特許第6028095号(P6028095)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6028095
(24)【登録日】2016年10月21日
(45)【発行日】2016年11月16日
(54)【発明の名称】噴射弁
(51)【国際特許分類】
   F02M 61/08 20060101AFI20161107BHJP
   F02M 59/44 20060101ALI20161107BHJP
   F02M 61/10 20060101ALI20161107BHJP
   F02M 61/04 20060101ALI20161107BHJP
【FI】
   F02M61/08 R
   F02M59/44 P
   F02M61/10 X
   F02M61/04 C
   F02M61/08 P
   F02M61/10 T
【請求項の数】9
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-516519(P2015-516519)
(86)(22)【出願日】2013年4月24日
(65)【公表番号】特表2015-519512(P2015-519512A)
(43)【公表日】2015年7月9日
(86)【国際出願番号】EP2013058488
(87)【国際公開番号】WO2013189639
(87)【国際公開日】20131227
【審査請求日】2014年12月15日
(31)【優先権主張番号】102012210424.0
(32)【優先日】2012年6月20日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】501125231
【氏名又は名称】ローベルト ボッシュ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(72)【発明者】
【氏名】シェーンロック,オラフ
(72)【発明者】
【氏名】ベルグ,アンゼルム
【審査官】 櫻田 正紀
(56)【参考文献】
【文献】 特表2004−517255(JP,A)
【文献】 特許第4820470(JP,B2)
【文献】 特許第4125295(JP,B2)
【文献】 特開2010−223166(JP,A)
【文献】 特開2010−180767(JP,A)
【文献】 特開2009−079485(JP,A)
【文献】 米国特許第3632081(US,A)
【文献】 米国特許第5048790(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 61/08
F02M 59/44
F02M 61/04
F02M 61/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼室内へ燃料を噴射するための噴射弁(1)において、
少なくとも1つの噴射穴(3)を備えたハウジング(2)と、
該ハウジング(2)内で長手軸線(6)に沿って直線移動可能なアーマチュアアッセンブリ(11)と、
前記アーマチュアアッセンブリ(11)に磁気作用する磁気コイル(26)と、
前記アーマチュアアッセンブリ(11)に対して、および、前記ハウジング(2)に対して直線移動可能な、前記噴射穴(3)を開閉するための弁要素(7)と、
前記アーマチュアアッセンブリ(11)に対する前記弁要素(7)の移動を制限するためのピン(19)と、
を含み、
前記弁要素(7)に対する前記アーマチュアアッセンブリ(11)の移動を緩衝するために、燃料を充填可能な緩衝室(21)が前記アーマチュアアッセンブリ(11)内に設けられていることを特徴とする噴射弁。
【請求項2】
前記ピン(19)が前記長手軸線(6)に対し垂直であることを特徴とする、請求項1に記載の噴射弁。
【請求項3】
前記ピン(19)が、前記アーマチュアアッセンブリ(11)と固定結合されているか、或いは、前記弁要素(7)と固定結合されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の噴射弁。
【請求項4】
前記アーマチュアアッセンブリ(11)が筒形体(16)を含み、該筒形体内に、前記弁要素(7)が嵌合し、且つ前記緩衝室(21)が形成されていることを特徴とする、請求項に記載の噴射弁。
【請求項5】
前記弁要素(7)を閉弁方向に押す圧縮ばね(20)が前記アーマチュアアッセンブリ(11)と前記弁要素(7)との間に設けられていることを特徴とする、請求項1からのいずれか一項に記載の噴射弁。
【請求項6】
前記圧縮ばね(20)が前記筒形体(16)内に配置されていることを特徴とする、請求項またはに記載の噴射弁。
【請求項7】
前記筒形体(16)の底部(17)に少なくとも1つの排流穴(22)が設けられていることを特徴とする、請求項からのいずれか一項に記載の噴射弁。
【請求項8】
前記アーマチュアアッセンブリ(11)が中空ニードル(13)を含み、該中空ニードル(13)に磁気アーマチュア(15)と前記筒形体(16)とが取り付けられていることを特徴とする、請求項からのいずれか一項に記載の噴射弁。
