特許第6028102号(P6028102)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6028102電力系統制御装置、電力系統システムおよび電力系統制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6028102
(24)【登録日】2016年10月21日
(45)【発行日】2016年11月16日
(54)【発明の名称】電力系統制御装置、電力系統システムおよび電力系統制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/32 20060101AFI20161107BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20161107BHJP
   H02J 13/00 20060101ALI20161107BHJP
   H02J 3/00 20060101ALI20161107BHJP
【FI】
   H02J3/32
   H02J3/38 110
   H02J13/00 301A
   H02J13/00 311R
   H02J3/00 170
【請求項の数】14
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-538725(P2015-538725)
(86)(22)【出願日】2013年9月27日
(86)【国際出願番号】JP2013076184
(87)【国際公開番号】WO2015045084
(87)【国際公開日】20150402
【審査請求日】2015年10月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】石田 隆張
(72)【発明者】
【氏名】安藤 慎輔
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 弘起
(72)【発明者】
【氏名】小林 秀行
(72)【発明者】
【氏名】正直 和也
【審査官】 田中 寛人
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/132872(WO,A1)
【文献】 特開2012−16077(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J3/00−7/12、7/34−7/36、13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力系統の数秒から数分後の周波数予測値をもとに、電力系統と連系された蓄電池の充放電を制御して、電力系統の需給バランスを維持する電力系統制御装置において、
電力系統の周波数を算出する周波数検出装置と、
前記周波数検出装置で算出した周波数の値と発電と負荷の需給データからなる履歴データより、周波数を予測する周波数予測装置と、
周波数の下限値あるいは上限値を越えない範囲内で、前記周波数予測装置で予測した電力系統の周波数予測値よりも低い値、あるいは高い値に対する充放電量を設定し、その値に基づいて蓄電池の充放電量を決定する充放電量決定装置と、
前記充放電量決定装置の結果をもとに前記蓄電池に制御指令を送信する制御指令装置からなる電力系統制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電力系統制御装置において、
前記充放電量決定装置は、放電量計算装置と最適配分計算装置から構成される電力系統制御装置。
【請求項3】
請求項2記載の電力系統制御装置において、
前記放電量計算装置は、所定の周波数まで前記周波数予測値をシフトすることが可能か判定し、充放電量の調整値を算出し、補正後の周波数予測値を算出し、所定の周波数範囲に入っている場合には、前記充放電量の調整値を採用するものである電力系統制御装置。
【請求項4】
請求項3記載の電力系統制御装置において、
前記所定の周波数は、周波数滞在率が2σ(σ:標準偏差)に相当する周波数である電力系統制御装置。
【請求項5】
請求項2〜4の何れか一つに記載の電力系統制御装置において、
前記最適配分計算装置が、蓄電池の劣化を低減することを目的関数として複数の蓄電池の充放電量を決定する電力系統制御装置。
