特許第6028481号(P6028481)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6028481
(24)【登録日】2016年10月28日
(45)【発行日】2016年11月16日
(54)【発明の名称】水分量判定装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/22 20060101AFI20161107BHJP
   G01N 33/24 20060101ALI20161107BHJP
【FI】
   G01N27/22 C
   G01N33/24 E
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-203252(P2012-203252)
(22)【出願日】2012年9月14日
(65)【公開番号】特開2014-59176(P2014-59176A)
(43)【公開日】2014年4月3日
【審査請求日】2015年4月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100154748
【弁理士】
【氏名又は名称】菅沼 和弘
(72)【発明者】
【氏名】阿部 英雄
【審査官】 塚本 丈二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−122909(JP,A)
【文献】 特開2000−046777(JP,A)
【文献】 特開平10−090201(JP,A)
【文献】 特許第2740528(JP,B2)
【文献】 特公昭62−057227(JP,B1)
【文献】 実公平02−030736(JP,Y2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/00−27/24
G01R 27/00−27/32
A01G 7/00−7/06
A01G 25/00−27/06
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
土壌に埋設させる複数の電極と、
所定のパルス幅を有するパルスを発生させ前記複数の電極に印加するパルス発生手段と、
当該パルスにより生ずる所定の場所の抵抗に対して発生する電圧を検出する電圧検出手段と、
前記電圧検出手段により検出された電圧の最大値に基づいて、水分量を判定する水分量判定手段と、
を備える水分量判定装置。
【請求項2】
前記複数の電極の間に直列に挿入されるキャパシタンスをさらに備える請求項1に記載の水分量判定装置。
【請求項3】
前記電極は2つ存在し、前記キャパシタンスは2つ存在し、
2つの前記電極の間に、2つの前記キャパシタンスが直列に挿入される、
請求項2に記載の水分量判定装置。
【請求項4】
前記2つのキャパシタンスの夫々は、前記2つの電極を覆う絶縁体により形成される、
請求項3に記載の水分量判定装置。
【請求項5】
前記電圧検出手段により検出される所定の場所の電圧の大きさは、前記土壌のキャパシタンスにおける電流の大きさを示しており、
前記複数の電極の間に直列に挿入される前記キャパシタンスは、前記土壌のキャパシタンスと比較してその値が大きい、
請求項2乃至4のうち何れか1項に記載の水分量判定装置。
【請求項6】
前記水分量判定手段は、前記電圧検出手段により検出された電圧の最大値と所定の閾値とに基づいて、土壌の水分量を判定する、
請求項1乃至5のうち何れか1項に記載の水分量判定装置。
【請求項7】
前記所定の閾値は、複数ある、
請求項6に記載の水分量判定装置。
【請求項8】
土壌に埋設させる複数の電極を用いて当該土壌の水分量を判定するコンピュータを、
所定のパルス幅を有するパルスを発生させ前記複数の電極に印加するパルス発生手段、
当該パルスにより生ずる所定の場所の抵抗に対して発生する電圧を検出する電圧検出手段、
前記電圧検出手段により検出された電圧の最大値に基づいて、土壌の水分量を判定する
水分量判定手段、
として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水分量判定装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、植物育成用等の土壌の水分量を判定する水分量判定装置が存在する。例えば、特許文献1に記載の水分量判定装置は、土壌に差し込み可能な複数の電極を有し、これらの電極間の電気抵抗値を計測することによって、当該土壌の水分量を判定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2608679号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の水分量判定装置は、直流電流を流し続けるため、分極が起こり、その結果として、電極が錆びて正確な判定が困難になる場合がある。
