特許第6028265号(P6028265)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6028265
(24)【登録日】2016年10月28日
(45)【発行日】2016年11月16日
(54)【発明の名称】車両のルーフ構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/06 20060101AFI20161107BHJP
【FI】
   B62D25/06 Z
   B62D25/06 C
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-92283(P2013-92283)
(22)【出願日】2013年4月25日
(65)【公開番号】特開2014-213712(P2014-213712A)
(43)【公開日】2014年11月17日
【審査請求日】2015年8月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】特許業務法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 稔
(72)【発明者】
【氏名】龍田 美乃
(72)【発明者】
【氏名】都筑 昌平
【審査官】 田合 弘幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−116420(JP,A)
【文献】 特開2000−309283(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 25/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンルーフを有する車種、あるいはサンルーフを有しない車種において使用される車両のルーフ構造であって、
前記サンルーフを有しない車種のルーフパネルには、車両前後方向に延びるビードが車幅方向に複数本形成されており、
前記ビードは、サンルーフ用開口部に相当する位置の車両前後方向における端縁近傍で、車両前後方向に分割されており、
前記ルーフパネルには、車幅方向に延びてこのルーフパネルを補強する複数のルーフリインフォースが設けられており、
一本のルーフリインフォースが、車両前後方向に分割された前記ビードのうち、前記サンルーフ用開口部に相当する位置に形成されているビードの端部と重なる位置に配置されており、
別のルーフリインフォースが、車両前後方向に分割された前記ビードのうち、前記サンルーフ用開口部に相当する位置から離れた位置に形成されているビードの端部と重なる位置に配置されており、
前記ビードが車両前後方向に分割されることで前記ビードが存在しない平板状となっている平坦部を車両前後方向から挟むように、前記一本のルーフリインフォースと前記別のルーフリインフォースとが配置されていることを特徴とする車両のルーフ構造。
【請求項2】
サンルーフを有する車種、あるいはサンルーフを有しない車種において使用される車両のルーフ構造であって、
前記サンルーフを有しない車種のルーフパネルには、車両前後方向に延びるビードが車幅方向に複数本形成されており、
前記ビードは、サンルーフ用開口部に相当する位置の車両前後方向における端縁近傍で、車両前後方向に分割されており、
前記ルーフパネルには、車幅方向に延びてこのルーフパネルを補強する複数のルーフリインフォースが設けられており、
一本のルーフリインフォースの前側の端部が、車両前後方向に分割された前記ビードのうち、前記サンルーフ用開口部に相当する位置に形成されているビードの端部と重なる位置に配置されており、
前記一本のルーフリインフォースの後側の端部が、車両前後方向に分割された前記ビードのうち、前記サンルーフ用開口部に相当する位置から離れた位置に形成されているビードの端部と重なる位置に配置されていることを特徴とする車両のルーフ構造。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に係る車両のルーフ構造であって、
車両前後方向に分割された前記ビードのうち、前記サンルーフ用開口部に相当する位置から離れた位置に形成されているビードのいくつかが、他の該ビードと比べて、車両前後方向に短い長さ寸法で形成されていることを特徴とする車両のルーフ構造。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に係る車両のルーフ構造であって、
