特許第6028296号(P6028296)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6028296光増感色素ならびに該色素を含む金属酸化物半導体電極および色素増感太陽電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6028296
(24)【登録日】2016年10月28日
(45)【発行日】2016年11月16日
(54)【発明の名称】光増感色素ならびに該色素を含む金属酸化物半導体電極および色素増感太陽電池
(51)【国際特許分類】
   C09B 47/00 20060101AFI20161107BHJP
   H01G 9/20 20060101ALI20161107BHJP
【FI】
   C09B47/00CSP
   H01G9/20 113B
【請求項の数】7
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2012-27276(P2012-27276)
(22)【出願日】2012年2月10日
(65)【公開番号】特開2013-163756(P2013-163756A)
(43)【公開日】2013年8月22日
【審査請求日】2015年2月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】591282205
【氏名又は名称】島根県
(73)【特許権者】
【識別番号】598041795
【氏名又は名称】神戸天然物化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】今若 直人
(72)【発明者】
【氏名】松林 和彦
(72)【発明者】
【氏名】田中 孝一
(72)【発明者】
【氏名】赤澤 雅子
【審査官】 土橋 敬介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−164970(JP,A)
【文献】 特開2005−236278(JP,A)
【文献】 特開2006−182710(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09B 47/00
H01G 9/20
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)を有する太陽電池用光増感色素。
【化1】
(式(1)中、Aは共役系であり、Bは構造式b1−b2またはb1−b2−b3からなり、前記Bは前記b1を介してポルフィリン骨格に結合し、前記b1は無置換または置換されたアリールであり、前記2、およびb3は、それぞれ無置換もしくは置換されたアリールまたは無置換もしくは置換されたヘテロアリールから選択され、前記Bは少なくとも一の前記アリールおよび少なくとも一の前記ヘテロアリールを含み、前記Aは、無置換または置換されたエチレン、エチン、フェニレン環、ナフタレン環、チオフェン環、ピロール環、フラン環、イミダゾール環、ピラゾール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、ピリジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、ピラジン環、および1,2,3−トリアジン環からなる群から選択され、RはC1〜20のアルキルまたはC1〜C20のアルコキシである)
【請求項2】
前記Aは、分岐を含んでもよいC1〜20のアルキル、C1〜20のアルコキシ、ハロゲンからなる群から選択される置換基で置換されていることを特徴とする請求項1に記載の光増感色素。
【請求項3】
前記アリールは、フェニレン環またはナフタレン環であり、前記へテロアリールは、チオフェン環、ピロール環、フラン環、イミダゾール環、ピラゾール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、ピリジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、ピラジン環、1,2,3−トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環、キナゾリン環、フタラジン環、プテリジン環、クマリン環、クロモン環、1,4−ベンゾジアゼピン環、インドール環、ベンズイミダゾール環、ベンゾフラン環、プリン環、アクリジン環、フェノキサジン環、フェノチアジン環からなる群から選択されるヘテロアリールであることを特徴とする請求項1または2に記載の光増感色素。
【請求項4】
