(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記複合コードが、相対的に高伸縮かつ低弾性である有機繊維と相対的に低伸縮かつ高弾性である有機繊維とから構成されることを特徴とする請求項7に記載の空気入りタイヤ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、上述する問題点を解決するもので、サイドウォール部に断面三日月状のサイド補強層を配置した空気入りタイヤであって、通常走行時の乗心地性とランフラット耐久性を高度に両立することを可能にした空気入りタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明の空気入りタイヤは、左右一対のビード部間に少なくとも1層のカーカス層
が装架
され、前記カーカス層
が各ビード部に配置されたビードコアの廻りにタイヤ内側から外側へ折り返
され、前記ビードコアの外周側にゴム組成物からなるビードフィラー
が配置
され、トレッド部における前記カーカス層の外周側に複数のベルト層
が配置
され、該ベルト層の外周側に複数のベルトカバー層
が配置
され、サイドウォール部における前記カーカス層のタイヤ幅方向内側に断面三日月状のサイド補強層
が配置
された空気入りタイヤにおいて、前記カーカス層の巻き上げ端部の前記ビードコアのタイヤ径方向外端部からの高さH
T が10mm以下
であり、リム組みした際にリムフランジが接触する領域のタイヤ径方向最外端からタイヤ内面に対して垂直に引いた仮想線L上におけるタイヤ外表面からカーカス層までの距離G
O が前記仮想線L上におけるサイドウォール部のトータルゲージG
T の50%以上
であり、前記ビードフィラーのタイヤ径方向外端部の高さH
B がタイヤ断面高さSHの50%〜80%
であり、前記ビードフィラーの断面積V
B と前記サイド補強層の断面積V
R との比V
B /V
R が0.4以上0.6以下
である一方で、前記ビードフィラーを構成するゴム組成物の20℃における硬度Hs
B が65以上80以下であると共に、前記サイド補強層を構成するゴム組成物の20℃における硬度Hs
R が75以上85以下であり、且つ硬度Hs
B と硬度Hs
R とがHs
B ≦Hs
R の関係を満たし、前記ビードフィラーを構成するゴム組成物の60℃における動的弾性率E’
B が7.0MPa以上15.0MPa以下であると共に、前記サイド補強層を構成するゴム組成物の60℃における動的弾性率E’
R が7.0MPa以上15.0MPa以下であり、前記ビードフィラーを構成するゴム組成物の60℃におけるtanδの値T
B が0.06以下であると共に、前記サイド補強層を構成するゴム組成物の60℃におけるtanδの値T
R が0.05以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、上述のように、カーカス層の巻き上げ端部の高さH
T を低くしてタイヤ剛性を低減すると共にタイヤ重量を軽量化する一方で、リム組みした際にリムフランジが接触する領域におけるタイヤ外表面からカーカス層までの距離G
O を確保して、タイヤ剛性低下に伴う故障が懸念されるビード廻りのゴムゲージを確保し、最低限の剛性を確保することで、ランフラット耐久性を確保しながら通常走行時における乗心地性を向上することが出来る。更に、ビードフィラーのタイヤ径方向外端部の高さH
B とビードフィラー及びサイド補強層の断面積比V
B /V
R を設定してサイドウォール部における局所的な剛性差を抑制し、且つビードフィラー及びサイド補強層のそれぞれを構成するゴム組成物の20℃における硬度及び60℃における動的弾性率を規定して充分なタイヤ剛性を得る一方で、60℃におけるtanδの値の範囲と大小関係を規定してランフラット耐久性を高度に維持することで、ランフラット耐久性を硬度に維持しながら効果的に乗心地性を向上することが出来る。
【0008】
このとき、動的弾性率E’
B と動的弾性率E’
R とがE’
B ≦E’
R の関係を満たすことが好ましい。これにより、サイドウォール部の局所的な剛性差を抑制し、ランフラット耐久性と乗心地性とをより効果的に両立することが出来る。
【0009】
本発明においては、サイド補強層
が互いに60℃における動的弾性率が異なる2種類のゴム組成物をタイヤ径方向に積層させて構成