車両前後方向に分割された前記ビードのうち、前記サンルーフ用開口部に相当する位置から離れた位置に形成されているビードの車両前後方向の途中の所定箇所が、該ビードの他の部分と比べて、高さ寸法が低くなるように形成されていることを特徴とする車両のルーフ構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のルーフ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の車両のルーフ構造を図10に示す。
車両100は従来の車両のルーフ構造110を有する。この車両のルーフ構造110のルーフパネル111には、車両前後方向に延びるビード112が、車幅方向に並んで複数本設けられている(特許文献1参照)。
さらに、各々のビード112は切れ目113の位置で車両前後方向における途中位置で途切れている。この切れ目113は、車両100の停車中にルーフパネル111とビード112との間に溜まった雨水が、フロントガラスに流下してしまうのを防止するためのものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−309283
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した従来の車両のルーフ構造110では、前記ルーフパネル111をそのままサンルーフ仕様に改造するのは難しい。
即ち、前記ルーフパネル111をサンルーフ仕様とする場合、サンルーフ用開口部に相当する位置にはビード112を形成せずに平板状とし、この平板状部分を後工程で打ち抜いてサンルーフ用開口部を形成する必要がある。
したがって、サンルーフ仕様のルーフパネルの場合、ビード112の部分と平板部分とを成形する必要がある。このため、サンルーフを有しないルーフパネル111のプレス型とサンルーフ仕様のルーフパネルのプレス型とは異なるものとなる。即ち、プレス型を2種類準備する必要があり、製造コストがアップするという問題点があった。
【0005】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであり、本発明の課題は、共通のプレス型でサンルーフを有する車種、あるいはサンルーフを有しない車種に使用されるルーフパネルを成形できるようにすることで、製造コストを低減させることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題は、次の発明によって解決される。
請求項1に係る発明は、サンルーフを有する車種、あるいはサンルーフを有しない車種において使用される車両のルーフ構造であって、前記サンルーフを有しない車種のルーフパネルには、車両前後方向に延びるビードが車幅方向に複数本形成されており、前記ビードは、サンルーフ用開口部に相当する位置の車両前後方向における端縁近傍で、車両前後方向に分割されており、前記ルーフパネルには、車幅方向に延びてこのルーフパネルを補強する複数のルーフリインフォースが設けられており、一本のルーフリインフォースが、車両前後方向に分割された前記ビードのうち、前記サンルーフ用開口部に相当する位置に形成されているビードの端部と重なる位置に配置されており、別のルーフリインフォースが、車両前後方向に分割された前記ビードのうち、前記サンルーフ用開口部に相当する位置から離れた位置に形成されているビードの端部と重なる位置に配置されており、前記ビードが車両前後方向に分割されることで前記ビードが存在しない平板状となっている平坦部を車両前後方向から挟むように、前記一本のルーフリインフォースと前記別のルーフリインフォースとが配置されていることを特徴とする。
【0007】
本発明によると、サンルーフを有しない車種のルーフパネルに形成されているビードは、サンルーフ用開口部に相当する位置の車両前後方向における端縁近傍で分割されている。つまり、サンルーフ用開口部に相当する位置の外周縁は、ビードが形成されていない平板状となっている。このため、このルーフパネルのサンルーフ用開口部に相当する位置を後工程で打ち抜くことができる。これにより、サンルーフを有しない車種のルーフパネルのサンルーフ用開口部に相当する位置を、後工程で打ち抜くことで、サンルーフを有する車種のルーフパネルを成形することができるようになる。したがって、一台のプレス型でサンルーフを有する車種、あるいはサンルーフを有しない車種に使用されるルーフパネルを成形できるようになり、経済的である。
さらに、ルーフパネルにおいて、ビードが分割されている箇所、つまり、サンルーフ用開口部に相当する位置の車両前後方向における端縁近傍の強度を、2つのルーフリインフォースにより補うことができる。これにより、ルーフパネルの強度をアップさせ、積雪性能を向上させることができる。
【0009】
