(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
板状のアーム部と、前記アーム部の一端に設けられるストッパ部と、前記アーム部の他端に設けられ、車両本体又はドアの一方に回動可能に連結される連結部とを有するアームと、
前記車両本体又はドアの他方に取り付けられ、前記アーム部が摺動可能に挿通され、前記ストッパ部との当接によって前記ドアの全開位置を規定する保持部材と、
を備えるチェックリンク装置であって、
前記ストッパ部は、前記アーム部から一端側へと延出されると共に、該アーム部の板厚方向で一方側へと傾斜した段部と、
前記段部から一端側へとさらに延出された延出部と、
前記延出部に配置されると共に、前記アーム部の板厚方向で他方側へと延びることで、前記保持部材と当接する第1当接部と、
を有し、
前記第1当接部は、前記延出部から前記アーム部の板厚方向で前記他方側へと折り曲げて形成され、前記延出部から前記第1当接部への折曲部が、前記アーム部の板厚方向で前記他方側の面の延長線と交差する位置、又は前記延長線よりも前記段部側となる位置に設けられ、
前記延出部は、前記段部から一端側へとさらに延出された往部と、折返部によって前記往部の一端から前記アーム部の他端側へと延出される復部とを有し、
前記折曲部は、前記復部に設けられ、
前記往部には、前記アーム部よりも幅広に形成され、その板厚部分が前記保持部材に当接可能な第2当接部が設けられていることを特徴とするチェックリンク装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のようなチェックリンク装置は、車両に設ける際の組付公差や、車両が平坦な道や坂道に停車する場合等の停車姿勢、さらには、経年劣化等により、アームの一端に設けられたストッパ部が、該ストッパ部を受け止める保持部材に対して片当たりすることがある。片当たりとは、例えば、ストッパ部の当接面と保持部材とが互いに平行から外れた状態で当接する現象であり、その発生を完全に抑えることは難しいのが現状である。
【0006】
ここで、上記特許文献1のドアチェック装置の場合には、ストッパ手段の第1当接部がケースに対して片当たりして荷重を受けると、アーム部の本体との曲げ部に直接的に荷重が加わってしまい、第1当接部の前記曲げ部が変形して押し戻され、ストッパ手段として機能しなくなる可能性がある。また、第2当接部はアーム部を下方に延出してから上方に延出することで形成され、アーム部の上方に長く延びる形状であることから、ストッパ手段の第2当接部がケースに対して片当たりして荷重を受けると、第2当接部の根元部分が変形して押し戻され、ストッパ手段として機能しなくなる可能性がある。さらに、ストッパ手段の上下方向寸法が増大し、装置が大型化する懸念もある。
【0007】
本発明は、上記従来技術の課題を考慮してなされたものであり、アームのストッパ部と保持部材とが片当たりした場合であっても、ストッパ部の機能を損なうことを防止できるチェックリンク装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るチェックリンク装置は、板状のアーム部と、前記アーム部の一端に設けられるストッパ部と、前記アーム部の他端に設けられ、車両本体又はドアの一方に回動可能に連結される連結部とを有するアームと、前記車両本体又はドアの他方に取り付けられ、前記アーム部が摺動可能に挿通され、前記ストッパ部との当接によって前記ドアの全開位置を規定する保持部材とを備えるチェックリンク装置であって、前記ストッパ部は、前記アーム部から一端側へと延出されると共に、該アーム部の板厚方向で一方側へと傾斜した段部と、前記段部から一端側へとさらに延出された延出部と、前記延出部に配置されると共に、前記アーム部の板厚方向で他方側へと延びることで、前記保持部材と当接する第1当接部とを有することを特徴とする。
【0009】
