【文献】
AY268591,GENBANK,2003年10月23日,VERSION AY268591.1 GI:30039648,2016/01/28検索,URL,http://www.ncbi.nlm.nih.gov/nuccore/AY268591
【文献】
Multicolor real-time PCR genotyping of ABO system using displacing probes,Journal of Forensic Sciences,2010年,55(1),19-24
【文献】
Genomic cloning of the human histo-blood group ABO locus.,Biochemical and biophysical research communications,1995年,206(1),318-25
【文献】
ABO blood group genotyping by quenching probe method.,Molecular and Cellular Probes,2012年,26(5),198-203
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明では、ABO式血液型の判定に使用するB型判定領域を特異的に増幅するプライマーセット、同O型判定領域を特異的に増幅するプライマーセット、及び増幅したB型判定領域に対応するA型アレル又はO型アレル判定プローブ並びにB型アレル判定プローブを設計している。なお、ABO式血液型の判定については、WO 2009/130797に詳細に開示されている。すなわち、WO 2009/130797には、ゲノム上のABOグリコシルトランスフェラーゼ遺伝子に含まれる多型に関する情報、これら多型を用いたAA型、BB型、AO型、BO型、AB型及びOO型の判定に関する公知情報が開示されている。なお、
図1には、WO 2009/130797に開示されたB型判定領域及びO型判定領域と、本発明におけるB型判定領域及びO型判定領域とについて、ゲノム上の位置を模式的に示している。
【0015】
<B型判定領域を特異的に増幅するプライマーセット>
本発明におけるB型判定領域は、いわゆる796C/A及び803G/Cにて特定される一対の多型を含む領域を意味する。B型の場合、796C/A及び803G/CがそれぞれA及びCであり、A型及びO型の場合、796C/A及び803G/CがそれぞれC及びGである。
【0016】
本発明において、プライマーセットは、このB型判定領域を特異的に増幅するとともに、増幅されたB型判定領域が後述するプローブにより高精度に検出できるように設計されたものである。ここで、B型判定領域を特異的に増幅するとは、ヒトゲノムDNAを鋳型として通常の条件で核酸増幅反応を行ったときに、B型判定領域を増幅することができ他の核酸断片を実質的に増幅しない(増幅したとしても検出限界以下)ことを意味する。
【0017】
具体的に、B型判定領域を特異的に増幅するプライマーセットは、以下の(I)〜(III)のいずれかに示すプライマーセットである。
【0018】
(I)表1に示す配列番号1の塩基配列からなるプライマーと配列番号2の塩基配列からなるプライマーとからなるプライマーセット。
【表1】
【0019】
(II)表2に示す配列番号1の塩基配列からなるプライマーと配列番号3の塩基配列からなるプライマーとからなるプライマーセット。
【表2】
【0020】
(III)表3に示す配列番号4の塩基配列からなるプライマーと配列番号5の塩基配列からなるプライマーと配列番号6の塩基配列からなるプライマーと配列番号7の塩基配列からなるプライマーとからなるプライマーセット。
【表3】
【0021】
表3に示した4つのプライマーのうち、ABO_796_B_Fw及びABO_796_B_Fw-2は、5'末端から14番目の塩基がそれぞれC及びTである以外は一致している。すなわち、ABO_796_B_Fw及びABO_796_B_Fw-2は、5'末端から14番目の多型に対応したプライマー対である。また、ABO_796_B_Rv及びABO_796_B_RV-2は、5'末端から6番目の塩基がそれぞれC及びTである以外は一致している。すなわち、ABO_796_B_Rv及びABO_796_B_Rv-2は、5'末端から6番目の多型に対応したプライマー対である。
【0022】
<O型判定領域を特異的に増幅するプライマーセット>
本発明におけるO型判定領域は、いわゆる261G/Δにて特定される多型を含む領域を意味する。O型の場合、261G/Δが欠損しており、O型以外の場合、261G/ΔがGである。
【0023】
本発明において、プライマーセットは、このO型判定領域を特異的に増幅するとともに、増幅されたO型判定領域が後述するプローブにより高精度に検出できるように設計されたものである。ここで、O型判定領域を特異的に増幅するとは、ヒトゲノムDNAを鋳型として通常の条件で核酸増幅反応を行ったときに、O型判定領域を増幅することができ他の核酸断片を実質的に増幅しない(増幅したとしても検出限界以下)ことを意味する。
【0024】
具体的に、O型判定領域を特異的に増幅するプライマーセットは、表4に示す配列番号8の塩基配列からなるプライマーと配列番号9の塩基配列からなるプライマーとからなるプライマーセットである。