請求項2に係る発明によると、サンルーフを有する車種、あるいはサンルーフを有しない車種において使用される車両のルーフ構造であって、前記サンルーフを有しない車種のルーフパネルには、車両前後方向に延びるビードが車幅方向に複数本形成されており、前記ビードは、サンルーフ用開口部に相当する位置の車両前後方向における端縁近傍で、車両前後方向に分割されており、前記ルーフパネルには、車幅方向に延びてこのルーフパネルを補強する複数のルーフリインフォースが設けられており、一本のルーフリインフォースの前側の端部が、車両前後方向に分割された前記ビードのうち、前記サンルーフ用開口部に相当する位置に形成されているビードの端部と重なる位置に配置されており、前記一本のルーフリインフォースの後側の端部が、車両前後方向に分割された前記ビードのうち、前記サンルーフ用開口部に相当する位置から離れた位置に形成されているビードの端部と重なる位置に配置されていることを特徴とする。
本発明によると、サンルーフを有しない車種に使用されるルーフパネルにおいて、ビードが分割されている箇所、つまり、サンルーフ用開口部に相当する位置の車両前後方向における端縁近傍の強度を、単一のルーフリインフォースにより補うことができる。これにより、積雪性能を向上させつつ、製造コストおよび部品点数を低減することができるようになる。
【0010】
請求項3に係る発明によると、車両前後方向に分割されたビードのうち、サンルーフ用開口部に相当する位置から離れた位置に形成されているビードのいくつかが、他の該ビードと比べて、車両前後方向に短い長さ寸法で形成されていることを特徴とする。
ルーフパネルは車両前後方向に延びるビードの働きで、ビードがない場合と比較して車両前後方向における強度が向上している。このため、車両走行時に振動を受けるとビードが形成されている範囲が一体で上下に移動して振動する。
本発明によると、車両前後方向に分割されたビードのうち、サンルーフ用開口部に相当する位置から離れた位置に形成されているビードの長さ寸法を変えることにより、一体で上下に移動して振動する範囲が変わり、振動が少なくなるように調整できるようになる。
【0011】
請求項4に係る発明によると、車両前後方向に分割されたビードのうち、サンルーフ用開口部に相当する位置から離れた位置に形成されているビードの車両前後方向の途中の所定箇所が、該ビードの他の部分と比べて、高さ寸法が低くなるように形成されていることを特徴とする。
本発明によると、車両前後方向に分割されたビードのうち、サンルーフ用開口部に相当する位置から離れた位置に形成されているビードの所定箇所の高さ寸法を低くすることで、その箇所の強度を低下させ、該ビードが設けられている範囲の強度に変化をつけることができる。これにより、一体で上下に移動して振動する範囲が変わり、振動が少なくなるように調整できるようになる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、共通のプレス型でサンルーフを有する車種、あるいはサンルーフを有しない車種に使用されるルーフパネルを成形できるようになり、製造コストを低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態1に係る車両のルーフ構造を備える車両全体の模式斜視図である。
図2】実施形態1に係る車両のルーフ構造を備える車両の模式断面図(図1のII−II断面矢視図)である。
図3】実施形態1に係る車両のルーフ構造のサンルーフを有しない車種のルーフパネルを表す模式平面図である。
図4】実施形態1に係る車両のルーフ構造のサンルーフを有する車種のルーフパネルを表す模式平面図である。
図5】実施形態1に係る車両のルーフ構造の模式断面図(図3のV−V断面矢視図)である。
図6】実施形態1に係る車両のルーフ構造の模式断面図(図3のVI−VI断面矢視図)(A図)、及びルーフリインフォースの斜視図(B図)である。
図7】本発明の実施形態2に係る車両のルーフ構造の模式断面図である。
図8】本発明の実施形態3に係る車両のルーフ構造のサンルーフを有しない車種のルーフパネルの模式平面図である。
図9】本発明の実施形態4に係る車両のルーフ構造のサンルーフを有しない車種のルーフパネルの模式平面図(A図)、及び模式断面図(図9(A図)のB−B断面矢視図)(B図)である。
図10】従来の車両のルーフ構造を備える車両の模式斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[実施形態1]
以下、図1から図6に基づいて本発明の実施形態1に係る車両のルーフ構造について説明する。
