(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6028258
(24)【登録日】2016年10月28日
(45)【発行日】2016年11月16日
(54)【発明の名称】アスファルト合材廃棄物からアスファルトと骨材を分離する廃棄処理方法
(51)【国際特許分類】
B09B 3/00 20060101AFI20161107BHJP
E01C 19/10 20060101ALI20161107BHJP
G21F 9/28 20060101ALI20161107BHJP
G21F 9/30 20060101ALI20161107BHJP
C10C 3/08 20060101ALI20161107BHJP
【FI】
B09B3/00 304Z
E01C19/10 AZAB
G21F9/28 Z
G21F9/30 561F
C10C3/08
【請求項の数】8
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願2012-63848(P2012-63848)
(22)【出願日】2012年3月21日
(65)【公開番号】特開2013-193045(P2013-193045A)
(43)【公開日】2013年9月30日
【審査請求日】2015年3月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000109657
【氏名又は名称】ディップソール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100084663
【弁理士】
【氏名又は名称】箱田 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100093300
【弁理士】
【氏名又は名称】浅井 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(72)【発明者】
【氏名】井上 学
【審査官】
河野 隆一朗
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−138063(JP,A)
【文献】
特開2003−275733(JP,A)
【文献】
特開昭56−159405(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3173433(JP,U)
【文献】
特開2007−289869(JP,A)
【文献】
特開昭56−000818(JP,A)
【文献】
特開昭49−016721(JP,A)
【文献】
特開昭51−084808(JP,A)
【文献】
特開2008−074919(JP,A)
【文献】
特開平08−038803(JP,A)
【文献】
峰岸 順一,アスファルト抽出用代替溶剤及び抽出試験の現状,1995年度 石油製品討論会,石油学会,1995年11月20日,P.53-57
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 1/00 − 5/00
E01C 19/00 − 19/52
C10C 3/00 − 3/18
G21F 9/28 − 9/36
G01N 1/00 − 1/34
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
n−プロピルブロマイドである不燃性溶剤を用いてアスファルト合材廃棄物からアスファルトを溶出し骨材と分離することを特徴とするアスファルト合材廃棄物の廃棄処理方法であって、
前記不燃性溶剤がさらにエポキシド及びニトロアルカンを含み、
前記エポキシドがブチレンオキサイド、エピクロルヒドリン、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、シクロヘキセンオキサイド、グリシジルメチルエーテル、シクロペンテンオキサイド及びシクロヘキセンオキサイドから選ばれる、廃棄処理方法。
【請求項2】
アスファルトを溶出したアスファルト含有不燃性溶剤から不燃性溶剤を回収することを含む請求項1に記載の廃棄処理方法。
【請求項3】
回収した不燃性溶剤を、アスファルトを溶出するために再利用する請求項2に記載の廃棄処理方法。
【請求項4】
アスファルト合材廃棄物が放射性物質に汚染されたものである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の廃棄処理方法。
【請求項5】
分離された骨材を水で洗浄して分離された骨材の放射性物質を低減ないし除去することを含む請求項4に記載の廃棄処理方法。