【0005】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、土壌の水分量を判定する水分判定装置に用いられる電極の錆びを防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の一態様の水分量判定装置は、
土壌に埋設させる複数の電極と、
所定のパルス幅を有するパルスを発生させ前記複数の電極に印加するパルス発生手段と、
当該パルスにより生ずる所定の場所の抵抗に対して発生する電圧を検出する電圧検出手段と、
前記電圧検出手段により検出された電圧の最大値に基づいて、水分量を判定する水分量判定手段と、
を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、土壌の水分量を判定する水分判定装置に用いられる電極の錆びを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明が適用される水分量判定装置の判定原理の概要を説明する模式図である。
図2図1の水分量判定装置の判定対象の土壌における、当該土壌のキャパシタンスと当該土壌の水分量との関係を示す図である。
図3図1の判定原理により動作する水分量判定装置の等価回路を示す回路図である。
図4図3の等価回路を有する水分量判定装置の実装形態を示す図である。
図5図4の水分量判定装置における判定時のタイミングチャートである。
図6図4の水分量判定装置の判定対象の土壌の水分量と、当該水分量判定装置内の抵抗における電圧の最大値との関係の一例を示す図である。
図7】キャパシタンスが絶縁体で形成された場合の、本発明が適用される水分量判定装置の概要を説明する模式図である。
図8図7の例の水分量判定装置の実装形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。
【0010】
図1は、本発明が適用される水分量判定装置の判定原理の概要を説明する模式図である。
水分量判定装置1は、検出回路11と、2本の電極12−1,12−2と、を備えている。
検出回路11は、例えばマイクロコンピュータ等で構成され、所定のパルス幅を有するパルス(電気信号)を発生させるパルス発生機能と、当該パルスにより生じる所定の場所の電圧を検出する電圧検出機能と、検出された電圧の最大値に基づいて土壌の水分量を判定する水分量判定機能と、を少なくとも有している。
2本の電極12−1,12−2は、その一端が検出回路11に接続され、その他端が土壌に埋設される。
【0011】
検出回路11が、2本の電極12−1,12−2の間に電圧を印加すると、土壌内に所定のキャパシタンスCsが生ずる。
この土壌のキャパシタンスCsにおける電流Icの瞬時値は、「土壌のキャパシタンスCs」と、「土壌のキャパシタンスCsにおける電圧Vcの時間微分値dVc/dt」との積により表される。従って、2本の電極12−1,12−2の間に直流電圧が印加されると、「キャパシタンスCにおける電圧Vcの時間微分値dVc/dt」は「0」になるので、理論上、土壌のキャパシタンスCsには電流Icが流れない。
ここで、直流電圧とは、一定時間以上略一定値が継続している電位差をいう。即ち、印加直後においてその値が時間と共に上昇している過渡状態の電位差は、直流電圧には含まず、目標値に到達して当該目標値で略一定となった定常状態の電位差が、直流電圧に該当する。
従って、2本の電極12−1,12−2の間に電圧が印加された直後の短期間の過渡状態では、土壌のキャパシタンスCsにおける電圧Vcは徐々に上昇する。その結果、「土壌のキャパシタンスCsにおける電圧Vcの時間微分値dVc/dt」も「0を超えた値」となり、その結果、土壌のキャパシタンスCsに電流Icが流れる。
そこで、検出回路11は、この過渡状態中の短期間に相当するパルス幅で、パルスを発生させることで、当該パルス幅程度の短期間だけ、土壌のキャパシタンスCsに電流Isを流させる。
【0012】
ここで、土壌のキャパシタンスCsは、固定値ではなく、2本の電極12−1,12−2が埋設された土壌の水分量に応じて、その値が変化する。
図2は、土壌のキャパシタンスCsと当該土壌の水分量との関係を示す図である。
図2において、横軸は土壌の水分量を示し、縦軸は土壌のキャパシタンスCsを示す。