前記置換されたアリールまたは前記置換されたヘテロアリールは、分岐を含んでもよいC1〜20のアルキル、C1〜20のシクロアルキル、C1〜20のアルコキシ、およびハロゲンからなる群から選択される置換基により置換されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の光増感色素。
【請求項5】
下記構造Aを有する太陽電池用光増感色素。
【化2】
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の光増感色素を酸化物半導体上に吸着させたことを特徴とする酸化物半導体電極。
【請求項7】
請求項6の酸化物半導体電極、透明電極、電解質および対電極を含む色素増感太陽電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は緑色の新規光増感色素ならびに該色素を含む金属酸化物半導体電極および該色素を含む色素増感太陽電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
化石燃料の枯渇およびその燃焼による地球温暖化に伴い、これに替わる新エネルギーの開発が急務になってきている。太陽エネルギーは次世代の持続的発展を支えるに十分なポテンシャルを有するクリーンで環境にやさしいエネルギー源である。太陽エネルギーを電気に変換する方法としてはシリコン系の半導体太陽電池が開発されてきている。しかし、ここで使用されるシリコンは非常に高純度である必要があり、この精製工程に費やされる多大なエネルギーと複雑な工程のため高い製造コストが要求される。
【0003】
色素増感太陽電池は、比較的高い変換効率を有し、従来型の太陽電池と比べ低コストであるため、現在、学問的また営業的に広く注目されてきている。特に、1991年にグレッツェルらが報告したこの色素増感太陽電池は、光電変換効率が10〜11%に達してきている。これはナノチタニア粒子表面に色素を吸着することにより、可視光領域の光を吸収することを可能にするものであり、色素の役割は光捕集作用を有することから特に重要である。このような色素としては、N3と呼ばれるシス−ビス(イソチオシアナト)−ビス(2,2’−ビピリジン−4,4’−カルボキシレート)ルテニウム(II)、N719と呼ばれるシス−ビス(イソチオシアナト)−ビス(2,2’−ビピリジン−4,4’−カルボキシレート)ルテニウム(II)ビス(テトラn−ブチルアンモニウム)およびZ907と呼ばれるシス−ビス(イソチオシアナト)−(2,2’−ビピリジン−4,4’−カルボキシレート)−(2,2’−ビピリジン−4,4’−ジノニル)ルテニウム(II)がよく知られている。
【0004】
また、色素増感太陽電池は、シリコン系半導体太陽電池と異なり、複数の色素を用いることでセルの多色化が可能となる。
【0005】
しかしながら、従来、色素増感太陽電池に用いられてきた色素は主にポリピリジンRu系色素であり、その大部分は赤色を示す(特許文献1〜4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−272721号公報
【特許文献2】特開2003−212851号公報
【特許文献3】特開2005−47857号公報
【特許文献4】特開2005−120042号公報
【特許文献5】国際公開第2012/014414号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、セルの多色化に寄与し、かつ良好な光電変換効率を有する新規な緑色光増感色素、これを酸化物半導体上に吸着させた金属酸化物半導体電極、および該酸化物半導体電極を用いた色素増感太陽電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、下記式(1)の構造を有する化合物が、良好な光電変換効率を有する緑色の太陽電池用光増感色素であることを見出し、本発明を完成するにいたった。
【0009】
【化1】
【0010】
(式(1)中、Aは共役系であり、Bは構造式b1−b2またはb1−b2−b3からなり、前記b1、b2、およびb3は、それぞれ無置換もしくは置換されたアリールまたは無置換もしくは置換されたヘテロアリールから選択され、前記Bは少なくとも一の前記アリールおよび少なくとも一の前記ヘテロアリールを含み、RはC1−20のアルキルまたはC1−C20のアルコキシである。)
【発明の効果】
【0011】
本発明の光増感色素を用いた太陽電池は、緑色のセルと良好な光電変換効率を有することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の光増感色素を用いた太陽電池の構造である。
図2】本発明の光増感色素AおよびB、ならびに比較例1〜3の吸収スペクトルである。
図3】本発明の光増感色素AおよびB、ならびに比較例1〜3の分光感度である。
