特許第6028099号(P6028099)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6028099
(24)【登録日】2016年10月21日
(45)【発行日】2016年11月16日
(54)【発明の名称】防振装置
(51)【国際特許分類】
   F16F 13/10 20060101AFI20161107BHJP
【FI】
   F16F13/10 K
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-521380(P2015-521380)
(86)(22)【出願日】2014年5月22日
(86)【国際出願番号】JP2014063582
(87)【国際公開番号】WO2014196368
(87)【国際公開日】20141211
【審査請求日】2015年10月14日
(31)【優先権主張番号】特願2013-116890(P2013-116890)
(32)【優先日】2013年6月3日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【弁理士】
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】植木 哲
(72)【発明者】
【氏名】永澤 正和
【審査官】 竹村 秀康
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭60−113833(JP,A)
【文献】 特開昭60−073147(JP,A)
【文献】 特開昭62−028543(JP,A)
【文献】 実開昭61−101137(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F11/00−13/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動発生部および振動受部のうちの一方に連結される筒状の第1取付け部材、および他方に連結される第2取付け部材と、
これらの両取付け部材を連結する弾性体と、
液体が封入された前記第1取付け部材内の液室を、前記弾性体を壁面の一部とする主液室と、副液室と、に区画する仕切り部材と、を備え、
前記仕切り部材には、前記主液室と前記副液室とを連通する制限通路が形成され、
前記制限通路は、アイドル振動の入力に対して共振を生じさせる第1制限通路と、シェイク振動の入力に対して共振を生じさせる第2制限通路と、を備えた防振装置であって、
前記仕切り部材には、前記主液室または前記副液室と前記第1制限通路とを連通する整流室が設けられ、
前記整流室は、シェイク振動の入力時に内部に流入された前記液体を旋回流に整流する防振装置。
【請求項2】
請求項1記載の防振装置であって、
前記整流室は、前記主液室側から内部に流入された前記液体、および前記副液室側から内部に流入された前記液体それぞれを旋回流に整流する防振装置。
【請求項3】
請求項2記載の防振装置であって、
前記整流室として、
前記主液室と前記第1制限通路とを連通し、前記主液室側から内部に流入された前記液体を旋回流に整流する第1整流室と、
前記副液室と前記第1制限通路とを連通し、前記副液室側から内部に流入された前記液体を旋回流に整流する第2整流室と、が備えられている防振装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の防振装置であって、
前記第1制限通路には、内部に可動板が収容された収容室が備えられ、
前記可動板は、アイドル振動の入力時に前記第1制限通路を通して前記主液室と前記副液室とを連通させ、シェイク振動の入力時に前記第1制限通路を通した前記主液室と前記副液室との連通を遮断するように、前記収容室内に、前記第1取付け部材の軸方向に変位自在に収容されている防振装置。
【請求項5】
請求項1から3のいずれか1項に記載の防振装置であって、
前記整流室は、前記第1取付け部材と同軸に配置され、
前記整流室の壁面には、前記整流室内に向けて前記第1取付け部材の周方向に開口する整流開口部が設けられ、
前記整流室は、前記整流開口部から内部に流入された前記液体を、この整流室の内周面に沿って流動させることで旋回流に整流する防振装置。
【請求項6】
請求項4記載の防振装置であって、
前記整流室は、前記第1取付け部材と同軸に配置され、
