特許第6028266号(P6028266)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6028266インプリント装置およびインプリント方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6028266
(24)【登録日】2016年10月28日
(45)【発行日】2016年11月16日
(54)【発明の名称】インプリント装置およびインプリント方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 59/02 20060101AFI20161107BHJP
   H01L 21/027 20060101ALI20161107BHJP
【FI】
   B29C59/02 ZZNM
   H01L21/30 502D
【請求項の数】13
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-558710(P2013-558710)
(86)(22)【出願日】2013年2月13日
(86)【国際出願番号】JP2013053425
(87)【国際公開番号】WO2013122109
(87)【国際公開日】20130822
【審査請求日】2015年12月16日
(31)【優先権主張番号】特願2012-30014(P2012-30014)
(32)【優先日】2012年2月14日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】504097823
【氏名又は名称】SCIVAX株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100131657
【弁理士】
【氏名又は名称】奥田 律次
(72)【発明者】
【氏名】河口 宏輔
(72)【発明者】
【氏名】田中 覚
【審査官】 井上 由美子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−155521(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/077386(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 57/00−59/18
H01L 21/027
H01L 21/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
型の成型パターンを被成形物に転写するためのインプリント装置であって、
前記型と前記被成形物を加圧するためのステージ及びカバーと、
前記ステージを挿入可能な穴を有し、前記ステージの外周を囲む枠体と、
前記ステージと前記カバーを接離方向に相対的に移動可能な第1移動手段と、
前記カバーと前記枠体を接離方向に相対的に移動可能な第2移動手段と、
前記カバー、前記型又は前記被成形物のいずれかと、前記ステージと、前記枠体と、で構成される減圧室を減圧し、前記型と前記被成形物の間の流体を除去する第1減圧手段と、
前記カバーと前記型又は前記被成形物との間に形成される空間の流体を除去する第2減圧手段と、
を具備することを特徴とするインプリント装置。
【請求項2】
前記枠体は、前記型と前記被成形物の間に流体を噴射する流体噴射手段を具備することを特徴とする請求項1記載のインプリント装置。
【請求項3】
前記第1減圧手段と前記第2減圧手段は、前記空間と前記減圧室とを連通する連通流路を有することを特徴とする請求項1又は2記載のインプリント装置。
【請求項4】
前記空間を密閉するための空間用密閉手段を具備することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のインプリント装置。
【請求項5】
前記減圧室を密閉するための減圧室用密閉手段を具備することを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載のインプリント装置。
【請求項6】
前記枠体は、前記被成形物を挟んで対向する位置に前記流体噴射手段を有することを特徴とする請求項3記載のインプリント装置。
【請求項7】
前記被成形物の温度を調節する温調手段を具備することを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載のインプリント装置。
【請求項8】