図4】本発明の光増感色素A〜C、ならびに比較例1〜4を用いて作製した太陽電池の外観である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、光増感色素ならびにそれを用いた酸化物半導体電極および太陽電池に関する。以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態は、本発明の単なる一例であって、当業者であれば、適宜設計変更可能である。
【0014】
(光増感色素)
本発明の光増感色素は、下記式(1)の構造を有する。
【0015】
【化2】
【0016】
(式(1)中、Aは共役系であり、Bは構造式b1−b2またはb1−b2−b3からなり、前記b1、b2、およびb3は、それぞれ無置換もしくは置換されたアリールまたは無置換もしくは置換されたヘテロアリールから選択され、前記Bは少なくとも一の前記アリールおよび少なくとも一の前記ヘテロアリールを含み、RはC1−20のアルキルまたはC1−C20のアルコキシである。)
【0017】
本発明の光増感色素は、中心金属としてZn2+イオンが配位したポルフィリン骨格を有する。
【0018】
前記式(1)中、Aは共役系である。これらに限定されないが、Aは、無置換または置換されたアルケン、アルキン、アリール、およびヘテロアリールであってもよい。前記Aのアルケンの具体例は、エチレン、ブテン、ヘキセン、オクテン、デセン、ドデセンなどを含む。また、前記Aのアルキンの具体例は、エチン、ブチン、ヘキシンなどを含む。前記Aのアリールとしては、これらに限定されないが、フェニレン環およびナフタレン環を含み、前記Aのへテロアリールとしては、チオフェン環、ピロール環、フラン環、イミダゾール環、ピラゾール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環などの5員環、ピリジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、ピラジン環、1,2,3−トリアジン環などの6員環を含む。好ましくは、単環式のアリールまたはヘテロアリールである。
【0019】
前記Aは置換基として、分岐を含んでもよいC1〜20のアルキル、C1〜20のアルコキシ、ハロゲンを有してもよい。
【0020】
前記式(1)中、Bは構造式b1−b2またはb1−b2−b3からなり、前記b1、b2、およびb3は、それぞれ無置換もしくは置換されたアリールまたは無置換もしくは置換されたヘテロアリールから選択され、前記Bは少なくとも一の前記アリールおよび少なくとも一の前記ヘテロアリールを含む。前記Bのアリールの例には、フェニレン環およびナフタレン環を含む。また前記Bのへテロアリールの例には、チオフェン環、ピロール環、フラン環、イミダゾール環、ピラゾール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環などの5員環、ピリジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、ピラジン環、1,2,3−トリアジン環などの6員環、キノリン環、イソキノリン環、キナゾリン環、フタラジン環、プテリジン環、クマリン環、クロモン環、1,4−ベンゾジアゼピン環、インドール環、ベンズイミダゾール環、ベンゾフラン環、プリン環、アクリジン環、フェノキサジン環、フェノチアジン環などの多環式へテロ環を含む。
【0021】
前記Bのアリールまたはヘテロアリールは置換基を有してもよく、これらに限定されないが、分岐を含んでもよいC1〜20のアルキル、C1〜20のアルコキシ、およびハロゲンにより置換されてもよい。
【0022】
前記式(1)中、Rは分岐を含んでもよいC1−20のアルキルまたはC1−C20のアルコキシである。
【0023】
式(1)を有する本願発明の光増感色素は、例えば、以下の化合物A〜Cを含む。なお、本発明の光増感色素の製造方法に関しては、以下に示す実施例において具体的に詳述する。
【0024】
【化3】
【0025】
(金属酸化物半導体電極)
本発明は、さらに該光増感色素を用いた金属酸化物半導体電極に関する。本発明の金属酸化物半導体電極は、上述した本発明の光増感色素を金属酸化物半導体の電極の表面に吸着させたものである。この金属酸化物半導体電極は、好ましくは多孔質電極とする。これによって、前記電極の実質的な表面積を増大させることができ、前記電極への光増感色素の吸着量を増大させて、前記金属酸化物半導体電極を含む太陽電池の光電変換効率を増大させることができるようになる。
【0026】
