特許第6028294号(P6028294)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6028294
(24)【登録日】2016年10月28日
(45)【発行日】2016年11月16日
(54)【発明の名称】絵柄付き蓄光体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G09F 13/20 20060101AFI20161107BHJP
   F21V 9/16 20060101ALI20161107BHJP
   C03B 19/06 20060101ALI20161107BHJP
   G08B 5/00 20060101ALI20161107BHJP
【FI】
   G09F13/20 D
   F21V9/16 100
   C03B19/06 C
   G08B5/00 C
【請求項の数】7
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-502131(P2016-502131)
(86)(22)【出願日】2015年6月17日
(86)【国際出願番号】JP2015067450
(87)【国際公開番号】WO2015198938
(87)【国際公開日】20151230
【審査請求日】2016年1月19日
(31)【優先権主張番号】特願2014-127948(P2014-127948)
(32)【優先日】2014年6月23日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】509344618
【氏名又は名称】コドモエナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102048
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 光司
(74)【代理人】
【識別番号】100146503
【弁理士】
【氏名又は名称】高尾 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100171435
【弁理士】
【氏名又は名称】島田 尚子
(72)【発明者】
【氏名】岩本 泰典
【審査官】 砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−96879(JP,A)
【文献】 特開2012−87035(JP,A)
【文献】 特開2004−175603(JP,A)
【文献】 特開2000−281382(JP,A)
【文献】 特開2008−116626(JP,A)
【文献】 特開2006−285880(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09F 7/00− 7/22
G09F 13/00−13/46
C03B 19/06
C09K 11/00
F21S 2/00−19/00
F21V 1/00−15/04
G08B 1/00−9/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄光材料とガラス材料を含有する絵柄付き蓄光体の製造方法であって、
少なくとも前記蓄光材料及び前記ガラス材料を混合した混合物を金型に充填して面状部を有するようにプレス成型して成型体を作成し、
前記成型体を焼成し徐冷させた後に、
焼成した前記成型体の面状部の表面に水転写の転写紙を貼付して前記成型体の焼成温度よりも低い温度で再焼成することにより前記転写紙の絵柄を焼き付ける絵柄付き蓄光体の製造方法。
【請求項2】
前記混合物は、水溶性バインダーを含むものである請求項1記載の絵柄付き蓄光体の製造方法。
【請求項3】
前記水溶性バインダーは、メチルセルロースを含有する請求項2記載の絵柄付き蓄光体の製造方法。
【請求項4】
前記蓄光材料の粒径は、前記ガラス材料の粒径よりも大である請求項1記載の絵柄付き蓄光体の製造方法。
【請求項5】
前記蓄光材料の粒径は100μm以上300μm以下であり、前記ガラス材料の粒径は20μm以上40μm以下である請求項4記載の絵柄付き蓄光体の製造方法。
【請求項6】
前記混合物は、前記蓄光材料と前記ガラス材料とが10:90以上35:65以下の重量比で混合攪拌されるものである請求項1、4及び5のいずれかに記載の絵柄付き蓄光体の製造方法。
【請求項7】
