特許第6028319号(P6028319)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6028319フォトマスクブランク及びその製造方法並びにフォトマスクの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6028319
(24)【登録日】2016年10月28日
(45)【発行日】2016年11月16日
(54)【発明の名称】フォトマスクブランク及びその製造方法並びにフォトマスクの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 1/26 20120101AFI20161107BHJP
【FI】
   G03F1/26
【請求項の数】12
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2011-208853(P2011-208853)
(22)【出願日】2011年9月26日
(65)【公開番号】特開2013-68887(P2013-68887A)
(43)【公開日】2013年4月18日
【審査請求日】2014年8月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089875
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 茂
(72)【発明者】
【氏名】山崎 太一
【審査官】 新井 重雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−146152(JP,A)
【文献】 特開平06−282066(JP,A)
【文献】 特開平05−281702(JP,A)
【文献】 特開平06−180497(JP,A)
【文献】 特開平10−186630(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 1/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
石英からなる支持基板と第1の遮光膜とを有するフォトマスクブランクにおいて、
前記支持基板の一方の面に、前記支持基板のドライエッチング処理時に実質的にエッチングされないエッチングストップ膜が形成され、
前記エッチングストップ膜の前記支持基板と反対の面に前記支持基板と同じ材質からなる透過層が形成され、
前記第1の遮光膜は、前記透過層の前記エッチングストップ膜と反対の面に形成され、
前記第1の遮光膜の前記透過層と反対の面に前記第1の遮光膜のドライエッチング処理に対して実質的にエッチングされない材料からなる第2の遮光膜が更に形成され、
前記第1の遮光膜のウェハ露光波長に対する透過率が5%以上40%以下であり、且つ前記第1の遮光膜と接触した状態での前記第1及び第2の遮光膜を含む全体の透過率が10%以下であり、
前記第2の遮光膜が、クロム、酸化クロム、ジルコニウム、酸化ジルコニウム、インジウム、酸化インジウム、酸化インジウムスズおよびタンタルのうち、1つまたは複数の膜組成からなる
ことを特徴とするフォトマスクブランク。
【請求項2】
前記エッチングストップ膜が、ウェハ露光波長に対して80%以上の透過率を有することを特徴とする請求項1記載のフォトマスクブランク。
【請求項3】
前記エッチングストップ膜の膜厚が10nm以下であることを特徴とする請求項1または2記載のフォトマスクブランク。
【請求項4】
前記第1の遮光膜が、クロム、酸化クロム、モリブデン、シリコン、モリブデンシリコン、ジルコニウムおよびタンタルのうち、1つまたは複数の膜組成からなることを特徴とする請求項1乃至3に何れか1項記載のフォトマスクブランク。
【請求項5】
前記エッチングストップ膜が、クロム、酸化クロム、ジルコニウム、酸化ジルコニウム、インジウム、酸化インジウム、酸化インジウムスズおよびタンタルのうち、1つまたは複数の膜組成からなることを特徴とする請求項1乃至4に何れか1項記載のフォトマスクブランク。
【請求項6】
石英からなる支持基板上に石英のドライエッチング処理に対して実質的にエッチングされない材料からなるエッチングストップ膜を一定の厚さで成膜するエッチングストップ成膜工程と、