本発明の金属酸化物半導体には、チタン、スズ、亜鉛、鉄、タングステン、ジルコニウム、ハフニウム、ストロンチウム、インジウム、セリウム、イットリウム、ランタン、バナジウム、ニオブ、もしくはタンタルの酸化物、またはチタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ナトリウム、チタン酸バリウム、もしくはニオブ酸カリウムなどのぺロブスカイト構造を有する化合物を用いることができる。
【0027】
該光増感色素を金属酸化物半導体薄膜上に吸着させる方法としては、任意の公知の方法を用いることができる。たとえば、二酸化チタン等の金属酸化物半導体薄膜を本発明の光増感色素溶液に所定の温度で浸漬する方法(ディップ法、ローラ法、エヤーナイフ法など)や、該光増感色素溶液を金属酸化物半導体層状面に塗布する方法(ワイヤーバー法、アプリケーション法、スピン法、スプレー法、オフセット印刷法、スクリーン印刷法など)を挙げることができる。
【0028】
(色素増感太陽電池)
本発明はさらに、透明電極1、上記金属酸化物半導体電極2、電解質3、および対電極4を含む色素増感太陽電池に関する(図1参照)。
【0029】
透明電極1は、透明基板上に透明導電層を形成して構成される(図示せず)。透明基板は、汎用のガラス基板、石英基板、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、およびポリエチレンなどの透明プラスチック基板を用いることができる。透明導電層は、酸化スズ、フッ素ドープ酸化スズ、ITO、ATO、酸化亜鉛、アルミドープ酸化亜鉛、またはこれらの表面に酸化スズもしくはフッ素ドープ酸化スズの皮膜を設けた光透過性の透明導電層から構成することができる。
【0030】
電解質3としては、固体状、および液体状のものを用いることができる。具体的には、ヨウ素系電解質、臭素系電解質、セレン系電解質、硫黄系電解質、キノン/ヒドロキノン系電解質、およびコバルト錯体系電解質を用いることができる。これらに限定されないが、I2、LiI、ジメチルプロピルイミダゾリウムヨージド、t−ブチルピリジン、1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウムアイオダイド等を、アセトニトリル、メトキシアセトニトリル、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、3−メトキシプロピオニル、炭酸プロピレン等の電気的に不活性な有機溶剤に溶かした溶液等が好適に用いられる。
【0031】
また、電解質組成物中の成分の揮発を低減する目的で、上述した電解質組成物にゲル化剤またはポリマー架橋モノマーを溶解させ、ゲル状電解質として使用してもよい。さらに上記電解質と可塑剤とを用いてポリマーに溶解させ、可塑剤を揮発除去することで全固体型の色素増感太陽電池を形成してもよい。
【0032】
対電極4は、例えば、チタン、Al、SUS等の金属基板、ガラス基板またはプラスチック基板の上に形成される白金、カーボン、ニッケル、クロム、ステンレス、フッ素ドープ酸化スズおよびITOなどの導電層から構成される。また、対電極4は白金あるいはカーボンなどの触媒層(図示せず)を含んでもよく、さらに白金は硫黄材料で処理されていてもよい(例えば、特許文献5参照)。
【実施例】
【0033】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0034】
(色素Aの合成)
4‐(5‐ヘキシルチオフェン‐2‐イル)ベンズアルデヒドの合成
【0035】
【化4】
【0036】
反応容器に、4‐ブロモベンズアルデヒド(9.17g)、2‐(5‐ヘキシルチオフェン‐2‐イル)‐4,4,5,5‐テトラメチル‐1,3,2‐ジオキサボロラン(14.00g)、リン酸三カリウム(11.00g)、トルエン(150ml)と、ジクロロ[1,1‐ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)(0.20g)を加えて撹拌し、70℃に加熱した。反応終了後、反応液をセライトに通し、ろ液を濃縮した。これをシリカゲルカラム(クロロホルム)で展開分離し、生成物(4‐(5‐ヘキシルチオフェン‐2‐イル)ベンズアルデヒド、7.79g)を得た。
【0037】
5‐(4‐メトキシカルボニルフェニル)‐10,15,20‐トリ[4‐(5‐ヘキシルチオフェン‐2‐イル)フェニル]ポルフィリンの合成
【0038】
【化5】
【0039】
反応容器に、ピロール(0.92g)、4‐(5‐ヘキシルチオフェン‐2‐イル)ベンズアルデヒド(2.79g)、テレフタルアルデヒド酸メチル(0.56g)、クロロホルム(130ml)とエタノール(0.5ml)を加え、約10℃に冷却した。そこへ、三フッ化ホウ素(0.47g)を滴下し、そのまま2時間撹拌した。この溶液に、2,3‐ジクロロ‐5,6‐ジシアノ‐1,4‐ベンゾキノン(2.32g)を加え、さらに1時間撹拌した。反応液をセライトとシリカゲルに通し、ろ液を濃縮して粗成生物を得た。これをシリカゲルカラム(クロロホルム/ヘキサン=3/2)により展開分離し、生成物(5‐(4‐メトキシカルボニルフェニル)‐10,15,20‐トリ[4‐(5‐ヘキシルチオフェン‐2‐イル)フェニル]ポルフィリン、0.34g)を得た。
