特許第6028151号(P6028151)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6028151カチオン性アスコルビン酸誘導体及び該化合物を配合した化粧料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6028151
(24)【登録日】2016年10月28日
(45)【発行日】2016年11月16日
(54)【発明の名称】カチオン性アスコルビン酸誘導体及び該化合物を配合した化粧料
(51)【国際特許分類】
   C07D 307/62 20060101AFI20161107BHJP
   A61K 8/67 20060101ALI20161107BHJP
   A61Q 5/02 20060101ALI20161107BHJP
   A61Q 5/12 20060101ALI20161107BHJP
   A61Q 19/02 20060101ALI20161107BHJP
【FI】
   C07D307/62CSP
   A61K8/67
   A61Q5/02
   A61Q5/12
   A61Q19/02
【請求項の数】6
【全頁数】31
(21)【出願番号】特願2014-262062(P2014-262062)
(22)【出願日】2014年12月25日
(65)【公開番号】特開2016-121099(P2016-121099A)
(43)【公開日】2016年7月7日
【審査請求日】2015年3月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000147213
【氏名又は名称】株式会社成和化成
(74)【代理人】
【識別番号】100094477
【弁理士】
【氏名又は名称】神野 直美
(74)【代理人】
【識別番号】100078813
【弁理士】
【氏名又は名称】上代 哲司
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 正人
(72)【発明者】
【氏名】平 徳久
(72)【発明者】
【氏名】脇田 將弘
【審査官】 早川 裕之
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−182492(JP,A)
【文献】 特開2001−270816(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第00514588(EP,A1)
【文献】 特開2004−202902(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 307/62
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の一般式(I)で表わされることを特徴とするアスコルビン酸誘導体またはその塩。
【化1】
[式中、R及びRは、それぞれ独立して、H、炭素数1〜22の炭化水素基、R−O−CH−CH(OH)−CH−で表される基、R−CH(OH)−CH−で表される基、または−CH−CH(OH)−CH−(式中Rは、4級アンモニウム基またはグアニジノ基である)で表されるカチオン性官能基を有する基を表し、R及びRは、それぞれ独立して、H、炭素数1〜22の炭化水素基を表すが、
またはRの少なくとも一方は、前記カチオン性官能基を有する基である。]
【請求項2】
が、R−で表される基であり、R、R及びRが、それぞれ独立に、炭素数1〜22のアルキル基であることを特徴とする請求項1に記載のアスコルビン酸誘導体またはその塩。
【請求項3】
が、H、炭素数1〜22の炭化水素基、式R−O−CH−CH(OH)−CH−で表される基、または式R−CH(OH)−CH−で表される基を表し、Rが、前記カチオン性官能基を有する基を表すことを特徴とする請求項2に記載のアスコルビン酸誘導体またはその塩。
【請求項4】
が、Hであることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のアスコルビン酸誘導体またはその塩。
【請求項5】
が、R−CH−CH(OH)−CH−で表される基であり、Rが、R−で表される基であり、R、R及びRが、それぞれ独立に、メチル基またはエチル基であることを特徴とする請求項4に記載のアスコルビン酸誘導体またはその塩。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載のアスコルビン酸誘導体またはその塩を配合することを特徴とする化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アスコルビン酸にカチオン性基を結合してなるカチオン性アスコルビン酸誘導体、及び前記カチオン性アスコルビン酸誘導体を配合した化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
アスコルビン酸は、安全かつ有用な抗酸化物質であり、優れた美白効果等を有する化合物として知られているが、一方、光、熱、酸化に対して不安定であり、化粧品分野での利用が妨げられていた。そこで、アスコルビン酸の前記の優れた効果を有するとともに光、熱、酸化に対する安定性を向上させた化合物として、種々のアスコルビン酸誘導体またはその塩が提案されている。そして、特許文献1や特許文献2では、前記のアスコルビン酸誘導体またはその塩の美白用の皮膚外用剤への配合が提案されており、特許文献3では化粧料への配合が提案されている。
【0003】
さらに、特許文献4では、優れたメラニン産生抑制効果を有する化合物として、種々のアスコルビン酸誘導体またはその塩が開示されており、当該化合物の、美白用の皮膚外用剤への配合、保湿剤としての配合、コラーゲン産生促進等の目的で化粧料への配合が提案されている。
【0004】
しかしながら、前記のアスコルビン酸誘導体またはその塩の多くは、経時により着色や臭いを発生する等の問題があり、その経時安定性はなお不十分であった。また、生体内での活性の持続も短期でありその改善が望まれている。
【0005】
近年、化粧料への要求は高度化しており、安定性、機能性、効果の持続性等のさらなる向上が望まれている。特に、安定性や効果の持続性に関してより優れるものが望まれている。また、従来のアスコルビン酸誘導体またはその塩は、皮膚等への吸着性が近年の要求を満足するものではなく、毛髪や皮膚への吸着性の向上が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭62−221611号公報