【請求項6】
請求項5に記載の電力系統制御装置において、
少なくとも各蓄電池の劣化度を含む蓄電池データを備える電力系統制御装置。
【請求項7】
請求項2〜4の何れか一つに記載の電力系統制御装置において、
前記最適配分計算装置が、蓄電池の電力変換ロスを最小とすることを目的関数として複数の蓄電池の充放電量を決定する電力系統制御装置。
【請求項8】
請求項7に記載の電力系統制御装置において、
少なくとも各蓄電池の交流直流変換器の効率に関するデータを備える電力系統制御装置。
【請求項9】
請求項1〜8の何れか一つに記載の電力系統制御装置と蓄電池群とを含む蓄電プロバイダと、電力市場と、課金システムと、独立系統運用者と、発電事業者と、電力事業者から構成される電力系統システム。
【請求項10】
請求項1〜8の何れか一つに記載の電力系統制御装置を有する蓄電プロバイダと、蓄電池群を有する蓄電池所有者と、電力市場と、課金システムと、独立系統運用者と、発電事業者と、電力事業者から構成される電力系統システム。
【請求項11】
電力系統の数秒から数分後の周波数予測値をもとに、電力系統と連系された蓄電池の充放電を制御して、電力系統の需給バランスを維持する電力系統制御方法であって、
電力系統の周波数を算出するステップと、
前記算出した周波数の値と発電と負荷の需給データからなる履歴データより、周波数を予測するステップと、
周波数の下限値あるいは上限値を越えない範囲内で、前記予測した電力系統の周波数予測値よりも低い値、あるいは高い値に対する蓄電池の充放電量を設定するステップと、
前記設定した充放電量に基づいて蓄電池の充放電量を決定するステップと、
前記決定した充放電量をもとに前記蓄電池に制御指令を送信するステップからなる電力系統制御方法。
【請求項12】
請求項11に記載の電力系統制御方法において、
前記充放電量を設定するステップは、所定の周波数まで前記周波数予測値をシフトすることが可能か判定し、充放電量の調整値を算出し、補正後の周波数予測値を算出し、所定の周波数範囲に入っている場合には、前記充放電量の調整値を採用するものである電力系統制御方法。
【請求項13】
請求項11または12に記載の電力系統制御方法において、
前記蓄電池の充放電量を決定するステップが、蓄電池の劣化を低減することを目的関数として複数の蓄電池の充放電量を決定する電力系統制御方法。
【請求項14】
請求項11または12に記載の電力系統制御方法において、
前記蓄電池の充放電量を決定するステップが、蓄電池の電力変換ロスを最小とすることを目的関数として複数の蓄電池の充放電量を決定する電力系統制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電池を用いて電力系統の制御を行う電力系統制御装置および電力系統制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の背景技術として、特開2012-16077号公報(特許文献1)がある。この先行技術は、電力需給の不均衡に応じて二次電池に対して適切に充放電制御ができる電力系統の周波数制御装置を提供するものである。二次電池の充電深度が50%になるように二次電池の充電深度を補正することにより、二次電池の充電深度は50%近傍に保たれ、電力需給の不均衡が発生したとき二次電池に対して充放電のいずれであっても同程度に制御を行う技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-16077号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術では、蓄電業者が行うアンシラリーサービスに適用し、周波数維持に向けた充放電制御を行う場合に、蓄電池に充放電する際の電力ロスが考慮されていないため、電力ロス分の電力を蓄電業者側で担わなければならない。そのため、電力系統から指定される周波数を守ろうとして蓄電業者が蓄電池から充放電を行うと、ロス分の蓄電業者負担が大きくなり、新規参入する蓄電業者がコスト面で不利となる。
【0005】