このような構成によれば、アーム部の板厚方向で一方側へと傾斜した段部をアーム部から一端側へと延出形成し、保持部材との当接時にドアの開放時の荷重を受ける当接部を、第1当接部としてアーム部の板厚方向で他方側に延出させて形成したことにより、片当たりによる荷重方向に関わらずストッパ部が荷重を受けた際、アーム部の長手方向に対して、第1当接部の反対側には折り曲げて形成した当接部がないため、この当接部が他端部側に変形し、ストッパ部の保持部材との間でのドアの位置規制機能に影響が出ることがなく、ストッパ部としての機能を維持することができる。しかも、延出部に対する第1当接部の根元部分が、アーム部の板厚方向で他方側の面よりも段部側に位置していることから、アーム部がその長手方向に引き寄せられてストッパ部が保持部材に当接することで発生する荷重により、当該根元部分が変形することが有効に抑えられ、第1当接部のストッパとしての機能が損なわれることがない。
【0010】
前記第1当接部は、前記延出部から前記アーム部の板厚方向で前記他方側へと折り曲げて形成され、前記延出部から前記第1当接部への折曲部が、前記アーム部の板厚方向で前記他方側の面の延長線と交差する位置、又は前記延長線よりも前記段部側となる位置に設けられた構成としてもよい。そうすると、第1当接部の折曲部が、アーム部の他方側の面よりも段部側に位置していることから、折曲部が変形することが有効に抑えられ、第1当接部のストッパとしての機能が損なわれることを防止できる。
【0011】
前記延出部は、前記段部から一端側へとさらに延出された往部と、折返部によって前記往部の一端から前記アーム部の他端側へと延出される復部とを有し、前記折曲部は、前記復部に設けられた構成としてもよい。これにより、片当たりによる荷重方向に関わらずストッパ部が荷重を受けた際、折返部の変形が可能となっているため、第1当接部の折曲部の変形が抑制され、当該第1当接部の立脚姿勢が崩されることを防止できる。
【0012】
前記ストッパ部は、前記往部の一平面と前記復部の一平面とを密着させた密着部を有し、該密着部は、前記アーム部の板厚の範囲内に含まれる位置に設けられていてもよい。このように、アーム部から一体的に延在した往部の平面と、復部の平面とを密着させることで、ドアの開閉荷重を受けた際に往部と復部の間に生じる広がり方向の変形を軽減できるため、折曲部の変形を防止しつつ、折返部が過剰に変形されることを防止でき、ストッパ部の機能を長期に渡って維持することができる。
【0013】
前記往部には、前記アーム部よりも幅広に形成され、その板厚部分が前記保持部材に当接可能な第2当接部が設けられていてもよい。これにより、第2当接部は、その板厚面で荷重を受けるため、荷重による変形を生じにくく、しかも、第1当接部が当接する保持部材との当接時の荷重の方向が、第1当接部によって折曲部や折返部に作用する一方向ではなく、この一方向に直交する他方向となるため、当該第2当接部が受けた荷重が第1当接部に影響することが抑制され、第1当接部に変形を生じることもない。
【0014】
前記第1当接部と前記第2当接部とは、前記アーム部の長手方向での位置が一致してもよい。そうすると、第1当接部と第2当接部とが受ける荷重をより均等化させることができる。
【0015】
前記往部と復部とは、共に前記アーム部と略平行するように形成されていると、ストッパ部のアーム部の板厚方向での寸法を低減し、装置をコンパクトに構成することができる。
【0016】
前記ストッパ部は、樹脂材料で被覆されると、保持部材と当接した際に衝撃音が発生することを抑制できる。この際、当該チェックリンク装置では、上記のように第1当接部の変形が抑制されているため、荷重を受けた際に、ストッパ部で樹脂材料が剥がれることを防止することができ、その結果、ストッパ部の耐久性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、アーム部の板厚方向で一方側へと傾斜した段部をアーム部から一端側へと延出形成し、保持部材との当接時にドアの開放時の荷重を受ける当接部を、第1当接部としてアーム部の板厚方向で他方側に延出させて形成したことにより、片当たりによる荷重方向に関わらずストッパ部が荷重を受けた際、アーム部の長手方向に対して、第1当接部の反対側には折り曲げて形成した当接部がないため、この当接部が他端部側に変形し、ストッパ部の保持部材との間でのドアの位置規制機能に影響が出ることがなく、ストッパ部としての機能を維持することができる。しかも、延出部に対する第1当接部の根元部分が、アーム部の板厚方向で他方側の面よりも段部側に位置していることから、アーム部がその長手方向に引き寄せられてストッパ部が保持部材に当接することで発生する荷重により、当該根元部分が変形することが有効に抑えられ、第1当接部のストッパとしての機能が損なわれることがない。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係るチェックリンク装置について好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0020】