前記エッチングストップ膜の前記支持基板と反対の面に前記支持基板と同じ材質からなる基板を貼り合わせた後、一定の厚さになるまで研磨処理して透過層を形成する透過層形成工程と、
前記透過層の前記エッチングストップ膜と反対の面に第1の遮光膜を形成する遮光膜形成工程とを備える、
ことを特徴とするフォトマスクブランクの製造方法。
【請求項7】
前記エッチングストップ膜に前記基板を貼り合わせる際に熱処理を行うことを特徴とする請求項6記載のフォトマスクブランクの製造方法。
【請求項8】
前記熱処理は400℃以下で行われることを特徴とする請求項7記載のフォトマスクブランクの製造方法。
【請求項9】
前記第1の遮光膜の前記透過層と反対の面に前記第1の遮光膜のドライエッチング処理に対して実質的にエッチングされない材料からなる第2の遮光膜を更に形成する工程を備えることを特徴とする請求項6乃至8に何れか1項記載のフォトマスクブランクの製造方法。
【請求項10】
請求項1乃至5に何れか1項記載のフォトマスクブランクを有し、前記フォトマスクブランクの前記遮光膜または前記第2の遮光膜にレジストを塗布し、電子描画機にて描画した後、現像処理を行うことでレジストパターンを形成し、前記レジストパターンをマスクにして前記第1の遮光膜または該第1の遮光膜を含む前記第2の遮光膜をエッチングしてパターンを形成した後、前記透過層を前記エッチングストップ膜に達するまでエッチング処理を行うことでシフター部を形成することを特徴とするフォトフォトマスクの製造方法。
【請求項11】
請求項1乃至5に何れか1項記載のフォトマスクブランクを有し、前記フォトマスクブランクの前記遮光膜または前記第2の遮光膜にレジストを塗布し、電子描画機にて描画後、現像処理を行うことでレジストパターンを形成し、前記レジストパターンをマスクに前記第1の遮光膜または該第1の遮光膜を含む前記第2の遮光膜をエッチングしてパターン形成後、前記透過層を前記エッチングストップ膜に達するまでエッチング処理を行うことでシフター部を形成し、且つ前記第1の遮光膜または該第1の遮光膜を含む前記第2の遮光膜を除去することでCPLマスクとすることを特徴とするフォトマスクの製造方法。
【請求項12】
石英からなる支持基板と第1の遮光膜とを有するフォトマスクブランクを有するフォトマスクの製造方法であって、
前記フォトマスクブランクは、前記支持基板の一方の面に、前記支持基板のドライエッチング処理時に実質的にエッチングされないエッチングストップ膜が形成され、前記エッチングストップ膜の前記支持基板と反対の面に前記支持基板と同じ材質からなる透過層が形成され、前記第1の遮光膜は、前記透過層の前記エッチングストップ膜と反対の面に形成され、
前記第1の遮光膜の前記透過層と反対の面に前記第1の遮光膜のドライエッチング処理に対して実質的にエッチングされない材料からなる第2の遮光膜が更に形成され、
前記フォトマスクブランクの前記遮光膜または前記第2の遮光膜にレジストを塗布し、電子描画機にて描画後、現像処理を行うことでレジストパターンを形成し、前記レジストパターンをマスクに前記第1の遮光膜または該第1の遮光膜を含む前記第2の遮光膜をエッチングしてパターン形成後、前記透過層を前記エッチングストップ膜に達するまでエッチング処理を行うことでシフター部を形成し、且つ前記第1の遮光膜または該第1の遮光膜を含む前記第2の遮光膜を除去することでCPLマスクとすることを特徴とするフォトマスクの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位相シフト効果を利用するフォトマスクの作製において、透過部の透過性を損なわずに、より安定したシフターの加工を実現するフォトマスクブランク及びその製造方法並びにフォトマスクブランクを用いたフォトマスクの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
位相反転効果を有するフォトマスクには、支持基板上に任意量の透過率を有する遮光膜を成膜することで位相反転効果を利用するハーフトーンマスクと、支持基板である石英基板をエッチングにより任意の深さまで掘り込んだシフターを有するハーフトーンマスク、レベンソンマスクやChromless Phase Lithography(CPL)マスクがある(特許文献1、2参照)。
【0003】
前者については、遮光膜と支持基板の間に遮光膜および支持基板と選択比の取れる膜を形成することで、エッチングストッパー層として利用するフォトマスクブランクがある。