前記成型体は、平板状である請求項1記載の絵柄付き蓄光体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絵柄付き蓄光体の製造方法に関する。さらに詳しくは、蓄光材料とガラス材料を含有する絵柄付き蓄光体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上述の如き絵柄付き蓄光体及びそれを用いた避難誘導標識としては、例えば特許文献1に示す如き蓄光式避難誘導板が知られている。この避難誘導板は、ステンレス基板の表面に釉薬層を設け、次いでペースト状ガラスフリット層を塗布し、更にその上に蓄光材粒子を稠密状に保持させ、保持した蓄光材粒子からなる蓄光材層の上にペースト状ガラスフリット層を塗布し、その上に絵柄層とガラスフリット層をさらに塗布して焼成することで得られる。そのため、製造工程が煩雑で複雑であった。しかも、ステンレス基板とガラスフリットとは熱膨張率を大きく異なるので、ヒビ、割れ、反り等の発生を抑制するために、材料間の熱膨張率の調整が必須となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−285880号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
かかる従来の実情に鑑みて、本発明は、簡便且つ簡素な製造工程で発光(蓄光)性能に優れた絵柄付き蓄光体を製造することの可能な絵柄付き蓄光体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明に係る絵柄付き蓄光体の製造方法の特徴は、蓄光材料とガラス材料を含有する絵柄付き蓄光体の製造方法において、少なくとも前記蓄光材料及び前記ガラス材料を混合した混合物を金型に充填して面状部を有するようにプレス成型して成型体を作成し、前記成型体を焼成し徐冷させた後に、焼成した前記成型体の面状部の表面に水転写の転写紙を貼付して前記成型体の焼成温度よりも低い温度で再焼成することにより前記転写紙の絵柄を焼き付けることにある。
【0006】
上記構成によれば、面状部を有するようにプレス成型した成型体を先に焼成し、その後、焼成した成型体の面状部の表面に水転写の転写紙を貼付して成型体の焼成温度よりも低い温度で再焼成するので、成型体が再焼成で縮小せず、転写紙によって形成される絵柄の精度を保つことができる。また、プレス成型した成型体を先に焼成しているので、水転写の転写紙を焼成した成型体の面状部表面体に貼付しても、水は成型体内部に含浸せず、成型体の劣化・変形が生じない。しかも、従来技術の如き熱膨張率の調整も必要とせず、簡素な製造工程で製造することができる。さらに、焼成した成型体が規格外であっても、転写紙を貼付する前に焼成した成型体を粉砕して再利用できる。
【0007】
前記混合物は、水溶性バインダーを含むものであるとよい。水溶性バインダーなので、焼成時に排ガスの問題を生じにくく、また、焼成後に残留物が成型体に残りにくい。よって、残留物による輝度の低下を抑制することができる。前記水溶性バインダーとしては、例えばメチルセルロースを含有するものが用いられる。
【0008】
前記蓄光材料の粒径は、前記ガラス材料の粒径よりも大であるとよい。これにより、蓄光材料の粒径を大きくすることで、より多くの光を蓄積でき、発光性能は向上する。しかも、ガラス材料の粒径を小さくすることで、ガラス材料が融けやすく、低温短時間焼成が可能となる。
【0009】
係る場合、前記蓄光材料の粒径は100μm以上300μm以下であり、前記ガラス材料の粒径は20μm以上40μm以下であるとよい。蓄光材料の粒径が上記数値範囲内であれば、蓄光材料が十分に光を蓄えることができ発光(蓄光)性能が低下することなく、蓄光材料によって表面が平滑にならずに凹凸面となって転写紙の絵柄を破損することもない。また、ガラス材料の粒径が上記数値範囲内であれば、短時間の焼成が可能となり且つ流動性も確保でき焼成後の成型体の表面を平滑にすることができる。
【0010】
前記混合物は、前記蓄光材料と前記ガラス材料とが10:90以上35:65以下の重量比で混合攪拌されるものであるとよい。数値範囲内であれば、蓄光材料による発光性能が低下することなく、ガラス材料の溶解によって成型体面状部の表面を平滑することができる。
【発明の効果】
【0012】
上記本発明に係る絵柄付き蓄光体の製造方法の特徴によれば、簡便且つ簡素な製造工程で発光(蓄光)性能に優れた絵柄付き蓄光体を製造することが可能となった。
【0013】
本発明の他の目的、構成及び効果については、以下の発明の実施の形態の項から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係る絵柄付き蓄光体を示す図であり、(a)は正面図、(b)は(a)のA−A線断面図である。
