(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
横電界方式のLCD表示パネル用のカラーフィルタ形成基板であって、透明基板側から、ブラックマトリクス、各色のカラーフィルタ用の着色層、オーバーコート層の順として配し、更に前記オーバーコート層上に、横電界方式の表示パネルを作製する際のTFT形成基板との間隙を保つための柱状物を配したものであり、前記ブラックマトリクスは、透明基板側から順に、導電性のクロム層、遮光性の樹脂層を積層した積層構造で、各色のカラーフィルタ領域を開口しており、且つ、前記導電性のクロム層は、全ブラックマトリクス形成領域にわたり電気的に導通しており、接地電位になるように接続され、前記導電性のクロム層の抵抗率(電気抵抗率とも言う)ρが、1×10-4Ω・cm以下であることを特徴とする横電界方式のLCD表示パネル用のカラーフィルタ形成基板。
請求項1に記載の横電界方式のLCD表示パネル用のカラーフィルタ形成基板であって、前記オーバーコート層の膜厚を1.0μm〜5.0μmの範囲としていることを特徴とする横電界方式のLCD表示パネル用のカラーフィルタ形成基板。
請求項1または請求項2に記載の横電界方式のLCD表示パネル用のカラーフィルタ形成基板であって、前記オーバーコート層の比誘電率値は、周波数が60Hz〜1kHzにおいて5以下であることを特徴とする横電界方式のLCD表示パネル用のカラーフィルタ形成基板。
横電界方式のLCD表示パネルであって、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の横電界方式のLCD表示パネル用のカラーフィルタ形成基板を用いていることを特徴とする横電界方式のLCD表示パネル。
【背景技術】
【0002】
フラットパネルディスプレイの中で、現在もっとも広く使用されているのが液晶表示装置(LCDとも言う)である。
【0003】
特に、TFT形成基板(TFT基板とも言う)とカラーフィルタ形成基板(カラーフィルタ基板とも言う)とを所定の間隔の間隙をあけ、該間隔に、液晶を配した形態のTFT方式のLCD(TFT−LCDとも言う)用の表示パネル(LCD表示パネルとも言う)は、パーソナルコンピュータ、ワープロ、OA機器などの民生用機器や携帯テレビジョン等の家電機器への応用により、市場の一層の拡大が期待されている。
【0004】
TN型TFT−LCDの製造技術は格段の進歩を遂げ、正面でのコントラスト、色再現性などはCRTを凌駕するまでに至ったが、このTN型TFT−LCDには視野角が狭いという大きな欠点があり、用途が限定されるため、近年、TN型TFT−LCDの表示状態に視角依存が生じる欠点を解決するため、IPS(IPS:In Plane Switching)型と呼ばれる方式のLCD用の表示パネルが提案されている。
【0005】
IPS型のLCD表示パネルは、通常、TFT形成基板に2つのスリット状電極を1組として複数形成し、各組毎に2つのスリット電極間に位置するTFT形成基板とカラーフィルタ形成基板との間隙部(ギャップ部とも言う)の液晶分子を横電界によって駆動させるものである。
【0006】
例えば、
図3に示すような断面構造のIPS型のLCD用の表示パネルは、TFT形成基板120に形成した共通電極122と画素電極123との間に電圧を印加することにより、カラーフィルタ形成基板110又はTFT形成基板120の界面とほぼ平行に電界を形成し、両基板の間隙部内の液晶分子がカラーフィルタ形成基板110及びTFT形成基板120と平行な面内で偏向されて回転し、光源からの光の偏向軸を回転させ、この画素が点灯状態となる。
【0007】
このように、各色に着色された画素それぞれについてカラーフィルタ形成基板110の背後にある液晶層の光透過率を制御することによってカラー画像が得られる。
【0008】
ここでは、電界を印加しない時には、液晶分子の長軸を上記各組の電極の長手方向に対してほぼ平行にホモジニアス配向させるように、配向膜をラビングしている。
【0009】
尚、IPS型の方式では液晶層制御の応答速度(スイッチング速度)が遅いため、実際のパネルでは、応答速度を改善するために、例えば、電圧印加時における液晶分子の配向方向の変化方向(回転方向)を一定とするように、液晶分子をスリット電極の長手方向に対して15°の方位にホモジニアス配向している。