また、後者のように掘り込みシフターを有する場合、支持基板の上部にエッチングストッパー層を形成後、透過層を形成することで、シフターの掘り込み量の制御を可能とするフォトマスクブランクがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−072445号公報
【特許文献2】特開平7―072612号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記後者のように任意の深さまで掘り込んだシフターを有する場合、エッチングストッパー上部に形成された透過層の透過率が、支持基板の透過率と異なることで、透過部の透過性を損なう恐れがあり、実用化が困難である。
【0006】
そこで、本発明は、エッチングストッパー上部に形成された透過層が、石英からなる支持基板と同じ材質によって形成されていることで透過部の透過性を損なわずに、任意に掘り込み深さの制御を可能とし、且つより安定したシフターの加工性を実現できるフォトマスクブランク及びその製造方法並びにフォトマスクブランクを用いたフォトマスクの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために請求項1記載の発明は、石英からなる支持基板と第1の遮光膜とを有するフォトマスクブランクにおいて、前記支持基板の一方の面に、前記支持基板のドライエッチング処理時に実質的にエッチングされないエッチングストップ膜が形成され、前記エッチングストップ膜の前記支持基板と反対の面に前記支持基板と同じ材質からなる透過層が形成され、前記第1の遮光膜は、前記透過層の前記エッチングストップ膜と反対の面に形成され、前記第1の遮光膜の前記透過層と反対の面に前記第1の遮光膜のドライエッチング処理に対して実質的にエッチングされない材料からなる第2の遮光膜が更に形成され、前記第1の遮光膜のウェハ露光波長に対する透過率が5%以上40%以下であり、且つ前記第1の遮光膜と接触した状態での前記第1及び第2の遮光膜を含む全体の透過率が10%以下であり、前記第2の遮光膜が、クロム、酸化クロム、ジルコニウム、酸化ジルコニウム、インジウム、酸化インジウム、酸化インジウムスズおよびタンタルのうち、1つまたは複数の膜組成からなることを特徴とする。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1記載のフォトマスクブランクにおいて、前記エッチングストップ膜が、ウェハ露光波長に対して80%以上の透過率を有することを特徴とする。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1または2記載のフォトマスクブランクにおいて、前記エッチングストップ膜の膜厚が10nm以下であることを特徴とする。
【0012】
請求項の発明は、請求項1乃至に何れか1項記載のフォトマスクブランクにおいて、前記第1の遮光膜が、クロム、酸化クロム、モリブデン、シリコン、モリブデンシリコン、ジルコニウムおよびタンタルのうち、1つまたは複数の膜組成からなることを特徴とする。
【0013】
請求項の発明は、請求項1乃至に何れか1項記載のフォトマスクブランクにおいて、前記エッチングストップ膜が、クロム、酸化クロム、ジルコニウム、酸化ジルコニウム、インジウム、酸化インジウム、酸化インジウムスズおよびタンタルのうち、1つまたは複数の膜組成からなることを特徴とする。
【0015】
請求項の発明は、フォトマスクブランクの製造方法であって、石英からなる支持基板上に石英のドライエッチング処理に対して実質的にエッチングされない材料からなるエッチングストップ膜を一定の厚さで成膜するエッチングストップ成膜工程と、前記エッチングストップ膜の前記支持基板と反対の面に前記支持基板と同じ材質からなる基板を貼り合わせた後、一定の厚さになるまで研磨処理して透過層を形成する透過層形成工程と、前記透過層の前記エッチングストップ膜と反対の面に第1の遮光膜を形成する遮光膜形成工程とを備えることを特徴とする。
【0016】
請求項の発明は、請求項記載のフォトマスクブランクの製造方法において、前記エッチングストップ膜に前記基板を貼り合わせる際に熱処理を行うことを特徴とする。
【0017】
請求項の発明は、請求項記載のフォトマスクブランクの製造方法において、前記熱処理は400℃以下で行われることを特徴とする。