【特許文献2】特開2005−60239号公報
【特許文献3】特開平1−228978号公報
【特許文献4】特許第4681670号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、安定性や効果の持続性、および毛髪や皮膚への吸着性に優れる新規なアスコルビン酸誘導体またはその塩を提供することを課題とする。本発明は、また、この新規なアスコルビン酸誘導体またはその塩を配合し、安定性や効果の持続性、および毛髪や皮膚への吸着性に優れる化粧料を提供することも課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記実情に鑑みて鋭意検討した結果、アスコルビン酸に、特定構造のカチオン性基を結合させてなる新規なアスコルビン酸誘導体またはその塩が、安定性や効果の持続性、および毛髪や皮膚への吸着性に優れること、そして、これらの新規なアスコルビン酸誘導体またはその塩は、化粧料として好適に用いることができることを見出し、本発明を完成した。すなわち、本発明は、下記の構成からなる新規なアスコルビン酸誘導体またはその塩、並びに、前記アスコルビン酸誘導体またはその塩を配合する化粧料を提供し、前記の課題を解決するものである。
【0009】
本発明の第1の態様は、下記一般式(I)で表されるアスコルビン酸誘導体またはその塩である(請求項1)。
【0010】
【化1】
【0011】
式中、R及びRは、それぞれ独立して、H、炭素数1〜22の炭化水素基、R−O−CH−CH(OH)−CH−で表される基、R−CH(OH)−CH−で表される基、または4級アンモニウム基及びグアニジノ基からなる群より選ばれるカチオン性官能基を有する基(以後、「含窒素カチオン性基」と言う)を表し、R及びRは、それぞれ独立して、H、炭素数1〜22の炭化水素基を表すが、
またはRの少なくとも一方は、前記カチオン性官能基を有する基である。
【0012】
一般式(I)におけるR及び/又はRがHである場合、アスコルビン酸環の2位及び/又は3位の水酸基は、水中で解離性を有し、カウンターカチオンとの間で塩を形成することもできる。カウンターカチオンとしては、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、アンモニウムカチオン等を挙げることができる。RまたはRで表される基が4級アンモニウム基またはグアニジノ基(含窒素カチオン性官能基)を有する基である場合は、この含窒素カチオン性官能基もカウンターカチオンとして挙げることができ、解離した前記水酸基との間で、分子内塩、分子間塩を形成することもできる。
【0013】
また、RまたはRで表される基が、4級アンモニウム基またはグアニジノ基(含窒素カチオン性官能基)を有する基である場合は、解離した前記水酸基以外のカウンターアニオンとの間で塩を形成することもできる。このカウンターアニオンとしては、塩素イオン等のハロゲンイオン、硫酸イオン、水酸イオン(OH)等を挙げることができる。これらの塩も本発明の化合物に含まれる。R及び/又はRがHである場合のカウンターカチオンを変える方法や、カチオン性官能基のカウンターアニオンを変える方法としては、イオン交換樹脂を用いてカウンターイオンを変える方法や、酸性物質や塩基性物質を加える方法等を挙げることができる。
【0014】
この化合物は、安定性や効果の持続性に優れる。また、RまたはRの少なくとも一方は含窒素カチオン性基であるので、化粧料にこの化合物を含有させることにより、化粧料に優れた使用感、保湿感を与える。また、この化合物は、毛髪や皮膚への吸着性に優れるものである。毛髪や皮膚はタンパク質で構成されており、その構成成分はアニオン性の官能基を有しており、カチオン性の物質と吸着しやすい構造となっており、特に、痛んだ毛髪ではその性質は顕著となるが、これまで開発されてきたアスコルビン酸誘導体はノニオン性やアニオン性のものが多く毛髪や皮膚への吸着はほとんど考慮されていなかった。
【0015】
本発明は、前記の第1の態様のより好ましい態様として、一般式(I)中の前記カチオン性官能基を有する基が、−CH−CH(OH)−CHで表される基であり、式中Rは、4級アンモニウム基またはグアニジノ基を表すことを特徴とするアスコルビン酸誘導体またはその塩を提供する(請求項2)。このアスコルビン酸誘導体またはその塩は、親水性に優れており、化粧料に配合した際の使用感がより良いので好適に用いることが可能である。
【0016】
本発明は、前記の態様のさらに好ましい態様として、Rが、R−で表される基であり、R、R及びRが、それぞれ独立に、炭素数1〜22のアルキル基であることを特徴とするアスコルビン酸誘導体またはその塩を提供する(請求項3)。
【0017】
本発明は、前記の第1の態様のより好ましい態様として、Rが、H、炭素数1〜22の炭化水素基、式R−O−CH−CH(OH)−CH−で表される基、または式R−CH(OH)−CH−で表される基を表し、Rが、前記カチオン性官能基を有する基を表すことを特徴とするアスコルビン酸誘導体またはその塩を提供する(請求項4)。すなわち、アスコルビン酸環の2位の水酸基の水素がカチオン性官能基を有する基により置換され、3位には、カチオン性官能基を有する基が結合していない態様である。この態様のアスコルビン酸誘導体またはその塩は特に安定性にも優れている点で好ましい。
【0018】
本発明は、前記の態様のさらに好ましい態様として、Rが、Hであるアスコルビン酸誘導体またはその塩を提供する(請求項5)。すなわち、アスコルビン酸環の2位の水酸基の水素が前記カチオン性官能基を有する基により置換され、3位は水酸基であるアスコルビン酸誘導体またはその塩である。3位の水酸基は、解離性を有するので、水中で解離してカウンターカチオンとの間で塩を形成することもできる。アスコルビン酸環の2位に結合しているカチオン性官能基がこのカウンターカチオンとなる場合は、分子間塩、分子内塩を形成することもできる。この化合物は特に安定性に優れ、特に好ましい態様となる。
【0019】
