(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1の磁性部材及び前記第2の磁性部材が、前記絶縁基板の前記第1の方向の両端で、前記第1の取出電極層及び前記第2の取出電極層の少なくとも一方から離れているか否かを確認する請求項1記載の磁気素子の製造方法。
前記絶縁基板の各磁気素子となる領域の前記第2の方向の両側に夫々、前記第1の方向に延出する貫通孔を形成し、前記第1の取出電極層及び前記第2の取出電極層を夫々、各貫通孔を介して前記絶縁基板の上面から下面にかけて形成する請求項1又は2に記載の磁気素子の製造方法。
前記第1の磁性部材及び前記第2の磁性部材は可撓性の絶縁シート上に磁性膜が形成された第1の磁性シート及び第2の磁性シートであり、接着部材を前記第1のコイル表面に塗布あるいは貼着した後、前記第1の磁性シートを貼着し、前記接着部材を前記第2のコイル表面に塗布あるいは貼着した後、前記第2の磁性シートを貼着する請求項1ないし3のいずれか1項の磁気素子の製造方法。
前記第1の磁性部材及び前記第2の磁性部材は可撓性の絶縁シート上に磁性膜が形成された第1の磁性シート及び第2の磁性シートであり、前記絶縁シートには前記磁性膜が形成された面とは反対の面に粘着部材からなる粘着層が設けられており、前記第1の磁性シート及び前記第2の磁性シートを、前記粘着層を介して前記第1のコイル及び前記第2のコイルの表面に貼着する請求項1ないし3のいずれかに記載の磁気素子の製造方法。
前記第1の磁性部材、前記第2の磁性部材及び前記絶縁基板を一緒に切断し、これにより各磁気素子の側面に前記第1の磁性部材、前記第2の磁性部材及び前記絶縁基板の各側面が同一面にて現れる請求項1ないし6のいずれか1項に記載の磁気素子の製造方法。
複数の磁気素子に切断可能な絶縁基板を用意し、前記絶縁基板に形成された複数のスルーホールに対応する複数の第1のコイルを前記絶縁基板の上面に形成し、前記絶縁基板の下面に前記スルーホールを介して各第1のコイルと電気的に接続される複数の第2のコイルを形成する工程、
第1の方向に配列された複数の前記第1のコイルの夫々に電気的に接続される第1の取出電極層を、前記第1の方向と直交する第2の方向の片側に、前記絶縁基板の上面から下面にかけて形成し、前記第1の方向に配列された複数の前記第2のコイルの夫々に電気的に接続される第2の取出電極層を、前記第1の取出電極層の反対側に、前記絶縁基板の上面から下面にかけて形成する工程、
長尺状の第1の磁性部材の長手方向を前記第1の方向に向け、前記第1のコイル側に前記第1の磁性部材を少なくとも前記第1の取出電極層及び前記第2の取出電極層の一方から離れた状態として貼着する工程、
長尺状の第2の磁性部材の長手方向を前記第1の方向に向け、前記第2のコイル側に前記第2の磁性部材を少なくとも前記第1の取出電極層及び前記第2の取出電極層の一方から離れた状態として貼着する工程、
各磁気素子ごとに前記絶縁基板を個片化する工程、を有し、
前記第1のコイル及び前記第2のコイルは、上面に第1の箔体が形成され、下面に第2の箔体が形成された前記絶縁基板をめっき層で覆い、フォトリソグラフィ技術を用いて、前記めっき層とともに前記第1の箔体及び前記第2の箔体の不要部分を除去して形成したものであり、前記第1の取出電極層及び前記第2の取出電極層は、前記第1のコイル及び前記第2のコイルの形成時に前記絶縁基板の前記第2の方向の両端に残された前記めっき層を、さらなるめっき層で覆って形成したものであり、
前記絶縁基板の上面に設けられた前記第1の取出電極層及び前記第2の取出電極層の各上面部の厚さ、及び前記絶縁基板の下面に設けられた前記第1の取出電極層及び前記第2の取出電極層の各下面部の厚さは、前記第1のコイル及び前記第2のコイルの厚さより大きく、前記第1の取出電極層及び前記第2の取出電極層の各上面部と前記第1のコイルとの間、及び前記第1の取出電極層及び前記第2の取出電極層の各下面部と前記第2のコイルとの間に段差が形成されており、前記第1の磁性部材及び前記第2の磁性部材の表面が夫々、前記第1の取出電極層及び前記第2の取出電極層の各上面部の表面又は各下面部の表面と略同一面をなすか、あるいは、前記第1の取出電極層及び前記第2の取出電極層の各上面部の表面又は各下面部の表面よりも前記絶縁基板に近い位置に存在することを特徴とする磁気素子の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1(a)は、本実施形態における薄型インダクタの平面図であり、特に、絶縁基板上に設けられた第1のコイルと、取出電極層の上面部の平面図であり、絶縁基板下に設けられた第2のコイルを点線で示した図であり、
図1(b)は、
図1(a)に示すA−A線から切断し矢印方向から見た本実施形態における薄型インダクタの縦断面図であり、
図1(c)は、絶縁基板下に設けられる第2のコイル及び取出電極層の下面部の平面図である。
なお、
図1(a)(c)では、磁性シートを図示していない。
【0022】