【0010】
以下、ここでは、上記IPS型のLCD表示パネルのように、液晶の配向を電界により駆動して制御する方式のLCD表示パネルを、横電界方式あるいは横電界モードのLCD表示パネルとも言う。
【0011】
一般的に、横電界方式のLCD表示パネルにおいては、
図2(a)にその断面を示すように、カラーフィルタ形成基板10aは、ラビング時の静電気対策を主の目的として裏面に透明導電層(通常ITO層)14が形成されている。
【0012】
図2(a)に示すように、横電界方式のLCD用のカラーフィルタ形成基板10aは、透明基板の一面側に各色カラーフィルタ用の着色層13R、13G、13B、ブラックマトリクス(BMとも言う)12を配し、更に、これら着色層、BMを覆うようにオーバーコート層(OC層あるいは保護層とも言う)15を配しており、ここでは前記一面側を表面、該一面側でない他面を裏面と言う。
【0013】
しかし、カラーフィルタ形成基板の裏面に形成された透明導電層14が液晶表示パネルの製造工程上での搬送、冶具等でダメージを受ける。
【0014】
また、モバイル用途では、パネル組後、スリミング工程( 透明基板11を削る工程) により透明基板11の板厚を薄膜化するため、スリミング後に透明電極膜を形成するための追加工程が必要となるため、製造工程が増え、手間がかかることとなり、これが、取り扱いの不備を生じる原因ともなっている。
【0015】
一方、特開2009−186885号公報(特許文献2)には、ラビング時等の静電気対策用として配した透明導電層が、液晶表示パネルの製造工程上での搬送、冶具等でダメージを受けないように、
図2(b)に示すように、透明基板11の一面側に順次、透明導電層(ITO)14、ブラックマトリクス層12、カラーフィルタ用の各色の着色層13R、13G、13B、オーバーコート層15を配したカラーフィルタ形成基板10bが記載されている。
【0016】
しかし、ここに記載のカラーフィルタ形成基板10bのように、単にこのような位置に透明導電層を設けただけでは、
図2(a)に示す透明導電層を裏面に形成したカラーフィルタ形成基板10aの場合に比べて、横電界方式のLCD表示パネルに用いられた際には、カラーフィルタ形成基板の透明導電層(ITO)とTFTの電極との距離が、縮まるため、該透明導電層(ITO)に起因して、横電界を乱す縦方向の電界が生じて、結果、配向の乱れを生じるという問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
上記のように、一般的に、横電界モードのLCD用のカラーフィルタ形成基板においては、パネル形成に際してのラビング時の静電気対策を主の目的として裏面に透明導電層(通常ITO層)を形成しているが、該透明導電層が液晶表示パネルの製造工程上での搬送、冶具等でダメージを受け、これが問題となっていた。
【0019】
特に、モバイル用途では、透明基板(通常はガラス)の板厚を薄膜化するスリミング処理を行う必要があるため作製工程が一層複雑化し、問題となっていた。
【0020】
また、裏面とは反対側に透明導電層を配したカラーフィルタ形成基板の場合には、横電界方式のLCD表示パネルに用いられた際には、カラーフィルタ形成基板の透明導電層(ITO)とTFTの電極との距離が、縮まるため、該透明導電層(ITO)に起因して、横電界を乱す縦方向の電界が生じて、結果、配向の乱れを生じるという問題があった。
【0021】