前記被成形物に光を照射する光照射手段を具備することを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載のインプリント装置。
【請求項9】
前記被成形物を供給するための送りロールと、前記成型パターンの転写された被成形物を回収するための回収ロールと、を有する搬送手段を具備することを特徴とする請求項1ないし8のいずれかに記載のインプリント装置。
【請求項10】
ステージとカバーの間で型と被成形物を加圧し、前記型の成型パターンを前記被成形物に転写するためのインプリント方法であって、
前記ステージ又は前記カバー上に前記型及び前記被成形物を配置する配置工程と、
前記ステージを挿入可能な穴を有し前記ステージの外周を囲む枠体と、前記カバーとで、前記型又は前記被成形物のうちカバー側にあるものを挾持する挾持工程と、
前記ステージと前記カバーを相対的に離間する離間工程と、
前記カバーと前記型又は前記被成形物との間に形成される空間の流体を除去する第1除去工程と、
前記型と前記被成形物との間の流体を除去する第2除去工程と、
前記型と前記被成形物を密着させる密着工程と、
前記型の成型パターンを前記被成形物に転写する転写工程と、
を有することを特徴とするインプリント方法。
【請求項11】
前記ステージと前記枠体を相対的に移動して前記型と前記被成形物との間に隙間を形成し、前記枠体に設けられた流体噴射手段から前記隙間に流体を噴射する離型工程を有することを特徴とする請求項10記載のインプリント方法。
【請求項12】
前記転写工程は、前記被成形物をガラス転移温度以上に加熱した後、前記被成形物を加圧することを特徴とする請求項10又は11記載のインプリント方法。
【請求項13】
前記転写工程は、前記型と前記被成形物を加圧した後、前記被成形物に光を照射することを特徴とする請求項10又は11記載のインプリント方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、型の微細パターンを被成形物に転写するためのインプリント装置およびインプリント方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、マイクロオーダ、ナノオーダの微細パターンを形成する方法として、ナノインプリント技術がある。これは、樹脂等の被成形物に微細パターンを有する型を加圧し、熱や光を利用して当該パターンを被成形物に転写するものである(例えば、特許文献1参照)。また、転写面積の拡大を図るために、可撓性のある型や被成形物を流体圧で加圧するインプリント装置も考えられている(例えば、特許文献2参照)。
【0003】
【特許文献1】国際公開番号WO2004/062886
【特許文献2】特開2009−154393
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のインプリント装置においては、減圧室を形成するのに円筒形の蛇腹を用いていたため、四角いステージを用いる場合、大きい蛇腹が必要となり装置が大型化するという問題があった。
【0005】
また、従来の装置においては、型と被成形物の間の流体を確実に除去するために、型と被成形物を離間するための離間手段を別途設ける必要があったが、これにより更に装置が大型化すると共にコストが増大するという問題があった。
【0006】
そこで本発明では、装置を小型化できると共に、コストを下げることができるインプリント装置およびインプリント方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明のインプリント装置は、型の成型パターンを被成形物に転写するためのものであって、前記型と前記被成形物を加圧するためのステージ及びカバーと、前記ステージを挿入可能な穴を有し、前記ステージの外周を囲む枠体と、前記ステージと前記カバーを接離方向に相対的に移動可能な第1移動手段と、前記カバーと前記枠体を接離方向に相対的に移動可能な第2移動手段と、前記カバー、前記型又は前記被成形物のいずれかと、前記ステージと、前記枠体と、で構成される減圧室を減圧し、前記型と前記被成形物の間の流体を除去する第1減圧手段と、前記カバーと前記型又は前記被成形物との間に形成される空間の流体を除去する第2減圧手段と、を具備することを特徴とする。
【0008】