本発明は、蓄電池に充放電する際の電力ロスを低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の発明が解決しようとする課題で示したように、蓄電池を用いたアンシラリーサービス(電力系統の安定性を維持するための制御)では、蓄電池の充放電時に交流直流変換を行う際に起因する電力ロスが発生するために、蓄電業者が購入した充電電力量のすべてを放電することができない。そのため、電力系統を維持するための指令値に応じた電力を蓄電池から供給するために、あらかじめ電力ロス分を上乗せした電力、あるいは電池劣化を考慮した電力量を確保する必要がある。本発明では、ここで発生するコストを低減させるために、蓄電池からの充放電量を電力系統の指標である周波数の下限値を満たす量を目標値として充放電量を決定する。
【0007】
本発明の電力系統制御装置の代表的な一例を挙げれば、電力系統の数秒から数分後の周波数予測値をもとに、電力系統と連系された蓄電池の充放電を制御して、電力系統の需給バランスを維持する電力系統制御装置において、電力系統の周波数を算出する周波数検出装置と、前記周波数検出装置で算出した周波数の値と発電と負荷の需給データからなる履歴データより、周波数を予測する周波数予測装置と、周波数の下限値あるいは上限値を越えない範囲内で、前記周波数予測装置で予測した電力系統の周波数予測値よりも低い値、あるいは高い値に対する充放電量を設定し、その値に基づいて蓄電池の充放電量を決定する充放電量決定装置と、前記充放電量決定装置の結果をもとに前記蓄電池に制御指令を送信する制御指令装置からなるものである。
【0008】
本発明の電力系統制御装置において、前記充放電量決定装置が、蓄電池の電力変換ロスを最小とすることを目的関数として複数の蓄電池の充放電量を決定するものでよい。
【0009】
また、本発明の電力系統制御装置において、前記充放電量決定装置が、蓄電池の劣化を低減することを目的関数として複数の蓄電池の充放電量を決定するものでよい。
【0010】
本発明の電力系統制御方法の一例を挙げれば、電力系統の数秒から数分後の周波数予測値をもとに、電力系統と連系された蓄電池の充放電を制御して、電力系統の需給バランスを維持する電力系統制御方法であって、電力系統の周波数を算出するステップと、前記算出した周波数の値と発電と負荷の需給データからなる履歴データより、周波数を予測するステップと、周波数の下限値あるいは上限値を越えない範囲内で、前記予測した電力系統の周波数予測値よりも低い値、あるいは高い値に対する充放電量を設定するステップと、前記設定した充放電量に基づいて蓄電池の充放電量を決定するステップと、前記決定した充放電量をもとに前記蓄電池に制御指令を送信するステップからなるものである。
【0011】
本発明の電力系統制御方法において、前記蓄電池の充放電量を決定するステップが、蓄電池の電力変換ロスを最小とすることを目的関数として複数の蓄電池の充放電量を決定するものでよい。
【0012】
また、本発明の電力系統制御方法において、前記蓄電池の充放電量を決定するステップが、蓄電池の劣化を低減することを目的関数として複数の蓄電池の充放電量を決定するものでよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ISO(独立系統運用者)から電力量を指定して電力系統制御に必要な電力を調達する、アンシラリーサービスをはじめとした電力系統制御に必要な電力を、蓄電池をはじめとした電力蓄電デバイスを用いて制御を行う業者に対し、充放電量を電力系統の周波数に大きな変動を与えない範囲で、充放電量を低減することが可能となる。ここで充放電量が低減することは、充放電の際の全体の電力変換ロスが低減することにつながるため、蓄電業者の観点からは電力ロスとして失う電力を低減することが可能となる。
【0014】
また、本発明によれば充放電量を電力系統の周波数に大きな変動を与えない範囲で、充放電量を低減する際に、該当する蓄電池に接続されている交流直流変換器の効率曲線を充放電量決定装置にて用いることで、充放電時の電力ロスを低減することができる。また、該当する蓄電池の劣化の程度を考慮することで蓄電池の劣化を低減する充放電方法を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第一の実施例を示す構成図
図2】周波数の変動を示す一例
図3】周波数の変動と充放電電力の関係を示す一例
