(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6028430
(24)【登録日】2016年10月28日
(45)【発行日】2016年11月16日
(54)【発明の名称】太陽光発電ユニット
(51)【国際特許分類】
H02S 40/22 20140101AFI20161107BHJP
H02S 20/22 20140101ALI20161107BHJP
H02S 20/26 20140101ALI20161107BHJP
F24J 2/00 20140101ALI20161107BHJP
E04F 10/00 20060101ALI20161107BHJP
F24J 2/42 20060101ALI20161107BHJP
【FI】
H02S40/22
H02S20/22
H02S20/26
F24J2/00 A
E04F10/00
F24J2/42 C
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-156803(P2012-156803)
(22)【出願日】2012年7月12日
(65)【公開番号】特開2014-22410(P2014-22410A)
(43)【公開日】2014年2月3日
【審査請求日】2015年6月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】三谷 一房
(72)【発明者】
【氏名】諏訪 好英
(72)【発明者】
【氏名】古城 雄一
(72)【発明者】
【氏名】西田 賢之
(72)【発明者】
【氏名】大西 宏治
(72)【発明者】
【氏名】松永 成雄
【審査官】
佐竹 政彦
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭60−083830(JP,U)
【文献】
特開昭63−236887(JP,A)
【文献】
特開平07−145687(JP,A)
【文献】
特開2011−243607(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/042−31/056
H02S 10/00−99/00
E04F 10/00−10/10
F24J 2/00−2/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽電池モジュールを備え、外装部の一部をなす太陽光発電部材と、
前記太陽光発電部材とともに前記外装部の一部をなすガラス部材と、
前記太陽光モジュールからの電力が供給され、当該電力により前記ガラス部材の表面における空気を流動させる流動装置部と、
前記空気の吸排気を行う通気口と、
を備え、
前記太陽光発電部材は、
第1太陽電池モジュールを備え、太陽光反射性を有する第1太陽光発電部材と、
第2太陽電池モジュールを備えた第2太陽光発電部材と、
を備え、
前記第1太陽光発電部材の受光面に入射して反射する反射光は、前記第2太陽光発電部材の受光面に入射することを特徴とする太陽光発電ユニット。
【請求項2】
請求項1に記載の太陽光発電ユニットであって、
前記通気口は開閉弁を備え、
前記太陽電池モジュールからの電力は、前記開閉弁に供給されることを特徴とする太陽光発電ユニット。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の太陽光発電ユニットであって、
前記流動装置部は、前記ガラス部材の下方側に設けられることを特徴とする太陽光発電ユニット。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の太陽光発電ユニットであって、
前記太陽電池モジュールは、前記太陽光発電ユニット外の電力供給設備と電気的な接続がされないことを特徴とする太陽光発電ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽光発電ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
省エネルギーの観点から、住宅やビル等の建物において、太陽光発電(photovoltaic,以下PVということがある)が導入されつつある。加えて近年は、二酸化炭素排出削減、CSR、さらには、創エネルギー・蓄エネルギーに対する意識が高まっており、住宅、学校施設、公共施設、商業施設、工場施設、及び、事務所ビルなどあらゆる建物において、PVに対するニーズは増加するものと期待される。