【請求項9】
前記筒形体(16)に段部(24)が設けられ、該段部(24)と前記弁要素(7)との間に圧潰隙間(25)が形成されていることを特徴とする、請求項からのいずれか一項に記載の噴射弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に内燃機関の燃焼室内へ燃料を噴射するための噴射弁に関するものである。
【背景技術】
【0002】
直線移動可能な弁ニードルと、対応する磁気アーマチュアとを備えた噴射弁は公知である。磁気アーマチュアは、通電可能な磁気コイルとポールコアとを介して移動せしめられる。弁ニードルは頻繁に磁気アーマチュアから切り離されたり、ばねを介して結合され、その結果二体系が生じる。これにより、弁ニードルは磁気アーマチュアに対しいわゆるアーマチュアフリーパスを有する。磁気アーマチュアおよび弁ニードルの切り離しは、噴射弁を閉じる際の衝撃を緩和させる。
【発明の概要】
【0003】
請求項1の構成を備えた本発明による噴射弁は、弁要素をアーマチュアアッセンブリと結合させるための新規な可能性を示し、さらにその際に弁要素とアーマチュアアッセンブリとの間の相対運動が可能であり、その結果二体系が生じる。本発明によれば、弁要素とアーマチュアアッセンブリとは互いに嵌合しあっており、アーマチュアアッセンブリと弁要素との間の相対運動はピンを用いて制限される。本発明によるこの配置構成により、特に緩衝室の有利な構成および/または圧縮ばねの配置も可能になる。従って、本発明に従って噴射弁を構成することにより、特に噴射穴を閉じる際の弁要素の衝撃動作が緩和する。これらの利点は、少なくとも1つの噴射穴を備えたハウジングと、該ハウジング内で長手軸線に沿って移動可能なアーマチュアアッセンブリとを含んだ噴射弁によって達成される。アーマチュアアッセンブリは、磁気コイルを通電することで移動せしめられる。さらに、ハウジング内には、アーマチュアアッセンブリに対して、およびハウジングに対して直線移動可能な、少なくとも1つの噴射穴を開閉するための弁要素が設けられている。弁要素とアーマチュアアッセンブリとの間の相対運動を制限するため、ピンが配置される。
【0004】
従属請求項は、本発明の有利な更なる構成を示している。
【0005】
有利には、少なくとも1つのピンは長手軸線に対し垂直に配置される。ピンは、アーマチュアアッセンブリと固定結合されるか、或いは、弁要素と固定結合されてよい。有利な実施態様では、弁要素はアーマチュアアッセンブリに嵌合している。ピンはアーマチュアアッセンブリと固定結合され、長手軸線に対し横方向に繰り抜き部が、特に孔が弁要素内に延在している。弁要素に設けたこの繰り抜き部は長手軸線方向においてピンの直径よりも大きく、その結果弁要素は、アーマチュアアッセンブリに対して、制限された範囲で移動することができる。
【0006】
アーマチュアアッセンブリの内部には、有利には弁要素の移動を緩衝するための緩衝室が形成される。この緩衝室は、噴射弁の使用時に噴射流体で充填される。
【0007】
特に有利な実施態様では、アーマチュアアッセンブリは筒形体を含んでいる。筒形体は、長手軸線に対し垂直な底部と周回するように延在している側壁とによって形成される。筒形体は燃焼室側に開口し、または、噴射穴のほうへ開口している。この筒形体に弁要素が嵌合している。弁要素は筒形体内で直線移動可能に案内されている。筒形体の底部と弁要素との間には、特に緩衝室が形成されている。
【0008】
緩衝作用を調整するため、有利には筒形体の底部には、噴射流体のための少なくとも1つの排流穴が設けられている。
【0009】
さらに、有利には、一端でもってアーマチュアアッセンブリで支持され、他端でもって弁要素で支持される圧縮ばねが配置される。この圧縮ばねは弁要素を閉弁方向に押している。特に有利には、圧縮ばねは弁要素と筒形体の底部との間に配置されている。
【0010】
アーマチュアアッセンブリは、有利には、中央部材として中空ニードルを有している。この中空ニードルを噴射流体が貫流する。特に有利には、中空ニードルには、流体のための少なくとも1つの貫流穴が設けられている。中空ニードルの、燃焼室とは逆の側には、内極または磁気コイルと磁気的に協働する磁気アーマチュアが取り付けられている。中空ニードルの他端には筒形体が取り付けられ、特に中空ニードルと溶着され、たとえば溶接結合により結合されている。
【0011】
有利な更なる実施態様では、筒形体に段部が設けられている。この段部は燃焼室側の面を提供する。この燃焼室側の面は、弁要素の、燃焼室とは逆の側の面に対向している。従って、これら2つの面の間に圧潰隙間が形成されている。アーマチュアアッセンブリが弁要素へ移動すると、この圧潰隙間が減少する。圧潰隙間のサイズを適当に選定することにより、緩衝作用を調整可能である。
【0012】
筒形体は特に深絞り部材として作製される。これとは択一的に、たとえば旋削部材としての作製が行われる。
【0013】
弁要素は、有利には、密封要素と固定結合されている、特に球体と固定結合されている小さな弁ニードルを含んでいる。