図1は、本発明の一実施形態に係るチェックリンク装置1の側面断面図である。
図2は、チェックリンク装置1を搭載した四輪自動車の要部を概念的に示す平面図であり、
図2(A)は、ドアDを閉じた状態での平面図であり、
図2(B)は、ドアDを開いた状態での平面図である。
【0021】
図1及び
図2に示すように、チェックリンク装置1は、保持部材10とアーム20とを備え、車両本体(車体)BとドアDとの間に配置される。本実施形態では、チェックリンク装置1が適用されるドアDとして、車両本体Bの前席右側ドアを例示している。ドアDは、前側の端部が車両本体BのドアヒンジHjに回動自在に支持され、ドアヒンジHjを回動中心として、
図2(A)に示す閉じた状態から
図2(B)に示す開いた状態に開閉可能である。
【0022】
保持部材10は、アーム20が長手方向に沿って摺動自在な状態で挿通され(
図6も参照)、アーム20の一端に設けられた後述するストッパ部20cとの当接によってドアDの全開位置(最大開位置)を規定するものである。
【0023】
本実施形態の場合、保持部材10は、ケース11及びカバープレート12を有し、これらケース11及びカバープレート12で形成される箱状の空間内にチェック機構14を保持している。ケース11及びカバープレート12は、例えば鋼板製である。カバープレート12は、ケース11に形成された係止爪11bによって当該ケース11に係止・固定され、ケース11が2本のボルト13によってドアパネルDPに取り付けられることで保持部材10はドアパネルDPに固定されている。
【0024】
アーム20が挿通される保持部材10の開口10aは、ケース11及びカバープレート12の中央に形成された開口11a、12aによって形成されている。保持部材10は、ケース11及びカバープレート12を用いた構造以外であっても勿論よく、例えば一体構造の箱状としてもよい。
【0025】
チェック機構14は、アーム20の上下両面に当接する一対の摺動体15、15と、各摺動体15をアーム20に向けて付勢する一対のコイルばね16、16とを有する。各摺動体15は、アーム20の被覆22に対する摩擦係数の小さい合成樹脂、例えば、ポリアセタール等によって成形されている。コイルばね16に代えて、ゴム等の弾性体を用いてもよい。
【0026】
図3は、チェックリンク装置1のアーム20の平面図であり、
図4は、アーム20のストッパ部20c及びその周辺部を拡大した斜視図である。
図5は、アーム20のストッパ部20c及びその周辺部の拡大図であり、
図5(A)は平面図、
図5(B)は側面図、
図5(C)は底面図、
図5(D)は正面図である。
【0027】
図1及び
図3〜
図5に示すように、アーム20は、板状の芯金21と、芯金21を覆う合成樹脂の被覆22とから構成され、平面視で長手方向に沿って僅かに湾曲した形状からなる板状部材である。アーム20には、板状で長尺なアーム部20aと、アーム部20aの一端に形成された連結部20bと、アーム部20aの他端に形成されたストッパ部20cとが設けられている。被覆22の素材としては、加工が容易で、高強度な合成樹脂が望ましく、例えば、ポリプロピレン、ナイロン、ABS樹脂、ポリアセタール等の熱可塑性樹脂が好適である。なお、
図4及び
図5では、芯金21の形状を明示するため、被覆22を2点鎖線で示している。
【0028】
図1及び
図3に示すように、連結部20bは、被覆22によって後述する開口21eを露出させないようにして、中央に連結孔20eが設けられている。
図1、
図4及び
図5に示すように、ストッパ部20cは、アーム部20a側の面が保持部材10(カバープレート12)と当接する平面の当接面Fcとなる。
【0029】