【請求項6】
エポキシドとニトロアルカンとの比率(ニトロアルカン/エポキシド)が、0.5/3〜5/0.5重量比の範囲である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の廃棄処理方法。
【請求項7】
n−プロピルブロマイドである不燃性溶剤を含む溶剤組成物であって、前記不燃性溶剤がさらにエポキシド及びニトロアルカンを含み、前記エポキシドがブチレンオキサイド、エピクロルヒドリン、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、シクロヘキセンオキサイド、グリシジルメチルエーテル、シクロペンテンオキサイド及びシクロヘキセンオキサイドから選ばれ、アスファルト合材廃棄物からアスファルトを溶出し骨材と分離するための溶剤組成物。
【請求項8】
エポキシドとニトロアルカンとの比率(ニトロアルカン/エポキシド)が、0.5/3〜5/0.5重量比の範囲である、請求項7に記載の溶剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アスファルト合材廃棄物からアスファルトと骨材を分離するアスファルト合材廃棄物の廃棄処理方法及び前記分離方法で用いるのに有効な溶剤組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アスファルト舗装された道路が放射性物質で汚染された場合、その表面は水などで洗い流すことはできるが、アスファルト合材内部に染み込んだ放射性物質は除去が困難なため、道路を掘り起こし、砕石、砂利、砂などの骨材とアスファルトすべてを放射性廃棄物として隔離する必要があった。しかしながら、その量は膨大となるため、廃棄物の低減が必要になっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明はアスファルト舗装道路などに用いられるアスファルトと砂、砕石、砂利などの骨材よりなるアスファルト合材の廃棄物の処理方法であって、特に放射性物質に汚染されたアスファルト舗装の放射性廃棄物量の低減が可能な処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、種々検討した結果、塩化アルキル、臭化アルキルなどの不燃性溶剤を用いて、アスファルト舗装道路等のアスファルト合材中のアスファルトを溶出させて、アスファルトを骨材から分離することによって、骨材が再利用可能となり、アスファルト合材廃棄物の量の低減が可能であることを見出した。
すなわち、本発明は、塩化アルキル及び臭化アルキルからなる群より選ばれた不燃性溶剤を用いてアスファルト合材廃棄物からアスファルトを溶出し骨材と分離することを特徴とするアスファルト合材廃棄物の廃棄処理方法を提供する。
本発明は、又、塩化アルキル及び臭化アルキルからなる群より選ばれた不燃性溶剤を含む溶剤組成物であって、アスファルト合材廃棄物を処理するための溶剤組成物を提供する。
【発明の効果】
【0005】
本発明により、アスファルト舗装道路などのアスファルト合材廃棄物量の低減が可能となり、特に放射性物質に汚染されたアスファルト舗装道路の廃棄物量の低減に有効である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本発明のアスファルト合材廃棄物の廃棄処理方法は、塩化アルキル及び臭化アルキルからなる群より選ばれた不燃性溶剤を用いてアスファルト合材廃棄物からアスファルトを溶出し骨材と分離することを特徴とする。
溶剤として使用する塩化アルキルとしては、例えば四塩化炭素、クロロホルム、ジクロルメタン、トリクレンなどが挙げられるが、これらに限定されない。また、臭化アルキルとしては、例えばエチルブロマイド、プロピルブロマイド、ブチルブロマイドなどが挙げられるが、これらに限定されない。溶剤として使用する前記化合物は、単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。ただし、安全性、作業環境性などを考慮した場合、溶剤として使用する前記化合物は、n-プロピルブロマイドが最適である。
前記溶剤は、さらにエポキシドを含むことができる。エポキシドとしては、エピクロルヒドリン、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、シクロヘキセンオキサイド、グリシジルメチルエーテル、グリシジルメタクレート、ペンテンオキサイド、シクロペンテンオキサイド、シクロヘキセンオキサイドなどが挙げられるが、これらに限定されない。