図1(b)に示すように薄型インダクタ(磁気素子)10は、絶縁基板11と、第1のコイル12と、第2のコイル13と、導通層14と、第1の取出電極層15と、第2の取出電極層16と、長尺状の磁性部材となる第1の磁性シート(磁性体層)17と第2の磁性シート30と、を有して構成される。
【0023】
絶縁基板11の材質は特に限定しないが、後述する各コイル12,13の銅箔(箔体)を合わせて、ガラスエポキシ基板であることが好適である。
【0024】
図1(a)では、絶縁基板11の平面は、正方形や矩形状であるが、形状を限定するものでない。
【0025】
図1(a)(b)に示すように、第1のコイル12は、絶縁基板11の上面11aに形成される。また
図1(b)に示すように第2のコイル13は、絶縁基板11の下面11bに形成される。
【0026】
図1(a)に示すように、第1のコイル12は、内側の巻き始端12aから外側の巻き終端12bにかけて直角に折れ曲がりながら巻回された平面コイルである。
【0027】
また、
図1(c)に示すように、第2のコイル13は、内側の巻き始端13aから外側の巻き終端13bにかけて直角に折れ曲がりながら巻回された平面コイルである。
【0028】
図1(b)に示すように絶縁基板11の略中央には、上面11aから下面11bにかけて貫通するスルーホール11cが形成されている。
図1(b)に示すようにスルーホール11c内には導通層14が設けられている。そして導通層14と第1のコイル12の巻き始端12aとが電気的に接続され、導通層14と第2のコイル13の巻き始端13aとが電気的に接続されている。
【0029】
図1(b)に示すように、絶縁基板11の第1の側面(X1側面)11d側に第1の取出電極層15が形成されている。また
図1(b)に示すように、絶縁基板11の第2の側面(X2側側面)11e側に第2の取出電極層16が形成されている。
【0030】
図1(b)に示すように第1の取出電極層15は、絶縁基板11の第1の側面11dに形成された第1の側面部15aと、第1の側面部15aから絶縁基板11の上面11aに延出し、第1のコイル12の巻き終端12bに接続される第1の上面部15bと、第1の側面部15aから絶縁基板11の下面11bに延出する第1の下面部15cとを有して構成される。
【0031】
図1(a)に示すように、絶縁基板11の上面11aには第1の取出電極層15の第1の上面部15bが現れている。また、
図1(c)に示すように、絶縁基板11の下面11bには第1の取出電極層15の第1の下面部15cが現れている。
【0032】
図1(b)に示すように第2の取出電極層16は、絶縁基板11の第2の側面11eに形成された第2の側面部16aと、第2の側面部16aから絶縁基板11の上面11aに延出する第2の上面部16bと、第2の側面部16aから絶縁基板11の下面11bに延出し、第2のコイル13の巻き終端13bに接続される第2の下面部16cとを有して構成される。
【0033】
図1(a)に示すように、絶縁基板11の上面11aには第2の取出電極層16の第2の上面部16bが現れている。また、
図1(c)に示すように、絶縁基板11の下面11bには第2の取出電極層16の第2の下面部16cが現れている。
【0034】
図1(b)に示すように、第1のコイル12は、絶縁基板11の上面11aに形成された第1の箔体(例えば銅箔)18と、第1の箔体18の表面に重ねて形成された第1のめっき層19との積層構造で形成される。
【0035】
また
図1(b)に示すように、第2のコイル13は、絶縁基板11の下面11bに形成された第2の箔体(例えば銅箔)20と、第2の銅箔20の表面に重ねて形成された第1のめっき層19との積層構造で形成される。
【0036】
図1(b)に示すように、第1の取出電極層15の第1の上面部15bは、第1のコイル12と同様に、第1の箔体18と、第1のめっき層19との積層構造を有する。また
図1(b)、
図1(c)に示すように、第1の取出電極層15の第1の下面部15cは、第2のコイル13と同様に、第2の箔体20と、第1のめっき層19との積層構造を有する。
【0037】
図1(b)に示すように、第1の取出電極層15には外層としての第2のめっき層23が形成される。
【0038】
また
図1(b)に示すように、第1の取出電極層15の第1の側面部15aは、第1のめっき層19と第2のめっき層23との積層構造で形成される。
【0039】
第1の取出電極層15の第1の側面部15aでは、第1のめっき層19が、絶縁基板11の第1の側面11dに直接、形成され、前記第1のめっき層19の表面に第2のめっき層23が重ねて形成されている。
【0040】
上記では第1の取出電極層15の積層構造について説明したが、第2の取出電極層16についても同様である。すなわち
図1(b)に示すように、第2の取出電極層16の第2の側面部16aは、第1のめっき層19と第2のめっき層23との積層構造であり、第2の上面部16bは、第1の箔体18と、第1のめっき層19と第2のめっき層23との積層構造であり、第2の下面部16cは、第2の箔体20と、第1のめっき層19と第2のめっき層23との積層構造である。
【0041】