【0026】
<B型判定領域を検出するプローブ>
上述した「B型判定領域を特異的に増幅するプライマーセット」を用いて増幅したB型判定領域は、本発明に係る「B型判定領域を検出するプローブ」にて高精度に検出することができる。ここで、B型判定領域は、上述したように、796C/A 及び803G/Cを含む領域である。B型の遺伝子において796C/A 及び803G/CはそれぞれA及びCであり、A型及びO型の遺伝子において796C/A 及び803G/CはそれぞれC及びGである。言い換えると、増幅したB型判定領域に含まれる796C/A 及び803G/CがそれぞれC及びGである場合、A型アレル及びO型アレルのいずれかであると判断される。また、B型判定領域に含まれる796C/A 及び803G/CがそれぞれA及びCである場合、B型アレルであると判断される。
【0027】
より詳細に、B型判定領域を検出するプローブとは、増幅したB型判定領域がA型アレル又はO型アレルであると判定するプローブ及び/又はB型判定領域がB型アレルであると判定するプローブを含む意味である。以下、前者をA型アレル又はO型アレル判定プローブと称し、後者をB型アレル判定プローブと称する。
【0028】
A型アレル又はO型アレル判定プローブは、配列番号10の塩基配列を含む20塩基以上の塩基配列、好ましくは22塩基の塩基配列からなり、65℃以上のTm値を有するオリゴヌクレオチドである。なお、A型アレル又はO型アレル判定プローブとしては、Tm値が69℃以下であることが好ましい。なお、Tm値の計算方法は、最近接塩基対法(Nearest Neighbor method)を用いている。このとき、オリゴDNA濃度を0.5μM、Na
+濃度を50mMとしてTmを算出している。
【0029】
より具体的にA型アレル又はO型アレル判定プローブとしては、表5に示す具体的な塩基配列からなるオリゴヌクレオチドを挙げることができる。
【0030】
【表5】
なお、表5に記載した塩基配列に付した下線部は、5'末端側から796C/A 及び803G/Cを示している。
【0031】
ここで、表5に示したA型アレル又はO型アレル判定プローブの中でも、特に配列番号14の塩基配列又は配列番号15の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドを使用することが好ましい。これら配列番号14の塩基配列又は配列番号15の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドは、他のオリゴヌクレオチドと比較して、上述したプライマーセット(I)〜(III)のいずれを使用した場合であっても、増幅したB型判定領域に基づく蛍光を優れた蛍光強度で検出することができる。
【0032】
一方、B型アレル判定プローブは、配列番号16の塩基配列を含む18塩基以上の塩基配列、好ましくは18〜22塩基以上の塩基配列からなり、60℃以上のTm値を有するオリゴヌクレオチドである。なお、B型アレル判定プローブとしては、Tm値が66℃以下であることが好ましい。より具体的にB型アレル判定プローブとしては、表6に示す具体的な塩基配列からなるオリゴヌクレオチドを挙げることができる。
【0033】
【表6】
なお、表6に記載した塩基配列に付した下線部は、表5と同様に、5'末端側から796C/A 及び803G/Cを示している。
【0034】
ここで、表6に示したB型アレル判定プローブの中でも、特に配列番号19の塩基配列、配列番号20の塩基配列又は配列番号21の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドを使用することが好ましい。これら配列番号19の塩基配列、配列番号20の塩基配列又は配列番号21の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドは、他のオリゴヌクレオチドと比較して、上述したプライマーセット(I)〜(III)のいずれを使用した場合であっても、増幅したB型判定領域に基づく蛍光を優れた蛍光強度で検出することができる。
【0035】
<O型判定領域を検出するプローブ>
上述した「O型判定領域を特異的に増幅するプライマーセット」を用いて増幅したO型判定領域は、上述したB型判定領域を検出するプローブと同様に、所定の塩基配列を有するオリゴヌクレオチドを用いて検出することができる。ここで、O型判定領域は、上述したように、261G/Δを含む領域である。O型の遺伝子において261G/ΔはGが欠失しており、O型以外の遺伝子において261G/ΔはGが存在している。言い換えると、増幅したO型判定領域に含まれる261G/Δが欠失してい場合、O型アレルであると判断される。また、O型判定領域に含まれる261G/ΔがGである場合、O型以外のアレルであると判断される。
【0036】
より詳細に、O型判定領域を検出するプローブとは、増幅したO型判定領域がO型アレルであると判定するプローブ及び/又はO型判定領域がO型以外のアレルであると判定するプローブを含む意味である。具体的に、「O型判定領域を特異的に増幅するプライマーセット」を用いて増幅したO型判定領域については、WO 2009/130797に開示された一対のプローブによってO型アレルであるか、O型以外のアレルであるかを判定することができる。なお、これら一対のプローブは、WO 2009/130797においてO-1-20及びO-2-20として開示されている。