され、タイヤ径方向外側に位置する外径側サイド補強層を構成するゴム組成物の60℃における動的弾性率E’
ROとタイヤ径方向内側に位置する内径側サイド補強層を構成するゴム組成物の60℃における動的弾性率E’
RIとがE’
RO<E’
RIの関係を満た
すことが好ましい。これにより、ビード廻りの剛性を落とすことなくタイヤ踏面からの入力を緩和することが出来、ランフラット耐久性を著しく低下させることなく、通常走行時の乗心地性を向上することが出来る。
【0010】
このとき、動的弾性率E’
B と動的弾性率E’
RIとがE’
B ≦E’
RIの関係を満たすことが好ましい。これにより、より効果的にランフラット耐久性及び通常走行時の乗心地性を両立することが出来る。
【0011】
本発明においては、ビードフィラー
が互いに60℃における動的弾性率が異なる2種類のゴム組成物をタイヤ径方向に積層させて構成
され、タイヤ径方向外側に位置する外径側ビードフィラーを構成するゴム組成物の60℃における動的弾性率E’
BOとタイヤ径方向内側に位置する内径側ビードフィラーを構成するゴム組成物の60℃における動的弾性率E’
BIとがE’
BO<E’
BIの関係を満た
すことが好ましい。これにより、ビード廻りを更に補強することが出来、サイド補強層、サイドゴム、及びビードフィラーの体積を低減することが可能になる。また、外径側ビードフィラーの動的弾性率が相対的に低くなるので、ランフラット耐久性を大幅に低下させることなく縦バネを抑制し、更なる乗心地性の向上を達成することが出来る。
【0012】
このとき、動的弾性率E’
BOと動的弾性率E’
R とがE’
BO≦E’
R の関係を満たすことが好ましい。これにより、より効果的にランフラット耐久性及び通常走行時の乗心地性を両立することが出来る。
【0013】
本発明においては、ベルトカバー層が、特性の異なる2種類の有機繊維からなる複合コードで構成されていることが好ましい。特に、この複合コードが、相対的に高伸縮かつ低弾性である有機繊維と相対的に低伸縮かつ高弾性である有機繊維とから構成されることが好ましい。これにより、ランフラット走行時のトレッドのバックリングを抑制し、更にランフラット耐久性を向上すると共に、ランフラット走行時の乗心地性を向上することが出来る。
【0014】
尚、本発明でいう20℃における硬度とは、JIS K6253に規定されるデュロメータ硬さを意味し、温度20℃の条件において、タイプAのデュロメータを用いて測定した値である。また、本発明でいう60℃における動的弾性率E’とは、JIS K6394に準拠して、粘弾性スペクトロメーター(東洋精機製作所製)を使用し、温度60℃、周波数20Hz、静歪10%、動歪±2%の条件で測定した値である。更に、本発明でいう60℃におけるtanδとは、JIS K6394に準拠して、上記と同じ粘弾性スペクトロメーター(東洋精機製作所製)を使用し、温度60℃、周波数20Hz、静歪10%、動歪±2%の条件で測定した値である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の構成について添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0017】
図1は、本発明の実施形態からなる空気入りタイヤを示す。
図1において、1はトレッド部、2はサイドウォール部、3はビード部である。左右一対のビード部3,3間には2層のカーカス層4が装架され、これらカーカス層4の端部がビードコア5の周りにタイヤ内側から外側に折り返されている。ビードコア5の外周側にはゴムからなる断面三角形状のビードフィラー6が配置されている。トレッド部1におけるカーカス層4の外周側には、2層のベルト層7がタイヤ全周に亘って配置されている。これらベルト層7は、タイヤ周方向に対して傾斜する補強コードを含み、かつ層間で補強コードが互いに交差するように配置されている。更に、ベルト層7の外周側にはベルトカバー層8が配置されている。ベルトカバー層8は、タイヤ周方向に配置する補強コードを含み、その補強コードをタイヤ周方向に連続的に巻回したものである。
【0018】