特許文献1には、反射パネルに照射された日光が反射パネルと反射板とを介して太陽電池モジュールに照射されることが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−80289号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように、太陽光が入射する場所では、太陽電池モジュールを用いることで電力を得ることができる。しがしながら、太陽光が入射する室内は、夏期において室内上部に熱がたまり、一方、冬期においてその温度差から結露を生じさせる。このようなことから、室内環境を容易に改善することが望まれる。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、簡便に室内環境を改善することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的を達成するために本発明に係る太陽光発電ユニットは、太陽電池モジュールを備え、外装部の一部をなす太陽光発電部材と、前記太陽光発電部材とともに前記外装部の一部をなすガラス部材と、前記太陽光モジュールからの電力が供給され、当該電力により前記ガラス部材の表面における空気を流動させる流動装置部と、前記空気の吸排気を行う通気口と、を備え、
前記太陽光発電部材は、第1太陽電池モジュールを備え、太陽光反射性を有する第1太陽光発電部材と、第2太陽電池モジュールを備えた第2太陽光発電部材と、を備え、前記第1太陽光発電部材の受光面に入射して反射する反射光は、前記第2太陽光発電部材の受光面に入射することを特徴とする。
このように、外装部の一部をなすガラス部材を有する太陽光発電ユニットが、空気を流動させる流動装置部と、空気の吸排気を行う通気口とを有しているので、夏期にはガラス部材周辺の高温の空気を通気口を通じて排気することができる一方、冬期にはガラス部材周辺の空気を循環させるので結露を防止することができ室内環境を改善することができる。さらに、太陽光発電ユニットにおいて、流動装置部を稼働させるために太陽電池モジュールを独立して有しているので、この太陽光発電ユニットを取り付けるだけで、簡便に室内環境を改善することができる。
また、第1太陽光発電部材の太陽電池モジュールで発電を行うと共に、入射した光を第2太陽光発電部材に対して反射させる。また、第2太陽光発電部材の太陽電池モジュールで発電を行う際に、直射光のみならず、第1太陽光発電部材において反射した反射光によっても発電を行うことができる。このため、太陽光発電ユニットの発電効率を高めることができる。
【0007】
また、本発明に係る太陽光発電ユニットにおいて、前記通気口は開閉弁を備え、
前記太陽電池モジュールからの電力は、前記開閉弁に供給されることを特徴とする。
このようにすることで、通気口の開閉を太陽電池モジュールからの電力を用いて行うことができるので、この太陽光発電ユニットを取り付けるだけで、簡便に室内環境を改善することができる。
【0008】
また、本発明に係る太陽光発電ユニットにおいて、前記流動装置部は、前記ガラス部材の下方側に設けられることを特徴とする。
このように、流動装置部をガラス部材の下方側に設けることとしているので、夏期にはこれを稼働させて上方に空気を送り、通気口を介して排気を行うことができる。また、冬期には、流動装置部を稼働させて、ガラスの上下方向に空気を流動させることができ、ガラスの結露を防止することができる。勿論、前記流動装置部近傍にも通気口を備えることもできる。
【0010】
また、本発明に係る太陽光発電ユニットにおいて、前記太陽電池モジュールは、前記太陽光発電ユニット外の電力供給設備と電気的な接続がされないことを特徴とする。
このように、太陽電池モジュールが太陽電池発電ユニット外の電力供給設備と電気的な接続がされないため、太陽光発電ユニットは、電気的に自己完結・自立型の系を構築することができる。すなわち、流動装置部に独立して電力供給する太陽電池発電ユニットを提供することができる。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、外装部の一部をなすガラス部材を有する太陽光発電ユニットが、空気を流動させる流動装置部と、空気の吸排気を行う通気口とを有しているので、夏期にはガラス部材周辺の高温の空気を通気口を通じて排気することができる一方、冬期にはガラス部材周辺の空気を循環させるので結露を防止することができ室内環境を改善することができる。さらに、太陽光発電ユニットにおいて、流動装置部を稼働させるために太陽電池モジュールを独立して有しているので、この太陽光発電ユニットを取り付けるだけで、簡便に室内環境を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本実施形態における太陽光発電ユニット10の正面図である。
【
図2】第1実施形態における太陽光発電ユニット10の横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、第1実施形態における太陽光発電ユニット10の正面図である。
