(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る体積型ホログラム記録用感光性組成物、本発明に係る体積型ホログラム記録用感光性基板、及び、本発明に係る体積型ホログラム記録体について、順に説明する。
なお、本発明において、(メタ)アクリレートとは、メタアクリレート及び/又はアクリレートを表し、(メタ)アクリロイルとは、メタアクリロイル及び/又はアクリロイルを表す。
【0018】
[体積型ホログラム記録用感光性組成物]
本発明に係る体積型ホログラム記録用感光性組成物は、光重合性モノマーと、光重合開始剤と、前記光重合開始剤を増感せしめる増感色素と、バインダー樹脂と、チオール基含有化合物とを含有し、
前記光重合性モノマーが少なくとも光ラジカル重合性モノマー及び光カチオン重合性モノマーを含み、
前記チオール基含有化合物が、前記光ラジカル重合性モノマーの連鎖移動剤であって、少なくとも1分子中に2つ以上の2級チオール基を有する多官能2級チオール化合物であり、且つ、
前記光ラジカル重合性モノマー100質量部に対して、前記チオール基含有化合物を1.5〜30質量部含有することを特徴とする。
【0019】
本発明においては、光ラジカル重合性モノマー及び光カチオン重合性モノマーを含む光重合性モノマー、光重合開始剤、前記光重合開始剤を増感せしめる増感色素、及びバインダー樹脂に、更に、光ラジカル重合性モノマーの連鎖移動剤として、少なくとも1分子中に2つ以上の2級チオール基を有する多官能2級チオール化合物を特定量組み合わせて用いることにより、前記増感色素の脱色を阻害することなく、ホログラム記録時の感度を向上でき、且つ、屈折率変調量を向上できる。
ホログラム記録時の感度が向上すると、露光時間が短くなり、製品製造のスループットを高めることができ、低コスト化が図られる。
また、屈折率変調量が向上することにより、ホログラムの高輝度化が可能となる。
【0020】
上記特定の組み合わせにより、上記のような効果を発揮する作用としては以下のように推定される。
本発明に係る体積型ホログラム記録用感光性組成物の典型的なホログラム記録方法は、組成物の層形成後、まず、前記光重合開始剤を増感せしめる増感色素に対応した光を干渉露光することにより、光ラジカル重合性モノマーのみの重合反応を進行させる。前記多官能2級チオール化合物は、ラジカル重合に対する連鎖移動剤として作用し、重合反応の成長末端からラジカルを引き抜き、成長を停止させると共に、新たな重合反応開始種となり、光重合性モノマーに付加して新たなポリマーの成長を開始する。前記多官能2級チオール化合物を更に組み合わせることで、このようなラジカル重合の連鎖移動の頻度が増加することにより、光ラジカル重合性モノマーの反応率が増加し、感度が向上したと推定される。また、光ラジカル重合性モノマーの反応率が増加し、反応寄与成分が増加することで、光ラジカル重合性モノマーの重合度が高くなり、屈折率変調量(Δn)が向上すると推定される。
ラジカル重合に対する連鎖移動剤として、1分子中に1つのチオール基を有する単官能チオール化合物の場合、ラジカル重合の連鎖移動の頻度が小さくなるため、ホログラム記録時の感度および屈折率変調量を向上させる効果を発揮しない。それに対して、本発明においては、ラジカル重合に対する連鎖移動剤として、1分子中に2つ以上のチオール基を有する多官能チオール化合物を用いることにより、ラジカル重合の連鎖移動の頻度が向上するため、ホログラム記録時の感度および屈折率変調量を向上させる効果を発揮するようになる。
【0021】
また、本発明においては、特に、2級チオール基を1分子中に2つ以上有する多官能2級チオール化合物を用いる。2級チオール基は、1級チオール基と比べてチオール基の周りの立体障害が大きいため、1級チオール基と比べて反応速度が速くなりすぎず、また、光重合性モノマーの拡散移動も阻害しない程度に、適度に重合度を上げることができる。そのため、2級チオール基を1分子中に2つ以上有する多官能2級チオール化合物を用いると、特に屈折率変調量(Δn)が高い体積型ホログラム記録用感光性組成物を得ることができると推定される。
更に、本発明においては、特に、2級チオール基を1分子中に2つ以上有する多官能2級チオール化合物を用いることにより、チオール基の周りの立体障害により反応速度を制御できるため、チオール基と二重結合の熱付加反応による反応組成物の不安定性が抑制され、ポットライフが長い体積型ホログラム記録用感光性組成物を得ることができるというメリットもある。
また、本発明においては、2級チオール基を1分子中に2つ以上有する多官能2級チオール化合物を光ラジカル重合性モノマーに対して特定量で含まれるようにする。多官能2級チオール化合物が少なすぎると、ホログラム記録時の感度および屈折率変調量を向上させる効果を発揮せず、多すぎると、光ラジカル重合性モノマーの反応率が過剰となりモノマーの移動が阻害されるからか、却って屈折率変調量が悪化する傾向がある。更に、多官能2級チオール化合物が多すぎると、未反応の多官能2級チオール化合物が増感色素の構造変化、分解などによる脱色を阻害するため、脱色性が悪化する傾向がある。本発明においては、前記多官能2級チオール化合物を光ラジカル重合性モノマーに対して特定量で含まれるようにすることにより、モノマーの移動を阻害しない程度に光ラジカル重合性モノマーの反応率を増加させることができるため、ホログラム記録時の感度および屈折率変調量(Δn)が高い体積型ホログラム記録用感光性組成物を得ることができる。また、増感色素の脱色を阻害しない最適な添加量であるため、増感色素の脱色性が良好な体積型ホログラム記録用感光性組成物を得ることができる。
【0022】
本発明の体積型ホログラム記録用感光性組成物は、少なくとも、光重合性モノマーと、光重合開始剤と、前記光重合開始剤を増感せしめる増感色素と、バインダー樹脂と、チオール基含有化合物とを含有するものであり、本発明の効果が損なわれない限り、必要に応じて他の成分を含有してもよいものである。
以下、このような本発明の体積型ホログラム記録用感光性組成物の各成分について順に詳細に説明するが、まず、本発明に特徴的なチオール基含有化合物から説明する。
【0023】
<チオール基含有化合物>
本発明において、必須成分として用いられるチオール基含有化合物は、少なくとも1分子中に2つ以上の2級チオール基を有する多官能2級チオール化合物であり、光ラジカル重合性モノマーの連鎖移動剤として用いられる。
この連鎖移動剤とは、ラジカル重合反応の成長末端からラジカルを引き抜き、成長を停止させるものである。そして当該連鎖移動剤に移動したラジカルは、新たな重合反応開始種となり、光ラジカル重合性モノマーに付加して新たなポリマーの成長が開始される。この過程はラジカル重合の連鎖移動と呼ばれ、連鎖移動の頻度が増加することにより光ラジカル重合性モノマーの反応率が増加する。
【0024】
また、2級チオール基とは、チオール基が結合する炭素原子が第2級炭素原子であるチオール基をいう。
2級チオール基は、1級チオール基と比べてチオール基の周りの立体障害が大きい。本発明においては、特に、2級チオール基を用いることにより、1級チオール基と比べて反応速度が速くなりすぎず、また、光重合性モノマーの拡散移動も阻害しない程度に、適度に重合度を上げることができる。そのため、2級チオール基を1分子中に2つ以上有する多官能2級チオール化合物を用いると、特に屈折率変調量(Δn)が高い体積型ホログラム記録用感光性組成物を得ることができると推定される。本発明においては、反応速度や重合度の調節のために、チオール基が結合する炭素原子の置換基を適宜調節し、チオール基の周りの立体障害を調節することが可能である。
更に、本発明においては、特に、2級チオール基を1分子中に2つ以上有する多官能2級チオール化合物を用いることにより、チオール基の周りの立体障害により反応速度を制御できるため、チオール基と二重結合の熱付加反応による反応組成物の不安定性が抑制され、ポットライフが長い体積型ホログラム記録用感光性組成物を得ることができるというメリットもある。
【0025】
本発明において用いられる1分子中に2つ以上の2級チオール基を有する多官能2級チオール化合物としては、連鎖移動剤として機能する、1分子中に2つ以上の2級チオール基を有する化合物を適宜選択して用いることができる。
例えば、脂肪族炭化水素に2つ以上の2級チオール基を有するように2つ以上のチオール基が結合した構造、又は芳香族炭化水素基に2つ以上の2級チオール基が結合した構造等が挙げられる。
また、上記多官能2級チオール化合物において好適に用いられるものとしては、例えば、以下の一般式(1)で表される構造を有するチオール基含有化合物が挙げられる。
【0026】
X(−O−CO−(CR
