特許第6028482号(P6028482)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6028482
(24)【登録日】2016年10月28日
(45)【発行日】2016年11月16日
(54)【発明の名称】熱転写シート
(51)【国際特許分類】
   B41M 5/382 20060101AFI20161107BHJP
   B41M 5/40 20060101ALI20161107BHJP
【FI】
   B41M5/26 101G
   B41M5/26 G
【請求項の数】1
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2012-203460(P2012-203460)
(22)【出願日】2012年9月14日
(65)【公開番号】特開2014-58071(P2014-58071A)
(43)【公開日】2014年4月3日
【審査請求日】2015年7月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000958
【氏名又は名称】特許業務法人 インテクト国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100083839
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 泰男
(74)【代理人】
【識別番号】100120237
【弁理士】
【氏名又は名称】石橋 良規
(72)【発明者】
【氏名】穐山 祐作
(72)【発明者】
【氏名】家重 宗典
(72)【発明者】
【氏名】米山 泰史
【審査官】 野田 定文
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−058989(JP,A)
【文献】 特開平08−090945(JP,A)
【文献】 特開平06−179293(JP,A)
【文献】 特開昭60−219094(JP,A)
【文献】 米国特許第04988667(US,A)
【文献】 特開平03−270984(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41M 5/382 − 5/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の一方の面に染料層が設けられ、前記基材の他方の面に背面層が設けられた熱転写シートであって、
前記背面層が、バインダー、第1滑剤、及び第2滑剤を含有しており、
前記第1滑剤が、ジアシルグリセロールであり、
前記第2滑剤が、融点が80℃以上の固体滑剤であり、
前記背面層の固形分総量に対し、前記第1滑剤が2質量%以上20質量%以下の範囲内で含有され、前記第2滑剤が1質量%以上15質量%以下の範囲内で含有されていることを特徴とする熱転写シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱転写シートに関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタで用いられる一般的な熱転写シートとして、基材の一方の面上に染料層が設けられ、基材の他方の面上に背面層が設けられた熱転写シートが知られている。この熱転写シートによれば、熱転写受像シート等の被転写体と、熱転写シートの染料層とが対向するように重ねた後に、背面層とサーマルヘッド等の加熱デバイスとを接触させ、該サーマルヘッド等の加熱デバイスに画像情報に応じたエネルギーを印加しながら背面層上を擦るように移動させることで被転写体上に画像を形成することができる。
【0003】
ところで、滑性の低い背面層を備える熱転写シートを用いて画像形成を行った場合には、画像形成時に熱転写シートにシワが生じてしまい、これに伴い形成される画像にも印画シワが生ずることとなる。したがって、形成される画像に印画シワを生じさせないためには、十分な滑性を有する背面層を備えた熱転写シートを用いることが必要である。背面層の滑性に着目した熱転写シートについては種々の提案がなされており、例えば、特許文献1には、滑剤成分として、リン酸エステル化合物ならびに反応性変性シリコーンオイルを含有する背面層を備えた熱転写シートが提案されている。また、特許文献2には、背面層に滑剤成分として金属石鹸を含む熱転写シートが提案されている。
【0004】
熱転写シートは、一般的に巻き取られた状態で保管・使用される。熱転写シートが巻き取られた状態において、染料層と背面層とは直接的に接触していることから、背面層に染料層の染料に染色されやすい成分が含まれている場合には、熱転写シートの巻き取り時に染料層の染料が背面層に移行する所謂キックが発生する。特許文献1に提案がされているリン酸エステル、シリコーンオイル等は液体滑剤であり、染料層の染料に特に染色されやすい滑剤成分である。したがって、リン酸エステル、シリコーンオイル等の液体滑剤を含む背面層を備える熱転写シートではキック発生の度合が大きい。一方、特許文献2に提案がされている金属石鹸等の固体滑剤は、液体滑剤と比較して染料層の染料に染色されにくく、キック発生の度合は低いものの、十分な滑性が発揮されるまで背面層に固体滑剤を含有せしめた場合には、液体滑剤を用いた場合と同様にキック発生の度合が大きくなってしまう。つまり、滑性の向上効果と、キック発生の防止効果はトレードオフの関係にあり、滑性を向上に主眼をおいた場合には、キック発生の度合が大きくなり、一方、キック発生の防止に主眼をおいた場合には、背面層に十分な滑性を付与することができない。
【0005】
また、背面層に染料層の染料がキックした熱転写シートを巻き返した時には、背面層にキックした染料が染料層に再移行する所謂バックを生じさせ、様々な問題を引き起こす。例えば、基材上に異なる色の染料層が面順次に繰り返し設けられた熱転写シートにおいて、背面層にキックした染料が、当該染料とは異なる色相の染料を含む別の染料層にバックした場合には発色特性の低下を引き起こすこととなる。また、基材上に染料層と転写性保護層とが面順次に設けられた一体型の熱転写シートにおいて、背面層にキックした染料が転写性保護層にバックした場合には、転写性保護層の被転写体上への転写性等が阻害され、また転写性保護層転写後の印画物の品質が低下することとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−188902号公報
【特許文献2】特開2004−90594号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、熱転写シートを巻き取ったときに、染料層の染料が背面層に移行するキックの発生を効果的に防止でき、かつ背面層の滑性に優れる熱転写シートを提供することを主たる課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための本発明は、基材の一方の面に染料層が設けられ、前記基材の他方の面に背面層が設けられた熱転写シートであって、前記背面層が、バインダー、第1滑剤、及び第2滑剤を含有しており、前記第1滑剤が、ジアシルグリセロールであり、前記第2滑剤が、融点が80℃以上の固体滑剤であり、前記背面層の固形分総量に対し、前記第1滑剤が2質量%以上20質量%以下の範囲内で含有され、前記第2滑剤が1質量%以上15質量%以下の範囲内で含有されていることを特徴とする。
【0009】
また、一実施形態の熱転写シートは、基材の一方の面に染料層が設けられ、前記基材の他方の面に背面層が設けられた熱転写シートであって、前記背面層が、バインダー、第1滑剤、及び第2滑剤を含有しており、前記第1滑剤が、ソルビタン脂肪酸エステル、トリアシルグリセロール、及びジアシルグリセロールの群から選択される1種、又は2種以上であり、前記第2滑剤が、融点が80℃以上の固体滑剤であることを特徴とする。
