特許第6028231号(P6028231)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6028231
(24)【登録日】2016年10月28日
(45)【発行日】2016年11月16日
(54)【発明の名称】組電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 2/10 20060101AFI20161107BHJP
【FI】
   H01M2/10 E
【請求項の数】7
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-33533(P2015-33533)
(22)【出願日】2015年2月24日
(65)【公開番号】特開2015-207553(P2015-207553A)
(43)【公開日】2015年11月19日
【審査請求日】2015年2月26日
(31)【優先権主張番号】特願2014-81658(P2014-81658)
(32)【優先日】2014年4月11日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100170494
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 浩夫
(72)【発明者】
【氏名】西川 幸男
(72)【発明者】
【氏名】田中 知実
(72)【発明者】
【氏名】東田 諭
(72)【発明者】
【氏名】江嶋 恒行
【審査官】 井原 純
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−010983(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/158341(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/146561(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の単電池を積層して構成された電池ブロックと、
前記複数の単電池を固定する固定部品と、を備え、
前記固定部品は、
前記複数の単電池の積層方向の両端に配置され、かつ、2種類の異なる材料で構成されており、相対的に剛性の高い材料が、前記電池ブロックと接する側である内側に配置されている一対のエンドプレートと、
前記一対のエンドプレートの端部同士を連結して前記複数の単電池を圧縮状態にする金属バンドと、を含み、
前記一対のエンドプレートの各々は外周部と中央位置とを有し、前記一対のエンドプレートは、それぞれ、前記外周部において前記複数の単電池の積層方向の両端に位置する両端単電池の一方と接し、前記中央位置において前記両端単電池の一方から離間している、
組電池。
【請求項2】
前記エンドプレートには、前記中央位置に貫通孔が設けられている、
請求項1記載の組電池。
【請求項3】
前記エンドプレートは、前記中央位置に薄肉部を有する、
請求項1記載の組電池。
【請求項4】
前記薄肉部は、前記エンドプレートの前記単電池と面する側の表面に凹みが設けられることで形成されている、
請求項3記載の組電池。
【請求項5】
前記凹みの最大深さは、0.03mm以上で、かつ、前記薄肉部以外の部分の厚さの10%以下である、
請求項4記載の組電池。
【請求項6】
前記エンドプレートにおいて、前記電池ブロックと接する部分は、前記金属バンドと隣接する、
請求項1記載の組電池。
【請求項7】
前記一対のエンドプレートにおける前記両端単電池の一方から離間している面積は、前記一対のエンドプレートが前記両端単電池と接する面積の30〜80%である、
請求項1〜6の何れか一項に記載の組電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の角型電池を積層して固定部品を介して構成する組電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の組電池としては、積層される角型電池を固定して、電池性能の低下を防止するものが知られる(例えば、特許文献1参照)。図8は、特許文献1に記載された従来の組電池を示す構成図である。
【0003】
図8において、組電池は、複数の角型電池からなる単電池21を積層して構成される電池ブロック23と、複数の単電池21を固定する固定部品24とからなる。固定部品24は、複数の単電池21の両端面に配置される一対のエンドプレート25と、エンドプレート25に端部を連結して、積層状態の単電池21を圧縮状態に固定する金属バンド26とからなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−282582号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の構成では、単電池の動作時において、単電池21の内部が化学反応により温度上昇し、単電池21が厚さ方向に膨張することがある。このとき、積層された単電池21は、圧縮状態で拘束されているため、反発による圧力がエンドプレート25に掛かり、金属バンド26に引張力が働くことになる。
