昇降機構133を操作するハンドル132と、を備えている。作業者は、ハンドル
132によって昇降機構133を操作することで、観察装置131を使用するときは観察装置131を作業空間A内に押し上げ、観察装置131を使用しないときは観察ユニット130内に観察装置131を収容することができる。滅菌ユニット140は、アイソレータ110内を滅菌するためにアイソレータ110の下部に設けられる。滅菌ユニット140は、アイソレータ110内に設けられたノズル143又はパスボックス内に設けられたノズル144を介して滅菌液をミスト化した滅菌ミストを噴霧して、内部を滅菌する。
【0016】
空調ユニット150は、アイソレータ110外の上部に設けられ、内部の空調を制御する。空調ユニット150は、吸気ユニット150aと排気ユニット150bとを備える。空調ユニット150は、アイソレータ110内の上面板に設けられた吸気口151及び排出口155を有する。アイソレータ110内には吸気口151から空気が供給され、排出口155から空気が排出される。アイソレータ110では、内部の無菌環境を確保するために、吸気口151にフィルタ152の微粒子捕集フィルタが設けられ、微粒子捕集フィルタを介して空気がアイソレータ110内に供給される。また、排出口155にもフィルタ156が設けられ、アイソレータ110内の気体はフィルタ156を介してアイソレータ110内から排気される。また、アイソレータ110では、過酸化水素などの滅菌物質を内部に噴霧し、アイソレータ110内を滅菌する滅菌処理が実行される。フィルタとして、例えばHEPA(High−Efficiency Particulate Air filter)を用いてもよい。
【0017】
制御ユニット160は、アイソレータ110及びパスボックス170の上部に設けられ、例えば滅菌ユニット140、空調ユニット150及び後述する複数の拡散ファン190等の各装置の動作を制御する。
【0018】
パスボックス170は、作業者が外部から作業空間Aの内部に作業物を入れるためにアイソレータ110の側面に設けられる。パスボックス170の内部には、作業物を一時的に保管する搬送空間Bが形成される。搬送空間Bは、周囲環境に対して気密性を有する。外部から作業空間Aに作業物を入れる前に、作業物が搬送空間B内で滅菌される。パスボックス170の側面には、作業物を移動させるための開口が設けられており、アイソレータ110の側面に設けられた開口と対向して、アイソレータ110とパスボックス170とが固定される。これにより作業空間Aと搬送空間Bとが気密性を有したまま連通する。パスボックス170の開口には、開閉可能な扉が取り付けられている。扉は、搬送空間Bと作業空間Aとを気密性を有して隔てることができる。空調ユニット180は、パスボックス170外の上部に設けられ、内の搬送空間B内の空調を制御する。
【0019】
また、
図2に示すように、アイソレータシステム100は、アイソレータ110におけるパスボックス170が設けられる側面とは反対の側面にインキュベータ200が装着される。インキュベータ200は、内部に収容室(図示せず)を備える。この収容室は、培養物を収容する室であり、例えば直方体状の箱体によって外部からの菌の侵入が抑制される空間として区画される。収容室は例えばステンレス鋼板によって区画されている。インキュベータ200、アイソレータシステム100に対して着脱可能に構成されている。これにより、インキュベータ200毎に培養物の管理ができる。例えば、ドナー毎に専用のインキュベータ200を使用することにより、培養物の取り違え等の不具合を抑制できる。
【0020】
[1−2.アイソレータ]
アイソレータ110の構成について、
図2及び
図4、5を用いて説明する。
図5は、実施の形態1に係るアイソレータシステム100の内部構成を示す部分斜視図である。
【0021】
図2に示すように、アイソレータ110は、複数の前面開口113が設けられた前面板112、底面板、上面板、及び、左右の側面板によって区画され、作業を行う為の作業台111と仕切板117とを内部に備える。作業台111、仕切板117、上面板、及び、左右の側面板によって、作業を行う空間である箱状の作業空間Aを形成する。アイソレータ110は、外部からの菌の侵入が抑制されるように気密性を有して区画される。作業台111と底面板との間及び背面板と仕切板117との間には、作業空間A内の気体を排気するダクト118が形成されている。本実施の形態のアイソレータ110は、作業台111、仕切板117、底面板、背面板、上面板、及び、左右の側面板は、清掃や消毒のしやすいステンレス鋼板で構成されている。
【0022】