【0040】
5‐(4‐メトキシカルボニルフェニル)‐10,15,20‐トリ[4‐(5‐ヘキシルチオフェン‐2‐イル)フェニル]ポルフィリン亜鉛(II)錯体の合成
【0041】
【化6】
【0042】
5‐(4‐メトキシカルボニルフェニル)‐10,15,20‐トリ[4‐(5‐ヘキシルチオフェン‐2‐イル)フェニル]ポルフィリン(0.33g)をクロロホルム(16.5ml)に溶解させた。そこへ、メタノール(6ml)に溶解させた酢酸亜鉛二水和物(0.62g)を滴下した。反応終了をTLCで確認後、水を加えて分液した。有機層を水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を留去し、粗成生物を得た。これをシリカゲルカラム(クロロホルム)で展開分離し、紫色生成物(5‐(4‐メトキシカルボニルフェニル)‐10,15,20‐トリ[4‐(5‐ヘキシルチオフェン‐2‐イル)フェニル]ポルフィリン亜鉛(II)錯体、0.33g)を得た。
【0043】
5‐(4‐カルボキシルフェニル)‐10,15,20‐トリ[4‐(5‐ヘキシルチオフェン‐2‐イル)フェニル]ポルフィリン亜鉛(II)錯体の合成
【0044】
【化7】
【0045】
5‐(4‐メトキシカルボニルフェニル)‐10,15,20‐トリ[4‐(5‐ヘキシルチオフェン‐2‐イル)フェニル]ポルフィリン亜鉛(II)錯体(0.31g)をTHF(30ml)と水(7ml)に溶解させた。そこへ48%水酸化ナトリウム(0.70g)を加え、原料が無くなるまで約68℃で加熱した。反応終了後、THFを留去した。残渣に3%ギ酸水を加え、弱酸性にした。紫色沈殿物を回収して、紫色生成物(5‐(4‐カルボキシルフェニル)‐10,15,20‐トリ[4‐(5‐ヘキシルチオフェン‐2‐イル)フェニル]ポルフィリン亜鉛(II)錯体、0.28g)を得た。
1H‐NMR(δH/ppm,THF,400MHz)0.96(t,9H),1.50‐1.40(m,18H),1.81(quin,6H),2.95(t,6H),6.92(d,3H),7.51(d,3H),8.00(d,6H),8.20(d,6H),8.31(d,2H),8.43(d,2H),8.84‐8.96(m,8H)
【0046】
(色素Bの合成)
2‐(4‐ヘキシルフェニル)‐4,4,5,5‐テトラメチル‐1,3,2‐ジオキサボロランの合成
【0047】
【化8】
【0048】
反応容器に、1‐ブロモ‐4‐ヘキシルベンゼン(10.00g)、ビス(ピナコレート)ジボラン(12.60g)、酢酸カリウム(12.13g)とDMF(200ml)を加えて撹拌した。そこへビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド(0.61g)を投入して80℃に加温した。一晩加熱撹拌した後、クロロホルムと水を加えて分液洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、溶媒を留去した。これをシリカゲルカラム(ヘキサン→ヘキサン/クロロホルム=1/2)で精製して、生成物(2‐(4‐ヘキシルフェニル)‐4,4,5,5‐テトラメチル‐1,3,2‐ジオキサボロラン、9.30g)を得た。
【0049】
5‐(4‐ヘキシルフェニル)チオフェン‐2‐カルバルデヒドの合成
【0050】
【化9】
【0051】
反応容器に2‐(4‐ヘキシルフェニル)‐4,4,5,5‐テトラメチル‐1,3,2‐ジオキサボロラン(5.10g)、5‐ブロモチオフェン‐2‐カルバルデヒド(4.07g)、10%炭酸ナトリウム水溶液(55ml)とジオキサン(60ml)を加えて撹拌した。そこへテトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(598mg)を投入し、80℃に加温した。一晩加熱撹拌した後、クロロホルムと水を加えて分液洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、溶媒を留去した。これをシリカゲルカラム(ヘキサン/クロロホルム=4/1→クロロホルム)で精製して、生成物(5‐(4‐ヘキシルフェニル)チオフェン‐2‐カルバルデヒド、4.70g)を得た。
【0052】
5,10,15‐トリ[5‐(4‐ヘキシルフェニル)チオフェン‐2‐イル]‐20‐(4‐メトキシカルボニルフェニル)ポルフィリンの合成