この空気入りタイヤにおいて、サイドウォール部2におけるカーカス層4のタイヤ幅方向内側には、ゴムからなる断面三日月形状のサイド補強層9が配設されている。このサイド補強層9はサイドウォール部の他のゴムよりも硬く設定されている。このように断面三日月形状のサイド補強層9を配設することで、サイド補強層9の剛性に基づいてランフラット走行時の荷重が支持される。本発明は、このようなサイド補強タイプの空気入りランフラットタイヤに適用されるが、その具体的な構造は上記基本構造に限定されるものではない。
【0019】
本発明においては、カーカス層4の巻き上げ端部4eのビードコア5のタイヤ径方向外端部5eからの高さH
T が10mm以下に設定されている。また、規格で規定される標準リムに装着し、規格で規定される最大負荷能力に対応する空気圧となるように空気を充填した際にリムフランジR(図中、点線にて示す)が接触する領域のタイヤ径方向最外端Reからタイヤ内面に対して垂直に引いた仮想線L上におけるタイヤ外表面からカーカス層までの距離G
O を仮想線L上におけるサイドウォール部のトータルゲージG
T の50%以上に設定している。更に、ビードフィラー6のタイヤ径方向外端部6eの高さH
B をタイヤ断面高さSHの50%〜80%に設定している。その一方で、ビードフィラー6の断面積V
B とサイド補強層9の断面積V
R との比V
B /V
R を0.4以上0.6以下に設定している。
【0020】
尚、本発明で言う規格とは、JATMA(日本自動車タイヤ協会)の規格に該当するタイヤの場合にはJATMA規格、JATMAの規格に該当せずに、TRA(米国タイヤ・リム協会)の規格に該当する場合にはTAR規格、ETRTO(ヨーロッパタイヤ・リム技術機関)の規格に該当する場合にはETRTO規格である。
【0021】
本発明の空気入りタイヤは、このような断面構造に構成した上で、更に、ビードフィラー6を構成するゴム組成物の20℃における硬度Hs
B が65以上80以下であると共に、サイド補強層9を構成するゴム組成物の20℃における硬度Hs
R が75以上85以下であり、且つ硬度Hs
B と硬度Hs
R とがHs
B ≦Hs
R の関係を満たしている。また、ビードフィラー6を構成するゴム組成物の60℃における動的弾性率E’
B が7.0MPa以上15.0MPa以下であると共に、サイド補強層9を構成するゴム組成物の60℃における動的弾性率E’
R が7.0MPa以上15.0MPa以下である。更に、ビードフィラー6を構成するゴム組成物の60℃におけるtanδの値T
B が0.06以下であると共に、サイド補強層9を構成するゴム組成物の60℃におけるtanδの値T
R が0.05以下である。
【0022】
本発明の空気入りタイヤは、上述のように構成されることで、カーカス層4の巻き上げ端部4eの高さH
T が低いためタイヤ剛性を低減すると共にタイヤ重量を軽量化することが出来、通常走行時の乗心地性を向上することが出来る。その一方で、リム組みした際にリムフランジRが接触する領域におけるタイヤ外表面からカーカス層4までの距離G
O を確保して、タイヤ剛性低下に伴う故障が懸念されるビード部5廻りのゴムゲージを確保しているので、ランフラット走行に必要な最低限度の剛性を確保することが出来る。その結果、ランフラット耐久性を確保しながら通常走行時における乗心地性を向上することが出来る。更に、ビードフィラー6のタイヤ径方向外端部6eの高さH
B とビードフィラー6及びサイド補強層9の断面積比V
B /V
R を設定してサイドウォール部2における局所的な剛性差を抑制し、且つビードフィラー6及びサイド補強層9のそれぞれを構成するゴム組成物の20℃における硬度及び60℃における動的弾性率を規定して充分なタイヤ剛性を得る一方で、60℃におけるtanδの値の範囲と大小関係を規定してランフラット耐久性を高度に維持することで、ランフラット耐久性を硬度に維持しながら効果的に乗心地性を向上することが出来る。
【0023】
このとき、カーカス層4の巻き上げ端部4eの高さH
T が10mmより大きいとタイヤ剛性及びタイヤ重量を充分に低減することが出来ず、通常走行時の乗心地性を向上する効果が充分に得られない。尚、カーカス層4の巻き上げ端部4eの高さH
T の下限値としては、生産性の観点から3mmが好ましい。
【0024】
また、距離G
O がトータルゲージG
T の50%より小さいと、ビード部5廻りのゴムゲージを充分に確保することが出来ず、この部位の剛性が低くなり過ぎてランフラット耐久性が低下する。尚、距離G