ここで、図中の前後左右、及び上下は、本実施形態に係るルーフ構造を備える車両の前後左右、及び上下に対応している。
【0015】
<ルーフ構造の概要について>
本実施形態に係る車両のルーフ構造20は、ワンボックス車両10におけるルーフ構造である。
ワンボックス車両10のルーフ部分は、図1に示すように、前後に長い角形のルーフパネル21と、そのルーフパネル21の車幅方向両側(左右両側)で前後方向に延びる中空閉断面状のルーフサイドレール30と、図3等に示すように、左右のルーフサイドレール30間に架け渡されてルーフパネル21を下方から支える複数本の梁状のルーフリインフォース40とから構成されている。そして、前記ルーフサイドレール30が、図1に示すように、ボディ15の前後左右、及び中央部分の支柱であるピラー16a,16b,16c,16dによって支持されている。
ルーフサイドレール30は、図2に示すように、アウタパネル32とインナパネル34とブラケット35,36とから構成されている。アウタパネル32とインナパネル34及びブラケット35の車幅方向左右両側には、フランジ部32f,34f,35fが形成されている。アウタパネル32のフランジ部32fは、図2に示すように、ブラケット35のフランジ部35fの一方の面と接合されており、インナパネル34のフランジ部34fは、ブラケット35のフランジ部35fの他方の面と接合されている。つまり、ブラケット35のフランジ部35fは、アウタパネル32のフランジ部32fと、インナパネル34のフランジ部34fとにより挟まれるように接合されている。このようにして、両パネル32,34のフランジ部32f,34f及びブラケット35のフランジ部35fが接合されることで、ルーフサイドレール30は中空閉断面状に形成される。ブラケット36は、ブラケット35の途中箇所と接合し、ブラケット35の剛性を高めている。
なお、図2には右側のルーフサイドレール30のみが記載されているが、左側のルーフサイドレール30も左側のルーフサイドレール30と等しい構成で左右対称に形成されている。
【0016】
<ルーフパネル21について>
ルーフパネル21は、図2、及び図6(A)の横断面図に示すように、車幅方向中央位置が最も高くなるように緩やかに上方に湾曲しており、そのルーフパネル21の車幅方向左右両側の端縁にフランジ部22が形成されている。そして、ルーフパネル21のフランジ部22が、図2に示すように、ルーフリインフォース40の支持板部42と共に、あるいは単独でルーフサイドレール30のフランジ部32f,34f,35fに溶接等により固定されている。ルーフパネル21はプレス成形品であり、そのルーフパネル21のパネル面に、図1図3等に示すように、車両前後方向に延びるプレスラインであるビード23が車幅方向に並んで複数本(図1では4本)形成されている。ビード23は、ルーフパネル21の表面側(上面側)に突出する凸形になるように形成されている。
【0017】
<非サンルーフ仕様のルーフパネル21Nについて>
まず、サンルーフを有しない車種のルーフパネル(以降、非サンルーフ仕様のルーフパネルという。)21Nについて説明する。
非サンルーフ仕様のルーフパネル21Nは、サンルーフ用開口部27(271,272)を有しないルーフパネルである。非サンルーフ仕様のルーフパネル21Nには、図3に示すように、車両前側のサンルーフ用開口部271に相当する位置Xと、車両後側のサンルーフ用開口部272に相当する位置Yとが設定されている。
非サンルーフ仕様のルーフパネル21Nにおいて、ビード23は、図3図5に示すように、サンルーフ用開口部272に相当する位置Yの後端縁Yrで、車両前後方向に分割されるように形成されている。即ち、非サンルーフ仕様のルーフパネル21Nにおいて、ビード23は、車両前後方向に2つに分割された構造をしている。つまり、図5に示すように、サンルーフ用開口部272に相当する位置Yの後端縁Yrの近傍には、ビード23が存在しない平板状である平坦部26が形成されていることになる。平坦部26は、ルーフパネル21Nのビード23以外の部分と同様に、車幅方向中央位置が最も高くなるように緩やかに上方に湾曲した形状をしている。サンルーフ用開口部272に相当する位置Yの後端縁Yrよりも前側部分に形成されている前側ビード24(241,242,243,244)は、上記したように、サンルーフ用開口部272に相当する位置Yに形成されている。また、サンルーフ用開口部272に相当する位置Yの後端縁Yrよりも後側部分に形成されている後側ビード25(251,252,253,254)は、サンルーフ用開口部272に相当する位置Yから離れた位置、即ち、ルーフパネル21Nの本体部29に設けられている。