【0053】
【化10】
【0054】
ピロール(1.58g)、5‐(4‐ヘキシルフェニル)チオフェン‐2‐カルバルデヒド(4.80g)、テレフタルアルデヒド酸メチル(0.97g)をクロロホルム(180ml)とエタノール(3ml)に溶解させ、約10℃に冷却した。そこへ、三フッ化ホウ素(0.83g)を滴下し、そのまま2時間撹拌した。この溶液に、2,3‐ジクロロ‐5,6‐ジシアノ‐1,4‐ベンゾキノン(4.10g)を入れ、さらに1時間撹拌した。反応液をセライトとシリカゲルに通し、ろ液を濃縮して粗成生物を得た。これをシリカゲルカラム(クロロホルム)により展開分離し、生成物(5,10,15‐トリ[5‐(4‐ヘキシルフェニル)チオフェン‐2‐イル]‐20‐(4‐メトキシカルボニルフェニル)ポルフィリン、0.50g)を得た。
【0055】
5,10,15‐トリ[5‐(4‐ヘキシルフェニル)チオフェン‐2‐イル]‐20‐(4‐メトキシカルボニルフェニル)ポルフィリン亜鉛(II)錯体の合成
【0056】
【化11】
【0057】
5,10,15‐トリ[5‐(4‐ヘキシルフェニル)チオフェン‐2‐イル]‐20‐(4‐メトキシカルボニルフェニル)ポルフィリン(0.50g)をクロロホルム(120ml)に溶解させた。そこへ、メタノール(60ml)に溶解させた酢酸亜鉛二水和物(0.70g)を滴下した。反応終了をTLCで確認後、水を加えて分液した。有機層を水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を留去し、粗成生物を得た。これをシリカゲルカラム(ヘキサン/クロロホルム=2/1)で展開分離し、紫色生成物(5,10,15‐トリ[5‐(4‐ヘキシルフェニル)チオフェン‐2‐イル]‐20‐(4‐メトキシカルボニルフェニル)ポルフィリン亜鉛(II)錯体、0.40g)を得た。
【0058】
5,10,15‐トリ[5‐(4‐ヘキシルフェニル)チオフェン‐2‐イル]‐20‐(4‐カルボキシルフェニル)ポルフィリン亜鉛(II)錯体の合成
【0059】
【化12】
【0060】
5,10,15‐トリ[5‐(4‐ヘキシルフェニル)チオフェン‐2‐イル]‐20‐(4‐メトキシカルボニルフェニル)ポルフィリン亜鉛(II)錯体(0.40g)をTHF(50ml)と水(30ml)に溶解させた。そこへ48%水酸化ナトリウム(3ml)を加え、約68℃で加熱した。反応終了後、THFを留去した。残渣に3%ギ酸水を加え、弱酸性にした。クロロホルムで抽出し、有機層を水洗した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させて溶媒を留去した。これをシリカゲルカラム(クロロホルム→クロロホルム/酢酸エチル=4/1)で精製して、紫色生成物(5,10,15‐トリ[5‐(4‐ヘキシルフェニル)チオフェン‐2‐イル]‐20‐(4‐カルボキシルフェニル)ポルフィリン亜鉛(II)錯体、0.30g)を得た。
1H‐NMR(δH/ppm,CDCl3,400MHz)0.92(t,9H),1.30‐1.42(m,18H),1.69(quin,6H),2.69(t,6H),7.31(d,6H),7.67(d,3H),7.79(d,6H),7.87(d,3H),8.36(d,2H),8.52(d,2H),8.91‐9.34(m,8H)
(比較例の合成)
比較例として、以下の化合物を合成した。
【0061】
【化13】
【0062】
(比較例1の合成)
5,10,15‐トリ(5‐ヘキシルチオフェン‐2‐イル)‐20‐(4‐メトキシカルボニルフェニル)ポルフィリンの合成
【0063】
【化14】
【0064】
反応容器に、ピロール(2.73g)、2‐ホルミル‐5‐ヘキシルチオフェン(6.0g)、テレフタルアルデヒド酸メチル(1.67g)、クロロホルム(1500ml)とエタノール(6ml)を加え、約10℃に冷却した。そこへ、三フッ化ホウ素(1.45g)を滴下し、そのまま2時間撹拌した。この溶液に、2,3‐ジクロロ‐5,6‐ジシアノ‐1,4‐ベンゾキノン(6.94g)を加え、さらに1時間撹拌した。反応液をセライトとシリカゲルに通し、ろ液を濃縮して粗成生物を得た。これをシリカゲルカラム(クロロホルム/ヘキサン=3/1)により展開分離し、生成物(5,10,15‐トリ(5‐ヘキシルチオフェン‐2‐イル)‐20‐(4‐メトキシカルボニルフェニル)ポルフィリン、1.43g)を得た。
【0065】
5,10,15‐トリ(5‐ヘキシルチオフェン‐2‐イル)‐20‐(4‐カルボキシルフェニル)ポルフィリンの合成
【0066】
【化15】
【0067】