図1(b)に示すように導通層14は、第1のめっき層19で形成されている。
例えば、第1の箔体18、20は銅箔であり、第1のめっき層19及び第2のめっき層23は銅めっきである。
【0042】
図1(a)(b)に示すように、第1のコイル12と第1の取出電極層15とは、共通の第1の箔体18及び第1のめっき層19からなる積層構造を備えて一体化されており、また第2のコイル13と第2の取出電極層16とは、共通の第2の箔体20及び第1のめっき層19からなる積層構造を備えて一体化されている。また、導通層14は第1のめっき層19で形成され、第1のめっき層19を備える第1のコイル12及び第2のコイル13と一体化して形成されている。
【0043】
このように本実施形態では、第1のコイル12、第2のコイル13、第1の取出電極層15、第2の取出電極層16及び導通層14が一体的に形成されている。
【0044】
本実施形態では、絶縁基板11の上下に第1のコイル12と第2のコイル13とが形成されている。これにより高いインダクタンスを得ることができる。またコイル12,13を絶縁基板11の上下に形成したことで、各コイル12、13から取出電極層15、16を簡単な構造で引き出すことが出来る。
【0045】
図1(b)に示すように、第1の取出電極層15を構成する第1の上面部15b及び第1の下面部15cと、第2の取出電極層16を構成する第2の上面部16b及び第2の下面部16cは、第1のコイル12及び第2のコイル13よりも厚く形成されている。
【0046】
このため、第1の取出電極層15及び第2の取出電極層16の各上面部15b,16b及び各下面部15c,16cと、第1のコイル12及び第2のコイル13との間に段差を形成できる。そして、
図1(b)に示すように、第1のコイル12の上面には絶縁層(接着部材)31を介して第1の磁性シート17が配置されている。また、
図1(b)に示すように、第2のコイル13の下面には絶縁層(接着部材)32を介して第2の磁性シート30が配置されている。このとき、本実施形態では、
図1(b)に示すように、第1の磁性シート17、第1の上面部15b及び第2の上面部16bの各表面が略同一面となるように、第1の磁性シート17を配置できる。また、第2の磁性シート30、第1の下面部15c及び第2の下面部16cの各表面が略同一面となるように、第2の磁性シート30を配置できる。
【0047】
あるいは、本実施形態では、第1の上面部15b及び第2の上面部16bの各表面を第1の磁性体層17の表面よりも絶縁基板11から離れる方向(上方)に突出させる形態とすることもできる。また、第1の下面部15c及び第2の下面部16cの各表面を第2の磁性シート30の表面よりも絶縁基板11から離れる方向(下方)に突出させる形態とすることもできる。
【0048】
以上のように、各上面部、各下面部及び各磁性体層を略同一面で形成するか、あるいは各上面部、各下面部の各表面を各磁性体層の各表面よりも外方に突出させることで、薄型インダクタ10を実装基板25にはんだ等で実装する際、実装不良等が発生しにくくなる。
【0049】
本実施形態の薄型インダクタ10では、磁性シート17,30を用いている。これによりQ値の向上を図ることができ、また磁性シート17,30を磁気シールドとして用いることができる。磁性シート17,30の構成は特に限定されるものでないが、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド系等の可撓性の絶縁シート表面にFeAlNやFeNの磁性層が形成された構成、絶縁シートの表面に、FeAlNやFeNの磁性層とSiO
2等の絶縁層とが交互に所定数、積層された構成が良好な貼着性を確保でき好適である。あるいは既存のフェライトシートやフェライト板、磁性合金薄帯、磁性合金粉末を樹脂バインダ等と混合して板状に成形した磁性板等を用いることも可能である。また、本実施形態においては、磁性シート17,30の絶縁シートは磁性層が形成された側の反対の面に予め粘着層及びセパレータを付与したものとしても良く、この場合は、磁性シート17,30を第1のコイル12及び第2のコイル13に貼着する際にセパレータを剥がして貼着すれば良い。
【0050】
各コイル12,13と各磁性シート17,30間を接合する接着部材31,32には、例えば、エポキシ系低温硬化剤、アクリル系低温硬化剤を用いることができる。あるいは接着部材31,32には両面テープを用いることができる。
【0051】
各コイル12,13と各磁性シート17,30間には絶縁性の接着部材31,32が介在するため、磁性シート17,30の磁性層をコイル12,13側に向けて接合することもできるし、磁性シート17,30の磁性層を外側に向けて接合することも可能である。
【0052】
また、本実施形態においては、さらに、絶縁層となる接着部材31、32を磁性粉末とバインダ樹脂との複合材料とし、各コイル12,13とともに圧粉成形しても良い。この場合は、更なるインダクタンスの向上を図ることが期待できる。
【0053】
図2(a)には、本実施形態における薄型インダクタ10の上面側に貼着される第1の磁性シート17を図示した。