前記整流室の壁面には、前記整流室内に向けて前記第1取付け部材の周方向に開口する整流開口部が設けられ、
前記整流室は、前記整流開口部から内部に流入された前記液体を、この整流室の内周面に沿って流動させることで旋回流に整流する防振装置。
【請求項7】
請求項5記載の防振装置であって、
前記整流室の壁面には、前記整流室内で旋回流に整流された前記液体を、前記整流室の外部に流出させる流通開口部が設けられ、
前記流通開口部は、前記整流室内に前記第1取付け部材の軸方向に開口し、前記整流開口部よりも前記第1取付け部材の径方向の内側に位置する防振装置。
【請求項8】
請求項6記載の防振装置であって、
前記整流室の壁面には、前記整流室内で旋回流に整流された前記液体を、前記整流室の外部に流出させる流通開口部が設けられ、
前記流通開口部は、前記整流室内に前記第1取付け部材の軸方向に開口し、前記整流開口部よりも前記第1取付け部材の径方向の内側に位置する防振装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載の防振装置であって、
シェイク振動の入力時に、前記整流室内に流入した前記液体が旋回しようとすることで、前記整流室および前記第1制限通路を通した前記主液室と前記副液室との間の流通抵抗が上昇し、前記液体が、前記主液室と前記副液室との間で前記第2制限通路を通して優先的に流通する防振装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車や産業機械等に適用され、エンジン等の振動発生部の振動を吸収および減衰する防振装置に関する。
本願は、2013年6月3日に日本国に出願された特願2013−116890号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
従来から、この種の防振装置として、例えば下記特許文献1記載の構成が知られている。この防振装置は、振動発生部および振動受部のうちの一方に連結される筒状の第1取付け部材、および他方に連結される第2取付け部材と、これらの両取付け部材を連結する弾性体と、液体が封入された第1取付け部材内の液室を、弾性体を壁面の一部とする主液室と、副液室と、に区画する仕切り部材と、を備えている。仕切り部材には、主液室と副液室とを連通する制限通路が形成されている。制限通路は、アイドル振動の入力に対して液柱共振を生じさせる第1制限通路と、シェイク振動の入力に対して液柱共振を生じさせる第2制限通路と、を備えている。仕切り部材には、プランジャ部材が設けられている。
この防振装置では、振動が入力されたときにプランジャ部材を移動させて第1制限通路を開閉することで、主液室と副液室との間で液体が流通する制限通路を切り替える。これにより、アイドル振動の入力時には液体が第1制限通路を流通し、シェイク振動の入力時には液体が第2制限通路を流通する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】日本国特開2007−120598号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来の防振装置では、構造の簡素化および製造の簡便化を図ることについて改善の余地がある。
【0005】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、構造の簡素化および製造の簡便化を図ることができる防振装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る防振装置の第1の態様は、振動発生部および振動受部のうちの一方に連結される筒状の第1取付け部材、および他方に連結される第2取付け部材と、これらの両取付け部材を連結する弾性体と、液体が封入された前記第1取付け部材内の液室を、前記弾性体を壁面の一部とする主液室と、副液室と、に区画する仕切り部材と、を備え、前記仕切り部材には、前記主液室と前記副液室とを連通する制限通路が形成され、前記制限通路は、アイドル振動の入力に対して共振を生じさせる第1制限通路と、シェイク振動の入力に対して共振を生じさせる第2制限通路と、を備えた防振装置であって、前記仕切り部材には、前記主液室または前記副液室と前記第1制限通路とを連通する整流室が設けられ、前記整流室は、シェイク振動の入力時に内部に流入された前記液体を旋回流に整流する。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る防振装置によれば、構造の簡素化および製造の簡便化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係る防振装置の縦断面図である。
