(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
2枚のガラス板を縁部に設けられる封止部を介し対向配置して2枚のガラス板間に空間部を形成し、該空間部内にブラインドを設けたブラインド内蔵型複層ガラスにおいて、
前記ブラインドは、縦方向に複数配置されるスラットを、該スラットの幅方向に対向する一組の縦紐を有したラダーコードで支持し、該ラダーコードは前記スラットの長手方向に伸びる回転軸の回転に連動して前記スラットの角度を可変とし、
前記ガラス板間の空間部には内部に収納部を有した操作連動体が設けられ、該操作連動体は、前記回転軸を前記収納部内に挿通させる軸挿通部と、前記ガラス板間の空間部の外側に露出する外部連結部とを有し、
前記回転軸は前記軸挿通部及び外部連結部を介して前記空間部の外部と連係され、
前記収納部は、前記軸挿通部を有し前記空間部側と外部側とを隔てる密閉壁部を有し、
前記収納部には、前記回転軸の全周に渡り前記空間部側と外部側とを気密するシール部品が設けられ、該シール部品は、前記密閉壁部と前記回転軸との間を気密する密閉部と、該密閉部と連続し前記密閉壁部より外部側で前記回転軸の周面を覆う軸被覆部とを有することを特徴とするブラインド内蔵複層ガラス。
前記2枚のガラス板を前記封止部を介し対向配置してなり前記操作連動体を有するガラス体と、前記操作連動体から引き出される回転軸と連係する操作機構を有する操作体とからなり、該操作体の外周縁部は前記ガラス体と略同厚であることを特徴とする請求項1記載のブラインド内蔵型複層ガラス。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
複層ガラスは、断熱性確保や結露防止のため、ガラス板間の空間部を気密する必要がある。これは、ブラインド内蔵型複層ガラスでも同様である。ブラインド内蔵型複層ガラスでは、スラットを開閉させるため、外部からの操作により回転軸を回転させることが必要となるが、従来は回転軸をガラス板間の空間部から引き出すことなく、ガラス板越しに磁石を用いて回転させるようにしていた。
【0006】
しかし、磁石は磁場を発生させるものであり、病院など磁場の発生が好ましくない場所には設置することができない。また、磁石を用いると、コストが高くなるという問題もあった。
【0007】
本発明は前記課題を鑑みてなされたものであり、複層ガラス内のスラットを開閉操作するのに磁石を不要とし、かつ複層ガラス間の気密性も確保することのできるブラインド内蔵型複層ガラスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明に係るブラインド内蔵型複層ガラスは、2枚のガラス板を縁部に設けられる封止部を介し対向配置して2枚のガラス板間に空間部を形成し、該空間部内にブラインドを設けたブラインド内蔵型複層ガラスにおいて、
前記ブラインドは、縦方向に複数配置されるスラットを、該スラットの幅方向に対向する一組の縦紐を有したラダーコードで支持し、該ラダーコードは前記スラットの長手方向に伸びる回転軸の回転に連動して前記スラットの角度を可変とし、
前記ガラス板間の空間部には内部に収納部を有した操作連動体が設けられ、該操作連動体は、前記回転軸を前記収納部内に挿通させる軸挿通部と、前記ガラス板間の空間部の外側に露出する外部連結部とを有し、
前記回転軸は前記軸挿通部及び外部連結部を介して前記空間部の外部と連係され
、
前記収納部は、前記軸挿通部を有し前記空間部側と外部側とを隔てる密閉壁部を有し、
前記収納部には、前記回転軸の全周に渡り前記空間部側と外部側とを気密するシール部品が設けられ、該シール部品は、前記密閉壁部と前記回転軸との間を気密する密閉部と、該密閉部と連続し前記密閉壁部より外部側で前記回転軸の周面を覆う軸被覆部とを有することを特徴として構成されている。
【0011】
さらにまた、本発明に係るブラインド内蔵型複層ガラスは、前記2枚のガラス板を前記封止部を介し対向配置してなり前記操作連動体を有するガラス体と、前記操作連動体から引き出される回転軸と連係する操作機構を有する操作体とからなり、該操作体の外周縁部は前記ガラス体と略同厚であることを特徴として構成されている。
【0012】
そして、本発明に係るブラインド内蔵型複層ガラスは、前記操作連動体の外部連結部は、前記ガラス板の外周面と直交する方向を向いた受け面部を有することを特徴として構成されている。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るブラインド内蔵型複層ガラスによれば、ガラス板間の空間部には内部に収納部を有した操作連動体が設けられ、操作連動体は、回転軸を収納部内に挿通させる軸挿通部と、ガラス板間の空間部の外側に露出する外部連結部とを有し、回転軸は軸挿通部及び外部連結部を介して空間部の外部と連係されることにより、外部連結部に操作機構を接続することで、回転軸を操作機構で直接駆動することができ、スラットの開閉のために磁石を不要とすることができる。