図1に示すように、アーム20は、一端の連結部20bが揺動ピンPにより、車両本体Bに固定されたブラケットBkに連結され、ドアパネルDPに形成したアーム挿通孔Haから挿通されるアーム部20aの他端のストッパ部20cが保持部材10を介してドアD内に配置される。
【0030】
図1に示すように、アーム20は、芯金21を覆う合成樹脂の厚さが長手方向に沿って変化するように被覆22がモールドされている。すなわち、被覆22は、アーム部20aの連結部20b側で厚さが一定であるが、中央に向かって次第に増加した後、中間の厚さが薄くなり(第1チェック部P
C1)、その後増加して一定の厚さとなり、再度ストッパ部20cの近傍(第2チェック部P
C2)で厚さが薄くなるように形成されている。
【0031】
図1、
図3〜
図5に示すように、アーム20を構成する芯金21は、長手方向に沿って僅かに湾曲した鋼板からなるアーム芯部(アーム部)21aと、アーム芯部21aの一端に形成される連結芯部(連結部)21bと、アーム芯部21aの他端に形成され、アーム芯部21aの幅方向及び板厚方向へ張り出したストッパ芯部(ストッパ部)21cとを有するT字形状に成形されている。
【0032】
アーム芯部21aの適宜個所には、樹脂孔21dが形成されている。樹脂孔21dに被覆22の樹脂が入り込むことで、アーム芯部21aと被覆22とが剥離し難くなっている。連結芯部21aには、一端の連結孔20eと対応する位置に連結孔20eよりも僅かに直径が大きい開口21eが形成されている。
【0033】
ここで、ストッパ部20cの構造について、主に
図4及び
図5を参照してより具体的に説明する。
【0034】
ストッパ部20cは、芯金21のストッパ芯部21cを被覆22で先端に向かって先細りする矩形テーパ形状にモールドして構成されており、被覆22のアーム部20a側の端面が保持部材10に対する当接面Fcを構成している。
【0035】
図4及び
図5に示すように、ストッパ芯部21cは、アーム芯部21aから一端側へと延出され、アーム芯部21aの板厚方向で一方側(本実施形態では下方側)へと傾斜した段部23aと、アーム芯部21aに対して略平行するように、段部23aから一端側へとさらに延出された往部23bと、往部23bの一端からアーム芯部21aの他端側に向かって折返部23cで折り返されて延出され、アーム芯部21aに対して略平行する復部23dと、アーム芯部21aの板厚方向で他方側(段部23a側とは反対側。本実施形態では上方側)へと復部23dから折り曲げられた第1当接部23eとを有する。換言すれば、ストッパ部20c(ストッパ芯部21c)は、段部23aから往部23b、折返部23c及び復部23dを延出形成した延出部24を有し、この延出部24に第1当接部23eを起立配置している。
【0036】
段部23aは、アーム芯部21aの一端をその長手方向から斜め下方に向かって延在させた傾斜部である(
図5(B)参照)。段部23aは、
図5(B)の側面視で、その上面がアーム芯部21aの板厚中心線Oに一致又は略一致する程度の位置まで傾斜しつつ延在している。
【0037】
往部23bは、段部23aの先端からアーム芯部21aと略平行するように延出しており、その上面が板厚中心線Oと略一致している(
図5(B)参照)。往部23bは、アーム芯部21aや段部23aよりも幅広に形成され(
図5(C)参照)、
図5(C)の底面視で先細りの台形状であり、その板厚部分が第2当接部23fを形成している(
図5(B)も参照)。
【0038】
復部23dは、折返部23cによって往部23bから反対方向へと折り返されてアーム芯部21aと略平行するように連結芯部21b方向へと延出されており、その下面が板厚中心線Oと略一致している。復部23dの下面と往部23bの上面とは互いに密着して密着部23gを形成している。復部23dは、往部23bと同様にアーム芯部21aや段部23aよりも幅広に形成され、
図5(A)の平面視で第1当接部23e側に向かって幅広となる台形状である。
【0039】
往部23bと復部23dとの間を折り返す折返部23cは、復部23dよりも外側に突出した往部23bの先端上面と復部23dの端面との間を溶接部Wによって接合することで形成されている(
図5(A)、
図5(B)及び
図5(D)参照)。折返部23cは、溶接による接合ではなく、一枚板を折返して形成したものであってもよい(例えば、
図8参照)。