図2に示すように、土壌の水分量の増加に伴い、土壌のキャパシタンスCsも増加する、といった関係が存在する。これは、土壌の水分量の増加に伴い、当該土壌の誘電率εも増加していくため、その結果として、土壌のキャパシタンスCsが増加するからである。
【0013】
このように土壌の水分量の増加に応じて土壌のキャパシタンスCsが増加する。また、土壌のキャパシタンスCsが増加すると、当該土壌のキャパシタンスCsにおける電流Isも増加する。従って、土壌の水分量の増加に応じて、当該土壌のキャパシタンスCsにおける電流Isも増加する、という関係が成立する。
検出回路11は、この関係を利用して、パルスを発生させた際の土壌のキャパシタンスCsにおける電流Icの大きさに基づいて、土壌の水分量を判定する。
【0014】
ただし、土壌のキャパシタンスCsにおける電流Icを実際に検出することは、非常に困難である。
そこで、本実施形態では、土壌のキャパシタンスCsと(等価回路として)直列接続される抵抗R1が、検出回路11に設けられている。これにより、検出回路11は、当該抵抗R1における電圧の大きさを、土壌のキャパシタンスCsに流れる電流Icの大きさとして検出することができる。
即ち、本実施形態における検出回路11の電圧検出機能とは、所定の場所として抵抗R1が採用されており、土壌のキャパシタンスCsにおける電流Icの大きさとして、抵抗R1における電圧の大きさを検出する機能である。換言すると、電圧検出機能により電圧が検出される所定の場所とは、土壌のキャパシタンスCsに流れる電流Icの変化と連動して電圧が変化する場所であれば足り、抵抗R1である必要は特にない。
【0015】
このようにして、検出回路11は、抵抗R1における電圧を検出し、その検出値に基づいて土壌の水分量を判定する。
ただし、上述したように、土壌のキャパシタンスCsに流れる電流Icは一定ではなく、過渡状態中は時間とともに変化しているため、同様に、抵抗R1における電圧の値も時間とともに変化している。
そこで、本実施形態の検出回路11は、パルスを発生させ、そのパルスにより土壌のキャパシタンスCsに流れる電流Icの大きさを抵抗R1における電圧の大きさとして検出するが、その検出値のうち最大値に基づいて土壌の水分量を判定している。
【0016】
このように、本実施形態の検出回路11は、従来のように直流電圧を印加し続けることなく、短期間のパルス幅を有するパルスを発生させるだけで、土壌の水分量を判定することができる。
従って、電極12−1,12−2は、分極が発生することは無くなるので、従来と比較して錆び難くなる。その結果、本実施形態の水分量判定装置1は、長期に渡って正確な判定を維持することができる。
さらに、分極が発生すると土壌に何かしらの悪影響を与えることが想定される。本実施形態の水分量判定装置1は、この悪影響を生じさせないようにすることができる。
また、検出回路11の消費電力は、パルス発生時の電力と、抵抗R1の電圧検出時の電力(後述するA/D変換等のための電力)とのみで済むことになる。一方で、従来は、直流電流を常時流し続けるための電力が必要であった。従って、検出回路11の消費電力は、直流電流を常時流し続ける従来のものと比較して圧倒的に低い。即ち、本実施形態の水分量判定装置1は、従来のものと比較して著しい省電力効果がある。
【0017】
図3は、このような図1の判定原理により動作する水分量判定装置1の等価回路を示している。
図3に示すように、水分量判定装置1の等価回路として、パルス発生部21の両端のうち、一端が1つのキャパシタンスCpに接続され、他端が抵抗R1を介して別の1つのキャパシタンスCpに接続されている。また、この2つのキャパシタンスCpの間に、土壌のキャパシタンスCsが直列接続されている。そして、抵抗R1の両端には、その電圧を検出する検出部22が接続されている。
なお、検出部22には、抵抗R1の電圧を示すアナログ信号に対してA/D変換(Analog to Digital変換)処理を施すADCが含まれている。即ち、検出部22は、ADCにより変換されたディジタル信号に基づいて、抵抗R1の電圧の値を検出する。
【0018】
キャパシタンスCpは、水分量の判定という点で必須な構成要素ではないが、直流電流を確実にカットすることができるので、電極12−1,12−2の錆び防止という効果をより顕著なものとすることができる。
さらに、土壌内で直流の静電気等が発生して、マイクロコンピュータ等で構成される検出回路11に侵入してしまうと、当該検出回路11に悪影響を与える場合がある。しかし、本実施形態では、キャパシタンスCpが静電気等を検出回路11に侵入する前にカットすることができるので、検出回路11に対する悪影響の発生を未然に防止することができる。