上記一実施形態の熱転写シートにおいて、前記背面層の固形分総量に対し、前記第1滑剤が2質量%以上20質量%以下の範囲内で含有され、前記第2滑剤が1質量%以上15質量%以下の範囲内で含有されていてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、背面層に十分な滑性を付与しつつ、熱転写シートを巻き取った時に、染料層の染料が背面層に移行するキックの発生を効果的に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の熱転写シートの一例を示す概略断面図である。
図2】本発明の熱転写シートの一例を示す概略断面図である。
図3】本発明の熱転写シートの一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の熱転写シートについて図面を用いて具体的に説明する。なお、図1図3は、本発明の熱転写シートの一例を示す概略断面図である。
【0013】
図1図3に示すように、本発明の熱転写シート10は、基材1の一方の面に染料層3が設けられ、基材1の他方の面に背面層5が設けられた構成をとる。そして、本発明の熱転写シート10では、背面層5が、バインダーと、第1滑剤と、第2滑剤とを含有しており、第1滑剤が、ソルビタン脂肪酸エステル、トリアシルグリセロール、及びジアシルグリセロールの群から選択される1種、又は2種以上であり、第2滑剤が、融点が80℃以上の固体滑剤である点を特徴とする。本発明は、背面層5がこの要件を具備するものであれば、熱転写シート10の他の構成についていかなる限定もされることはない。例えば、図2に示すように、基材1と染料層3との間に染料プライマー層7が設けられていてもよく、基材1と染料層3との間に図示しない離型層が設けられていてもよい。また、基材1と背面層5との間に図示しない背面プライマー層が設けられていてもよい。また、図3に示すように染料層3が、色相の異なる複数の染料層(3Y、3M、3C)が面順次に設けられた構成をとっていてもよい。なお、染料プライマー層7、離型層、背面プライマー層は、本発明の熱転写シート10における任意の構成である。以下、熱転写シート10の各構成について具体的に説明する。
【0014】
(基材)
基材1は、本発明の熱転写シート10における必須の構成であり、後述する染料層3及び背面層5を保持するために設けられる。基材1の材料については特に限定されないが、染料層3を被転写体上に転写する際にサーマルヘッドにより加えられる熱に耐え、取り扱い上支障のない機械的特性を有することが望ましい。このような基材として、例えば、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリアリレート、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、セルロース誘導体、ポリエチレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリプロピレン、ポリスチレン、アクリル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ナイロン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル、ポリビニルフルオライド、テトラフルオロエチレン・エチレン、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド等の各種プラスチックフィルムまたはシートを挙げることができる。また、基材1の厚さは、その強度及び耐熱性が適切になるように材料に応じて適宜設定することができ、2〜100μm程度が一般的で、好ましくは1〜10μmである。
【0015】
(背面層)
図示するように基材1の他方の面(図1図3に示す場合には基材1の下面)には、背面層5が設けられている。なお、背面層5は、本発明の熱転写シート10における必須の構成である
【0016】
背面層5は、バインダー、第1滑剤、及び第2滑剤を含有する。また、背面層5に含有される第1滑剤は、ソルビタン脂肪酸エステル、トリアシルグリセロール、及びジアシルグリセロールの群から選択される1種、又は2種以上であり、第2滑剤は、融点が80℃以上の固体滑剤である。以下、背面層5に含まれる各構成成分について具体的に説明する。
【0017】
<<第1滑剤>>
背面層5には、第1滑剤として、ソルビタン脂肪酸エステル、トリアシルグリセロール、及びジアシルグリセロールの群から選択される1種、又は2種以上が含有されている。ソルビタン脂肪酸エステル、トリアシルグリセロール、及びジアシルグリセロールは、背面層に滑性を付与する滑剤としての役割を果たしつつ、染料層3の染料に染色されにくい性質を有する。したがって、第1滑剤を含有する背面層5によれば、背面層5に付与される滑性によって、画像形成時における印画シワの発生を防止でき、且つ、本発明の熱転写シート10を、染料層3と背面層5とが対向するように巻き取っていったときに、染料層3の染料が背面層5に移行するキックの発生を効果的に防止することができる。
【0018】
<ソルビタン脂肪酸エステル>
ソルビタン脂肪酸エステルは、ソルビタンと、RCOOH(一般式(1))で示される脂肪酸とのエステルであり、当該ソルビタン脂肪酸エステルには、直鎖状、又は分岐状の脂肪酸残基が含まれる。なお、本願明細書で言う脂肪酸残基とは、上記一般式(1)中における「RCOO」を意味する。ソルビタン脂肪酸エステルに含まれる脂肪酸残基について特に限定はなく、例えば、ラウリン酸残基、パルミチン酸残基、ステアリン酸残基、イソステアリン酸残基、オレイン酸残基、カプリル酸残基、ミリスチン酸残基、ベヘン酸残基等を挙げることができる。
【0019】
これらの脂肪酸残基を含むソルビタン脂肪酸エステルの具体的な化合物としては、例えば、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレート、ソルビタンセスキオレート、ソルビタンセスキステアレート、ソルビタンジラウレート、ソルビタンジパルミテート、ソルビタンジステアレート、ソルビタンジオレート、ソルビタントリラウレート、ソルビタントリパルミテート、ソルビタントリステアレート、ソルビタントリオレート等を挙げることができる。これらソルビタン脂肪酸エステルは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いることもできる。
【0020】
上述したようにソルビタン脂肪酸エステルに含まれる脂肪酸残基について特に限定はないが、ソルビタン脂肪酸エステルは、当該ソルビタン脂肪酸エステルに含まれる脂肪酸残基の炭素鎖長が長いほど染料層の染料に染色されにくく、且つ滑性に優れる性質を有する。したがって、ソルビタン脂肪酸エステルには炭素鎖長が長い脂肪酸残基が含まれていることが好ましく、具体的には、ソルビタン脂肪酸エステルは、炭素鎖長が18以上の脂肪酸残基を含んでいることが好ましい。より具体的には、ソルビタン脂肪酸エステルは、脂肪酸残基としてステアリン酸残基、オレイン酸残基、ベヘン酸残基等を含んでいることが好ましい。
【0021】
また、ソルビタン脂肪酸エステルが、ソルビタンモノ脂肪酸エステル以外である場合に、当該ソルビタン脂肪酸エステルに含まれる脂肪酸残基は、同一のものであってもよく、異なるものであってもよい。なお、脂肪酸残基が異なる場合には、少なくとも1つの脂肪酸残基が、炭素鎖長が18以上の脂肪酸残基であることが好ましく、全ての脂肪酸残基が、炭素鎖長が18以上の脂肪酸残基であることが特に好ましい。なお、本願明細書において、炭素鎖長が18以上の脂肪酸残基を含むという場合には、ソルビタン脂肪酸エステルに含まれる1又は2以上の脂肪酸残基のうち、少なくとも1つの脂肪酸残基の炭素鎖長が18以上であることを意味する。以下、トリアシルグリセロール、ジアシルグリセロールについても同様である。
【0022】
<トリアシルグリセロール>
トリアシルグリセロールは、以下の一般式(2)で示される化合物である。
【0023】
【化1】
【0024】