【0037】
ただし、WO 2009/130797においては、これら一対のプローブを使用しているものの、O型判定領域として増幅する核酸断片の塩基長が本発明とは異なっている。すなわち、WO 2009/130797においては、上述した「O型判定領域を特異的に増幅するプライマーセット」と異なるプライマーセットを使用しており、本発明とは異なるO型判定領域を利用している。
【0038】
<血液型判定方法>
本発明はまた、被検者のABO式血液型を判定する方法に関する。本発明の方法では、被検者(通常、ヒト被検者をさす)の生体試料由来のゲノムDNAを鋳型として、上述したプライマーセットを用いた増幅反応によってB型判定領域及び/又はO型判定領域を増幅し、得られたB型判定領域及び/又はO型判定領域と上記プローブを接触させるハイブリダイゼーション法においてプローブにハイブリダイズした核酸を測定し、その結果に基づいて血液型を判定する方法である。
【0039】
本発明において核酸には、DNAおよびRNAが包含され、DNAには一本鎖DNAおよび二本鎖DNAが包含される。プローブは通常核酸をさし、好ましくはDNAである。増幅核酸は、好ましくはDNAである。
【0040】
被検者の生体試料由来のゲノムDNAを鋳型とする増幅反応では通常、被検者の生体試料由来のゲノムDNAを鋳型として、上述したB型判定領域及び/又はO型判定領域を増幅する。このとき、「B型判定領域を特異的に増幅するプライマーセット」としては、上記(I)〜(III)のいずれのセットを使用しても良い。またプライマーセットとしては上記(I)〜(III)から選ばれる複数のセット(任意の2セット及び全てのセット)を使用しても良い。また、増幅反応では、B型判定領域及びO型判定領域、並びに必要に応じて他の任意の領域を同時に増幅しても良い(所謂、マルチプレックスPCR等)。具体的には、少なくとも、上述した「B型判定領域を特異的に増幅するプライマーセット」及び「O型判定領域を特異的に増幅するプライマーセット」を使用して生体試料由来のゲノムDNAを鋳型として核酸増幅反応を行うことで、B型判定領域及びO型判定領域を同時に増幅することができる。
【0041】
このようにして得られたB型判定領域及び/又はO型判定領域と、上述したB型判定領域を検出するプローブ及びO型判定領域を検出するプローブとを使用することで、被検者の遺伝子型、すなわちABO式血液型(AA型、AO型、BO型、AB型及びOO型)を判定することができる。
【0042】
より具体的には、以下のように判定することができる。
先ず、上述したA型アレル又はO型アレル判定プローブ及びB型判定プローブに対するB型判定領域のハイブリダイズを検出する。被験者の血液型がAA型、AO型及びOO型のいずれかである場合、A型アレル又はO型アレル判定プローブへのハイブリダイズが検出され、B型アレル判定プローブへのハイブリダイズは実質的に検出されない(検出限界以下又はバックグラウンド以下)。一方、被験者の血液型がBB型の場合には、A型アレル又はO型アレル判定プローブへのハイブリダイズは実質的に検出されず、B型アレル判定プローブへのハイブリダイズが検出される。さらに、被験者の血液型がAB型及びBO型のいずれかである場合には、A型アレル又はO型アレル判定プローブ及びB型アレル判定プローブへのハイブリダイズがともに検出される。
【0043】
また、O型判定領域についても、一対のプローブ(WO 2009/130797参照)を使用することで、被験者の血液型が、O型アレルをもつ血液型すなわちOO型、AO型及びBO型であるか、O型アレルをもたない血液型すなわちAB型、AA型及びBB型であるかを判断することができる。
【0044】
以上のように、各種プローブとB型判定領域及び/又はO型判定領域とのハイブリダイズに基づいて血液型を判定する場合、各プローブから検出される蛍光強度を測定し、予め設定した閾値と比較することで、各プローブとB型判定領域及び/又はO型判定領域とのハイブリダイズを検出しても良い。すなわち、所定のプローブについて蛍光強度を測定し、所定の閾値を超える蛍光強度であった場合、当該プローブに対してB型判定領域及び/又はO型判定領域がハイブリダイズしたと判定することができる。閾値は、実験条件により異なり当業者であれば適宜設定できる。より詳しくは、その遺伝子型が既知である被検者ついて、プローブペアごとに核酸ハイブリダイゼーションを実施し、統計的処理を行ってそれぞれの遺伝子型について上記比の標準値を算出し、遺伝子型が未知の被検者における比と当該標準値とを比較することにより、被検者の遺伝子型を判定することができる。
【0045】
生体試料は、ゲノムDNAを含むものであれば特に制限されない。例えば、血液およびこれに由来する血液関連試料(血液、血清および血漿など)、リンパ液、汗、涙、唾液、尿、糞便、腹水および髄液等の体液、ならびに細胞、組織または臓器の破砕物および抽出液などが挙げられる。本発明においては、好ましくは、血液関連試料を用いる。