【0019】
ここで、2つのキャパシタンスCpは、土壌のキャパシタンスCsに比較して相対的に十分に大きな値、例えば10倍乃至それ以上の値となっている。これは、キャパシタンスCpと土壌のキャパシタンスCsとの合成容量を考慮した場合、キャパシタンスCpが土壌のキャパシタンスCsに比較して相対的に小さな値になると、水分量が変化しても、土壌のキャパシタンスCsの変化が明確に現れなくなり、精度良い判定が行えなくなるからである。
【0020】
図4は、このような図3の等価回路を有する水分量判定装置1の実装形態を示す図である。
図4に示す水分量判定装置1において、検出回路11は、CPU(Central Processing Unit)31と、抵抗R1、を備えている。
【0021】
CPU31は、検出回路11全体の動作を制御し、入出力端子として、少なくとも図4に示す、端子GPIO、端子ADC、端子Vcc、及び端子GNDを有する。
端子GPIOは、所定のパルス幅を有するパルスを出力する端子であり、キャパシタンスCpを介して電極12−1に接続されている。
端子ADCは、そこに入力されたアナログ信号を、CPU31内のADC(図3の等価回路の検出部22)に供給するための端子であり、本実施形態では、抵抗R1の電圧を示すアナログ信号が入力される。即ち、図4の例では、抵抗R1は、その一端が接地され、その他端がキャパシタンスCpを介して電極12−2に接続されている。抵抗R1の当該他端に端子ADCが接続されており、当該他端の電圧を示すアナログ信号が端子ADCに入力される。
端子Vccは、電源電圧を入力する端子である。後述の図5に示すように、パルスの高さは、電源電圧の値(以下、端子と同符号であるが「Vcc」を用いる)となる。
端子GNDは、接地するための端子である。
【0022】
以上、水分量判定装置1の構成について説明した。次に、図5及び図6を参照して、水分量判定装置1の動作(判定処理)について説明する。
【0023】
図5は、図4の水分量判定装置1における判定時のタイミングチャートを示している。
具体的には同図中上方には、CPU31の端子GPIOにおけるタイミングチャート、即ちパルスを示すタイミングチャートが示されている。同図中下方には、CPU31の端子ADCにおけるタイミングチャート、即ち抵抗R1における電圧を示すタイミングチャートを示している。
何れのタイミングチャートにおいても、縦軸が電圧を示し、横軸が時間を示している。
【0024】
図5の上方のタイミングチャートに示すように、CPU31は、パルスを出力する。このパルスにおいては、その高さが電源電圧Vccとなり、そのパルス幅が時間Tとなっている。
このパルスの立ち上がりが、2つのキャパシタンスCp及び土壌のキャパシタンスCsの直列接続の部分に到達すると過渡状態となり、上述したように、当該部分における電圧の時間微分値が上昇して、当該部分に電流が流れ始め、その大きさは徐々に上昇していく。その後、当該部分が定常状態となる前に、時間T(パルス幅)が経過してパルスが立ち下がり、当該部分における電圧の時間微分値が下降してゼロになるので、今度は電流Icが徐々に減少していき、最終的には流れなくなる。
この電流Icの変化に応じて、抵抗R1における電圧も、図5の下方のタイミングチャートに示すように変化する。
CPU31は、この抵抗R1における電圧の大きさの時間推移を、端子ADCから検出し、その検出結果に基づいて、土壌の水分量を判定する。具体的には、CPU31は、端子ADCから入力されるアナログ信号を、所定の時間間隔でサンプリしていくことでディジタル信号に変換し、当該ディジタル信号の最高値を、抵抗R1における電圧の最大値として検出する。
そして、CPU31は、当該ディジタル信号の最高値、即ち抵抗R1における電圧の最大値に基づいて、土壌の水分量を判定する。
【0025】
土壌の水分量の判定手法は、上述の図2の関係を用いる手法であれば特に限定されず、例えば、抵抗R1における電圧の最大値を入力パラメータとして、土壌の水分量を出力する関数であって、上述の図2の関係(又は近似の関係)を満足するような関数を予め生成し、当該関数を用いて水分量を算出するという手法を採用してもよい。
【0026】
ただし、本実施形態では、図6に示すように、土壌の水分量と、抵抗R1における電圧の最大値との3段階の対応関係が、予め実測により求められている。
図6は、土壌の水分量と、抵抗R1における電圧の最大値と、の関係の一例を示す図である。
図6において、左側の項目には、3段階で土壌の水分量が示されている。上方から順に、土壌の水分量が「高」である旨の「水分H」、土壌の水分量が「中」である旨の「水分M」、及び土壌の水分量が「低」である旨の「水分L」が、それぞれ示されている。