図4】蓄電池充放電の電力表示の一例
図5】充放電量決定装置の構成図
図6】第一の実施例中の放電量計算装置におけるフローチャートの一例
図7】第一の実施例中の最適配分計算装置におけるフローチャートの一例
図8】本発明の第二の実施例を示す構成図
図9】交流直流変換器の効率を示す一例
図10】第二の実施例中の最適配分計算装置におけるフローチャートの一例
図11】本発明の第三の実施例を示す構成図
図12】本発明の第三の実施例中のチャート図の一例
図13】本発明の第五の実施例を示す構成図
図14】本発明の第五の実施例中のチャート図の一例
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の機能を有する要素には同一の名称、符号を付して、その繰り返しの説明を省略する。
【実施例1】
【0017】
以下、本発明の第一の実施例を図を用いて説明する。図1は本発明の電力系統制御装置の代表的な構成である。101は本発明の電力系統制御装置を示し、それは周波数検出装置102、周波数予測装置103、充放電量決定装置104、制御指令装置105から構成される。該電力系統制御装置101における周波数検出装置102、周波数予測装置103の入力データは通信ネットワーク118、122、116を介して発電設備111からの発電量810データと、通信ネットワーク117、122、116を介して負荷設備112からの負荷データ808である。なお、発電量データ810のデータの例として811に示すデータテーブルがあり、そのテーブルは各時間における有効電力出力(図中「P」)、無効電力出力(図中「Q」)から少なくとも構成される。また、負荷データ808のデータの例として809に示すデータテーブルがあり、そのテーブルは各時間における有効電力出力(図中「P」)、無効電力出力(図中「Q」)から少なくとも構成される。また、充放電量決定装置104への入力データとして、データベース108に示す制御対象の蓄電池のデータベースがある。データベース中にある蓄電池のデータ109は各制御対象の蓄電池に対してそれぞれ電池容量、充電レート(充電の速度を示す)、放電レート(放電の速度を示す)、該時点における蓄電池の充電残量(SOC)、劣化度を少なくとも含んでいる。これらの蓄電池群121は蓄電池113,114、115からなり、これらは図中には省略されている直流‐交流変換器を介して信号線123を介して電力系統制御装置101から送信された制御データに基づいた充放電電力量を電力系統に送受電する。ここで送受電された電力は電力系統110に供給され、電力系統の安定化に貢献する。
【0018】
周波数検出装置102はネットワーク116を介して取得した発電量と負荷量の値から
【0019】
【数1】
【0020】
ただし、 ΔP:負荷の変動分
K:定数
Δf:周波数の変動分
を用いて算出する。
【0021】
次に周波数予測装置103について図2を用いて説明する。図2は横軸が時間、縦軸が電力系統の周波数を示している。周波数には図2に示すように上限値と下限値が存在している。また、図中201の実線は周波数の実績値、202の破線は周波数の予測値を示している。電力の発電量、負荷量を状態変数x、周波数を観測値yとすると、例としてカルマンフィルタを用いて予測を行う場合には、その定義式が式2に示すように定義され、この値を計算することで図2に示したように実線の予測周波数値を求めることができる。
【0022】
【数2】
【0023】
ただし、F、G、H:係数行列、 w:システム雑音、 v:観測雑音である。
周波数予測装置103での入力データは周波数検出装置102で算出した周波数の値と、ネットワーク116を経由して取得した履歴データである。
【0024】
次に充放電量決定装置104について図3を用いて説明する。図3のグラフ311は図2と同様のグラフであり、グラフ312は横軸が時刻、縦軸が放電量を示している。また、グラフ313は本発明の電力系統制御装置を用いて蓄電業者が電力充放電量を変更した際の周波数の仕上がり状態を示している。グラフ312中の放電量301は前記ISOから指令される充放電量、あるいは電力取引市場で約定した充放電量であるものとする。これに対し、本発明の電力系統制御装置では例示するように、グラフ312中の302の放電量、すなわち電力量301と比較して少ない電力量を、後述する方式により電力系統に充放電する。この結果、周波数の実績値はグラフ313中にある304となり、周波数の予想値である303と比較して、周波数の下限に近付かない範囲で周波数が低下する形となる。
