(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記イソシアネート基誘導体が、ジイソシアネート系モノマーをアダクト、ビューレット、イソシアヌレートのいずれかのタイプの3官能化させた誘導体であることを特徴とする請求項1に記載の液体用紙容器。
【背景技術】
【0002】
従来、食品や医薬品などを包装する包装材料として、例えば、ポリエチレン層/紙層/ポリエチレン層/アルミニウム箔層/ポリエステル層/シーラント層のような各層が積層されてなる積層体を用いた液体用紙容器が広く用いられてきた。また、近年では、アルミニウム箔層/ポリエステル層の代わりに、透明無機蒸着ポリエステルフィルムを使用した積層体を用いた液体用紙容器も用いられるようになった。
【0003】
この積層体のポリエステル層とシーラント層との貼り合わせは、通常はポリエステルフィルムからなるポリエステル層に二液硬化型ウレタン系などのアンカーコート剤を塗布してから、シーラント層を押出ラミネートすることにより行っていた。そして、このような積層体は適度のラミネート強度やガスバリア性などを有しており、食品や医薬品などを包装するための液体用紙容器に広く使用されている。
【0004】
一方、液体用紙容器に包装される内容物には、食品や医薬品以外に、パーマ液、洗剤、濃縮洗剤、シャンプー・リンス、入浴剤、芳香剤などもあり、アルカリ性物質、香料、界面活性剤、高沸点有機溶剤などを含有するものがあった。
【0005】
これらの内容物を包装すると、アンカーコート剤に悪影響を及ぼし、積層体におけるラミネート強度の低下をまねき、剥離が生じることがあった。このような状況に対応するため、ラミネート加工に使用される接着剤の改良が種々行われている。
【0006】
アルカリ性の高い内容物に対する耐性を向上させ、さらには各種プラスチックフィルムに対する接着力を向上させた接着剤組成物として、有機ポリオール化合物と、有機ポリイソシアネート化合物と、鎖延長剤とを反応して得られるNH基およびNH
2基を有するポリウレタン樹脂であって、ポリウレタン樹脂の分子量が数平均分子量で2000〜20000の範囲にあり、アミン価が5〜30mgKOH/gの範囲にある前記ポリウレタン樹脂と、有機ポリイソシアネート化合物またはそれらの変性体とを配合した接着剤組成物が提案されている(特許文献1)。
【0007】
また、包装する内容物が湿布薬や浴用剤などの場合、これらには揮発性物質が含まれているので、前述したような構成の積層体を包装材料として使用し、これらの内容物を包装した時、揮発性物質の強い浸透力によってポリエステルフィルムからなるポリエステル層とシーラント層間のラミネート強度が経時的に低下し、その結果デラミネーション(剥離)を引き起こすという問題があった。
【0008】
これに対して、アルミニウム箔、アルミニウム蒸着フィルム、金属酸化物蒸着フィルム、または、ポリエステルフィルムなどからなる基材上に、一級アミングラフトアクリル系ポリマーであるアミン含有ポリマーからなる第1接着層と、ジイソシアネートモノマー、または、ジイソシアネートモノマーのアダクトタイプ、ビューレットタイプ、あるいはトリマー(イソシアヌレート)タイプの誘導体のいずれかからなる第2接着層との二層構成の接着層を設け、さらに接着層を構成する第2接着層上にはシーラント層を設けてある積層体が提案されている(特許文献2)。
【0009】
また、基材の上に、1級アミングラフトアクリル系ポリマーとウレタン変性エポキシ樹
脂を、該1級アミングラフトアクリル系ポリマーのアミンと該ウレタン変性エポキシ樹脂中のエポキシの混合当量が、アミン:エポキシ=1.0:(0.5〜1.0)で混合してなる第1接着層が形成され、該第1接着層上にイソシアネート化合物からなる第2接着層が形成され、該第2接着層上にシーラント層が押出しラミネート法又は熱ラミネート法により積層され、前記第2の接着層と前記第1の接着層とが架橋反応して形成された架橋反応物で前記基材と前記シーラント層が強固に接着されている積層体が提案されている(特許文献3)。
【0010】
またさらに、揮発性物質や揮発性物質を含む強浸透性内容物を保存する包装材料として、基材の上に少なくともイソシアネート化合物からなる接着層とシーラント層がこの順序で設けられていて、イソシアネート化合物が2官能のイソシアネートモノマー、またはアダクト、ビューレット、イソシアヌレートタイプの3官能かさせたモノマーの誘導体からなる積層体が提案され、また、接着層の厚みが1μm以下であることも提案されている(特許文献4)。