【0054】
図2(a)に示すように、薄型インダクタ10のX1−X2方向(第2の方向)にて対向した取出電極層15,16間の長さ寸法はL1であり、薄型インダクタ10のY1−Y2方向(第1の方向)における取出電極層15,16の幅寸法はWである。一方、第1の磁性シート17のX1−X2方向の長さ寸法はL2であり、L1>L2の関係となっている。また第1の磁性シート17のY1−Y2方向の幅寸法はWであり、取出電極層15,16の幅寸法と一致している。
【0055】
図2(a)に示すように、第1の磁性シート17のX1側側面17aは、第1の取出電極層15から離れており、第1の磁性シート17のX2側側面17bは第2の取出電極層16から離れている。なお第2の磁性シート30においても同様の構成となっている。
図2(a)では、第1の磁性シート17の中心O1と、取出電極層15,16間の中心O2とが一致している。
【0056】
一方、
図3に示す磁気素子では、磁性シート40がX1−X2方向及びY1−Y2方向に対して斜めに傾いて、磁性シート40と各取出電極層15,16とが電気的に接触し、磁性シート40を介して取出電極層15,16間が短絡した状態となっている。
【0057】
本実施形態では、
図2(a)に示すように磁性シート17,30は各取出電極層15,16から離れており、したがって短絡不良が生じず、優れたインダクタンス及びQ値を得ることができる。
【0058】
図2(b)に示すように、第1の磁性シート17の側端面17a,17bの一方が、一方の取出電極層15,16に接触していてもよい。第2の磁性シート30についても同様である。
図2(b)では、第1の磁性シート17は、そのX2側側端面17bが第2の取出電極層16と電気的に接触しているが、第1の取出電極層15とは電気的に接触していない。したがって取出電極層15,16間の短絡不良は生じない。
【0059】
また
図2(b)の点線で示すように、第1の磁性シート17のX1側側端面17a及びX2側側端面17bはともにX1−X2方向及びY1−Y2方向から斜めに傾いていてもよい。ただし、傾き角度θは小さいことが好ましく、45度以下とすることが好適であり、20度以下とすることがより好ましい。また第2の磁性シート30についても第1の磁性シート17と同方向に傾いていることが好ましい。第2の磁性シート30が第1の磁性シート17に対して逆方向に傾いているとインダクタンス特性が悪化することが後述の実験により確認された。
【0060】
本実施形態では第1の磁性シート17及び第2の磁性シート30の磁化容易軸方向が同方向であることが好ましい。後述する製造方法で説明するように、長尺状の第1の磁性シート17の長手方向及び第2の磁性シート30の長手方向を一致させることで、第1の磁性シート17及び第2の磁性シート30の磁化容易軸方向を一致させることができる。
【0061】
また本実施形態では、
図2(a)(b)に示すように、第1の磁性シート17のY1側側面17c及びY2側側面17dは、夫々、絶縁基板11のY1側側面11f及びY2側側面11gと同一面となっている。
【0062】
次に本実施形態における薄型インダクタ(磁気素子)の製造方法について説明する。まず
図4を用いて、磁性シートの貼着工程前まで説明する。なお
図4では、
図1と同じ層については同じ符号を付している。
【0063】
図4(a)では、上面11aに第1の箔体18が形成され、下面11bに第2の箔体20が形成された絶縁基板11を用意する。この絶縁基板11から
図1に示す薄型インダクタ10を複数個得ることが可能である。例えば、絶縁基板11は上下面に銅箔を備えたガラスエポキシ基板であることが好適である。
【0064】
図4(b)の工程では、絶縁基板11を複数の薄型インダクタの領域に区分けしたときの各領域のX1−X2方向(第2の方向)の両側に夫々、Y1−Y2方向(第1の方向)に延出する貫通孔52を形成する。各貫通孔52を絶縁基板11の上面11aから下面11bにかけて形成する。
【0065】
また
図4(b)に示すように、各薄型インダクタとなる領域の略中央位置に、絶縁基板11の上面11aから下面11bにかけて貫通するスルーホール53を形成する。スルーホール53は例えば円柱状や角柱状である。
図4(b)に示すように、貫通孔52の幅寸法T3は、スルーホール53の幅寸法T5よりも大きく形成される。具体的には幅寸法T3は200μm以上とされる。
【0066】
貫通孔52及びスルーホール53の形成はフォトリソグラフィ技術を用いることができる。あるいはフォトリソグラフィ技術のみならず、ドリルやレーザー加工等の機械加工で穴を安価に形成することもできる。
【0067】
次に
図4(c)の工程では、第1の箔体18及び第2の箔体20に重ねて無電解めっき法もしくは電解めっき法により第1のめっき層19を形成する。このとき、スルーホール53内に第1のめっき層19による導通層14を形成するとともに、第1の箔体18の表面から貫通孔52内の側壁面52a,52b、及び第2の箔体20の表面にかけて前記第1のめっき層19を形成する。第1のめっき層19を例えばCuによる無電解めっきもしくは電解めっき法で形成する。第1のめっき層19の膜厚を、例えば35μm程度とする。