1R
2)
n−CHR
3−SH)
m (1)
(一般式(1)中、Xは置換基を有しても良い炭素数が多くとも20のm価の脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、複素環、及びこれらの組み合わせの残基であり、R
1及びR
2は、それぞれ独立に水素原子又は炭素数が1〜10のアルキル基であり、R
3は、炭素数が1〜10のアルキル基である。nは0〜4の整数であり、mは2〜6の整数である。)
【0027】
上記一般式(1)中、複数のR
1、複数のR
2及び複数のR
3は、それぞれ同一でも異なっていても良い。
上記一般式(1)中、R
1及びR
2は、硬化物特性の調整の観点、及び入手が容易な点から、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基であることが好ましく、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基であることがより好ましく、水素原子又は炭素数1〜2のアルキル基であることがより更に好ましい。
【0028】
上記一般式(1)中、R
3は、屈折率変調量(Δn)の向上、及びポットライフの向上の点から適宜調整すれば良いが、炭素数1〜6のアルキル基であることが好ましく、炭素数1〜4のアルキル基であることがより好ましく、炭素数1〜2のアルキル基であることがより更に好ましい。
【0029】
R
1及びR
2が共に水素原子であり、R
3がメチル基である化合物、すなわち下記一般式(2)で表される化合物は、屈折率変調量(Δn)の向上、及びポットライフの向上、及び入手が容易な点から、好ましく用いられる。
【0030】
X(−O−CO−(CH
2)
n−CH(CH
3)−SH)
m (2)
(一般式(1)中、Xは置換基を有しても良い炭素数が多くとも20のm価の脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、複素環、及びこれらの組み合わせの残基であり、nは0〜4の整数であり、mは2〜6の整数である。)
【0031】
上記一般式(1)及び(2)中、Xは、置換基を有しても良い炭素数が多くとも20のm価の脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、複素環、及びこれらの組み合わせの残基である。Xとしては、例えば、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、複素環、及びこれらの組み合わせを含む多価アルコールから水酸基を除いた残基等が挙げられる。
Xは、硬化物特性の調整の観点、及び入手が容易な点から、炭素数1〜15であることが好ましく、炭素数1〜12であることがより好ましく、炭素数1〜9であることがより更に好ましい。Xが置換基を有しない場合には、炭素数1〜6の2〜4価の脂肪族炭化水素基が特に好ましい。
Xが置換基を有する場合の置換基としては、例えば、水酸基、アルキル基、アルキレン基、アリール基、カルボキシル基、カルボニル基、アミノ基、ニトロ基、又は、エーテル結合、エステル結合若しくはウレタン結合を含む官能基等を挙げることができる。
【0032】
上記一般式(1)及び(2)中、mは、Xに対する(−O−CO−(CH
2)
n−CH(CH
3)−SH)の置換数を表し、2〜6の整数である。Xが置換基を有する場合であっても、当該置換基の数は、m価の価数には含めない。mは、屈折率変調量(Δn)の向上の点から、2〜4であることが好ましく、3〜4であることがより更に好ましい。
【0033】
また、上記一般式(1)及び(2)中、nは0〜4の整数であるが、入手が容易な点からは、nが1であることが好ましい。
【0034】
このような化合物としては、具体的には、エチレングリコールビス(3−メルカプトブチレート)、1,2−プロピレングリコールビス(3−メルカプトブチレート)、1,3−プロピレングリコールビス(3−メルカプトブチレート)、1,4−ブタンジオールビス(3−メルカプトブチレート)、グリセリントリス(3−メルカプトブチレート)、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトブチレート)、トリメチロールエタントリス(3−メルカプトブチレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−メルカプトブチレート)、トリス(3−メルカプトブチリルオキシエチル)イソシアヌレート、ビスフェノールAジヒドロキシエチルエーテル−3−メルカプトブチレート、4,4’−(9−フルオレニリデン)ビス(2−フェノキシエチル(3−メルカプトブチレート))、エチレングリコールビス(3−メルカプトバレレート)、1,2−プロピレングリコールビス(3−メルカプトバレレート)、1,3−プロピレングリコールビス(3−メルカプトバレレート)、1,4−ブタンジオールビス(3−メルカプトバレレート)、グリセリントリス(3−メルカプトバレレート)、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトバレレート)、トリメチロールエタントリス(3−メルカプトバレレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトバレレート)等が挙げられる。
【0035】
本発明の体積型ホログラム記録用感光性組成物における、前記チオール基含有化合物の含有量は、後述する光ラジカル重合性モノマー100質量部に対して、前記チオール基含有化合物を1.5〜30質量部である。このような範囲とすると、モノマーの移動を阻害しない程度に光ラジカル重合性モノマーの反応率を増加させることができるため、ホログラム記録時の感度および屈折率変調量(Δn)が高い体積型ホログラム記録用感光性組成物を得ることができる。また、増感色素の脱色を阻害しない最適な添加量であるため、増感色素の脱色性が良好な体積型ホログラム記録用感光性組成物を得ることができる。
前記チオール基含有化合物の含有量が上記範囲よりも少ないと、ホログラム記録時におけるラジカル重合の連鎖移動の頻度を十分に高くすることができないため、ホログラム記録時の感度および屈折率変調量を向上させる効果を十分に発揮しない傾向がある。一方、前記チオール基含有化合物の含有量が上記範囲よりも大きいと、重合度が上がり過ぎるためか、その後の加熱工程におけるモノマー移動性が低下し、屈折率変調量が悪化する傾向がある。また、前記チオール基含有化合物の含有量が上記範囲よりも大きいと、増感色素を脱色する工程において、未反応のチオール基含有化合物が増感色素の構造変化、分解などによる脱色を阻害するためか、脱色性が悪化する傾向がある。
【0036】
<光重合性モノマー>
本発明における光重合性モノマーは、光照射によって重合又は二量化反応が進行し、且つ、ホログラム記録層中で拡散移動できる化合物である。
本発明における光重合性モノマーとしては、例えば、光ラジカル重合性モノマー、光カチオン重合性モノマーおよび光二量化性化合物等を挙げることができるが、少なくとも光ラジカル重合性モノマー及び光カチオン重合性モノマーを含む。
以下、光ラジカル重合性モノマーおよび光カチオン重合性モノマーについて説明する。
【0037】
(光ラジカル重合性モノマー)
本発明に用いられる光ラジカル重合性モノマーとしては、本発明の体積型ホログラム記録用感光性組成物を用いてホログラム記録層を形成する際に、例えばレーザー照射等によって、後述する光ラジカル重合開始剤から発生した活性ラジカルの作用により重合する化合物であれば、特に限定されるものではないが、分子中に少なくとも一つのエチレン性不飽和二重結合を持つ化合物を使用することが好ましい。例えば、不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸塩、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミド結合物等を挙げることができる。
【0038】
上記光ラジカル重合性モノマーの例としては、メチルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ラウリルアクリレート、N−アクリロイルモルホリン、2−エチルヘキシルカルビトールアクリレート、イソボニルアクリレート、メトキシプロピレングリコールアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、スチレン、2−ブロモスチレン、フェニルアクリレート、2−フェノキシエチルアクリレート、2,3−ナフタレンジカルボン酸(アクリロキシエチル)モノエステル、メチルフェノキシエチルアクリレート、ノニルフェノキシエチルアクリレート、β−アクリロキシエチルハイドロゲンフタレート、フェノキシポリエチレングリコールアクリレート、2,4,6−トリブロモフェニルアクリレート、ジフェン酸(2−メタクリロキシエチル)モノエステル、ベンジルアクリレート、2,3−ジブロムプロピルアクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、2−ナフチルアクリレート、N−ビニルカルバゾール、2−(9−カルバゾリル)エチルアクリレート、トリフェニルメチルチオアクリレート、2−(トリシクロ[5,2,10