【0040】
第1当接部23eは、根元部分が折曲部23hによって復部23dからアーム芯部21aの表面と略直交する上方に折り曲げられて延出した壁状部分であり、その一側面(連結芯部21b側の側面)が段部23aの上方に位置している(
図5(A)〜
図5(D)参照)。第1当接部23e及び折曲部23hは、往部23bや復部23dと同様にアーム芯部21aや段部23aよりも幅広に形成されている。第1当接部23eは、ドアDが全開位置まで開かれた際に、被覆22を介して保持部材10の開口10aの上縁部と当接し、そのドアDの開放時の荷重を受け止めるための部位である(
図5(A)及び
図5(B)参照)。
【0041】
折曲部23hは、アーム芯部21aの板厚方向で第1当接部23e側の面(本実施形態では上面)の延長線Lと接触する位置に設けられている。つまり、折曲部23hを形成する曲面を延長線Lが通過する。なお、折曲部23hは、例えば、段部23aの下方への傾斜を大きく設定した場合等には、延長線Lよりも段部23a側(本実施形態では下方側)にずれていてもよく、この場合には、延長線Lが第1当接部23eを通過することになる。従って、
図5(B)から明らかなように、往部23bと復部23dとの密着部23gも延長線Lより下方側(第1当接部23eの立脚方向とは反対側)に位置することになる。換言すれば、ストッパ芯部21cにおいて、密着部23gは、アーム芯部21aの板厚の範囲内(延長線Lと下面の延長線との間)に配置されている(
図5(B)参照)。勿論、段部23aの下方への傾斜を大きく設定した場合等には、密着部23gは、アーム芯部21aの下面の延長線と一致又は該延長線よりも下方に位置することになる。
【0042】
第2当接部23fは、往部23bの段部23aよりも幅方向に広がった部位の板厚部分で形成され、保持部材10に対して第1当接部23eよりも後方にオフセットした位置にある(
図5(B)及び
図5(C)参照)。第2当接部23fは、ドアDが全開位置まで開かれた際に、被覆22を介して保持部材10の開口10aの左右両縁部と当接し、荷重を受け止めるための部位である(
図5(C)参照)。
【0043】
図6は、ドアDの開閉に伴うチェックリンク装置1の保持部材10とアーム20との位置関係を示す平面図である。なお、
図6中の参照符号Chは、車両本体BのドアヒンジHjの中心を示す。
【0044】
先ず、
図1及び
図6中に実線で示すアーム20のように、チェックリンク装置1は、車両本体Bに対してドアDを閉じた場合、ドアDに固定された保持部材10において一対の摺動体15が、それぞれアーム20の上下面に摺接した状態で、揺動ピンP側に最も近い位置、つまりストッパ部20cが保持部材10から最も遠い位置に配置される。この際、アーム20は、車両本体Bの前後方向に沿って配置される。
【0045】
次に、
図6に実線で示す状態から、車両本体Bに対してドアDを開くと、チェックリンク装置1は、ドアDが開くのに伴ってアーム20を揺動ピンPの軸心回りに
図6において反時計回りに回転させ、このアーム20の回転に伴い、保持部材10がアーム20に沿ってストッパ部20c側に移動する。この間、一対の摺動体15は、一対のコイルばね16のばね力によってアーム20の上下面に摺接してアーム20に沿って移動しながら、アーム20の上下面形状に応じて一対のコイルばね16を適宜弾性変形させながら上下動する。
【0046】
このアーム20に沿った移動により、保持部材10が、アーム20の第1チェック部P
C1に至ると、一対のコイルばね16のばね力及び被覆22の窪み形状により、一対の摺動体15が第1チェック部P
C1から移動することが規制される。その結果、アーム20は、ドアDと共に車両本体Bに対して
図6に示す中間開位置Pmに停止させられる。このときのドアヒンジHjの中心Chに対するドアDの開き角度を、
図6に参照符号θ
1で示す。
【0047】
開き角度θ
1の状態からドアDがさらに開かれると、保持部材10が、アーム20の第2チェック部P
C2に到達する。これにより、チェックリンク装置1は、保持部材10のカバープレート12がアーム20のストッパ部20cに当接する。この状態においては、一対のコイルばね16のばね力及び被覆22の窪み形状により、一対の摺動体15が第2チェック部P