前面板112は、ガラス板で構成され、前面に作業手の挿入部である複数の開口113が設けられている。複数の開口113のそれぞれには、グローブ(図示せず)が装着される。前面板112は、上端部にもうけられたヒンジを軸として開閉することができる。これにより、アイソレータ110の前面を開閉することができる。左右の側面板には、パスボックス170やインキュベータ200を装着するための開口が設けられている。アイソレータ110では、右側面板の開口にパスボックス170が装着され、パスボックス170の受渡口の扉が右側面板の一部を構成する。また、左側面板の左開口にインキュベータ200が装着され、インキュベータ200の扉が左側面板の一部を構成する。作業時において、作業者は、グローブを介して作業空間A内で作業を行う。上面板には、作業で用いられるものを吊り下げる吊下棒が設けられている。
【0023】
作業台111は、遠心機ユニット120に接続するための接続開口部を形成し、その接続開口部を開閉可能なカバー123を備える。カバー123は、蝶番で作業台111に取り付けられ、上方へ開閉可能となっている。作業者は、作業空間Aからカバー123を開くことで遠心機121に接続することができる。同様に、作業台111は、観察ユニット130に接続するための接続開口部を形成し、その接続開口部を開閉可能なカバーを備える。カバーは、蝶番で作業台111に取り付けられ、上方へ開閉可能となっている。作業者は、作業空間Aからカバーを開くことで観察ユニット130に接続することができる。作業者は、観察装置131を使用する場合は、カバーを上方へ開けて観察ユニット130に接続し、昇降
機構133により観察ユニット130内の観察装置131を昇降させて使用する。
【0024】
[1−3.滅菌ユニット]
滅菌ユニット140の構成について、
図4〜6を用いて説明する。
図6は、実施の形態1に係るノズル143の構成を示す概略図である。本実施の形態では、滅菌ユニット140は、以下で説明するように、スプレー方式により滅菌液をミスト化してノズル143又はノズル144から噴霧している。
【0025】
図4に示すように、滅菌ユニット140は、滅菌液ボトル141と、滅菌液ボトル141の重量を計量する電子天秤148と、滅菌液ボトル141から滅菌液を吸水してノズル143又はノズル144へ供給する吸水管142a及びペリスタポンプ142bと、を備える。また滅菌ユニット140は、アイソレータ110内に設けられたノズル143と、パスボックス170内に設けられたノズル144と、を備える。また滅菌ユニット140は、ノズル143又はノズル144にエアーを供給するコンプレッサ145a及び吸気管145bを備える。また滅菌ユニット140は、吸水管142a内に空気を導入するための吸気バルブ149を備える。吸気バルブ149は、滅菌液ボトル141に挿入される吸水管142aの先端とペリスタポンプ142bとの間に設けられている。切替バルブ146a及び切替バルブ146bを開閉することにより、ノズル143又はノズル144への空気の流入を制御する。切替バルブ147a及び切替バルブ147bを開閉することにより、ノズル143又はノズル144への滅菌液の流入を制御する。
【0026】
滅菌液としては、例えば過酸化水素水が用いられる。滅菌液は、滅菌液ボトル141内に貯溜されており、滅菌液ボトル141は電子天秤148などの計量手段に載置されている。電子天秤148は滅菌液ボトル141及び滅菌液の重量を計測するようになっており、その信号は制御ユニット160に入力されるようになっている。滅菌液ボトル141内に貯溜された滅菌液は、ペリスタポンプ142bなどの送液装置により、吸水管142aを介してノズル143又はノズル144に供給されるようになっている。滅菌液ボトル141内の過酸化水素水は、ペリスタポンプ142bにより徐々にノズル143又はノズル144に供給されるようになっている。ペリスタポンプ142bは、吸水管142aの途中に設けてあり、ペリスタポンプ142bよりも下流側に異物を除去するためのフィルタが設けられている。フィルタとペリスタポンプ142bとの間に、吸水管142a内の圧力を検出する圧力センサが設けられている。圧力センサによりフィルタの目詰まりを監視することができ、又は吸水管142aの折れ曲がりなどの異常を検出することができるようにしてある。
【0027】
制御ユニット160には、電子天秤148及び圧力センサからの信号が入力されるようになっているため、制御ユニット160によってペリスタポンプ142bの駆動と吸気バルブ149の開閉とを制御することができる。
【0028】
また、吸気管145bは、一端がコンプレッサ145aに取り付けられ、他端がノズル143又はノズル144に取り付けられている。これにより、コンプレッサ145aは、吸気管145bを介してノズル143又はノズル144にエアーを供給することができるようになっている。
【0029】
図5に示すように、ノズル143は、アイソレータ110内の背面側(−Y側)上部(+Z側)の右側(+X側)の角に取り付けられている。ノズル143は、前面側(+Y側)下部(−Z)の左側(−X側)の角へ向かって滅菌液をミスト状にした滅菌ミストを噴霧することができる。
【0030】
図6に示すように、ノズル143は、滅菌液の経路とエアーの経路とを有する。ノズル143の滅菌液の経路は、ジョイント143aを介して吸水管142aと接続される。滅菌液の経路は、ジョイント143aによって、内径の小さい吸水管142aから内径の大きいノズル143へ変更される。つまり、ジョイント143a内で経路の内径が大きくなる。また、ノズル143には、滅菌液の経路とは別のエアーの経路に吸気管