本発明は、前記の態様のさらに好ましい態様として、Rが、Hであり、Rが、−CH−CH(OH)−CHで表される基であり、Rが、R−で表される基であり、R、R及びRが、それぞれ独立に、メチル基またはエチル基であることを特徴とするアスコルビン酸誘導体またはその塩を提供する(請求項6)。この化合物は、水への溶解性、安定性に優れており、化粧料中にも容易に配合でき、特に好ましい態様である。この化合物としては、例えば後述の実施例1の化合物を挙げることができる。
【0020】
この化合物の3位は水酸基であるので、水中で解離してカウンターカチオンとの間で塩を形成することもできる。アスコルビン酸環の2位に結合しているカチオン性官能基(R−で表される4級アンモニウム基を有する基)との間で分子内塩、分子間塩を形成することもできる。
【0021】
本発明の第2の態様は、前記第1の態様のアスコルビン酸誘導体またはその塩を配合する化粧料である(請求項7)。この化粧料は、第1の態様のアスコルビン酸誘導体またはその塩を配合するので、安定性や効果の持続性に優れる。そして、毛髪や皮膚への吸着性に優れた成分を含有する毛髪化粧料や皮膚化粧料が提供される。
【発明の効果】
【0022】
本発明の第1の態様のアスコルビン酸誘導体またはその塩は、安定性や効果の持続性に優れ、毛髪や皮膚への吸着性に優れるとともに、化粧料に配合することができ、好適に使用することができる。従って、この化合物を、皮膚外用剤、皮膚用化粧料やシャンプー等の毛髪化粧料に配合することにより、長期間の保存でも安定し、吸着性に優れた化粧料を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本発明の実施形態について説明するが、本発明の範囲はこの実施形態に限定されるものではない。
【0024】
一般式(I)におけるR及びR並びに前記R、R及びRは、炭素数1〜22の炭化水素基であり、また、一般式(I)におけるR及びRは、それぞれ独立して、Hまたは炭素数1〜22の炭化水素基を表すが、ここで炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基、ベンジル基等を挙げることができる。
【0025】
前記炭化水素基であるアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基、ベヘニル基等が挙げられ、アルケニル基としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、イソブテニル基、クロチル基、オクテニル基、デセニル基、ドデセニル基等が挙げられる。アルキル基、アルケニル基とも、直鎖状のもの、分岐状のもののいずれもが含まれる。
【0026】
一般式(I)のアスコルビン酸誘導体の具体例としては、下記構造式(A)〜(F)で表されるアスコルビン酸誘導体を挙げることができる。また構造式(A)〜(F)中のアルキル基の一部が、アルケニル基やベンジル基で置換されたものも、一般式(I)のアスコルビン酸誘導体の具体例として挙げることができる。
【0027】
【化2】
【0028】
構造式(A)で表されるアスコルビン酸誘導体は、2−O−[2’−ヒドロキシ−3’−(トリアルキルアンモニオ)プロピル]アスコルビン酸であり、アスコルビン酸環の3位の水酸基は解離しており、トリアルキルアンモニオ基との間で分子内塩または分子間塩を形成している。具体的には、2−O−[2’−ヒドロキシ−3’−(トリメチルアンモニオ)プロピル]アスコルビン酸、2−O−[2’−ヒドロキシ−3’−(ジメチルドデシルアンモニオ)プロピル]アスコルビン酸、2−O−[2’−ヒドロキシ−3’−(ジメチルオクタデシルアンモニオ)プロピル]アスコルビン酸、2−O−[2’−ヒドロキシ−3’−(トリエチルアンモニオ)プロピル]アスコルビン酸、2−O−[2’−ヒドロキシ−3’−(トリヘキサデシルアンモニオ)プロピル]アスコルビン酸等を挙げることができる。また、構造式(A)で表されるアスコルビン酸誘導体と類似構造である2−O−[2’−ヒドロキシ−3’−(ジエチルベンジルアンモニオ)プロピル]アスコルビン酸等も式(I)で表されるアスコルビン酸誘導体として挙げることができる。
【0029】
構造式(B)で表されるアスコルビン酸誘導体は、3−O−アルキル−2−O−[2’−ヒドロキシ−3’−(トリアルキルアンモニオ)プロピル]アスコルビン酸である。また、構造式(B)で表されるアスコルビン酸誘導体と類似構造である3−O−エチル−2−O−[2’−ヒドロキシ−3’−(ジエチルベンジルアンモニオ)プロピル]アスコルビン酸等も式(I)で表されるアスコルビン酸誘導体として挙げることができる。
【0030】
構造式(C)で表されるアスコルビン酸誘導体は、3−O−(3’−O−アルキル−2’−ヒドロキシプロピル)−2−O−[2’−ヒドロキシ−3’−(トリアルキルアンモニオ)プロピル]アスコルビン酸である。また、構造式(C)で表されるアスコルビン酸誘導体と類似構造である3−O−(2’,3’−ジヒドロキシプロピル)−2−O−[2’−ヒドロキシ−3’−(トリメチルアンモニオ)プロピル]アスコルビン酸も式(I)で表されるアスコルビン酸誘導体として挙げることができる。
【0031】
構造式(D)で表されるアスコルビン酸誘導体は、3−O−[2’−ヒドロキシ−3’−(トリアルキルアンモニオ)プロピル]アスコルビン酸であり、アスコルビン酸環の3位の水酸基は解離しており、トリアルキルアンモニオ基との間で分子内塩を形成している。また、構造式(D)で表されるアスコルビン酸誘導体と類似構造である3−O−[2’−ヒドロキシ−3’−(ジエチルベンジルアンモニオ)プロピル]アスコルビン酸も式(I)で表されるアスコルビン酸誘導体として挙げることができる。
【0032】
構造式(E)で表されるアスコルビン酸誘導体は、3−O−[2’−ヒドロキシ−3’−(トリアルキルアンモニオ)プロピル]−2−O−[2’−ヒドロキシ−3’−(トリアルキルアンモニオ)プロピル]アスコルビン酸である。また、構造式(E)で表されるアスコルビン酸誘導体と類似構造である3−O−[2’−ヒドロキシ−3’−(トリメチルアンモニオ)プロピル]−2−O−[2’−ヒドロキシ−3’−(ジメチルベンジルアンモニオ)プロピル]アスコルビン酸も式(I)で表されるアスコルビン酸誘導体として挙げることができる。
【0033】
構造式(F)で表されるアスコルビン酸誘導体は、3−O−アルキル−2−O−(2’−ヒドロキシ−3’−N−アルギニル)アスコルビン酸である。