図2】粒径160μmの蓄光顔料と粒径30μmのガラスフリットとの配合比率ごとの時間と残光輝度との関係を示すグラフである。
図3】粒径250μmの蓄光顔料と粒径30μmのガラスフリットとの配合比率ごとの時間と残光輝度との関係を示すグラフである。
図4】プレス成型工程を説明する図である。
図5】焼成工程を説明する図である。
図6】転写工程を示す図であり、(a)は水転写紙の断面図、(b)は水転写紙から台紙を分離した図、(c)転写部分を焼成成型体に位置決めした図、(d)は再焼成後の状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、適宜添付図面を参照しながら、本発明をさらに詳しく説明する。
本発明に係る絵柄付き蓄光体1は、図1に示すように、蓄光材料としての蓄光顔料とガラス材料としてのガラスフリットを含有する平板状を呈する。この絵柄付き蓄光体1は、例えば避難誘導標識1Aとして実施される。避難誘導標識1Aは、焼成した成型体4(以下、焼成成型体4とも称する。)が基板として機能し、面状部10はその表面に後述の転写による転写部(絵柄部)11を有する。本実施形態では、転写部11が光を透過しない材料により構成され、転写部11が形成されていない非転写部が発光(蓄光)部12となる。そして、表面には、コーティング層13が形成されている。
【0016】
ここで、蓄光顔料としては、例えばアルカリ土類金属のアルミン酸塩化合物を主成分に希土類元素の賦活剤、共賦活剤を添加焼成して得られたものを用いる。アルカリ土類金属としては、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等の少なくとも1以上の金属元素やこれらの金属元素とマグネシウムの合金が挙げられる。希土類元素の賦活剤としては、ユウロピウム、ジスプロシウム等が挙げられる。共賦活剤としては、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、カドミウム、テルビウム、ジスプロシウム等の元素が挙げられる。また、蓄光顔料には、上述の如き酸化物蛍光体の他、CaS:Bi(紫青色発光),CaSrS:Bi(青色発光),ZnS:Cu(緑色発光),ZnCdS:Cu(黄色〜橙色発光)等の硫化物蛍光体を用いることも可能である。なお、上述の化合物を適宜混合して用いてもよく、さらに他の無機蛍光顔料や有機蛍光顔料において蓄光性を有するものも用いることが可能である。
【0017】
また、ガラスフリットの材料には、例えば酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ホウ素及びアルカリ酸化物を主成分とし且つ酸化カルシウム、酸化ストロンチウム及び酸化マグネシウムからなる群より選択された少なくとも1種のアルカリ土類金属酸化物を含むものが用いられる。なお、ガラスフリットの材料は、先の材料に限定されるものではないが、上述の蓄光顔料が固体で存在可能な温度で溶融(液化)するものを用いるとよい。また、焼成後において、透明度の高いガラスフリットの材料を用いることが望ましい。蓄光顔料の発光が阻害されることがなく、発光性能の低下を防止する。
【0018】
蓄光顔料の粒径は100μm以上300μm以下であり、好ましくは、160μm以上250μm以下が望ましい。100μm未満では粒径が小さく十分に光を蓄えることができず、発光(蓄光)性能が低下する。他方、300μmを超えると、後述の混合物2を焼成すると蓄光顔料の粒により面状部10の表面が平滑にならず、後述の転写紙5(画像部12)が表面から突出した蓄光顔料によって破損される恐れがある。なお、本明細書で示す「粒径」は、粒度分布における平均粒径d50の値を示すものとする。
【0019】
また、ガラスフリットの粒径は20μm以上40μm以下が望ましく、蓄光顔料の粒径よりガラスフリットの粒径が小さい。ガラスフリットの粒径を小さくすることで、700〜800℃の比較的低温での加熱で絵柄付き蓄光体を製造することができ、加熱時間も2〜5時間程度と短時間となる。また、蓄光顔料の周辺に多くのガラスフリット粒子が存在できるので、加熱することで焼成成型体4の表面を平滑にすることができる。20μm未満となると、蓄光顔料がガラスフリットと十分に混ざらずに混合物2の表面近傍に位置し、表面が平滑とならない。他方、40μmを超えると溶解する時間が長くなり製造効率が低下する。
【0020】