上記一般式(2)における「R1COO」、「R2COO」、「R3COO」は、それぞれ直鎖状、又は分岐状の脂肪酸残基である。脂肪酸残基(「R1COO」、「R2COO」、「R3COO」)は、それぞれ、同一のものであっても、異なるものであってもよい。
【0025】
トリアシルグリセロールに含まれる脂肪酸残基(「R1COO」、「R2COO」、「R3COO」)について特に限定はなく、上述したソルビタン脂肪酸エステルで説明した脂肪酸残基と同様のもの、例えば、ラウリン酸残基、パルミチン酸残基、ステアリン酸残基、イソステアリン酸残基、オレイン酸残基、カプリル酸残基、ミリスチン酸残基、ベヘン酸残基等を挙げることができる。
【0026】
これらの脂肪酸残基を含むトリアシルグリセロールの具体的な化合物としては、例えば、トリオレイン酸グリセロール、トリステアリン酸グリセロール、トリベヘン酸グリセロール、トリカプリル酸グリセロール、トリミリスチン酸グリセロール等を挙げることができる。これらトリアシルグリセロールは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いることもできる。
【0027】
なお、トリアシルグリセロールは、グリセリンが有する3つの水酸基の全てがエステル化されていることから、そのHLB値は低い。HLB値が低くなるにつれ、キックの防止効果は向上するものと推察される。したがって、グリセリンが有する3つの水酸基の全てがエステル化されているトリアシルグリセロールによれば、当該トリアシルグリセロールに含まれる脂肪酸残基の炭素鎖長にかかわらず、背面層5に滑性を付与しつつも、十分なキック防止効果を図ることができる。なお、キック発生防止のさらなる向上を目的とする場合には、トリアシルグリセロールには、炭素鎖長が18以上の脂肪酸残基が含まれていることが好ましい。換言すれば、トリアシルグリセロールには、ステアリン酸残基、オレイン酸残基、ベヘン酸残基等の炭素鎖長が18以上の脂肪酸残基が含まれていることが好ましい。特に、トリアシルグリセロールに含まれる全ての脂肪酸残基が、炭素鎖長が18以上の脂肪酸残基であることが好ましい。
【0028】
<ジアシルグリセロール>
ジアシルグリセロールは、以下の一般式(3)、又は一般式(4)で示される化合物である。
【0029】
【化2】
【0030】
上記一般式(3)、(4)における「R1COO」、「R2COO」は、それぞれ直鎖状、又は分岐状の脂肪酸残基である。脂肪酸残基(「R1COO」、「R2COO」)は、それぞれ、同一のものであっても、異なるものであってもよい。
【0031】
ジアシルグリセロールに含まれる脂肪酸残基(「R1COO」、「R2COO」)について特に限定はなく、上述したソルビタン脂肪酸エステル、及びトリアシルグリセロールで説明した脂肪酸残基と同様のもの、例えば、ラウリン酸残基、パルミチン酸残基、ステアリン酸残基、イソステアリン酸残基、オレイン酸残基、カプリル酸残基、ミリスチン酸残基、ベヘン酸残基等を挙げることができる。
【0032】
これらの脂肪酸残基を含むジアシルグリセロールの具体的な化合物としては、例えば、ジラウリン酸グリセロール、ジパルミチン酸グリセロール、ジオレイン酸グリセロール、ジステアリン酸グリセロール、ジベヘン酸グリセロール、ジカプリル酸グリセロール、ジミリスチン酸グリセロール等を挙げることができる。これらジアシルグリセロールは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いることもできる。
【0033】
ジアシルグリセロールには、炭素鎖長が18以上の脂肪酸残基が含まれていることが好ましく、ジアシルグリセロールに含まれる全ての脂肪酸残基(「R1COO」、「R2COO」)が、炭素鎖長が18以上の脂肪酸残基であることが好ましい。ジアシルグリセロールは、上述したトリアシルグリセロールよりも、グリセリンが有する3つの水酸基をエステル化している数が少なく、トリアシルグリセロールよりもHLB値が高くなる傾向にあるが、ジアシルグリセロールに、炭素鎖長が18以上の脂肪酸残基を含ませることで、トリアシルグリセロールと同様に極めて優れたキック発生の防止効果を図ることができる。
【0034】
背面層5の固形分総量に対する第1滑剤の含有量について特に限定はないが、第1滑剤の含有量が、背面層5の固形分総量に対し、2質量%未満である場合には、第1滑剤によってもたらされる背面層5の滑性の向上効果が低下する傾向にある。一方、20質量%を超えると、キック発生の防止効果や、背面層5の滑性の更なる向上効果が見込めず、また、その分バインダーの含有量が低下することから、背面層5の耐熱性が低下する傾向にある。したがって、この点を考慮すると、第1滑剤の含有量は、背面層5の固形分総量に対し、2質量%以上20質量%未満の範囲内であることが好ましい。なお、ここで言う第1滑剤の含有量とは、第1滑剤として用いた滑剤の合計質量を意味する。
【0035】
また、第1滑剤の固形分総量に対する、炭素鎖長が18以上の脂肪酸残基を含むソルビタン脂肪酸エステル、炭素鎖長が18以上の脂肪酸残基を含むトリアシルグリセロール、及び炭素鎖長が18以上の脂肪酸残基を含むジアシルグリセロールの合計質量は80質量%以上であることが好ましい。炭素鎖長が18以上の脂肪酸残基を含む、ソルビタン脂肪酸エステル、トリアシルグリセロール、ジアシルグリセロールの含有量をこの範囲とすることで、キックの発生の防止効果や、背面層5の滑性の向上効果をさらに高めることができる。
【0036】
<<第2滑剤>>
背面層5には、第2滑剤として、融点が80℃以上の固体滑剤が含有されている。本発明において、第2滑剤は、背面層5の滑性を向上させる役割として作用する。具体的には、第2滑剤は、高階調領域の画像形成時における滑性を向上させる役割として作用する。なお、本発明における第2滑剤の融点は、JIS K 0064(1992)に準拠して測定された融点である。
【0037】
なお、背面層5が、第2滑剤を含まない場合、或いは融点が80℃未満の固体滑剤を含む場合には、高階調領域の画像形成時における滑性が不十分となり、高階調領域における画像形成時において、形成される画像にシワが発生する場合がある。一方、第2滑剤のみを含む背面層において、十分な滑性を付与することができる程度まで、換言すれば、第1滑剤と第2滑剤を含む背面層5と同等の滑性となるまで、第2滑剤の含有量を増大させていった場合には、キックの発生を防止できなくなる。さらに、第2滑剤の融点以下における滑性を満足させることもできない。一方、第1滑剤のみを含有する背面層とした場合には、キックの発生を十分に防止できるものの、第2滑剤の融点以上の滑性が低下し、本発明の熱転写シート10の背面層5の滑性よりも、高階調領域の滑性が低くなる。
【0038】
つまり、本発明では、第1滑剤と第2滑剤の相乗効果により背面層5に十分な滑性を付与している点を特徴とする。また、滑性を有する第1滑剤成分の存在によって、第1滑剤と比較してキックの防止効果が低い第2滑剤の含有量を減らすことができ、背面層5全体としてキックの発生を防止することができる。
【0039】
第2滑剤は、(1)固体滑剤であること、(2)融点が80℃以上であること、との条件満たすものであればよく、その他の要件について特に限定はない。このような条件を満たす固体滑剤としては、融点が80℃以上の、金属石鹸や、脂肪酸誘導体である脂肪酸アマイド等を挙げることができる。
【0040】
金属石鹸としては、例えば、アルキルリン酸エステルの多価金属塩、脂肪酸の多価金属塩、アルキルカルボン酸の金属塩等、より具体的には、ステアリルリン酸亜鉛や、ステアリン酸亜鉛等を挙げることができる。脂肪酸アマイドとしては、エチレンビスオレイン酸アマイドや、メチレンビスステアリン酸アマイド、ステアリン酸アマイド等を挙げることができる。
【0041】
