特許第6028229号(P6028229)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6028229
(24)【登録日】2016年10月28日
(45)【発行日】2016年11月16日
(54)【発明の名称】洗濯機
(51)【国際特許分類】
   D06F 33/02 20060101AFI20161107BHJP
   D06F 37/12 20060101ALI20161107BHJP
【FI】
   D06F33/02 G
   D06F33/02 Q
   D06F33/02 P
   D06F33/02 T
   D06F37/12 J
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-203335(P2013-203335)
(22)【出願日】2013年9月30日
(65)【公開番号】特開2015-66196(P2015-66196A)
(43)【公開日】2015年4月13日
【審査請求日】2015年12月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100170494
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 浩夫
(72)【発明者】
【氏名】前田 有亮
【審査官】 遠藤 邦喜
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭54−030675(JP,A)
【文献】 特開2011−200523(JP,A)
【文献】 特開昭60−063096(JP,A)
【文献】 特開2002−360973(JP,A)
【文献】 特開平04−053588(JP,A)
【文献】 特開2001−314689(JP,A)
【文献】 特公昭63−014639(JP,B1)
【文献】 特開平04−166194(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0319461(US,A1)
【文献】 特開2003−265885(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06F 33/02
D06F 37/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体内に弾性的に吊支した外槽と、前記外槽内に回転自在に支持された内槽と、前記内槽の内底部に設けられたパルセータと、前記内槽または前記パルセータを回転駆動するモータと、前記筺体上部に設けた給水弁と、前記外槽底部に連通する排水ダクトと、前記排水ダクトを介して前記外槽から排水させる排水弁と、前記排水ダクトに設けられ光線の透過度合により排水ダクト内の水の濁度を検知する濁度検知手段と、前記モータ、前記給水弁、前記排水弁などの動作を制御し、洗い、すすぎ、脱水の一連の行程を逐次制御する制御手段とを備え、前記制御手段は、すすぎ行程において、前記給水弁を所定時間動作させて内槽へ所定水位まで水を供給し内槽内の衣類から洗剤成分を溶出させた後、前記内槽を回転駆動させて、前記内槽外底面部に形成した凹凸形状部により前記内槽と前記外槽間のすすぎ液に機械力を加えて、すすぎ液と空気との境界面付近に存在する界面活性剤に泡を形成させ、前記排水ダクトを通過した前記泡を前記濁度検知手段によって検知し出力した濁度値を取得し、その濁度値変化の最大値を予め設定された所定値と比較することにより、すすぎ液中の洗剤残留度合いを判定し、その判定結果に応じて、すすぎ行程の残行程を制御する洗濯機。
【請求項2】
濁度の演算結果の判定値Sが、あらかじめ設定された濁度値D0以上であった場合には、すすぎ液中の界面活性剤濃度が高い、つまり洗剤残留量が多いと判定し、この後のすすぎ運転において、布量検知結果にて決定したすすぎ定格水位まで給水して前記パルセータによる所定時間のすすぎ撹拌を行なうことを特徴とする請求項1記載の洗濯機。
【請求項3】
濁度の演算結果の判定値Sが、あらかじめ設定された濁度値D0未満であった場合には、すすぎ液中の界面活性剤濃度が低い、つまり洗剤残留量が少ないと判定し、布量検知結果にて決定したすすぎ定格水位よりも低い水位まで給水して、前記パルセータによる所定時間のすすぎ撹拌を行なうことを特徴とする請求項1又は2記載の洗濯機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗濯液の汚れに応じて、すすぎ行程の動作制御を行う洗濯機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の洗濯機は、洗濯液の濁度を検知して洗浄状態を検知し、その結果に応じてすすぎ運転の動作制御を行う方法が提案されてきた(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、使用洗剤が液体合成洗剤であるか否かを検知し、その結果に応じてすすぎ運転の動作制御を行う方法も提案されてきた(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