【0068】
続いて
図4(d)の工程では、フォトリソグラフィ技術を用いて、薄型インダクタとなる各領域の上面側に、第1の箔体18及び第1のめっき層19からなる第1のコイル12を形成し、さらに、薄型インダクタとなる各領域の下面側に、第2の箔体20及び第1のめっき層19からある第2のコイル13を形成する。
【0069】
例えば、第1のコイル12及び第2のコイル13を、
図1(a)、
図1(c)に示す平面形状で形成する。
【0070】
図4(d)に示すように、第1のコイル12の内側に位置する巻き始端12aと導通層14とを一体化して形成し、また第2のコイル13の内側に位置する巻き始端13aと導通層14とを一体化して形成する。
【0071】
また
図4(d)の工程では、第1のコイル12の外側に位置する巻き終端12bと接続される第1の取出電極層15及び、第2のコイル13の外側に位置する巻き終端13bと接続される第2の取出電極層16を形成する(
図1(a)(c)も参照)。
【0072】
貫通孔52の第1の側壁面52aは、薄型インダクタ10を構成する絶縁基板11の第1の側面11dに相当する。また貫通孔52の第2の側壁面52bは、薄型インダクタ10を構成する絶縁基板11の第2の側面11eに相当する。そして第1の取出電極層15は、第1の側壁面52aに直接形成した無電解めっきもしくは電解めっきによる第1のめっき層19を有する第1の側面部15aと、第1の側面部15aから絶縁基板11の上面に延出する第1の上面部15bと、第1の側面部15aから絶縁基板11の下面に延出する第1の下面部15cとを有して構成される。また第2の取出電極層16は、第2の側壁面52bに直接形成した無電解めっきもしくは電解めっきによる第1のめっき層19を有する第2の側面部16aと、第2の側面部16aから絶縁基板11の上面に延出する第2の上面部16bと、第2の側面部16aから絶縁基板11の下面に延出する第2の下面部16cとを有して構成される。
【0073】
図4(d)及び
図1(a)に示すように、第1のコイル12及び第1の取出電極層15は、同じ第1の箔体18と第1のめっき層19との積層構造で形成されており、第1のコイル12の巻き終端12bから第1の取出電極層15の第1の上面部15bにかけて一体化して形成されている。また
図4(d)及び
図1(c)に示すように、第2のコイル13及び第2の取出電極層16は、同じ第2の箔体20と第1のめっき層19との積層構造で形成されており、第2のコイル13の巻き終端13bから第2の取出電極層16の第2の下面部16cにかけて一体化して形成されている。
【0074】
次に
図4(e)の工程では、第1の取出電極層15及び第2の取出電極層16の第1のめっき層19の表面に電解めっき法により第2のめっき層23を形成する。第2のめっき層23を第1のめっき層19と同じあるいは同質の材質で形成することが好ましい。例えば第2のめっき層23をCuで形成する。また第2のめっき層23の膜厚を例えば、65〜75μm程度とする。
【0075】
第1の取出電極層15及び第2の取出電極層16にのみ第2のめっき層23を形成するには、第1の取出電極層15及び第2の取出電極層16以外の領域にレジスト層を設けて、第2のめっき層23がめっきされないようにすればよい。
【0076】
これにより、第1の取出電極層15及び第2の取出電極層16の各上面部15b,16b及び各下面部15c,16cの膜厚を、第1のコイル12及び第2のコイル13よりも厚く形成できる。
【0077】
このとき、第1の取出電極層15及び第2の取出電極層16の各側面部15a,16aは第1のめっき層19と第2のめっき層23との積層構造で形成される。このとき、
図5(e)に示すように、貫通孔52内で隣り合う第1の取出電極層15と第2の取出電極層16とは当接せず、空間が開いている。
【0078】
また第1のめっき層19と第2のめっき層23とは同じあるいは同質の材質で形成され、第1のめっき層19と第2のめっき層23とは一体化している。
【0079】
さらに第1の取出電極層15及び第2の取出電極層16の最表面にNi/Au層(Niが下地側)、Ni/Sn層、Ni/はんだ層、Ni/Ag層、Sn/Ag層、Sn/Cu層、Sn/Ag/Cu層、Sn/Zn層等からなる、はんだランド(図示せず)を形成してもよい。
【0080】
続いて磁性シート17,30の貼着工程に移行する。
図5は、複数の薄型インダクタ10の第1のコイル12側(
図1(a)参照)に長尺状の第1の磁性シート17を貼着する工程を指す。
【0081】
図5は絶縁基板11の一部を示したものであり、絶縁基板11には製造工程中の多数の薄型インダクタ10がX1−X2方向及びY1−Y2方向にマトリクス状に配列されている。このうちY1−Y2方向(第1の方向)に配列された複数の薄型インダクタ10のX1−X2方向(第2の方向)の両側にはY1−Y2方向に延出する取出電極層15,16が