【0011】
また、ポリエーテルポリオール、ポリエーテルポリオール、アクリルポリオールのいずれかからなる主剤よりもイソシアネートからなる硬化剤の配合割合を極端に大きくした接着層が提案され、また、接着層の厚みを1μm以下することも提案されている(特許文献5)。
【0012】
また、液体用紙容器の包装材料から容器内の内容物に対して微粒子が溶出あるいは剥離析出することを低減することを課題とした液体用紙容器では、紙基材の下面に少なくとも、バリア層、アンカーコート層、シーラント層を順次に積層してなる積層体により成形され、アンカーコート層がイソシアネート基を含み、かつ、アルコール基を含まない化合物からなる液体用紙容器が提案されている(特許文献6)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
バリア層として、無機酸化物蒸着フィルムを用いて、シーラント層を押出ラミネーションにより設ける場合、バリア層として無機酸化物蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルムを用い、特許文献4のような、イソシアネート化合物が2官能のイソシアネートモノマー、またはアダクト、ビューレット、イソシアヌレートタイプの3官能化させたモノマーの誘導体からなる接着剤(アンカーコート剤を含む)を使用すると、接着剤と無機酸化物蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルムとのラミネート強度が弱い。
【0015】
一方、バリア層として無機酸化物蒸着ナイロンフィルムを用いると、シーラント層との密着が良好であるが、バリア性、特に水蒸気バリア性が無機酸化物蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルムを用いた場合より悪い。
【0016】
本発明は上記した事情に鑑みてなされたもので、ラミネート強度が強く、シーラント層の剥離が生じることがなく、重量の大きな内容物用に用いたり、長期保管用に用いたりす
ることができ、バリア性、特に水蒸気バリア性に優れた液体用紙容器を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の請求項1に係る発明は
、紙基材の
一方の面
に熱可塑性樹脂層
が積層
されており、前記紙基材の
他方の面に少なくとも、バリア層、アンカーコート層、シーラント層
が順
次積層
されている積層体により成形された液体用紙容器であって、
前記バリア層
は少なくとも無機酸化物蒸着ポリエステルフィルムと無機酸化物蒸着ナイロンフィルム
が積層
されており、前記アンカーコート層
は、末端イソシアネート基を2つ以
上有し、グリコール成分を含まないイソシアネート基誘導体からなり、
前記無機酸化物蒸着ナイロンフィルムが前記アンカーコート層を介し
て、前記シーラント層
と積層されていることを特徴とする液体用紙容器である。
【0018】
本発明の請求項2に係る発明は、前記イソシアネート基誘導体が、ジイソシアネート系モノマーをアダクト、ビューレット、イソシアヌレートのいずれかのタイプの3官能化させた誘導体であることを特徴とする請求項1に記載の液体用紙容器である。
【0019】
本発明の請求項3に係る発明は、前記アンカーコート層の厚みが1μm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の液体用紙容器である。
【0020】
本発明の請求項4に係る発明は、前記
無機酸化物蒸着ポリエステルフィルムと前記
無機酸化物蒸着ナイロンフィルムとがドライラミネート接着剤を介して積層されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の液体用紙容器である。
【発明の効果】
【0021】
本発明の液体用紙容器は、バリア層とシーラント層の間のラミネート強度が強く、シーラント層の剥離が生じることがなく、重量の大きな内容物用に用いたり、長期保管用に用いたりすることができる。また、バリア性、特に水蒸気バリア性に優れている。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下本発明を実施するための形態につき説明する。
