特許第6028148号(P6028148)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6028148
(24)【登録日】2016年10月28日
(45)【発行日】2016年11月16日
(54)【発明の名称】花の香りと色の抽出製造法
(51)【国際特許分類】
   C11B 9/02 20060101AFI20161107BHJP
   C09B 61/00 20060101ALI20161107BHJP
   C09B 67/54 20060101ALI20161107BHJP
   A23L 27/10 20160101ALN20161107BHJP
【FI】
   C11B9/02
   C09B61/00 C
   C09B61/00 Z
   C09B67/54 Z
   !A23L27/10 C
【請求項の数】1
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2011-225480(P2011-225480)
(22)【出願日】2011年10月13日
(65)【公開番号】特開2013-87121(P2013-87121A)
(43)【公開日】2013年5月13日
【審査請求日】2014年10月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】309015019
【氏名又は名称】地方独立行政法人青森県産業技術センター
(73)【特許権者】
【識別番号】507080363
【氏名又は名称】大湊興業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山口 信哉
(72)【発明者】
【氏名】櫛引 正剛
(72)【発明者】
【氏名】内沢 秀光
(72)【発明者】
【氏名】福士 充
【審査官】 小久保 敦規
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−006514(JP,A)
【文献】 特開平06−181736(JP,A)
【文献】 特開2006−307102(JP,A)
【文献】 特開2007−238907(JP,A)
【文献】 特開昭50−140660(JP,A)
【文献】 特公昭14−001219(JP,B1)
【文献】 特開平10−201446(JP,A)
【文献】 特開2012−095623(JP,A)
【文献】 特開2012−157292(JP,A)
【文献】 特開2014−088462(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11B 9/02
C09B 61/00
C09B 67/54
A23L 1/221
A23L 1/237
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程を特徴とする花の香りと色素を同時に抽出製造する方法。原料となる香りと色素を有する花弁を、10(w/v)%以上の食塩水に一晩以上浸漬し、食塩水に香りと色素を含有させる。その後、食塩水から花弁を取り出し、次に、この1回目の分離した花弁を原料として、新たな10(w/v)%以上の食塩水を用いて同様の操作を繰り返し行い、繰り返し行った回数分、食塩水に香りと色素を含有させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、花の香りや色を有する水溶液及びその抽出、製造法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
花の香りは芳しく、リラックス感や高揚感を与えるなどの効果があるため、花の香りの香料は化粧品や食品、日用品などで多用されている。自然界で花に含まれている香りは微量なこともあり、花の天然香料の価格は非常に高価である。そのため、主に合成品が花の香りの香料として利用されている。
【0003】
また、花の色素は鮮やかなものが多く、添加することにより視覚的価値が向上することもあり、重宝されているが、天然の、特に花の色素は高価格なため利用は限定的である。花の色素の種類によっては、生理機能を有するものもあり、薬的使用が行われているのもある。
【0004】