2・6]ジブロモデシルチオ)エチルアクリレート、S−(1−ナフチルメチル)チオアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、メチレンビスアクリルアミド、ポリエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジフェン酸(2−アクリロキシエチル)(3−アクリロキシプロピル−2−ヒドロキシ)ジエステル、2,3−ナフタリンジカルボン酸(2−アクリロキシエチル)(3−アクリロキシプロピル−2−ヒドロキシ)ジエステル、4,5−フェナントレンジカルボン酸(2−アクリロキシエチル)(3−アクリロキシプロピル−2−ヒドロキシ)ジエステル、ジブロムネオペンチルグリコールジアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、1,3−ビス[2−アクリロキシ−3−(2,4,6−トリブロモフェノキシ)プロポキシ]ベンゼン、ジエチレンジチオグリコールジアクリレート、2,2−ビス(4−アクリロキシエトキシフェニル)プロパン、ビス(4−アクリロキシジエトキシフェニル)メタン、ビス(4−アクリロキシエトキシ−3,5−ジブロモフェニル)メタン、2,2−ビス(4−アクリロキシエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アクリロキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アクリロキシエトキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、ビス(4−アクリロキシエトキシフェニル)スルホン、ビス(4−アクリロキシジエトキシフェニル)スルホン、ビス(4−アクリロキシプロポキシフェニル)スルホン、ビス(4−アクリロキシエトキシ−3,5−ジブロモフェニル)スルホン、および上記におけるアクリレートをメタクリレートに変えた化合物、更には、特開平2−247205号公報や特開平2−261808号公報に記載されているような分子内に少なくともS原子を2個以上含む、エチレン性不飽和二重結合含有化合物等が挙げられ、これらを1種、または2種以上混合して用いることができる。
【0039】
また、光ラジカル重合性モノマーの平均屈折率は、後述する光カチオン重合性モノマーの平均屈折率より大きいことが好ましく、中でも0.02以上大きいことが好ましい。これは、光ラジカル重合性モノマーと光カチオン重合性モノマーとの平均屈折率の差が上記の値よりも低いと、所望の屈折率変調量(Δn)が得られない可能性があるからである。
【0040】
(光カチオン重合性モノマー)
本発明に用いられる光カチオン重合性モノマーは、エネルギー照射を受け、後述する光カチオン重合開始剤の分解により発生したブレンステッド酸あるいはルイス酸によってカチオン重合する化合物である。例えば、エポキシ基やオキセタン基等の環状エーテル類、チオエーテル類、ビニルエーテル類等を挙げることができる。
また、光ラジカル重合性モノマーと光カチオン重合性モノマーとを併用する場合、上記光ラジカル重合性モノマーの重合が、比較的低粘度の組成物中で行われることが好ましいという点から、本発明における光カチオン重合性モノマーは、常温で液状であることが好ましい。
【0041】
上記光カチオン重合性モノマーとしては、例えば、ジグリセロールジエーテル、ペンタエリスリトールポリジグリシジルエーテル、1,4−ビス(2,3−エポキシプロポキシパーフルオロイソプロピル)シクロヘキサン、ソルビトールポリグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル等を挙げることができる。
【0042】
本発明においては、上述した光カチオン重合性モノマーの1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0043】
本発明の体積型ホログラム記録用感光性組成物における、光重合性モノマーの合計量の含有量は、体積型ホログラム記録用感光性組成物の全固形分100質量部に対して8.5〜85質量部であることが好ましく、8.5〜70質量部であることがさらに好ましい。ここで、固形分とは溶媒以外の成分をいい、常温で液状のモノマーも固形分に含まれる。
光重合性モノマーの合計量の含有量が上記範囲よりも少ないと、高い屈折率変調量(Δn)を得ることができず、高輝度の体積型ホログラム記録体を得ることができない可能性があるからである。一方、光重合性モノマーの含有量が上記範囲よりも大きいと、バインダー樹脂の含有量が相対的に減少し、ホログラム記録層を保持できない可能性があるからである。
【0044】
また、本発明の体積型ホログラム記録用感光性組成物における、光重合性モノマーにおいて、光ラジカル重合性モノマーと光カチオン重合性モノマーとの含有比は、光ラジカル重合性モノマー100質量部に対して、光カチオン重合性モノマーが30〜90質量部の範囲内であることが好ましく、更に、50〜80質量部の範囲内であることがさらに好ましい。
【0045】
<光重合開始剤>
本発明の体積型ホログラム記録用感光性組成物を構成する光重合開始剤としては、光ラ
ジカル重合開始剤、及び光カチオン重合開始剤を用いることができる。
【0046】
(光ラジカル重合開始剤)
本発明に用いられる光ラジカル重合開始剤としては、イミダゾール誘導体、ビスイミダゾール誘導体、N−アリールグリシン誘導体、有機アジド化合物、チタノセン類、アルミナート錯体、有機過酸化物、N−アルコキシピリジニウム塩、チオキサントン誘導体等が挙げられ、更に具体的には、1,3−ジ(t−ブチルジオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラキス(t−ブチルジオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3−フェニル−5−イソオキサゾロン、2−メルカプトベンズイミダゾール、ビス(2,4,5−トリフェニル)イミダゾール、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(商品名イルガキュア651、BASF社製)、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(商品名イルガキュア184、BASF社製)、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1(商品名イルガキュア369、BASF社製)、ビス(η
5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウム(商品名イルガキュア784、BASF社製)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0047】
光カチオン重合開始剤としては、スルホン酸エステル、イミドスルホネート、ジアルキル−4−ヒドロキシスルホニウム塩、アリールスルホン酸−p−ニトロベンジルエステル、シラノール−アルミニウム錯体、(η
6−ベンゼン)(η
5−シクロペンタジエニル)鉄(II)等が例示され、更に具体的には、ベンゾイントシレート、2,5−ジニトロベンジルトシレート、N−トシフタル酸イミド等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0048】