図1は、本発明の液体用紙容器の一例に用いる積層体を模式的に断面で示した説明図である。
【0024】
本例の液体用紙容器に用いる積層体は、容器外側となる紙基材1の外面に熱可塑性樹脂層2を積層し、内面にバリア層3、アンカーコート層4、シーラント層5を順次に積層してなる積層体である。外側の熱可塑性樹脂層2の外面には印刷インキ層が必要に応じて設けられている。また、紙基材1の下面とバリア層3は熱可塑性樹脂層6を介して積層されており、アンカーコート層4とシーラント層5は熱可塑性樹脂層7を介して積層されている。
【0025】
バリア層3は、容器外面側の無機酸化物蒸着ポリエステルフィルム31と内面側の無機酸化物蒸着ナイロンフィルム32がドライラミネート用の接着剤層33を介して積層されている。
【0026】
本発明の液体用紙容器に用いる積層体を構成する紙基材1としては、通常、ミルクカートン原紙等の板紙が用いられる。坪量と密度は容器の容量やデザインにより適宜選定されるが、通常は坪量200g/m
2〜500g/m
2の範囲で密度0.8前後のミルクカートン原紙がよく用いられる。
【0027】
本発明の液体用紙容器に用いる積層体を構成するバリア層3の容器外面側の無機酸化物蒸着ポリエステルフィルム31には、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステルの延伸フィルムに酸化アルミニウムや酸化ケイ素などの金属酸化物の薄膜を蒸着した無機酸化物蒸着ポリエステルフィルム31が用いられる。蒸着基材のポリエステルフィルムの厚みに関しても特に限定されるものではないが通常は6μm〜25μmの範囲の延伸フィルムがよく用いられる。
【0028】
また、無機酸化物蒸着ナイロンフィルム32には、ナイロン6などのナイロンの延伸フィルムに酸化アルミニウムや酸化ケイ素などの金属酸化物の薄膜を蒸着した無機酸化物蒸着ナイロンフィルム32が用いられる。蒸着基材のナイロンフィルムの厚みに関しても特に限定されるものではないが通常は15μm〜25μmの範囲の延伸フィルムがよく用いられる。
【0029】
無機酸化物蒸着ポリエステルフィルム31と無機酸化物蒸着ナイロンフィルム32とを貼り合わせる接着剤層33はドライラミート用の接着剤からなり、2液硬化型のウレタン系接着剤が好ましく用いられる。
【0030】
この接着剤層33を用いて、無機酸化物蒸着ポリエステルフィルム31と無機酸化物蒸着ナイロンフィルム32とをドライラミネートにより、貼り合わせて、バリア層3を作成する。
【0031】
一方、アンカーコート層4は、末端イソシアネート基を2つ以上有し、グリコール成分を含まないイソシアネート基誘導体からなる層である。このアンカーコート層4を構成するイソシアネート基誘導体としては、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネートおよびその水素添加体などの各種ジイソシアネート系モノマーを、トリメチロールプロパンやグリセロールなどの3官能の活性水素含有化合物と反応させたアダクトタイプや、水と反応させたビューレットタイプや、イソシアネート基の自己重合を利用したトリマー(イソシアヌレート)タイプなど3官能性の誘導体、あるいは、それ以上の多官能性の誘導体である。
【0032】
このアンカーコート層4は、バリア層3の無機酸化物蒸着ナイロンフィルム32面に、例えば上記のイソシアネート基誘導体をその固形分割合を0.05〜5wt%、好ましくは0.1〜2wt%の割合で含む塗工液を塗工して設ければよい。このアンカーコート層4は薄層であることが好ましく、具体的にはその乾燥時の厚みが2μm以下、望ましくは1μm以下の薄層となるように設ければよい。
【0033】
他方、シーラント層5には、熱可塑性樹脂が用いられる。低密度ポリエチレン、または、直鎖状低密度ポリエチレンなどの熱可塑性樹脂が好ましく用いられる。これらの熱可塑性樹脂には、必要に応じて、酸化防止剤、粘着付与剤、充填剤、各種フィラーなどの各種添加剤を添加してもよい。
【0034】
そして、シーラント層5は、バリア層3の無機酸化物蒸着ナイロンフィルム32面に、
塗工して設けられたアンカーコート層4の面に押出ラミネーションのひとつのサンドイッチラミネーションによって、溶融押し出しだされて形成される熱可塑性樹脂層7を介して積層される。
【0035】
この際、アンカーコート層4の面と溶融押し出しだされた熱可塑性樹脂層7の溶融樹脂の接触する部分及びその近傍にオゾンを流して、オゾン処理を行いながら貼り合わせることが好ましい。シーラント層5の厚みは特に限定はない。