即ち、前側ビード24が、本発明に掛かる車両前後方向に分割されたビードのうち、サンルーフ用開口部に相当する位置に形成されているビードに相当する。また、後側ビード25が、本発明に係る車両前後方向に分割されたビードのうち、サンルーフ用開口部に相当する位置から離れた位置に形成されているビードに相当する。
ここで、ルーフパネル21には、例えば、厚み寸法が約0.7mmの鋼板が使用される。
【0018】
<ルーフリインフォース40について>
ルーフリインフォース40は、図2図5図6(A)等に示すように、ルーフパネル21Nの裏面(下面)に配置されている。ルーフリインフォース40は、上記したように、車幅方向に延び、左右のルーフサイドレール30間に架け渡されて、ルーフパネル21Nを下方から支える複数本の梁状構造である(図3参照)。ルーフリインフォース40は、ルーフパネル21Nを補強してルーフ部分の強度を高めることができる。これにより、例えば、ルーフパネル21Nの積雪性能を向上させることができる。ルーフリインフォース40は、図5図6(B)に示すように、横断面形状が略U字形の溝状に形成されており、その溝の開口部分の前後の両端縁にフランジ部48が折り曲げ成形されている。フランジ部48は、略平坦に形成されており、その上面がルーフパネル21Nに対して接着される接着面となっている。
さらに、ルーフリインフォース40の長手方向両端(車幅方向左右の両端)には、図2図6(A)に示すように、ルーフパネル21Nのフランジ部22と共にルーフサイドレール30のフランジ部32f,34f,35fに固定される支持板部42が形成されている。
ここで、ルーフリインフォース40には、例えば、厚み寸法が約0.9mmの鋼板が使用される。
なお、ルーフリインフォース40のフランジ部48は、例えば、合成ゴムを主成分とした接着剤によってルーフパネル21Nに対して接着される。
【0019】
ルーフリインフォース40は、図3に示すように、車両前後方向に適宜の間隔をあけて複数本(図3では6本)設けられている。このルーフリインフォース401、402、403、404、405、406のうち、ルーフリインフォース404及び405は、非サンルーフ仕様のルーフパネル21Nにおいて、ビード23が分割されて平板状となっている箇所(平坦部26)を挟むように、車両前後方向に配置されている。つまり、サンルーフ用開口部272に相当する位置Yの後端縁Yrを挟むように、車両前後方向に配置されている。このうち、ルーフリインフォース404は、図5に示すように、前側ビード24の後端部に対して、ルーフパネル21Nの裏面から上下にラップするように接着されている。この時、ルーフリインフォース404の後側のフランジ部48rは、平坦部26に位置するように配置される。また、ルーフリインフォース405は、図5に示すように、後側ビード25の前端部に対して、ルーフパネル21Nの裏面から上下にラップするように接着されている。この時、ルーフリインフォース405の前側のフランジ部48fは、平坦部26に位置するように配置される。
即ち、ルーフリインフォース404が、本発明に係る一本のルーフリインフォースに相当し、ルーフリインフォース405が、本発明に係る別のルーフリインフォースに相当する。
【0020】
<ルーフ部分の組付けについて>
非サンルーフ仕様のルーフパネル21Nを用いる場合のルーフ部分の組付けについて説明する。
先ず、ルーフリインフォース40の車両前後方向両端のフランジ部48に、接着剤が塗布された状態で、ルーフリインフォース40がルーフパネル21Nに対して接着される。この時、ルーフリインフォース404の後側のフランジ部48r及びルーフリインフォース405の前側のフランジ部48fは、上記したように、ルーフパネル21Nの平坦部26に合わせられる。つまり、ルーフリインフォース404の後側のフランジ部48r及びルーフリインフォース405の前側のフランジ部48fの全面が、ルーフパネル21の平坦部26に面接着されることになる(図5参照)。これに対して、他方側のフランジ部、即ち、ルーフリインフォース404の前側のフランジ部48f及びルーフリインフォース405の後側のフランジ部48rは、図6(A)に示すように、ビード23が設けられている範囲の凹凸形状の凹部分を接着面28として、車幅方向に間隔をあけて接着されることになる。そして、図6(A)に示すように、ルーフリインフォース40の長手方向両側に位置する支持板部42がルーフパネル21Nの左右のフランジ部22に位置合わせされた状態で、そのルーフリインフォース40が前記ルーフパネル21Nに対して押圧される。