本発明は、これらに対応するもので、従来問題となっていた、横電界方式のLCD表示パネル形成に際してのラビング時の静電気対策を主の目的としたカラーフィルタ形成基板の裏面の透明導電層(通常、ITO層:インジウム錫酸化物層)のダメージの不具合を解決でき、且つ、横電界方式の表示用パネルに用いられた際に、横電界の乱れを抑制して、確実に液晶の配向の乱れを抑制できる横電界方式のLCD表示パネル用のカラーフィルタ形成基板を提供しようとするものです。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明の横電界方式のLCD表示パネル用のカラーフィルタ形成基板は、横電界方式のLCD表示パネル用のカラーフィルタ形成基板であって、透明基板側から、ブラックマトリクス、各色のカラーフィルタ用の着色層、オーバーコート層の順として配し、更に前記オーバーコート層上に、横電界方式の表示パネルを作製する際のTFT形成基板との間隙を保つための柱状物を配したものであり、前記ブラックマトリクスは、透明基板側から順に、導電性のクロム層、遮光性の樹脂層を積層した積層構造で、各色のカラーフィルタ領域を開口しており、且つ、前記導電性のクロム層は、全ブラックマトリクス形成領域にわたり電気的に導通して
おり、接地電位になるように接続されることを特徴とするものである。
【0023】
そして、上記の横電界方式のLCD表示パネル用のカラーフィルタ形成基板であって、JIS K7194規格における前記ブラックマトリクスの導電性のクロム層の抵抗率ρが1×10
-4Ω・cm以下であることを特徴とするものである。
【0024】
また、上記いずれかの横電界方式のLCD表示パネル用のカラーフィルタ形成基板であって、前記オーバーコート層の膜厚を1.0μm〜5.0μmの範囲としていることを特徴とするものである。
【0025】
また、上記いずれかの横電界方式のLCD表示パネル用のカラーフィルタ形成基板であって、前記オーバーコート層の比誘電率値は、周波数が60Hz〜1kHzにおいて5以下であることを特徴とするものである。
【0026】
尚、抵抗率(電気抵抗率とも言う)は、どんな材料が電気を通しにくいかを比較するために、用いられる物性値で、比抵抗とも呼ばれ、ここでは、JIS K7194規格による値を示しており、ここでは、単位を[ Ω・ cm] としている。
【0027】
単にある導体の電気抵抗というと、抵抗の大きさは断面積に反比例し、長さに比例するので、寸法によらない指数として電気抵抗率という値を用いる。
【0028】
また、電気抵抗率ρの逆数を電気伝導率(導電率)とも言う。
【0029】
また、本発明の横電界方式のLCD表示パネルは、横電界方式のLCD表示パネルであって、上記のいずれかの横電界方式のLCD表示パネル用のカラーフィルタ形成基板を用いていることを特徴とするものである。
【0030】
(作用)
本発明の横電界方式のLCD表示パネル用のカラーフィルタ形成基板は、このような構成にすることにより、従来問題となっていた、横電界方式のLCD表示パネル形成に際してのラビング時の静電気対策を主の目的としたカラーフィルタ形成基板の裏面の透明導電層(通常ITO層)のダメージの不具合を解決でき、且つ、横電界方式の表示用パネルに用いられる際に、横電界の乱れを抑制して、確実に液晶の配向の乱れを抑制できる横電界方式のLCD表示パネル用のカラーフィルタ形成基板の提供を可能としている。
【0031】
具体的には、透明基板側から、ブラックマトリクス、各色のカラーフィルタ用の着色層、オーバーコート層の順として配し、更に前記オーバーコート層上に、横電界方式の表示パネルを作製する際のTFT形成基板との間隙を保つための柱状物を配したものであり、前記ブラックマトリクスは、透明基板側から順に、導電性のクロム層、遮光性の樹脂層を積層した積層構造で、各色のカラーフィルタ領域を開口しており、且つ、前記導電性のクロム層は、全ブラックマトリクス形成領域にわたり電気的に導通していることにより、これを達成している。
【0032】
詳しくは、ブラックマトリクスは、透明基板側から順に、導電性のクロム層、遮光性の樹脂層を積層した積層構造で、各色のカラーフィルタ領域を開口しており、且つ、前記導電性のクロム層は、全ブラックマトリクス形成領域にわたり電気的に導通していることにより、導電性のクロム層により、ラビング時の静電気等の帯電防止を可能とし、且つ、モバイル用途での、パネル組後、スリミング処理( 透明基板を削る処理) による透明基板の板厚の薄膜化に際しても、該導電性のクロム層の破損やダメージはないものとしており、表示装置に用いられた場合には、従来のITO等の透明導電層を内装したものと同程度以上の光透過率を確保できるものとしている。
【0033】