なお、第2滑剤は固体滑剤であり、液体滑剤と比較すると、染料層3の染料に染色されにくいものの、第1滑剤と比較すると染料層3の染料に染色されやすく、背面層5の固形分総量に対し、融点が80℃以上の固体滑剤の含有量が15質量%を超えると、背面層5が染料層の染料に染色されやすくなり、キック発生の防止効果が低下する傾向にある。したがって、この点を考慮すると、背面層5の固形分総量に対する融点が80℃以上の固体滑剤の含有量は15質量%以下であることが好ましい。また、高階調領域における滑性の更なる向上効果の点からは、1質量%以上であることが好ましい。なお、第2滑剤にかえて、融点が80℃未満の液体滑剤を用いた場合には、当該液体滑剤によって背面層が染料層の染料に染色されやすくなり、キックの発生を防止することができない。なお、このことは、背面層5に、融点が80℃未満の液体滑剤が含まれることを禁止するものではなく、本発明の趣旨を妨げない範囲内での含有は許容される。
【0042】
また、背面層5には、本発明の趣旨を妨げない範囲内で、これ以外の滑剤成分が含有されていてもよい。他の滑剤成分としては、リン酸エステルや、グラファイトパウダー、フッ素系グラフトポリマー、シリコーンオイル、シリコーン系グラフトポリマー、アクリルシリコーングラフトポリマー、アクリルシロキサン、アリールシロキサン等のシリコーン重合体、ポリエチレン等を挙げることができる。なお、これら他の滑剤成分は、キックの発生の防止効果を低下させてしまうことから、背面層5の固形分総量に対し5質量%以下の含有量とすることが必要である。
【0043】
<<バインダー>>
背面層5は、第1滑剤、及び第2滑剤とともに、バインダーを含有する。
【0044】
背面層5に含まれるバインダーについて特に限定はなく、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリアクリル酸エステル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、スチレンアクリレート系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂等のポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリビニルクロリド樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアセトアセタール樹脂等のポリビニルアセタール樹脂等の熱可塑性樹脂、これらのシリコーン変性物等を用いることができる。
【0045】
また、バインダーは、硬化型のバインダーであってもよい。硬化型のバインダーを含む背面層5によれば、塗膜強度や耐熱性を向上させることができる。硬化型のバインダーとするための硬化剤としては、ポリイソシアネートが好適であり、特に、芳香族系イソシアネートのアダクト体を使用することが望ましい。芳香族系ポリイソシアネートとしては、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、又は、2,4−トルエンジイソシアネートと2,6−トルエンジイソシアネートの混合物、1,5−ナフタレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、trans−シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリス(イソシアネートフェニル)チオフォスフェートがあげられ、特に2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、又は、2,4−トルエンジイソシアネートと2,6−トルエンジイソシアネートの混合物が好ましい。
【0046】
バインダーの含有量について特に限定はなく、上述した必須の成分であるソルビタン脂肪酸エステル、トリアシルグリセロールの含有量に応じて適宜決定することができる。好ましくは、背面層5の固形分総量に対し40質量%以上90質量%以下の範囲である。
【0047】
背面層5の形成方法について特に限定はなく、上記で説明した第1滑剤、第2滑剤、バインダー、必要に応じて添加される他の成分等を、適当な溶媒に分散又は溶解させた塗工液を、基材1の染料層3の反対側の面上に、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、グラビア版を用いたリバースロールコーティング印刷法等の公知の手段により、塗布し、乾燥することにより形成することができる。背面層5の塗工量は、耐熱性等の向上等の点から、乾燥後塗工量が3g/m2以下であることが好ましく、0.1〜2g/m2であることが特に好ましい。
【0048】
(背面プライマー層)
また、基材1と背面層5との間に、基材1と背面層5との密着性を向上させるための図示しない背面プライマー層を設けてもよい。背面プライマー層の材料としては、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂等接着性を示すものが挙げられる。
【0049】
(染料層)
図示するように基材1の一方の面(図1図3に示す場合には基材1の上面)には、本発明の熱転写シート10における必須の構成である染料層3が形成されている。なお、本発明の熱転写シート10は、背面層5に、上記で説明した第1滑剤、第2滑剤、及びバインダーが含まれる点を特徴とするものであり、染料層3についていかなる限定もされることはない。
【0050】
染料層3は、染料バインダーと、染料とを含有する。染料層3は、所望の画像がモノカラーである場合には、適宜選択した1色の層のみ形成してもよいし、所望の画像がフルカラー画像である場合には、図3に示すように、イエロー染料、マゼンタ染料、シアン染料、必要に応じてブラック染料等の色相の異なる染料を含む複数の染料層3Y,3M,3Cを、同一基材の同一面に面順次に、繰り返し形成してもよい。なお、色相が異なる染料を含む複数の染料層3を備える熱転写シートにおいて、背面層にキックした染料、例えば、背面層にキックしたイエロー染料が、熱転写シートを巻き返したときに当該キックした染料とは色相が異なる別の染料層、例えば、シアン染料層にバックした場合には、当該シアン染料層を用いた画像形成時に発色特性を引き起こす場合や、シアン染料層を用いた画像形成時における画像品質の低下を引き起こすこととなるが、本発明では、上述したように背面層5においてキックの発生の防止が図られていることから、色相の異なる複数の染料層を備える熱転写シートとした場合であっても、画像品質の低下の防止効果が図られる。
【0051】
染料層3には、本発明の熱転写シート10が、昇華型熱転写シートである場合には、昇華性の染料が含まれ、熱溶融型の熱転写シートである場合には、熱溶融性インキ等が含まれる。
【0052】
昇華性の染料としては、十分な着色濃度を有し、光、熱、温度等により変退色しないものが好ましく、例えば、ジアリールメタン系染料、トリアリールメタン系染料、チアゾール系染料、メロシアニン染料、ピラゾロン染料、メチン系染料、インドアニリン系染料、アセトフェノンアゾメチン、ピラゾロアゾメチン、イミダゾルアゾメチン、イミダゾアゾメチン、ピリドンアゾメチン等のアゾメチン系染料、キサンテン系染料、オキサジン系染料、ジシアノスチレン、トリシアノスチレン等のシアノスチレン系染料、チアジン系染料、アジン系染料、アクリジン系染料、ベンゼンアゾ系染料、ピリドンアゾ、チオフェンアゾ、イソチアゾールアゾ、ピロールアゾ、ピラゾールアゾ、イミダゾールアゾ、チアジアゾールアゾ、トリアゾールアゾ、ジスアゾ等のアゾ系染料、スピロピラン系染料、インドリノスピロピラン系染料、フルオラン系染料、ローダミンラクタム系染料、ナフトキノン系染料、アントラキノン系染料、キノフタロン系染料等が挙げられる。具体的には、MSRedG(三井東圧化学社製)、Macrolex Red Violet R(バイエル社製)、CeresRed 7B(バイエル社製)、Samaron Red F3BS(三菱化学社製)等の赤色染料、ホロンブリリアントイエロー6GL(クラリアント社製)、PTY−52(三菱化成社製)、マクロレックスイエロー6G(バイエル社製)等の黄色染料、カヤセットブルー714(日本化薬社製)、ワクソリンブルーAP−FW(ICI社製)、ホロンブリリアントブルーS−R(サンド社製)、MSブルー100(三井東圧化学社製)、C.I.ソルベントブルー22等の青色染料が挙げられる。