図4工程を用いて形成され、取出電極層15,16間に、Y1−Y2方向に配列された各薄型インダクタ10の第1のコイルが露出した状態となっている。
【0082】
そして
図5に示すように、長尺状の第1の磁性シート17の長手方向をY1−Y2方向(第1の方向)に向け、Y1−Y2方向に配列された各薄型インダクタ10の取出電極層15,16間に前記第1の磁性シート17を貼着する。
【0083】
図6は、
図5の一部を拡大して示した部分拡大平面図である。
図6では
図5のうち、製造工程中の複数の薄型インダクタ10がY1−Y2方向(第1の方向)に配列された、ある一つのバー状態の素子群62に注目している。なお
図6では、第1のコイル12を簡易的に示した。
図6では、各薄型インダクタ10の取出電極層15,16間に第1の磁性シート17を位置決めした状態を示しているが、まずその前に、
図7(a)に示すように、素子群62をガイド部材60にセットし、素子群62の各薄型インダクタ10の上面に接着部材31を塗布する。
図7(a)では、Y1−Y2方向に延出するバー状の素子群62を図示したが、磁性シート17を貼着する前に、絶縁基板11から素子群62を切り出してもよいし、あるいはマトリクス状に製造工程中の多数の磁気素子が配列された
図5に示すウェハ状態の絶縁基板をガイド部材60によりセットすることもできる。
【0084】
続いて
図6に示すように、第1の磁性シート17を各薄型インダクタ10の取出電極層15,16間に位置決めする。
図6では、第1の磁性シート17のX1側側端面17a及びX2側側端面17bの双方を各取出電極層15,16から離して位置決めしている。このとき、最もY1側に位置する薄型インダクタ10(
図6において、符号10Aを付した)の各取出電極層15,16から第1の磁性シート17のX1側側端面17a及びX2側側端面17bが離れているか否かを確認し、最もY2側に位置する薄型インダクタ10(
図6において、符号10Bを付した)の各取出電極層15,16から第1の磁性シート17のX1側側端面17a及びX2側側端面17bが離れているか否かを確認する。Y1−Y2方向に走査して、第1の磁性シート17のX1側側端面17a及びX2側側端面17bが全ての各薄型インダクタ10の各取出電極層15,16から離れているか否かを確認してもよいが、確認作業に相当な時間がかかるため、少なくとも両端について確認を行う。磁性シート17及び取出電極層15,16がY1−Y2方向に沿って帯状に形成されているため、両端だけ磁性シート17が取出電極層15,16から離れていることを確認すれば、真ん中については、磁性シート17が取出電極層15,16から離れていると推測でき、少なくとも、磁性シート17が取出電極層15,16の双方に接触した状態を避けることができる。このように両端だけ磁性シート17が取出電極層15,16から離れているか否かを確認することで、生産性を高めることができる。
【0085】
図6のように、第1の磁性シート17を位置決めした後、
図7(b)に示すように治具65を用いて加圧する。例えば接着部材31は熱硬化性であり、加圧及び加熱を行うことで接着部材31を熱硬化させる。このとき、治具65から取出電極層15,16に直接、圧力が加わらないようにする。
【0086】
薄型インダクタ10の第2のコイル13(
図1(c)参照)を覆う第2の磁性シート30についても
図7(a)、
図6と同様に接着部材32の塗布及び長尺状の第2の磁性シート30の位置決めを行った後、
図7(c)に示すように治具65を用いて加圧、加熱処理を行う。
【0087】
そして
図8に示すように各薄型インダクタ10ごとに絶縁基板を切断する。
図8の符号Dが切断箇所である。このとき絶縁基板11の切断面(例えば、
図8の符号10Cを付した磁気素子のY1側側面11f,11g)と、第1の磁性シート17の切断面(例えば、
図8の符号10Cを付した磁気素子のY1側側面17f,17g)とは同一面で現れる。第2の磁性シート30についても同様である。
【0088】
本実施形態の薄型インダクタ10の製造方法によれば、磁性シート17,30を介して取出電極層15,16間が短絡する不具合を抑制でき、優れたインダクタンス及びQ値を有する薄型インダクタ10を、安定して一度に複数個、製造することが可能である。
【0089】
ところで
図6に示す第1の磁性シート17の位置合わせでは、第1の磁性シート17のX1側側端面17a及びX2側側端面17bの双方が取出電極層15,16に電気的に接触しないように位置決めしていた。
【0090】
これに対して
図9では、例えば長尺状の第1の磁性シート17のX1側側端面17aは第1の取出電極層15に電気的に接触していないが、X2側側端面17bは第2の取出電極層16と電気的に接触している。しかしながら第1の磁性シート17の両側端面17a,17bが各取出電極層15,16に電気的に接触した状態ではないので、各取出電極層15,16間が短絡しない。よって
図9のように、第1の磁性シート17のX2側側端面17bが第2の取出電極層16に電気的に接触していてもよい。
【0091】