C2からアーム20の長手方向に移動することが規制される。その結果、アーム20は、ドアDと共に車両本体Bに対して中間開位置Pmよりも開いた
図6に示す全開位置Pfoに停止させられる。このときのドアヒンジHjの中心Chに対するドアDの開き角度を、
図6に参照符号θ
2で示す。
【0048】
このような全開位置Pfoにおいては、保持部材10のカバープレート12とアーム20のストッパ部20cの当接面Fcとが当接しているため、チェックリンク装置1は、車両本体Bに対してドアDが更に開かれることを阻止すると共に、車両本体Bに対してドアDを全開位置Pfoに保持することができる。
【0049】
一方、上述した全開位置PfoからドアDを閉じると、ドアDに固定された保持部材10が、一対の摺動体15を介してアーム20を揺動ピンPの軸心回りに
図6において時計回りに回転させながら、当該保持部材10はアーム20に沿ってブラケットBk側に移動する。この間、一対の摺動体15は、一対のコイルばね16のばね力によってアーム20の上下面に摺接してアーム20に沿って移動しつつ、アーム20の上下面形状に応じて一対のコイルばね16を適宜弾性変形させながらアーム20に対して上下動する。このアーム20に沿った移動により、保持部材10は、ドアDを開く場合と逆の動作で、第2チェック部P
C2から第1チェック部P
C1を経て最も揺動ピンP側に接近した位置に移動する。
【0050】
ところで、チェックリンク装置1は、度重なる使用による経年劣化等により、上記したドアDの開閉に際して保持部材10がアーム20のストッパ部20cに片当たりすることがある。上記した通り、特許文献1のドアチェック装置の場合には、ストッパ手段の第1当接部がケースに対して片当たりして荷重を受けると、アーム部の本体との曲げ部に直接的に荷重が加わってしまい、第1当接部の前記曲げ部が変形して押し戻され、ストッパ手段として機能しなくなる可能性があった。
【0051】
これに対して、本実施形態に係るチェックリンク装置1のストッパ部20cでは、実質的にドアDの開閉時の荷重を受け止める芯金21のストッパ芯部21cに、段部23aと、往部23b及び復部23dを含む延出部24と、第1当接部23eとを有して構成している。
【0052】
このように、アーム芯部21aの板厚方向で一方側へと傾斜した段部23aをアーム芯部21aから一端側へと延出形成し、さらに保持部材10との当接時にドアDの開放時の荷重を受ける第1当接部23eを、アーム芯部21aの板厚方向で他方側(
図5(B)では上方側)にのみ延出させて形成したことにより、片当たりによる荷重方向に関わらずストッパ部20cが荷重を受けた際、アーム芯部21aの長手方向に対して、第1当接部23eの反対側(
図5(B)では下方側)には折り曲げて形成した当接部(特許文献1の第2当接部に対応する当接部)がないため、この当接部が他端部側(ストッパ部20cの先端側)に変形し、ストッパ部20cの保持部材10との間でのドアDの位置規制機能に影響が出ることがなく、ストッパ部20cとしての機能を維持することができる。
【0053】
しかも、延出部24に対する第1当接部23eの根元部分(折曲部23h)が、アーム芯部21aの板厚方向で他方側(第1当接部23e側)の面よりも下側(段部23a側)に位置していることから、アーム芯部21aがその長手方向に引き寄せられてストッパ部20cが保持部材10に当接することで発生する荷重により、当該第1当接部23eの根元部分が変形することが有効に抑えられ、第1当接部23eのストッパとしての機能が損なわれることがない。
【0054】
ストッパ部20cでは、復部23dから第1当接部23eへの折曲部23hが、アーム芯部21a(アーム部20a)の板厚方向で他方側の面(
図5(B)では上面)の延長線Lと接触(交差)する位置、又は延長線Lよりも段部23a側(
図5(B)では下方側)となる位置に設けられているため、折曲部23hの変形を防止することができる。
【0055】
なお、本実施形態において、ストッパ部20cとして被覆22をモールドした構成を例示したが、ストッパ部20cに被覆22をモールドせず、ストッパ芯部21cを露出させた構成としてもよく、この場合には、ストッパ芯部21cがそのままストッパ部20cとして機能し、第1当接部23e及び第2当接部23fが保持部材10との当接面Fcとして機能することになり、以下の各変形例についても同様である。