図5は、特許文献1に記載された洗濯機の縦断面図、図6は、同洗濯機のすすぎ行程における出力特性線図である。
【0005】
図5図6において、すすぎ行程が開始されると、内槽3内底部のパルセータ5が回転して洗濯物が撹拌され、洗濯物に含まれた洗剤液はこの撹拌により徐々に溶け出してくるので、すすぎ液が濁ってくる。そして、検出器6の発光素子(図示せず)と受光素子(図示せず)間の光の透過度は悪くなって、すすぎ行程における検出器6の出力電圧Vは低下する。すすぎ液の濁りがひどいほど出力電圧Vは低くなるので、この出力電圧変化によってすすぎ具合を検知し、以降の行程の動作を制御する。
【0006】
図7は、特許文献2に記載された洗濯機の撹拌開始後の洗剤の違いによる出力電圧変化図である。
【0007】
図7において、洗い開始後に、濁度検出器(図示せず)の発光素子(図示せず)と受光素子(図示せず)間の光の透過度は悪くなって、出力電圧Vは撹拌時間と共に低下していく。しかし、粉末合成洗剤と液体合成洗剤とでは撹拌開始後の出力電圧Vの変化率は異なり、液体合成洗剤のときの変化率は小さく、粉末合成洗剤のときの変化率は大きい。
【0008】
従って、洗い開始後一定時間経過した時の濁度検出器の出力電圧Vが所定値以上であれば液体合成洗剤と判定し、所定値未満であれば粉末合成洗剤と判定して、以降のすすぎ行程の動作を制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特公昭63−14639号公報
【特許文献2】特開平4−166194号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、前記特許文献1の従来の構成では、濁度として検知する洗濯物から溶出した洗剤成分とは、白色の結晶でアルミノケイ酸ナトリウムと呼ばれる粉末合成洗剤の洗浄補助を目的とした成分が主であり、液体合成洗剤には一般的に含まれていない。そのため、使用洗剤が液体合成洗剤だった場合は、パルセータの撹拌動作で洗濯物に機械力を加えて洗剤成分を溶出させても、すすぎ液が白く濁ることはほとんどなく、すすぎ状態が判定可能な場合は粉末合成洗剤使用時に限られ、液体合成洗剤使用の場合は判定できないという課題があった。
【0011】
また、前記特許文献2の従来の構成では、すすぎ液中の洗剤成分そのものを検知しているわけではなく、成分の異なる種々の粉末合成洗剤、液体合成洗剤が巷に溢れている状況では、粉末合成洗剤、液体合成洗剤による出力電圧は大きくばらつくため、すすぎ状態の高精度な判定結果を得ることができないという課題があった。
【0012】
本発明は、上記従来の課題を解決するもので、内槽の回転駆動によりすすぎ液に機械力を加えることで、すすぎ液中の界面活性剤が泡を形成し、その泡を濁度検知手段によって検知することで、使用洗剤が粉末合成洗剤か液体合成洗剤かに関わらず、すすぎ状態を高精度に判定し、その結果に応じてすすぎ運転の適切な時間短縮や節水を達成しうる洗濯機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記従来の課題を解決するために、本発明の洗濯機は、筐体内に弾性的に吊支した外槽と、前記外槽内に回転自在に支持された内槽と、前記内槽の内底部に設けられたパルセータと、前記内槽または前記パルセータを回転駆動するモータと、前記筺体上部に設けた給水弁と、前記外槽底部に連通する排水ダクトと、前記排水ダクトを介して前記外槽から排水させる排水弁と、前記排水ダクトに設けられ光線の透過度合により排水ダクト内の水の濁度を検知する濁度検知手段と、前記モータ、前記給水弁、前記排水弁などの動作を制御し、洗い、すすぎ、脱水の一連の行程を逐次制御する制御手段とを備え、前記制御手段は、すすぎ行程において、前記給水弁を所定時間動作させて内槽へ所定水位まで水を供給し内槽内の衣類から洗剤成分を溶出させた後、前記内槽を回転駆動させて、前記内槽外底面部に形成した凹凸形状部により前記内槽と前記外槽間のすすぎ液に機械力を加えて、すすぎ液と空気との境界面付近に存在する界面活性剤に泡を形成させ、前記排水ダクトを通過した前記泡を前記濁度検知手段によって検知し出力した濁度値を取得し、その濁度値変化の最大値を予め設定された所定値と比較することにより、すすぎ液中の洗剤残留度合いを判定し、その判定結果に応じて、すすぎ行程の残行程を制御する構成としたものである。