光ラジカル重合開始剤としても、光カチオン重合開始剤としても用いられるものとしては、芳香族ヨードニウム塩、芳香族スルホニウム塩、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ホスホニウム塩、トリアジン化合物、鉄アレーン錯体等が例示され、更に具体的には、ジフェニルヨードニウム、ジトリルヨードニウム、ビス(p−tert−ブチルフェニル)ヨードニウム、ビス(p−クロロフェニル)ヨードニウム等のヨードニウムのクロリド、ブロミド、ホウフッ化塩、ヘキサフルオロホスフェート塩、ヘキサフルオロアンチモネート塩等のヨードニウム塩、トリフェニルスルホニウム、4−tert−ブチルトリフェニルスルホニウム、トリス(4−メチルフェニル)スルホニウム等のスルホニウムのクロリド、ブロミド、ホウフッ化塩、ヘキサフルオロホスフェート塩、ヘキサフルオロアンチモネート塩等のスルホニウム塩、2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−フェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−メチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン等の2,4,6−置換−1,3,5−トリアジン化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0049】
光重合開始剤は、記録されたホログラムの安定化の観点から、ホログラム記録後に分解処理されるものであることが好ましい
【0050】
本発明の体積型ホログラム記録用感光性組成物における光重合開始剤の含有量は、体積型ホログラム記録用感光性組成物の全固形分100質量部に対して0.04〜6.5質量部であることが好ましく、1.8〜5.0質量部であることがさらに好ましい。
上記光重合開始剤の含有量が、上記範囲よりも少ない場合、上述した光重合性モノマーが十分に重合されず、所望の屈折率変調量(Δn)が得られない可能性があるからである。一方で上記範囲よりも多い場合、未反応の光重合開始剤がホログラム特性を悪化させる可能性があるからである。
【0051】
<増感色素>
本発明における増感色素は、一般的に光を吸収する成分であり、光重合開始剤の記録光に対する感度を増感させる働きを有する。増感色素を用いることによって可視光にも活性となり、可視レーザー光を用いてホログラムを記録することが可能となるからである。
【0052】
本発明に用いられる増感色素としては、チオピリリウム塩系色素、メロシアニン系色素、キノリン系色素、スチリルキノリン系色素、クマリン系色素、ケトクマリン系色素、チオキサンテン系色素、キサンテン系色素、オキソノール系色素、シアニン系色素、ローダミン染料、ピリリウムイオン系色素、シクロペンタノン系色素、シクロヘキサノン系色素、ジフェニルヨードニウムイオン系色素等を挙げることができる。シアニン系色素、メロシアニン系色素の具体例としては、3,3’−ジカルボキシエチル−2,2’−チオシアニンブロミド、1−カルボキシメチル−1’−カルボキシエチル−2,2’−キノシアニンブロミド、1,3’−ジエチル−2,2’−キノチアシアニンヨージド、3−エチル−5−[(3−エチル−2(3H)−ベンゾチアゾリリデン)エチリデン]−2−チオキソ−4−オキサゾリジン、3,9−ジエチル−3’−カルボキシメチル−2,2’−チアカルボシアニン・ヨウ素塩等が挙げられ、クマリン系色素、ケトクマリン系色素の具体例としては、3−(2’−ベンゾイミダゾール)−7−ジエチルアミノクマリン、3,3’−カルボニルビス(7−ジエチルアミノクマリン)、3,3’−カルボニルビスクマリン、3,3’−カルボニルビス(5,7−ジメトキシクマリン)、3,3’−カルボニルビス(7−アセトキシクマリン)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0053】
後述する体積型ホログラム記録体において、高透明性が要求される場合は、干渉露光工程後の、加熱工程または光照射工程時に、分解等により脱色しやすいものが好ましく、例えば、シアニン系色素のように一般的に光によって分解しやすい色素が好ましい。室内光や太陽光の下に数時間から数日放置することにより、体積型ホログラム記録体中の色素が分解されて可視域に吸収を持たなくなり、高透明な体積型ホログラム記録体を得ることができるからである
【0054】
上記増感色素の含有量は、体積型ホログラム記録用感光性組成物の全固形分100質量部に対して0.001〜2.0質量部であることが好ましく、0.001〜1.2質量部であることがさらに好ましい。
上記増感色素の含有量が上記範囲よりも多い場合、高透明性が要求される際に、光照射による色素の分解が十分になされず、着色したホログラム記録層となる可能性があり、一方、上記範囲よりも少ない場合、光重合開始剤の感度を十分に増感させることができず、可視光に不活性となる可能性があるからである。
【0055】
<バインダー樹脂>
バインダー樹脂は、ホログラム記録層の成膜性、膜厚の均一性を向上させ、光照射による重合で形成されたホログラムを安定化させる働きを有し、ホログラム記録層の屈折率変調量(Δn)の増加、耐熱性および機械物性等の向上に寄与するものである。
本発明において用いられるバインダー樹脂としては、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂より選択される1種以上が好適に用いられる。中でも、少なくとも熱可塑性樹脂を用いることが好ましく、更に、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂を併用することが屈折率変調量(Δn)の増加、耐熱性および機械物性等の向上の点から好ましい。
【0056】
(熱可塑性樹脂)
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリビニルアセテート、ポリビニルブチラート、ポリビニルホルマール、ポリビニルカルバゾール、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリエチルアクリレート、ポリブチルアクリレート、ポリメタクリロニトリル、ポリエチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリ−1,2−ジクロロエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、シンジオタクチック型ポリメチルメタクリレート、ポリ−α−ビニルナフタレート、ポリカーボネート、セルロースアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートブチラート、ポリスチレン、ポリ−α−メチルスチレン、ポリ−o−メチルスチレン、ポリ−p−メチルスチレン、ポリ−p−フェニルスチレン、ポリ−2,5−ジクロロスチレン、ポリ−p−クロロスチレン、ポリ−2,5−ジクロロスチレン、ポリアリーレート、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ABS樹脂、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリビニルピロリドン、ポリ塩化ビニリデン、水素化スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体、透明ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、(メタ)アクリル酸環状脂肪族エステルとメチル(メタ)アクリレートとの共重合体等が挙げられる。
熱可塑性樹脂は、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0057】
本発明のバインダー樹脂に用いられる熱可塑性樹脂としては、中でも、ポリアクリル酸エステルを含有することが、屈折率変調量(Δn)の増加の点から好ましい。
【0058】
本発明で用いられるポリアクリル酸エステルとしては、例えば、ポリメチルアクリレート、ポリエチルアクリレート、ポリn−プロピルアクリレート、ポリn−ブチルアクリレート、ポリベンジルアクリレート、ポリn−ヘキシルアクリレート、ポリイソプロピルアクリレート、ポリイソブチルアクリレート、ポリ−t−ブチルアクリレート、ポリシクロヘキシルアクリレート、ポリフェニルアクリレート、ポリ1−フェニルエチルアクリレート、ポリ2−フェニルエチルアクリレート、ポリフルフリルアクリレート、ポリジフェニルメチルアクリレート、ポリペンタクロルフェニルアクリレート、ポリナフチルアクリレート等が挙げられる。ポリ(メタ)アクリル酸エステルに更にポリ(メタ)アクリル酸エステルの加水分解物が含まれていても良い。本発明におけるバインダー樹脂に用いられる熱可塑性樹脂は、中でも、屈折率変調量(Δn)の増加の点、及び保存安定性の点から、ポリメチルメタクリレート、及びポリメチルメタクリレートとポリ(メタ)アクリル酸エステルの共重合体が好ましい。
【0059】
本発明におけるバインダー樹脂に用いられる、熱可塑性樹脂の重量平均分子量は、ホログラム記録時の光重合性モノマーの拡散移動能の点、及び、高温保存安定性の点からは、20000〜150000の範囲内であることが好ましく、80000〜150000の範囲内であることがより好ましく、120000〜140000の範囲内であることがさらに好ましい。