145bが接続され、エアーが、ノズル143の先端から噴射される。エアーの噴射口は、滅菌液の噴射口の周りを囲むように形成されているため、ノズル143からドーナツ状のエアーが噴射する。そのため、エアーの中心付近が陰圧となるため、吸水管142aを通過してきた滅菌液が、ノズル143の先端に引き込まれ、先端で拡散されることでミスト化される。
【0031】
なお、ノズル144の構成は、ノズル143とほぼ同様であるため、説明は省略する。
【0032】
このような構成により、ノズル143又はノズル144に供給された過酸化水素水は、ノズル143又はノズル144に供給されるエアーによりミスト化にされてアイソレータ110又はパスボックス170内へ噴霧される。
【0033】
ここで、本実施の形態において、ペリスタポンプ142bで供給する滅菌液の流量は、コンプレッサ145aで空気を送り込むことによりノズル143内が陰圧になることでノズル143内に引き込まれる滅菌液の流量より小さく設定されている。なお、本実施の形態では、ペリスタポンプ142bで供給する滅菌液の流量は、約2mL/minであり、ノズル143内が陰圧になることでノズル143内に引き込まれる滅菌液の流量は、約8mL/minである。
【0034】
これにより、ノズル143又はノズル144からは滅菌液の供給量よりもエアーの供給量が多くなるため、滅菌ミストを間欠的に噴霧することができる。
【0035】
[1−4.拡散ファン]
複数の拡散ファン190の構成について、
図5及び
図7〜9を用いて説明する。
図7は実施の形態1に係るアイソレータシステム100の内部構成を示す部分正面図、
図8は
図7におけるa−a断面図、
図9は
図7におけるb−b断面図である。
【0036】
アイソレータシステム100は、複数の拡散ファン190を有している。具体的には、アイソレータ110内に拡散ファン191〜196が設けられ(
図5)、パスボックス170内に拡散ファン197が設けられ(
図7)、観察ユニット130内に拡散ファン198が設けられる(
図8)。
【0037】
まず、アイソレータ110内の拡散ファン191〜196について説明する。
図5に示すように、拡散ファン191は、アイソレータ110の右側面側の上部背面側に設けられ、右側から左側へ(−X方向)の気流を発生させている。
【0038】
[2.動作]
[2−1.制御ユニット]
制御ユニット160の制御について、
図10、11を用いて説明する。
図10は、実施の形態1に係る制御ユニット160の制御の一例を示すブロック図である。
図11は、実施の形態1に係る制御ユニット160の制御の一例を示すタイミングチャートである。
【0039】
図10に示すように、制御ユニット160は、滅菌ユニット140、空調ユニット150、空調ユニット180及び複数の拡散ファン190に信号を出力する。滅菌ユニット140の各部品には、電子天秤148等のからの入力に従い、信号を出力する。制御ユニット160は、アイソレータ110内を滅菌する際の滅菌処理として、噴霧工程と、曝露工程と、無害化工程と、を行う。噴霧工程は、滅菌ミストをアイソレータ110内に噴霧する工程である。曝露工程は、噴霧した滅菌ミストをアイソレータ110内の隅々まで拡散させる工程である。無害化工程は、アイソレータ110内に空気を供給するとともにアイソレータ110内の気体を排気して、アイソレータ110内の気体を置換する工程である。
【0040】
[2−2.噴霧工程]
図11に示すように、噴霧工程では、制御ユニット160が滅菌ユニット140を動作させて滅菌ミストをアイソレータ110内に噴霧させる。また、同時に、制御ユニット160は、空調ユニット150及び複数の拡散ファン190の動作を制御する。本実施の形態において、噴霧工程の所要時間T1は、15分である。
【0041】
<滅菌ユニット>
まず、噴霧工程を行う前に、ペリスタポンプ142bが停止し吸気バルブ149が開かれている状態において、制御ユニット160は、電子天秤148によって滅菌液ボトル141と滅菌液との合計重量を計測する。そして、
図11に示すように、噴霧工程において、制御ユニット160は滅菌ユニット140の動作を開始させる。制御ユニット160は、吸気バルブ149を閉じるとともに、ペリスタポンプ142b及びコンプレッサ145aを起動する。これにより滅菌液ボトル141内の滅菌液が吸水管142aに吸引されると、それに伴って吸気バルブ149によって計測される重量が減少する。滅菌液ボトル141内の滅菌液は、ペリスタポンプ142bの運転により吸水管142a及びフィルタを介してノズル143に所定量ずつ供給される。本実施の形態では、約2mL/minである。ここで、滅菌ユニット140の動作中、滅菌ユニット140は、滅菌ミストを間欠的に噴霧している。
【0042】