【0025】
このように本例での放電量を低減させる理由を、図4を用いて説明する。図4は横軸が時間、縦軸が充放電量を示している。通常、電力系統と蓄電池への充放電では交流直流双方向の変換器が利用される。充放電それぞれで発生する電力ロスがそれぞれ402、404となり、蓄電事業者はこの電力ロス分を負担して充放電(401、403)を行って電力系統の制御に参加するため、これらの電力ロスの低減が課題となる。そのため、充放電量に比例するこの値を低減するために、全体の充放電量を少なくするのである。
【0026】
このように蓄電池全体の充放電量を低減させる充放電量決定装置104について図5を用いて説明する。充放電量決定装置104は放電量計算装置501、最適配分計算装置502、電池ID,蓄電池の劣化度、出力変化速度、充電残量(SOC)が少なくとも504のテーブルに含まれる蓄電池データ503から構成される。
【0027】
次に放電量計算501の具体的処理を図6を用いて説明する。処理601にて周波数予測装置103から周波数の予測結果(ISOからの指令、電力市場との約定結果が織り込み済み)の時系列データを取得する。その後処理603にて周波数滞在率が2σ(σ:標準偏差)に相当する周波数まで前記周波数予測結果をシフトすることが可能かどうかを判定する。なお、ここでの2σの値は電力系統の特性に応じて変更してもよい。ここでの判定がYESである場合は処理604にて充放電量の調整値ΔP´を算出する。これは滞在率が2σに相当する周波数と、予測周波数の差分であるΔf´と系統定数から前記した(式1)を用いることで求めることが可能である。次に処理605にて補正後の周波数予測値を算出する。ここで算出した補正後の周波数予測値が前記した周波数滞在率2σに相当する周波数の範囲に入っているかどうかを再度処理606にてチェックし、周波数滞在率2σに相当する周波数の範囲に入っている場合には処理607にてΔP´を採用し、処理608にて次の時間断面の計算に移行する。処理606にて周波数滞在率2σに相当する周波数の範囲に入ってない場合には、本来の制御値であったISOからの指令、あるいは電力市場との約定量で充放電を実施する(処理609)。処理603にて周波数滞在率2σに相当する周波数まで、現在の周波数をシフトすることが可能でない場合は処理609にて本来の制御値であったISOからの指令、あるいは電力市場との約定量で充放電を実施する(処理609)。
【0028】
次に、図5中の最適配分計算装置502の内容について、図7を用いて説明する。最適配分計算装置502は、放電量計算装置501で決定した全体の電力量を該当する複数の蓄電池に分配する機能である。本機能は処理701にて、充放電レートのデータ、充放電残存量(SOC)をはじめとした分配計算に必要なデータを取得する。その後、処理702にて蓄電池の劣化データを読み込む。ここでの蓄電池の劣化データは、図1に省略している蓄電池のBMU(バッテリーマネージメントユニット)が出力する値を読み込むのでもよいし、簡易的に充電時の電圧値をもとに算出した値を読み込むのでもよい。次に、処理703にて制御対象となる複数の蓄電池の中から充放電制御に利用可能である蓄電池を検出する。次に、処理704にて処理703にて求めた利用可能な電池の組合せと、各電池からの充放電量を求める。ここでの目的関数は、蓄電池の寿命を延ばす観点から、各蓄電池の劣化の程度を示す指標dkの和が最小となることとし、制約条件として、各蓄電池のSOCの運用上下限、各蓄電池の充放電変化速度Crateを制約条件とする。なお、各蓄電池の劣化の程度を示すdkは単に前記した蓄電池の劣化データでもよいし、蓄電池の劣化データに充放電電力量の絶対値を乗じたものでもよいし、蓄電池を充放電する際の発熱量と、蓄電池の充放電電力を乗じたものでもよい。
【0029】