合成香料は、安全性やアレルギーの問題等があり、天然の香料の要望は高い。花から香りを製造する方法として、ラベンダーなどは水蒸気蒸留で行われるが(特許文献1)、バラなどの香りを製造するには、油脂に吸着させた後、有機溶剤で抽出する方法や最初から有機溶剤で抽出する方法が行われている。また、桜の花弁から香りを製造するには、塩で煮込む方法が行われている(特許文献2)。
【0005】
色素に関しても、合成品は安全性に対して懸念があり、天然の色素が求められている。花からの色素の製造に関して、現状は、有機溶剤で抽出する方法(特許文献3、特許文献4)が多いが、沸騰水にて抽出製造する方法(特許文献5)や、食塩に浸漬する方法(特許文献6)などがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−192568号 公報
【特許文献2】特開2005−6514号 公報
【特許文献3】特開2008−538697号 公報
【特許文献4】特開2009−46438号 公報
【特許文献5】特開2002−69862号 公報
【特許文献6】特開2007−145945号 公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
花の香りを水蒸気蒸留で得る方法は、専用の設備を必要とし、蒸留のための熱源コストがかかる欠点がある。また、バラの花などは水蒸気蒸留により、香りが変化する欠点があった。花弁から有機溶剤で香りを抽出する方法は、有機溶剤の残留による健康への問題があり、また、廃液処理やコストの問題もあった。食塩に浸漬する方法は、桜茶のための桜の花や、桜餅の桜の葉で用いられるが、香りの正体であるクマリンの製造方法であり、桜限定のため他の花には利用できない。
【0008】
花からの色素の製造に関しても、有機溶剤の使用は、その残留による健康への問題があり、廃液処理やコストの問題もあった。また、沸騰水にて抽出する方法は、糖などの色素以外の不純成分が多く含まれる欠点があった。また、特許文献6の食塩に浸漬する方法は、収量が低い欠点があった。
【0009】
本発明は、花弁から簡易な方法で花の香りを有する水溶液を製造する方法と効率の高い色素の抽出製造する方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、鋭意検討した結果、上記の課題を解決する方法を見出し、本発明を完成した。
【0011】
本発明における花弁から香りを抽出製造する方法は、花弁を食塩水に浸漬し、花弁と食塩水を分離することにより、得ることである。また、食塩水の濃度は10%(W/V)以上で、一晩以上浸漬することにより花の香りを得ることである。また、このようにして得られた食塩水は花の香りを有するものである。花の香りを有する水は、花の香りを有する食塩水から食塩を除去することで得るものである。また、この食塩水から水を蒸発除去すると、花の香りを有する食塩を得るものである。
【0012】
花弁から色素を抽出製造する方法は、花弁を10%(W/V)以上の食塩水に浸漬し、花弁と分離した食塩水を凍結し、解凍することにより下方に集積した色素を集め、得ることである。
【0013】
上記のことから、花弁を10%(W/V)以上の食塩水に浸漬することにより、花の香りと色の両方を有する食塩水が得られる。
【0014】
上記の課題解決による作用は、おそらく食塩による高い浸透圧により、香りと色素が細胞外へ浸出することによるためと思われる。また、凍結することにより溶液中の色素が鮮明化する作用については不明であるが、このような現象を利用することにより、花の色素を効率良く得ることが可能になる。
【発明の効果】
【0015】
上述したように、本発明は、特別な装置を必要とせず、また、水蒸気を吹き込むための加熱が不要であり、同時に冷却水や冷却する必要もないので、経済的な方法である。また有機溶剤も使用しないので、廃有機溶剤の発生もなく、安全で健康に配慮したものである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】得られたハマナス花弁の色素の紫外可視部の吸収を示した図である。(実施例4)
図2】得られたハマナス花弁の色素の紫外可視部の吸収を示した図である。(実施例5)
図3】得られたハマナス花弁の色素の紫外可視部の吸収を示した図である。(実施例5)
図4】得られたバラ花弁の色素の紫外可視部の吸収を示した図である。(実施例6)