この場合、前記枠体は、前記型と前記被成形物の間に流体を噴射する流体噴射手段を具備する方が好ましい。また、前記第1減圧手段と前記第2減圧手段は、前記空間と前記減圧室とを連通する連通流路を有するようにしても良い。また、前記空間を密閉するための空間用密閉手段や前記減圧室を密閉するための減圧室用密閉手段を具備する方が好ましい。また、前記枠体は、前記被成形物を挟んで対向する位置に前記流体噴射手段を有する方が好ましい。また、前記被成形物の温度を調節する温調手段を具備しても良い。また、前記被成形物に光を照射する光照射手段を具備しても良い。更に、前記被成形物を供給するための送りロールと、前記成型パターンの転写された被成形物を回収するための回収ロールと、を有する搬送手段を設けても良い。
【0009】
また、本発明のインプリント方法は、ステージとカバーの間で前記型と前記被成形物を加圧し、前記型の成型パターンを前記被成形物に転写するためのものであって、前記ステージ又は前記カバー上に前記型及び前記被成形物を配置する配置工程と、前記ステージを挿入可能な穴を有し前記ステージの外周を囲む枠体と、前記カバーとで、前記型又は前記被成形物のうちカバー側にあるものを挾持する挾持工程と、前記ステージと前記カバーを相対的に離間する離間工程と、前記カバーと前記型又は前記被成形物との間に形成される空間の流体を除去する第1除去工程と、前記型と前記被成形物との間の流体を除去する第2除去工程と、前記型と前記被成形物を密着させる密着工程と、前記型の成型パターンを前記被成形物に転写する転写工程と、を有することを特徴とする。
【0010】
この場合、前記ステージと前記枠体を相対的に移動して前記型と前記被成形物との間に隙間を形成し、前記枠体に設けられた流体噴射手段から前記隙間に流体を噴射する離型工程を有する方が好ましい。また、前記転写工程は、前記被成形物をガラス転移温度以上に加熱した後、前記被成形物を加圧する熱インプリントや、前記型と前記被成形物を加圧した後、前記被成形物に光を照射する光インプリントを用いることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明のインプリント装置及びインプリント方法は、従来用いられていた蛇腹の代わりに、ステージを挿入可能な穴を有すると共にステージの外周を囲む枠体を用い、当該枠体をステージ及びカバーに対して相対的に移動させて減圧室を構成するので、装置を小型化することができる。また、カバーと枠体によって型又は被成形物のいずれか一方を挾持し、ステージとカバーを相対的に移動することにより、ステージ、枠体およびカバーが離間手段を兼ねるので、更に装置を小型化し、コストを下げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明のインプリント装置を示す一部断面図である。
図2】本発明のインプリント装置を示す一部断面図である。
図3】本発明のインプリント装置を示す一部断面図である。
図4図1のI−I線矢印方向を示す平面図である。
図5】本発明のインプリント装置を示す一部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のインプリント装置は、図1〜3に示すように、型1の成型パターンを被成形物2に転写するためのものであって、型1と被成形物2を加圧するためのステージ32及びカバー33と、ステージ32を挿入可能な穴を有し、ステージ32の周囲を囲む枠体43と、ステージ32とカバー33を接離方向に相対的に移動可能な第1移動手段(図示せず)と、カバー33と枠体43とを接離方向に相対的に移動可能な第2移動手段46と、カバー33、型1又は被成形物2のいずれかと、ステージ32と、枠体43と、で構成される減圧室40を減圧し、型1と被成形物2の間の流体を除去する第1減圧手段45と、カバー33と型1又は被成形物2との間に形成される空間の流体を除去する第2減圧手段35と、で主に構成される。
【0014】
なお、本明細書中で、型1とは、例えば「ニッケル等の金属」、「セラミックス」、「ガラス状カーボン等の炭素素材」、「シリコン」などから形成されており、その一端面(成型面)に所定の成型パターンを有するものを指す。この成型パターンは、その成型面に精密機械加工を施すことで形成することができる。また、シリコン基板等にエッチング等の半導体微細加工技術によって形成したり、このシリコン基板等の表面に電気鋳造(エレクトロフォーミング)法、例えばニッケルメッキ法によって金属メッキを施し、この金属メッキ層を剥離して形成したりすることもできる。また、インプリント技術を用いて作製した樹脂製の型を用いることも可能である。この場合、型は、被成形物の被成形面に対して可撓性のあるフィルム状に形成しても良い。もちろん型1は、成型パターンを転写できるものであれば材料やその製造方法が特に限定されるものではない。