充放電量決定装置104での計算結果を制御指令装置105に送信する。制御指令装置105では制御対象となる各蓄電池に対する制御指令値、たとえば時刻と電流・電圧の組合せからなるデータ、あるいは蓄電池側の前記BMUにて数値変換するもとのデータとなる、周波数上げ指令・下げ指令(パルス)からなるデータが考えられる。ここでの制御指令装置105からの制御指令は通信線123を介して各蓄電池に送られ、各BMUにて送信されたデータを必要なデータ形式に変換し、電力制御を行い、電力線119を介して電力系統110の安定制御に貢献する。
【0030】
本発明の第一の実施例では、蓄電池事業者が参加するアンシラリーサービスを実施するための電力系統制御装置に、周波数検出装置、周波数予測装置、充放電量決定装置、制御指令装置を設け、系統周波数を検知して、蓄電池の劣化を低減しつつ系統に擾乱が発生しない範囲で、蓄電池事業者が電力系統への充放電量を変更することが可能となるので、蓄電業者の電力ロスの負担が減少するとともに、蓄電池の劣化も低減することが可能となる。
【実施例2】
【0031】
本発明の第二の実施例を図8に示す。本発明の第二の実施例は第一の実施例中で、充放電量決定装置中の最適配分計算の入力データとして蓄電池の劣化に関するデータを利用していたのに対して、本実施例では図8中で省略している蓄電池113、114、115の交流直流変換器の効率に関するデータを用いて、各蓄電池に対する最適配分計算を行い、蓄電池の充放電時の電力ロスを低減する実施例である。図8はデータベース108中のデータテーブル122が図1と比較して変更されている点が異なっている。テーブル122には各蓄電池に付随している直流交流変換器の効率曲線がデータ項目として存在する。効率曲線の説明図を図9に示す。蓄電池群121は通信線123からの制御信号を授受する通信インターフェース901を介して通信ネットワークと接続されている。各蓄電池の交流直流変換器の効率曲線を903から905に示す。903から905の効率曲線のグラフは横軸が有効電力で、縦軸が効率を示している。効率曲線は各変換器において特性が異なるため、効率が最も良くなるピークが出る際の有効電力の値が異なっていて、さらに、有効電力が最大出力となった場合に、発生する熱で効率が下がり、その下がり方も各変換器で異なることが多い。本実施例では蓄電池から充放電を行う際に、この効率が制御対象の蓄電池全体で最も良くなるように各蓄電池の充放電量を決定する。
【0032】
本実施例での図5中の最適配分計算装置502の内容について図10を用いて説明する。最適配分計算装置502は放電量計算装置501で決定した全体の電力量を該当する複数の蓄電池に分配する機能である。本機能は処理711にて、充放電レートのデータ、充放電残存量(SOC)をはじめとした分配計算に必要なデータを取得する。その後、処理712にて各蓄電池の変換器効率曲線データデータを読み込む。ここでの蓄電池の劣化データはあらかじめ変換器に一意の効率曲線データとなる。次に、処理713にて制御対象となる複数の蓄電池の中から充放電制御に利用可能である蓄電池を検出する。次に、処理714にて処理713にて求めた利用可能な電池の組合せと、各電池からの充放電量を求める。ここでの目的関数は対象とする蓄電池全体で効率をもっともよくするという観点から、各蓄電池における変換器の変換効率を示す指標ekの和が最大となることとし、制約条件として、各蓄電池のSOCの運用上下限、各蓄電池の充放電変化速度Crateを制約条件とする。その他の処理は第一の実施例と同様である。
【0033】
本発明の第二の実施例では、蓄電事業者が参加するアンシラリーサービスを実施するための電力系統制御装置に、周波数検出装置、周波数予測装置、充放電量決定装置、制御指令装置を設け、系統周波数を検知して、蓄電池の変換効率を最大化しつつ系統に擾乱が発生しない範囲で、蓄電池事業者が電力系統への充放電量を変更することが可能となるので、蓄電業者の電力調達の際と、充放電の際の電力ロスの負担が減少することが可能となる。
【実施例3】
【0034】