そして、導電性のクロム層が各色のカラーフィルタ領域を開口していることにより、横電界方式の表示パネルを作製する際、該導電性のクロム層の存在により、横電界の動作に悪影響が及ばないものとしている。
【0034】
更に、ブラックマトリクスは、透明基板側から順に、導電性のクロム層、遮光性の樹脂層を積層した積層構造であることより、導電性のクロム層からTFTまでの距離を確保し易くなり、横電界の動作に悪影響が及ばなくすることを可能としている。
【0035】
これらにより、横電界方式の表示用パネルに用いられた際に、横電界の乱れを抑制して、確実に液晶の配向の乱れを抑制できる横電界方式のLCD表示パネル用のカラーフィルタ形成基板の提供を可能としている。
【0036】
また、ブラックマトリクスは、透明基板側から順に、導電性のクロム層、遮光性の樹脂層を積層した積層構造であるため、ブラックマトリクスのOD(光学濃度)を確保し易いものとしている。
【0037】
更に具体的には、JIS K7194規格における前記ブラックマトリクスの導電性のクロム層の抵抗率ρ
を1×10
-4Ω・cm以下
とすることにより、透明基板の観察者側の面の帯電防止効果を良いものとして、確実に、スリミングの際の帯電による不具合を防止できるものとしている。
【0038】
また、前記オーバーコート層の膜厚を1.0μm〜5.0μmの範囲
とすることにより、着色層の平坦性の向上、耐熱性、耐湿性、耐薬品性などの信頼性の向上、バリア性を確保でき、且つ、良好なコーティング性、透明性を確保できるものとしている。
【0039】
着色層の平坦性の向上、耐熱性、耐湿性、耐薬品性などの信頼性の向上、バリア性の向上からは、0.05μm以上、好ましくは1.0μm以上で、良好なコーティング性、透明性からは、10μm以下、好ましくは5μm以下である。
【0040】
また、前記オーバーコート層の比誘電率値
を、周波数が60Hz〜1kHzにおいて5以下
とすることにより、実用の液晶駆動周波数レベルで残像を抑制できる横電界方式のLCD表示パネルの形成を可能としている。
【0041】
TFTにて駆動されるLCD表示パネルに使用される液晶の比誘電率の最大成分は、通常8〜12程度(少なくとも5.0以上)であり、オーバーコート層の比誘電率は液晶の比誘電率以下であることが好ましく、5以下としている。
【0042】
尚、例えば、膜厚2μm、比誘電率5程度の一般的なオーバーコート層(OC層) を用いた場合、柱状物の高さが3μmより大となることが好ましいが、オーバーコート層の膜厚、比誘電率を適宜選択することにより、オーバーコート層と柱状物の高さの和を5μmより小とすることや、柱状物の高さを3μmより低くすることもできる。
【0043】
また、前記透明導電層としては、汎用のITO層が挙げられるが、横電界方式の表示パネルに用いられた際の表示品質や機能を満足できるものであれば、これに限定はされない。
【0044】
例えば、非晶質であるIZO層(インジウム亜鉛酸化物層)等を用いても良い。
【発明の効果】
【0045】
本発明は、このように、従来問題となっていた、横電界方式のLCD表示パネル形成に際してのラビング時の静電気対策を主の目的としたカラーフィルタ形成基板の裏面の透明導電層(通常ITO層)のダメージの不具合を解決でき、且つ、横電界方式の表示用パネルに用いられた際に、横電界の乱れを抑制して、確実に液晶の配向の乱れを抑制できる横電界方式のLCD表示パネル用のカラーフィルタ形成基板の提供を可能とした。
【発明を実施するための形態】
【0047】
先ず、本発明の電界方式のLCD表示パネル用のカラーフィルタ形成基板の実施の形態の1例を、
図1に基づいて説明する。
【0048】
本例の横電界方式のLCD表示パネル用のカラーフィルタ形成基板は、
図1(a)に示すように、透明基板11の一面側に、透明基板11側から順に、ブラックマトリクス12、各色のカラーフィルタ用の着色層13R、13G、13B、オーバーコート層15を積層して配し、更に,オーバーコート層15上に、横電界方式の表示パネルを作製する際のTFT形成基板20との間隙を保つための柱状物16を配したもので、特に、ブラックマトリクス12は、透明基板側から順に、導電性のクロム層12CR、遮光性の樹脂層12BMを積層した積層構造で、各色のカラーフィルタ領域を開口しており、且つ、前記導電性のクロム層12CRは、全ブラックマトリクス形成領域にわたり電気的に接続し、導通している。