【0036】
熱可塑性樹脂層7は、シーラント層5と類似したポリエチレン系樹脂やポリプロピレン系樹脂などのシーラント層5と融着可能な樹脂からなる層である。厚みは3μmから70μmの範囲が通常用いられる。
【0037】
具体的には、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、エチレン−αオレフィン共重合体などのエチレン系樹脂や、ホモ・ブロック・ランダムの各ポリプロピレン樹脂や、プロピレン−αオレフィン共重合体などのプロピレン系樹脂、エチレン−アクリル酸共重合体やエチレン−メタクリル酸共重合体などのエチレン−α,β不飽和カルボン酸共重合体、エチレン−アクリル酸メチルやエチレン−アクリル酸エチルやエチレン−メタクリル酸メチルやエチレン−メタクリル酸エチルなどのエチレン−α,β不飽和カルボン酸共重合体のエステル化物、カルボン酸部位をナトリウムイオン、あるいは、亜鉛イオンで架橋した、エチレン−α,β不飽和カルボン酸共重合体のイオン架橋物、エチレン−無水マレイン酸グラフト共重合体やエチレン−アクリル酸エチル−無水マレイン酸のような三元共重合体に代表される酸無水物変性ポリオレフィン、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体などのエポキシ化合物変性ポリオレフィン、エチレン−酢酸ビニル共重合体から選ばれる樹脂の単体あるいは2種以上のブレンド物などにより設けられる。
【0038】
また、紙基材1の下面とバリア層3の無機酸化物蒸着ポリエステルフィルム31は熱可塑性樹脂層6を介して積層されている。熱可塑性樹脂層6に用いる熱可塑性樹脂も熱可塑性樹脂層7と同じポリエチレン系樹脂やポリプロピレン系樹脂が使用可能である。厚みは3μmから70μmの範囲が通常用いられる。
【0039】
熱可塑性樹脂層6に低密度ポリエチレン、または、直鎖状低密度ポリエチレンを用い、サンドイッチラミネート法により、溶融押し出されて形成される熱可塑性樹脂層6を介して無機酸化物蒸着ポリエステルフィルム31のポリエステルフィルム面に貼り合わせる場合、アンカーコートなしでも、貼り合わせ可能であり、好ましく用いられる。
【0040】
また、容器外側の熱可塑性樹脂層2はシーラント層5と類似したポリエチレン系樹脂やポリプロピレン系樹脂などのシーラント層5と熱シール可能な樹脂からなる層である。厚みは3μmから40μmの範囲が通常用いられる。
【0041】
容器外側の熱可塑性樹脂層2の外面に必要に応じて設けられる印刷インキ層は周知のインキを用いてグラビア印刷等の方法で施すことが出来る、絵柄や商品情報などを含む層である。熱可塑性樹脂層2としてポリオレフィン樹脂を用いる場合にはインキの密着を良くするために通常はコロナ処理等の易接着処理を表面に行う。
【0042】
以上、本発明の液体用紙容器の一例に用いる積層体について説明したが、本発明に係る液体用紙容器に用いる積層体は上記のような構成のものに限定されるものではなく、包装材料としての用途を考慮し、包装材料として要求される剛性や耐久性などを向上する目的で、他の層を介在させた構成であってもよい。
【0043】
以下、本発明の液体用紙容器の一例に用いる積層体の製造方法について説明する。
【0044】
まず、無機酸化物蒸着ポリエステルフィルム31と無機酸化物蒸着ナイロンフィルム32とを、2液硬化型のウレタン系接着剤などのドライラミート用の接着剤を用いて、ドライラミネートによって、接着剤層33を介してはり合わせバリア層3を作成する。このとき、無機酸化物蒸着ポリエステルフィルム31と無機酸化物蒸着ナイロンフィルム32の蒸着層面は、容器外側でも内側でもどちらでも良い。
【0045】
この接着剤層33を用いて、無機酸化物蒸着ポリエステルフィルム31と無機酸化物蒸着ナイロンフィルム32とをドライラミネートにより、貼り合わせて、バリア層3を作成する。
【0046】
次に、バリア層3の無機酸化物蒸着ナイロンフィルム32の面に、前述のイソシアネート基誘導体を固形分割合が0.05〜5wt%、好ましくは0.1〜2wt%になるように調製した塗工液を押出ラミネーターの塗工部において塗工し、厚みが1μm以下のアンカーコート層4を設ける。
【0047】