【0056】
本実施形態では、延出部24が、段部23aから一端側へとさらに延出された往部23bと、折返部23cによって往部23bの一端からアーム芯部21aの他端側へと延出される復部23dとを有し、折曲部23hが復部23dに設けられている。これにより、片当たりによる荷重方向に関わらずストッパ部23cが荷重を受けた際、折返部23cの変形が可能となっているため、第1当接部23eの折曲部23hの変形が抑制され、当該第1当接部23eの立脚姿勢が崩されることを防止できる。さらに、ストッパ部20cを構成するストッパ芯部21cは、往部23bの一平面(
図5(B)では上面)と復部23dの一平面(
図5(B)では下面)とを密着させた密着部23gを有し、該密着部23gがアーム芯部21a(アーム部20a)の板厚の範囲内に含まれる位置に設けられている。このように、アーム芯部21aから一体的に延在した往部23bの平面と、復部23dの平面とを密着させることで、ドアDの開閉荷重を受けた際に往部23bと復部23dの間に生じる広がり方向の変形を軽減できるため、折曲部23hの変形を防止しつつ、折返部23cが過剰に変形されることを防止でき、ストッパ部20cの機能をより長期に渡って維持することができる。
【0057】
この際、往部23bと復部23dとが、共にアーム芯部21aと略平行するように形成されているため、ストッパ部20cのアーム芯部21aの板厚方向での寸法を低減し、装置をコンパクトに構成することができる。
【0058】
また、密着部23gは、アーム芯部21a(アーム部20a)の板厚中心の延長線、つまり板厚中心線O(
図5(B)参照)と一致又は略一致する位置に設けられている。すなわち、ストッパ芯部21cを折返部23cで折り返した往部23bと復部23dの密着部23gが、荷重の方向であるアーム芯部21a(アーム部20a)の板厚中心の方向に略一致しているため、ストッパ部20cが荷重を受けた際、ストッパ芯部21cには折返部23cでの折り返し方向(
図5(B)では上下方向)で略均等に力が加わり、局部的な変形を抑制でき、ドアDからの荷重に対してストッパ部20cの高強度化を図ることが可能となる。
【0059】
チェックリンク装置1では、ストッパ芯部21c(ストッパ部20c)の往部23bに、アーム芯部21a(アーム部20a)よりも幅広に形成され、その板厚部分が保持部材10に当接可能な第2当接部23fが設けられている。この第2当接部23fは、その板厚面で荷重を受けるため、荷重による変形を生じにくい。しかも、第2当接部23fは、第1当接部23eが当接する保持部材10の開口10aの上縁部や、この上縁部と反対側の下縁部ではなく開口10aの左右縁部に当接する位置、つまり保持部材10との当接時の荷重の方向が、第1当接部23eによって折曲部23hや折返部23cに作用する一方向(
図5(B)では上下方向)ではなく、この一方向に直交する他方向であるため、当該第2当接部23fが受けた荷重が第1当接部23eに影響することが抑制され、第1当接部23eに変形を生じることもない。
【0060】
上記では、第2当接部23fは、保持部材10に対して第1当接部23eよりも後方にオフセットした位置にある構成を例示したが(
図5(B)及び
図5(C)参照)、
図7(A)及び
図7(B)に示すように、第1当接部23eに対して、アーム芯部21a(アーム部20a)の長手方向での位置を一致させた第2当接部23iとして構成してもよい。そうすると、第1当接部23eと第2当接部23iとが受ける荷重をより均等化させることができる。
【0061】
なお、ストッパ芯部21cは、
図8に示すように、第2当接部23f(23i)を省略したストッパ芯部(ストッパ部)21fとして構成してもよい。ストッパ芯部21fでは、アーム芯部21aから、段部23a、往部23b、折返部23c、復部23d、折曲部23h及び第1当接部23eまでが、同一幅の一枚板を成形して構成されている。このようなストッパ芯部21fは、上記のストッパ芯部21cよりも小型化することができるという利点がある。
図8では、被覆22の図示を省略している。勿論、ストッパ芯部21fに被覆22を設けなくてもよい。また、