【0018】
請求項の発明は、請求項乃至に何れか1項記載のフォトマスクブランクの製造方法において、前記第1の遮光膜の前記透過層と反対の面に前記第1の遮光膜のドライエッチング処理に対して実質的にエッチングされない材料からなる第2の遮光膜を更に形成する工程を備えることを特徴とする。
【0019】
請求項10の発明は、フォトフォトマスクの製造方法であって、請求項1乃至に何れか1項記載のフォトマスクブランクを有し、前記フォトマスクブランクの前記第1の遮光膜または前記第2の遮光膜にレジストを塗布し、電子描画機にて描画した後、現像処理を行うことでレジストパターンを形成し、前記レジストパターンをマスクにして前記第1の遮光膜または該第1の遮光膜を含む前記第2の遮光膜をエッチングしてパターンを形成した後、前記透過層を前記エッチングストップ膜に達するまでエッチング処理を行うことでシフター部を形成することを特徴とする。
【0020】
請求項11の発明は、フォトマスクの製造方法であって、請求項1乃至5に何れか1項記載のフォトマスクブランクを有し、前記フォトマスクブランクの前記第1の遮光膜または前記第2の遮光膜にレジストを塗布し、電子描画機にて描画後、現像処理を行うことでレジストパターンを形成し、前記レジストパターンをマスクに前記第1の遮光膜または該第1の遮光膜を含む前記第2の遮光膜をエッチングしてパターン形成後、前記第1の透過層を前記エッチングストップ膜に達するまでエッチング処理を行うことでシフター部を形成し、且つ前記第1の遮光膜または該第1の遮光膜を含む前記第2の遮光膜を除去することでCPLマスクとすることを特徴とする。
請求項12の発明は、石英からなる支持基板と第1の遮光膜とを有するフォトマスクブランクを有するフォトマスクの製造方法であって、前記フォトマスクブランクは、前記支持基板の一方の面に、前記支持基板のドライエッチング処理時に実質的にエッチングされないエッチングストップ膜が形成され、前記エッチングストップ膜の前記支持基板と反対の面に前記支持基板と同じ材質からなる透過層が形成され、前記第1の遮光膜は、前記透過層の前記エッチングストップ膜と反対の面に形成され、前記第1の遮光膜の前記透過層と反対の面に前記第1の遮光膜のドライエッチング処理に対して実質的にエッチングされない材料からなる第2の遮光膜が更に形成され、前記フォトマスクブランクの前記遮光膜または前記第2の遮光膜にレジストを塗布し、電子描画機にて描画後、現像処理を行うことでレジストパターンを形成し、前記レジストパターンをマスクに前記第1の遮光膜または該第1の遮光膜を含む前記第2の遮光膜をエッチングしてパターン形成後、前記透過層を前記エッチングストップ膜に達するまでエッチング処理を行うことでシフター部を形成し、且つ前記第1の遮光膜または該第1の遮光膜を含む前記第2の遮光膜を除去することでCPLマスクとすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明のフォトマスクブランク及びその製造方法によれば、エッチングストップ膜が石英からなる支持基板の加工時にエッチングストッパー層として機能することで、ドライエッチング装置の状態変化、またはパターン密度やパターン寸法等によるエッチングレート変化に依存することなく、任意に掘り込み深さの制御が可能となる。また、エッチングストップ膜を挟んで、支持基板と反対の面に形成されている透過層が、支持基板と同じ材質によって形成されていることで、支持基板との材料の違いによる透過率の変化を抑制することができる。
【0022】
また、本発明のフォトマスクブランク及びその製造方法によれば、エッチングストップ膜が、ウェハ露光波長に対して透過率の高い材料(例えば十分酸化した酸化クロム)を使用し、80%以上の透過率を実現することで、エッチングストップ膜が石英からなる支持基板とより近い透過率を得ることができ、エッチングストップ膜による透過率の減少を防ぐことができる。
【0023】
また、本発明のフォトマスクブランク及びその製造方法によれば、エッチングストップ膜の膜厚が10nm以下の薄膜を使用することで、任意波長に対する十分な透過性を確保することが可能となり、遮光部直下のエッチングストップ膜による任意波長に対する遮光性または屈折率による転写性への影響をより少なくすることができる。
【0024】