図6において、右側の項目には、3段階で土壌の水分量の夫々の際に、実際に判定された抵抗R1における電圧のタイミングチャート(図5の下方のタイミングチャートに相当)の夫々が示されている。即ち、1行目の「水分H」のタイミングチャートは、土壌の水分量が「高」である際に現れる、抵抗R1における電圧のタイミングチャートを示している。2行目の「水分M」のタイミングチャートは、土壌の水分量が「中」である際に現れる、抵抗R1における電圧のタイミングチャートを示している。3行目の「水分L」のタイミングチャートは、土壌の水分量が「低」である際に現れる、抵抗R1における電圧のタイミングチャートを示している。
このように、土壌の水分量が高くなる程、抵抗R1における電圧の最大値も上昇していくことが実測でも確認された。
【0027】
そこで、本実施形態では、この図6の実測の関係に基づいて、土壌の水分量の「低」と「中」とを切り分けるための第1の閾値(電圧の第1の値)と、土壌の水分量の「中」と「高」とを切り分けるための第2の閾値(電圧の第2の値>第1の値)と、が予め定義されているものとする。
CPU31は、抵抗R1における電圧の最大値が第1の閾値未満である場合、土壌の水分量は「低」であると判定する。CPU31は、抵抗R1における電圧の最大値が第1の閾値以上第2の閾値未満である場合、土壌の水分量「中」であると判定する。CPU31は、抵抗R1における電圧の最大値が第2の閾値を超えている場合、土壌の水分量「高」であると判定する。
【0028】
以上説明したように、水分量判定装置1は、検出回路11と、土壌に埋設させる電極12−1,12−2を備えている。
検出回路11は、所定のパルス幅を有するパルスを発生させるパルス発生機能と、当該パルスにより生ずる所定の場所(抵抗R1)の電圧を検出する電圧検出機能と、検出された電圧の最大値に基づいて土壌の水分量を判定する水分量判定機能と、を備えている。
このように、本実施形態の検出回路11は、従来のように直流電圧を印加し続けることなく、短期間のパルス幅を有するパルスを発生させるだけで、土壌の水分量を判定することができる。
従って、電極12−1,12−2は、分極が発生することは無くなるので、従来と比較して錆び難くなる。その結果、本実施形態の水分量判定装置1は、長期に渡って正確な判定を維持することができる。
その他、本実施形態の水分量判定装置1は、上述したように、分極による土壌への悪影響の発生を未然に防止するという効果や、省電力効果も奏することができる。
【0029】
本実施形態の水分量判定装置1は、さらに、2つの電極12−1,12−2の間に直列に挿入されるキャパシタンスCpを備えている。
これにより、直流電流を確実にカットすることができるので、電極12−1,12−2の錆び防止という効果をより顕著なものとすることができる。
【0030】
2つの電極12−1,12−2の間に、2つのキャパシタンスCpが直列に挿入される。これにより、直流の静電気等が発生した場合でも、検出回路11に侵入する前にカットすることができるので、静電気による検出回路11に対する悪影響の発生を未然に防止することができる。
【0031】
上述の電圧検出機能により検出される所定の場所(抵抗R1)の電圧の大きさは、土壌のキャパシタンスCsにおける電流Isの大きさを示しており、
2つの電極12−1,12−2の間に直列に挿入されるキャパシタンスCpは、土壌のキャパシタンスCsと比較してその値が大きい。
キャパシタンスCpと土壌のキャパシタンスCsとの合成容量を考慮した場合、このように、キャパシタンスCpを土壌のキャパシタンスCsと比較して相対的に大きな値とすることで、水分量の変化に応じて、土壌のキャパシタンスCsの変化も明確に現れるようになり、精度良い判定が行なえるようになる。
【0032】
なお、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【0033】
例えば上述の実施形態では、キャパシタンスCpは、図4に示すように回路素子(コンデンサ)により形成されていたが、特にこれに限定されず、電極2−1,2−2を覆う絶縁体により形成されてもよい。
【0034】
図7は、キャパシタンスCpが絶縁体で形成された場合の、本発明が適用される水分量判定装置の概要を説明する模式図である。
図1等の上述の実施形態の水分量判定装置1と同一の機能及び構成を有する要素については、同一の符号を付してあり、これらの説明は適宜省略する。
図7の例では、電極2−1を覆う絶縁体51−1と、電極2−2を覆う絶縁体51−2とが設けられている。これら絶縁体51−1,51−2の夫々が、2つのキャパシタンスCpとして機能している。