図8では、折返部23cを板状部材の折り返し成形によって構成した例を図示しているが、上記のように、溶接部Wによって接合した構成としてもよい。
【0062】
チェックリンク装置1において、ストッパ部20cでは、ストッパ芯部21c(21f)が被覆22で被覆されている。これにより、保持部材10と当接した際に衝撃音を発生することを抑制できる。この際、当該チェックリンク装置1では、上記のように第1当接部23eの変形が抑制されているため、荷重を受けた際に、ストッパ芯部21cから被覆22が剥がれることを防止することができ、その結果、ストッパ部20cの耐久性を向上させることができる。
【0063】
上記では、第1当接部23eを往部23bから折返部23cによって折り返した復部23dから折曲部23hによって折り曲げて形成した構成を例示したが(
図5参照)、
図9(A)及び
図9(B)に示すように、段部23aから延出された延出部27aの上面に第1当接部27bを接合して立設した構成としてもよい。すなわち、
図9(A)及び
図9(B)に示すように、この変形例に係るストッパ芯部26は、段部23aと、アーム芯部21aに対して略平行するように、段部23aから一端側へとさらに延出された延出部27aと、延出部27aの上面(アーム芯部21aの板厚方向で段部23aとは反対側の面)に溶接部Wによって根元部分が固着されて立脚した第1当接部27bと、第2当接部27fとを有する。なお、ストッパ芯部26についても、
図7に示す第2当接部23iを適用してもよく、また全ての板幅をアーム芯部21aの板幅と同一なものとしてもよい。
【0064】
このようなストッパ芯部26でも、上記のストッパ芯部21cと同様に、保持部材10との当接時にドアDの開放時の荷重を受ける第1当接部27bを、アーム芯部21aの板厚方向で他方側(
図9(B)では上方側)にのみ延出させて設置したことにより、アーム芯部21aの長手方向に対して、第1当接部27bの反対側(
図9(B)では下方側)には折り曲げて形成した当接部(特許文献1の第2当接部に対応する当接部)がないため、この当接部が他端部側(ストッパ部20cの先端側)に変形し、ストッパ部20cの保持部材10との間でのドアDの位置規制機能に影響が出ることがなく、ストッパ部20cとしての機能を維持することができる。また、延出部27aに対する第1当接部27bの根元部分が、アーム芯部21aの板厚方向で他方側(第1当接部27b側)の面よりも下側(段部23a側)に位置していることから、当該第1当接部27bの根元部分が変形することが有効に抑えられ、第1当接部27bのストッパとしての機能が損なわれることがない。しかも、ストッパ芯部26は、延出部27aの上面に第1当接部27bを固着した簡素な構成のため、製造コストが低いという利点もある。
【0065】
図10(A)〜
図10(D)に示すように、上記のストッパ芯部21cは、第2当接部23fを下方に向けて円弧状に湾曲させながら延出した第2当接部28として構成したストッパ芯部30として構成してもよい。第2当接部28は、往部23bの両側面から下方へと延出しつつ内側に湾曲した円弧状の円弧部29の端面に形成されている。このような、円弧部29を設けたことにより、ストッパ芯部30に対して被覆22をより強固に固着(モールド)させることができ、さらに、ストッパ部20cの剛性が高くなり、保持部材10に当接した際の衝撃をより確実に受け止めることができる。なお、第2当接部28を有する円弧部29は、
図5や
図7に示すストッパ芯部21cや、
図8に示すストッパ芯部21fに適用しても勿論よい。
【0066】
なお、本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【0067】
例えば、上記では、保持部材10をドアDに取り付け、連結部20bを車両本体Bに設けたブラケットBkに回動自在に支持させた構成を例示したが、上記とは逆に、保持部材10を車両本体Bに設け、連結部20bをドアDに回動自在に支持させた構成としてもよい。
【0068】
また、上記では、第1当接部23eが上方に配置されたチェックリンク装置1を例示したが、アーム20の向きは当該チェックリンク装置1が搭載される車種等によって適宜変更可能であり、第1当接部23eが下向きや水平横向き、さらには傾斜姿勢で使用されても勿論よい。