【0015】
また、型1に形成される成型パターンは、凹凸からなる幾何学的な形状のみならず、例えば所定の表面粗さを有する鏡面状態の転写のように所定の表面状態を転写するためのものも含む。また、成型パターンは、平面方向の凸部の幅や凹部の幅の最小寸法が100μm以下、10μm以下、2μm以下、1μm以下、100nm以下、10nm以下等種々の大きさに形成される。また、深さ方向の寸法も、10nm以上、100nm以上、200nm以上、500nm以上、1μm以上、10μm以上、100μm以上等種々の大きさに形成される。
【0016】
また、型の成型パターンが形成されている面(成形面)の形状は平面に限定されるものではない。例えば、レンズの曲面にモスアイ構造を転写するための型のように、成形面が曲面等の立体形状に形成されるものであっても良い。
【0017】
また、被成形物2とは、樹脂、無機化合物又は金属からなる基板やフィルム、あるいは、基板やフィルム上に樹脂、無機化合物又は金属等からなる被成形層21を形成したものを意味する。被成形物2に用いる樹脂としては、例えば、光硬化性樹脂、熱硬化性樹脂、あるいは熱可塑性樹脂がある。
【0018】
光硬化性樹脂又は熱硬化性樹脂としては、エポキシド含有化合物類、(メタ)アクリル酸エステル化合物類、ビニルエーテル化合物類、ビスアリルナジイミド化合物類のようにビニル基・アリル基等の不飽和炭化水素基含有化合物類等を用いることができる。この場合、熱的に重合するために重合反応性基含有化合物類を単独で使用することも可能であるし、熱硬化性を向上させるために熱反応性の開始剤を添加して使用することも可能である。更に光反応性の開始剤を添加して光照射により重合反応を進行させて成型パターンを形成できるものでもよい。熱反応性のラジカル開始剤としては有機過酸化物、アゾ化合物が好適に使用でき、光反応性のラジカル開始剤としてはアセトフェノン誘導体、ベンゾフェノン誘導体、ベンゾインエーテル誘導体、キサントン誘導体等が好適に使用できる。また、反応性モノマーは無溶剤で使用しても良いし、溶媒に溶解して塗布後に脱溶媒して使用しても良い。
【0019】
熱可塑性樹脂としては、環状オレフィン開環重合/水素添加体(COP)や環状オレフィン共重合体(COC)等の環状オレフィン系樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ビニルエーテル樹脂、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)やポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素樹脂、ポリスチレン、ポリイミド系樹脂、ポリエステル系樹脂等を用いることができる。
【0020】
なお、被成形物2は、可撓性のあるフィルム状に形成したものや、シリコン等の無機化合物又は金属からなる基板上に層状に形成したものを用いても良い。
【0021】
また、図1においては、ステージ32側に型1、カバー33側に被成形物2が配置されているが、ステージ32側に被成形物2、カバー33側に型1を配置しても構わない。
【0022】
カバー33は、ステージ32と共に型1と被成形物2を加圧するためのものである。また、カバー33は、枠体43と共に型1又は被成形物2を挾持することができるように、ステージ32よりも大きく形成される。なお、カバー33の材質は、インプリントプロセス中の成形条件に対し、耐圧性、耐熱性を有するものであればどのようなものでも良く、例えば、ステンレス鋼などの金属を用いることができる。また、カバー33に光照射部7を設ける場合には、図1に示すように、カバー33の一部にガラス等の透明部材31を配置しても良い。
【0023】
ステージ32は、カバー32と共に型1及び被成形物2を加圧するためのものである。ステージ32の型1又は被成形物2と接触する側の受圧面321は、十分に広くて円滑に形成される。この受圧面321は、支持する型1や被成形物2の形状に合わせて、平面状や曲面状に形成すれば良い。材質は、インプリントプロセス中の成形条件に対し、耐圧性、耐熱性を有するものであればどのようなものでも良く、例えば、ステンレス鋼などの金属を用いることができる。また、型1又は被成形物2をステージ32側から加熱する場合には、金属等の熱伝導性の高いものを用いる方が好ましい。また、型1又は被成形物2をカバー33側から加熱する場合には、ステージ32側に熱が逃げるのを防止するため熱伝導性の低いものを用いても良いが、加熱むらを防止するため、受圧面321は熱伝導性の高いもので構成する方が好ましい。また、光インプリントプロセスにおいて、光源をステージ32側に配置する場合には、ガラス等の透明な材料を用いれば良い。また、被成形物2に不要な転写跡が生じるのを防止するために、型1とステージ32を一体に形成しても良い。例えば従来は、パターンを電気鋳造によって形成した後、パターンの部分のみを切り出して用いているが、これを切り出さずにそのまま用いることができる。