図2は、第1実施形態における太陽光発電ユニット10の横断面図である。これらの図には、建物1に複数の太陽光発電ユニット10が取り付けられている様子が示されている。ここでは、床仕上げ42、床スラブ44、天井内46、天井48を有する建物1に複数の太陽光発電ユニット10が取り付けられるものとする。本実施形態における太陽光発電ユニット10は、ガラスカーテンウォール(GCW)のように、ガラス面積の大きい外装において用いられることが望ましい。
【0014】
太陽光発電ユニット10は、上枠20と横枠21と下枠22と無目(トランサム)24を方立(マリオン)26と、スパンドレルガラス12と、バックボード28と太陽光発電庇14(以下、「PV庇」と言うことがある)とビジョンガラス16とサイドフィン18を備える。また、太陽光発電ユニット10は、開閉弁34と通気口36とファン38を備える。
【0015】
上枠20と横枠21と下枠22は、それぞれの端部同士が固定され太陽光発電ユニット10の外枠を構成する。そして外枠の内側に、スパンドレルガラス12と太陽光発電庇14とビジョンガラス16とサイドフィン18が固定的に設けられる。なお、太陽光発電庇14については、その傾きを調整することができることとしてもよい。
【0016】
太陽光発電ユニット10の上側部分には、スパンドレルガラス12とバックボード28が上下方向について上枠20と無目24に挟み込まれ、左右方向について横枠21に挟み込まれるように固定される。スパンドレルガラス12が組み付けられる位置は、太陽光発電ユニット10を建物1に施工したときに、スパンドレルガラス12が建物1の床仕上げ42部分と床スラブ44部分と天井内46と水平方向に重なる位置となることが望ましい。このとき、水平方向について、上枠20も床仕上げ42部分に重なり、無目24は天井内の一部と天井と重なる位置となる。
【0017】
スパンドレルガラス12には、太陽光発電モジュール12aが設けられる。また、スパンドレルガラス12の背面側にはバックボード28が設けられる。
【0018】
無目24の下方には、建物1の外側方向に張り出す太陽光発電庇14が設けられる。太陽光発電庇14は、太陽光発電モジュール14aを備えるとともに、太陽光反射性を有する強化ガラス14cを有する。これにより、太陽光の光路Lが
図2に示されるようになるので、太陽光により発電を行う一方で、太陽光の一部をスパンドレルガラス12の太陽光発電モジュール12aに反射し、スパンドレルガラス12の太陽光発電モジュール12aにおいても発電を効率的に行わせる。なお、太陽光発電庇14の受光面の強化ガラス14cには、汚れ防止のために親水性を有するガラス用コーティング剤が塗布されることが望ましい。また、酸化チタンを利用した光触媒によって防汚性能を有することとしてもよい。
【0019】
太陽光発電庇14の傾斜角は、年間日照量が最も多くなる角度に設定される。また、太陽光発電庇14の出寸法は、部材の強度計算や、必要発電量に応じて設計される。また、太陽光発電庇14における太陽光の受光面と、スパンドレルガラス12における太陽光の受光面は、劣角(0<θ<2π)の範囲の角度を形成する。
【0020】
太陽光発電庇14には、バッテリー14bを設けることができ、これにより、スパンドレルガラス12における太陽光発電モジュール12a及び太陽光発電庇14における太陽光発電モジュール14aによって発電された電力を蓄電することができる。
【0021】
なお、本実施形態において、スパンドレルガラス12における太陽光発電モジュール12a及び太陽光発電庇14における太陽光発電モジュール14aの電気系統は、建物1内部の電気関係設備には接続されなくてもよい。すなわち、太陽光発電ユニット10における太陽光発電モジュール12a、14aから得られた電力は、その外部の電力系統とは連系されなくてもよい。具体的には、太陽光発電モジュール12a、14aは、キュービクルや分電盤などには接続されないこととすることができる。そして、太陽光発電ユニット10は、それ自体又は太陽光発電ユニット10の内部で、外装部位の範囲内で電気的に自己完結・自立型の系を構築することもできる。
【0022】
本実施形態では、太陽光発電モジュールにより発電された電力は、通気口36の開閉を行う開閉弁34の開閉制御、及び、ファン38の動力源として使用される。通気口36は、スパンドレルガラス12と太陽光発電庇14との間に設けられる。通気口36は、建物1の外側と内側とを貫通する通気口であって、その開閉は開閉弁34により行われる。なお、ファン38の近傍にも通気口を設けることもできる。
【0023】
また、ファン38が、下枠22上面に設けられる。すなわち、ファン38は、ビジョンガラス16の下方側に設けられる。ファン38は、建物1の上方向に空気を送る向きに配置される。また、ビジョンガラス16の近傍に配置されるので、ファン38を回転させることにより、ビジョンガラス16の表面近傍の空気を流動させることができる。
【0024】
夏期においては、前述の開閉弁34を開側にし、ファン38を回転させることで建物1の室内上方に溜まった高温の空気を排出することができる。また、冬期においては、開閉弁34を閉側にし、ファン38を回転させることでビジョンガラス16の表面近傍の空気を流動させて、結露を防止することができる。