図2図1に示す防振装置を構成する仕切り部材の側面図である。
図3図2に示す仕切り部材のA−A断面図である。
図4図2に示す仕切り部材のB−B断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照し、本発明の一実施形態に係る防振装置を説明する。
図1に示すように、防振装置10は、振動発生部および振動受部のうちのいずれか一方に連結される筒状の第1取付け部材11、および他方に連結される第2取付け部材12と、第1取付け部材11および第2取付け部材12を弾性的に連結する弾性体13と、液体Lが封入された第1取付け部材11内の液室14を、弾性体13を壁面の一部とする一方側の主液室15と他方側の副液室16とに区画する仕切り部材17と、を備えている。
【0010】
この液体封入型の防振装置10が例えば自動車に装着された場合、第2取付け部材12が振動発生部としてのエンジンに連結される一方、第1取付け部材11が振動受部としての車体に連結されることにより、エンジンの振動が車体に伝達することが抑えられる。この防振装置10では、装着時の支持荷重に基づいて主液室15に正圧が作用する。
【0011】
第1取付け部材11は円筒状、図示の例では多段円筒状に形成されている。以下では、第1取付け部材11の軸線Oに沿う方向を軸方向といい、前記軸方向に沿って仕切り部材17に対する主液室15側を前記軸方向の一方側といい、副液室16側を前記軸方向の他方側といい、軸線Oに直交する方向を径方向といい、軸線O回りに周回する方向を周方向という。
【0012】
第2取付け部材12は、第1取付け部材11において前記軸方向の一方側に位置する一端部に配設されている。第2取付け部材12は、軸線Oと同軸に配置された柱状に形成されている。
弾性体13は、第1取付け部材11の一端部の内周面および第2取付け部材12の外周面に各別に接着されていて、第1取付け部材11の一端部を閉塞している。
【0013】
第1取付け部材11において前記軸方向の他方側に位置する他端部は、ダイヤフラム18により閉塞されている。そして液室14は、第1取付け部材11の内部のうち、弾性体13とダイヤフラム18との間に位置する部分とされ、この液室14内に、例えばエチレングリコール、水、シリコーンオイル等の液体Lが充填されるとともに、仕切り部材17が配設されている。主液室15の液圧は、振動の入力時に、弾性体13が変形してこの主液室15の内容積が変化することで変動する。副液室16は、ダイヤフラム18を壁面の一部としており、ダイヤフラム18が変形することにより拡縮する。
【0014】
図1から図4に示すように、仕切り部材17には、制限通路21、22と、整流室23、24と、が設けられている。
制限通路21、22は、主液室15と副液室16とを連通し、第1制限通路21(アイドルオリフィス)と、第2制限通路22(シェイクオリフィス)と、を備えている。
【0015】
第1制限通路21は、アイドル振動(例えば、周波数が18Hz〜30Hz、振幅が±0.5mm以下)の入力に対して液柱共振を生じさせる。第2制限通路22は、アイドル振動よりも周波数が低いシェイク振動(例えば、周波数が14Hz以下、振幅が±0.5mmより大きい)の入力に対して液柱共振を生じさせる。
【0016】
第1制限通路21の流通抵抗は、第2制限通路22の流通抵抗よりも小さくなっていて、主液室15と副液室16とが第1制限通路21を通して連通されている状態では、液体Lは、第2制限通路22よりも第1制限通路21を積極的に流通する。
第1制限通路21と第2制限通路22とは、仕切り部材17内において互いに独立していて、流路が兼用されていない。
【0017】
第2制限通路22は、仕切り部材17の外周部に設けられている。第2制限通路22は、周溝22aと、主側開口部22bと、副側開口部22cと、を備えている。周溝22aは、仕切り部材17の外周面に周方向に沿って延びるように設けられ、第1取付け部材11の内周面により径方向の外側から閉塞されている。周溝22aの周方向の両端部のうち、一方の端部は、主側開口部22bを通して主液室15に連通し、他方の端部は、副側開口部22cを通して副液室16に連通している。