【0053】
上記染料を担持するための染料バインダーとしては、一般に、耐熱性を有し、染料と適度の親和性があるものを使用することができる。染料バインダーとしては、例えば、ニトロセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルヒドロキシセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、酢酸セルロース、酪酸セルロース等のセルロース系樹脂;ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセトアセタール、ポリビニルピロリドン等のビニル系樹脂;ポリ(メタ)アクリレート、ポリ(メタ)アクリルアミド等のアクリル樹脂;ポリウレタン系樹脂;ポリアミド系樹脂;ポリエステル系樹脂;等を挙げられる。
【0054】
昇華性染料は、染料層3の染料バインダーの固形分総量に対し、50質量%以上350質量%、好ましくは80質量%以上300質量%であることが好ましい。昇華性染料の含有量が、上記範囲未満であると印字濃度が低くなることがあり、上記範囲を越えると保存性等が低下することがある。
【0055】
また、昇華型の熱転写シート10の染料層3には、所望により、離型剤、無機微粒子、有機微粒子等の添加剤が含まれていてもよい。離型剤としては、シリコーンオイル、リン酸エステル等が挙げられ、無機微粒子としては、カーボンブラック、アルミニウム、二硫化モリブデン等が挙げられ、有機微粒子としては、ポリエチレンワックス等が挙げられる。
【0056】
熱溶融型の熱転写シート10の染料層3に含まれる熱溶融性インキとしては、公知の有機または無機の顔料、あるいは染料の中から適宜選択することができ、例えば、十分な着色濃度を有し、光、熱等により変色、退色しないものが好ましい。熱溶融性インキの色としては、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックに限定されるものではなく、種々の色の着色剤を使用することができる。
【0057】
熱溶融型の熱転写シート10の染料層3に含まれる染料バインダーとしては、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリブデン、石油樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール、塩化ビニリデン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアミド、ポリカーボネート、フッ素樹脂、ポリビニルフォルマール、ポリビニルブチラール、アセチルセルロース、ニトロセルロース、ポリ酢酸ビニル、ポリイソブチレン、エチルセルロース又はポリアセタール等が挙げられる。
【0058】
また、熱溶融型の染料層3には、マイクロクリスタリンワックス、カルナバワックス、パラフィンワックス等がある。更に、フィッシャートロプシュワックス、各種低分子量ポリエチレン、木ロウ、ミツロウ、鯨ロウ、イボタロウ、羊毛ロウ、セラックワックス、キャンデリラワックス、ペトロラクタム、ポリエステルワックス、一部変性ワックス、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド等のワックス成分が含まれていてもよい。
【0059】
染料層3の形成方法について特に限定はなく、上記で説明した染料、染料バインダー、必要に応じて添加される任意の成分を、適当な溶媒に分散或いは溶解させた塗工液を、グラビア印刷法、グラビア版を用いたリバースロールコーティング法、ロールコーター、バーコーター等の従来公知の塗工手段により、基材1の背面層5の反対側の面上に塗布し、乾燥させることにより形成することができる。
【0060】
染料層3の厚みについて特に限定はないが、乾燥時の厚みで0.3μm〜1.5μm程度であることが好ましい。
【0061】
(染料プライマー層)
本発明の熱転写シートが昇華型の熱転写シートである場合には、図2に示すように基材1と染料層3との間に染料プライマー層7が設けられていることが好ましい。染料プライマー層を設けることで基材1と染料層3との密着性を向上させ、画像形成時に染料層3が異常転写されることを防止することができる。
【0062】
染料プライマー層を構成する樹脂としては、ポリエステル系樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ヒドロキシエチルセルロース、ポリアクリル酸エステル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、スチレンアクリレート系樹脂、ポリアクリルアミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアセトアセタールやポリビニルブチラール等のポリビニルアセタール系樹脂等が挙げられる。
【0063】
また、染料プライマー層をコロイド状無機顔料超微粒子から構成することもできる。これにより熱転写時の熱転写受像シートへ染料層3の異常転写を防止できるだけでなく、画像形成時の染料層3から染料プライマー層への染料の移行を防止し、熱転写受像シートの受容層側への染料拡散を有効に行なうことができ、印画濃度を高めることができる。
【0064】
コロイド状無機顔料超微粒子として、従来公知の化合物が使用できる。例えば、シリカ(コロイダルシリカ)、アルミナ或はアルミナ水和物(アルミナゾル、コロイダルアルミナ、カチオン性アルミニウム酸化物又はその水和物、疑ベーマイト等)、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、酸化チタン等が挙げられる。特に、コロイダルシリカ、アルミナゾルが好ましく用いられる。これらのコロイド状無機顔料超微粒子の大きさは、一次平均粒径で100nm以下、好ましくは50nm以下で用いることが好ましい。
【0065】
染料プライマー層は、上記で例示した樹脂や、コロイド状無機顔料超微粒子を適当な溶媒に溶解或いは分散した染料プライマー層用塗工液をグラビアコーティング法、ロールコート法、スクリーン印刷法、グラビア版を用いたリバースロールコーティング法等の従来から公知の形成手段により、塗布・乾燥して形成することができる。染料プライマー層用塗工液の塗工量は、0.02〜1.0g/m2程度であることが好ましい。
【0066】
一方、本発明の熱転写シートが熱溶融型の熱転写シートである場合には、基材1と染料層3との間に離型層が設けられていることが好ましい。離型層を形成する樹脂としては、例えば、ワックス類、シリコーンワックス、シリコーン樹脂、シリコーン変性樹脂、フッ素樹脂、フッ素変性樹脂、ポリビニルアルコール、アクリル樹脂、熱架橋性エポキシ−アミノ樹脂及び熱架橋性アルキッド−アミノ樹脂等が挙げられる。また、離型層は、1種の樹脂からなるものであってもよく、2種以上の樹脂からなるものであってもよい。また離型層は、離型性樹脂に加えイソシアネート化合物等の架橋剤、錫系触媒、アルミニウム系触媒等の触媒を用いて形成することとしてもよい。離型層の厚みは0.5〜5μm程度が一般的である。離型層の形成方法としては、上記樹脂を適当な溶剤により、溶解または分散させて離型層用塗工液を調製し、これを基材1上にグラビア印刷法、スクリーン印刷法またはグラビア版を用いたリバースコーティング法等の従来公知の手段により塗布、乾燥して形成することができる。
【0067】
以上、本発明の熱転写シート10について具体的に説明を行ったが、本発明の趣旨を妨げない範囲で各種の変形態様をとることができる。例えば、図1図3に示す構成において、基材1の同一面上に染料層3と、図示しない転写性保護層を面順次に設けた一体型の熱転写シートとしてもよい。また、基材1と転写性保護層との間に、離型層を設けることもできる。
【実施例】
【0068】