【0046】
まず、被検者から採取した生体試料からゲノムDNAを抽出する。抽出手段としては、特に限定されないが、前記生体試料から直接的にDNA成分を分離し、精製して回収できる手段であることが好ましい。抽出手段の具体例としては、例えばフェノール/クロロホルム、エタノール、水酸化ナトリウム、CTABなどを用いたDNA抽出法が挙げられる。
【0047】
次に、得られたゲノムDNAを鋳型として用いて核酸増幅反応を行い、B型判定領域及び/又はO型判定領域を増幅させる。核酸増幅反応としては、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、LAMP(Loop-Mediated Isothermal Amplification)等を適用することができる。
【0048】
また、B型判定領域及び/又はO型判定領域を増幅させる際には、増幅後の領域を識別できるように標識を付加することが望ましい。このとき、増幅された核酸を標識する方法としては、特に限定されないが、例えば核酸増幅反応に使用するプライマーをあらかじめ標識しておく方法を使用してもよいし、核酸増幅反応に標識ヌクレオチドを基質として使用する方法を使用してもよい。標識物質としては、特に限定されないが、放射性同位元素や蛍光色素、あるいはジゴキシゲニン(DIG)やビオチンなどの有機化合物などを使用することができる。
【0049】
またこの反応系は、核酸増幅・標識に必要な緩衝剤、耐熱性DNAポリメラーゼ、検出対象領域特異的プライマー、標識ヌクレオチド三燐酸(具体的には蛍光標識等を付加したヌクレオチド三燐酸)、ヌクレオチド三燐酸および塩化マグネシウム等を含む反応系である。
【0050】
上記のようにして得られたB型判定領域及び/又はO型判定領域とプローブとのハイブリダイゼーション反応を行い、各プローブにハイブリダイズした核酸の量を、例えば標識を検出することにより測定できる。プローブにハイブリダイズした増幅核酸は、例えば、既知量のDNAを含む試料を用いて検量線を作成することにより、定量することができる。
【0051】
上記ハイブリダイゼーション反応においては、上述した各プローブが担体上に固定化されたマイクロアレイを用い、該マイクロアレイに核酸増幅反応により得られたB型判定領域及び/又はO型判定領域を含む溶液を接触させることが好ましい。その場合、上述した各プローブは、同一の担体に固定化されていてもよいし、異なる担体に固定化されていてもよい。少なくともプローブペア同士は同一の担体に固定化されていることが好ましく、O型判定に使用する一対のプローブ(WO 2009/130797参照)、B型判定に使用するA型アレル又はO型アレル判定プローブ及びB型アレル判定プローブはともに同一の担体に固定化されていることが好ましい。各プローブとしては、それぞれの条件を満たす限り、複数種のものが担体上に固定化されていてもよい。
【0052】
マイクロアレイにおける担体の材料としては、当技術分野で公知のものを使用でき、特に制限されない。例えば、白金、白金黒、金、パラジウム、ロジウム、銀、水銀、タングステンおよびそれらの化合物などの貴金属、およびグラファイト、カ−ボンファイバ−に代表される炭素などの導電体材料;単結晶シリコン、アモルファスシリコン、炭化ケイ素、酸化ケイ素、窒化ケイ素などに代表されるシリコン材料、SOI(シリコン・オン・インシュレータ)などに代表されるこれらシリコン材料の複合素材;ガラス、石英ガラス、アルミナ、サファイア、セラミクス、フォルステライト、感光性ガラスなどの無機材料;ポリエチレン、エチレン、ポリプロビレン、環状ポリオレフィン、ポリイソブチレン、ポリエチレンテレフタレート、不飽和ポリエステル、含フッ素樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、アクリル樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、アセタール樹脂、ポリカーボネート、ポリアミド、フェノール樹脂、ユリア樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、スチレン・アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル・ブタジエンスチレン共重合体、ポリフェニレンオキサイドおよびポリスルホンなどの有機材料等が挙げられる。担体の形状も特に制限されないが、好ましくは平板状である。
【0053】
本発明においては、担体として、好ましくは表面にカーボン層と化学修飾基とを有する担体を用いる。表面にカーボン層と化学修飾基とを有する担体には、基板の表面にカーボン層と化学修飾基とを有するもの、およびカーボン層からなる基板の表面に化学修飾基を有するものが包含される。基板の材料としては、当技術分野で公知のものを使用でき、特に制限されず、上述の担体材料と同様のものを使用できる。
【0054】