【0034】
一般式(I)のアスコルビン酸誘導体の具体例として、さらに、2−O−([2’−ヒドロキシ−3’−(ジアルキルモノアルケニルアンモニオ)プロピル]アスコルビン酸、2−O−[2’−ヒドロキシ−3’−(モノアルキルジアルケニルアンモニオ)プロピル]アスコルビン酸、2−O−[2’−ヒドロキシ−3’−(トリアルケニルアンモニオ)プロピル]アスコルビン酸、3−O−アルケニル−2−O−[2’−ヒドロキシ−3’−(ジアルキルモノアルケニルアンモニオ)プロピル]アスコルビン酸、3−O−(3’−O−アルケニル−2’−ヒドロキシプロピル)−2−O−[2’−ヒドロキシ−3’−(トリアルキルアンモニオ)プロピル]アスコルビン酸、3−O−(2’−ヒドロキシ−3−O−プロピル)−2−O−[2’−ヒドロキシ−3’−(トリアルキルアンモニオ)プロピル]アスコルビン酸、3−O−[2’−ヒドロキシ−3’−(トリアルキルアンモニオ)プロピル]−2−O−(2’−ヒドロキシアルキル)アスコルビン酸、3−O−[2’−ヒドロキシ−3’−(ジアルキルモノアルケニルアンモニオ)プロピル]アスコルビン酸、3−O−[2’−ヒドロキシ−3’−(トリアルキルアンモニオ)プロピル]−2−O−(3’−O−アルキル−2’−ヒドロキシプロピル)アスコルビン酸、3−O−[2’−ヒドロキシ−3’−(トリアルキルアンモニオ)プロピル]−2−O−(2’,3’−ジヒドロキシプロピル)アスコルビン酸、3−O−[2’−ヒドロキシ−3’−(トリアルキルアンモニオ)プロピル]−2−O−[2’−ヒドロキシ−3’−(ジアルキルモノアルケニルアンモニオ)プロピル]アスコルビン酸、3−O−[2’−ヒドロキシ−3’−(トリアルキルアンモニオ)プロピル]−2−O−アルキルアスコルビン酸、3−O−[2’−ヒドロキシ−3’−(N−アルギニル)プロピル]−2−O−アルキルアスコルビン酸、3−O−アルケニル−2−O−[2’−ヒドロキシ−3’−(N−アルギニル)プロピル]アスコルビン酸、2−O−[2’−ヒドロキシ−3’−(N−アルギニル)プロピル]アスコルビン酸等も挙げることができる。
【0035】
前記式(I)で表されるアスコルビン酸誘導体では、アスコルビン酸の4つの水酸基の中で2位及び/または3位の水酸基のみ、そのHが、含窒素カチオン性基により置換されている。2位及び/または3位の水酸基のみに含窒素カチオン性基を有する基を導入する方法としては、例えば、アスコルビン酸の5位及び6位の水酸基を保護基で保護した後に、グリシジルトリアルキルアンモニウムハライド等のカチオン性官能基を含有するエポキシ化合物を反応させて、位置特異的にエーテル化する方法を挙げることができる。又、特許第4681670号記載の方法のように、5位及び6位の水酸基を保護基で保護せず反応し、位置特異的にエーテル化する方法も挙げることができ、エーテル化する方法は特に限定されない。
【0036】
上記の反応によりアスコルビン酸の2位及び3位の水酸基の一方のみに含窒素カチオン性基を導入して得られた化合物と、グリシジルトリアルキルアンモニウムハライド等のカチオン性官能基を含んだエポキシ化合物、アルキル化剤、グリシドール、グリシジルエーテル、エポキシアルカン等を添加して、公知の種々の反応を行うことにより、アスコルビン酸の2位及び3位が置換された一般式(I)で表されるアスコルビン酸誘導体を得ることができる。
【0037】
また、アスコルビン酸に、アルキル化剤、グリシドール、グリシジルエーテル、エポキシアルカン等を添加し、種々の公知の反応により2−O−アルキルアスコルビン酸又は3−O−アルキルアスコルビン酸を得た後、グリシジルトリアルキルアンモニウムハライド等を添加し反応させる方法によっても、一般式(I)で表されるアスコルビン酸の2位及び3位が置換されたアスコルビン酸誘導体が得られる。
【0038】
前記のカチオン性官能基を含有するエポキシ化合物としては、グリシジルトリアルキルアンモニウムハライド、グリシジルアルギニン等を挙げることができるが、これらは、エピクロロヒドリン等のエピハロヒドリンと、3級アミン、アルギニンのアミノ基とを反応することによって得ることができる。市販品を用いることもできる。
【0039】
前記のようにして製造されるアスコルビン酸誘導体またはその塩はシリカゲルを用いたカラムクロマトグラフィー、イオン交換樹脂等の樹脂を用いたカラムクロマトグラフィー、活性炭処理、抽出、蒸留、結晶化等の手段により精製することができる。
【0040】
本発明のアスコルビン酸誘導体またはその塩を化粧料に配合する場合、各種化粧料への配合量の好ましい範囲は、化粧料の用途により異なる。従って、化粧料への配合量の範囲を特に限定することはできないが、通常、0.01質量%から20質量%の範囲内から選択される。0.01質量%未満の場合は、保湿効果等、本発明のアスコルビン酸誘導体またはその塩が有する効果を十分に発揮できない場合が多い。一方、20質量%を超える場合は、配合量に見合った効果が望めない場合が多い。また剤系を壊す場合もある。
【0041】
本発明の化粧料には、この必須成分の他に、化粧料に通常用いられる成分、例えば、油性原料、界面活性剤、保湿剤、高分子化合物、酸化防止剤、紫外線吸収剤、金属イオン封鎖剤等を適宜配合することができる。また、本発明のアスコルビン酸誘導体またはその塩は、美白剤としても効果を発揮するが、本発明の化粧料には、他の美白剤も適宜配合することができる。
【0042】
上記の他に、肌荒れ防止剤、抗炎症剤等の他の薬剤も配合することができる。その他、育毛用薬剤、ニキビ用薬剤、ふけ・かゆみ用薬剤、腋臭防止用薬剤等も他の薬剤として挙げることができる。さらに、タンパク加水分解物またはそれらの誘導体、アミノ酸またはそれらの誘導体、pH調整剤、防腐剤、増粘剤、色素等を加えることもできる。
【0043】
本発明の化粧料の剤系は任意であり、溶液系、可溶化系、乳化系、ゲル系、粉末分散系、水−油二層系等いずれも可能であり、目的とする製品に応じて上記一般式(I)で表されるアスコルビン酸誘導体またはその塩と上記任意配合成分とを配合して製造することができる。
【実施例】
【0044】
次に、本発明を実施するための具体的な形態を実施例によって説明するが、本発明の範囲は以下の実施例により限定されるものではない。
【0045】
実施例1 2−O−[2’−ヒドロキシ−(3’−トリメチルアンモニオ)プロピル]アスコルビン酸の合成