本発明の第三の実施例を図11に示す。第三の実施例は第一の実施例にて説明した本発明の電力系統制御装置を用いた電力系統システムの一例である。この電力系統システムは電力市場803、課金システム814、ISO804、電力系統801、通信網802、蓄電プロバイダ805、配電電力会社806、発電業者807から構成される。蓄電プロバイダ805中に、蓄電池群121と第一の実施例に示した電力系統制御装置が含まれている。電力市場803、あるいはISO804は図中省略している入札システムの結果をもとに発電業者807、蓄電プロバイダ805に電力の送受電指令(時間、量)を行う。これらから指令される信号は少なくとも指令先の蓄電池、あるいは発電機の番号、発電量・充放電量、発電・充放電を行う時間を含む。また、前記データは一定周期で更新がかかるものとする。ISO804から蓄電プロバイダ805、発電業者807への指令データは図11中の809、811に示すテーブルと同様のデータ形式でネットワーク802を介して送受信されるか、あるいは出力、充放電の現状値からの上げ、下げを指令するパルス信号とする。言うまでもなく、その他のデータフォーマットでも構わない。
【0035】
本発明の第三の実施例の処理を簡略化して示したチャート図を図12に示す。まず処理851,852にて発電業者807、蓄電プロバイダ805は電力市場803に対して入札を行う。入札終了後、電力市場は価格決め、契約の約定を処理853にて行い、その結果をISO804に通知する(処理854)。当日の制御になると処理855,856にてIOS804は発電業者と蓄電プロバイダに制御指令を発行する。蓄電プロバイダは処理857,858で電力需給に関するデータを取得し、第一の実施例にて説明した処理を859にて実施し、その実際の充放電量を860にてISOに通知する。一定期間経過後に課金決済処理を行うためにISO804は課金決済処理814に処理861にて決済データを送信する。課金決済処理814は862にて過不足分をチェックし、その過不足分に応じて該蓄電プロバイダ805向けの電力価格を変動させる。処理862にて蓄電プロバイダ805向けの価格を変動させることにより、指令通りに充放電を行うインセンティブをつけることで、約定どおりの電力の充放電を行うようにISOが仕向ける。
【0036】
本発明の第三の実施例では電力系統制御装置を有する蓄電プロバイダと、ISO、電力市場、発電業者、配電業者、課金機能からなる構成のシステムに適用し、電力系統制御装置において、周波数検出装置、周波数予測装置、充放電量決定装置、制御指令装置を設け、系統周波数を検知して、蓄電池の劣化を低減しつつ系統に擾乱が発生しない範囲で、蓄電池事業者が電力系統への充放電量を変更することが可能となるので、蓄電プロバイダの電力調達の際と、充放電の際の電力ロスの負担が減少することが可能となる。また、蓄電プロバイダの約定結果と充放電量の差分をもとにインセンティブを与えることで、システム全体として安定した供給力の電力系統の運用をISOにて行うことが可能となる。
【実施例4】
【0037】
本発明の第四の実施例は図11に示した第三の実施例の電力系統制御装置において第二の実施例を用いた構成である。この実施例は第三の実施例で蓄電池の劣化を低減する目的関数としていた部分が変換器の効率を最大にする点が異なる点である。該当部分の詳細は第二の実施例中に記述した内容と同一である。
【0038】
本発明の第四の実施例では電力系統制御装置を有する蓄電プロバイダと、ISO、電力市場、発電業者、配電業者、課金機能からなる構成のシステムに適用し、電力系統制御装置において、周波数検出装置、周波数予測装置、充放電量決定装置、制御指令装置を設け、系統周波数を検知して、蓄電池の変換効率を最大化しつつ系統に擾乱が発生しない範囲で、蓄電池事業者が電力系統への充放電量を変更することが可能となるので、蓄電プロバイダの電力調達の際と、充放電の際の電力ロスの負担が減少することが可能となる。また、蓄電プロバイダの約定結果と充放電量の差分をもとにインセンティブを与えることで、システム全体として安定した供給力の電力系統の運用をISOにて行うことが可能となる。
【実施例5】
【0039】