O の上限値としては、タイヤ重量の不要な増大抑制の観点からトータルゲージG
T の75%が好ましい。
【0025】
また、ビードフィラー6のタイヤ径方向外端部6eの高さH
B がタイヤ断面高さSHの50%より小さいとサイドウォール部2のビード部3側の剛性が相対的に高くなり、局所的な剛性差が生じて通常走行時の乗心地性が低下する、逆に、ビードフィラー6のタイヤ径方向外端部6eの高さH
B がタイヤ断面高さSHの80%より大きいとサイドウォール部2全体(特に、トレッド部1に近い領域)の剛性が高くなり過ぎて、却って通常走行時の乗心地性が低下する。
【0026】
また、断面積比V
B /V
R が0.4より小さいとビードフィラーが相対的に大きくなり通常走行時の乗心地性が低下する。逆に、断面積比V
B /V
R が0.6より大きいと、サイド補強層9が相対的に小さくなり充分なランフラット耐久性が得られない。尚、ビードフィラー6の断面積V
B は2.0cm
2 〜4.0cm
2 の範囲であることが好ましく、サイド補強層9の断面積V
R は4.0cm
2 〜7.0cm
2 の範囲であることが好ましい。
【0027】
また、ビードフィラー6を構成するゴム組成物の20℃における硬度Hs
B が65より小さいとタイヤ耐久性が悪化する。逆に、硬度Hs
B が80より大きいとサイドウォール部の剛性が高くなり過ぎて通常走行時の乗心地性が低下する。一方で、サイド補強層9を構成するゴム組成物の20℃における硬度Hs
R が75より小さいと、サイド補強層9による補強効果が充分に得られずランフラット耐久性が低下する。逆に、硬度Hs
R が85より大きいとサイドウォール部の剛性が高くなり過ぎて通常走行時の乗心地性が低下する。更に、硬度Hs
B と硬度Hs
R との大小関係が逆転し、Hs
B >Hs
R の関係であると、サイド補強層9が相対的に低硬度になりランフラット耐久性が充分に得られない。
【0028】
ビードフィラー6を構成するゴム組成物の60℃における動的弾性率E’
B が7.0MPaより小さいと引張変形を抑制することが出来ずタイヤ耐久性が低下する。逆に、動的弾性率E’
B が15.0MPaより大きいと動的弾性率が大きくなり過ぎて過剰な補強になる。一方で、サイド補強層9を構成するゴム組成物の60℃における動的弾性率E’
R が7.0MPaより小さいとサイド補強層9による補強効果が充分に得られずランフラット耐久性が低下する。逆に、動的弾性率E’
R が15.0MPaより大きいと動的弾性率が大きくなり過ぎて過剰な補強になる。
【0029】
ビードフィラー6を構成するゴム組成物の60℃におけるtanδの値T
B が0.06より大きいと繰り返し変形による発熱を抑制できずタイヤ耐久性が低下する。同様に、サイド補強層9を構成するゴム組成物の60℃におけるtanδの値T
R が0.05より大きいと繰り返し変形による発熱を抑制できずランフラット耐久性が低下する。尚、生産性及び材料コストの観点からtanδの値T
B 及びT
R の下限値としては0.01が好ましい。
【0030】
本発明においては、ビードフィラー6の動的弾性率E’
B とサイド補強層9の動的弾性率E’
R とがE’
B ≦E’
R の関係を満たすことが好ましい。これにより、サイドウォール部2の局所的な剛性差を抑制し、ランフラット耐久性と乗心地性とをより効果的に両立することが出来る。このとき、動的弾性率E’
B と動的弾性率E’
R との大小関係が逆転し、E’
B >E’
R の関係であると乗心地性又はランフラット耐久性が悪化し、これらを両立することが困難になる。
【0031】
図1に示した例では、ビードフィラー6及びサイド補強層9はそれぞれ1種類のゴム組成物から構成されているが、
図2に示すように、ビードフィラー6及びサイド補強層9を、それぞれ2種類のゴム組成物をタイヤ径方向に積層させて構成することが出来る。尚、
図2の実施形態は、ビードフィラー6及びサイド補強層9を、それぞれ2層構造とした点を除いて、上述の
図1の実施形態と同じ構成であり、同一の符号を付した部材は上記説明の通りの構成である。
【0032】
特に、本発明においては、サイド補強層9を互いに60℃における動的弾性率が異なる2種類のゴム組成物をタイヤ径方向に積層させて構成することが好ましい。このとき、タイヤ径方向外側に位置する外径側サイド補強層9oを構成するゴム組成物の60℃における動的弾性率E’