本発明は、微細な平板状の構造を有する担体に対し好適に用いられる。形状は、長方形、正方形および円形など限定されないが、通常、1〜75mm四方のもの、好ましくは1〜10mm四方のもの、より好ましくは3〜5mm四方のものを用いる。微細な平板状の構造の担体を製造しやすいことから、シリコン材料や樹脂材料からなる基板を用いるのが好ましく、特に単結晶シリコンからなる基板の表面にカーボン層および化学修飾基を有する担体がより好ましい。単結晶シリコンには、部分部分でごくわずかに結晶軸の向きが変わっているものや(モザイク結晶と称される場合もある)、原子的尺度での乱れ(格子欠陥)が含まれているものも包含される。
【0055】
本発明において基板上に形成させるカーボン層としては、特に制限されないが、合成ダイヤモンド、高圧合成ダイヤモンド、天然ダイヤモンド、軟ダイヤモンド(例えば、ダイヤモンドライクカーボン)、アモルファスカーボン、炭素系物質(例えば、グラファイト、フラーレン、カーボンナノチューブ)のいずれか、それらの混合物、またはそれらを積層させたものを用いることが好ましい。また、炭化ハフニウム、炭化ニオブ、炭化珪素、炭化タンタル、炭化トリウム、炭化チタン、炭化ウラン、炭化タングステン、炭化ジルコニウム、炭化モリブデン、炭化クロム、炭化バナジウム等の炭化物を用いてもよい。ここで、軟ダイヤモンドとは、いわゆるダイヤモンドライクカーボン(DLC:Diamond Like Carbon)等の、ダイヤモンドとカーボンとの混合体である不完全ダイヤモンド構造体を総称し、その混合割合は、特に限定されない。カーボン層は、化学的安定性に優れておりその後の化学修飾基の導入や分析対象物質との結合における反応に耐えることができる点、分析対象物質と静電結合によって結合するためその結合が柔軟性を持っている点、UV吸収がないため検出系UVに対して透明性である点、およびエレクトロブロッティングの際に通電可能な点において有利である。また、分析対象物質との結合反応において、非特異的吸着が少ない点においても有利である。前記のとおり基板自体がカーボン層からなる担体を用いてもよい。
【0056】
本発明においてカーボン層の形成は公知の方法で行うことができる。例えば、マイクロ波プラズマCVD(Chemical vapor deposit)法、ECRCVD(Electric cyclotron resonance chemical vapor deposit)法、ICP(Inductive coupled plasma)法、直流スパッタリング法、ECR(Electric cyclotron resonance)スパッタリング法、イオン化蒸着法、アーク式蒸着法、レーザ蒸着法、EB(Electron beam)蒸着法、抵抗加熱蒸着法などが挙げられる。
【0057】
高周波プラズマCVD法では、高周波によって電極間に生じるグロー放電により原料ガス(メタン)を分解し、基板上にDLC(ダイヤモンドライクカーボン)層を合成する。イオン化蒸着法では、タングステンフィラメントで生成される熱電子を利用して、原料ガス(ベンゼン)を分解・イオン化し、バイアス電圧によって基板上にカーボン層を形成する。水素ガス1〜99体積%と残りメタンガス99〜1体積%からなる混合ガス中で、イオン化蒸着法によりDLC層を形成してもよい。
【0058】
アーク式蒸着法では、固体のグラファイト材料(陰極蒸発源)と真空容器(陽極)の間に直流電圧を印加することにより真空中でアーク放電を起こして陰極から炭素原子のプラズマを発生させ蒸発源よりもさらに負のバイアス電圧を基板に印加することにより基板に向かってプラズマ中の炭素イオンを加速しカーボン層を形成することができる。
【0059】
レーザ蒸着法では、例えばNd:YAGレーザ(パルス発振)光をグラファイトのターゲット板に照射して溶融させ、ガラス基板上に炭素原子を堆積させることによりカーボン層を形成することができる。
【0060】
基板の表面にカーボン層を形成する場合、カーボン層の厚さは、通常、単分子層〜100μm程度であり、薄すぎると下地基板の表面が局部的に露出する可能性があり、逆に厚くなると生産性が悪くなるので、好ましくは2nm〜1μm、より好ましくは5nm〜500nmである。
【0061】
カーボン層が形成された基板の表面に化学修飾基を導入することにより、プローブを担体に強固に固定化できる。導入する化学修飾基は、当業者であれば適宜選択することができ、特に制限されないが、例えば、アミノ基、カルボキシル基、エポキシ基、ホルミル基、ヒドロキシル基および活性エステル基が挙げられる。
【0062】
アミノ基の導入は、例えば、カーボン層をアンモニアガス中で紫外線照射することによりまたはプラズマ処理することにより実施できる。または、カーボン層を塩素ガス中で紫外線を照射して塩素化し、さらにアンモニアガス中で紫外線照射することにより実施できる。または、メチレンジアミン、エチレンジアミンで等の多価アミン類ガス中を、塩素化したカーボン層と反応させることによって実施することもできる。
【0063】
カルボキシル基の導入は、例えば、前記のようにアミノ化したカーボン層に適当な化合物を反応させることにより実施できる。カルボキシル基を導入するために用いられる化合物としては、例えば、式:X-R
1-COOH(式中、Xはハロゲン原子、R
1は炭素数10〜12の2価の炭化水素基を表す。)で示されるハロカルボン酸、例えばクロロ酢酸、フルオロ酢酸、ブロモ酢酸、ヨード酢酸、2-クロロプロピオン酸、3-クロロプロピオン酸、3-クロロアクリル酸、4-クロロ安息香酸;式:HOOC-R