また、本発明のフォトマスクブランクの製造方法によれば、エッチングストップ膜を任意の厚さに成膜し、このエッチングストップ膜上に支持基板と同じ材質からなる基板を貼り合わせた後、ウェハ露光波長に対して任意の位相差を有するような任意の厚さになるまで研磨処理を行うことにより、支持基板内部の任意の深さにエッチングストップ膜を形成することができる。また、基板の貼り合わせ後に石英基板を任意の厚さになるまで研磨処理することで、エッチングストップ膜上部への薄膜石英層の形成が容易になる。また、透過層に、より透過性に優れた石英を使用することで、他の材料を使用した場合に比べてより安定した透過性を実現することができる。
【0025】
また、本発明のフォトマスクブランクの製造方法によれば、基板の貼り合わせ処理の際に熱処理工程を加えることで、より容易に貼り合わせ処理を行うことが可能となる。しかも、上記熱処理を400℃以下で行うことで、熱膨張率の違いによる基板へのダメージを軽減することが可能となる。
【0026】
また、本発明のフォトマスクブランク及びその製造方法によれば、第1の遮光膜のウェハ露光波長に対する透過率が10%以下であることにより、バイナリマスクまたはレベンソンマスクまたはCPLマスクの作製が可能となる。
【0027】
また、本発明のフォトマスクブランク及びその製造方法によれば、第1の遮光膜の透過層と反対の面に該第1の遮光膜のドライエッチング処理に対して実質的にエッチングされない材料からなる第2の遮光膜を更に形成し、そして、第1の遮光膜のウェハ露光波長に対する透過率を5%以上、40%以下とし、第2の遮光膜が第1の遮光膜のドライエッチング処理に対して実質的にエッチングされず、且つ第1の遮光膜と接触した状態での第1及び第2の遮光膜を含む全体の透過率が10%以下とすることで、ハーフトーンマスクの作製が可能となる。
【0028】
また、本発明のフォトマスクの製造方法によれば、フォトマスクブランクの第1の遮光膜にレジストを塗布して描画し、現像処理してレジストパターンを形成し、かつ第1の遮光膜をエッチングしてパターンを形成した後、石英からなる支持基板を、エッチングストップ膜に達するまでエッチング処理することでシフター部を形成するようにしたので、バイナリマスクまたはハーフトーンマスクの作製が可能となる。
【0029】
また、本発明のフォトマスクの製造方法によれば、フォトマスクブランクの第1の遮光膜にレジストを塗布して描画し、現像処理してレジストパターンを形成し、かつ第1の遮光膜をエッチングしてパターンを形成した後、石英からなる支持基板を、エッチングストップ膜に達するまでエッチング処理することでシフター部を形成し、かつ第1の遮光膜または該第1の遮光膜を含む第2の遮光膜を除去することでCPLマスクの作製が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明にかかるフォトマスクブランクの一例を示す概略断面図である。
図2】(a),(b)は本発明にかかるフォトマスクブランクを用いて作製されたバイナリマスクまたはハーフトーンマスクの一例を示す説明用断面図である。
図3】本発明にかかるフォトマスクブランクの製造方法の一例を示す説明用断面図である。
図4】本発明にかかるフォトマスクブランクの他の例を示す概略断面図である。
図5】(a),(b)は本発明にかかるフォトマスクブランクを用いて作製されたCPL構造のフォトマスクの例を示す説明用断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
(第1の実施の形態)
本発明にかかるフォトマスクブランクの実施の形態について、図1を参照して詳細に説明する。
フォトマスクブランクは、図1に示すように、石英からなる支持基板11を有する。ここで石英とは、合成・天然を問わず、二酸化ケイ素(SiO)のみまたは、二酸化ケイ素(SiO)を主成分とする物質を言う。一般に石英ガラスと呼ばれるものを含む。
また、支持基板11の一方の面には、支持基板11のドライエッチング処理が可能なSFなどのエッチングガスに対して実質的にエッチングされない、酸化クロム等の材料からなるエッチングストップ膜13が形成されている。このエッチングストップ膜13は、ドライエッチング装置の状態変化、またはパターン密度やパターン寸法等によるエッチングレート変化によって掘り込み深さの変化を抑制することが可能となる。