図5】得られたバラ花弁の色素の紫外可視部の吸収を示した図である。(実施例6)
図6】得られたアルストロメリア花弁の色素の紫外可視部の吸収を示した図である。(実施例7)
図7】得られたアルストロメリア花弁の色素の紫外可視部の吸収を示した図である。(実施例7)
図8】得られたユリ花弁の色素の紫外可視部の吸収を示した図である。(実施例8)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明についてその好ましい様態をあげ、より具体的に述べる。
【0018】
花弁の香りの抽出製造であるが、本発明の花弁は、香りを有するものであれば問わない。また、ラベンダーのように花弁が茎と分離し難いものについては、花弁と茎が一緒でもよい。この花弁を10%(W/V)以上の食塩水に浸漬する。花弁の大きさと重量の関係にもよるが、一晩以上この食塩水に浸漬すると、浸漬した食塩水に香りが抽出される。花弁と食塩水を分離し、再びこの花弁を新たな10%(W/V)以上の食塩水に一晩以上浸漬すると、浸漬した食塩水に再び香りが抽出される。この操作を食塩水に香りが抽出されなくなるまで、繰り返すことにより花弁の香りが製造される。このとき、微生物による汚染を防ぐため、冷蔵庫などの低温下で浸漬しておくことが好ましい。得られた食塩水は花の香りを有するものであり、この食塩水をロータリーエバポレーターなどで、減圧下、30〜60℃で加熱することにより、水を蒸発、冷却回収すると、花の香りを有する水を得ることができる。また、花の香りを有する食塩は、水を減圧下で蒸発させることにより得ることができる。花の香りを有する食塩水から食塩を除去するには、他に各種クロマト担体や脱塩装置を用いてもよい。
【0019】
花の色素の抽出製造法は、花弁を10%(W/V)以上の食塩水に浸漬する。花弁の大きさと重量の関係にもよるが、食塩水の量は、概ね花弁の重量の2〜10倍量が適した範囲である。花弁を数日間、この食塩水に浸漬すると、食塩水に色素が抽出される。花弁と食塩水を分離し、この花弁を新たな10%(W/V)以上の食塩水に数日間浸漬すると、食塩水に再び色素が抽出される。花弁の色素がなくなるまで、この操作を繰り返すことにより花弁の色素が製造される。このとき、低温より温度が高い状態で浸漬するほうが、色素の抽出速度は速い。抽出操作を繰り返すと、食塩水の色素は薄くなっていく。
【0020】
色素が抽出された食塩水を凍結すると色が鮮明になり、静置し解凍すると、下方に色素が集積する。この色素を得ることにより濃縮された色素を得ることが可能になる。また、抽出操作を繰り返すと、色素は目視で確認できなくなるが、同様にこの食塩水を凍結すると、溶液に含まれる色素が目視可能になる。この溶液を解凍すると、下方に色素が集積し、濃縮された色素を得ることが可能になる。食塩水から色素を分離するには、各種クロマト担体や脱塩装置を用いることが可能である。
【0021】
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明するが、これは単に例示の目的で述べるものであり、本発明はこれらの実施例に限定されるものでない。
【実施例1】
【0022】
ハマナス(バラ科バラ属、学名:Rosa rugosa)の花弁を採取し、軽く水洗し、汚れを落とした。花弁20gと、1%(W/V)、3%(W/V)、5%(W/V)、10%(W/V)、20%(W/V)の食塩水をそれぞれ200mLビーカーに入れ、浮いている花弁の上にろ紙で落とし蓋をし、4℃の冷蔵庫に一晩置いた。
【0023】
花弁と食塩水を分離し、食塩水の香りを嗅いだところ、1%(W/V)、3%(W/V)の食塩水は、香りがなかった。10%(W/V)、20%(W/V)の食塩水は強いハマナスの花の香りがし、5%(W/V)の食塩水は弱いハマナスの花の香りがした。
【0024】
上記10%(W/V)食塩水をロータリーエバポレーター(東京理化器械株式会社製、N―1型)で減圧下、35℃で水を蒸発した。蒸発し、冷却再液化した水は、食塩が除去され、ハマナスの花の香りを有していた。水が蒸発し残った固形の食塩も、ハマナスの花の香りを有していた。
【実施例2】
【0025】
ユリ(ユリ目ユリ科、学名:Lilium)のオリエンタルハイブリッドユリのソルボンヌとコンカドールの花弁50gと10%(W/V)の食塩水500mLをビーカーに入れ、浮いている花弁の上にろ紙で落とし蓋をし、4℃の冷蔵庫に一晩置いた。