ここで、絵柄付き蓄光体1としての避難誘導標識1Aの製造工程について説明する。
この製造工程は、大略、混合物2を作成する混合物作成工程と、作成した混合物2を金型21に充填して面状部10を有するようにプレス成型して成型体3を作成するプレス工程と、プレス成型して得られた成型体3を焼成し徐冷する焼成工程と、成型体3を焼成して得られた焼成成型体4に水転写の転写紙5を貼付し再焼成する再焼成工程とからなる。
【0021】
混合物作成工程では、蓄光顔料及びガラスフリットの各粉末と水溶性バインダーとを攪拌混合して混合物2を作成する。蓄光顔料とガラスフリットとが10:90以上35:65以下の重量比で混合攪拌される。好ましくは、蓄光顔料とガラスフリットとの重量比は、20:80以上30:70以下である。この比率より蓄光顔料が少ないと発光(蓄光)性能が十分に確保できない。他方、この比率より蓄光顔料が多いと、ガラス材料が相対的に少なくなるため、プレス成型時に成型性を確保できず焼成時においても面状部10の表面を平滑に形成することができない。
【0022】
ここで、表1,2に、蓄光顔料とガラスフリット(粒径30μm)との配合比(蓄光顔料:ガラスフリット)とコーティング層13の成形状態及び表面状態の結果の一例を示す。なお、試料1(Sample1)にはネモトマテリアル社製蓄光顔料(粒径160μm、グリーン)、試料2(Sample2)には菱晃社製蓄光顔料(粒径150μm、ブルー)、試料3(Sample3)にはネモトマテリアル社製蓄光顔料(粒径250μm、グリーン)、試料4(Sample4)には菱晃社製蓄光顔料(粒径250μm、ブルー)を用いた。表中の●は表面粗さが良好であることを示し、×は表面粗さが不良であることを示す。
【0023】
【表1】
【0024】
【表2】
【0025】
蓄光顔料とガラスフリットとの配合比が4:6では、ガラスフリットが相対的に少ないため、焼成後の成型体の表面が平滑にならないものが多く発生した。他方、配合比が3:7、2:8及び1:9では、ガラスフリットが相対的に増加したので、表面は平滑に形成された。
【0026】
ここで、図2,3に、配合比率ごとの時間と残光輝度との関係を示す。図の縦軸は輝度(cd/m2)、横軸は時間(分)を示す。同図に示すように、蓄光顔料の割合が少なくなるに従い、ほとんどの時間で輝度が低下する。特に、蓄光顔料とガラスフリットとの配合比が1:9の場合、他と比較し輝度が低い。また、粒径160μmの蓄光顔料よりも粒径250μmの蓄光顔料とでは、粒径が大きい分、粒径250μmの蓄光顔料を用いた蓄光体の方が輝度を向上させることができる。しかし、粒径が大きいために、プレス成型後の焼成成型体4の面状部10の表面の平滑性は低下するので、転写紙5の貼付精度や仕上がりが低下する。そのため、例えば、ガラスフリットの配合量を増加させることで平滑性を向上させることができる。このように、残光輝度及び蓄光体の表面状態から短時間で低温で成形することができ、蓄光顔料とガラスフリットとの重量比は2:8以上3:7以下が好ましい。
【0027】
そして、調合した固形成分(粉状の蓄光顔料及び粉状のガラスフリット)の総量に対して、水溶性バインダーを所定量添加し、攪拌混合して混合物2を作成する。水溶性バインダーとして、例えば、メチルセルロース水溶液が用いられる。この水溶液の濃度は2%以上3%以下であり、固形成分の総量に対し6%以上8%以下添加するとよい。上記数値範囲であれば、混合物2の成型性を保つことができ且つ焼成時においてバインダーアウト時間が短く、水溶性バインダーの残留を抑制し輝度の低下を防止する。
【0028】
次に、プレス成型工程では、例えば図4に示すように、上述の混合物2をプレス機20の金型21の凹部に充填し、例えば600kgf/cm2〜800kgf/cm2でプレス成型する。そして、下型21bを側型21cに沿って上昇させて、プレス成型された成型体3を取り出す。本実施形態において、平板状の成型体3は平板状に成型され、その面状部10は略平面となる。
【0029】
そして、焼成工程では、例えば図5に示すように、成型体3を焼成炉6の棚板61に複数配置して窯入れし、所定の温度(例えば800℃)で焼成する。焼成工程は、バッチ方式の他、ラインで連続焼成してもよく、以下同様である。この焼成温度では、ガラスフリットは溶解して液状のガラス成分となる。一方、蓄光顔料はガラスフリットよりも融点が高く、ガラスフリットの溶融温度では固体で存在する。よって、焼成により溶解したガラスフリットが蓄光顔料を取囲み、焼成成型体4の面状部10の表面は平滑となる。しかも、プレス成型によって蓄光顔料が互いに密な状態で成型体3内に存在するので、成型体3を焼成した焼成成型体4の輝度は蓄光顔料自体の輝度と同等に維持され、成型、焼成による輝度の低下を抑制することができる。そして、所定時間徐冷した後に、棚板61を取り出す。なお、棚板61には、例えばアルミナシートが用いられるが、成形体3と焼結しない材料や構造のものであれば、特に限定されるものではない。