【0032】
また、エッチングストップ膜13の支持基板11と反対の面には、支持基板11と同じ材質からなる透過層14が形成されている。透過層14が支持基板11と同じ材質、同じ透過率の石英で形成されことで、支持基板11との材料の違いによる透過率の変化を抑制することができる。
また、透過層14のエッチングストップ膜13と反対の面には第1の遮光膜12が形成されている。
【0033】
このような構造のフォトマスクブランクを用いてフォトマスクを作製する場合は、第1の遮光膜12の上面にレジストを塗布し、電子描画機にて描画した後、現像処理を行うことでレジストパターンを形成する。そして、上記レジストパターンをマスクにして第1の遮光膜12をエッチングしパターンを形成した後、透過層14をエッチングストップ膜13に達するまでエッチング処理する。これにより、図2(a)または(b)に示すように、シフター部を形成することできる。そして、図2(a)または(b)に示す第1の遮光膜12を除去することで、バイナリマスクまたはハーフトーンマスクの作製が可能となる。
なお、この場合、図2(a)に示すようにシフター部のエッチングストップ膜を除去して、遮光部直下のエッチングストップ膜16が有する形態であっても良い。また、図2(b)に示すようにシフター部のエッチングストップ膜15を除去せずに残したものであっても良い。
【0034】
ここで、第1の遮光膜12がウェハ露光波長に対して5%以上、40%以下の透過率を有するハーフトーンマスクもしくは第1の遮光膜12を除去することにより、CPLマスクとする場合は、透過層14を除去した開口部と透過層14を残し、且つ固有の透過率を有する第1の遮光層12との間の透過率差および位相差の違いを軽減することで、ウェハへの転写性を損なうことがない。
また、図1に示すフォトマスクブランクにおいて、石英からなる透過層14をエッチングストップ膜13までエッチング処理する際、ドライエッチング処理の代わりにフッ酸等のエッチングが可能な薬液を用いてウェットエッチング処理を行ってもよい。
【0035】
本発明に係るフォトマスクブランク製造方法の他の例について、図3を参照して説明する。
図3に示すように、石英からなる支持基板17上に石英のドライエッチング処理に対して実質的にエッチングされない材料からなるエッチングストップ膜13を任意の厚さで成膜した後、エッチングストップ膜13の支持基板17と反対の面に、支持基板17と同じ材質の石英からなる基板18を矢印19に示す方向に貼り合わせ、図1と同様の透過層を形成する。これにより、スパッタ法にて積層、形成した場合と比べて、膜の均一性および欠陥低減に優れている膜の実現が可能となる。
この場合の基板18は、ウェハ露光波長に対して任意の位相差を有するような厚さの石英基板となる。
【0036】
また、支持基板17と同じ材質の石英からなる基板18を貼り合わせた後に研磨処理を行うことにより、予め薄膜に形成された基板18の貼り合わせ処理を行う場合に比べて、容易にかつ安定的に薄膜な透過層を形成することが可能になる。
【0037】
(第2の実施の形態)
本発明に係るフォトマスクブランクの第2の実施の形態について、図4を参照して説明する。
本実施の形態におけるフォトマスクブランクは、図4に示すように、石英からなる支持基板11と、支持基板11の一方の面に形成され、支持基板11のドライエッチング処理時に実質的にエッチングされないエッチングストップ膜14と、エッチングストップ膜13の支持基板11と反対の面に形成され、支持基板11と同じ材質からなる透過層14と、透過層14のエッチングストップ膜13と反対の面に形成された第1の遮光膜12と、第1の遮光膜12の透過層14と反対の面に形成され、第1の遮光膜12のドライエッチング処理に対して実質的にエッチングされない材料からなる第2の遮光膜20とから構成されている。なお、第1の遮光膜12と接触した状態での第2の遮光膜20を含むフォトマスクブランク全体の透過率が10%以下である。
【0038】
本実施の形態におけるフォトマスクブランクの第1の遮光膜12のウェハ露光波長に対する透過率が5%以上、40%以下であり、第2の遮光膜20が第1の遮光膜12のドライエッチング処理に対して実質的にエッチングされず、且つ第1の遮光膜12及び第2の遮光膜20を含むフォトマスクブランク全体の透過率が10%以下であることにより、ハーフトーンマスクの作製が可能となる。