そして、全てのルーフリインフォース401,402,403,404,405,406がルーフパネル21Nの所定位置に接着された状態で、前記ルーフパネル21Nのフランジ部22が、図2に示すように、ルーフリインフォース40の支持板部42と共に、あるいは単独でルーフサイドレール30のフランジ部32f,34f,35fに溶接等により固定される。
ルーフパネル21Nを、このように車両10に組付けることで、非サンルーフ仕様のルーフパネル21Nを用いる場合のルーフ部分の組付けができる。
【0021】
<サンルーフ仕様のルーフパネル21Sについて>
次に、サンルーフを有する車種のルーフパネル(以降、サンルーフ仕様のルーフパネルという。)21Sについて説明する。サンルーフ仕様のルーフパネル21Sには、サンルーフ用開口部27(271,272)が形成されている。
サンルーフ仕様のルーフパネル21Sは、上記したように、非サンルーフ仕様のルーフパネル21Nから、サンルーフ用開口部271,272に相当する位置X,Yをプレス抜き等で打ち抜くことにより成形される。この時、図4に示すように、サンルーフ用開口部272に相当する位置Yの鋼板と共に、前側ビード24も除かれることになる。つまり、サンルーフ仕様のルーフパネル21Sでは、後側ビード25のみがビード23として機能することになる。
このようにして成形されたサンルーフ仕様のルーフパネル21Sを、上記した非サンルーフ仕様のルーフパネル21Nの組付け時と同様に組付けることで、サンルーフ仕様のルーフパネル21Sを車両10のルーフ部分に組付けることができる。
ルーフリインフォース40は、図4に示すように、サンルーフ仕様のルーフパネル21Sに対しても、フランジ部48を接着面として接着されている。なお、サンルーフ仕様のルーフパネル21Sをルーフ部分に組付ける場合、図4に示すように、ルーフリインフォース401,403,404は、配置されない。したがって、ルーフリインフォース401,403,404によって、サンルーフ用開口部271,272の使用が妨げられることはない。
また、サンルーフ仕様のルーフパネル21Sのサンルーフ用開口部271,272には、適宜のサンルーフ窓(図示省略)が嵌め込まれて使用される。
【0022】
<本実施形態に係る車両のルーフ構造20の長所について>
本実施形態に係る車両のルーフ構造20によると、非サンルーフ仕様のルーフパネル21Nに設けられているビード23は、サンルーフ用開口部272に相当する位置Yの後端縁Yrで車両前後方向に分割されている。分割されたビード23のうち、車両前側に形成されている前側ビード24は、サンルーフ用開口部27に相当する位置Yに形成されている。そして、分割されたビード23のうち、車両後側に形成されている後側ビード25は、位置Yから離れた位置に形成されている。つまり、前側ビード24と後側ビード25との間、即ち、サンルーフ用開口部272に相当する位置Yの後端縁Yrの近傍には、上記したように、ビード23が形成されていない平板状の平坦部26が存在することになる。そうすると、非サンルーフ仕様のルーフパネル21Nから、サンルーフ用開口部27(271,272)に相当する位置X,Yをプレス抜きで打ち抜いた場合でも、ビード23が途中で切断されることがなく、したがって、サンルーフ用開口部27の断面が上下に波打った形状になることはない。このため、非サンルーフ仕様のルーフパネル21Nから、サンルーフ用開口部27に相当する位置X,Yを打ち抜くことで、サンルーフ仕様のルーフパネル21Sを成形することができるようになる。したがって、一台のプレス型で、ビード23(後側ビード25)を有するサンルーフ仕様のルーフパネル21Sと、ビード23(前側ビード24及び後側ビード25)を有する非サンルーフ仕様のルーフパネル21Nとを成形することができるようになり、経済的である。
また、非サンルーフ仕様のルーフパネル21Nにおいて、前側ビード24と後側ビード25との間に位置する平板状の平坦部26、即ち、サンルーフ用開口部272に相当する位置Yの後端縁Yrの近傍の強度を、2つのルーフリインフォース40(404,405)により補うことができる。これにより、非サンルーフ仕様のルーフパネル21Nの強度を確保することができるようになる。したがって、例えば、ルーフ構造20の積雪性能をアップさせることができるようになる。
【0023】
[実施形態2]
以下、図7に基づいて、本発明の実施形態2に係る車両のルーフ構造50の説明を行う。
本実施形態に係る車両のルーフ構造50は、実施形態1に係る車両のルーフ構造20のルーフリインフォース404,405を改造したものであり、その他の構造については、実施形態1に係る車両のルーフ構造20と同様である。このため、実施形態1に係る車両のルーフ構造20と同一部材については同一番号を付して説明を省略する。