次に、実施例を挙げて、本発明を更に具体的に説明する。以下、特に断りのない限り、「部」及び「%」は質量基準である。また、特に断りがない限り、「部」及び「%」は固形分の値を示している。
【0069】
参考例1)
基材として厚さ4.5μmの易接着処理済みポリエチレンテレフタレートフィルムを用い、該基材の一方の面に下記組成の背面層用塗工液1を、乾燥時塗工量が1.0g/m2となるようにバーコーターを用いて塗工し、80℃で1分間乾燥させ背面層を形成した。また、基材の他方の面(易接着処理面)に、下記組成の染料層用塗工液を、乾燥時塗工量が0.6g/m2となるようにバーコーターを用いて塗工し染料層を形成することで参考例1の熱転写シートを得た。
【0070】
<背面層用塗工液1>
・ポリビニルアセタール樹脂 53.8部
(エスレックKS−1 積水化学(株))
・ポリイソシアネート 26.2部
(バーノック D750 DIC(株))
・ソルビタンモノオレート(HLB値:4.3) 10.0部
(レオドール SP−O10V 花王(株))
・ステアリルリン酸亜鉛(融点:230℃) 5.0部
(LBT−1830精製 堺化学工業(株))
・タルク 5.0部
(MICRO ACE P−3 日本タルク工業(株))
・トルエン 200部
・メチルエチルケトン 200部
【0071】
<染料層用塗工液>
・分散染料(ディスパースレッド 60) 1.5部
・分散染料(ディスパースバイオレット 26) 2.0部
・ポリビニルアセタール樹脂 4.5部
(エスレックスKS−5 積水化学(株))
・ポリエチレンワックス 0.1部
・トルエン 45.0部
・メチルエチルケトン 45.0部
【0072】
参考例2)
背面層用塗工液1にかえて、下記組成の背面層用塗工液2を使用した以外はすべて参考例1と同様にして参考例2の熱転写シートを得た。
【0073】
<背面層用塗工液2>
・ポリビニルアセタール樹脂 53.8部
(エスレックKS−1 積水化学(株))
・ポリイソシアネート 26.2部
(バーノック D750 DIC(株))
・ソルビタンモノオレート(HLB値:4.3) 10.0部
(レオドール SP−O10V 花王(株))
・エチレンビスステアリン酸アマイド(融点:145℃) 5.0部
(スリパックスE 日本化成(株))
・タルク 5.0部
(MICRO ACE P−3 日本タルク工業(株))
・トルエン 200部
・メチルエチルケトン 200部
【0074】
参考例3)
背面層用塗工液1にかえて、下記組成の背面層用塗工液3を使用した以外はすべて参考例1と同様にして参考例3の熱転写シートを得た。
【0075】
<背面層用塗工液3>
・ポリビニルアセタール樹脂 53.8部
(エスレックKS−1 積水化学(株))
・ポリイソシアネート 26.2部
(バーノック D750 DIC(株))
・ソルビタンモノオレート(HLB値:4.3) 10.0部
(レオドール SP−O10V 花王(株))
・ステアリン酸アマイド(融点:101℃) 5.0部
(アマイドAP−1 日本化成(株))
・タルク 5.0部
(MICRO ACE P−3 日本タルク工業(株))
・トルエン 200部
・メチルエチルケトン 200部
【0076】
参考例4)
背面層用塗工液1にかえて、下記組成の背面層用塗工液4を使用した以外はすべて参考例1と同様にして参考例4の熱転写シートを得た。
【0077】
<背面層用塗工液4>
・ポリビニルアセタール樹脂 53.8部
(エスレックKS−1 積水化学(株))
・ポリイソシアネート 26.2部
(バーノック D750 DIC(株))
・ソルビタンモノステアレート(HLB値:4.7) 10.0部
(レオドール SP−S10V 花王(株))
・ステアリルリン酸亜鉛(融点:230℃) 5.0部
(LBT−1830精製 堺化学工業(株))
・タルク 5.0部
(MICRO ACE P−3 日本タルク工業(株))
・トルエン 200部
・メチルエチルケトン 200部
【0078】
参考例5)
背面層用塗工液1にかえて、下記組成の背面層用塗工液5を使用した以外はすべて参考例1と同様にして参考例5の熱転写シートを得た。
【0079】
<背面層用塗工液5>
・ポリビニルアセタール樹脂 53.8部
(エスレックKS−1 積水化学(株))
・ポリイソシアネート 26.2部
(バーノック D750 DIC(株))
・ソルビタントリオレート(HLB値:1.8) 10.0部
(レオドール SP−O30V 花王(株))
・ステアリルリン酸亜鉛(融点:230℃) 5.0部
(LBT−1830精製 堺化学工業(株))
・タルク 5.0部
(MICRO ACE P−3 日本タルク工業(株))
・トルエン 200部
・メチルエチルケトン 200部
【0080】
参考例6)
背面層用塗工液1にかえて、下記組成の背面層用塗工液6を使用した以外はすべて参考例1と同様にして参考例6の熱転写シートを得た。
【0081】
<背面層用塗工液6>
・ポリビニルアセタール樹脂 53.8部
(エスレックKS−1 積水化学(株))
・ポリイソシアネート 26.2部
(バーノック D750 DIC(株))
・ソルビタントリステアレート(HLB値:2.1) 10.0部
(レオドール SP−S30V 花王(株))
・ステアリルリン酸亜鉛(融点:230℃) 5.0部
(LBT−1830精製 堺化学工業(株))
・タルク 5.0部
(MICRO ACE P−3 日本タルク工業(株))
・トルエン 200部
・メチルエチルケトン 200部
【0082】
(実施例7)
背面層用塗工液1にかえて、下記組成の背面層用塗工液7を使用した以外はすべて参考例1と同様にして実施例7の熱転写シートを得た。
【0083】
<背面層用塗工液7>
・ポリビニルアセタール樹脂 53.8部
(エスレックKS−1 積水化学(株))
・ポリイソシアネート 26.2部
(バーノック D750 DIC(株))
・ジオレイン酸グリセリル 10.0部
(NIKKOL DGO−80 日光ケミカルズ(株))
・ステアリルリン酸亜鉛(融点:230℃) 5.0部
(LBT−1830精製 堺化学工業(株))
・タルク 5.0部
(MICRO ACE P−3 日本タルク工業(株))
・トルエン 200部
・メチルエチルケトン 200部
【0084】
(実施例8)
背面層用塗工液1にかえて、下記組成の背面層用塗工液8を使用した以外はすべて参考例1と同様にして実施例8の熱転写シートを得た。
【0085】
<背面層用塗工液8>
・ポリビニルアセタール樹脂 53.8部
(エスレックKS−1 積水化学(株))
・ポリイソシアネート 26.2部
(バーノック D750 DIC(株))
・ジオレイン酸グリセリル 10.0部
(NIKKOL DGO−80 日光ケミカルズ(株))
・エチレンビスステアリン酸アマイド(融点:145℃) 5.0部
(スリパックスE 日本化成(株))
・タルク 5.0部
(MICRO ACE P−3 日本タルク工業(株))
・トルエン 200部
・メチルエチルケトン 200部
【0086】
(実施例9)
背面層用塗工液1にかえて、下記組成の背面層用塗工液9を使用した以外はすべて参考例1と同様にして実施例9の熱転写シートを得た。
【0087】
<背面層用塗工液9>
・ポリビニルアセタール樹脂 53.8部
(エスレックKS−1 積水化学(株))
・ポリイソシアネート 26.2部
(バーノック D750 DIC(株))
・ジオレイン酸グリセリル 10.0部
(NIKKOL DGO−80 日光ケミカルズ(株))
・ステアリン酸アマイド(融点:101℃) 5.0部
(アマイドAP−1 日本化成(株))
・タルク 5.0部
(MICRO ACE P−3 日本タルク工業(株))
・トルエン 200部
・メチルエチルケトン 200部
【0088】
(実施例10)
背面層用塗工液1にかえて、下記組成の背面層用塗工液10を使用した以外はすべて参考例1と同様にして実施例10の熱転写シートを得た。
【0089】
<背面層用塗工液10>
・ポリビニルアセタール樹脂 53.8部