【0014】
これによって、使用洗剤が粉末合成洗剤か液体合成洗剤かに関わらず、すすぎ状態を高精度に判定し、その結果に応じてすすぎ運転の適切な時間短縮や節水を達成することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、すすぎ液中の洗剤の残留度合として、すすぎ液に機械力を加えることで界面活性剤により形成された泡を濁度として検知するため、使用洗剤が粉末合成洗剤か液体合成洗剤かに関わらず、高精度なすすぎ状態の判定が出来るので、その結果に応じてすすぎ運転の適切な時間短縮や節水を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施の形態における洗濯機の縦断面図
図2】同洗濯機の洗い、すすぎ、脱水のシーケンス表を示す図
図3】同洗濯機のすすぎ(2)行程の制御フローチャートを示す図
図4】同洗濯機のすすぎ(2)行程における経過時間tと濁度値Dの変化の関係を示したグラフを示す図
図5】従来の洗濯機(特許文献1)の縦断面図
図6】同洗濯機のすすぎ行程における出力特性線図
図7】従来の洗濯機(特許文献2)の撹拌開始後の洗剤の違いによる出力電圧変化図
【発明を実施するための形態】
【0017】
第1の発明は、筐体内に弾性的に吊支した外槽と、前記外槽内に回転自在に支持された内槽と、前記内槽の内底部に設けられたパルセータと、前記内槽または前記パルセータを回転駆動するモータと、前記筺体上部に設けた給水弁と、前記外槽底部に連通する排水ダクトと、前記排水ダクトを介して前記外槽から排水させる排水弁と、前記排水ダクトに設けられ光線の透過度合により排水ダクト内の水の濁度を検知する濁度検知手段と、前記モータ、前記給水弁、前記排水弁などの動作を制御し、洗い、すすぎ、脱水の一連の行程を逐次制御する制御手段とを備え、前記制御手段は、すすぎ行程において、前記給水弁を所定時間動作させて内槽へ所定水位まで水を供給し内槽内の衣類から洗剤成分を溶出させた後、前記内槽を回転駆動させて、前記内槽外底面部に形成した凹凸形状部により前記内槽と前記外槽間のすすぎ液に機械力を加えて、すすぎ液と空気との境界面付近に存在する界面活性剤に泡を形成させ、前記排水ダクトを通過した前記泡を前記濁度検知手段によって検知し出力した濁度値を取得し、その濁度値変化の最大値を予め設定された所定値と比較することにより、すすぎ液中の洗剤残留度合いを判定し、その判定結果に応じて、すすぎ行程の残行程を制御する構成とすることにより、すすぎ液中の洗剤の残留度合として、すすぎ液に機械力を加えることで界面活性剤により形成された泡を濁度として検知するため、使用洗剤が粉末合成洗剤か液体合成洗剤かに関わらず、高精度なすすぎ状態の判定が出来るので、その結果に応じてすすぎ運転の適切な時間短縮や節水を実現することができる。
【0018】
第2の発明は、濁度の演算結果の判定値Sが、あらかじめ設定された濁度値D0以上であった場合には、すすぎ液中の界面活性剤濃度が高い、つまり洗剤残留量が多いと判定し、この後のすすぎ運転において、布量検知結果にて決定したすすぎ定格水位まで給水してパルセータ7による所定時間のすすぎ撹拌を行なうことにより、十分なすすぎ運転を達成することができる。
【0019】
第3の発明は、濁度の演算結果の判定値Sが、あらかじめ設定された濁度値D0未満であった場合には、すすぎ液中の界面活性剤濃度が低い、つまり洗剤残留量が少ないと判定し、布量検知結果にて決定したすすぎ定格水位よりも低い水位まで給水して、前記パルセータによる所定時間のすすぎ撹拌を行なうことにより、汚れが少ない場合において、節水を達成することができる。
【0020】
以下、発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。また、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0021】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態における洗濯機の縦断面図である。本実施形態における洗濯機は全自動洗濯機である。
【0022】
図1において、筺体1は、防振装置を有するサスペンション機構2により弾性的に吊り下げた外槽3をその内部に支持している。外槽3に回転自在に内包された内槽4は、側壁に脱水孔5を形成し、内周の上部には脱水振動低減用の流体バランサ6を有しており、中央内底部には洗濯物24を撹拌するための撹拌用突出部21を形成したパルセータ7を配設している。
【0023】
外槽3の外底部には、モータ10を設け、減速機構9および洗い又は脱水時に回転力の伝達を洗濯・脱水軸8に切り換えるクラッチ23、洗濯・脱水軸8を介して、内槽4とパルセータ7を駆動している。
【0024】