【0014】
次に、本発明のいくつかの実施形態を、添付の図面を参照して詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1実施形態による本発明の噴射弁の半断面図である。
図2】第2実施形態による本発明の噴射弁の詳細半断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、第1実施形態による噴射弁1を半断面で概略的に図示したものである。
【0017】
噴射弁1は、少なくとも1つの噴射穴3を備えた、概略を図示したにすぎないハウジング2を含んでいる。噴射弁1の、噴射穴3を備えた側を、燃焼室側4と記す。噴射弁1の他の側は燃焼室とは逆の側5と記す。噴射弁1は長手軸線6に沿って延在している。この長手軸線6に沿って弁要素7がハウジング2内部で直線移動可能に配置されている。弁要素7は短い弁ニードル8を含み、弁ニードルは弁球体9と固定結合されている。弁ニードル8内には、長手軸線6に対し垂直な孔として形成された繰り抜き部10が配置されている。
【0018】
ハウジング2には、通電可能な磁気コイル26が取り付けられている。
【0019】
ハウジング2内には、さらに、長手軸線6に沿って直線移動可能なアーマチュアアッセンブリ11がある。アーマチュアアッセンブリ11は磁気コイル26を用いて可動である。さらに、アーマチュアアッセンブリ11は閉弁圧縮ばね12を用いて閉弁方向へ、または燃焼室側4へ負荷される。アーマチュアアッセンブリ11は、燃料用の少なくとも1つの貫流穴14を備えた中空ニードル13を含んでいる。燃焼室とは逆の側5には、磁気アーマチュア15が中空ニードル13上に固定されている。燃焼室側4では、筒形体16が中空ニードル13に嵌合している。
【0020】
筒形体16は中空ニードル13と固定結合され、特に溶接されている。筒形体16は、長手軸線6に対し垂直な底部17を含んでいる。底部17には、筒形体16の筒状の側壁18が接続している。
【0021】
筒形体16は燃焼室側4のほうへ開口している。筒形体16には弁要素7が嵌合し、特に短い弁ニードル8が嵌合している。側壁18にはピン19が固定結合されている。ピン19は長手軸線6に対し垂直に短い弁ニードル8内の繰り抜き部10内へ延びている。このピン19により筒形体16に対する弁要素7の移動が制限される。
【0022】
筒形体16の底部17と、弁要素7の、燃焼室とは逆の側との間には、圧縮ばね20が配置されている。さらに、弁要素7の、燃焼室とは逆の側と、底部17との間の空間は、弁要素7を開弁移動させるための緩衝室21として用いられる。適当な緩衝作用を調整するため、少なくとも1つの排流穴22が底部17内に設けられている。排流穴22は所望の緩衝作用に対応したサイズに選定される。
【0023】
短い弁ニードル8は側壁18に設けたガイド23に沿って案内されている。
【0024】
図2は、第2実施形態による噴射弁1の詳細断面図である。すべての実施形態において、同一の部材または機能的に同一の部材には同じ参照符号が付してある。
【0025】
本第2実施形態では、第1実施形態とは異なり、筒形体はその側壁18に段部24を含んでいる。段部24はリング状の、燃焼室側の面を形成している。このリング状の面と、弁ニードル8の、燃焼室とは逆の側の面との間には、圧潰隙間25が形成されている。この圧潰隙間25を介しても緩衝室21の緩衝作用を調整することができる。
【0026】
第2実施形態では、圧潰隙間25を用いても、排流穴22を備えた緩衝室21のサイズ選定を用いても、緩衝作用を調整することができる。
【0027】
磁気コイル26の非通電状態では、アーマチュアアッセンブリ11は閉弁圧縮ばね12により圧縮ばね20に抗して弁要素7に対し押圧され、その結果弁球体9が噴射穴3を密封する。通電開始後、すなわち磁力が圧縮ばね20の力を除いた閉弁圧縮ばね12の力よりも大きくなると、アーマチュアアッセンブリ11は開弁方向に付勢され、特に図示していない内極の方向に付勢されて、ピン16は弁ニードル8内の繰り抜き部10の壁で係止され、衝撃が弁要素7へ伝達される。
【0028】
閉弁時には次のような機能経過が生じる。弁球体9が弁座に接触すると、アーマチュアアッセンブリ11はさらに閉弁方向へ移動することができる。その際、アーマチュアアッセンブリ11は圧縮ばね20によって制動される。さらに、弁要素7と筒形体16の底部17との間に、すなわち緩衝室21内に圧力が発生し、この圧力は圧潰隙間25および/または排流穴22を介して分解される。この場合、排流穴22の直径と、圧潰隙間25のサイズと、緩衝室21全体のサイズ選定とは、弁要素7とアーマチュアッセンブリ11とが蒙る緩衝を決定する。
【符号の説明】
【0029】
1 噴射弁
2 ハウジング
3 噴射穴
6 長手軸線
7 弁要素
11 アーマチュアアッセンブリ
13 中空ニードル
15 磁気アーマチュア
16 筒形体
17 筒形体の底部
19 ピン
20 圧縮ばね
21 緩衝室
22 排流穴
24 段部
25 圧潰隙間
26 磁気コイル
図1
図2