制御ユニット160は、電子天秤148によって計測される重量が所定量となるまで減少したら、吸気バルブ149を開いて吸水管142aに気体としての空気を導入させる。これにより、吸気バルブ149より下流側の滅菌液はペリスタポンプ142bによってノズル143に供給される一方、吸気バルブ149よりも上流側の滅菌液は滅菌液ボトル141内に戻されるようになる。
【0043】
<拡散ファン>
噴霧工程において、制御ユニット160は、複数の拡散ファン190を駆動させて滅菌ミストを拡散及び気化させる。
図11に示すように、制御ユニット160は、拡散ファン191、192から構成される第1拡散ファン群190Aと、拡散ファン193、194から構成される第2拡散ファン群190Bと、が交互に動作させる。制御ユニット160は、吹き出す空気の方向が異なる拡散ファン191と拡散ファン194との少なくとも2つの拡散ファンをそれぞれ間欠的に動作させる。第1拡散ファン群190Aは、まず噴霧工程の開始と同時に動作を開始し(t0)、出力が100%になった後(t1)、所定時間、例えば4秒間維持される(t2−t1)。その後、第1拡散ファン群190Aは停止され(t2)、所定時間、例えば約10秒かけて出力が低下していき、出力が0%となる(t3)。第2拡散ファン群190Bは、第1拡散ファン群190Aの出力が0%になった後、所定時間、例えば10秒経過後に動作が開始される(t4)。第2拡散ファン群190Bは、出力が100%になった後(t5)、所定時間、例えば10秒間維持される(t6−t5)。その後、第2拡散ファン群190Bは停止され(t6)、所定時間、例えば約10秒かけて出力が低下していき、出力が0%となる(t7)。その後、第1拡散ファン群190Aは、第2拡散ファン群190Bの出力が0%になった後、所定時間、例えば15秒経過後に動作が開始される(
t8)。つまり、第1拡散ファン群190Aは、停止後、次の開始まで、所定時間、例えば45秒間停止を維持される。同様に、第2拡散ファン群190Bも、停止後、次に開始まで、所定時間、例えば40秒間停止を維持される。このように、第1拡散ファン群190A及び第2拡散ファン群190Bは、それぞれの動作時間が停止時間より短く設定されている。
【0044】
第1拡散ファン群190Aと第2拡散ファン群190Bは、噴霧工程において、制御ユニット160によってこのような制御を、所定サイクル、例えば15サイクル行われる。
【0045】
制御ユニット160は、拡散ファン195〜198から構成される第3拡散ファン群190Cについて、噴霧工程の開始と同時に動作を開始し、連続的に動作を維持させる。
【0046】
<空調ユニット>
噴霧工程において、制御ユニット160は、アイソレータ110内の気圧を検出する気圧センサからの入力に基づき、逆流用バルブ159の開閉を行うことにより、アイソレータ110内の気圧を調整する。アイソレータ110内に滅菌ユニット140によって滅菌ミストが噴霧されると、アイソレータ110内は加圧状態となるため、所定気圧になったときに、制御ユニット160は逆流用バルブ159を解放する。ここで、逆流用バルブ159が設けられる逆流通路が、吸気口151と接続されているため、アイソレータ110内の滅菌ミスト又は滅菌ガスがフィルタ152を介して排気されるため、フィルタ152の滅菌処理を行うことができる。また、噴霧工程において、アイソレータ110内の気圧をアイソレータ110内の上部からから抜くことができる。
【0047】
[2−3.曝露工程]
次に、曝露工程では、制御ユニット160は、噴霧工程で噴霧された滅菌ミスト及び滅菌ミストが気化した滅菌ガスを拡散させてアイソレータ110内を滅菌する。
図11に示すように、曝露工程において、制御ユニット160は、滅菌ユニット140の動作を停止し、複数の拡散ファン190を駆動させて、アイソレータ110内に噴霧された滅菌ミスト又は気化した滅菌ガスを拡散させる。同時に、制御ユニット160は、複数の拡散ファン190の動作を制御する。本実施の形態において、曝露工程の所要時間T2は、15分である。
【0048】
<滅菌ユニット>
図11に示すように、制御ユニット160は、吸水管142a内の滅菌液をアイソレータ110に供給し終わった後も、曝露工程において、ペリスタポンプ142bとコンプレッサ145aの運転を継続させている。つまり、噴霧工程の終了後において滅菌ユニット140の動作は継続される。
【0049】
<拡散ファン>
曝露工程において、制御ユニット160は、複数の拡散ファン190を駆動させてアイソレータ110内の滅菌ミスト及び滅菌ガスを拡散させてアイソレータ110内を滅菌する。
図11に示すように、曝露工程の開始と同時に、複数の拡散ファン190は、すべて動作を開始する。つまり、制御ユニット160は、第1拡散ファン群190A、第2拡散ファン群190B及び第3拡散ファン群190Cの動作を開始させる。そして、曝露工程の間、制御ユニット160は、複数の拡散ファン190の動作を継続させる。
【0050】
<空調ユニット>
曝露工程において、制御ユニット160は、噴霧工程の終了と同時に逆流用バルブ159を閉じ、その後、空調ユニット150の動作を行わない。尚、例えば、曝露工程において、制御ユニット160は、噴霧工程と同様の動作を継続することとしてもよい。