筺体1の上部には、開閉自在の外蓋16が設けられており、上部後方には給水ホース20を介して槽内へ給水する給水弁15が設けられている。
【0025】
また、外槽3の底部には、排水ダクト12が形成されており、排水弁13の開閉により外槽3内の水を、排水ホース22を介して外部へ排水するようになっている。
【0026】
また、排水ダクト12には、外槽3と連通する排水ダクト12内の水の濁度を検知する濁度検知手段14が設けられ、発光素子(図示せず)と受光素子(図示せず)による光の透過度合により、水の濁度を検知することができる。
【0027】
内槽4の外底面部には、凹凸形状部25が形成されており、内槽4が回転した時に、内槽4と外槽3との間の水に機械力を加えることができる。本実施形態においては、特に内槽4の回転中心と内槽の周端との中間位置よりも外側である内槽外底面外周部に凹凸形状部25が形成されている。このように、内槽外底面外周部に凹凸形状部25を設けることにより、より大きな機械力をすすぎ液に与えることができる。
凹凸形状部25の詳細な機能については後述する。
【0028】
また、制御手段11は、使用者が洗濯物投入後に入力設定手段17にて運転コースを選択して運転を開始すると、布量検知手段18にて洗濯物の量を検知して、量に応じた水位、洗剤量、仮決定したシーケンスなどを表示手段19にて表示する。そして、モータ10、給水弁15、排水弁13などの動作を制御し、洗い、すすぎ、脱水の一連の行程を逐次制御する。
【0029】
図2は、本発明の実施の形態における洗濯機の洗い、すすぎ、脱水のシーケンス表、図3は、同洗濯機のすすぎ(2)行程の制御フローチャートを示すものである。
【0030】
図2図3において、通常の運転コースの基本動作は、洗い行程、すすぎ行程、そして脱水の行程で構成されており、すすぎ行程は、すすぎ(1)の行程、すすぎ(2)の行程で構成される。
【0031】
まず、洗い行程では、使用者が外蓋16を開けて、内槽4に洗濯物を投入し、入力設定手段17にて運転コースを設定して運転を開始すると、布量検知定手段18にて投入された布量を検知(行程P1)し、制御手段11にて布量に応じた水位、洗剤量の決定および以降のシーケンスの仮決定をし、表示手段19にて表示する。
【0032】
次に、使用者が表示した洗剤を投入すると、モータ10駆動により内槽4を超低速で回転させながら、給水弁15を動作させ、パルセータ7の外周面より低い水位(1)(図では丸で1を囲む)まで給水して洗剤を拡散させる(行程P2)。その後、内槽4の回転を止め、水位(2)(図では丸で2を囲む)まで給水して(行程P3)、パルセータ7にて一次撹拌をする(行程P4)。そして、検知した布量に応じた洗いの定格水位まで給水され(行程P5)、決定された時間の洗い撹拌(行程P6)が始まり、パルセータ7が回転することで、衣類がパルセータ7の撹拌用突出部21に引っかかり、内槽4内の衣類を撹拌して、衣類同士、または内槽4の内壁やパルセータ7との接触により作用する機械力と、水流力により衣類から汚れが取り除かれる。
【0033】
次行程のすすぎ(1)行程では、まず排水弁13を開いて内槽4内の水を排水した(行程P7)後、クラッチ23を脱水側に切り換えて、モータ10の動力を、洗濯・脱水軸8の脱水軸を介し内槽4に伝達して内槽4を回転させ、衣類に遠心力を与えることにより、水分を衣類から分離する脱水(行程P8)を行う。そして、衣類の洗剤液を除去するため、滝すすぎ動作を行なう(行程P9)。
【0034】
滝すすぎとは、脱水回転のままで給水弁15を短時間動作させて衣類に水を注水した後
、次に、注水を中止してモータ10のみ通電を停止し、内槽4を惰性回転させて槽から水を抜く、次に、再度モータ10に通電して駆動させ給水弁15を短時間動作させて衣類に注水する。これを繰返して衣類から洗剤液を徐々に分離するすすぎ動作である。その後、水分を衣類から分離する高速の脱水(行程P10)を行う。
【0035】
すすぎ(2)行程、つまり最終すすぎ行程では、排水弁13を閉じたまま給水弁15を動作させて、モータ10駆動により内槽4を約35r/minの超低速で回転させながら、水位検知手段(図示せず)で検知可能な最低水位である水位(3)(図では丸で3を囲む)まで内槽4に給水し(行程P11、ステップS1)、水位(3)に達すると内槽4の回転を停止する(ステップS2)。
【0036】
内槽4に供給された水(以下、すすぎ液)は、内槽4にある洗濯物24に接触および通過して溜まっていくために、洗濯物24に界面活性剤を含む洗剤成分が残留している場合には、それら成分がすすぎ液中に溶出してくる。排水ダクト12に設けられた濁度検知手段14は、発光素子と受光素子間の光線の透過度を検知することにより、この時点でのすすぎ液の濁度値D1を取得する(行程P12、ステップS3)。
【0037】