【0026】
ソルボンヌとコンカドールの花弁と食塩水を分離し、食塩水の香りを嗅いだところ、ユリの花の香りを有していた。
【0027】
桜(バラ科サクラ属)のソメイヨシノの葉50gと10%(W/V)の食塩水500mLをビーカーに入れ、浮いている葉の上にろ紙で落とし蓋をし、4℃の冷蔵庫に1日間置いた。葉と食塩水を分離し、食塩水の香りを嗅いだところ、桜餅の葉の香りはなかった。
【実施例3】
【0028】
ラベンダー(シソ目シソ科)の花弁を含む茎20gを約3cmの長さに裁断し、10%(W/V)の食塩水200mLと一緒にビーカーに入れ、浮いている花弁の上にろ紙で落とし蓋をし、4℃の冷蔵庫に一晩置いた。
【0029】
花弁や茎と食塩水を分離し、食塩水の香りを嗅いだところ、ラベンダー花の香りを有していた。
【0030】
このラベンダーの花弁や茎に、新たに10%(W/V)食塩水200mLを加え、冷蔵庫に1日間置いた。花弁や茎と食塩水を分離し、食塩水の香りを嗅いだところ、ラベンダー花の香りを有していた。この操作を10回繰り返したところ、食塩水の香りは徐々に弱くなっていったが、10回目でも食塩水はラベンダーの花の香りを有していた。
【実施例4】
【0031】
ハマナス(バラ科バラ属、学名:Rosa rugosa)のピンク色の花弁を採取し、軽く水洗し、汚れを落とした。花弁200gと10%(W/V)の食塩水2Lをビーカーに入れ、浮いている花弁の上にろ紙で落とし蓋をし、4℃の冷蔵庫に一晩置いた。
【0032】
花弁と食塩水を分離し、食塩水の香りを嗅いだところ、ハマナス花の香りを有していた。このハマナスの花弁に、新たに10%(W/V)食塩水1Lを加え、冷蔵庫に2日間置いた。この食塩水は、ハマナスの花弁のピンク色が溶解していた。ハマナスの花弁と食塩水を分離し、食塩水の香りを嗅いだところ、ハマナスの花の香りを有していた。10%(W/V)食塩水を1L加える一連の操作を15回繰り返したところ、食塩水の香りは徐々に弱くなっていったが、15回目でも食塩水はハマナスの花の香りを有していた。食塩水のピンク色も徐々に薄くなっていき、8回目以降からは、目視でピンク色は確認できなかった。これらの食塩水を−20℃で凍結したところ、ピンク色はより濃く鮮明になり、目視で着色していなかった食塩水は、ピンク色に着色し、目視で確認できるようになった。凍結した食塩水を解凍したところ、下方にピンクの色素が集積し、色素の部分を回収した。
【0033】
得られたハマナスの花のピンク色の食塩水を分光光度計(日立製作所製、U―3410)で、1cmの石英セルにて波長800nm〜300nmの範囲で吸収を測定した。
【0034】
図1はその結果で、横軸は測定波長(nm)、縦軸は吸光度(Abs)を表す。486nm付近にハマナスのピンクの色素由来の吸収が見られる。
【実施例5】
【0035】
ハマナス(バラ科バラ属、学名:Rosa rugosa)のピンク色の花弁を採取し、軽く水洗し、汚れを落とした。花弁14gと10%(W/V)の食塩水140mLをビーカーに入れ、浮いている花弁の上にろ紙で落とし蓋をし、室温と4℃の冷蔵庫にそれぞれ置いた。
【0036】
その結果、2日後、室温に置いた食塩水は、ピンク色に着色しており、ハマナスの色素が抽出された。冷蔵庫に置いた食塩水は着色していなかった。3日後、冷蔵庫に置いた食塩水は、ピンク色に着色しており、ハマナスの色が抽出された。花弁と食塩水を分離し、食塩水を−20℃で凍結したところ、ピンク色がより鮮明になった。これらの食塩水を解凍したところ、下方にピンク色の色素が集積し、色素の部分を回収した。得られたピンク色の食塩水を分光光度計(日立製作所製、U―3410)で、1cmの石英セルにて波長800nm〜300nmの範囲で吸収を測定した。
【0037】
図2は室温、図3は4℃で抽出された食塩水の結果で、横軸は測定波長(nm)、縦軸は吸光度(Abs)を表す。両者とも486nm付近にハマナスのピンクの色素由来の吸収が見られる。また、486nmの吸光度は、室温で抽出された食塩水は0.131、4℃で抽出された食塩水は0.08であり、室温で抽出した食塩水のほうが、ピンク色は濃かった。
【実施例6】
【0038】