なお、本発明における重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィ−(GPC)測定のポリスチレン換算値をいう。
【0060】
本発明におけるバインダー樹脂に用いられる、熱可塑性樹脂のガラス転移温度(Tg)は、60℃〜150℃の範囲内であることが好ましく、70℃〜120℃の範囲内であることがより好ましい。
ガラス転移温度(Tg)が上記範囲よりも高いと、光重合性モノマーの拡散移動能が劣り、所望の屈折率変調量(Δn)が得られず、輝度の高い体積型ホログラム記録体が得られない可能性があるからである。一方、ガラス転移温度(Tg)が上記範囲よりも低いと、高温保存下にて、バインダー樹脂が軟化し、干渉縞が乱れるため、所望の屈折率変調量(Δn)が得られない可能性があるからである。
なお、ガラス転移温度(Tg)は、示差熱分析計(DSC)などを用いて測定することができる。
【0061】
(熱硬化性樹脂)
本発明におけるバインダー樹脂に熱硬化性樹脂を用いると、加熱工程において硬化されることにより、ホログラム記録層の強度を高め、体積型ホログラム記録特性を向上し、安定した層構造を形成させることができる。また、上記熱硬化性樹脂の官能基の一部は光照射により、光重合性モノマーの一部と相互作用を及ぼし結合を有することができる。この場合、体積型ホログラム記録後の光照射工程により、光重合性モノマーが固定されるため、体積型ホログラム記録体の強度を高めることができる。
【0062】
本発明におけるバインダー樹脂に用いられる熱硬化性樹脂としては、特に限定されるものではなく、熱硬化性基を有するモノマー、オリゴマー、及びポリマーを好適に使用することができる。
上記熱硬化性樹脂としては、例えば、ヒドロキシル基、メルカプト基、カルボキシル基、アミノ基、エポキシ基、オキセタン基、イソシアネート基、カルボジイミド基、オキサジン基、及び金属アルコキサイド等を含有する化合物等を挙げることができる。本発明においては、中でも、エポキシ基およびオキセタン基を含有する化合物を用いることがより好ましく、エポキシ基含有化合物を用いることがさらに好ましい。本発明で用いられるエポキシ基含有化合物としては、一分子中にエポキシ基を1個以上含有する樹脂であれば特に限定されるものではない。
【0063】
上記のエポキシ基を有する化合物のうち、エポキシ基を1つ有する単官能エポキシ化合物の例としては、例えば、フェニルグリシジルエーテル、p−tert−ブチルフェニルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、1,2−ブチレンオキサイド、1,3−ブタジエンモノオキサイド、1,2−エポキシドデカン、エピクロロヒドリン、1,2−エポキシデカン、スチレンオキサイド、シクロヘキセンオキサイド、中でも重合性不飽和結合を含有するものとして、3−メタクリロイルオキシメチルシクロヘキセンオキサイド、3−アクリロイルオキシメチルシクロヘキセンオキサイド、3−ビニルシクロヘキセンオキサイド、グリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0064】
また、エポキシ基を2つ以上有する多官能エポキシ化合物の例としては、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールFジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールSジグリシジルエーテル、エポキシノボラック樹脂、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールFジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールSジグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサン−メタ−ジオキサン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビニルシクロヘキセンオキサイド、4−ビニルエポキシシクロヘキサン、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシル−3’,4’−エポキシ−6’−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、メチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサン)、ジシクロペンタジエンジエポキサイド、エチレングリコールのジ(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、エチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジオクチル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジ−2−エチルヘキシル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル類、1,1,3−テトラデカジエンジオキサイド、リモネンジオキサイド、1,2,7,8−ジエポキシオクタン、1,2,5,6−ジエポキシシクロオクタン等があげられる。
その他、エポキシ基含有ポリマーも好適に用いられる。エポキシ基含有ポリマーとしては、例えば、エポキシ基やグリシジル基を有する単量体を共重合成分として用いた共重合体等が挙げられる。上記エポキシ基やグリシジル基を有する単量体としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、マレイン酸グリシジルエステルなどのα,β−不飽和カルボン酸のグリシジルエステルなどが挙げられる。
これらのエポキシ化合物は、1種のみを単独で使用しても良く、2種以上を併用してもよい。
【0065】
本発明におけるバインダー樹脂に用いられる熱硬化性樹脂の重量平均分子量は、5000〜100000の範囲内であることが好ましく、10000〜50000の範囲内であることが、屈折率変調量(Δn)を向上する点、及び、ホログラム記録層の膜強度の点から、より好ましい。
【0066】
バインダー樹脂として熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂を併用する場合の、熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂の配合比は、屈折率変調量(Δn)の向上と、体積型ホログラム記録体の強度の点から、質量比で熱可塑性樹脂/熱硬化性樹脂=50/50〜90/10の範囲内であることが好ましく、60/40〜90/10の範囲内であることがより好ましく、70/30〜80/20の範囲内であることがさらに好ましい。
【0067】
本発明の体積型ホログラム記録用感光性組成物における、バインダー樹脂の含有量は、屈折率変調量(Δn)の向上と、体積型ホログラム記録体の強度の点から、体積型ホログラム記録用感光性組成物の全固形分100質量部に対して、1〜40質量部であることが好ましく、25〜35質量部であることがより好ましい。
【0068】
<その他の成分>
本発明の体積型ホログラム記録用感光性組成物は、本発明の効果を損なわない限り、必要に応じて、微粒子、熱重合防止剤、シランカップリング剤、着色剤などを併用してよい。
例えば、良好な箔切れ性を付与したい場合には、微粒子が用いられることが好ましい。
微粒子としては、例えば、樹脂骨格として低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(メタ)アクリル等を含む有機微粒子、シリカ、マイカ、タルク、チタニア等の無機粒子等を用いることができ、これらの微粒子を1種、または2種以上を混合して使用してもよい。上記の中でも、上記有機微粒子の樹脂中の骨格または、側鎖の水素の一部または全部をフッ素原子で置換した含フッ素系樹脂の微粒子であるフッ素系微粒子、または、チタニア微粒子であることが好ましい。
本発明の体積型ホログラム記録用感光性組成物は、上記特定のチオール基含有化合物を含むため、保存安定性の点から、3級アルキルアミン、3級芳香族アミン、脂環式3級アミンのような硬化促進剤を実質的に含有しないことが好ましい。ここで、実質的に含有しないとは、体積型ホログラム記録体の強度の点から、体積型ホログラム記録用感光性組成物の全固形分100質量部に対して、0.1質量部未満を目安にすることができる。
【0069】