【0051】
[2−4.無害化工程]
最後に、無害化工程において、制御ユニット160は、空調ユニット150を駆動させて、アイソレータ110内に空気を供給するとともにアイソレータ110内の気体を排気して、アイソレータ110内の気体を置換する。本実施の形態において、無害化工程の所要時間T3は、30分である。
【0052】
<滅菌ユニット>
図11に示すように、無害化工程において、制御ユニット160は、コンプレッサ145aの運転を継続し、ペリスタポンプ142bの運転を逆転させる。これにより、吸水管142a内に残存する滅菌液を回収する。
【0053】
<拡散ファン>
無害化工程において、制御ユニット160は、複数の拡散ファン190を駆動させてアイソレータ110内の滅菌ガスを拡散させてアイソレータ110内の滅菌ガスの置換を補助する。
図11に示すように、制御ユニット160は、曝露工程で動作している複数の拡散ファン190のすべての動作を継続させる。つまり、制御ユニット160は、第1拡散ファン群190A、第2拡散ファン群190B及び第3拡散ファン群190Cの動作を継続させる。そして、無害化工程の間、制御ユニット160は、複数の拡散ファン190の動作を継続させる。
【0054】
<空調ユニット>
無害化工程では、制御ユニット160は空調ユニット150を駆動させて、吸気ブロワ153を経由して取り込んだ空気をアイソレータ110内に供給することでアイソレータ110内の滅菌ガスを押し出して、アイソレータ110内の気体を置換する。まず、制御ユニット160は、曝露工程の終了と同時に逆流用バルブ159を閉じ、吸気バルブ154及び排気バルブ158を解放する。そして、制御ユニット160は、吸気ブロワ153及び排気ブロワ157を動作させる。そして、無害化工程の間、逆流用バルブ159を閉じたまま制御ユニット160は、吸気ブロワ153及び排気ブロワ157の動作を継続させる。
【0055】
以上のように、本実施の形態における滅菌処理が行われる。本実施の形態に係る滅菌処理の所要時間は合計で約1時間であり、従来の機種と比べて短縮することができる。
【0056】
[3.効果等]
以上のように、本実施の形態において、アイソレータシステム100(アイソレータの一例)は、周囲と隔離された作業空間Aを形成する略箱状のアイソレータ110(本体ケースの一例)と、アイソレータ110内に取り付けられたノズル143から滅菌液をミスト状にした滅菌ミストを噴霧する滅菌ユニット140(噴霧装置の一例)と、滅菌ユニット140の動作を制御する制御ユニット160(制御装置の一例)と、を備える。滅菌ユニット140は、噴霧時において滅菌ミストを間欠的に噴霧する。
【0057】
これにより、従来に比べてヒータを温める時間が不要となるため、滅菌処理時間を短縮できる。また、間欠的に噴霧することで、滅菌ミストのアイソレータ110の内壁面への吹き付けが継続されず、内壁面は間欠的に気体と接触することとなる。これにより、アイソレータ110の内壁面への滅菌ミストの付着による滅菌液の微細粒子が大きい水滴へ成長することを抑制できる。よって、たとえ噴霧工程で滅菌液をガス化せずにミスト状のまま噴霧したとしても、滅菌ミストの水滴を気化させる時間が短縮できる。よって、少なくとも無害化工程の時間を短縮でき、結果として、滅菌処理にかかる時間を短縮できる。
【0058】
本実施の形態において、滅菌ユニット140は、アイソレータ110内の背面側(−Y側)上部(+Z側)の右側(+X側)に取り付けられたノズル143から前面側(+Y側)下部(−Z側)の左側(−X側)へ向かって略対角線状に滅菌液をミスト状にした滅菌ミストを噴霧する。
【0059】
これにより、アイソレータ110の内壁面において、ノズル143から噴霧される滅菌ミストが吹き付けられる部分をノズル143から遠ざけることができるので、アイソレータ110の内壁面での水滴の成長を抑制できる。本実施の形態では、アイソレータ110内の背面側上部の右側に取り付けられたノズル143から前面側下部の左側へ向かって略対角線状に滅菌ミストを噴霧しているが、略対角線状の噴霧できるのであれば他の位置にノズル143が配置されてもよい。
【0060】
本実施の形態において、滅菌ユニット140は、滅菌液を吸水する吸水管142a(吸水管の一例)と、吸水する滅菌液の流量を調節するペリスタポンプ142b(送液装置の一例)と、吸水した滅菌液を霧状するノズル143(ノズルの一例)と、ノズル143に空気を送り込みノズル143から滅菌液を噴霧させるコンプレッサ145a(圧縮機の一例)と、を備える。ペリスタポンプ142bの流量が、コンプレッサ145aで空気を送り込むことによりノズル143内が陰圧になることでノズル143内に引き込まれる滅菌液の流量より小さく設定されることによって、滅菌ユニット140が滅菌ミストを間欠的に噴霧する。
【0061】
これにより、滅菌ユニット140が滅菌ミストを間欠的に噴霧することができる。また、ノズル143からの液だれを抑制できるため、滅菌液の大きな水滴ができることを抑制できる。