エポキシドは、単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。エポキシドの添加量は、好ましくは0.05〜3重量%であり、より好ましくは0.5〜3重量%である。
また、前記溶剤は、さらにニトロアルカンを含むことができる。ニトロアルカンとしては、ニトロメタン、ニトロエタン、1−ニトロプロパン、2−ニトロプロパン
などが挙げられるが、これらに限定されない。ニトロアルカンは、単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。ニトロアルカンの添加量は、好ましくは0.5〜15重量%であり、より好ましくは1〜5重量%である。
本発明においては、エポキシドとニトロアルカンとは併用して添加することもでき、その場合の好ましい比率は、ニトロアルカン/エポキシド=0.5/3〜5/0.5重量比の範囲である。
【0007】
本発明のアスファルト合材廃棄物の廃棄処理方法においては、アスファルト合材廃棄物を前記溶剤に接触させてアスファルトを溶出して骨材と分離する。前記廃棄物を溶剤に接触させてアスファルトを溶出する方法は、溶剤にアスファルト合材中のアスファルト成分が十分に溶出しうる方法であれば特に限定されないが、好ましくは、例えば前記廃棄物の形状が塊状の場合は粉砕して粉状、細粒状とし、また、粉状、細粒状の場合はそのままで、適宜な容器に入れ、溶剤に浸漬或いは溶剤を噴霧し、攪拌、或いは振動を与える方法などが挙げられる。廃棄物を溶剤に浸漬ないし噴霧する際の温度は、好ましくは0〜71℃であり、より好ましくは50〜71℃である。また、溶剤の量は、溶解するアスファルトの量から適宜設定することができる。例えば、溶剤の量は、溶解するアスファルトの量の0.1〜100倍の量(v/w)であり、好ましくは1〜10倍の量(v/w)である。前記廃棄物中のアスファルト成分を溶剤に溶かし出した後、紛石、砂利、砂などの骨材成分を公知の固液分離方法、例えば沈殿分液、濾過、遠心分離などにより分離する。骨材を分離した後、アスファルトが溶解混合したアスファルト含有不燃性溶剤溶液から不燃性溶剤を回収する。不燃性溶剤の回収方法としては、蒸留や減圧蒸留が挙げられる。回収した不燃性溶剤は、前記廃棄物を溶剤に溶出する際に再利用することができる。不燃性溶剤を回収して再利用することでコスト低減が図れる。また、分離された骨材も再度アスファルト合材の骨材として再利用することができる。
【0008】
特に、アスファルト合材廃棄物が放射性物質で汚染されている場合においては、前記分離された骨材を水で適宜洗浄することで骨材成分の放射性物質を低減ないし除去することができ、再度アスファルト合材の骨材として再利用することで放射性廃棄物の量を低減することができる。
また、前記アスファルトが溶解混合したアスファルト含有不燃性溶剤溶液も、そのままで又は、不燃性溶剤回収後の残渣を水で適宜洗浄することで放射性物質を低減ないし除去することができる。なお、回収不燃性溶剤には通常、放射性物質は混入しないことが予測されるが、混入した場合は前記同様、水で適宜洗浄することで放射性物質を低減ないし除去することができる。
洗浄水としては、地下水、工業用水、水道水などが用いられる。洗浄後の排水から、蒸留などにより水を回収することで、放射性廃棄物を濃縮することができる。回収した水は、アスファルト含有不燃性溶剤溶液、不燃性溶剤回収後の残渣、回収不燃性溶剤及び/又は分離した骨材を水で洗浄する際に再利用することができる。アスファルトが溶解混合したアスファルト含有不燃性溶剤溶液、不燃性溶剤回収後の残渣、回収不燃性溶剤、分離した骨材のいずれか又はいずれをも水で洗浄することにより、アスフファルト、不燃性溶剤及び骨材が再利用可能となり、とりわけ骨材が再利用可能とることでアスファルト合材の廃棄物量の低減が可能となる。
次に、実施例および比較例を示して本発明を説明する。
【実施例】
【0009】
(試験1:アスファルト浸漬溶解試験)
アスファルト舗装100gを粉砕し、60℃に加温した各種処理溶剤500mlに浸漬し、3時間攪拌した。結果を表1に示す。実施例1及び2では、アスファルトは処理溶剤に溶解したが、比較例1では、溶解しなかった。
【0010】
(試験2:アスファルト蒸留抽出試験)
アスファルト舗装100gを粉砕し、ソックスレー抽出器で各種処理溶剤500mlにて5時間蒸留抽出した。結果を表1に示す。実施例1及び2では、アスファルトはすべて抽出されたが、比較例1では、抽出されなかった。
【0011】
【表1】