【0024】
枠体43は、ステージ32の外周を囲むように配置されるもので、ステージ32を挿入可能な穴を有する筒状に形成すれば良い。このように形成することにより、図3に示すように、ステージ32に対して枠体43を相対的に移動して減圧室40を構成することができる。ここで減圧室40とは、型1と被成形物2の周りの雰囲気、特に型1と被成形物2の間の雰囲気を減圧するためのものである。これにより、型1と被成形物2、あるいはこれらとステージ32の間に存在する気体を除去することができ、型1と被成形物2を均一に押圧することができる。枠体43の材質は、インプリントプロセス中の成形条件に対し、耐圧性、耐熱性を有するものであればどのようなものでも良く、例えば、ステンレス鋼などの金属を用いることができる。
【0025】
また、減圧室40を確実に密閉するために、枠体43とステージ32の間や、枠体43と型1又は被成形物2との間を密接させるための減圧室用密閉手段44を更に具備しても良い。例えば、図1に示すように、減圧室用密閉手段44としてOリングを用意すると共に、枠体43のカバー33側端部にOリングの断面の直径より浅い凹状の溝を形成し、この溝にOリングを配置すれば良い。また、ステージ32の外周側(枠体43側)にOリングの断面の直径より浅い凹状の溝を形成し、この溝にOリングを配置すれば良い。もちろん、枠体43の内周側(ステージ32側)にOリングの断面の直径より浅い凹状の溝を形成し、この溝にOリングを配置しても構わない。
【0026】
第1移動手段は、図示しないが、カバー33とステージ32を近接又離間するものであればどのようなものでも良く、例えばステージ32を固定しておき、カバー33を油圧式又は空圧式のシリンダによって移動するものや、電気モータとボールねじによって移動するもの等を適用することができる。もちろん、カバー33を固定しておき、同様の機構によって、ステージ32を移動するようにしても良い。
【0027】
また、型1のパターンを被成形物2に転写するための圧力を第1移動手段によってカバー33とステージ32に加えても良いが、カバー33とステージ32を加圧するための加圧手段を別途設けるようにすることも可能である。この場合、油圧式又は空圧式のシリンダによって加圧するものや、電気モータとボールねじによって加圧するもの等を用いれば良い。
【0028】
また、第2移動手段46も、カバー33と枠体43を近接又離間するものであればどのようなものでも良く、例えば枠体43を油圧式又は空圧式のシリンダによって移動するものや、電気モータとボールねじによって移動するもの等を適用することができる。もちろん、同様の機構によって、カバー33を移動するようにしても良い。
【0029】
第1減圧手段45は、カバー33、型1又は被成形物2のいずれかと、ステージ32と、枠体43と、で構成される減圧室40を減圧し、少なくとも型1と被成形物2の間の流体を除去するもので、例えば、減圧室40に接続される減圧室用気体給排流路451と、減圧室用気体給排流路451を介して減圧室40内の気体を排気する第1減圧用ポンプ452とで構成すれば良い。また、減圧室用気体給排流路451には、適宜開閉弁を設けても良い。
【0030】
第2減圧手段35は、減圧室40を減圧する際に、カバー33と型1又は被成形物2との間にわずかに形成される空間と減圧室40との圧力差によって型1又は被成形物2が減圧室40側に撓むのを防止するためのものである。第2減圧手段35は、例えば、当該空間に接続される空間用気体給排流路351と、空間用気体給排流路351を介して空間内の気体を排気する第2減圧用ポンプ352とで構成すれば良い。また、空間用気体給排流路351には、適宜開閉弁を設けても良い。このようにすることにより、減圧室40を減圧する前に当該空間の流体を除去することができる。なお、図示しないが、第1減圧用ポンプ452と、空間用気体給排流路351と、減圧室用気体給排流路451と、を三方弁で接続し、第1減圧用ポンプを共通に利用することで、第2減圧用ポンプ352を省略することも可能である。
【0031】