バリア層3に塗布されたアンカーコート層4面に、Tダイから押し出されるダイ下温度320℃の例えば低密度ポリエチレンなどからなる熱可塑性樹脂層7を設けると同時に、押出ラミネーターのサンド軸から巻き出されたシーラント層5を、熱可塑性樹脂層7を介して積層して、内層フィルムを作成する。
【0048】
また、このバリア層3に塗布されたアンカーコート層4面に、熱可塑性樹脂層7を設けるときに、アンカーコート層4の面と溶融押し出しだされた熱可塑性樹脂層7の溶融樹脂の接触する部分及びその近傍にオゾンを流して、オゾン処理を行いながら貼り合わせることが出来る。
【0049】
オゾン処理を行うときのダイ下温度としては、250〜330℃が好ましい。250℃未満ではオゾン処理を施しても押出樹脂の酸化不足により層間ラミネート強度が不十分となり、330℃を超えると熱分解により押出樹脂の凝集力が低下し、その結果、層間ラミネート強度が不十分となる。また、このときのオゾン処理条件としては、5〜20mg/m
2が好ましい。
【0050】
5mg/m
2未満では押出樹脂の酸化不足により層間ラミネート強度が不十分となり、20mg/m
2を超えると過度の酸化により押出樹脂の凝集力が低下し、その結果層間ラミネート強度が不十分となる。上記押出温度とオゾン処理条件を適宜組み合わせることによって、層間ラミネート強度がさらに向上した各種強浸透性内容物耐性に優れる内層フィルムを得ることができる。
【0051】
次に、ミルクカートン原紙などの紙基材1を押出ラミネーターの給紙部より巻き出し、溶融した低密度ポリエチレンなどの熱可塑性樹脂層6を押し出し、サンド軸より巻き出した内層フィルムをサンドイッチラミネーションにより積層する。
【0052】
次に、紙基材1の反対面に熱可塑性樹脂層2を形成する。必要に応じて、さらに熱可塑性樹脂層2の表面にコロナ処理を行い、次工程で熱可塑性樹脂層2のコロナ処理面に印刷を施す。これによって、本発明の液体用紙容器の一例に用いる積層体が出来上がる。
【0053】
この積層体に折罫を押圧して設けると同時に打ち抜いて、本発明の液体用紙容器の一例のブランクを作成する。このブランクを折罫に沿って折曲げ、組み立てて必要な部分を加熱融着することによって本例の液体用紙容器が製造される。
【0054】
図2(A)は、ゲーベルトップ型(屋根型)の液体用紙容器である。このゲーベルトップ型液体用紙容器を製造するには、まず、ブランクを折って筒状の胴部を作成し、次に、底部を形成し有底容器を作成して、この有底容器に内容物を充填し、上部開口部を折って、シールして、天面部を形成して、内容物充填済みの液体用紙容器が製造される。
【0055】
図2(B)は、フラットトップ型の液体用紙容器である。このフラットトップ型液体用紙容器を製造するには、ゲーベルトップ型液体用紙容器と同様に、有底容器を作成して、この有底容器に内容物を充填し、上部開口部をシールして、両端部を下に折って、天面部を形成して、内容物充填済みの液体用紙容器が製造される。
【0056】
本発明の液体用紙容器は、これらの形状に限定されるものではなく、例えば、片側だけが傾斜し反対側が平らな屋根型の液体用紙容器などであっても良い。
【0057】
本発明の液体用紙容器は、前述のような、積層体を用いて製造されているので、バリア層3とシーラント層5とのラミネート強度が良好である。そのため、内容物として、パーマ液、洗剤、濃縮洗剤、シャンプー、リンス、入浴剤、芳香剤などの、揮発性物質や揮発性物質を含む各種強浸透性内容物を充填しても、バリア層3とシーラント層5との間のラミネート強度が低下することがなく、重量の大きな内容物用の液体紙容器として、あるいは、長期保存用の液体紙容器として使用することが出来る。そして、水蒸気などのバリア性に優れている。
【実施例】
【0058】
以下に、本発明の具体的実施例について説明する。
【0059】
<実施例1>
酸化アルミニウム蒸着ポリエステルフィルム31の蒸着面と酸化アルミニウム蒸着ナイロンフィルム32のナイロンフィルム面とを、接着剤層33として2液硬化型のウレタン系接着剤を用いて、ドライラミネートによって、貼り合わせバリア層3を作成した。
【0060】
次に、バリア層3の酸化アルミニウム蒸着ナイロンフィルム32の蒸着面に、イソシアネート基誘導体として、2,4−トリレンジイソシアネートのビューレットタイプの誘導体を使用し、調製した塗工液を押出ラミネーターの塗工部において塗工し、厚みが1μmのアンカーコート層4を設けた。
【0061】