【0025】
太陽光発電ユニット10の下側部分には、ビジョンガラス16が上下方向について無目24と下枠22に挟み込まれ、左右方向について横枠21に挟み込まれるように組み付けられる。また、ビジョンガラス16と水平方向についてほぼ重なるように、サイドフィンが横枠21に取り付けられる。
【0026】
なお、上記方立のマリオンスパンは、1800mm、1600mm、1400mm、1200mm、1000mmとすることができる。これにより、太陽光発電ユニット10を規格に準じたものとし、ユニットとして施工を容易にし、かつ、コストダウンを図ることができる。また、前述のように、ファン38を稼働させるために太陽電池モジュールを外部から独立して有しているので、この太陽光発電ユニット10を建物1に取り付けるだけで、簡便に室内環境を改善することができる。
【0027】
また、ガラスカーテンウォール特有の眺望性や開放感を阻害しない程度に、太陽光発電庇14をルーバー状にし、傾斜角を上げることとして、複数段設けることもできる。
【0028】
以上のように、外装部の一部をなすビジョンガラス16を有する太陽光発電ユニット10が、空気を流動させるファン38と、空気の吸排気を行う通気口36とを有しているので、夏期にはガラス部材周辺の高温の空気を通気口36を通じて排気することができる一方、冬期にはガラス部材周辺の空気を循環させるので結露を防止することができ室内環境を改善することができる。さらに、太陽光発電ユニット10において、ファン38を稼働させるために太陽電池モジュールを独立して有しているので、この太陽光発電ユニット10を取り付けるだけで、簡便に室内環境を改善することができる。
【0029】
また、第1太陽光発電部材において太陽電池モジュールで発電を行うと共に、入射した光を第2太陽光発電部材に対して反射する。また、第2太陽光発電部材の太陽電池モジュールで発電を行う際に、直射光のみならず、第1太陽光発電部材において反射した反射光によっても発電を行うことができる。このため、太陽光発電ユニットを外装設置した場合であっても、発電効率を高めることができる。
【0030】
特に、安価な太陽電池モジュールは、光を反射しやすい場合がある。この場合、光を反射しやすい太陽電池モジュールを太陽光発電庇14に設けることとすれば、スパンドレルガラスにおける太陽電池モジュールに対して光を反射させて、安価に太陽電池モジュールを設置しつつ、効率の高い発電を行うことができる。
【0031】
また、従来、太陽光発電モジュールにより発電を行う場合、得られる電力は天候や季節に左右されるため不安定にならざるを得ないという問題がある。そのため、太陽光発電モジュールから得られる電力は、独立した電源とするのではなく、キュービクルや分電盤に接続し、電力会社の電力系統と連系(系統連系)させて使用するのが一般的であった。しかしながら、このような手法では、建物各階の外装部位で発電した電気を系統連系させるため、煩雑な配線工事を必要とし、手間もコストもかかった。また配線の長さも長くなるため、電力ロスの割合も大きいという問題があった。
【0032】
これに対し、本実施形態によれば、太陽光発電ユニット10において電気的に完結した系であるので、煩雑な電気配線工事の手間を軽減させ、コストダウンを図ることができる。また、本実施形態における太陽光発電ユニット10を建物の南側に設置した場合、ガラスカーテンウォールに必須である日よけ部材の一部を太陽光発電モジュールが兼ねることができるので、夏期における熱負荷低減及び発電効率の点で利点がある。
【0033】
また、太陽光発電モジュール14aを庇に設けることとしているので、その地域で最も年間日射量の多い傾斜角を太陽光発電庇14の設置角度として設定することができ、発電効率を総じて高く維持することができ、同時にビジョンガラス16から入射する直射日光を遮ることができるので、省エネ効果を高めることができる。
【0034】
また、仮に、太陽光発電庇14の傾斜角を夏期の最適日射量となるように設定した場合、その傾斜角が小さすぎて雨水・積雪に対して悪影響を生ずることがあるが、本実施形態では、最適年間日射量になるように太陽光発電庇14の傾斜角を設定できるので、このような影響を生じないようにすることができる。
【符号の説明】
【0035】
1 建物、10 太陽光発電ユニット、
12 スパンドレルガラス、12a 太陽光発電モジュール(太陽電池モジュール)、
14 太陽光発電庇、
14a 太陽光発電モジュール(太陽電池モジュール)、14b バッテリー、
14c 強化ガラス、
16 ビジョンガラス(ガラス部材)、18 サイドフィン、
20 上枠、21 横枠、22 下枠、
24 無目(トランサム)、26 方立(マリオン)、
28 バックボード、
34 開閉弁、36 通気口、38 ファン(流動装置部)、
42 床上仕上げ、44 床スラブ、46 天井内、48 天井、
L 光路