【0049】
本例においては、ブラックマトリクス12は、透明基板11側から順に、導電性のクロム層、遮光性の樹脂層を積層した積層構造で、各色のカラーフィルタ領域を開口しており、且つ、前記導電性のクロム層は、全ブラックマトリクス形成領域にわたり電気的に導通していることにより、導電性のクロム層12CRにより、ラビング時の静電気等の帯電防止を可能とし、且つ、モバイル用途での、パネル組後、スリミング処理( 透明基板11を削る処理) により透明基板11の板厚の薄膜化に際しても、該導電性のクロム層12CRの破損やダメージはないものとしている。
【0050】
本例では、JIS K7194規格における前記ブラックマトリクスの導電性のクロム層の抵抗率ρを1×10
-4Ω・cm以下としており、これにより、透明基板の観察者側の面の帯電防止効果を良いものとして、確実に、スリミングの際の帯電による不具合を防止できるものとしている。
【0051】
そして、従来のITO等の透明導電層を内装した表示装置と同程度以上の光透過率を確保できるものとしている。
【0052】
そしてまた、導電性のクロム層12CRが各色のカラーフィルタ領域を開口していることにより、横電界方式の表示パネルを作製する際、該導電性のクロム層の存在により、横電界の動作に悪影響が及ばないものとしており、更に、導電性のクロム層からTFTまでの距離を確保し易くなり、確実に、横電界の動作に悪影響が及ばなくできる。
【0053】
これにより、横電界方式の表示用パネルに用いられた際に、横電界の乱れを抑制して、確実に液晶の配向の乱れを抑制できる横電界方式のLCD表示パネル用のカラーフィルタ形成基板の提供を可能としている。
【0054】
また、ブラックマトリクスは、透明基板側から順に、導電性のクロム層、遮光性の樹脂層を積層した積層構造であるため、ブラックマトリクスのOD(光学濃度)を確保し易いものとしている。
【0055】
尚、
図1(a)では、配向層を便宜上、省略して示しているが、カラーフィルタ形成基板10の液晶30と接する面、TFT形成基板20の液晶30と接する面には配設されている。
【0056】
また、
図1(a)では明示していないが、導電性のクロム層12CRは、接地電位になるように接続されている。
【0057】
本例では、オーバーコート層15の膜厚を1.0μm〜5.0μmの範囲としており、これにより、着色層の平坦性の向上、耐熱性、耐湿性、耐薬品性などの信頼性の向上、バリア性を確保でき、且つ、良好なコーティング性、透明性を確保できるものとしている。
【0058】
尚、着色層の平坦性の向上、耐熱性、耐湿性、耐薬品性などの信頼性の向上、バリア性の向上からは、0.05μm以上、好ましくは1.0μm以上で、良好なコーティング性、透明性からは、10μm以下、好ましくは5μm以下である。
【0059】
また、本例においては、オーバーコート層15の比誘電率値は、周波数が60Hz〜1kHzにおいて5以下としており、これにより、実用の液晶駆動周波数レベルで残像を抑制できる横電界方式のLCD表示パネルの形成を可能としている。
【0060】
TFTにて駆動されるLCD表示パネルに使用される液晶の比誘電率の最大成分は、通常8〜12程度(少なくとも5.0以上)であり、オーバーコート層の比誘電率は液晶の比誘電率以下であることが好ましく、5以下としている。
【0062】
<透明基板11>
透明基板11としては、石英ガラス、パイレックス(登録商標)ガラス、合成石英板等の可撓性のない透明なリジット材、あるいは透明樹脂フィルム、光学用樹脂板等の可撓性を有する透明なフレキシブル材を用いることができる。
【0063】
この中で、特に、コーニング社製7059ガラスは、熱膨脹率の小さい素材であり寸法安定性および高温加熱処理における作業性に優れ、また、ガラス中にアルカリ成分を含まない無アルカリガラスであるため、IPS液晶モードの液晶表示パネル用のカラーフィルタ形成基板には適している。
【0064】
<ブラックマトリクスの遮光性の樹脂層12BM>
遮光するためのブラックマトリックス層12BMは、高電気抵抗とするため金属膜でなく、樹脂中に遮光剤を分散したいわゆる樹脂ブラックマトリックスが用いられている。