5,10,15‐トリ(5‐ヘキシルチオフェン‐2‐イル)‐20‐(4‐メトキシカルボニルフェニル)ポルフィリン(0.15g)をTHF(50ml)と水(10ml)に溶解させた。そこへ48%水酸化ナトリウム(1.50g)を加え、原料が無くなるまで約68℃で加熱した。反応終了後、THFを留去した。残渣に3%ギ酸水を加え、弱酸性にした。沈殿物を回収し、シリカゲルカラム(クロロホルム→クロロホルム/THF=5/1)で展開分離して、紫色生成物(5,10,15‐トリ(5‐ヘキシルチオフェン‐2‐イル)‐20‐(4‐カルボキシルフェニル)ポルフィリン、0.10g)を得た。
1H‐NMR(δH/ppm,CDCl3,400MHz)0.98(t,9H),1.40‐1.50(m,12H),1.60(quin,6H),1.96(quin,6H),3.14(t,6H),7.17(d,3H),7.71(d,3H),8.35(d,2H),8.54(d,2H),8.78‐9.14(m,8H)
【0068】
(比較例2の合成)
5,10,15‐トリ(5‐ヘキシルチオフェン‐2‐イル)‐20‐(4‐メトキシカルボニルフェニル)ポルフィリン銅(II)錯体の合成
【0069】
【化16】
【0070】
5,10,15‐トリ(5‐ヘキシルチオフェン‐2‐イル)‐20‐(4‐メトキシカルボニルフェニル)ポルフィリン(0.53g)をクロロホルム(100ml)に溶解させた。そこへ、メタノール(40ml)に溶解させた酢酸銅(0.50g)を滴下した。反応終了をTLCで確認後、溶媒を留去し、粗成生物を得た。これをシリカゲルカラム(クロロホルム/ヘキサン=1/1)で展開分離し、紫色生成物(5,10,15‐トリ(5‐ヘキシルチオフェン‐2‐イル)‐20‐(4‐メトキシカルボニルフェニル)ポルフィリン銅(II)錯体、0.42g)を得た。
【0071】
5,10,15‐トリ(5‐ヘキシルチオフェン‐2‐イル)‐20‐(4‐カルボキシルフェニル)ポルフィリン銅(II)錯体の合成
【0072】
【化17】
【0073】
5,10,15‐トリ(5‐ヘキシルチオフェン‐2‐イル)‐20‐(4‐メトキシカルボニルフェニル)ポルフィリン銅(II)錯体(0.42g)をTHF(100ml)と水(10ml)に溶解させた。そこへ48%水酸化ナトリウム(1.50g)を加え、原料が無くなるまで約68℃で加熱した。反応終了後、THFを留去した。残渣に3%ギ酸水を加え、弱酸性にした。沈殿物を回収し、シリカゲルカラム(クロロホルム→クロロホルム/THF=5/1)で展開分離して、紫色生成物(5,10,15‐トリ(5‐ヘキシルチオフェン‐2‐イル)‐20‐(4‐カルボキシルフェニル)ポルフィリン銅(II)錯体、0.40g)を得た。
【0074】
(比較例3の合成)
5,10,15‐トリメシチル‐20‐(4‐メトキシカルボニルフェニル)ポルフィリンの合成
【0075】
【化18】
【0076】
反応容器に、ピロール(2.45g)、2,4,6−トリメチルベンズアルデヒド(4.06g)、テレフタルアルデヒド酸メチル(1.50g)、クロロホルム(540ml)とエタノール(7ml)を加え、約10℃に冷却した。そこへ、三フッ化ホウ素(1.43g)を滴下し、そのまま2時間撹拌した。この溶液に、2,3‐ジクロロ‐5,6‐ジシアノ‐1,4‐ベンゾキノン(6.22g)を加え、さらに1時間撹拌した。反応液をセライトとシリカゲルに通し、ろ液を濃縮して粗成生物を得た。これをシリカゲルカラム(クロロホルム/ヘキサン=3/2)により展開分離し、生成物(5,10,15‐トリメシチル‐20‐(4‐メトキシカルボニルフェニル)ポルフィリン、1.13g)を得た。
【0077】
5,10,15‐トリメシチル‐20‐(4‐メトキシカルボニルフェニル)ポルフィリン亜鉛(II)錯体の合成
【0078】
【化19】
【0079】
5,10,15‐トリメシチル‐20‐(4‐メトキシカルボニルフェニル)ポルフィリン(0.60g)をクロロホルム(70ml)に溶解させた。そこへ、メタノール(20ml)に溶解させた酢酸亜鉛二水和物(1.98g)を滴下した。反応終了をTLCで確認後、水を加えて分液した。有機層を水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を留去し、粗成生物を得た。これをシリカゲルカラム(クロロホルム)で展開分離し、紫色生成物(5,10,15‐トリメシチル‐20‐(4‐メトキシカルボニルフェニル)ポルフィリン亜鉛(II)錯体、0.60g)を得た。
【0080】
5,10,15‐トリメシチル‐20‐(4‐カルボキシルフェニル)ポルフィリン亜鉛(II)錯体の合成
【0081】
【化20】
【0082】