本実施形態に係る車両のルーフ構造50は、ルーフリインフォース504を備えている。ルーフリインフォース504は、図7に示すように、非サンルーフ仕様のルーフパネル21Nのサンルーフ用開口部272に相当する位置Yの後端縁Yrを車両前後方向に跨ぐように設けられている。即ち、ルーフリインフォース504の前側のフランジ部58fは、前側ビード24の後端部に対して、ルーフパネル21Nの裏面から上下にラップするように接着されている。また、ルーフリインフォース504の後側のフランジ部58rは、後側ビード25の前端部に対して、ルーフパネル21Nの裏面から上下にラップするように接着されている。つまり、ルーフリインフォース504の溝部分は、非サンルーフ仕様のルーフパネル21Nの平坦部26と略対面するように位置していることになる。
本実施形態に係る車両のルーフ構造50では、非サンルーフ仕様のルーフパネル21Nのサンルーフ用開口部272に相当する位置Yの後端縁Yrの近傍(平坦部26)の強度を、単一のルーフリインフォース504により補うことができるようになる。このため、積雪性能を向上させつつ、製造コストおよび部品点数を低減することができるようになる。
即ち、ルーフリインフォース504が、本発明に係る一本のルーフリインフォースに相当する。
【0024】
[実施形態3]
以下、図8に基づいて、本発明の実施形態3に係る車両のルーフ構造60の説明を行う。
本実施形態に係る車両のルーフ構造60は、実施形態1に係る車両のルーフ構造20の後側ビード25を改造したものであり、その他の構造については、実施形態1に係る車両のルーフ構造20と同様である。このため、実施形態1に係る車両のルーフ構造20と同一部材については同一番号を付して説明を省略する。
実施形態3に係る車両のルーフ構造60では、ビード23は、サンルーフ用開口部272に相当する位置Yの後端縁Yr近傍で、前記位置Yの後端縁Yrよりも前側に位置する前側ビード24と、前記位置Yの後端縁Yrよりも後側に位置する後側ビード65(651,652,653,654)とに、車両前後方向に分割されている。車両のルーフ構造60では、図8に示すように、後側ビード65のうち車幅方向左右の両端側に位置する後側ビード651,654の車両前後方向の長さ寸法が、他の後側ビード652,653と比べて短く設定されている。
ルーフパネル21Nは、車両前後方向に延びるビード23の働きで、ビードがないルーフパネルと比較して、車両前後方向における強度が向上している。このため、車両走行時等に生じる振動を受けると、ビード23が形成されている範囲が一体で上下に移動して振動し、振動騒音を発生させてしまうことがある。
本実施形態に係る車両のルーフ構造60では、ルーフパネル21Nに対して後側ビード65の設けられている範囲が、車幅方向中央では通常通りであるのに対して、車幅方向両側では小さくなっている。即ち、ルーフパネル21Nの車幅方向中央周辺は、通常通りの範囲で上下に移動して振動するのに対して、ルーフパネル21Nの車幅方向両側周辺では、比較的小さな範囲で上下に移動して振動するようになる。つまり、後側ビード25が設けられている範囲の振動に、車幅方向で差が生じ、一体で上下に移動して振動する範囲が変わることになる。これにより、後側ビード25が設けられている範囲の振動が少なくなるように調整できるようになる。
なお、実施形態3に係る後側ビード65は、サンルーフ仕様のルーフパネル21Sにおいても同様に構成される。
【0025】
[実施形態4]
以下、図9に基づいて、本発明の実施形態4に係る車両のルーフ構造70の説明を行う。
本実施形態に係る車両のルーフ構造70は、実施形態1に係る車両のルーフ構造20の後側ビード25を改造したものであり、その他の構造については、実施形態1に係る車両のルーフ構造20と同様である。このため、実施形態1に係る車両のルーフ構造20と同一部材については同一番号を付して説明を省略する。
実施形態4に係る車両のルーフ構造70では、図9(A)に示すように、ビード23は、サンルーフ用開口部272に相当する位置Yの後端縁Yr近傍で、前記位置Yの後端縁Yrよりも前側に位置する前側ビード24と、前記位置Yの後端縁Yrよりも後側に位置する後側ビード75(751,752,753,754)とに、車両前後方向に分割されている。この後側ビード75には、凹部76が形成されている。この凹部76は、図9(B)に示すように、後側ビード75の他の部分と比べて、ルーフパネル21Nからの車両上下方向の高さ寸法が低くなるように設定されている。凹部76は、図9(A)に示すように、後側ビード75の車両前後方向(長手方向)の略中間に位置している。凹部76が形成されている位置の裏面(下面)には、ルーフリインフォース406が接着されている。このルーフリインフォース406により、凹部76が形成されている範囲の積雪性能が補われている。