【0065】
カーボン微粒子や金属酸化物等の遮光性粒子を含有させたポリイミド樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂等の樹脂層を形成し、この樹脂層を直接パターニングして形成したもの、および、カーボン微粒子や金属酸化物等の遮光性粒子を含有させた感光性樹脂層を形成し、この感光性樹脂層をフォトリソ法によりパターニングして形成したもの等、遮光性を有するものを用いることができる。
【0066】
フォトリソ法の場合、樹脂ブラックマトリクス用材料の遮光剤を分散した組成物を透明基板に塗布した後、選択的にパターン露光し、現像して、形成する。
【0067】
尚、これ以外に、ブラックマトリクス層を、カラーフィルタ形成の各色の着色層を重ねて形成する形態も挙げられる。
【0068】
<ブラックマトリクス12の導電性のクロム層12CR>
導電性のクロム層12CRは、通常、透明基板11の一面にスパッタ法、蒸着法により成膜した後、フォトリソ法により、該スパッタ成膜したクロム膜上に所定形状にしてカラーフィルタ領域を開口した耐エッチング性膜(レジストとも言う)を形成して、露出した領域をエッチング除去し、更に、レジストの除去、洗浄処理等施して形成できる。
【0069】
本例のブラックマトリクス12作製においては、場合によっては、上記フォトリソ法に用いられる耐エッチング性膜(レジストとも言う)として、クロム層上にフォトリソ法でパターニング形成したブラックマトリクスの遮光性の樹脂層12BMを用いても良い。
【0070】
また、場合によっては、成膜時にマスクを用いてマスキングスパッタ、マスキング蒸着を行い、パターニングされてクロム層上にブラックマトリクスの遮光性の樹脂層12BMを形成しても良い。
【0071】
導電性のクロム層12CRは、抵抗率が1×10
-4Ω・cm以下であることが、特に、モバイル用途での、パネル組後、スリミング処理( 透明基板を削る処理) での帯電防止の面で好ましい。
【0072】
抵抗率が1×10
-4Ω・cm以下の制御は、膜厚を制御することにより行うことができる。
【0073】
<着色層>
各色の着色層13R、13G、13Bとしては、ここでは、樹脂中に顔料や染料等の着色剤を分散または溶解させた層が用いられる。
【0074】
各色の着色層の形成方法としては、インクジェット法、印刷法、フォトリソ法等のいずれの方法で形成しても構わないが、高精細さや分光特性の面からは、透明な樹脂中に、光開始剤、重合性モノマー、溶剤等とともに各色形成のための顔料を分散させた着色組成物(感光性樹脂とも言う)を透明基板に塗布した後、選択的にパターン露光し、現像して、形成するフォトリソ法が好ましい。
【0075】
フォトリソ法に用いる着色組成物(感光性樹脂とも言う)としては、ネガ型感光性樹脂およびポジ型感光性樹脂のいずれも用いることができるが、通常はネガ型感光性樹脂が用いられる。
【0076】
このネガ型感光性樹脂としては、アクリレート系、メタクリレート系、ポリ桂皮酸ビニル系、もしくは環化ゴム系等の反応性ビニル基を有するもの等が挙げられる。
【0077】
尚、赤色着色層13Rに用いられる着色剤としては、例えば、ペリレン系顔料、レーキ顔料、アゾ系顔料、キナクリドン系顔料、アントラキノン系顔料、アントラセン系顔料、イソインドリン系顔料等が挙げられるが、これらの顔料は単独で用いてもよく2種以上を混合して用いてもよい。
【0078】
緑色画素層13Gに用いられる着色剤としては、例えば、ハロゲン多置換フタロシアニン系顔料もしくはハロゲン多置換銅フタロシアニン系顔料等のフタロシアニン系顔料、トリフェニルメタン系塩基性染料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料等が挙げられるが、これらの顔料もしくは染料は単独で用いてもよく2種以上を混合して用いてもよい。
【0079】
青色画素層13Bに用いられる着色剤としては、例えば、銅フタロシアニン系顔料、アントラキノン系顔料、インダンスレン系顔料、インドフェノール系顔料、シアニン系顔料、ジオキサジン系顔料等が挙げられるが、これらの顔料は単独で用いてもよく2種以上を混合して用いてもよい。