なお、減圧室40を減圧する前に上記空間の流体を除去する方が好ましいが、当該空間と減圧室とを連通する連通流路を設けて、空間と減圧室の流体を同時に除去するようにしても良い。
【0032】
また、カバー33と型1又は被成形物2との間に形成される空間を確実に密閉するために、カバー33と型1又は被成形物2との間を密接させるための空間用密閉手段34を配置しても良い。例えば、図3に示すように、空間用密閉手段34としてOリングを用意すると共に、カバー33の枠体43と対向する部分にOリングの断面の直径より浅い凹状の溝を形成し、この溝にOリングを配置すれば良い。これにより、被成形物2をカバー33と枠体43とによって挟持し、カバー33と被成形物2とを密接させることができるので、空間を密閉することができる。
【0033】
また、本発明のインプリント装置は、図5に示すように、型1と被成形物2の間に気体等の流体を噴射する流体噴射手段6を枠体に設けても良い。これにより、被成形物2(又は型1)をカバー33と枠体43で挾持しながらカバー33をステージ32と離間させて、パターン転写後の密着している型1と被成形物2の端部に隙間を形成し、当該隙間に流体を噴射することで離型を行うことができる。
【0034】
流体噴射手段6は、例えば、枠体43の内周側の側壁に設けられ、型1と被成形物2の間に流体を噴射する噴射口61と、噴射口61から噴射する流体の流速を調節する流速調節手段(図示せず)と、噴射口61に流体を供給する離型用流体供給源62と、離型用流体供給源62の流体を噴射口61に流すための離型用流体供給流路63と、で主に構成される。
【0035】
噴射口61は、枠体43の内周側の側壁に沿って形成せれたスリット状に形成することができる。スリットの幅は型1と被成形物2の密着力等に応じて調節すれば良いが、例えば、0.2〜0.5mm幅のものを用いれば良い。また、被成形物2の端部に沿って適当な間隔で複数の孔が設けられたマルチノズルを用いることも可能である。噴射口61の角度は、型1と被成形物2の密着面方向かあるいは、当該密着面に対して平行に形成すれば良い。
【0036】
また、噴射口61は、少なくとも被成形物2を挟んで対向する2方向、好ましくは4方向に設ける方が良い。これにより、対向する位置から噴射された流体が型1と被成形物2の間の中央部で衝突する。すると、流体は速度を失って動圧から静圧に変わり、衝突部の静圧が被成形物2の上面の圧力よりも高くなるので、被成形物2を持ち上げる。こうして、噴出された高速流体のエネルギーは静圧に変換されるので、流体が壁面で生じる剥がれ、渦流、せん断力を瞬時に消滅させることで、被成形物2に転写されたパターンが損傷等を受けるのを防止することができる。
【0037】
流速調節手段は、噴射口61から噴射する流体の流速を調節できればどのようなものでも良いが、例えば、流速を圧力と噴出時間で調節するものを用いることができる。具体的には、アキュムレーターで0.2〜0.5MPaに畜圧された流体を50〜300msのパルスで噴出するように構成すれば良い。
【0038】
離型用流体供給源63は、気体を噴射口61に送る空気圧縮機や圧縮された気体を貯留するボンベ等を用いることができる。
【0039】
また、本発明のインプリント装置を熱インプリントプロセスに用いる場合には、図示しないが、被成形物2を加熱又は冷却することにより被成形物2の温度を調節する温調手段を更に具備する。温調手段は、被成形物2を直接的又は間接的に加熱する加熱手段や冷却する冷却手段を用いることができる。
【0040】
加熱手段は、型1と被成形物2のいずれか一方又は両方を、所定温度、例えば被成形物2のガラス転移温度以上又は溶融温度以上に加熱することができるものであればどのようなものでも良い。また、被成形物2をステージ32側から加熱するものでも、カバー33側から加熱するものでも良い。例えば、ステージ32内やカバー33内にヒータを設けて型1や被成形物2を加熱するものを用いることができる。また、加熱した液体や気体を用いて加熱することも可能である。
【0041】
冷却手段は、型1と被成形物2のいずれか一方又は両方を、所定温度、例えば被成形物2のガラス転移温度未満又は溶融温度未満に冷却することができるものであればどのようなものでも良い。また、被成形物2をステージ32側から冷却するものでも、カバー33側から冷却するものでも良い。例えば、ステージ32内やカバー33内に冷却用の水路を設けて型1や被成形物2を冷却するものを用いることができる。
【0042】