【0035】
図8は、このような図7の例の水分量判定装置の実装形態を示す図である。
なお、等価回路については、上述の実施形態と同様である。即ち、図3は、図7の例の水分量判定装置の等価回路も示している。
図8に示す水分量判定装置1のうち、検出回路11の構成と機能は、上述の実施形態の図4の構成と機能と基本的に同様であるため、これらの説明はここでは省略する。
図8の構成において、図4の構成と異なる点は次のとおりである。
即ち、所定のパルス幅を有するパルスを出力する端子GPIOは、電極12−1に直接接続されている。この電極12−1を覆う様に絶縁体51−1が設けられている。
抵抗R1は、その一端が接地され、その他端が電極12−2に直接接続されている。この電極12−1を覆う様に絶縁体51−1が設けられている。
【0036】
図7図8に示すように、2つのキャパシタンスCpとして、電極2−1を覆う絶縁体51−1と、電極2−2を覆う絶縁体51−2とを採用した場合の効果は次の通りである。
即ち、土壌に直接接触するのは絶縁体51−1,51−2であり、電極2−1,2−2は土壌に直接接触しない。従って、電極2−1,2−2がより一段と錆び難くなる。
換言すると、電極2−1,2−2の素材として、錆び難い金属を採用する必要は特にない。従って、例えば電子基板の配線パターン(Cu)を電極2−1,2−2にそのまま採用してもよい。
2つのキャパシタンスCpが、土壌のキャパシタンスCsと比較して、その容量が十分大きい方が、判定精度が高まる点で好適であることは、上述の実施形態と同様である。従って、絶縁体51−1,51−2については、その表面積(それらに覆われる電極2−1,2−2の表面積)は大きくし、誘電率は大きくし、かつ厚さは薄くする方が好適である。
【0037】
例えば上述の実施形態では、キャパシタンスCpは2個設けられたが、特にこれに限定されない。即ち、キャパシタンスCpは、水分判定という点だけを考慮するならば必須な構成要素ではなく、また、直流カットという機能だけを考慮するならば1個でもよい。ただし、検出回路11に対する静電気対策という点を考慮するならば、電極2−1,2−2の両方から静電気が検出回路11に侵入させないための対策が必要であり、この対策のためには上述の実施形態のように、電極2−1,2−2の夫々に接続される2個のキャパシタンスCpが設けられると好適である。なお、当然ながら必要に応じて、キャパシタンスCpが3個以上設けられてもよい。
【0038】
例えば上述の実施形態では、電極の数は2つ(電極2−1,2−2)とされたが、特にこれに限定されず、3つ以上でもよい。例えば、複数の区域に分割された各土壌の水分量を判定するために、パルスの送信用の電極は1つ用意するのに対して、抵抗R1の電圧検出用の電極は複数の区域毎にそれぞれ容易するようにしてもよい。
【0039】
例えば上述の実施形態では、土壌の水分量は、所定の場所(抵抗R1)の電圧の最大値と所定の閾値とに基づいて判定され、閾値として2つの閾値が採用されたが、特にこれに限定されない。
即ち、所定の場所(抵抗R1)の電圧の最大値と所定の閾値との比較といった非常に簡易なロジックで、土壌の水分量を判定することができるので、低コストかつ容易に水分量判定装置1を具現化することができる。
この場合、閾値の種類数は、特に2つに限定されない。例えば閾値の種類数を増やすほど、判定の段階数(土壌の水分量の区分数)が増加するので、より精度の良い判定が可能になる。一方で、判定の段階数を増加させることは、その分だけロジックを複雑にし、高コスト化や具現化の困難性を増大させることを意味する。従って、設計者等は、判定の精度と、コストや具現化の困難性とのバランスを取りながら、所望の種類及び所望の数の閾値を設定すればよい。
【0040】
例えば上述の実施形態では、判定対象は土壌とされたが、特にこれに限定されない。即ち、電極2−1,2−2を埋設させてパルスを与えると土壌のキャパシタンスCsが生じ、当該土壌のキャパシタンスCsの容量が水分量に応じて変化する対象であれば、判定対象とすることができる。
【0041】
上述した一連の処理(土壌の水分の判定処理等)は、ハードウェアにより実行させることもできるし、ソフトウェアにより実行させることもできる。
換言すると、図4図8の実装形態は例示に過ぎず、特に限定されない。即ち、上述した一連の処理を全体として実行できる機能が水分量判定装置1等に備えられていれば足り、この機能を実現するためにどのような実装形態を取るのかは特に図4図8の例に限定されない。
【0042】