【0006】
単電池の容量が小さい場合は、反発による圧力も小さいため、金属バンドの伸び量も問題ない程度である。しかし近年の単電池の高容量化に伴い、単電池の動作時において、単電池の内部が化学反応を起しやすくなる傾向にある。すると、エンドプレートや金属バンドの変形も大きくなり、組電池の外形寸法が変化するという課題を有することになる。
【0007】
本発明は、上記従来の課題を解決するもので、単電池の動作時において、組電池の外形寸法が大きくなるのを抑制する組電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の組電池は、単電池の両端に配置されるエンドプレートの構造を、エンドプレートの外周部では単電池と接し、中央部では単電池と接しない構造とする。
【0009】
本構成によって、単電池の動作時に厚さ方向に膨張が起こっても、複数の単電池からの圧力は、エンドプレートの外周部で受けることができる。また、一部の単電池の膨張量は、エンドプレートの外周部以外の肉厚の薄い部分で吸収するので、外形寸法が大きくなるのを抑制することができる。
【発明の効果】
【0010】
以上のように、本発明の組電池は、単電池の動作時において、組電池の外形寸法が大きくなるのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施の形態1に係る組電池の主要構成図
図2】本発明の実施の形態1に係るエンドプレートの外観図
図3】本発明の実施の形態1に係る単電池が膨張したときの電池ブロックの状態の概念図
図4】本発明の実施の形態1に係るエンドプレートの凹み含む部分の断面図
図5】本発明の実施の形態2に係るエンドプレートの凹み含む部分の断面図
図6】本発明の実施の形態3に係るエンドプレートの外観図
図7】本発明の実施の形態4に係るエンドプレートの外観図
図8】従来の組電池の構成図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0013】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る組電池の主要構成図である。
【0014】
図1において、電池ブロック1は、複数の角型電池である単電池2とセパレータ3とを交互に積層して構成される。
【0015】
図1の組電池では、電池ブロック1の両側を固定部品であるアルミニウム製のエンドプレート4で挟持し、鋼製の金属バンド5の穴7を通してボルト6をエンドプレート4のタップ8に固定することで、電池ブロック1を圧縮状態にしている。なお、セパレータ3は樹脂であっても良い。
【0016】
図2は、エンドプレート4の正面図であり、図2(a)は凹み9が円形形状であり、図2(b)は凹み9が矩形形状である場合を示す。図2(c)は、図2(a)及び図(b)の形状の側面の断面図である。詳細には、エンドプレート4の片面に凹み9が形成され、エンドプレート4は、凹みが形成された面で電池ブロック1を挟み込むように構成されている。
【0017】
なお、図2では、一例として凹みを示す形態であるが、凹みに限定されるものではなく、穴(貫通孔)であってもよい。例えば図2(d)のような形態である。
【0018】
図3は、単電池2が膨張したときの電池ブロック1の状態を示す概念図であり、図1のX−X線とY−Y線における断面である。高容量の単電池2の中央部は動作時に膨張し、両端のセパレータ3や単電池2の中央部は、エンドプレート4の凹み9に入り込む状態になる。これにより単電池2などの中央部の膨張がエンドプレート4に作用する圧力を軽減することができる。
【0019】
単電池2は、帯状の電極が、矩形に巻き取られた状態で封止されて構成される。電池の動作により充放電が繰り返されると、単電池2内部の電極が徐々に膨張する。電極は、上下に折り返すように巻かれていることから、電極が膨張すると単電池2を矩形状に押すことになる。従って、エンドプレート4の凹み9或いは穴の形状としては、図2(b)に示す矩形形状の方が効果は高いが、図2(a)に示すの円形形状でも、一定の効果は得られる。
【0020】
図4は、エンドプレート4の凹み9bを含む部分の断面図である。
【0021】
単電池2の膨張量は、充放電の動作状態に起因するが、最小量は0.03mmである。一方、凹み量が大きいほど、エンドプレート4に作用する圧力の軽減効果は大きくなり、凹み9を円形または矩形の貫通孔にすると、エンドプレート4の中央部では単電池2の膨張による圧力を受けないようにすることもできる。
【0022】
また、エンドプレート4への負荷のみを考えると、エンドプレート4の中央部に圧力の掛からない貫通孔は構造としては有利である。他方、孔となることで部材の剛性は小さくなり変形は大きくなる。従って、エンドプレート4の凹み量は、圧力軽減効果と剛性低下のバランスによって最適な範囲が決まる。
【0023】