図9では、第1の磁性シート17がY1−Y2方向の両端で、共にX1−X2方向における同じ側の側端面17a,17bが取出電極層15,16から離れているか否かを確認する。例えば、Y1側では、第1の磁性シート17のX1側側端面17aが第1の取出電極層15から離れているが、Y2側では、第1の磁性シート17のX2側側端面17bが第2の取出電極層16から離れている状態では、第1の磁性シート17が斜めに傾いていることになる。このとき多少、斜めに傾いていても問題はないが、傾き角度が大きくなると、短絡が生じる可能性が高まるため、第1の磁性シート17の同じ側が取出電極層15,16と接触していないことを確認することが好適である。第2の磁性シート30についても同様である。
【0092】
また例えば、第1の磁性シート17の一方の側面が取出電極層15、16から離れているのを確認するだけでは、他方の側面が取出電極層上に乗り上げている可能性もあり、不良品となる。したがって、
図6のように、第1の磁性シート17のX1側側端面17a及びX2側側端面17bの双方が各取出電極層15,16から離れるように第1の磁性シート17を位置決めすることが好適である。第2の磁性シート30についても同様である。
【0093】
また、
図6,
図9の位置決め工程では、長尺状の第1の磁性シート17の長手方向と、長尺状の第2の磁性シート30の長手方向とが同方向となるように調整することが好ましい。
図6,
図9では、第1の磁性シート17の長手方向はY1−Y2方向に平行であり、第2の磁性シート30の長手方向もY1−Y2方向に平行に向けられる。また、第1の磁性シート17の長手方向がY1−Y2方向から多少傾いていてもよいが、その場合には、第2の磁性シート30の傾き方向及び角度を第1の磁性シート17と同様にして、長手方向を揃えることが好適である。
【0094】
第1の磁性シート17の長手方向と第2の磁性シート30の長手方向とが異なる方向であると、
図2に示す製品化された薄型インダクタ10では、第1の磁性シート17の磁化容易軸方向と、第2の磁性シート30の磁化容易軸方向とが一致せず、インダクタンス特性に悪影響を与えることが後述の実験によりわかった。したがって
図6,
図9の位置決め工程では、長尺状の第1の磁性シート17の長手方向と、長尺状の第2の磁性シート30の長手方向とを一致させる。
【0095】
本実施形態では、
図4、
図5に示すように絶縁基板11の各薄型インダクタ10となる領域のX1−X2方向の両側に夫々、Y1−Y2方向に延出する貫通孔52を形成し、第1の取出電極層15及び第2の取出電極層16を夫々、各貫通孔52を介して絶縁基板11の上面から下面にかけて形成している。これにより複数の薄型インダクタ10に対して同時に各取出電極層15,16を形成できる。
【0096】
また本実施形態では、
図6や
図9に示したように第1の磁性シート17及び第2の磁性シート30(
図7(c))が第1の取出電極層15及び第2の取出電極層16の少なくともいずれか一方から離れているのを、Y1−Y2方向の両端にて確認することで、確認作業時間を短縮でき好ましい。
【0097】
また本実施形態では、第1の磁性シート17及び第2の磁性シート30は可撓性の絶縁シート上に磁性膜が形成された構成であり、接着部材31を第1のコイル12表面に塗布した後、第1の磁性シート17を貼着し、接着部材32を第2のコイル13表面に塗布した後、第2の磁性シート30を貼着することが好ましい。このように可撓性の磁性シート17,30を用いることで簡単且つ適切に磁性シートの貼着を行うことができる。なお、本実施形態では、接着部材31,32を粘着性の無い絶縁層とし、両面テープ等を介して磁性シート17,30を貼り付けても良い。
【0098】
あるいは
図10で示すように、第1の磁性シート17を構成する絶縁シート33を、絶縁シート33の磁性層が形成される反対の面に粘着層34及びセパレータ35を設けたものとし、絶縁層36に磁性シート17を貼り付ける際にこのセパレータを剥がして貼着するようにしても良い。
図10では、第1の磁性シート17について説明したが、第2の磁性シート30についても同じである。
【0099】
また本実施形態では、
図4に示すように、スルーホール53にめっきによる導通層14を形成し、導通層14に連続する第1のコイル12及び第2のコイル13層をめっき形成している。これにより、各コイル12、13と導通層14とを一体化でき、コイル12,13と導通層14間の接触抵抗を低減できる。
【0100】
また本実施形態では、第1のコイル12から連続して第1の取出電極層15をめっき形成し、第2のコイル13から連続して第2の取出電極層16をめっき形成する。これにより、コイル12,13と取出電極層15,16間の接触抵抗を低減できる。
【0101】
また本実施形態では、上面に第1の箔体18が形成され、下面に第2の箔体20が形成された絶縁基板11を用意し、フォトリソグラフィ技術を用いて、めっき層と第1の箔体を有してなる第1のコイル12を形成し、めっき層と第2の箔体からなる前記第2のコイル13を形成する。これにより、コイル抵抗が低く、所定形状を備えるコイル12,13を適切に形成することができる。
【実施例】