【0014】
また、本発明に係るブラインド内蔵型複層ガラスによれば、収納部には、回転軸の全周に渡り外部連結部側とガラス板間の空間部側とを気密するシール部品が設けられることにより、回転軸を操作機構で直接駆動する機構において、ガラス板間の空間部の密閉性も確保することができる。
【0015】
さらに、本発明に係るブラインド内蔵型複層ガラスによれば、シール部品は収納部内に挿通された回転軸の全周を覆う軸被覆部と、密閉壁部の開口部を密閉する密閉部とが一体的に形成されてなることにより、ガラス板間の空間部側を外気側に対し確実に密閉することができる。
【0016】
さらにまた、本発明に係るブラインド内蔵型複層ガラスによれば、2枚のガラス板を封止部を介し対向配置してなり操作連動体を有するガラス体と、操作連動体から引き出される回転軸と連係する操作機構を有する操作体とからなり、操作体の外周縁部はガラス体と略同厚であることにより、通常のガラス体と同様の構造で框体内に納めることができる。
【0017】
そして、本発明に係るブラインド内蔵型複層ガラスによれば、操作連動体の外部連結部は、ガラス板の外周面と直交する方向を向いた受け面部を有することにより、ガラス体の外周面に塗布されるシール材の端部を受けることができ、シール材の塗布を容易にすると共に、ガラス体の全周に渡る気密性向上を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施形態について図面に沿って詳細に説明する。本実施形態では、2枚のガラス板10,10間に空間部12を形成し、該空間部12内にブラインド4を納めてなるブラインド内蔵型複層ガラス1について説明する。このブラインド内蔵型複層ガラス1は、サッシを構成する障子に納められるものである。
図1には、ブラインド内蔵型複層ガラス1の斜視図を示している。
【0020】
図1に示すように、ブラインド内蔵型複層ガラス1は、ガラス板10を有し内部にブラインド4を納めたガラス体2と、ブラインド4の開閉操作を行うための開閉機構を内部に備えた操作体3とが、横方向に連結して構成されている。操作体3には、上下方向にスライド操作自在な操作部44が設けられており、操作部44をスライド操作することにより、操作体3内の操作機構が動作し、操作機構と連動してブラインド4が開閉する。ブラインド4は、縦方向複数のスラット20が2つのラダーコード21で角度可変に支持されている。
【0021】
図2にはブラインド内蔵型複層ガラス1を保持した障子の縦断面図を、
図3にはブラインド内蔵型複層ガラス1を保持した障子の横断面図を、それぞれ示している。障子は、上框50と下框51及び左右の縦框52,52を方形状に框組みしてなる框体5内に、ブラインド内蔵型複層ガラス1を保持して構成されている。
【0022】
上框50は、室外側の金属上框50aと室内側の樹脂上框50bにより構成されており、内周面にはブラインド内蔵型複層ガラス1の外周縁部を保持するガラス収納溝50cが形成される。下框51は、室外側の金属下框51aと室内側の樹脂下框51bにより構成されており、内周面にはブラインド内蔵型複層ガラス1の外周縁部を保持するガラス収納溝51cが形成される。また、縦框52は、室外側の金属縦框52aと室内側の樹脂縦框52bにより構成されており、内周面にはブラインド内蔵型複層ガラス1の外周縁部を保持するガラス収納溝52cが形成される。
【0023】
ブラインド内蔵型複層ガラス1は、ガラス収納溝50c,51c,52cに納められるガラス押さえ部品53を介して外周縁部が挟持固定されている。ガラス押さえ部品53は、ゴム材料により断面略コ字状に形成され、室内外面がそれぞれブラインド内蔵型複層ガラス1の室内外面に圧接し、挟持固定している。
【0024】
ブラインド内蔵型複層ガラス1を構成するガラス体2は、2枚のガラス板10,10を室内外に対向配置し、封止部11によって両者を一体化すると共に、ガラス板10,10間に空間部12を形成している。
【0025】
空間部12の上辺には、断面略コ字状の上端部品25が長手方向に沿って設けられており、下辺には断面コ字状の下端部品26が長手方向に沿って設けられている。また、空間部12の左右縦辺には、それぞれ断面コ字状の縦端部部品27,27が長手方向に沿って設けられている。これらは、ガラス体2の強度向上を図ると共に、ブラインド4の四周周縁部を室内外から覆うことで、意匠性の向上を図るために設けられている。
【0026】