バラ(バラ科バラ属)のローテローザの赤い花弁18gと10%(W/V)の食塩水180mLをビーカーに入れ、浮いている花弁の上にろ紙で落とし蓋をし、4℃の冷蔵庫に置いた。
【0039】
2日後、食塩水は赤く着色しており、ローテローザの色素が抽出された。花弁と食塩水を分離し、食塩水を−20℃で凍結したところ、赤い色がより鮮明になった。これらの食塩水を解凍したところ、下方に赤い色素が集積し、色素の部分を回収した。得られた赤い色の食塩水を分光光度計(日立製作所製、U―3410)で、1cmの石英セルにて波長800nm〜300nmの範囲で吸収を測定した。
【0040】
図4はその結果で、横軸は測定波長(nm)、縦軸は吸光度(Abs)を表す。495nm付近にローテローザの赤い色素由来の吸収が見られる。
【0041】
再びローテローザの花弁と食塩水を分離し、花弁に新たに10%(W/V)の食塩水140mLを入れ、浮いている花弁の上にろ紙で落とし蓋をし、4℃の冷蔵庫に置いた。
【0042】
2日後、食塩水は赤く着色しており、ローテローザの色素が抽出された。花弁と食塩水を分離し、食塩水を−20℃で凍結したところ、赤い色がより鮮明になった。これらの食塩水を解凍したところ、下方に赤い色が集積し、色素の部分を回収した。得られた赤い色の食塩水を分光光度計(日立製作所製、U―3410)で、1cmの石英セルにて波長800nm〜300nmの範囲で吸収を測定した。
【0043】
図5にその結果で、横軸は測定波長(nm)、縦軸は吸光度(Abs)を表す。吸収波長が初回に比べて510nm付近にシフトしたが、ローテローザの赤い色素由来の吸収が見られる。
【実施例7】
【0044】
花アルストロメリア(アルストロメリア属、学名:Alstromeria L.)の花弁がピンク色のレベッカと花弁が赤いエリサの花弁それぞれ20gと10%(W/V)の食塩水200mLをビーカーに入れ、浮いている花弁の上にろ紙で落とし蓋をし、4℃の冷蔵庫に置いた。
【0045】
7日後、食塩水はピンク色と赤い色に着色しており、レベッカとエリサの花弁の色素が食塩水に抽出されていることが確認された。
【0046】
レベッカとエリサの花弁と食塩水を分離し、新たに10%(W/V)の食塩水をそれぞれ200mL入れ、浮いている花弁の上にろ紙で落とし、4℃の冷蔵庫に置いた。
【0047】
2日後、両者の食塩水の着色は非常に薄かった。これらの花弁と食塩水を分離し、食塩水を−20℃で凍結したところ、ピンク色と赤い色は鮮明になり、目視で再確認できた。凍結した食塩水を解凍したところ、下方に色素が集積し、色素の部分を回収した。得られたピンク色と赤い色の食塩水を分光光度計(日立製作所製、U―3410)で、1cmの石英セルにて波長800nm〜300nmの範囲で吸収を測定した。
【0048】
図6はレベッカ、図7はエリサの色素を抽出した食塩水の結果で、横軸は測定波長(nm)、縦軸は吸光度(Abs)を表す。図6で546nm付近にレベッカのピンクの色素由来の吸収が見られ、図7で556nmと480nm付近にエリサの赤い色素由来の吸収が見られる。
【実施例8】
【0049】
ユリ(ユリ目ユリ科、学名:Lilium)のオリエンタルハイブリッドユリのソルボンヌのピンク色の花弁50gと10%(W/V)の食塩水500mLをビーカーに入れ、浮いている花弁の上にろ紙で落とし蓋をし、4℃の冷蔵庫に置いた。
【0050】
9日後、食塩水はピンク色に着色しており、ソルボンヌの花弁の色素が食塩水に抽出されていることが確認された。花弁と食塩水を分離し、食塩水を−20℃で凍結したところ、ピンク色は鮮明になった。凍結した食塩水を解凍したところ、下方にピンクの色素が集積し、色素の部分を回収した。得られた食塩水のピンク色を分光光度計(日立製作所製、U―3410)で、1cmの石英セルにて波長800nm〜300nmの範囲で吸収を測定した。
【0051】
図8はソルボンヌの色素を抽出した食塩水の結果で、横軸は測定波長(nm)、縦軸は吸光度(Abs)を表す。532nm付近にソルボンヌのピンクの色素由来の吸収が見られる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、花の香りと色を簡易にかつ経済的に得ることができ、食品や化粧品、日用品などに適用できる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8