【0062】
また、本実施の形態において、制御ユニット160は、滅菌ユニット140が滅菌ミストを噴霧する噴霧工程を間欠的に動作させ、滅菌ユニット140は、噴霧工程において滅菌ミストを間欠的に噴霧している。
【0063】
これにより、滅菌ミストの噴霧が間欠的に噴霧されるだけでなく、噴霧工程自体も間欠的に実施されるため、滅菌ミストのアイソレータ110の内壁面への吹き付けが継続されず、アイソレータ110の内壁面に付着した滅菌液の微細粒子が大きい水滴へ成長することを抑制できる。よって、滅菌処理にかかる時間を短縮できる。
【0064】
また、本実施の形態において、アイソレータ110の上部に設けられた吸気口151(吸気口の一例)を介してアイソレータ110内に吸気する吸気ユニット150a(吸気装置の一例)と、アイソレータ110の上部に設けられた排気口155(排気口の一例)を介してアイソレータ110内から排気する排気ユニット150b(排気装置の一例)と、をさらに備える。滅菌ユニット140の噴霧時において、アイソレータ110内の気圧を少なくとも吸気口151又は排気口155の一方から抜くことができる。
【0065】
これにより、気体に比べて重い滅菌ミストを上方へ引き上げることができるため、アイソレータ110内における滅菌ミスト及び滅菌ガスの分散が良好になる。よって、噴霧工程の時間を短縮することができ、結果として、滅菌処理にかかる時間を短縮することができる。
【0066】
また、本実施の形態において、滅菌ミストを拡散するためにアイソレータ110内に取り付けられる拡散ファン194(拡散ファンの一例)をさらに備える。制御ユニット160は、滅菌ユニット140の噴霧時では少なくとも拡散ファン194を間欠的に動作させ、滅菌ユニット140の停止時では少なくとも拡散ファン194を連続的に動作させる。
【0067】
これにより、滅菌ミストの噴霧中、すなわち滅菌ユニットの噴霧時において、少なくとも拡散ファン194の滅菌ミストの吸い込みが継続されないため、滅菌ミストの付着による滅菌液の小さな水滴が成長し、滅菌液の水滴となることを抑制できる。また、アイソレータ110内の内壁面への吹き付けが継続されないため、アイソレータ110の内壁面に付着した小さな水滴の成長も抑制することができる。そのため、少なくとも無害化工程で、滅菌ミストの水滴を気化させる時間が短縮できる。よって、少なくとも無害化工程の時間を短縮でき、結果として、滅菌処理にかかる時間を短縮できる。なお、本実施の形態では、拡散ファン194だけでなく、拡散ファン191〜193についても同様の理由により間欠的に動作させている。ここでは、拡散ファン191を一例として記載したが、拡散ファン191に限られず、例えば、拡散ファン192、193、194のいずれか一つを備えていれば、上記効果を有する。ただし、滅菌ミストが吹き付けられるアイソレータ110の内壁面へ向かって、空気を吹き出すことができる拡散ファン194は、アイソレータ110の内壁面における水滴の成長を抑制できるため、効果的である。
【0068】
また、本実施の形態において、吹き出す空気の方向が異なる拡散ファン191及び拡散ファン194(少なくとも2つの拡散ファンの一例)備える。そして、制御ユニット160は、滅菌ユニット140の噴霧時において拡散ファン191及び拡散ファン194を交互に動作させている。本実施の形態では、拡散ファン191を有する第1拡散ファン群190Aと拡散ファン194を有する第2拡散ファン群190Bとを交互に動作されているが、交互に動作される拡散ファンは、複数ずつであってもよいし、また、3つ以上を順次動作させるようにしてもよい。つまり、少なくとも2つの拡散ファンが交互に動作されればよい。
【0069】
これにより、アイソレータ110内の滅菌ミストや滅菌ガスの拡散性を向上させるでき、かつ、水滴の成長もさらに抑制することができる。そのため、各工程の時間を短縮することができ、結果として、滅菌処理の時間を短縮できる。
【0070】
また、本実施の形態において、アイソレータシステム100は、空調ユニット150(空調装置の一例)と、滅菌ミストを拡散するためにアイソレータ110内に取り付けられた拡散ファン191(第1拡散ファンの一例)と、滅菌ユニット140と拡散ファン191との動作を制御する制御ユニット160と、を備える。制御ユニット160は、滅菌ユニット140の噴霧時において拡散ファン191を間欠的に動作させる。
【0071】