【0102】
実験では、磁性シートの構成が異なる複数の磁気素子を用いてインダクタンスLs及びQ値を測定した。
【0103】
実験では、
図2(a)に示す磁気素子−1(磁性シートの中心O1と、取出電極層15,16間の中心O2とが一致している)、
図2(a)に示す磁気素子−1の磁性シートをX方向に0.2mmずらした磁気素子−2(短絡なし)、
図11(a)に示すように、第1の磁性シート17のY方向からの傾き角度θを20度とし、第2の磁性シート30についても第1の磁性シート17と同方向に20度傾けた磁気素子−3(短絡なし)、
図11(b)に示すように、第1の磁性シート17の傾き角度θ1をY方向から20度とし、第2の磁性シート30の傾き角度θ2をY方向から−20度(第1の磁性シート17に対して逆方向に傾けた)とした磁気素子−4(短絡なし)、第1の磁性シート17及び第2の磁性シート30の傾き角度θを同方向に45度とした磁気素子−5(短絡なし)、第1の磁性シート17の傾き角度θ1を45度とし、第2の磁性シート30の傾き角度θ2を−45度(第1の磁性シート17に対して逆方向に傾けた)とした磁気素子−6(短絡なし)、磁性シートを介して各取出電極層間を短絡させた磁気素子−7を用意した。
【0104】
インダクタンスLsの測定には、Agilent E4991A RFインピーダンス・マテリアル・アナライザーを用い、周波数1MHz〜1GHz、測定信号電流1mAとして測定した。また、直流抵抗Rdcの測定には、Agilent DMM 34401Aを用い、ケルビンプローブ4端子法により測定した。
【0105】
また各磁気素子において、磁気素子−1〜6はポリエチレンナフタレート(PEN)/FeAlN(1)/SiO
2(0.1)/FeAlN(1)/SiO
2(0.1)の積層構造を有する磁性シートを用い、磁気素子−7は表面のSiO
2膜を無くし、(PEN)/FeAlN(1)/SiO
2(0.1)/FeAlN(1)の積層構造を有する磁性シートを用いた。括弧書きの数値は膜厚を示しており、単位はμmである。また磁性シートの接着は行わず、絶縁被膜を付けた第1のコイル12と第2のコイル13に密着させ、重ね合わせた簡易接着方式を用い、熱処理は行っていない。
【0106】
またインダクタンスLsとRs(薄型インダクタの等価回路におけるインピーダンスの抵抗成分)の周波数特性からQ=ωLs/Rs(ω=2πf)よりQ値及びQ値の周波数特性を算出した。なお以下の表1に示すQ値は各試料における最大値であり、Q値が最大値となる周波数をfとした。また周波数f時におけるインダクタンスLs at Qも測定した。さらにLs at 1MHzは1MHzの時のインダクタンスLsを示す。その実験結果を表1に示す。
【0107】
【表1】
【0108】
図12は、表1に示す各磁気素子のインダクタンスLs at 1MHzと、インダクタンスLs at Qを示すグラフである。
【0109】
表1、
図12に示すように磁気素子−1、磁気素子−2、磁気素子−3、磁気素子−4、磁気素子−5はいずれも優れたインダクタンス特性を備えていることがわかった。
【0110】
また
図12に示すように、磁気素子−6及び磁気素子−7のインダクタンス特性は非常に悪くなっていることがわかった。磁気素子−7については短絡により磁性膜5からコイルへの渦電流の逆流等が生じていることが一因であると思われる。また磁気素子−7では、最大のQ値を得られる周波数が他の磁気素子に対して大幅にずれることがわかった。
【0111】
磁気素子−5と磁気素子−6については、各取出電極層間が短絡していないが、45度の傾き角度を有することでコイルが適切に磁性シートで覆われた状態になっていないと考えられる。また、磁気素子−6では、表裏の磁性シートを互いに逆方向に45度傾けているため、第1の磁性シートの磁化容易軸方向と第2の磁性シートの磁化容易軸方向とが一致していない。このため、第1の磁性シートと第2の磁性シートの各磁化容易軸間で生じる静磁結合は、互いの磁気異方性の分散性を高めてしまい、磁気素子−6は磁気素子−5に比べて著しくインダクタンスが低くなったものと思われる。
【0112】
表裏の磁性シートを互いに逆方向に20度傾けた磁気素子−4もややインダクタンスが低くなるものの、互いに逆方向に45度傾けた磁気素子−6よりは高いインダクタンスを得ることができた。
【0113】
なお、仮に本実施形態において、第1の磁性シートと第2の磁性シートとが互いに逆方向に斜めに傾いたとしても、
図11(b)のような形態にはならず、各磁性シートのY1側側端面及びY2側側端面は切断面である、絶縁基板のY1側側端面及びY2側側端面と同一面となるように形成される。ただし、第1の磁性シート及び第2の磁性シートが同方向に傾く磁気素子−3,磁気素子−5は、第1の磁性シート及び第2の磁性シートが逆方向に傾く磁気素子−4,磁気素子−6よりも優れたインダクタンス特性が得られることから、本実施形態においても、
図6における磁性シートの位置合わせの際、長尺状の第1の磁性シートと第2の磁性シートの傾き方向が同方向であるか否かを確認することが好ましい。