2-COOH(式中、R
2は単結合または炭素数1〜12の2価の炭化水素基を表す。)で示されるジカルボン酸、例えばシュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸;ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、トリメリット酸、ブタンテトラカルボン酸などの多価カルボン酸;式:R
3-CO-R
4-COOH(式中、R
3は水素原子または炭素数1〜12の2価の炭化水素基、R4は炭素数1〜12の2価の炭化水素基を表す。)で示されるケト酸またはアルデヒド酸;式:X-OC-R
5-COOH(式中、Xはハロゲン原子、R
5は単結合または炭素数1〜12の2価の炭化水素基を表す。)で示されるジカルボン酸のモノハライド、例えばコハク酸モノクロリド、マロン酸モノクロリド;無水フタル酸、無水コハク酸、無水シュウ酸、無水マレイン酸、無水ブタンテトラカルボン酸などの酸無水物が挙げられる。
【0064】
エポキシ基の導入は、例えば、前記のようにアミノ化したカーボン層に適当な多価エポキシ化合物を反応させることによって実施できる。あるいは、カーボン層が含有する炭素=炭素2重結合に有機過酸を反応させることにより得ることができる。有機過酸としては、過酢酸、過安息香酸、ジペルオキシフタル酸、過ギ酸、トリフルオロ過酢酸などが挙げられる。
【0065】
ホルミル基の導入は、例えば、前記のようにアミノ化したカーボン層に、グルタルアルデヒドを反応させることにより実施できる。
【0066】
ヒドロキシル基の導入は、例えば、前記のように塩素化したカーボン層に、水を反応させることにより実施できる。
【0067】
活性エステル基は、エステル基のアルコール側に酸性度の高い電子求引性基を有して求核反応を活性化するエステル群、すなわち反応活性の高いエステル基を意味する。エステル基のアルコール側に、電子求引性の基を有し、アルキルエステルよりも活性化されたエステル基である。活性エステル基は、アミノ基、チオール基、水酸基等の基に対する反応性を有する。さらに具体的には、フェノールエステル類、チオフェノールエステル類、N-ヒドロキシアミンエステル類、シアノメチルエステル、複素環ヒドロキシ化合物のエステル類等がアルキルエステル等に比べてはるかに高い活性を有する活性エステル基として知られている。より具体的には、活性エステル基としては、たとえばp-ニトロフェニル基、N-ヒドロキシスクシンイミド基、コハク酸イミド基、フタル酸イミド基、5-ノルボルネン-2,3-ジカルボキシイミド基等が挙げられ、特に、N-ヒドロキシスクシンイミド基が好ましく用いられる。
【0068】
活性エステル基の導入は、例えば、前記のように導入したカルボキシル基を、シアナミドやカルボジイミド(例えば、1-[3-(ジメチルアミノ)プロピル]-3-エチルカルボジイミド)などの脱水縮合剤とN-ヒドロキシスクシンイミドなどの化合物で活性エステル化することにより実施できる。この処理により、アミド結合を介して炭化水素基の末端に、N-ヒドロキシスクシンイミド基等の活性エステル基が結合した基を形成することができる(特開2001-139532)。
【0069】
上述したプローブを、スポッティング用バッファーに溶解してスポッティング用溶液を調製し、これを96穴もしくは384穴プラスチックプレートに分注し、分注した溶液をスポッター装置等によって担体上にスポッティングすることにより、プローブが担体に固定化されたマイクロアレイを製造することができる。または、スポッティング溶液をマイクロピペッターにて手動でスポッティングしてもよい。
【0070】
スポッティング後、プローブが担体に結合する反応を進行させるため、インキュベーションを行うことが好ましい。インキュベーションは、通常−20〜100℃、好ましくは0〜90℃の温度で、通常0.5〜16時間、好ましくは1〜2時間にわたって行う。インキュベーションは、高湿度の雰囲気下、例えば、湿度50〜90%の条件で行うのが望ましい。インキュベーションに続き、担体に結合していない核酸を除去するため、洗浄液(例えば、50mM TBS/0.05% Tween20、2xSSC/0.2%SDSなど)を用いて洗浄を行うことが好ましい。
【0071】
本発明はまた、上述したB型判定領域に対応するプローブセットを含む、ABO式血液型を判定するためのキットに関する。本発明のキットにおいてプローブは、担体上に固定化されたマイクロアレイの形態で提供されてもよい。本発明のキットは、さらに、核酸増幅・標識に必要な緩衝剤、耐熱性DNAポリメラーゼ、検出対象領域特異的プライマー、標識ヌクレオチド三燐酸(具体的には蛍光標識等を付加したヌクレオチド三燐酸)、ヌクレオチド三燐酸および塩化マグネシウム等を含んでいてもよい。また、本発明のキットは、上述したB型判定領域を特異的に増幅するプライマーセット及びO型判定領域を特異的に増幅するプライマーセットのいずれか一方又は両方を含むものである。
【実施例】
【0072】
以下、実施例を用いて本発明を更に詳細に説明するが、本発明の技術的範囲は以下の実施例に限定されるものではない。
【0073】
〔実施例1〕B型判定プローブおよび増幅用プライマーの評価
<チップの作製>