これにより、従来に比べてヒータを温める時間が不要となるため、滅菌処理時間を短縮できる。また、拡散ファン191でアイソレータ110内の滅菌ミストを拡散できるため、滅菌ミストがアイソレータ110の内壁面に付着することで発生する滅菌液の小さな水滴が、成長して大きな水滴となることを抑制できる。また、拡散ファン191の滅菌ミストの吸い込みが継続されないため、拡散ファン191に滅菌ミストが付着することで発生する滅菌液の小さな水滴が、成長して大きな水滴となることを抑制できる。そのため、少なくとも無害化工程で、滅菌ミストの水滴を気化させる時間が短縮できる。よって、少なくとも無害化工程の時間を短縮でき、結果として、滅菌処理にかかる時間を短縮できる。なお、本実施の形態では、拡散ファン191だけでなく、拡散ファン192、193、194についても同様の理由により間欠的に動作させている。ここでは、拡散ファン191を一例として記載したが、拡散ファン191に限られず、例えば、拡散ファン192、193、194のいずれか一つを備えていれば、上記効果を有する。ただし、滅菌ミストが吹き付けられるアイソレータ110の内壁面へ向かって、空気を吹き出すことができる拡散ファン194は、アイソレータ110の内壁面における水滴の成長を抑制できるため、効果的である。
【0072】
また、本実施の形態において、拡散ファン191と吹き出す空気の方向が異なる拡散ファン194(第2拡散ファンの一例)をアイソレータ110内にさらに備え、制御ユニット160は、滅菌ユニット140の噴霧時において拡散ファン191、194をそれぞれ間欠的に動作させる。
【0073】
これにより、吹き出し方向が異なる拡散ファン191、194でアイソレータ110内の滅菌ミストを拡散できるため、アイソレータ110内の滅菌ミストや滅菌ガスの拡散性を向上させるでき、かつ、滅菌ミストがアイソレータ110の内壁面に付着することで発生する滅菌液の小さな水滴が、成長して大きな水滴となることを抑制できる。また、拡散ファン191、194の滅菌ミストの吸い込みが継続されないため、拡散ファン191、194に滅菌ミストが付着することで発生する滅菌液の小さな水滴が、成長して大きな水滴となることを抑制できる。そのため、少なくとも無害化工程で、滅菌ミストの水滴を気化させる時間が短縮できる。よって、少なくとも無害化工程の時間を短縮でき、結果として、滅菌処理にかかる時間を短縮できる。
【0074】
また、本実施の形態において、制御ユニット160は、滅菌ユニット140の噴霧時において拡散ファン191及び拡散ファン194を交互に動作させている。本実施の形態では、拡散ファン191を有する第1拡散ファン群190Aと拡散ファン194を有する第2拡散ファン群190Bとを交互に動作されているが、交互に動作される拡散ファンは、複数ずつであってもよいし、また、3つ以上を順次動作させるようにしてもよい。つまり、少なくとも2つの拡散ファンが交互に動作されればよい。
【0075】
これにより、アイソレータ110内の滅菌ミストや滅菌ガスの拡散性を向上させるでき、かつ、水滴の成長もさらに抑制することができる。そのため、少なくとも無害化工程で、滅菌ミストの水滴を気化させる時間が短縮できる。よって、少なくとも無害化工程の時間を短縮でき、結果として、滅菌処理にかかる時間を短縮できる。
【0076】
また、本実施の形態において、制御ユニット160は、滅菌ユニット140の噴霧時において、拡散ファン191が動作しているときは拡散ファン194の動作を停止させ、拡散ファン194が動作しているときは拡散ファン191の動作を停止させる。
【0077】
これにより、拡散ファン191、194の動作時間を短く設定した場合にも、一方を停止している間に他方を動作させることができるので、アイソレータ110内の滅菌ミストや滅菌ガスの拡散性を向上させるでき、かつ、水滴の成長もさらに抑制することができる。そのため、各工程の時間を短縮することができ、結果として、滅菌処理の時間を短縮できる。
【0078】
また、本実施の形態において、制御ユニット160は、滅菌ユニット140の噴霧時において、拡散ファン191、194のそれぞれの動作時間を停止時間より短くさせる。
【0079】
これにより、拡散ファン191、194の動作時間を短く設定することができるため、水滴の成長もさらに抑制することができる。そのため、各工程の時間を短縮することができ、結果として、滅菌処理の時間を短縮できる。
【0080】
また、本実施の形態において、拡散ファン191は、アイソレータ110内の右側(左右一方側の一例)から左側(左右他方側の一例)へ空気を吹き出し、拡散ファン194は、アイソレータ110内の上方側から下方側へ空気を吹き出す。
【0081】
これにより、アイソレータ110内の滅菌ミストや滅菌ガスの拡散性を向上させるでき、かつ、水滴の成長もさらに抑制することができる。そのため、各工程の時間を短縮することができ、結果として、滅菌処理の時間を短縮できる。
【0082】
また、本実施の形態において、滅菌ユニット140は、アイソレータ110内の背面側(−Y側)上部の右側(+X側)に取り付けられたノズル143から前面側(+Y側)下部の左側(−X側)へ向かって略対角線上に滅菌ミストを噴霧し、拡散ファン194は、アイソレータ110内の左側上部から前面側下部へ空気を吹き出す。
【0083】
これにより、アイソレータ110の内壁面において、ノズル143から噴霧される滅菌ミストが吹き付けられる部分をノズル143から遠ざけることができるので、アイソレータ110の内壁面での水滴の成長を抑制できる。また、ノズル143から噴霧される滅菌ミストが吹き付けられる部分に向かって、拡散ファン194から吹き出す気体を吹き付けることができる。そのため、水滴が成長しやすい滅菌ミストが吹き付けられる部分の気体の拡散及び水滴の気化を促進でき、水滴の成長を抑制できる。そのため、各工程の時間を短縮することができ、結果として、滅菌処理の時間を短縮できる。