アスコルビン酸(10.0g)にDMF7mL、水5mL、水酸化ナトリウム(2.50g)を加え室温で10分間撹拌した後、グリシジルトリメチルアンモニウムクロリド70%水溶液(14.9g)を加え、60℃で3時間攪拌を行った。減圧下にて濃縮を行い、得られた残渣28.1gをシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付した。その後、クロロホルム/メタノール/水=10/10/3混液にて溶出し、減圧下にて濃縮を行い、生成物(4.62g)を得た。
【0046】
得られたこの生成物を、下記MASS分析条件1により質量分析〔ESI、FID(試料直接導入)〕を行ったところ、ESIマススペクトルより下記に示すピークが得られた。さらに、H−NMR、13C−NMR測定を行った。測定結果より、生成物は、下記構造式で示される2−O−[2’−ヒドロキシ−(3’−トリメチルアンモニオ)プロピル]アスコルビン酸であることが確認された。
【0047】
【化3】
【0048】
[MASS分析条件1]
移動相 :0.1%ギ酸水溶液/メタノール=50/50
流量 :0.2mL/min
検出器電圧 :1.15kV
インターフェイス電圧 :4.5kV
ヒートブロック温度 :200℃
インターフェイス温度 :300℃
ネプライザガス :1.5L/min
ドライングガス :15L/min
イオン化モード :ESI−ポジティブまたはネガティブ
測定モード :スキャンモード
【0049】
[ESIマススペクトル測定結果:検出されたピーク]
ポジティブイオン:292([M+H]に相当)
ネガティブイオン:336([M+HCOO]に相当)
【0050】
[NMR(核磁気共鳴分光法)による分析結果]
H−NMR(400MHz,CDOD): δppm 3.22(9H,brd),3.43(1H,m),3.67(4H,m),3.87(1H,dd),3.91(1H,md),4.34(1H,m),4.410/4.415(1H,d)
13C−NMR(100MHz,CDOD): δppm 54.9,64.1,66.0,66.1,66.9,70.0,71.5,75.4,79.8,118.2,118.3,177.9,178.0,179.9,180.1
【0051】
実施例2 3−O−[2’−ヒドロキシ−(3’−トリメチルアンモニオ)プロピル]アスコルビン酸の合成
アスコルビン酸(10.0g)にDMF7mL、炭酸水素ナトリウム(0.48g)を加え室温で10分間撹拌した後、グリシジルトリメチルアンモニウムクロリド70%水溶液(13.8g)を加え、60℃で3時間攪拌を行った。減圧下にて濃縮を行い、得られた残渣29.3gをシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付した。その後、クロロホルム/メタノール/水=10/10/3混液にて溶出し、減圧下にて濃縮を行い、生成物(1.27g)を得た。
【0052】
得られたこの生成物を、上記MASS分析条件1により質量分析を行ったところ、ESIマススペクトルより下記に示すピークが得られた。さらに、H−NMR、13C−NMR測定を行った。測定結果より、生成物は、下記構造式で示される3−O−[2’−ヒドロキシ−(3’−トリメチルアンモニオ)プロピル]アスコルビン酸であることが確認された。
【0053】
【化4】
【0054】
[ESIマススペクトル測定結果:検出されたピーク]
ポジティブイオン:292([M+H]
ネガティブイオン:336([M+HCOO]
【0055】
[NMRによる分析結果]
H−NMR(400MHz,CDOD): δppm 3.22(9H,brs),3.44(1H,m),3.65(3H,m),4.16(1H,m),4.27(1H,dd),4.40(1H,m),4.56(1H,dd),4.71(1H,brs)
13C−NMR(100MHz,CDOD): δppm 54.9,64.4,66.6,66.7,69.8,71.3,71.4,73.0,76.4,131.3,131.4,161.4,178.0
【0056】
実施例3 2−O−[2’−ヒドロキシ−(3’−トリエチルアンモニオ)プロピル]アスコルビン酸の合成
エピクロロヒドリン(9.25g)にアセトニトリル7mL、トリエチルアミン11.1gを加え、80℃で3時間攪拌を行った。その後、減圧下にて濃縮を行い、粗生成物18.3gを得た。得られた粗生成物1を、DMF7mL、水5mL、アスコルビン酸(10.0g)、水酸化ナトリウム(2.27g)を加え室温で10分間撹拌したものに添加し、60℃で3時間攪拌を行った。減圧下にて濃縮を行い、得られた残渣30.5gをシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付した。その後、クロロホルム/メタノール/水=6/4/1混液にて溶出し、減圧下にて濃縮を行い、生成物(0.42g)を得た。
【0057】
得られたこの生成物を、上記MASS分析条件1により質量分析を行ったところ、ESIマススペクトルより下記に示すピークが得られた。さらに、H−NMR、13C−NMR測定を行った。測定結果より、生成物は、下記構造式で示される2−O−[2’−ヒドロキシ−(3’−トリエチルアンモニオ)プロピル]アスコルビン酸であることが確認された。
【0058】
【化5】
【0059】
[ESIマススペクトル測定結果:検出されたピーク]
ポジティブイオン:334([M+H]
ネガティブイオン:378([M+HCOO]
【0060】
[NMRによる分析結果]
H−NMR(400MHz,CDOD): δppm 1.30(9H,m),3.41(2H,m),3.49(6H,m),3.65(3H,m),3.85(1H,m),3.93(1H,m),4.30(1H,m),4.41(1H,m)
13C−NMR(100MHz,CDOD): δppm 7.8,54.8,60.5,60.8,64.1,65.5,65.7,71.56,71.60,75.9,76.0,79.9,118.3,118.5,177.9,178.1,179.8,180.1
【0061】
実施例4 2−O−[2’−ヒドロキシ−(3’−ジメチルステアリルアンモニオ)プロピル]アスコルビン酸の合成