(エスレックKS−1 積水化学(株))
・ポリイソシアネート 26.2部
(バーノック D750 DIC(株))
・ジステアリン酸グリセリル 10.0部
(NIKKOL DGS−80 日光ケミカルズ(株))
・ステアリルリン酸亜鉛(融点:230℃) 5.0部
(LBT−1830精製 堺化学工業(株))
・タルク 5.0部
(MICRO ACE P−3 日本タルク工業(株))
・トルエン 200部
・メチルエチルケトン 200部
【0090】
参考例11)
背面層用塗工液1にかえて、下記組成の背面層用塗工液11を使用した以外はすべて参考例1と同様にして参考例11の熱転写シートを得た。
【0091】
<背面層用塗工液11>
・ポリビニルアセタール樹脂 53.8部
(エスレックKS−1 積水化学(株))
・ポリイソシアネート 26.2部
(バーノック D750 DIC(株))
・トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル 10.0部
(NIKKOL トリエスターF−180 日光ケミカルズ(株))
・ステアリルリン酸亜鉛(融点:230℃) 5.0部
(LBT−1830精製 堺化学工業(株))
・タルク 5.0部
(MICRO ACE P−3 日本タルク工業(株))
・トルエン 200部
・メチルエチルケトン 200部
【0092】
参考例12)
背面層用塗工液1にかえて、下記組成の背面層用塗工液12を使用した以外はすべて参考例1と同様にして参考例12の熱転写シートを得た。
【0093】
<背面層用塗工液12>
・ポリビニルアセタール樹脂 53.8部
(エスレックKS−1 積水化学(株))
・ポリイソシアネート 26.2部
(バーノック D750 DIC(株))
・トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル 10.0部
(NIKKOL トリエスターF−180 日光ケミカルズ(株))
・エチレンビスステアリン酸アマイド(融点:145℃) 5.0部
(スリパックスE 日本化成(株))
・タルク 5.0部
(MICRO ACE P−3 日本タルク工業(株))
・トルエン 200部
・メチルエチルケトン 200部
【0094】
参考例13)
背面層用塗工液1にかえて、下記組成の背面層用塗工液13を使用した以外はすべて参考例1と同様にして参考例13の熱転写シートを得た。
【0095】
<背面層用塗工液13>
・ポリビニルアセタール樹脂 53.8部
(エスレックKS−1 積水化学(株))
・ポリイソシアネート 26.2部
(バーノック D750 DIC(株))
・トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル 10.0部
(NIKKOL トリエスターF−180 日光ケミカルズ(株))
・ステアリン酸アマイド(融点:101℃) 5.0部
(アマイドAP−1 日本化成(株))
・タルク 5.0部
(MICRO ACE P−3 日本タルク工業(株))
・トルエン 200部
・メチルエチルケトン 200部
【0096】
参考例14)
背面層用塗工液1にかえて、下記組成の背面層用塗工液14を使用した以外はすべて参考例1と同様にして参考例14の熱転写シートを得た。
【0097】
<背面層用塗工液14>
・ポリビニルアセタール樹脂 53.8部
(エスレックKS−1 積水化学(株))
・ポリイソシアネート 26.2部
(バーノック D750 DIC(株))
・トリオレイン酸グリセリル 10.0部
(Triolein 東京化成工業(株))
・ステアリルリン酸亜鉛(融点:230℃) 5.0部
(LBT−1830精製 堺化学工業(株))
・タルク 5.0部
(MICRO ACE P−3 日本タルク工業(株))
・トルエン 200部
・メチルエチルケトン 200部
【0098】
参考例15)
背面層用塗工液1にかえて、下記組成の背面層用塗工液15を使用した以外はすべて参考例1と同様にして参考例15の熱転写シートを得た。
【0099】
<背面層用塗工液15>
・ポリビニルアセタール樹脂 53.8部
(エスレックKS−1 積水化学(株))
・ポリイソシアネート 26.2部
(バーノック D750 DIC(株))
・トリステアリン酸グリセリル 10.0部
(Tristearin 東京化成工業(株))
・ステアリルリン酸亜鉛(融点:230℃) 5.0部
(LBT−1830精製 堺化学工業(株))
・タルク 5.0部
(MICRO ACE P−3 日本タルク工業(株))
・トルエン 200部
・メチルエチルケトン 200部
【0100】
参考例16)
背面層用塗工液1にかえて、下記組成の背面層用塗工液16を使用した以外はすべて参考例1と同様にして参考例16の熱転写シートを得た。
【0101】
<背面層用塗工液16>
・ポリビニルアセタール樹脂 47.1部
(エスレックKS−1 積水化学(株))
・ポリイソシアネート 22.9部
(バーノック D750 DIC(株))
・トリステアリン酸グリセリル 20.0部
(Tristearin 東京化成工業(株))
・ステアリルリン酸亜鉛(融点:230℃) 5.0部
(LBT−1830精製 堺化学工業(株))
・タルク 5.0部
(MICRO ACE P−3 日本タルク工業(株))
・トルエン 200部
・メチルエチルケトン 200部
【0102】
参考例17)
背面層用塗工液1にかえて、下記組成の背面層用塗工液17を使用した以外はすべて参考例1と同様にして参考例17の熱転写シートを得た。
【0103】
<背面層用塗工液17>
・ポリビニルアセタール樹脂 47.1部
(エスレックKS−1 積水化学(株))
・ポリイソシアネート 22.9部
(バーノック D750 DIC(株))
・トリステアリン酸グリセリル 10.0部
(Tristearin 東京化成工業(株))
・ステアリルリン酸亜鉛(融点:230℃) 15.0部
(LBT−1830精製 堺化学工業(株))
・タルク 5.0部
(MICRO ACE P−3 日本タルク工業(株))
・トルエン 200部
・メチルエチルケトン 200部
【0104】
参考例18)
背面層用塗工液1にかえて、下記組成の背面層用塗工液18を使用した以外はすべて参考例1と同様にして参考例18の熱転写シートを得た。
【0105】
<背面層用塗工液18>
・ポリビニルアセタール樹脂 43.7部
(エスレックKS−1 積水化学(株))
・ポリイソシアネート 21.3部
(バーノック D750 DIC(株))
・トリステアリン酸グリセリル 10.0部
(Tristearin 東京化成工業(株))
・ステアリルリン酸亜鉛(融点:230℃) 20.0部
(LBT−1830精製 堺化学工業(株))
・タルク 5.0部
(MICRO ACE P−3 日本タルク工業(株))
・トルエン 200部
・メチルエチルケトン 200部
【0106】
参考例19)
背面層用塗工液1にかえて、下記組成の背面層用塗工液19を使用した以外はすべて参考例1と同様にして参考例19の熱転写シートを得た。
【0107】
<背面層用塗工液19>
・ポリビニルアセタール樹脂 59.2部
(エスレックKS−1 積水化学(株))
・ポリイソシアネート 28.8部
(バーノック D750 DIC(株))
・トリステアリン酸グリセリル 2.0部
(Tristearin 東京化成工業(株))
・ステアリルリン酸亜鉛(融点:230℃) 5.0部
(LBT−1830精製 堺化学工業(株))
・タルク 5.0部
(MICRO ACE P−3 日本タルク工業(株))
・トルエン 200部
・メチルエチルケトン 200部
【0108】
参考例20)
背面層用塗工液1にかえて、下記組成の背面層用塗工液20を使用した以外はすべて参考例1と同様にして参考例20の熱転写シートを得た。
【0109】
<背面層用塗工液20>
・ポリビニルアセタール樹脂 59.9部
(エスレックKS−1 積水化学(株))
・ポリイソシアネート 29.1部
(バーノック D750 DIC(株))