本発明の体積型ホログラム記録用感光性組成物は、塗工する際に必要に応じて溶媒を用いても良い。体積型ホログラム記録用感光性組成物のうち、常温で液状である成分が含有されている場合は、塗工溶媒が全く必要ない場合もある。
上記溶媒としては、例えばメチルエチルケトン、アセトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールジアセテートなどのエステル系溶媒、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶媒、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブなどのセロソルブ系溶媒、メタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコール系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルムなどのハロゲン系溶媒、またはそれらの混合溶媒等が挙げられる。
【0070】
[体積型ホログラム記録用感光性基板]
本発明に係る体積型ホログラム記録用感光性基板は、光重合性モノマーと、光重合開始剤と、前記光重合開始剤を増感せしめる増感色素と、バインダー樹脂と、チオール基含有化合物とを含有し、
前記光重合性モノマーが少なくとも光ラジカル重合性モノマー及び光カチオン重合性モノマーを含み、
前記チオール基含有化合物が、前記光ラジカル重合性モノマーの連鎖移動剤であって、少なくとも1分子中に2つ以上の2級チオール基を有する多官能2級チオール化合物であり、且つ、
前記光ラジカル重合性モノマー100質量部に対して、前記チオール基含有化合物を1.5〜30質量部含有する、ホログラムを記録するためのホログラム記録層を基材上に備えたことを特徴とする。
【0071】
図1は、本発明の体積型ホログラム記録用感光性基板の一例を示す概略図である。
図1に例示するように、上記本発明に係る体積型ホログラム記録用感光性基板10は、基材1上にホログラム記録層2が設けられている。
【0072】
本発明の体積型ホログラム記録用感光性基板は、少なくとも、ホログラム記録層と基材とを有するものであり、本発明の効果が損なわれない限り、必要に応じて、更に他の層を有していてもよいものである。
以下、体積型ホログラム記録用感光性基板を構成する各層について順に説明する。
【0073】
<基材>
本発明に係る体積型ホログラム記録用感光性基板において、基材は、ホログラム記録層を支持する機能を有するものであり、用途に応じて従来公知の基材を適宜選択して用いることができる。
【0074】
本発明に用いる基材としては、上記ホログラム記録層を支持できるものであれば特に限定されるものではなく、用途に応じて適宜選択して用いることができる。上記基材としては、通常、樹脂基材又はガラス基材を用いる。本発明に用いられる樹脂基材の具体例としては、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリフッ化エチレン系フィルム、ポリフッ化ビニリデンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、エチレン−ビニルアルコール共重合体フィルム、ポリビニルアルコールフィルム、ポリメチルメタクリレートフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、ポリアミドフィルム、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム等のポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム等の樹脂フィルム等を挙げることができる。
【0075】
本発明に用いられる基材の厚さは、本発明の製造方法により製造される体積型ホログラム記録体の用途や種類などに応じて適宜選択されるものであるが、通常、2μm〜200μmの範囲内であることが好ましく、10μm〜50μmの範囲内であることがより好ましい。
【0076】
上記基材の表面を、例えば、コロナ処理、オゾン処理、プラズマ処理、電離放射線処理、重クロム酸処理、アンカーまたはプライマー処理等の表面処理を施し、基材とホログラム記録層との密着性を高めても良い。
また、基材の表面は離型処理されていてもよく、例えば、フッ素系離型剤、ステアリン酸系離型剤、ワックス系離型剤等をディッピング塗工、スプレー塗工、ロールコート塗工等の方法を用いて離型処理を施すことができる。基材表面に離型処理を施すことにより、基材を剥離フィルムとして機能させることができるからである。離型処理を施す場合は、基材とホログラム記録層との間に保護層を介してもよい。
【0077】
<ホログラム記録層>
ホログラム記録層は、ホログラムを記録するための層であり、少なくとも光ラジカル重合性モノマー及び光カチオン重合性モノマーを含む光重合性モノマーと、光重合開始剤と、前記光重合開始剤を増感せしめる増感色素と、バインダー樹脂と、チオール基含有化合物とを含有し、前記チオール基含有化合物が、前記光ラジカル重合性モノマーの連鎖移動剤であって、少なくとも1分子中に2つ以上の2級チオール基を有する多官能2級チオール化合物であり、且つ、前記光ラジカル重合性モノマー100質量部に対して、前記チオール基含有化合物を1.5〜30質量部含有する層である。
【0078】
上記ホログラム記録層は、例えば、前記本発明に係る体積型ホログラム記録用感光性組成物を溶媒に溶解乃至分散して塗布液として、基材上に塗工し、溶媒を乾燥除去することにより、形成することができる。
【0079】
上記ホログラム記録層を形成する各成分については、前記体積型ホログラム記録用感光性組成物において説明したものと同様のものとすることができるのでここでの説明は省略する。
【0080】
ホログラム記録層用組成物の塗布方法は、従来公知の方法から、適宜選択すればよい。具体的には、例えば、スピンコーター、グラビアコーター、コンマコーター、バーコーター等の方法が挙げられる。
また、ホログラム記録層用組成物の流動性が高い場合には、例えば2枚のガラス板等の基材の間に封入することにより、ホログラム記録層を形成してもよい。
【0081】
ホログラム記録層の膜厚は、所望のホログラムを記録できる範囲で適宜設定すればよいものであり、例えば、1〜100μm、好ましくは3〜40μmの範囲で適宜設定すればよい。
【0082】
<剥離可能な保護層>
本発明に係る体積型ホログラム記録用感光性基板においては、乾燥後のホログラム記録層に粘着性がある場合、剥離可能な保護層として、ポリエステルフィルムやポリエチレンフィルム等、通常、例えば基材フィルムとして用いられるようなフィルムをラミネートすることができる。
【0083】
[体積型ホログラム記録体]
本発明に係る体積型ホログラム記録体は、光重合性モノマーと、光重合開始剤と、前記光重合開始剤を増感せしめる増感色素と、バインダー樹脂と、チオール基含有化合物とを含有し、前記光重合性モノマーが少なくとも光ラジカル重合性モノマー及び光カチオン重合性モノマーを含み、
前記チオール基含有化合物が、前記光ラジカル重合性モノマーの連鎖移動剤であって、少なくとも1分子中に2つ以上の2級チオール基を有する多官能2級チオール化合物であり、且つ、前記光ラジカル重合性モノマー100質量部に対して、前記チオール基含有化合物を1.5〜30質量部含有する、ホログラムを記録するためのホログラム記録層に、ホログラムが記録されてなるホログラム層を、基材上に備えたことを特徴とする。
【0084】
図2は、本発明の体積型ホログラム記録体の一例を示す概略図である。
図2に例示するように、上記本発明に係る体積型ホログラム記録体20は、基材1上に、ホログラム記録層にホログラムが記録されたホログラム層3を備えたものである。
【0085】
本発明に係る体積型ホログラム記録体における、基材、及び、上記特定のホログラム記録層については、上記本発明に係る体積型ホログラム記録用感光性基板と同様の構成とすることができるので、ここでの説明を省略する。本発明に係る体積型ホログラム記録体は、上記本発明に係る体積型ホログラム記録用感光性基板のホログラム記録層に、ホログラムが記録されてなるものであって良い。
【0086】
(体積型ホログラム記録体の製造方法)
本発明の体積型ホログラム記録体の製造方法は、公知の方法を用いることができる。例えば、基材上に前記本発明に係る体積型ホログラム記録用感光性組成物を塗工、乾燥して、まず、前記本発明に係る体積型ホログラム記録用感光性基板を得る。そして、得られた体積型ホログラム記録用感光性基板に干渉露光することによりホログラムを記録させ(干渉露光工程)、加熱により光重合性モノマーを拡散移動させ(加熱工程)、全面に光照射してホログラムを固定させる(光照射工程)方法等が挙げられる。