表7に示すA型アレル又はO型アレル判定プローブ、表8に示すB型アレル判定プローブ、表9に示すO型アレル判定用プローブ(WO 2009/130797)及び表10に示す位置プローブをそれぞれジーンシリコンの所定の位置にスポットし、固定化を行い、チップを作製した。なお、具体的なチップの担体基板材料、固定化に使用した試薬、固定化方法等についてはWO 2009/130797の実施例に記載した方法に準じた。
【0074】
【表7】
【0075】
【表8】
表7及び8に記載した塩基配列に付した下線部は、5'末端側から796C/A 及び803G/Cを示している。
【0076】
【表9】
【0077】
【表10】
【0078】
<プライマーの調製>
本実施例では、B型判定領域を増幅するためのプライマーセット、O型判定領域を増幅するためのプライマーセット及び人獣判定領域を増幅するためのプライマーセットを含む、表11〜13に示す3種類のプライマーミックスを作製した。なお、表11に示したプライマーミックスは、B型判定領域を特異的に増幅するプライマーセット(I)を含んでいる。表12に示したプライマーミックスは、B型判定領域を特異的に増幅するプライマーセット(II)を含んでいる。表13に示したプライマーミックスは、B型判定領域を特異的に増幅するプライマーセット(III)を含んでいる。
【0079】
【表11】
【0080】
【表12】
【0081】
【表13】
【0082】
なお表11及び12に示したプライマーミックスについては、下記表14に示す割合で各プライマーを混合した。
【表14】
【0083】
表13に示したプライマーミックスについては、下記表15に示す割合で各プライマーを混合した。
【表15】
【0084】
<核酸増幅反応>
以上のように調製した3種類のプライマーミックスを用いてPCRを行い、B型判定領域及びO型判定領域を同時に増幅した。PCRのプレミックスの組成を表16に示した(各プライマーセット分計183本)。
【0085】
【表16】
このプレミックスに検体DNAを1μL加え、表17に示す温度条件で35サイクル反応させた。なお、本実施例では、検体としてAA型、AB型、BB型、BO型、AO型及びOO型の検体を各3検体ずつ使用した。
【0086】
【表17】
【0087】
<ハイブリダイズ反応>
上述の反応液組成及び反応条件でPCRを実施した後、反応液とハイブリダイズ緩衝液(3×SSC/0.3%SDS/0.4 nM Cy5標識オリゴDNA(シグマジェノシス))を2:1で混合し、この溶液を3μLとり、ハイブリカバーの中央凸部の上に滴下して、これをチップに被せ、54℃に設定したハイブリダイズチャンバー装置(東洋鋼鈑)で1時間反応させた。
【0088】
<洗浄及び観察>
ハイブリダイズ反応終了後、洗浄用ステンレスホルダーを2×SSC/0.2% SDS溶液に浸し、ハイブリカバーをはずしたチップをホルダーにセットした。上下に数回振動させた後、チップの蛍光強度を検出するまでホルダーを2×SSC溶液(室温)に浸した。
【0089】
カバーガラスとチップとを被せた後、BIOSHOT(東洋鋼鈑)及びその制御ソフトウエア(Shot Analyzer Ver 1.133暫定版2、東洋鋼鈑)を用いてスポット径10 pix、 露光時間15 秒で蛍光強度を検出した。BIOSHOTで得られたデータの解析は、Microsoft Excel(マイクロソフト)で行った。
【0090】
<結果1>
先ず、チップに固定したプローブから検出された蛍光強度を指標としてプローブの評価を行った。表7に示したA型アレル又はO型アレル判定プローブ1〜13については、B型アレルがない検体(AA、AO及びOO型)を用いたときの蛍光強度の平均を算出し、蛍光強度平均値が1000以上のプローブを検出可能として、評価「○」とした。結果を表18に示した。
【0091】
【表18】
なお、表18は、左から順に、表11に示したプライマーミックス、表12に示したプライマーミックス、及び表13に示したプライマーミックスを使用したときの結果を示している。
【0092】
次に、チップに固定したプローブから検出された蛍光強度を指標としてプローブの評価を行った。表8に示したB型アレル判定プローブA〜Eについては、B型アレルのみ検体(BB型)を用いたときの蛍光強度の平均を算出し、蛍光強度平均値が1000以上のプローブを検出可能として、評価「○」とした。結果を表19に示した。
【0093】
【表19】
なお、表19は、表18と同様に、左から順に、表11に示したプライマーミックス、表12に示したプライマーミックス、及び表13に示したプライマーミックスを使用したときの結果を示している。
【0094】
<結果2>
上述した3種類のプライマーセットを用いて増幅したB型判定領域について、B型判定値はB型アレル判定プローブの蛍光強度/A,O型アレル判定プローブとB型判定プローブの蛍光強度の平均値より算出した値を判定値とした。この時、各種プローブを使用した場合の判定値の平均値、標準偏差及び3σを算出した。これらの算出結果を表20〜22に示した。表20〜22は、それぞれB型判定領域を特異的に増幅するプライマーセット(I)〜(III)を使用したとき(すなわち表11〜13のプライマーミックス)の結果を示している。また、表20〜22において「プローブA,O」とした欄は、A型アレル又はO型アレル判定プローブの種類(表7に示した13種類)を示している。表20〜22において「プローブB」とした欄は、B型アレル判定プローブの種類(表8に示した6種類)を示している。