【0039】
(第3の実施の形態)
本発明に係るフォトマスクブランクを用いてCPLマスクを作製する場合の実施の形態について、図5を参照して説明する。
図5(a)に示すように、エッチングストップ膜13の支持基板11と反対の面に形成された透過層14をエッチングストップ膜13までエッチング処理することでシフター部を形成し、このシフター部におけるエッチングストップ膜13を、石英がエッチングされず、且つエッチングストップ膜13がエッチングされる塩素等のエッチングガスを用いてエッチングし、シフター部のエッチングストップ膜を除去する。これにより、シフター部の透過率を十分に確保することができる。
なお、エッチングストップ膜を除去する際、ドライエッチング処理の代わりに塩酸等の酸化クロム等からなるエッチングストップ膜のエッチングが可能な薬液を用いてウェットエッチング処理を行ってもよい。
【0040】
また、エッチングストップ膜13がウェハ露光波長に対して80%以上の透過率を有する場合は、図5(b)に示すように、シフター部のエッチングストップ膜15の除去を行わなくても十分な透過率を確保することが可能となり、フォトマスク作製工程を簡略化することができる。
【0041】
次に、本発明の実施例について説明する。
(実施例1)
本実施例におけるフォトマスクの構造の一例を下記に示す。
(フォトマスク構造ほか)
第1の遮光膜:30%ハーフトーン膜
第1の遮光膜厚:250Å
エッチングストップ膜:酸化クロム
エッチングストップ膜の膜厚:10Å
透過層の膜厚:1710Å
レジスト:化学増幅型ポジ型レジスト
レジスト膜厚:1500Å
【0042】
上記図2(a)は、フォトマスクブランクにレジストが塗布され、且つ電子描画機にてパターン描画されたフォトマスクブランクをドライエッチング処理によってシフター部を形成した後、シフター部のエッチングストップ膜および遮光膜上のレジストの除去を行うことで作製されたフォトマスクを示している。エッチングストップ膜13の酸化クロムを10Åとすることで、ウェハ露光波長に対するエッチングストップ膜の透過率を80%以上確保することが可能である。なお、シフター部はエッチングストップ膜除去後、193nmのウェハ露光波長に対して位相差が180°となるように設定した。
【0043】
上記図2(a)のフォトマスク面内を対角線上で11箇所の位相差測定を行った。11箇所の平均値が180.3°、レンジが0.2°と安定した結果が得られた。
また、上記評価を3枚のフォトマスクを作製して実施したが、それぞれの平均値のレンジが0.3°と再現性が確認された。
【0044】
(実施例2)
本実施例におけるフォトマスクの構造の他の例を下記に示す。
(フォトマスク構造ほか)
第1の遮光膜:クロム
第1の遮光膜厚:50Å
(遮光膜はシフター形成後除去)
エッチングストップ膜:酸化クロム
エッチングストップ膜の膜厚:10Å
透過層膜厚:1990Å
レジスト:化学増幅型ポジ型レジスト
レジスト膜厚:1000Å
【0045】
図5(a)はCPLマスクであり、かかるCPLマスクは、フォトマスクブランクにレジストを塗布し、且つ電子描画機にてパターン描画されたフォトマスクブランクをドライエッチング処理によってシフター部を形成した後、シフター部のエッチングストップ膜13、図示省略の第1の遮光膜12上のレジストおよび第1の遮光膜12の除去を行うことで作製される。エッチングストップ膜13の酸化クロムを10Åとすることで、ウェハ露光波長に対するエッチングストップ膜の透過率を80%以上確保することが可能である。なお、シフター部はエッチングストップ膜除去後、193nmのウェハ露光波長に対して位相差が210°となるように設定した。
【0046】
図5(a)のフォトマスク面内を対角線上で11箇所の位相差測定を行った。11箇所の平均値が210.4°、レンジが0.2°と安定した結果が得られた。
また、上記評価を3枚のフォトマスクを作製して実施したが、それぞれの平均値のレンジが0.4°と再現性が確認された。
【符号の説明】
【0047】
11…支持基板
12…第1の遮光膜
13…エッチングストップ膜
14…透過層
15…シフター部のエッチングストップ膜
16…遮光部直下のエッチングストップ膜
17…支持基板と同じ材質の基板
18…ウェハ露光波長に対して任意の位相差を有する厚さの石英基板
20…第2の遮光膜
図1
図2
図3
図4
図5