前記本発明に係る体積型ホログラム記録用感光性基板を得る工程までは、前述と同様に行うことができるので、ホログラムを記録する干渉露光工程以降の工程について詳細に説明をする。
【0087】
<干渉露光工程>
本発明における干渉露光工程は、体積型ホログラム記録用感光性組成物を含有するホログラム記録層に干渉露光することによりホログラムを記録させ、光重合性モノマーの分布を形成する工程である。
本発明においては、当該工程において、干渉光が強く照射される部分に存在する光ラジカル重合性モノマーの一部が、光重合開始剤及び/又は前記特定のチオール基含有化合物の連鎖移動剤の影響を受けて、重合反応を生じる。
【0088】
本発明におけるホログラム記録層は、光の干渉によって生じる干渉縞を屈折率の異なる縞として光重合性モノマーを固定化することによってホログラムを記録するものである。このため、ホログラムを記録する方法としては、例えば、基材側から参照光を入射し、ホログラム記録層側から物体光を入射し、上記ホログラム記録層内においてこれらの光を干渉させる方法や、ホログラム記録層上にホログラム原版を配置し、基材側から光を入射することによって、当該入射光と上記ホログラム原版によって反射された反射光とを上記ホログラム記録層内において干渉させる方法等を挙げることができる。中でも上述したホログラム原版を用いる方法が好ましく、これにより、簡便に体積型ホログラムを記録することができる。
【0089】
上記干渉露光工程において、ホログラムの記録に用いられる記録光の光源としては、コヒーレンス性に優れる可視光レーザー光を用いることが好ましく、例えばアルゴンイオンレーザー(458nm、488nm、514.5nm)、クリプトンイオンレーザー(647.1nm)、ヘリウム−ネオンレーザー(633nm)、YAGレーザー(532nm)等を使用することができる。
【0090】
<加熱工程>
本発明における加熱工程は、ホログラム記録層に含有される光重合性モノマーの相分離を促進させ、上記層内に残留する未重合の光重合性モノマーを拡散移動させる工程である。
光重合性モノマーを更に拡散移動させることにより、屈折率の低い部分と屈折率の高い部分との差がさらに顕著化され、屈折率変調量(Δn)を向上させることができる。
【0091】
上記加熱工程における加熱温度は、40℃〜150℃の範囲内であることが好ましく、40℃〜100℃の範囲内であることがより好ましい。
【0092】
また、上記加熱工程における加熱時間は、5分〜120分の範囲内であることが好ましく、5分〜30分の範囲内であることがより好ましい。
【0093】
<光照射工程>
本発明における光照射工程は、上述したホログラムが記録されたホログラム記録層の全面に光照射を行うことにより、未反応の光重合性モノマーを重合させて光重合反応を完結させ、光重合性モノマーを硬化させることにより、ホログラムを固定させる工程である。
また、本工程において、バインダー樹脂に含有される熱硬化性樹脂の官能基の一部と光重合性モノマーの一部とが反応し、相互作用を有していてもよい。
【0094】
上記光照射工程で用いられる照射光は、可視光領域である必要はなく、紫外光で良く、例えば、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、カーボンアーク、キセノンアーク、メタルハライドランプ等の光源を用いることができる。
【0095】
上記照射光の全露光量は、例えば、約0.1mJ/cm
2〜10000mJ/cm
2の範囲内であることが好ましく、10mJ/cm
2〜4000mJ/cm
2の範囲内であることがより好ましい。
【0096】
<その他の工程>
本発明の体積型ホログラム記録体の製造方法は、上述した工程の他に、必要に応じて任意の工程を適宜有していても良い。このような工程としては、例えばエージング工程、脱色工程等が挙げられる。
エージング工程とは、未反応の光重合性モノマーや熱硬化性樹脂の反応を完結させ、安定性を高くする工程であり、例えば、一定時間、常温で静置することにより行うことができる。
また、脱色工程とは、含まれる増感色素を脱色する工程であり、例えば赤色の増感色素に対して緑色の光を照射する等、適宜光照射することにより行うことができる。
以上のようにして、ホログラム記録層にホログラムが記録されてなるホログラム層を得ることができる。
このように得られた体積型ホログラム記録体は、特に、セキュリティ用途、意匠用途において特に好適に用いられる。
【実施例】
【0097】
以下、本発明について実施例を示して具体的に説明する。これらの記載により本発明を制限するものではない。
【0098】
(
参考例1)
(1)体積型ホログラム記録用感光性組成物の製造
下記組成の体積型ホログラム記録用感光性組成物1を作製した。
<体積型ホログラム記録用感光性組成物1の組成>
・ポリアクリル酸エステル;ダイヤナールBR−605(熱可塑性樹脂、三菱レイヨン(株)社製、重量平均分子量;50000):70質量部
・エポキシ基含有アクリル樹脂;ダイヤナールVB−7201(熱硬化性樹脂、三菱レイヨン(株)社製、重量平均分子量;43000、エポキシ当量;1238g/eq)30質量部
・ジフェノキシエタノールフルオレンジアクリレート;BPEFA(光ラジカル重合性モノマー、大阪ガスケミカル(株)社製)100質量部
・1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル;デナコールEX−212(光カチオン重合性モノマー、ナガセケムテックス(株)社製)71.4質量部
・ジアリールヨードニウム塩;PI2074(光重合開始剤、ローディア社製)11.4質量部
・2,5−ビス(4−ジエチルアミノベンジリデン)シクロペンタノン;(増感色素)2.9質量部
・ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート);カレンズMT PE1(4官能2級チオール化合物、昭和電工(株)製)1.5質量部
・メチルイソブチルケトン(溶媒)285.7質量部
・1−ブタノール(溶媒)285.7質量部
【0099】
(2)体積型ホログラム記録用感光性基板の製造
(1)で得られた体積型ホログラム記録用感光性組成物1を、50μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東レ製ルミラーT−60)上にアプリケーターを用いて、乾燥後の膜厚が10μmとなるように塗工及び乾燥してホログラム記録層とし、
参考例1の体積型ホログラム記録用感光性基板1を得た。
【0100】
(3)体積型ホログラム記録体の製造
(2)で得られた
参考例1の体積型ホログラム記録用感光性基板のホログラム記録層側をミラーにラミネートし、体積型ホログラム記録用感光性基板のPET側から532nmレーザー光を10〜100mJ/cm
2入射して、干渉露光を行い、体積型ホログラムを記録した。その際、レーザー光のホログラム記録層への入射角度は、ホログラム0度の角度とした。記録後、ミラーから体積型ホログラム記録用感光性基板を剥離して、38μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(A4300;東洋紡(株)社製)をホログラム記録層側にラミネートした。
次いで、80℃30分加熱し、紫外線全面照射を行い、ホログラム記録層を固定し、更に、530nm付近の緑色光を100分間照射して増感色素の脱色を行い、干渉縞が記録されたホログラム層を有する
参考例1の体積型ホログラム記録体1を得た。
【0101】
(実施例2)
(1)体積型ホログラム記録用感光性組成物の製造
体積型ホログラム記録用感光性組成物1の組成において、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)を18質量部用いた以外は、体積型ホログラム記録用感光性組成物1と同様にして、体積型ホログラム記録用感光性組成物2を作製した。
【0102】
(2)体積型ホログラム記録用感光性基板の製造
参考例1の体積型ホログラム記録用感光性組成物1の代わりに、(1)で得られた体積型ホログラム記録用感光性組成物2を用いて、ホログラム記録層を形成した以外は、
参考例1と同様にして、体積型ホログラム記録用感光性基板2の製造を行った。
【0103】
(3)体積型ホログラム記録体の製造
参考例1の体積型ホログラム記録用感光性基板1の代わりに、(2)で得られた体積型ホログラム記録用感光性基板2を用いて、体積型ホログラムを記録した以外は、
参考例1と同様にして、体積型ホログラム記録体2の製造を行った。
【0104】
(実施例3)
(1)体積型ホログラム記録用感光性組成物の製造