【0080】
赤色着色層13R、緑色着色層13Gおよび青色着色層13Bの厚さは、通常は1〜5μmの範囲で設定される。
【0081】
<オーバーコート層15>
オーバーコート層15は、透明性、表面平滑性、上下隣接層との密着性、耐光性、耐熱性、耐薬品性等の幅広い特性が要求され、これを形成するオーバーコート材としては、従来高電気抵抗の光又は熱硬化アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリグリシジルメタクリレート系樹脂、エポキシ樹脂等が用いられている。
【0082】
<柱状物16>
柱状物16は、カラーフィルタ形成基板とTFT基板(対向基板)との間隙(ギャップ)制御機能を行うもので、所望の間隙(ギャップ)に応じて適宜調整されるが、通常は2.5〜5.0μmの範囲で設定され、好ましくは2.5〜4.5μmの範囲で設定され、さらに好ましくは3.0〜4.0μmの範囲で設定される。
【0083】
例えば、ポリイミド樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、アクリル樹脂のいずれかを主成分とするものが用いられるが、これらに限定はされない。
【0084】
先にも述べたように、
図1(a)では、配向層を便宜上、省略して示しているが、カラーフィルタ形成基板10の液晶30と接する面、TFT形成基板20の液晶30と接する面には配設されている。
【0085】
配向膜の材料としては、ラビング処理により異方性が付与されるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリビニルアルコール、ポリウレタンなどを挙げることができる。
【0086】
この中でも、ポリイミドを用いることが特に好ましい。
【0087】
これらの材料は、単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0088】
配向膜の厚さは適宜設定することができるが、透明基板11上に設けられた赤色着色層13R、緑色着色層13Gまたは青色着色層13Bを覆うオーバーコート層15上に形成される配向膜の好ましい厚さは0.1〜0.15μmである。
【0089】
次に実施例を挙げて、本発明を更に説明する。
(実施例1)
実施例1のカラーフィルタ形成基板は、
図1に示す実施形態例において、カラーフィルタ形成基板のブラックマトリクスのクロム層12CRとして、厚さ1000オングストローム(あるいはナノメートル)、抵抗率ρが1×10
-4Ω・cm以下の導電性のクロム層を用いて、以下のように、カラーフィルタ形成基板10を作製し、オーバーコート層15の厚さを2μm、比誘電率を5.0、柱状物の高さを3μmとし、下記のようにして形成したもので、このカラーフィルタ形成基板を用いて実際に表示パネルを作製して、配向の乱れの有無評価したが、配向の乱れは見られなかった。
【0090】
ここでは、液晶の駆動周波数を60Hzと1kHzで行い、光の透過性により評価した。
【0091】
比誘電率は、60Hzにおけるものである。
【0092】
ここでの評価は、パネル組み後、パネルに所定の周波数(60Hz、1kHz)にて5Vの電圧を印加し、光の透過が安定的に確認できたものをOKとし、光の透過が不安定であったものをOUTとした。
【0093】
具体的には、表示パネルを点灯して目視レベルでちらつきが見えないレベルをOKとし、未点灯もしくは点灯して目視レベルでちらつきが見え、点灯が不安定なレベルをOUTとした。
【0094】
<実施例1のカラーフィルタ形成基板10の作製>
先ず、ブラックマトリクス12を形成した。
【0095】
透明基板11として石英ガラスを用い、その一面に、スパッタ法により、導電性のクロム層を成膜し、成膜されたクロム層上にブラックマトリクスの樹脂層12BM形成用の感光性の遮光性の樹脂材料を塗布し、露光用のマスクを用いて選択的にパターン露光し、現像するフォトリソ法により、ブラックマトリクス樹脂層12BMを形成した後、形成されたブラックマトリクスの樹脂層12BMを耐エッチング層として、露出しているクロム層をエッチング除去して、ブラックマトリクスを形成した。