アスコルビン酸(10.0g)にDMF7mL、水5mL、水酸化ナトリウム(2.27g)を加え室温で10分間撹拌した後、グリシジルジメチルステアリルアンモニウムクロリド40%エタノール溶液(40.9g)を加え、80℃で3時間攪拌を行った。減圧下にて濃縮を行い、得られた残渣35.3gをシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付した。その後、クロロホルム/メタノール/水=6/4/1混液にて溶出し、減圧下にて濃縮を行い、生成物(0.21g)を得た。
【0062】
得られたこの生成物を、上記MASS分析条件1の移動相を0.1%ギ酸水溶液/メタノール=10/90にした分析条件で、質量分析を行ったところ、ESIマススペクトルより下記に示すピークが得られた。さらに順相TLC分析にて、Rf値が0.23(クロロホルム/メタノール/水=6/4/1混液)となり、生成物は、下記構造式で示される2−O−[2’−ヒドロキシ−(3’−ジメチルステアリルアンモニオ)プロピル]アスコルビン酸であることが確認された。
【0063】
【化6】
【0064】
[ESIマススペクトル測定結果:検出されたピーク]
ポジティブイオン:531([M+2H]
【0065】
実施例5 2−O−[2’−ヒドロキシ−(3’−トリオクチルアンモニオ)プロピル]アスコルビン酸の合成
エピクロロヒドリン(3.70g)にアセトニトリル7mL、トリオクチルアミン14.2gを加え、80℃で3時間攪拌を行った。その後、減圧下にて濃縮を行い、粗生成物15.2gを得た。得られた粗生物を、DMF7mL、水5mL、アスコルビン酸(5.0g)、水酸化ナトリウム(1.21g)を加え室温で10分間撹拌したものに添加し、80℃で3時間攪拌を行った。減圧下にて濃縮を行い、得られた残渣28.8gをシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付した。その後、クロロホルム/メタノール/水=7/3/0.5混液にて溶出し、減圧下にて濃縮を行い、生成物(0.17g)を得た。
【0066】
得られたこの生成物を、上記MASS分析条件1により質量分析を行ったところ、ESIマススペクトルより下記に示すピークが得られた。さらに順相TLC分析にて、Rf値が0.33(クロロホルム/メタノール/水=6/4/1混液)となり、生成物は、下記構造式で示される2−O−[2’−ヒドロキシ−(3’−トリオクチルアンモニオ)プロピル]アスコルビン酸であることが確認された。
【0067】
【化7】
【0068】
[ESIマススペクトル測定結果:検出されたピーク]
ネガティブイオン:630([M+HCOO]
【0069】
実施例6 2−O−[2’−ヒドロキシ−(3’−ジメチルオクチルアンモニオ)プロピル]アスコルビン酸の合成
エピクロロヒドリン(5.81g)にアセトニトリル7mL、ジメチルオクチルアミン9.42gを加え、80℃で3時間攪拌を行った。その後、減圧下にて濃縮を行い、粗生成物15.8gを得た。得られた粗生物を、DMF10mL、水20mL、アスコルビン酸(9.77g)、水酸化ナトリウム(2.66g)を加え室温で10分間撹拌したものに添加し、80℃で3時間攪拌を行った。減圧下にて濃縮を行い、得られた残渣27.9gをシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付した。その後、クロロホルム/メタノール/水=7/3/0.5混液にて溶出し、減圧下にて濃縮を行い、生成物(0.31g)を得た。
【0070】
得られたこの生成物を、上記MASS分析条件1により質量分析を行ったところ、ESIマススペクトルより下記に示すピークが得られた。さらに順相TLC分析にて、Rf値が0.29(クロロホルム/メタノール/水=7/3/0.5混液)となり、生成物は、下記構造式で示される2−O−[2’−ヒドロキシ−(3’−ジメチルオクチルアンモニオ)プロピル]アスコルビン酸であることが確認された。
【0071】
【化8】
【0072】
[ESIマススペクトル測定結果:検出されたピーク]
ネガティブイオン:434([M+HCOO]
【0073】
実施例7 3−O−(2’,3’−ジ−ヒドロキシプロピル)−2−O−[2’−ヒドロキシ−(3’−トリメチルアンモニオクロリド)プロピル]アスコルビン酸の合成
実施例1の方法で製造された2−O−[2’−ヒドロキシ−(3’−トリメチルアンモニオ)プロピル]アスコルビン酸(5.00g)にDMF7mL、水5mL、17%塩酸水溶液(0.63g)を加えた。室温で10分間撹拌した後、グリシドール(19.5g)を加え、80℃で3時間攪拌を行った。減圧下にて濃縮を行い、得られた残渣27.9gをシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付した。その後、クロロホルム/メタノール/水=10/10/3混液にて溶出し、減圧下にて濃縮を行い、生成物(0.21g)を得た。
【0074】
得られたこの生成物を、上記MASS分析条件1により質量分析を行ったところ、ESIマススペクトルより下記に示すピークが得られた。さらに順相TLC分析にて、Rf値が0.11(クロロホルム/メタノール/水=10/10/3混液)となり、生成物は、下記構造式で示される3−O−(2’,3’−ジ−ヒドロキシプロピル)−2−O−[2’−ヒドロキシ−(3’−トリメチルアンモニオクロリド)プロピル]アスコルビン酸であることが確認された。
【0075】
【化9】
【0076】
[ESIマススペクトル測定結果:検出されたピーク]
ポジティブイオン:366([M]
【0077】
実施例8 2−O−[2’−ヒドロキシ−(3’−トリメチルアンモニオクロリド)プロピル]アスコルビン酸の合成
実施例1の方法で製造された、2−O−[2’−ヒドロキシ−(3’−トリメチルアンモニオ)プロピル]アスコルビン酸(5.00g)に水5mLを加え、17%塩酸水溶液を加えpH2に調整した。その後、減圧下にて濃縮を行い、生成物(5.05g)を得た。
【0078】
得られたこの生成物を、上記MASS分析条件1の移動相を水/メタノール=1/99にした条件で、質量分析を行ったところ、ESIマススペクトルより下記に示すピークが得られ、下記構造式で示される、2−O−[2’−ヒドロキシ−(3’−トリメチルアンモニオクロリド)プロピル]アスコルビン酸であることが確認された。
【0079】
【化10】
【0080】
[ESIマススペクトル測定結果:検出されたピーク]
ポジティブイオン:292([M+H]
ネガティブイオン:326([M+Cl]