体積型ホログラム記録用感光性組成物1の組成において、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)を30質量部用いた以外は、体積型ホログラム記録用感光性組成物1と同様にして、体積型ホログラム記録用感光性組成物3を作製した。
【0105】
(2)体積型ホログラム記録用感光性基板の製造
参考例1の体積型ホログラム記録用感光性組成物1の代わりに、(1)で得られた体積型ホログラム記録用感光性組成物3を用いて、ホログラム記録層を形成した以外は、
参考例1と同様にして、体積型ホログラム記録用感光性基板3の製造を行った。
【0106】
(3)体積型ホログラム記録体の製造
参考例1の体積型ホログラム記録用感光性基板1の代わりに、(2)で得られた体積型ホログラム記録用感光性基板3を用いて、体積型ホログラムを記録した以外は、
参考例1と同様にして、体積型ホログラム記録体3の製造を行った。
【0107】
(比較例1)
(1)比較体積型ホログラム記録用感光性組成物の製造
体積型ホログラム記録用感光性組成物1の組成において、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)を用いなかった以外は、体積型ホログラム記録用感光性組成物1と同様にして、比較体積型ホログラム記録用感光性組成物1を作製した。
【0108】
(2)比較体積型ホログラム記録用感光性基板の製造
参考例1の体積型ホログラム記録用感光性組成物1の代わりに、(1)で得られた比較体積型ホログラム記録用感光性組成物1を用いて、ホログラム記録層を形成した以外は、
参考例1と同様にして、比較体積型ホログラム記録用感光性基板1の製造を行った。
【0109】
(3)比較体積型ホログラム記録体の製造
参考例1の体積型ホログラム記録用感光性基板1の代わりに、(2)で得られた比較体積型ホログラム記録用感光性基板1を用いて、体積型ホログラムを記録した以外は、
参考例1と同様にして、比較体積型ホログラム記録体1の製造を行った。
【0110】
(比較例2)
(1)比較体積型ホログラム記録用感光性組成物の製造
体積型ホログラム記録用感光性組成物1の組成において、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)を1質量部用いた以外は、体積型ホログラム記録用感光性組成物1と同様にして、比較体積型ホログラム記録用感光性組成物2を作製した。
【0111】
(2)比較体積型ホログラム記録用感光性基板の製造
参考例1の体積型ホログラム記録用感光性組成物1の代わりに、(1)で得られた比較体積型ホログラム記録用感光性組成物2を用いて、ホログラム記録層を形成した以外は、
参考例1と同様にして、比較体積型ホログラム記録用感光性基板2の製造を行った。
【0112】
(3)比較体積型ホログラム記録体の製造
参考例1の体積型ホログラム記録用感光性基板1の代わりに、(2)で得られた比較体積型ホログラム記録用感光性基板2を用いて、体積型ホログラムを記録した以外は、
参考例1と同様にして、比較体積型ホログラム記録体2の製造を行った。
【0113】
(比較例3)
(1)比較体積型ホログラム記録用感光性組成物の製造
体積型ホログラム記録用感光性組成物1の組成において、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)を40質量部用いた以外は、体積型ホログラム記録用感光性組成物1と同様にして、比較体積型ホログラム記録用感光性組成物3を作製した。
【0114】
(2)比較体積型ホログラム記録用感光性基板の製造
参考例1の体積型ホログラム記録用感光性組成物1の代わりに、(1)で得られた比較体積型ホログラム記録用感光性組成物3を用いて、ホログラム記録層を形成した以外は、
参考例1と同様にして、比較体積型ホログラム記録用感光性基板3の製造を行った。
【0115】
(3)比較体積型ホログラム記録体の製造
参考例1の体積型ホログラム記録用感光性基板1の代わりに、(2)で得られた比較体積型ホログラム記録用感光性基板3を用いて、体積型ホログラムを記録した以外は、
参考例1と同様にして、比較体積型ホログラム記録体3の製造を行った。
【0116】
(比較例4)
(1)比較体積型ホログラム記録用感光性組成物の製造
体積型ホログラム記録用感光性組成物1の組成において、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)の代わりに、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート);商品名PETP(4官能1級チオール化合物、淀化学(株)製)を1.5質量部用いた以外は、体積型ホログラム記録用感光性組成物1と同様にして、比較体積型ホログラム記録用感光性組成物4を作製した。
【0117】
(2)比較体積型ホログラム記録用感光性基板の製造
参考例1の体積型ホログラム記録用感光性組成物1の代わりに、(1)で得られた比較体積型ホログラム記録用感光性組成物4を用いて、ホログラム記録層を形成した以外は、
参考例1と同様にして、比較体積型ホログラム記録用感光性基板4の製造を行った。
【0118】
(3)比較体積型ホログラム記録体の製造
参考例1の体積型ホログラム記録用感光性基板1の代わりに、(2)で得られた比較体積型ホログラム記録用感光性基板4を用いて、体積型ホログラムを記録した以外は、
参考例1と同様にして、比較体積型ホログラム記録体4の製造を行った。
【0119】
[飽和露光量の評価]
上記で得られた体積型ホログラム記録体の透過率を分光光度計((株)島津製作所社製、UV−2450)を用いて測定し、分光透過率曲線を得た。
得られた分光透過率曲線において、ピーク透過率Aおよびベース透過率Bを求め、下記式:
回折効率η=|B−A|/B(%)
により、回折効率ηを算出した。
露光量10〜100mJ/cm
2の間で、それ以上露光しても回折効率の変動が見られない露光量を飽和露光量として規定した。飽和露光量が小さいとレーザー光の照射を少なくすることが可能となる。
【0120】
[屈折率変調量(Δn)の評価]
上記で得られた飽和露光量における回折効率ηの値を用いて、下記のKogelnik理論式:
η=tanh
2(π(Δn)d/λcosθ
0)
(式中、ηは回折効率、dはホログラム記録層の膜厚、λは記録レーザー波長、θ
0は記録レーザー光のホログラム記録層への入射角度である)
により、屈折率変調量(Δn)を算出した。
なお、ホログラム記録層の膜厚dは、得られたホログラム記録用感光性基板のホログラム記録層のPETフィルムを剥離し、マイクロメーターにてホログラム記録層単体の厚みを測定した値とした。
【0121】
[脱色性の評価]
530nm付近の緑色を発光する蛍光灯10本の下に上記で得られた体積型ホログラム記録体を配置し、10分間照射した。照射後、記録体を白紙上に配置し、目視にて増感色素の赤色が確認されない場合は○、確認された場合は×とした。
各実施例及び比較例について、得られた飽和露光量、回折効率、屈折率変調量(Δn)、脱色性についての評価結果を合わせて表1に示す。
【0122】
【表1】
【0123】
比較例1が示すように、チオール基含有化合物を添加しない場合は、脱色性は良好なものの、飽和露光量が40mJ、回折効率が95.9%、屈折率変調量(Δn)が0.037であった。
それに対して、
参考例1,
実施例2,3が示すように、光重合性モノマー100質量部に対して、4官能2級チオール化合物を1.5〜30質量部添加した場合には、飽和露光量が20mJと感度が向上し、回折効率が98.5〜99.7%、屈折率変調量(Δn)が0.047〜0.060と高く、脱色性も良好な体積型ホログラム記録用感光性組成物を得ることができることが明らかにされた。
一方、比較例2が示すように、4官能2級チオール化合物の添加量が光重合性モノマー100質量部に対して1.5質量部より少ない場合、脱色性は良好なものの、飽和露光量が40mJ、回折効率が95.2%、屈折率変調量(Δn)が0.038と、チオール基含有化合物を添加しない場合と殆ど変わらないことが明らかにされた。
また、比較例3が示すように、4官能2級チオール化合物を光重合性モノマー100質量部に対して30質量部より多く添加した場合、飽和露光量が40mJ、回折効率が96.2%、屈折率変調量(Δn)が0.029へと悪化し、更に脱色性も悪化することが明らかにされた。
また、比較例4が示すように、4官能1級チオール化合物を用いた場合、飽和露光量は10mJを示し、且つ脱色性は良好なものの、回折効率が93%、屈折率変調量(Δn)が0.040を示し、4官能2級チオール化合物を用いた場合ほど屈折率変調量は向上しないことがわかった。