図2は、スラット20が全開の状態を表している。複数のスラット20は、いずれも同形状で同幅に形成されており、全開の際には水平に配置されている。ラダーコード21は、スラット20の幅方向に対向する一組の縦紐21a,21bと、一組の縦紐21a,21b間に渡される横紐21cとを有し、横紐21c上にスラット20が載置され支持されている。
【0027】
ラダーコード21の上端部は、スラット20の長手方向に延びる回転軸22と共に回転する回転部品23に固定されている。回転軸22及び回転部品23は、上端部品25内に収納されていて、ガラス体2の外方からは見えないように配置されている。
【0028】
回転部品23は、一方向に長い扁平状に形成されており、それぞれ断面弧状をなす上面部23aと下面部23bを有し、これらの両端部には、それぞれ一組の縦紐21a,21bが固定されてこれらを支持する支持端部23c,23dが設けられている。回転部品23は、両支持端部23c,23dが離隔する一方向の幅がスラット20の幅と略同幅であり、該一方向と直交する方向の幅がスラット20の幅よりも小さくなるように形成されている。
【0029】
図2に示されているように、ラダーコード21の下端部には、長手方向に沿ってボトムレール24が設けられている。ボトムレール24は、スラット20の幅と略同幅に形成されており、下面側に一組の縦紐21a,21bがそれぞれ固定される。ボトムレール24が設けられていることにより、ラダーコード21の下部に重量を付加し、上端部で支持された一組の縦紐21a,21bにテンションを与えることにより、一組の縦紐21a,21bを安定的に上下逆方向に変位させ、下端部のスラット20まで安定的に開閉させることができる。
【0030】
図3に示すように、操作体3の縦框52に保持される外周縁部は、ガラス体2と略同厚となるように形成されている。これにより、ガラス体2と操作体3とを一体化してなるブラインド内蔵複層ガラス1を、通常のガラス体と同様に、框体5内に納めることができる。
【0031】
図4には、ブラインド4の上辺一側部付近拡大斜視図を示している。この図に示すように、回転軸22の一端部には、ガラス体2の外部における操作に伴い発生する回転動作を回転軸22に伝達する操作連動体30が設けられている。操作連動体30は、2枚のガラス板10,10間の空間部12内に配置され、一部がガラス体2の外部に露出する。
【0032】
回転部品23は、ラダーコード21の上端部に配置されるピース状の部品として構成されており、回転軸22が挿入されてこれと一体化する軸挿入部23eがスラット20の長手方向に沿って形成されている。また、前述のように、回転部品23の両端部には、一組の縦紐21a、21bを支持する支持端部23c,23dが設けられており、回転部品23でラダーコード21を吊り下げた状態としている。
【0033】
図5には、ブラインド内蔵複層ガラス1の上辺と縦辺とでなすコーナー部付近拡大正面図を示している。この図には、ブラインド内蔵複層ガラス1の内部構造も示している。ブラインド4の回転軸22は、長手方向中間部に前述の回転部品23が取付けられており、長手方向端部は操作連動体30に納められている。
【0034】
操作連動体30は、2枚のガラス板10,10間の空間部12内に配置される収納部31と、空間部12の外部に露出する外部連結部34とを有している。回転軸22は、操作連動体30の内部で、回転軸22と共に回転する連動回転部33に連結されている。連動回転部33は、回転軸22の一端部側を構成しており、外部連結部34において操作機構40と連係されている。
【0035】
操作機構40は、ブラインド4の開閉操作を行う操作部44を備えている。操作部44は、上下にスライド操作自在となっており、これと連動して線状の連係具45が上下方向に移動する。連係具45の上端部は、上下方向の直線運動を、水平方向を軸とした回転運動に変換する回転変換部46に連結されている。回転変換部46は、回転軸22と同軸のウォームギアと、該ウォームギアと噛み合うウォームホイールによって構成することができ、操作部44の上下動によりウォームホイールが回転するように、連係具45がウォームホイールに取付けられる。回転変換部46により、操作部44における上下方向の直線運動を、回転軸22の回転方向の運動に変換することができ、これにより回転軸22が回転することで、前述のようにスラット20を開閉させることができる。
【0036】
操作連動体30の構成につき、より詳細に説明する。
図6には、操作連動体30の断面図を示している。前述のように、操作連動体30は、2枚のガラス板10,10間の空間部12内に配置される収納部31と、空間部12から外部に露出する外部連結部34とを有している。収納部31は、回転軸22を納めることができるように、中空状となっている。