【0084】
また、本実施の形態において、滅菌ユニット140は、滅菌液を吸水する吸水管142aと、吸水する滅菌液の流量を調節するペリスタポンプ142bと、吸水した滅菌液を噴霧するノズル143と、ノズル143に空気を送り込みノズル143から滅菌液をミスト状にして噴霧させるコンプレッサ145aと、を備える。ペリスタポンプ142bの流量が、コンプレッサ145aで空気を送り込むことによりノズル143内が陰圧になることでノズル143内に引き込まれる滅菌水の流量より小さく設定されることによって、滅菌ユニット140が滅菌ミストを間欠的に噴霧する。
【0085】
これにより、滅菌ユニット140が滅菌ミストを間欠的に噴霧することができる。また、ノズル143からの液だれを抑制できるため、滅菌液の大きな水滴ができることを抑制できる。
【0086】
また、本実施の形態において、アイソレータ110の上部に設けられた吸気口151を介してアイソレータ内に吸気する吸気ユニット150aと、アイソレータ110の上部に設けられた排気口155を介してアイソレータ110内から排気する排気ユニット150bと、を備える。滅菌ユニット140の噴霧時において、アイソレータ110内の気圧を少なくとも吸気口151又は排気口155の一方から抜くことができる
これにより、気体に比べて重い滅菌ミストを上方へ引き上げることができるため、アイソレータ110内における滅菌ミスト及び滅菌ガスの分散が良好になる。よって、噴霧工程の時間を短縮することができ、結果として、滅菌処理にかかる時間を短縮することができる。
(他の実施の形態)
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、実施の形態1を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用可能である。また、上記実施の形態1説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施の形態とすることも可能である。
【0087】
そこで、以下、他の実施の形態を例示する。
【0088】
図12は、他の実施形態に係る制御ユニット160の制御の一例を示すタイミングチャートである。
【0089】
実施の形態1では、制御ユニット160の制御の一例として
図11に示す制御を説明した。つまり、実施の形態1では、制御ユニット160は、噴霧工程において滅菌ユニット140が噴霧するように動作させ、曝露工程では滅菌ユニット140の噴霧を停止している。しかし、制御ユニット160の制御は、
図11に示す制御に限定されない。
図12に示すように、制御ユニット160は、噴霧工程を間欠的に実施するように滅菌ユニット140を制御してもよい。その際、滅菌ユニット140は、噴霧工程時において滅菌ミストを間欠的に噴霧している。
【0090】
これにより、アイソレータ110の内壁面や複数の拡散ファン190に付着した滅菌ミストの水滴の成長を抑制することができる。よって、滅菌ミストの水滴を気化させる時間が短縮できる。よって、少なくとも無害化工程の時間を短縮でき、結果として、滅菌処理にかかる時間を短縮できる。
【0091】
また、実施の形態1では、滅菌ユニット140が滅菌ミストを間欠的に噴霧する方法として、スプレー方式を用いた。具体的には、ペリスタポンプ142bの流量を、コンプレッサ145aで空気を送り込むことによりノズル143内が陰圧になることでノズル143内に引き込まれる滅菌液の流量より小さく設定した。しかし、本開示の技術は、これに限定されない。滅菌ユニット140が滅菌ミストを間欠的に噴霧する方法として、例えば、超音波振動子を用いてミスト化した滅菌ミストを、間欠的に噴射させたエアーによって噴霧させてもよい。これによれば、滅菌ミストの間欠噴霧を制御しやすいという点で効果的である。また、滅菌ミストの粒子径が小さいため、水滴になりにくい点で効果的である。
【0092】
以上のように、本開示における技術の例示として、実施の形態を説明した。そのために、添付図面および詳細な説明を提供した。
【0093】
したがって、添付図面および詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須な構成要素だけでなく、上記技術を例示するために、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれ得る。そのため、それらの必須ではない構成要素が添付図面や詳細な説明に記載されていることをもって、直ちに、それらの必須ではない構成要素が必須であるとの認定をするべきではない。
【0094】
また、上述の実施の形態は、本開示における技術を例示するためのものであるから、特許請求の範囲またはその均等の範囲において種々の変更、置き換え、付加、省略などを行うことができる。