凹部76が設けられている範囲は、後側ビード75の他の部分が設けられている範囲と比べて、上下に波打った形状が緩やかになるため、強度の低い構造となる。そうすると、後側ビード75が設けられている範囲において、凹部76が設けられている範囲と、それ以外の範囲とでは、振動特性が異なるようになる。つまり、後側ビード75が設けられている範囲において、一体で上下に移動して振動する範囲が変わることになる。これにより、後側ビード25が設けられている範囲の振動が少なくなるように調整できるようになる。
なお、後側ビード75のルーフパネル21Nからの高さ寸法が、例えば、約5.0mmに設定されているのに対して、凹部76では約2.0mmに設定されている。
なお、実施形態4に係る後側ビード75は、サンルーフ仕様のルーフパネル21Sにおいても同様に構成される。
【0026】
<変形例>
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更が可能である。
例えば、実施形態1では、ルーフリインフォース404の後側のフランジ部48rと、ルーフリインフォース405の前側のフランジ部48fとが、非サンルーフ仕様のルーフパネル21Nの平坦部26に対して接着される構成とした。しかし、ルーフリインフォース404の後側のフランジ部48rと、ルーフリインフォース405の前側のフランジ部48fとが、平坦部26に対して接着されず、図6(A)に示すように、ビード23の凹凸形状の凹部分に対して車幅方向に間隔をあけて接着される構造でも良い。この構造では、ルーフリインフォース404の前後両側のフランジ部48f,48rと、ルーフリインフォース405の前後両側のフランジ部48f,48rとが、図6(A)に示すように接着されていることになる。
また、実施形態3では、図8に示すように、車幅方向左右の両端側に位置する後側ビード651,654の車両前後方向の長さ寸法が、他の後側ビード652,653と比べて短く設定されている例を示した。しかし、後側ビード65のうち、652,653が短く設定される構造であっても何ら問題は無い。また、長さ寸法が短く設定される後側ビードの数は、全ての後側ビードの長さ寸法が一定にならない限り、適宜変更可能である。
また、実施形態4では、図9(B)に示すように、凹部76が、車両前後方向の1箇所だけに形成されている例を示した。しかし、凹部76を形成する箇所は1箇所だけに限定されるものではなく、複数箇所であっても良い。
【0027】
さらに、実施形態1〜4では、非サンルーフ仕様のルーフパネル21Nにおいて、ビード23が、ルーフパネル21Nの後端周辺から、サンルーフ用開口部272に相当する位置Yまで延びている構成を例示した(図3参照)。この構成では、ビード23は、位置Yの後端縁Yr近傍の1箇所で車両前後方向に2つに分割されることになる。しかし、サンルーフ用開口部271,272に相当する位置X,Yの車両前後方向の端縁近傍で、ビード23が分割されてさえいれば、例えば、ビード23がサンルーフ用開口部271に相当する位置Xまで延びている構成であっても良い。この場合、ビード23は、位置Xの後端縁の近傍,位置Yの前端縁の近傍,位置Yの後端縁Yrの近傍で、車両前後方向に4つに分割されることになる。
また、ルーフリインフォース40を断面略U字形の溝状に形成し、溝開口部分の前後方向両端縁にフランジ部48を設ける例を示したが、ルーフリインフォース40の断面形状は略U字形に限定する必要はなく、例えば、断面略T字形として、その上部をフランジ部に設定する構成でも良い。
また、ビード23の本数、及び、ルーフリインフォース40の本数等は適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0028】
Y サンルーフ用開口部に相当する位置
Yr サンルーフ用開口部に相当する位置の後端縁
10 車両
20 車両のルーフ構造
21 ルーフパネル
21N 非サンルーフ仕様のルーフパネル(サンルーフを有しない車種のルーフパネル)
23 ビード
24 前側ビード(車両前後方向に分割されたビードのうち、サンルーフ用開口部に相当する位置に形成されているビード)
25 後側ビード(車両前後方向に分割されたビードのうち、サンルーフ用開口部に相当する位置から離れた位置に形成されているビード)
272 サンルーフ用開口部
40 ルーフリインフォース

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10