【0018】
第1制限通路21は、仕切り部材17において第2制限通路22よりも径方向の内側に配設されている。第1制限通路21は、通路室21a、21bと、収容室21cと、連通孔21d、21eと、を備えている。
【0019】
通路室21a、21bは一対備えられ、各通路室21a、21bはこの第1制限通路21の端部を構成している。両通路室21a、21bは、互いに前記軸方向に反転することで同形同大をなす。通路室21a、21bは、前記軸方向から見た平面視において円形状に形成され、軸線Oと同軸に配置されている。一対の通路室21a、21bのうち、主液室15側に位置する第1通路室21aは、前記軸方向の一方側に向けて開口する有底状に形成され、副液室16側に位置する第2通路室21bは、前記軸方向の他方側に向けて開口する有頂状に形成されている。
【0020】
収容室21cは、両通路室21a、21bの間に配設されていて、第1通路室21aの底面と、第2通路室21bの頂面と、の間に位置している。収容室21cは、前記平面視において円形状に形成され、軸線Oと同軸に配置されている。
連通孔21d、21eは、通路室21a、21bと収容室21cとを連通する。連通孔21d、21eには、第1通路室21aと収容室21cとを連通する第1連通孔21dと、第2通路室21bと収容室21cとを連通する第2連通孔21eと、が備えらえている。
【0021】
第1連通孔21dは、第1通路室21aの底面に、周方向に間隔をあけて複数配置されている。第1連通孔21dは、周方向に延在する長穴状に形成されている。複数の第1連通孔21dは、前記平面視において、軸線Oを基準として回転対称となるように配置されている。
第2連通孔21eは、第2通路室21bの頂面に、周方向に間隔をあけて複数配置されている。第2連通孔21eは、周方向に延在する長穴状に形成されている。複数の第2連通孔21eは、前記平面視において、軸線Oを基準として回転対称となるように配置されている。
【0022】
ここで収容室21c内には、可動板25が収容されている。可動板25は、例えばゴム材料などの弾性体材料で形成され、収容室21c内に、仕切り部材17に対して相対的に前記軸方向に変位自在に収容されたいわゆるガタメンブランである。可動板25の前記軸方向への変位の態様は、入力される振動の周波数に応じて異なる。可動板25は、アイドル振動の入力時に収容室21cを通して主液室15と副液室16とを連通させ、かつシェイク振動の入力時に収容室21cを通した主液室15と副液室16との連通を遮断するように、仕切り部材17に対して相対的に前記軸方向に変位する。
【0023】
整流室23、24は、主液室15または副液室16と第1制限通路21とを連通する。整流室23、24として、主液室15と第1制限通路21とを連通する第1整流室23と、副液室16と第1制限通路21とを連通する第2整流室24と、が備えられている。両整流室23、24は、第1制限通路21を前記軸方向に挟み込むように配置されている。両整流室23、24は、第1制限通路21を通して互いに連通されていて、第1制限通路21は、両整流室23、24の間に前記軸方向に延びるように設けられている。
【0024】
両整流室23、24は、互いに同形同大に形成されている。両整流室23、24は、前記平面視において、通路室21a、21bよりも大径な円形状に形成され、軸線O(第1取付け部材11)と同軸に配置されている。両整流室23、24は、内部に流入された液体Lを旋回流に整流可能に形成されている。両整流室23、24は、主液室15側から内部に流入された液体L、および副液室16側から内部に流入された液体Lそれぞれを旋回流に整流する。
【0025】
この防振装置10では、第1整流室23が、主液室15側から内部に流入された液体Lを旋回流に整流し、第2整流室24が、副液室16側から内部に流入された液体Lを旋回流に整流する。第1整流室23内の旋回流および第2整流室24内の旋回流は、いずれも周方向に旋回する。第1整流室23内の旋回流と第2整流室24内の旋回流とは、互いに周方向に沿う反対側に向けて旋回する。
【0026】
両整流室23、24の壁面には、整流開口部26a、26bと、流通開口部27a、27bと、が設けられている。