【0095】
【表20】
【0096】
【表21】
【0097】
【表22】
【0098】
そして、表20〜22に示した計算結果を用いて、各プローブの性能を評価するため「平均値の差」、「3σの和」、「(平均値の差)−(3σの和)」及び「差の掛け算」を算出した。計算の結果を表23〜25に示した。
【0099】
表23〜25における「(2)判定」の欄に、上記<結果1>に示した蛍光強度が1000を超えるプローブのうち「(平均値の差)−(3σの和)」の値が0を超えるものを○とし、0以下のものを×とする評価結果を示した。すなわち、この欄には、判定値の平均±3σが重複しないこと、すなわちプローブの分離精度に関する評価結果が示されている。なお、この欄において「−」は、上記<結果1>に示した蛍光強度が1000を満たしていないプローブセットを示している。
【0100】
また、表23〜25における「(3)判定」の欄に、上記「(2)判定」が○であったプローブセットについて、判定値の平均値の積が0.5を超えるものを○とし、0.5以下のものを×とする評価結果を示した。すなわち、この欄には、判定値の開き度合いを指標としてプローブの性能評価結果が示されている。なお、この欄におい「−」は、上記<結果1>に示した蛍光強度が1000を満たしていないプローブセット及び上記「(2)判定」で×となったプローブセットを示している。
【0101】
【表23】
【0102】
【表24】
【0103】
【表25】
【0104】
表23〜25に示すように、本実施例で設計したA型アレル又はO型アレル判定プローブ1〜13のなかでも、配列番号10の塩基配列(ACTACCTGGGGGGGTTC)を含む20塩基以上の塩基配列からなり、Tm値が65℃以上であるA型アレル又はO型アレル判定プローブ9〜13は、プライマーセットで増幅したB型判定領域を高感度に検出できるものと言える。特に、A型アレル又はO型アレル判定プローブ12及び13は、本実施例で設計した3種類のプライマーセットで増幅した全てのB型判定領域を高感度に検出できることが明らかとなった。
【0105】
表23〜25に示すように、本実施例で設計したB型アレル判定プローブA〜Eは、プライマーセットで増幅したB型判定領域を高感度に検出できるものと言える。特に、B型アレル判定プローブC〜Eは、本実施例で設計した3種類のプライマーセットで増幅した全てのB型判定領域を高感度に検出できることが明らかとなった。
【0106】
〔実施例2〕O型判定領域増幅用プライマーの評価
本実施例では、WO 2009/130797で開示されたプライマーセットと、実施例1で設計したABO_261_O_Fw(配列番号8)及びABO_261_O_Rv(配列番号9)のプライマーセットとの性能を評価した。具体的に、各プライマーセットで増幅したO型判定領域を、WO 2009/130797で開示されたO型アレル判定用プローブ(実施例1の表9)で検出する際の精度を指標にして評価した。
【0107】
本実施例では、実施例1で行った実験において、表9に示した一対のO型アレル判定用プローブにおける蛍光強度の測定値から、判定値を算出した。判定値は(ABO_261 O Sの蛍光強度)/(ABO_261_WT_SとABO 261 O Sの蛍光強度の平均値)から算出した。実施例1と同様に「判定値の平均値」、「判定値の標準偏差」及び「3σ」を算出した。結果を表26に示す。
【0108】
【表26】
【0109】
また、実施例1と同様に、表26に示した計算結果を用いて、各プローブの性能を評価するため「平均値の差」、「3σの和」、「(平均値の差)−(3σの和)」及び「差の掛け算」を算出した。計算の結果を表27に示した。
【0110】
【表27】
【0111】
表27に示した結果から、本実施例1で設計したABO_261_O_Fw(配列番号8)及びABO_261_O_Rv(配列番号9)のプライマーセットは、従来公知のプライマーセットと比較するとO型判定領域を極めて優れた分離精度で検出できることが判る。
【0112】
また、
図2には、上述した結果に加え、実施例1で設計したプライマーセット:ABO_B_Fw‐2(配列番号1)及びABO_B_Fw‐5(配列番号3)で増幅したB型判定領域を、実施例1で設計したA、O型アレル判定プローブ(配列番号15)又はB型アレル判定プローブ(配列番号20)で検出したときの分離性能を示している。
図2に示すグラフは、O型判定値を横軸とし、B型判定値を縦軸としてAA型、AB型、BB型、BO型、AO型及びOO型の検体がどの程度分離してプロットされているかを示している。
図2から判るように、実施例1及び2にて評価した本発明に係るプライマー及びプローブを使用した場合には、WO 2009/130797で開示されたチップを使用した場合(
図2における「過去チップ」のプロット)と比較して高精度に分離できている。したがって、本発明に係るプライマー及びプローブを使用することで、AA型、AB型、BB型、BO型、AO型及びOO型を高精度に判定できることが明らかとなった。