次に、モータ10を駆動させ、内槽4を約100r/minの回転数で回転駆動させる(行程P13、ステップS4)。この時、内槽4の外底面外周部に形成されている凹凸形状部25が内槽4と外槽3の間にあるすすぎ液に機械力を加えることで、すすぎ液中の水流および水面の波打ちが発生し、すすぎ液と空気との境界面付近に存在する界面活性剤が泡を形成する。
【0038】
内槽4の回転駆動による水流で、この泡が排水ダクト12内を通過した際に、濁度検知手段14が検知して出力した出力値変化のうち、最大値を濁度値D2として取得し(行程P14、ステップS5)、回転駆動はあらかじめ設定された所定時間を経過すると停止させる(ステップS6)。
【0039】
取得した濁度値D1、D2データが制御手段11に入力され、これらデータから判定値S=D2−D1の演算を行なう(行程P15、ステップS7)ことで、すすぎ液中に形成された泡のみの濁度値を算出する。
【0040】
演算結果の判定値Sが、あらかじめ設定された濁度値D0以上であった場合(ステップS8のNO)には、すすぎ液中の界面活性剤濃度が高い、つまり洗剤残留量が多いと判定し、この後のすすぎ運転において、布量検知結果にて決定したすすぎ定格水位まで給水して(行程P16、ステップS9)、パルセータ7による所定時間のすすぎ撹拌を行なう(行程P17、ステップS11)。
【0041】
演算結果の判定値Sが、あらかじめ設定された濁度値D0未満であった場合(ステップS8のYES)には、すすぎ液中の界面活性剤濃度が低い、つまり洗剤残留量が少ないと判定し、布量検知結果にて決定したすすぎ定格水位よりも低い水位まで給水して(行程P16、ステップS10)、パルセータ7による所定時間のすすぎ撹拌を行なう(行程P17、ステップS11)。ここで、洗剤残留量が少ない時は、所定時間も短く設定することができる。そして、所定時間のすすぎ撹拌が終了すると(ステップS12)、脱水行程に移る。
【0042】
脱水行程では、すすぎ終了後、排水弁13を開いて内槽4内の水を排水ホース22より排水した(行程P18)後、クラッチ23を脱水側に切り換えて、内槽4を回転させ、衣類に遠心力を与えることにより、水分を衣類から分離する(行程P19)。
【0043】
図4は、本発明の実施の形態における洗濯機の、すすぎ(2)行程における経過時間tと濁度値Dの変化の関係を示したグラフである。
【0044】
粉末合成洗剤使用時は、すすぎ(2)行程開始直後の給水動作(行程P11、ステップS1)によって、衣類から溶出した洗剤成分のうち、アルミノケイ酸ナトリウムという白色結晶がすすぎ液を白く濁らせていくために濁度値が少しずつ上昇し、D1取得値はD1Pとなる。
【0045】
一方で、液体合成洗剤使用時は、すすぎ(2)行程開始直後の給水動作(行程P11、ステップS1)によって、衣類から溶出した洗剤成分の中に、一般的にはアルミノケイ酸ナトリウムが含まれないためにすすぎ液が白濁せず、給水開始時と濁度値がほとんど変化しないままD1取得値はD1Lとなる。
【0046】
よって、すすぎ判定時(行程P15、ステップS7)に演算に用いられる濁度値は、粉末合成洗剤使用時は(D2P−D1P)、液体合成洗剤使用時は(D2L−D1L)であり、粉末合成洗剤使用時であっても、液体合成洗剤使用時であっても、高精度にすすぎ状態を判定することができる。
【0047】
以上のように、本実施の形態においては、すすぎ行程において、給水弁15を所定時間動作させて内槽4へ所定水位まで水を供給し内槽4内の衣類から洗剤成分を溶出させた後、内槽4を回転駆動させて、内槽4外底面外周部に形成した凹凸形状部25により内槽4と外槽3間のすすぎ液に機械力を加えて、すすぎ液と空気との境界面付近に存在する界面活性剤に泡を形成させ、排水ダクト12を通過した泡を濁度検知手段14によって検知し出力した濁度値を取得し、その濁度値変化の最大値を予め設定された所定値と比較することにより、すすぎ液中の洗剤残留度合いを判定し、その判定結果に応じて、すすぎ行程の残行程を制御することにより、使用洗剤が粉末合成洗剤か液体合成洗剤かに関わらず、すすぎ状態を高精度に判定し、その結果に応じてすすぎ運転の適切な時間短縮や節水を達成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
以上のように、本発明にかかる洗濯機は、洗剤の種類によらず信頼性の高いすすぎ状態判定が可能となるので、ドラム式洗濯機など各種の洗濯機の用途にも適用できる。
【符号の説明】
【0049】
1 筺体
3 外槽
4 内槽
7 パルセータ
10 モータ(駆動手段)
11 制御手段
12 排水ダクト
13 排水弁
14 濁度検知手段
15 給水弁
25 凹凸形状部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7