【0037】
収納部31内は、密閉壁部39によって、2枚のガラス板10,10間の空間部12と連通する軸挿通部32と、外気と連通する領域との2つの空間に隔てられている。密閉壁部39内の軸挿通部32には、2枚のガラス板10,10間の空間部12側に開口した空間部側開口部32aと、外気と連通する側に開口した外気側開口部32bとが形成されている。空間部側開口部32aには、回転軸22の端部が挿通されている。
【0038】
回転軸22を構成する連動回転部33は、密閉壁部39の外気側開口部32bから外気と連通する領域側に引き出されており、さらに外部連結部34まで伸びている。外部連結部34において、連動回転部33は操作機構40の回転変換部46と連係される。
【0039】
2枚のガラス板10,10間の空間部12は、断熱性向上及び結露防止のために、外気から密閉されている。空間部12の周囲部分は、封止部11によって密閉されているが、中空状の操作連動体30内においては、2枚のガラス板10,10間の空間部12と連通する領域を、外気と連通する領域から密閉する必要がある。そのために、外気側開口部32bと回転軸22を構成する連動回転部33の周面との間の隙間を、シール部品35によって密閉している。
【0040】
シール部品35は、軟質のゴム材料により、周方向に同形状を有する略チューブ状に形成されている。シール部品35の一方側の端部には、密閉壁部39に対して固定される取付部35cが形成され、取付部35cから他方側の端部に向かって、次第に径が小さくなる外径部35dが形成され、その内径側には、回転軸22を構成する連動回転部33の周面を全周に渡って覆い、圧着される軸被覆部35aが形成されている。軸被覆部35aの一方側の端部は、密閉壁部39の外気側開口部32bと連動回転部33の周面との間の隙間を全周に渡って塞ぐ密閉部35bとなっている。
【0041】
シール部品35の密閉部35bにより、外気側開口部32bは、回転軸22を構成する連動回転部33の周面との隙間が塞がれ、さらにそこから連動回転部33の周面が長手方向に沿って軸被覆部35aによって連続的に覆われているので、2枚のガラス板10,10間の空間部12と連通する軸挿通部32の領域と、外気と連通する領域とが密閉される。シール部品35は、取付部35cが回転不能に固定されているので、回転軸22を回転させると、密閉部35bと軸被覆部35a及び外径部35dがねじれるように回転するが、回転軸22の回転範囲において、シール部品35がねじれても気密性が低下することはなく、2枚のガラス板10,10間の空間部12の気密性は維持される。
【0042】
このように、ガラス板2間の空間部12に操作連動体30を設け、操作連動体30には、空間部12と連通し回転軸22を挿通する軸挿通部32と、外気側と連通する領域とを有する収納部31を形成し、収納部31内に回転軸22を引き込み、空間部12の外側に引き出される外部連結部34から回転軸22を構成する連動回転部33を取り出し、操作機構40と連動させることによって、操作機構40を、操作連動体30を介して空間部12内のブラインド4側に物理的に連係させることができ、ブラインド4の開閉に磁石を不要とすることができる。
【0043】
また、シール部品35が回転軸22を外気側に取り出す部分を密閉しているので、2枚のガラス板10,10間の空間部12における密閉性を確保することができ、ブラインド4の開閉に磁石を用いない構成において、ブラインド内蔵複層ガラス1における断熱性及び結露防止の機能を損ねないようにすることができる。
【0044】
ガラス体2における気密性を向上させるために、ガラス体2の外周面には、封止部11の外側にさらにシール材38が塗布される。
図7には、操作連動体30付近のガラス体2の斜視図を示している。この図に示すように、操作連動体30のうち、外部連結部34が2枚のガラス板10,10間の領域から外方に突出する露出部となっている。その上端部には、ガラス板10の上辺の外周面と直交する方向を向いた受け面部37が、下端部には、ガラス板10の縦辺の外周面と直交する方向を向いた受け面部37が、それぞれ形成されている。
【0045】
図7において破線で示すように、シール材38は、操作連動体30の受け面部37を端部として、操作連動体30の外面と略連続状となるように塗布される。これにより、シール材38の塗布を容易にすると共に、操作連動体30の部分を含むガラス体2の全周に渡って、気密性を高くすることができる。
【0046】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の適用は本実施形態には限られず、その技術的思想の範囲内において様々に適用されうるものである。