エンドプレート4の剛性を低下させないために、凹みによる薄肉化は、凹み部以外の板厚の10%以下が望ましい。すなわち、凹み9bの深さは0.03mm以上、または、エンドプレート4の板厚tの10%程度とすると良い。
【0024】
凹み9の開口面積は、エンドプレート4が単電池2と接する面積の30〜80%とすることが望ましい。
【0025】
単電池2が膨張する場合に、エンドプレート4と接触して圧力が掛かる部分の面積が30%以上あり、凹み9もこれ以上の開口面積が必要となる。一方、開口面積が大きくなると、単電池2の膨張によって圧力を受ける領域が小さくなる。この部分に負荷が集中することで、エンドプレート4に塑性変形や破損が発生する恐れが生じ得る。この状態を避けるためには、エンドプレートの面積の20%以上の領域で圧力を受ける必要があるが、凹み9の開口面積を80%以下とすると良い。
【0026】
また、単電池2の膨張時の外形の傾斜角については、膨張時の最小の傾斜角は1度以下であり、膨張時の最大傾斜角は10度以下である。従って、単電池2が膨張時に凹み9bの外周部から圧力を受けないためには、凹み9bの周囲の傾斜角θは、10度以上とすれば、傾斜角が膨張を妨げることは無い。
【0027】
また、凹み9bを機械加工で製作することを想定すると、工具形状の制約から傾斜角θの上限は90度となる。更に、単電池2と接触し、電池ブロック1から凹み9bを除いたエンドプレート4の外周部の圧力を受ける部分Lの長さで決まる面積は、金属バンド5の締結力により電池セルが塑性変形しない面積であれば良い。電池ブロック1と接するLの部分は、金属バンド5と隣接することが、変形を抑制するために有効である。単電池2の容量により動作時に発生する圧力は異なるため、Lの最小値を規定できないが、10mm以上は確保している。
【0028】
かかる構成によれば、単電池2が動作時に中央部に膨張を起こし、積層された電池ブロック1を通じてエンドプレート4に圧力が作用する。エンドプレート4の凹み9で膨張量を吸収することでエンドプレート4に作用する圧力を低下させる。
【0029】
また、エンドプレート4の圧力を受ける部分は外周部で、固定部品である金属バンド5と隣接するため、エンドプレート4の剛性が高い部分で圧力を受けることになるため、組電池の外形寸法が大きくなるのを抑制することができる。
【0030】
(実施の形態2)
図5は、本発明の実施の形態2のエンドプレート4の凹み9cを含む部分の断面図である。図5において、実施の形態1と異なる点は、凹み9cの深さ方向の形状を曲面にしたことである。
【0031】
エンドプレート4の凹み9cの深さ方向の形状を曲面にすることで、単電池2の中央付近が膨張し、エンドプレート4の凹み9cと接した場合であっても、単電池2の外装ケースの中央部の圧力負荷が均等になり、外装ケースの中央が損傷しやすくなるのを防ぐことができる。
【0032】
(実施の形態3)
図6は、本発明の実施の形態3の組電池のエンドプレート10の上面(a)と正面(b)の外観図である。
【0033】
図6において、実施の形態1と異なる点は、凹み11を縦方向に貫通して設け、板厚の厚い部分を金属バンド5と隣接するように固定した点である。図2のように、エンドプレート4の外周部の四方に接触部を残す場合には、凹み9は現実的には機械加工により形成される。
【0034】
一方、図6のように、凹み11が一方向に貫通した形状の場合には、アルミニウム製の部品であれば押出し材を採用できるので、生産性が高く安価にできる。
【0035】
また、単電池2の膨張により発生する圧力により、エンドプレート10と金属バンド5との隣接部分で負荷応力が最大になるので、この部分のエンドプレート10の板厚を厚くして剛性を高くすることで変形を最小限にすることができる。
【0036】
(実施の形態4)
図7は、本発明の実施の形態3の組電池のエンドプレート12の上面(a)と側面(b)の外観図である。図7において、実施の形態1及び2と異なる点は、エンドプレート12が、アルミニウム製のエンドプレート13と鋼製のエンドプレート14の2部品から構成される点である。エンドプレート13とエンドプレート14は接合されても良いし、ネジで締結されても良い。
【0037】
鋼製のエンドプレート14は、電池ブロック1と接する側に配置する方が、膨張源である単電池2に近いので剛性を高める効果は大きくなる。外形形状が同じでも、アルミニウムよりも合成の高い鋼製エンドプレートを採用することで剛性は高まるが、重量は重くなる。重くなることについては、凹み15の存在により材料が無いことで緩和される。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明の組電池は、角型電池以外の円筒型やパウチ型の組電池の用途にも適用できる。
【符号の説明】
【0039】
1,23 電池ブロック
2,21 単電池
3 セパレータ
4,10,12,13,14,25 エンドプレート
5,26 金属バンド
6 ボルト
7 穴
8 タップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8