【0081】
実施例9 2−O−[2’−ヒドロキシ−(3’−トリメチルアンモニオサルフェート)プロピル]アスコルビン酸の合成
実施例1の方法で製造された、2−O−[2’−ヒドロキシ−(3’−トリメチルアンモニオ)プロピル]アスコルビン酸(5.00g)に水5mLを加え、5%硫酸水溶液を加えpH2に調整した。その後、減圧下にて濃縮を行い、生成物(5.12g)を得た。
【0082】
得られたこの生成物を、上記MASS分析条件1の移動相を水/メタノール=1/99にした条件で、質量分析を行ったところ、ESIマススペクトルより下記に示すピークが得られ、生成物は、下記構造式で示される2−O−[2’−ヒドロキシ−(3’−トリメチルアンモニオサルフェート)プロピル]アスコルビン酸であることが確認された。
【0083】
【化11】
【0084】
[ESIマススペクトル測定結果:検出されたピーク]
ポジティブイオン:292([M+H]
ネガティブイオン:388([M+SO
【0085】
実施例10 2−O−[2’−ヒドロキシ−(3’−トリメチルアンモニオヒドロキサイド)プロピル]アスコルビン酸ナトリウムの合成
実施例1の方法で製造された、2−O−[2’−ヒドロキシ−(3’−トリメチルアンモニオ)プロピル]アスコルビン酸(5.00g)に水5mLを加え、5%水酸化ナトリウム水溶液を加えpH9に調整した。その後、減圧下にて濃縮を行い、生成物(5.10g)を得た。
【0086】
得られたこの生成物を、上記MASS分析条件1の移動相を水/メタノール=1/99にした条件で、質量分析を行ったところ、ESIマススペクトルより下記に示すピークが得られ、生成物は、下記構造式で示される2−O−[2’−ヒドロキシ−(3’−トリメチルアンモニオヒドロキサイド)プロピル]アスコルビン酸ナトリウムであることが確認された。
【0087】
【化12】
【0088】
[ESIマススペクトル測定結果:検出されたピーク]
ポジティブイオン:292,314([M+H],[M+Na]
【0089】
試験例1 [保湿試験・皮膚吸着試験]
下記表1記載の各試験試料について、保湿性及び皮膚吸着性を確認するため、以下の試験を実施した。
【0090】
(試験方法)
各試料を希水酸化ナトリウム水溶液、または希塩酸水溶液でそれぞれpH7の1%水溶液となるように調製し、左右いずれか一方の前腕部の2cm×2cmに試料1mLを塗布し、もう一方の前腕部にはコントロールとしてイオン交換水を塗布した。塗布1分後、左右共に300mLの水で洗い流し、水分を拭き取り乾燥させた。本試験を10人のパネラーで実施し、塗布直後及び水洗後について、下記の基準で評価させた。下記分類の総合点により判定を行い、その結果を表1に示す。
【0091】
塗布直後判定基準:
3: コントロール側と比較してしっとりとする。
2: コントロール側と比較してわずかにしっとりとする。
1: コントロール側と変わらないと感じる。
水洗後判定基準:
3: コントロール側と比較してしっとりとし、残存感を有する。
2: コントロール側と比較してわずかにしっとりとし、残存していると感じる。
1: コントロール側と変わらないと感じる。
【0092】
評価結果を下記のように分類した。
◎:10人の総合点が24以上
○:10人の総合点が17〜23
△:10人の総合点が16以下
【0093】
【表1】
【0094】
表1の結果は、本発明のアスコルビン酸誘導体は、アスコルビン酸や従来のアスコルビン酸誘導体と比較して優れた保湿性を有していること、優れた保湿性を有する2−グリセリルアスコルビン酸と同等の保湿性を有していること、を示している。さらに、本発明のアスコルビン酸誘導体は優れた皮膚への吸着性を有しており、水洗後も保湿感を有していることを示している。
【0095】
試験例2 [毛髪吸着試験]
アスコルビン酸誘導体の毛髪吸着性を確認するため、下記表2記載の各試験試料について以下の試験を実施した。以下の試験には、毛髪の損傷度を一定にするため、6%過酸化水素水:2%アンモニア水=1:1でブリーチ処理(脱色処理)した毛髪を用いて作製した長さ15cmで重さ2gの毛束を用いた。
【0096】
(試験方法)
容量100mlの密栓付きスクリュー管(ガラス瓶)を用い、この中に毛束1本を入れ、pH7の1%水溶液となるように調製した試験試料80mlを添加密栓し、40℃の湯浴中で30分間振とうを行った。その後、流水洗浄しヘアドライヤーで乾燥を行った。なお、試料無配合(イオン交換水)でも同様の処理を行った。その毛束を、10人のパネラーで下記項目の評価基準に従い官能評価を実施した。
【0097】
判定基準:
3: 無配合のものと比較して、しっとりと感じる。
2: 無配合のものと比較して、わずかにしっとりと感じる。
1: 無配合のものと変わらないと感じる。
【0098】
評価結果を下記のように分類した。
◎:10人の総合点が24以上
○:10人の総合点が17〜23
△:10人の総合点が16以下
【0099】
【表2】
【0100】
表2の結果は、本発明のアスコルビン酸誘導体は、アスコルビン酸や従来のアスコルビン酸誘導体と比較して、優れた毛髪への吸着性を有していることを示している。
【0101】
試験例3 [安定性試験]
表3に示す各試験試料の2%水溶液を、希水酸化ナトリウム水溶液または希塩酸水溶液でそれぞれpH7に調製し、50mLのスクリュー管に入れて密栓し、5℃及び50℃で4週間保管した。保管4週間後の臭いおよび溶液の着色について下記の基準で10人のパネラーに評価させた。その結果を表3に示す。
【0102】
臭い:
3: 5℃保管のものと比較して、変わらない
2: 5℃保管のものと比較して、少し異臭が感じられる
1: 5℃保管のものと比較して、強い異臭が感じられる
着色:
3: 5℃保管のものと比較して、ほとんど変化なし
2: 5℃保管のものと比較して、着色している
1: 5℃保管のものと比較して、強く着色している
【0103】
臭い、着色のそれぞれの評価結果を下記のように分類した。
◎:10人の総合点が24以上
○:10人の総合点が17〜23
△:10人の総合点が16以下
【0104】
【表3】
【0105】
表3の結果は、本発明のアスコルビン酸誘導体は、優れた安定性を有していることを示している。
【0106】
試験例4 [メラニン産生抑制試験]
表4に示す各試験試料について、美白効果の試験として、B16メラノーマ4A5細胞のテオフィリン誘発メラニン産生に対する効果の評価を、下記の手順により行った。