また、本発明のインプリント装置を光インプリントプロセスに用いる場合には、被成形物2に所定波長の電磁波を放射できる光源71を含む光照射部7を配置すれば良い。光照射部7は、図1に示すように、カバー33の内部に設けても良いし、ステージ32側に設けても良い。この場合、被成形物2の温度を適切な温度に調節するために、上述した温調手段を更に具備しても良い。
【0043】
また、図示しないが、被成形物2を本発明のインプリント装置に搬送する搬送手段を更に設けても良い。例えば、樹脂フィルム(被成形物)を供給するための送りロールと、成型パターンを転写された樹脂フィルムを回収するための回収ロールとをステージ32を挟んで配置する。これにより、連続的にパターンを転写することができる。
【0044】
次に、本発明のインプリント方法を、本発明のインプリント装置の動作と併せて説明する。本発明のインプリント方法は、ステージ32とカバー33の間で型1と被成形物2を加圧し、型1の成型パターンを被成形物2に転写するためのものであって、ステージ32又はカバー33上に型1及び被成形物2を配置する配置工程と、ステージ32を挿入可能な穴を有しステージ32の外周を囲む枠体43と、カバー33とで、型1又は被成形物2のうちカバー33側にあるものを挾持する挾持工程と、ステージ32とカバー33を相対的に離間する離間工程と、カバー33と型1又は被成形物2との間に形成される空間の流体を除去する第1除去工程と、型1と被成形物2との間の流体を除去する第2除去工程と、型1と被成形物2を密着させる密着工程と、型1の成型パターンを被成形物2に転写する転写工程と、で主に構成される。
【0045】
配置工程では、図1に示すように、ステージ32上に型1及び被成形物2を配置する。この際、ステージ32側に配置されるものは、ステージ32上で枠体43と重ならないように配置され、カバー33側に配置されるものは、枠体43とカバー33とで挾持してステージ32から離間できるように、少なくとも一部が枠体43と重なるように配置される。
【0046】
挾持工程では、図2に示すように、カバー33と枠体43を近接する方向に移動し、カバー33と枠体43とで、型1と被成形物2のうちカバー33側にあるもの(図2では被成形物2)を挾持する。
【0047】
離間工程では、図3に示すように、カバー33と枠体43によって型1又は被成形物2を挾持したまま、カバー33とステージ32を相対的に離間方向に移動する。これにより、型1と被成形物2の間に隙間を空け減圧室40を形成することができる。
【0048】
第1除去工程では、カバー33と型1又は被成形物2のうちカバー33側にあるもの(図3では被成形物2)との間に形成される空間の流体を除去し、型1又は被成形物2をカバー33に吸着させる。
【0049】
第2除去工程では、減圧室40を減圧し、離間工程で空けた型1と被成形物2との間に存在する流体を除去する。
【0050】
密着工程では、図2に示すように、カバー33とステージ32を相対的に近接方向に移動し、型1と被成形物2を密着させる。
【0051】
転写工程では、熱インプリント又は光インプリントを用いて、型1の成型パターンを被成形物2に転写する。熱インプリントにおいては、まず、加熱手段によって被成形物2をガラス転移温度以上に加熱した後、第1移動手段又は加圧手段によってカバー33とステージ32に力を加える。すると、型1と被成形物2が加圧され、成型パターンが被成形物2に転写される。次に、冷却手段によって被成形物2の温度をガラス転移温度未満に下げることにより、成型パターンが被成形物2に定着する。一方、光インプリントにおいては、必要に応じて、加熱手段によって被成形物2をガラス転移温度以上に加熱した後、第1移動手段又は加圧手段によってカバー33とステージ32に力を加える。すると、型1と被成形物2が加圧され、成型パターンが被成形物2に転写される。次に、光照射手段によって所定波長の光を被成形物2に照射すると、成型パターンが被成形物2に定着する。
【0052】
離型工程は、被成形物2から型1を離すことができればどのようなものでも良いが、例えば、図5に示すように、ステージ32と枠体43を相対的に移動させて密着している型1と被成形物2との間に隙間を形成する。次に、枠体43に設けられた流体噴射手段から当該隙間に流体を噴射する。これにより、速やかに型1と被成形物2を離型することができる。
【符号の説明】
【0053】
1 型
2 被成形物
6 流体噴射手段
7 光照射手段
32 ステージ
33 カバー
34 空間用密閉手段
35 第2減圧手段
40 減圧室
43 枠体
44 減圧室用密閉手段
45 第1減圧手段
46 第2移動手段
図1
図2
図3
図4
図5