整流開口部26a、26bは、両整流室23、24の内周面に配設され、両整流室23、24内に向けて周方向に開口している。整流開口部26a、26bは、各整流室23、24に1つずつ設けられている。整流開口部26a、26bは、導入路28a、28bを通して主液室15または副液室16に連通している。導入路28a、28bは、軸線Oに直交する直交面に沿う方向に直線状に延びている。導入路28a、28bは、軸線Oを中心とする仮想円の接線方向に延びている。両整流室23、24は、導入路28a、28bを通して整流開口部26a、26bから内部に流入された液体Lを、この両整流室23、24の内周面に沿って流動させることで旋回流に整流する。
【0027】
流通開口部27a、27bは、両整流室23、24内で旋回流に整流された液体Lを、両整流室23、24の外部に流出させる。流通開口部27a、27bは、両整流室23、24内に前記軸方向に開口し、整流開口部26a、26bよりも径方向の内側に位置している。流通開口部27a、27bは、前記平面視において円形状に形成され、軸線Oと同軸に配置されている。流通開口部27a、27bは、通路室21a、21bの開口端部に直通していて、前記平面視において、前記開口端部と同形同大でかつ同軸に形成されている。
【0028】
なお以下では、整流開口部26a、26b、流通開口部27a、27b、導入路28a、28bのうち、第1整流室23に設けられたものを、それぞれ第1整流開口部26a、第1流通開口部27a、第1導入路28aという。また整流開口部26a、26b、流通開口部27a、27b、導入路28a、28bのうち、第2整流室24に設けられたものを、それぞれ第2整流開口部26b、第2流通開口部27b、第2導入路28bという。
【0029】
ところで、両整流室23、24へ流入する液体Lの流速は、入力振動の振幅と入力振動の振動周波数の積により決定される。一般にシェイク振動はアイドル振動に比べ振幅が大きく、液体Lの流速も大きいと解されている。
防振装置10において、前記軸方向にシェイク振動が入力されると、両取付け部材11、12が弾性体13を弾性変形させながら相対的に変位して主液室15の液圧が変動する。このシェイク振動の振幅に応じて、主液室15内の液体Lが単位時間当たり多量に、第1導入路28aおよび第1整流開口部26aを通して第1整流室23内に流入する。すなわち、シェイク振動の入力時には流速が高められた液体Lが整流室23内へ流入するため、内部に流入した液体Lにより第1整流室23内が満たされた状態で、液体Lが第1整流室23内に流入して旋回しようとする。またこのとき、シェイク振動の振幅に応じて、副液室16内の液体Lが単位時間あたり多量に、第2導入路28bおよび第2整流開口部26bを通して第2整流室24内に流入し、内部に流入した液体Lにより第2整流室24内が満たされた状態で、さらに液体Lが第2整流室24内に流入して旋回しようとする。
以上により、両整流室23、24および第1制限通路21を通した主液室15と副液室16との間の流通抵抗が上昇することから、液体Lが、主液室15と副液室16との間で第2制限通路22を通して優先的に流通し、第2制限通路22内で液注共振が生じてシェイク振動が吸収および減衰される。
【0030】
なおこのとき、シェイク振動のうち、振幅が小さいものが入力され、両整流室23、24内の旋回流により両整流室23、24および第1制限通路21を通した主液室15と副液室16との間の流通抵抗を十分に高め難い場合であっても、可動板25が、収容室21cの壁面に当接して連通孔21d、21eを閉塞するように、収容室21c内で仕切り部材17に対して前記軸方向に相対的に変位する。そのため、液体Lが第1制限通路21を流通することが規制される。なお可動板25は、例えば第1連通孔21dおよび第2連通孔21eを交互に閉塞してもよく、第1連通孔21dおよび第2連通孔21eのうちの一方を閉塞し続けてもよい。
【0031】
一方、前記軸方向にアイドル振動が入力されると、前述のように主液室15の液圧が変動したときに、このアイドル振動の振幅に応じた少量の液体Lが両整流室23、24内に流入する。そのため、内部に流入した液体Lにより両整流室23、24内が満たされず、両整流室23、24内を流動する液体Lは旋回することなく、あるいは旋回量が少なく流動する。その結果、両整流室23、24および第1制限通路21を通した主液室15と副液室16との間の流通抵抗が低く抑えられる。また可動板25が、収容室21cの壁面から離間して連通孔21d、21eを開放するように、収容室21c内で仕切り部材17に対して前記軸方向に相対的に変位し、第1制限通路21を通して主液室15と副液室16とが連通される。なおこのとき、可動板25は、例えば収容室21cの内面から離間した状態で、前記軸方向の両側に交互に変位していてもよい。