・トリステアリン酸グリセリル 1.0部
(Tristearin 東京化成工業(株))
・ステアリルリン酸亜鉛(融点:230℃) 5.0部
(LBT−1830精製 堺化学工業(株))
・タルク 5.0部
(MICRO ACE P−3 日本タルク工業(株))
・トルエン 200部
・メチルエチルケトン 200部
【0110】
参考例21)
背面層用塗工液1にかえて、下記組成の背面層用塗工液21を使用した以外はすべて参考例1と同様にして参考例21の熱転写シートを得た。
【0111】
<背面層用塗工液21>
・ポリビニルアセタール樹脂 56.5部
(エスレックKS−1 積水化学(株))
・ポリイソシアネート 27.5部
(バーノック D750 DIC(株))
・トリステアリン酸グリセリル 10.0部
(Tristearin 東京化成工業(株))
・ステアリルリン酸亜鉛(融点:230℃) 1.0部
(LBT−1830精製 堺化学工業(株))
・タルク 5.0部
(MICRO ACE P−3 日本タルク工業(株))
・トルエン 200部
・メチルエチルケトン 200部
【0112】
参考例22)
背面層用塗工液1にかえて、下記組成の背面層用塗工液22を使用した以外はすべて参考例1と同様にして参考例22の熱転写シートを得た。
【0113】
<背面層用塗工液22>
・ポリビニルアセタール樹脂 56.8部
(エスレックKS−1 積水化学(株))
・ポリイソシアネート 27.7部
(バーノック D750 DIC(株))
・トリステアリン酸グリセリル 10.0部
(Tristearin 東京化成工業(株))
・ステアリルリン酸亜鉛(融点:230℃) 0.5部
(LBT−1830精製 堺化学工業(株))
・タルク 5.0部
(MICRO ACE P−3 日本タルク工業(株))
・トルエン 200部
・メチルエチルケトン 200部
【0114】
(比較例1)
背面層用塗工液1にかえて、下記組成の背面層用塗工液Aを使用した以外はすべて参考例1と同様にして比較例1の熱転写シートを得た。
【0115】
<背面層用塗工液A>
・ポリビニルアセタール樹脂 56.3部
(エスレックKS−1 積水化学(株))
・ポリイソシアネート 28.7部
(バーノック D750 DIC(株))
・ジオレイン酸グリセリル 10.0部
(NIKKOL DGO−80 日光ケミカルズ(株))
・タルク 5.0部
(MICRO ACE P−3 日本タルク工業(株))
・トルエン 200部
・メチルエチルケトン 200部
【0116】
(比較例2)
背面層用塗工液1にかえて、下記組成の背面層用塗工液Bを使用した以外はすべて参考例1と同様にして比較例2の熱転写シートを得た。
【0117】
<背面層用塗工液B>
・ポリビニルアセタール樹脂 56.3部
(エスレックKS−1 積水化学(株))
・ポリイソシアネート 28.7部
(バーノック D750 DIC(株))
・ジステアリン酸グリセリル 10.0部
(NIKKOL DGS−80 日光ケミカルズ(株))
・タルク 5.0部
(MICRO ACE P−3 日本タルク工業(株))
・トルエン 200部
・メチルエチルケトン 200部
【0118】
(比較例3)
背面層用塗工液1にかえて、下記組成の背面層用塗工液Cを使用した以外はすべて参考例1と同様にして比較例3の熱転写シートを得た。
【0119】
<背面層用塗工液C>
・ポリビニルアセタール樹脂 56.3部
(エスレックKS−1 積水化学(株))
・ポリイソシアネート 28.7部
(バーノック D750 DIC(株))
・ステアリルリン酸亜鉛(融点:230℃) 10.0部
(LBT−1830精製 堺化学工業(株))
・タルク 5.0部
(MICRO ACE P−3 日本タルク工業(株))
・トルエン 200部
・メチルエチルケトン 200部
【0120】
(比較例4)
背面層用塗工液1にかえて、下記組成の背面層用塗工液Dを使用した以外はすべて参考例1と同様にして比較例4の熱転写シートを得た。
【0121】
<背面層用塗工液D>
・ポリビニルアセタール樹脂 53.8部
(エスレックKS−1 積水化学(株))
・ポリイソシアネート 26.2部
(バーノック D750 DIC(株))
・ジオレイン酸グリセリル 10.0部
(NIKKOL DGO−80 日光ケミカルズ(株))
・N-ステアリルエルカ酸アマイド(融点:69℃) 5.0部
(ニッカアマイドSE 日本化成(株))
・タルク 5.0部
(MICRO ACE P−3 日本タルク工業(株))
・トルエン 200部
・メチルエチルケトン 200部
【0122】
(比較例5)
背面層用塗工液1にかえて、下記組成の背面層用塗工液Eを使用した以外はすべて参考例1と同様にして比較例5の熱転写シートを得た。
【0123】
<背面層用塗工液E>
・ポリビニルアセタール樹脂 53.8部
(エスレックKS−1 積水化学(株))
・ポリイソシアネート 26.2部
(バーノック D750 DIC(株))
・ジオレイン酸グリセリル 10.0部
(NIKKOL DGO−80 日光ケミカルズ(株))
・リン酸エステル 5.0部
(プライサーフ A−208F 第一工業製薬(株))
・タルク 5.0部
(MICRO ACE P−3 日本タルク工業(株))
・トルエン 200部
・メチルエチルケトン 200部
【0124】
(印画シワの評価)
昇華型熱転写プリンタ(ALTECH ADS(株)製) 型式;CW−01)のメディアセットCW−MS46のY領域,M領域,C領域に、各実施例、参考例、及び比較例の熱転写シートをそれぞれ貼り付け、上記プリンタと、メディアセット純正の熱転写受像シートを低温低湿環境下(5℃、20%)に3時間放置した後に、熱転写受像シートに、低階調画像として(1)白ベタ(0/255階調)画像、(2)30/255階調グレーベタ画像、(3)60/255階調グレーベタ画像、(4)90/255階調グレーベタ画像、高階調画像として(1)黒ベタ(255/255階調)画像、(2)210/255階調グレーベタ画像、(3)180/255階調グレーベタ画像、(4)150/255階調グレーベタ画像を各5枚(計20枚)印画し、下記の評価基準に基づいて印画シワの評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0125】
「評価基準」
◎・・・全ての画像((1)〜(4))で印画シワの発生がない
○・・・(1)〜(4)のいずれかの1種の画像でシワが発生
△・・・(1)〜(4)の画像のうち2〜3種の画像でシワが発生。
×・・・(1)〜(4)の全ての画像でシワが発生。
【0126】
(キック評価)
各実施例、参考例、及び比較例の熱転写シートの背面層と染料層を対向させ、15kg/cm2の荷重をかけて、40℃、湿度90%環境下で96時間保管し、背面層側に染料層の染料を移行(キック)させた。対向前後の背面層の色相を、グレタグ社製GRETAGSpectrolino(D65光源、視野角2°)を用いて測定し、色差(ΔE*)を下記式にて算出して下記基準に基づき評価した。評価結果を表1に併せて示す。
ΔE*=((対向前後のL*値の差)2+(対向前後のa*値の差)2+(対向前後のb*値の差)21/2
【0127】
「評価基準」
◎・・・色差ΔE*が2.5未満
○・・・色差ΔE*が2.5以上3.0未満
△・・・色差ΔE*が3.0以上5.0未満
×・・・色差ΔE*が5.0以上
【0128】
【表1】
【0129】
表1からも明らかなように、本発明の発明特定事項を全て充足する実施例の熱転写シートによれば、高階調領域、及び低階調領域のいずれの印画時においても印画シワの発生を防止することができ、また、キックの発生も防止できることが確認できた。一方、本発明の発明特定事項を全て充足しない比較例の熱転写シートでは、印画シワの発生、或いはキックの発生を防止することができていない。このことからも、本発明の優位性は明らかである。
【符号の説明】
【0130】
1・・・基材
3・・・染料層
5・・・背面層
7・・・染料プライマー層
10・・・熱転写シート
図1
図2
図3