ROとタイヤ径方向内側に位置する内径側サイド補強層9iを構成するゴム組成物の60℃における動的弾性率E’
RIとがE’
RO<E’
RIの関係を満たすことが好ましい。このようにサイド補強層9を構成することで、ビード部5廻りの剛性を落とすことなくタイヤ踏面からの入力を緩和することが出来、ランフラット耐久性を著しく低下させることなく、通常走行時の乗心地性を向上することが出来る。
【0033】
このとき、ビードフィラー6の動的弾性率E’
B に対するサイド補強層9の動的弾性率E’
RO,E’
RIの大小関係としては、動的弾性率E’
B と動的弾性率E’
RIとがE’
B ≦E’
RIの関係を満たすことが好ましい。これにより、より効果的にランフラット耐久性及び通常走行時の乗心地性を両立することが出来る。
【0034】
また、本発明においては、ビードフィラー6を互いに60℃における動的弾性率が異なる2種類のゴム組成物をタイヤ径方向に積層させて構成することが好ましい。このとき、タイヤ径方向外側に位置する外径側ビードフィラー6oを構成するゴム組成物の60℃における動的弾性率E’
BOとタイヤ径方向内側に位置する内径側ビードフィラー6iを構成するゴム組成物の60℃における動的弾性率E’
BIとがE’
BO<E’
BIの関係を満たすことが好ましい。このように、ビードフィラー6を構成することで、ビード部5廻りを更に補強することが出来、サイド補強層9、サイドウォール部2を構成するゴム、及びビードフィラー6の体積を低減することが可能になる。また、外径側ビードフィラー6oの動的弾性率E’
BOが相対的に低くなるので、ランフラット耐久性を大幅に低下させることなく縦バネを抑制し、更なる乗心地性の向上を達成することが出来る。
【0035】
このとき、サイド補強層9の動的弾性率E’
R に対するビードフィラー6の動的弾性率E’
BO,E’
BIの大小関係としては、動的弾性率E’
BOと動的弾性率E’
R とがE’
BO≦E’
R の関係を満たすことが好ましい。これにより、より効果的にランフラット耐久性及び通常走行時の乗心地性を両立することが出来る。
【0036】
サイド補強層9を2層構造にする場合とビードフィラー6を2層構造にする場合とをそれぞれ説明したが、これらを組み合わせて、
図2に示すように、ビードフィラー6及びサイド補強層9を共に2種類構造とすることが好ましい。
【0037】
このとき、外径側ビードフィラーを構成するゴム組成物の動的弾性率E’
BOと内径側ビードフィラーを構成するゴム組成物の動的弾性率E’
BIと外径側サイド補強層9oを構成するゴム組成物の動的弾性率E’
ROと内径側サイド補強層9iを構成するゴム組成物の動的弾性率E’
RIとは、上述の大小関係を満たしたうえで、更にE’
RO<E’
BO<E’
BI<E’
RIという大小関係にあることが好ましい。
【0038】
尚、ビードフィラー6を2層構造にする場合、外径側ビードフィラー6oと内径側ビードフィラー6iとの境界6Lは、タイヤ断面高さSHの15%〜45%の範囲内に位置すると良い。また、サイド補強層9を2層構造にする場合、外径側サイド補強層9oと内径側サイド補強層9iとの境界9Lは、タイヤ断面高さSHの45%〜75%の範囲内に位置すると良い。このとき、
図2に示すように境界6L,9Lがタイヤ軸方向に対して傾斜している場合、その中点が上記範囲に含まれていれば良い。
【0039】
本発明においては、ベルト層7の径方向外側に配置されるベルトカバー層8が、特性の異なる2種の有機繊維からなる複合コードで構成されていることが好ましい。特に、相対的に高伸縮かつ低弾性である有機繊維と低伸縮かつ高弾性である有機繊維とから構成された複合コードであることが好ましい。このような複合コードをベルトカバー層8に用いることで、ランフラット走行時のクラウン部のバックルを効果的に抑制することが出来、ランフラット耐久性に加えて操縦安定性や乗心地性を向上することが出来る。
【0040】
このような相対的に高伸縮かつ低弾性である有機繊維としては、ナイロン繊維等を例示することが出来、相対的に低伸縮かつ高弾性である有機繊維としては、アラミド繊維等を例示することが出来る。
【実施例】
【0041】
タイヤサイズ235/50R18の空気入りタイヤにおいて、基本的なタイヤ断面構造を
図2で共通にし、カーカス層の巻き上げ高さH