以上により、液体Lに、導入路28a、28b、整流開口部26a、26bおよび流通開口部27a、27bを通して第1制限通路21を積極的に流通させることが可能になり、第1制限通路21内で共振が生じてアイドル振動が吸収および減衰される。
【0032】
以上説明したように、本実施形態に係る防振装置10によれば、前記従来技術のようなプランジャ部材に代えて両整流室23、24を設けることで、シェイク振動およびアイドル振動の両方を吸収および減衰させることが可能になり、防振装置10の構造の簡素化および製造の簡便化を図ることができる。
【0033】
また両整流室23、24が、主液室15側から内部に流入された液体L、および副液室16側から内部に流入された液体Lそれぞれを旋回流に整流する。そのため、シェイク振動の入力時に、主液室15内の液体Lが、両整流室23、24および第1制限通路21を通して副液室16に流通すること、および副液室16内の液体Lが、両整流室23、24および第1制限通路21を通して主液室15に流通することの両方を規制することが可能となる。その結果、液体Lに、第2制限通路22を一層優先的に流通させることができる。
【0034】
また第1整流室23が、主液室15側から内部に流入された液体Lを旋回流に整流し、第2整流室24が、副液室16側から内部に流入された液体Lを旋回流に整流する。そのため、シェイク振動の入力時に、主液室15および副液室16の液体Lが、第1制限通路21に到達するのを抑えることが可能になり、シェイク振動を確実に吸収および減衰させることができる。
【0035】
また、入力される振動の周波数に応じて可動板25の前記軸方向への変位の態様を異ならせるという簡便な構成によって、シェイク振動の入力時に、液体Lが第1制限通路21を通して主液室15と副液室16との間で流通するのを規制することができる。したがって、シェイク振動のうち、振幅が小さいものが入力され、両整流室23、24内の旋回流により両整流室23、24および第1制限通路21を通した主液室15と副液室16との間の流通抵抗を十分に高め難い場合であっても、液体Lが第1制限通路21を流通するのを規制することが可能となる。その結果、液体Lに第2制限通路22を確実に流通させることができる。
【0036】
また両整流室23、24が、整流開口部26a、26bから内部に流入された液体Lを、この両整流室23、24の内周面に沿って流動させることで旋回流に整流するので、液体Lを、簡素な構成で確実に旋回流に整流することができる。
さらに流通開口部27a、27bが、両整流室23、24内に前記軸方向に開口し、整流開口部26a、26bよりも前記径方向の内側に位置している。そのため、両整流室23、24内で旋回流に整流された液体Lが流通開口部27a、27bから流出するまで、この液体Lを、長時間にわたって両整流室23、24内に滞留させることができる。これにより、両整流室23、24および第1制限通路21を通した主液室15と副液室16との間の流通抵抗を確実に上昇させることができる。
また、前記実施形態では、第1制限通路21には、内部に可動板25が収容された収容室21cが備えられ、可動板25は、アイドル振動の入力時に第1制限通路21を通して主液室15と副液室16とを連通させ、シェイク振動の入力時に第1制限通路21を通した主液室15と副液室16との連通を遮断するように、収容室21c内に、第1取付け部材11の軸方向に変位自在に収容されていてもよい。
この場合、シェイク振動の入力時には、可動板25が、第1制限通路21を通した主液室15と副液室16との連通を遮断するように、収容室21c内で前記軸方向に変位することで、液体が第1制限通路21を流通することが可動板25により規制され、液体が第2制限通路22を流通する。一方、アイドル振動の入力時には、可動板25が、第1制限通路21を通した主液室15と副液室16とを連通させるように、収容室21c内で前記軸方向に変位し、液体に、第1制限通路21を積極的に流通させることができる。