【0107】
(1)B16マウスメラノーマ4A5株を、2.0×10cells/wellの細胞密度で48穴プレートに播種した。
(2)10%ウシ胎児血清(Invitrogen社製)含有ダルベッコ変法イーグル培地(SIGMA社製、以下「D−MEM」と略記する。)にて24時間培養後、0.2mmol/Lテオフィリン、及び所定の濃度の試料を含有した10%ウシ胎児血清含有D−MEMと培地を交換した。
(3)試験試料共存下で3日間培養後、アスピレーターを用いて培地を除去し、蒸留水を添加後超音波により細胞を破砕した。
(4)その後、細胞破砕液中のタンパク量を、BCA protein assay kit(PIERCE社製)を用いて定量し、また、メラニンの生成量を、アルカリ可溶化法にて測定した。細胞破砕液に終濃度2mol/Lとなるように水酸化ナトリウムを添加して加熱溶解(60℃、15分)後、マイクロプレートリーダーを用いて450nmの吸光度を測定した。メラニン量は、合成メラニン(SIGMA)を標準品として作成した検量線から算出した。タンパク量でメラニン量を除することにより単位タンパクあたりのメラニン量を算出した。
(5)メラニン産生抑制率は、次式から算出した。
メラニン産生抑制率(%)=[1−(A−B)/(C−B)]×100
[式中、Aは、試料添加時の単位タンパクあたりのメラニン量(g/g)、Bは、normal群の単位タンパクあたりのメラニン量(g/g)、Cはcontrol群の単位タンパクあたりのメラニン量(g/g)を示す。]
【0108】
上記Normal群とは、テオフィリン(−;無添加)及び試料(−;無添加)の場合であり、Control群とはテオフィリン(+;添加)、試料(−;無添加)の場合である。
【0109】
試験試料を100μmol/Lで適用したときのメラニン産生抑制率に基づき、美白効果を下記のように表記し、その結果を表1に示す。
20%未満 :△
20%以上−40%未満 :○
40%以上 :◎
【0110】
【表4】
【0111】
実施例11 クリームの作製
表5に示す組成で、(1)〜(5)の原料を70℃に加温し溶解して油相を調製し、また(6)〜(10)の原料を70℃に加温し溶解して水相を調製した。その後、水相に油相を加え予備乳化を行い、ホモミキサーで均一に乳化した後、よく攪拌しながら室温まで冷却することにより、クリームを調製することができた。このクリームは、本発明のアスコルビン酸誘導体を含むため、皮膚吸着性、保湿効果、美白効果に優れており、皮膚用化粧料として好適に使用できると考えられる。なお、表5以後の表中、配合量は質量部を表す。
【0112】
【表5】
【0113】
実施例12 クリームの作製
表6に示す組成で、(1)〜(5)の原料を70℃に加温し溶解して油相を調製し、また(6)〜(11)の原料を70℃に加温し溶解して水相を調製した。水相部に油相部を加え予備乳化を行い、ついでホモミキサーで乳化した後、よく攪拌しながら室温まで冷却し、クリームを調製することができた。このクリームは、本発明のアスコルビン酸誘導体を含むため、皮膚吸着性、保湿効果、美白効果に優れており、皮膚用化粧料として好適に使用できると考えられる。
【0114】
【表6】
【0115】
実施例13 クリームの作製
表7に示す組成で、(1)〜(2)の原料を70℃に加温し溶解して油相を調製し、また(3)〜(9)の原料を70℃に加温し溶解して水相を調製した。水相に油相を加え予備乳化を行い、ホモミキサーで均一に乳化した後、よく攪拌しながら室温まで冷却することにより、クリームを調製することができた。このクリームは、本発明のアスコルビン酸誘導体を含むため、皮膚吸着性、保湿効果、美白効果に優れており、皮膚用化粧料として好適に使用できると考えられる。
【0116】
【表7】
【0117】
実施例14 乳液の作製
表8に示す組成で、(1)〜(9)の原料を70℃に加温し溶解して油相を調製し、また(10)〜(13)の原料を70℃に加温し溶解して水相を調製した。水相に油相を加え予備乳化を行い、ホモミキサーで均一に乳化した後、よく攪拌しながら室温まで冷却することにより、乳液を調製することができた。この乳液は、本発明のアスコルビン酸誘導体を含むため、皮膚吸着性、保湿効果、美白効果に優れており、皮膚用化粧料として好適に使用できると考えられる。
【0118】
【表8】
【0119】
実施例15 乳液の作製
表9に示す組成で、(5)〜(10)の原料を70℃に加温し溶解して油相を調製し、また(1)〜(4)及び(11)〜(12)の原料を70℃に加温し溶解して水相を調製した。水相に油相を加え予備乳化を行い、ホモミキサーで均一に乳化した後、よく攪拌しながら室温まで冷却することにより、乳液を調製することができた。この乳液は、本発明のアスコルビン酸誘導体を含むため、皮膚吸着性、保湿効果、美白効果に優れており、皮膚用化粧料として好適に使用できると考えられる。
【0120】
【表9】
【0121】
実施例16 化粧水
表10に示す組成で(1)〜(7)の原料を、よく攪拌しながら混合することにより、化粧水を調製することができた。この化粧水は、本発明のアスコルビン酸誘導体を含むため、皮膚吸着性、保湿効果、美白効果に優れており、皮膚用化粧料として好適に使用できると考えられる。なお、No.5の適量とは、pHを7.5に調整するための量である。
【0122】
【表10】
【0123】
実施例17 シャンプー
表11に示す組成で(1)〜(8)の原料を、よく攪拌しながら混合することにより、シャンプーを調製することができた。このシャンプーは、本発明のアスコルビン酸誘導体を含むため、毛髪吸着性、保湿効果に優れており、毛髪用化粧料として好適に使用できると考えられる。
【0124】
【表11】
【0125】
実施例18 ヘアコンディショナ−の作製
表12に示す組成で、(3)〜(8)の原料を70℃に加温し溶解して油相を調製し、また(1)〜(2)及び(9)〜(10)の原料を70℃に加温し溶解して水相を調製した。水相に油相を加え予備乳化を行い、ホモミキサーで均一に乳化した後、よく攪拌しながら室温まで冷却することにより、ヘアコンディショナ−を調製することができた。このヘアコンディショナ−は、本発明のアスコルビン酸誘導体を含むため、毛髪吸着性、保湿効果に優れており、毛髪用化粧料として好適に使用できると考えられる。
【0126】
【表12】