T 、仮想線L上におけるサイドウォール部のトータルゲージG
T に対するタイヤ外表面からカーカス層までの距離G
O の比率、タイヤ断面高さSHに対するビードフィラー高さH
B の比率、ビードフィラーを構成するゴム組成物の20℃における硬度Hs
B 、サイド補強層を構成するゴム組成物の20℃における硬度Hs
R 、ビードフィラーを構成するゴム組成物の60℃における動的弾性率E’
B (内径側E’
BI及び外径側E’
BO)、サイド補強層を構成するゴム組成物の60℃における動的弾性率E’
R (内径側E’
RI及び外径側E’
RO)、ビードフィラーを構成するゴム組成物の60℃におけるtanδの値T
B 、サイド補強層を構成するゴム組成物の60℃におけるtanδの値T
R 、ビードフィラーの断面積V
B 、サイド補強層の断面積V
R 、断面積比V
B /V
R 、ベルトカバー層の材質を表1〜5のように設定した従来例1、比較例1〜18、及び実施例1〜23の42種類の試験タイヤを製作した。
【0042】
尚、ビードフィラー或いはサイド補強層が1種類のゴム組成物から構成される場合は、ビードフィラーを構成するゴム組成物の60℃における動的弾性率の内径側E’
BI及び外径側E’
BOやサイド補強層を構成するゴム組成物の60℃における動的弾性率の内径側E’
RI及び外径側E’
ROの欄に同じ値を記入して示した。
【0043】
また、ビードフィラー或いはサイド補強層を2層構造とする場合、内径側ビードフィラーと外径側ビードフィラーとの境界はタイヤ断面高さSHの30%の位置に配置し、内径側サイド補強層と外径側サイド補強層との境界はタイヤ断面高さSHの60%の位置に配置した。
【0044】
これら42種類の試験タイヤについて、下記の評価方法によりランフラット耐久性及び通常走行時の乗心地性を評価し、その結果を表1〜5に併せて示した。
【0045】
ランフラット耐久性
試験タイヤをリムサイズ18×7.5Jのメジャーリムに組み付けて車両に装着し、空気圧を230kPaとして、4輪のうち駆動輪右側(1本)のバルブコアを除去して、アスファルト路面からなるテストコースを平均速度80km/hにて走行させ、ドライバーがタイヤの故障による振動を感じるまで走行を続け、その平均走行距離を測定した。この測定を3名のテストドライバーにより行い、その結果を平均してランフラット耐久性の評価とした。評価結果は、比較例1を100とする指数にて示した。この指数値が大きいほどランフラット耐久性が優れていることを意味する。尚、指数値が105以上であるとランフラット耐久性が特に優れており好ましい。より好ましくは指数値が110以上であると良い。
【0046】
通常走行時の乗心地性
試験タイヤをリムサイズ18×7.5Jのメジャーリムに組付けて車両に装着し、全タイヤの空気圧を230kPaとし、テストコースにおいて、通常走行時の乗心地についてテストドライバーによる官能評価を行った。評価結果は、従来例1を100とする指数にて示した。この指数値が大きいほど通常走行時の乗心地性が優れていることを意味する。尚、指数値が105以上であると通常走行時の乗心地性が特に優れており好ましい。
【0047】
【表1】
【0048】
【表2】
【0049】
【表3】
【0050】
【表4】
【0051】
【表5】
【0052】
表1から判るように、実施例1〜23はいずれも従来例1、比較例1〜18に対して、ランフラット耐久性及び通常走行時の乗心地性を向上した。
【0053】
特に、サイド補強層の動的弾性率をビードフィラーの動的弾性率よりも大きくした実施例14はランフラット耐久性及び通常走行時の乗心地性を両立しながら、特にランフラット耐久性を大きく向上した。また、サイド補強層及び/又はビードフィラーを動的弾性率が異なる2種類のゴム組成物から構成し、且つ各層における内径側の動的弾性率を外径側の動的弾性率よりも大きくした実施例16、19、22、及びそれに加えてベルトカバー層の材質をナイロン/アラミド複合繊維とした実施例23は、いずれもランフラット耐久性及び通常走行時の乗心地性をバランス良く両立した。
【0054】
一方、カーカス層の巻き上げ高さH
T 、距離G
O 、ビードフィラー高さH
B 、断面積比V
B /V
R 、硬度、動的弾性率、tanδのいずれかが本発明の規定を満たさない比較例1〜18は、ランフラット耐久性及び/又は通常走行時の乗心地性が悪化した。