この防振装置10によれば、入力される振動の周波数に応じて可動板25の前記軸方向への変位の態様を異ならせるという簡便な構成によって、シェイク振動の入力時に、液体が第1制限通路21を通して主液室15と副液室16との間で流通するのを規制することができる。したがって、シェイク振動のうち、振幅が小さいものが入力され、両整流室23、24内の旋回流により両整流室23、24および第1制限通路21を通した主液室15と副液室16との間の流通抵抗を十分に高め難い場合であっても、液体が第1制限通路21を流通するのを規制することが可能になり、液体に第2制限通路22を確実に流通させることができる。
また、前記実施形態では、両整流室23、24は、第1取付け部材11と同軸に配置され、両整流室23、24の壁面には、両整流室23、24内に向けて第1取付け部材11の周方向に開口する整流開口部26a、26bが設けられ、両整流室23、24は、整流開口部26a、26bから内部に流入された前記液体を、この両23、24整流室の内周面に沿って流動させることで旋回流に整流してもよい。
この場合、両整流室23、24が、整流開口部26a、26bから内部に流入された液体を、この両整流室23、24の内周面に沿って流動させることで旋回流に整流するので、液体を、簡素な構成で確実に旋回流に整流することができる。
【0037】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、可動板25、導入路28a、28bはなくてもよい。
【0038】
また前記実施形態では、整流開口部26a、26bは、各整流室23、24に1つずつ設けられているとしたが、これに限られない。例えば、整流開口部は、各整流室に複数ずつ設けられていてもよい。
【0039】
また前記実施形態では、主液室15と第1制限通路21とを連通する第1整流室23は、主液室15側から内部に流入された液体Lを旋回流に整流するとしたが、これに限られない。例えば、主液室と第1制限通路とを連通する第1整流室が、副液室側から内部に流入された液体を旋回流に整流してもよい。
【0040】
また前記実施形態では、副液室16と第1制限通路21とを連通する第2整流室24は、副液室16側から内部に流入された液体Lを旋回流に整流するとしたが、これに限られない。例えば、副液室と第1制限通路とを連通する第2整流室が、主液室側から内部に流入された液体を旋回流に整流してもよい。
【0041】
また前記実施形態では、両整流室23、24は、第1整流室23および第2整流室24を備えているとしたが、これに限られない。例えば、第1整流室のみ備えていてもよく、第2整流室のみ備えていてもよい。つまり整流室は、シェイク振動の入力時に内部に流入された液体を旋回流に整流する他の構成に適宜変更してもよい。
【0042】
また前記実施形態では、防振装置10は、支持荷重に基づいて主液室15に正圧が作用する構成としたが、これに限られず、例えば、支持荷重に基づいて主液室に負圧が作用する構成であってもよい。
さらに前記実施形態では、第1取付け部材11が振動受部に連結され、第2取付け部材12が振動発生部に連結されているが、これに限られない。例えば、第1取付け部材が振動発生部に連結され、第2取付け部材が振動受部に連結されてもよい。
さらに前記実施形態では、図1に示されるように、主液室15と副液室16とが異なる構造を有しているが、これに限られず、主液室15と副液室16とが同じ構造を有してもよい。即ち、前記実施形態において、両整流室23、24が互いに同形同大に形成されているのと同様に、主液室15と副液室16とが互いに同形同大に形成されてもよい。
【0043】
また、本発明に係る防振装置10は、車両のエンジンマウントに限定されるものではなく、エンジンマウント以外に適用することも可能である。例えば、建設機械に搭載された発電機のマウントにも適用することも可能であり、或いは、工場等に設置される機械のマウントにも適用することも可能である。
【0044】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明に係る防振装置によれば、構造の簡素化および製造の簡便化を図ることができる。
【符号の説明】
【0046】
10 防振装置
11 第1取付け部材
12 第2取付け部材
13 弾性体
14 液室
15 主液室
16 副液室
17 仕切り部材
21 第1制限通路
22 第2制限通路
23 第1整流室
24 第2整流室
25 可動板
26a、26b 整流開口部
27a、27b 流通開口部
L 液体
図1
図2
図3
図4