【0096】
ブラックマトリクス樹脂層12BM形成用の感光性の遮光性の樹脂材料としては、黒顔料:TMブラック#9550(大日精化工業製)、分散剤:(Disperbyk111(ビックケミー製)、重合体:VR60(昭和高分子製)、光硬化性化合物:SR399E(日本化薬製)、添加剤:L−20(総研化学製)、重合開始剤:イルガキュア907(チバ・スペシャルティ・ケミカル製)、溶剤:エチレングリコールモノブチルエーテル等を用いて作製されたものを用いた。
【0097】
クロム層のエッチングは、硝酸第二セリウムアンモン溶液にて行った。
【0098】
次いで、透明基板11のブラックマトリクスが形成された側の一面に、それぞれ、各色のカラーフィルタ用の各色の着色層を形成するための、表1、表2、表3に示す組成の着色組成物である感光性の樹脂材料を用いて、同様に、フォトリソ法により、赤色の着色層13R、緑色の着色層13G、青色の着色層13Bを、順に、形成した。
【0099】
次いで、形成されたカラーフィルタ用の着色層13R、13G、13B上全体を覆うように、オーバーコート層15を積層形成し、更に、オーバーコート層15上への柱状物16の形成を以下のようにして行った。
【0102】
【表3】
オーバーコート層形成用の材料の調製を、下記のようにして、重合体1を合成して得た後、それぞれ、前記重合体1に、光硬化性化合物、エポキシ樹脂、重合開始剤等を加え、これらの組成を変えて、混合し、撹拌して、所望の比誘電率のオーバーコート層形成用の材料を形成し、形成されたオーバーコート層形成用の材料を、透明基板11のブラックマトリクス層12、各色の着色層13R、13G、13B、透明導電層(ITO)14が形成された側全体を覆うように塗布して、硬化させて、厚さ2μm、比誘電率5.0のオーバーコート層を平坦にして形成した。
【0103】
(重合体1の合成)
重合槽中にベンジルメタクリレートを15.6重量部、スチレンを37.0重量部、アクリル酸を30.5重量部、2−ヒドロキシエチルメタクリレートを16.9重量部、ジエチレングリコールジメチルエーテル(DMDG)を200重量部、仕込み、攪拌し溶解させた後、2,2 '−アゾビス(イソブチロニトリル)を0.8重量部、添加し、均一に溶解させた。
【0104】
その後、窒素気流下で、85℃で2時間攪拌し、さらに100℃で1時間反応させた。さらに得られた溶液に2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートを16.9重量部、トリエチルアミンを0.5重量部、及び、ハイドロキノンを0.1重量部、添加し、100℃で5時間攪拌し、目的とする重合体1(固形分37.2%)を得る。
【0105】
次いで、表4に示す柱状物16形成用の光硬化性の組成物を、オーバーコート層上に塗布して、選択的にパターン露光して、現像するフォトリソ工程により、3μmの高さに柱状物16を形成した。
【0106】
【表4】
このようにして、実施例1のカラーフィルタ形成基板を作製した。
【0107】
次いで、このようにして作製された、実施例1のカラーフィルタ形成基板を用いて実際に表示パネルを作製して、以下のようにして評価し、これより配向の乱れの有無評価したが、表5に示すように、配向の乱れは見られなかった。
【0108】
ここでの評価は、パネル組み後、パネルに所定の周波数(60Hz、1kHz)にて5Vの電圧を印加し、光の透過が安定的に確認できたものをOKとし、光の透過が不安定であったものをOUTとしたもので、具体的には、表示パネルを点灯して目視レベルでちらつきが見えないレベルをOKとし、未点灯もしくは点灯して目視レベルでちらつきが見え、点灯が不安定なレベルをOUTとした。
【0109】
(比較例1)
比較例1は、実施例1において、遮光性の樹脂層12BMとクロム層12CRとの積層構造からなるブラックマトリクスに代えて、実施例1で用いた遮光性の樹脂材料のみでブラックマトリクスを樹脂層単層に形成したものである。
【0110】
このようにして作製された、比較例1のカラーフィルタ形成基板を用いて実際に表示パネルを作製して、同様にして評価し、これより配向の乱れの有無評価したが、表5に示すように、配向の乱れが見られた。