バリア層3に塗布されたアンカーコート層4面に、サンドイッチラミネーション法で、押出ラミネーターのTダイから押し出されるダイ下温度290℃の低密度ポリエチレンからなる熱可塑性樹脂層7を設けると同時に、押出ラミネーターのサンド軸から巻き出されたシーラント層5となる低密度ポリエチレン40μmを、熱可塑性樹脂層7を介して積層して、内層フィルムを作成した。
【0062】
このとき、アンカーコート層4の面と溶融押し出された熱可塑性樹脂層7の溶融樹脂の接触する部分及びその近傍にオゾンを流して、オゾン処理を行いながら貼り合わせた。
【0063】
さらに、押出ラミネーターを用いて、給紙部より、紙基材1のミルクカートン原紙(坪量350g/m
2、密度0.78g/cm
3)を巻き出し、Tダイから熱可塑性樹脂層6となる溶融した低密度ポリエチレンを厚みが20μmになるように押し出し、サンド軸より巻き出した内層フィルムを、内層フィルムの酸化アルミニウム蒸着ポリエステルフィルム31のポリエステルフィルム面が熱可塑性樹脂層6側になるようにして、サンドイッチラミネーションにより積層した。
【0064】
次に、紙基材1の反対面に低密度ポリエチレンを20μmになるように押出して、熱可塑性樹脂層2を形成した。さらに熱可塑性樹脂層2の表面にコロナ処理を行い、次工程で熱可塑性樹脂層2のコロナ処理面に印刷し、印刷インキ層を設け、積層体を作成した。
【0065】
この積層体に折罫を押圧して設けると同時に打ち抜いて、ブランクを作成した。このブランクを折罫に沿って折り曲げ、筒状の胴部を作成し、筒状のスリーブを作成した。
【0066】
充填工程において、このスリーブに、底部を形成し有底容器とし、この有底容器に内容物の水を充填し、上部開口部を折り込んでシールして、天面部を形成して、内容物が充填された、
図2のようなゲーベルトップ型の液体用紙容器を作成した。これを実施例1の液体用紙容器とした。
【0067】
<実施例2>
酸化アルミニウム蒸着ポリエステルフィルム31の蒸着面と酸化アルミニウム蒸着ナイロンフィルム32の蒸着面とを、接着剤層33介して貼り合わせバリア層3を作成し、バリア層3の酸化アルミニウム蒸着ナイロンフィルム32のナイロンフィルム面に、アンカーコート層4を設けた以外は、実施例1と同様にして、実施例2の液体用紙容器を作成した。
【0068】
以下に、本発明の比較例について説明する。
【0069】
<比較例1>
バリア層3を酸化アルミニウム蒸着ポリエステルフィルムのみとし、その蒸着面にアンカーコート層4を設けた以外は、実施例1と同様にして、比較例1の液体用紙容器を作成した。
【0070】
<比較例2>
バリア層3を酸化アルミニウム蒸着ナイロンフィルムのみとし、その蒸着面にアンカーコート層4を設けた以外は、実施例1と同様にして、比較例2の液体用紙容器を作成した。
【0071】
<試験方法>
実施例と比較例について、下記の方法で試験し、比較評価した。
【0072】
<水蒸気透過度>
実施例と比較例の液体用紙容器に用いた内層フィルムを使用し、JIS K7129に準拠し、内層フィルムの水蒸気透過度を測定した。その結果を表1にまとめた。
【0073】
<ラミネート強度>
実施例と比較例の液体用紙容器を切り開き、その胴部より積層体を切り出し、15mm幅に切って、サンプルを作成した。このサンプルの一端をバリア層3と熱可塑性樹脂層7の間で剥離し、熱可塑性樹脂層7側を折り返して、引張試験機で、180度剥離でラミネート強度を測定した。引張速度は300mm/minで行った。その結果を表1にまとめた。
【0074】
【表1】
以下に、実施例と比較例との比較結果について説明する。
【0075】
<比較結果>
バリア層3を容器外面側の無機酸化物蒸着ポリエステルフィルム31と無機酸化物蒸着ナ
イロンフィルム32の積層とし、無機酸化物蒸着ナイロンフィルム32面に、イソシアネート基誘導体からなるアンカーコート層を設け、押し出しラミネーションによりシーラント層を設けた実施例1と実施例2は、水蒸気透過度、ラミネート強度ともに、良好であった。
【0076】
バリア層3を酸化アルミニウム蒸着ポリエステルフィルムのみとし、その蒸着面にアンカーコート層4を設けた比較例1では、水蒸気透過度は良好であったが、ラミネート強度が低く、重量の大きな内容物用に用いたり、長期保管用に用いたりするのには、不安がある。
【0077】
バリア層3を酸化アルミニウム蒸着ナイロンフィルムのみとし、その蒸着面にアンカーコート層4を設けた比較例2では、ラミネート強度は良好であったが、水蒸気透過度は大きくバリア性が不足している。