本発明の第五の実施例を図13に示す。第5の実施例は第三の実施例と比較して、蓄電プロバイダ中の蓄電池がサードパーティの蓄電池所有者になった場合である。この場合は蓄電プロバイダ805と蓄電池所有者812のとの間にネットワーク831によりデータの授受が行われることと、蓄電プロバイダ805が蓄電池所有者812に対し利用時にデータを適宜問い合わせに行く点が異なっている。第3の実施例との大きな差異を図14のチャート図を用いて説明する。図14のチャート図は図12のチャート図と比較して、蓄電池所有者815が増加している点と、それに伴い処理871から877が増加している点である。電力市場に入札する場合には第三の実施例においては蓄電池群121と電力系統制御装置101が同一の機能中に入っていたものの、本実施例では上記2機能が分離されたために、入札時(要求信号871、回答信号872)、蓄電池所有者からの通信結果を持って、利用可能な蓄電池の同定処理(873)、制御実施時(要求信号874、制御実施済み信号875)の信号、課金時の信号(通知信号876、確認済み信号877)が増加する。それ以外は第三の実施例と同様である。
【0040】
本発明の第五の実施例では電力系統制御装置を有する蓄電プロバイダと、蓄電池所有者、ISO、電力市場、発電業者、配電業者、課金機能からなる構成のシステムに適用し、電力系統制御装置において、周波数検出装置、周波数予測装置、充放電量決定装置、制御指令装置を設け、系統周波数を検知して、蓄電池の劣化を低減しつつ系統に擾乱が発生しない範囲で、蓄電池事業者が電力系統への充放電量を変更することが可能となるので、蓄電プロバイダの電力調達の際と、充放電の際の電力ロスの負担が減少することが可能となる。また、蓄電プロバイダの約定結果と充放電量の差分をもとにインセンティブを与えることで、システム全体として安定した供給力の電力系統の運用をISOにて行うことが可能となる。
【実施例6】
【0041】
本発明の第六の実施例は第四の実施例と比較して、蓄電プロバイダ中の蓄電池がサードパーティの蓄電池所有者になった場合である。この場合は蓄電プロバイダ805と蓄電池所有者812のとの間にネットワーク831によりデータの授受が行われることと、蓄電プロバイダ805が蓄電池所有者812に対し利用時にデータを適宜問い合わせに行く点が異なっている。第四の実施例との大きな差異を図14のチャート図を用いて説明する。図14のチャート図は図12のチャート図と比較して、蓄電池所有者815が増加している点と、それに伴い処理871から877が増加している点である。電力市場に入札する場合には第三の実施例においては蓄電池群121と電力系統制御装置101が同一の機能中に入っていたものの、本実施例では上記2機能が分離されたために、入札時(要求信号871、回答信号872)、蓄電池所有者からの通信結果を持って、利用可能な蓄電池の同定処理(873)、制御実施時(要求信号874、制御実施済み信号875)の信号、課金時の信号(通知信号876、確認済み信号877)が増加する。それ以外は第三の実施例と同様である。
【0042】
本発明の第六の実施例では電力系統制御装置を有する蓄電プロバイダと、蓄電池所有者、ISO、電力市場、発電業者、配電業者、課金機能からなる構成のシステムに適用し、電力系統制御装置において、周波数検出装置、周波数予測装置、充放電量決定装置、制御指令装置を設け、系統周波数を検知して、蓄電池の変換効率を最大化しつつ系統に擾乱が発生しない範囲で、蓄電池事業者が電力系統への充放電量を変更することが可能となるので、蓄電プロバイダの電力調達の際と、充放電の際の電力ロスの負担が減少することが可能となる。また、蓄電プロバイダの約定結果と充放電量の差分をもとにインセンティブを与えることで、システム全体として安定した供給力の電力系統の運用をISOにて行うことが可能となる。
【符号の説明】
【0043】
101 電力系統制御装置
102 周波数検出装置
103 周波数予測装置
104 充放電量決定装置
105 制御指令装置
108 データベース
110 電力系統
111 発電設備
112 負荷設備
113〜115 蓄電池
119 電力線
201 周波数実績値
202 周波数予測値
501 放電量計算装置
502 最適配分計算装置
503 蓄電池データベース
801 電力系統
802 通信線
803 電力市場
804 ISO
805 蓄電プロバイダ
806 配電電力会社
807 発電業者
808 負荷データベース
810 発電量データベース
812 蓄電池所有者
814 課金システム
903〜905 変換器効率曲線
図1
図2
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図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14