一連の処理をソフトウェアにより実行させる場合には、そのソフトウェアを構成するプログラムが、コンピュータ等にネットワークや記録媒体からインストールされる。
コンピュータは、専用のハードウェアに組み込まれているコンピュータであってもよい。また、コンピュータは、各種のプログラムをインストールすることで、各種の機能を実行することが可能なコンピュータ、例えば汎用のパーソナルコンピュータであってもよい。
【0043】
このようなプログラムを含む記録媒体は、ユーザにプログラムを提供するために装置本体とは別に配布されるリムーバブルメディアにより構成されるだけでなく、装置本体に予め組み込まれた状態でユーザに提供される記録媒体等で構成される。リムーバブルメディアは、例えば、磁気ディスク(フロッピディスクを含む)、光ディスク、または光磁気ディスク等により構成される。光ディスクは、例えば、CD−ROM(Compact Disk−Read Only Memory),DVD(Digital Versatile Disk)等により構成される。光磁気ディスクは、MD(Mini−Disk)等により構成される。また、装置本体に予め組み込まれた状態でユーザに提供される記録媒体は、例えば、プログラムが記録されているROM(Read Only Memory)やハードディスク等で構成される。
【0044】
なお、本明細書において、記録媒体に記録されるプログラムを記述するステップは、その順序に沿って時系列的に行われる処理はもちろん、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的あるいは個別に実行される処理をも含むものである。
【0045】
以上、本発明のいくつかの実施形態について説明したが、これらの実施形態は、例示に過ぎず、本発明の技術的範囲を限定するものではない。本発明はその他の様々な実施形態を取ることが可能であり、さらに、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、省略や置換等種々の変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、本明細書等に記載された発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0046】
以下に、本願の出願当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[付記1]
土壌に埋設させる複数の電極と、
所定のパルス幅を有するパルスを発生させるパルス発生手段と、
当該パルスにより生ずる所定の場所の電圧を検出する電圧検出手段と、
前記電圧検出手段により検出された電圧の最大値に基づいて、土壌の水分量を判定する水分量判定手段と、
を備える水分量判定装置。
[付記2]
前記複数の電極の間に直列に挿入されるキャパシタンス
をさらに備える付記1に記載の水分量判定装置。
[付記3]
前記電極は2つ存在し、前記キャパシタンスは2つ存在し、
2つの前記電極の間に、2つの前記キャパシタンスが直列に挿入される、
付記2に記載の水分量判定装置。
[付記4]
前記2つのキャパシタンスの夫々は、前記2つの電極を覆う絶縁体により形成される、
付記3に記載の水分量判定装置。
[付記5]
前記電圧検出手段により検出される所定の場所の電圧の大きさは、前記土壌のキャパシタンスにおける電流の大きさを示しており、
前記複数の電極の間に直列に挿入される前記キャパシタンスは、前記土壌のキャパシタンスと比較してその値が大きい、
付記2乃至4のうち何れか1つに記載の水分量判定装置。
[付記6]
前記水分量判定手段は、前記電圧検出手段により検出された電圧の最大値と所定の閾値とに基づいて、土壌の水分量を判定する、
付記1乃至5のうち何れか1項に記載の水分判定装置。
[付記7]
前記所定の閾値は、複数ある、
付記6に記載の水分判定装置。
[付記8]
土壌に埋設させる複数の電極を用いて当該土壌の水分量を判定するコンピュータを、
所定のパルス幅を有するパルスを発生させるパルス発生手段、
当該パルスにより生ずる所定の場所の電圧を検出する電圧検出手段、
前記電圧検出手段により検出された電圧の最大値に基づいて、土壌の水分量を判定する水分量判定手段、
として機能させるためのプログラム。
【符号の説明】
【0047】
1・・・水分量判定装置,11・・・検出装置,12−1,12−2・・・電極,21・・・パルス発生部,22・・・ADC,31・・・CPU,51−1,51−2・・・絶縁体,Cs・・・土壌のキャパシタンス,Cp・・・キャパシタンス,R1・・・抵抗
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8