【0030】
再焼成工程では、焼成炉6より取り出した焼成した成型体4の面状部10表面に水転写の転写紙5を貼付する。ここで、水転写紙5は、図6(a)に示すように、大略、PET紙等からなる台紙51と、水溶性レジン層52と、画像を構成する印刷層53と、水溶性レジン層52及び印刷層53を覆うカバーコート層54よりなる。カバーコート層54は先のガラスフリットと同様のガラス材料より形成されている。これらの層は、台紙51上に、例えばスクリーン印刷等の方法によって積層形成される。なお、水溶性レジン層52と印刷層53又はカバーコート層54の間にカバーコート層54と同様のガラスフリットの層をさらに設けてもよい。これにより、水溶性レジン層52が溶解した後に印刷層53を保持できるので、印刷層53の変形、位置ずれ、破損等を防止することができる。
【0031】
この水転写紙5を水に浸し、台紙51の表面に形成された水溶性レジン層52を溶解させ、台紙51を分離する(図6(b))。そして、分離した印刷層53及びカバーコート層54を焼成した成型体4に位置合わせをして貼付する(図6(c))。ここで、焼成成型体4は、蓄光顔料とガラスフリットと水溶性バインダーからなる混合物2をプレス成型、焼成したものである。よって、焼成成型体4に水転写紙5を用いても焼成成型体4内部に水が含浸することはなく、発光性能が低下することがない。印刷層53が焼成成型体4の面状部10の所定の位置に配置される。
【0032】
そして、転写紙5を貼付した焼成成型体4を再度焼成する(図6(d))。この時、先の焼成工程における焼成温度よりも低い温度で焼成する。例えば700℃未満である。これは、一般的な上絵の焼成温度(720℃〜820℃)よりも低い。焼成成型体4は一度焼成しているので、その焼成温度より低い温度で再焼成しても焼成成型体4が縮小することはない。一方、カバーコート層54は同じガラスフリットより構成されているので、約700℃で溶解する。従って、これらの層は溶解してコーティング層55となる。その際、焼成成型体4が縮小することはないので、熱膨張率の違いによる位置ずれや印刷層53の接着不良、亀裂等が生じることはなく、精度よく印刷することができる。このように、蓄光体1が生成される。
【0033】
次に、最後に他の実施形態の可能性について言及する。なお、以下の実施形態において、上記実施形態と同様の部材等には同一の符号を付してある。
上記実施形態において、絵柄部11として人型及びその周辺部分を印刷層53により形成し発光させない部分とした。しかし、人型及びその周辺部分を発光部12としても構わない。
【0034】
上記実施形態において、印刷層53(絵柄部11)をピクトグラムとし、絵柄付き蓄光体1を避難誘導標識1Aとして構成した。しかし、絵柄はピクトグラムに限られるものではなく、各種図形、模様、記号、文字、画像等が含まれる。
【0035】
上記実施形態では、混合物2をプレス成型して、略平面の面状部10を有する平板状の成型体を作成し、その面状部10の表面に絵柄部11を形成した。しかし、上述の如き転写を行える限りにおいて、面状部10は平面に限られない。例えば、球形や卵形などの湾曲面を有する成型体に転写を行い絵柄付き蓄光体とすることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、絵柄付き蓄光体の製造方法として利用することができる。また、避難誘導標識に限らず、広告や案内板等の各種情報表示手段としても利用することが可能である。本発明は、蓄光顔料とガラス材料とにより構成されるので、耐候性、耐水性、耐熱性、耐摩擦性、耐薬品性に優れ、屋内に限らず屋外でも長期にわたり使用することができる。
【符号の説明】
【0037】
1:絵柄付き蓄光体、2:混合物、3:成型体、4:焼成成型体、5:水転写紙、6:焼成炉、1A:避難誘導標識、10:面状部、11:転写部(絵柄部)、12:発光(蓄光)部、13:コーティング層、20:プレス機、21:金型、21a:上型、21b:下型、21c:側型、51:台紙、52:水溶性レジン層、53:印刷層、54:カバーコート層、55:コーティング層、61:棚板
図1
図2
図3
図4
図5
図6