5,10,15‐トリメシチル‐20‐(4‐メトキシカルボニルフェニル)ポルフィリン亜鉛(II)錯体(0.60g)をTHF(60ml)と水(20ml)に溶解させた。そこへ48%水酸化ナトリウム(2.0g)を加え、原料が無くなるまで約68℃で加熱した。反応終了後、THFを留去した。残渣に3%ギ酸水を加え、弱酸性にした。沈殿物を回収し、シリカゲルカラム(クロロホルム→クロロホルム/THF=5/1)で展開分離して、紫色生成物(5,10,15‐トリメシチル‐20‐(4‐カルボキシルフェニル)ポルフィリン亜鉛(II)錯体、0.45g)を得た。
1H‐NMR(δH/ppm,CDCl3,400MHz)1.85(s,18H),2.64(s,9H),7.29(s,6H),8.37(s,2H),8.51(s,2H),8.78‐8.83(m,8H)
【0083】
(比較例4の合成)
5‐(4‐カルボキシルフェニル)‐10,15,20‐トリ[4‐(5‐ヘキシルチオフェン‐2‐イル)フェニル]ポルフィリンの合成
【0084】
【化21】
【0085】
5‐(4‐メトキシカルボニルフェニル)‐10,15,20‐トリ[4‐(5‐ヘキシルチオフェン‐2‐イル)フェニル]ポルフィリン(15mg)をTHF(10ml)と水(3ml)に溶解させた。そこへ48%水酸化ナトリウム(0.30g)を加え、約68℃で加熱した。反応終了後、THFを留去した。残渣に3%ギ酸水を加え、弱酸性にした。紫色沈殿物を回収し、シリカゲルカラム(クロロホルム→クロロホルム/THF=5/1)で展開分離して、紫色生成物(5‐(4‐カルボキシルフェニル)‐10,15,20‐トリ[4‐(5‐ヘキシルチオフェン‐2‐イル)フェニル]ポルフィリン、14mg)を得た。
1H‐NMR(δH/ppm,THF,400MHz)−2.65(s,2H),0.95(t,9H),1.40‐1.50(m,18H),1.81(quin,6H),2.94(t,6H),6.92(d,3H),7.51(d,3H),8.02(d,6H),8.21(d,6H),8.32(d,2H),8.46(d,2H),8.83‐8.94(m,8H)
【0086】
(紫外吸収スペクトルの測定)
上記合成例により調製した各種色素AおよびBならびに比較例1〜3について、それぞれDMF溶媒を用いて濃度0.015mMの溶液を調製し、分光光度計(SHIMADZU UVmini1240)を用いて吸収スペクトルを測定した。結果を図2に示す。
(色素増感太陽電池の作製)
(1)以下の手順により、上記合成例により調製した各種色素AおよびBならびに比較例1〜3を用いた色素増感太陽電池を作製した。
【0087】
i. 基板(フッ素ドープ酸化スズ膜付ガラス板、35mm×33mm)上の1辺1cmの正方形面積部分にスクリーン印刷により酸化チタンペースト[触媒化成製PST−21NR]を膜厚8μmにスクリーン印刷し、乾燥後、その上にさらに酸化チタンペースト[触媒化成製PST−400C]を膜厚4μmにスクリーン印刷した。これを500℃で焼成することで、発電層を形成した。
【0088】
ii. 前記発電層を形成した電極を色素溶液[濃度:0.3mM、溶媒:アセトニトリル/t−ブタノール1/1(v/v)の混合溶媒]に40℃で2時間、浸漬することで、色素を前記発電層の酸化チタン上に担持させアノード電極を得た。
【0089】
iii. 上記アノード電極の発電層の周囲に接着剤を施し、このアノード電極と、別途用意した電解液注入孔を有するチオアセトアミドで処理した白金被覆チタン板(カソード電極)とを、該接着剤により接着し、両電極が50μm程度の一定間隔を置いて平行に配置されるようにした。
【0090】
iv. 次いで、電解液注入口より電解液を注入した。ここで、用いた電解液は、ヨウ素0.1M、1−プロピル−3−メチルイミダゾリウムヨウ化物0.8M、N−メチルベンゾイミダゾール0.5M、3−メトキシプロピオニトリルを溶媒とする溶液を用いた。
【0091】
v. 接着剤を用いて電解液注入孔を封止し、アノード電極上に端子取り出しのためのハンダを塗布して実験用セルを完成させた。
【0092】
(分光感度の測定)
作製した太陽電池セルの分光感度を分光感度測定装置(分光計器株式会社製CEP−2000)で測定した。結果を図3に示す。また、これらの太陽電池セルの外観を図4に示す。
【0093】
(性能試験)
AM1.5、 1SUN(100mW/cm2)の照射条件下で、上記のとおり作製した太陽電池セルの初期光電変換効率を測定した。結果を表1に示す。
【0094】
【表1】
【0095】
なお光電変換効率は下記式により計算した。
光電変換効率(%)=
100×[(短絡電流密度×開放電圧×曲線因子)/(照射太陽光エネルギー)]
上記表1のとおり、本発明の光増感色素を用いて作製した色素増感太陽電池は、高い光電変換効率を示し、かつ緑色のセルを提供することができた。
【符号の説明】
【0096】
1 透明電極
2 金属酸化物半導体電極
3 電解質
4 対電極
図1
図2
図3
図4